JP3856993B2 - 後2軸車両の後輪操舵制御装置 - Google Patents

後2軸車両の後輪操舵制御装置 Download PDF

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  • Control Of Vehicle Engines Or Engines For Specific Uses (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トラック等の後前軸及び後後軸を有する後2軸車両の後前輪の操舵を制御する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、後輪を操舵する装置として、ハンドル切り角に対応する後輪舵角が車速に関連して電気・油圧制御回路により制御され、電気・油圧制御回路が低速時に前輪に対する後輪の舵角比を大きく、車速の上昇に伴って上記舵角比を小さくし、更に所定車速以上で上記舵角比をゼロとするように構成された舵角比制御装置が開示されている(特開平2−124381号)[以下、第1従来例という]。この装置では、前輪舵取機構の出力軸と連動する入力軸の回転が舵角比制御機構を介しかつ車速に関連して差動制御弁に伝達され、この差動制御弁により後輪操舵アクチュエータへの油圧回路が制御される。また後輪は後輪操舵アクチュエータにより操舵され、舵角比制御機構は電気・油圧制御回路により制御される。上記舵角比制御機構は入力軸に設けられかつハンドル切り角に対応して回動する突片と、差動制御弁の駆動軸先端に設けられた切欠部材に形成されかつ上記突片と周方向に隙間をあけて係合する切欠とを有する。
【0003】
このように構成された舵角比制御装置では、電気・油圧制御回路が突片と切欠との隙間の大きさを車速に関連して調整する、即ち駆動軸に回動を伝えるまでのハンドルの中立位置からの不感帯(遊び)の幅を車速に関連して制御するので、車速の増加につれて前輪舵角に対する後輪舵角の舵角比が次第に小さくなる。この結果、低速走行では後輪が前輪と逆位相に比較的大きく操舵され、小回り性が発揮される。また中速走行では通常のハンドル切り角の範囲では後輪は殆ど操舵されず、高速走行では突片が切欠と係合不能の状態になって後輪は全く操舵されず、直進走行性が向上するようになっている。
【0004】
一方、本出願人は後前輪を前輪操舵と連動して同位相で操舵可能とし、前輪の舵角が小さい範囲では後前輪の舵角を前輪の舵角よりも多めに制御し、前輪の舵角が大きい範囲では後前輪の舵角を前輪の舵角より少なめに制御するように構成された後2軸車における後前軸車輪の操舵装置を実用新案登録出願した(実公平6−21818号)[以下、第2従来例という]。この操舵装置では、前輪操舵装置のピットマンアームがドラッグリンクを介して前輪ナックルアームに連結され、上記ドラッグリンクがリレーロッドを介して後輪ナックルアームに連結される。後輪ナックルアームには長溝が設けられ、リレーロッドは上記長溝にピンを介して摺動可能に連結される。また上記長溝は後前輪を前輪より多めの舵角で制御する第1案内溝と、この第1案内溝の前方及び後方にそれぞれ設けられ後前輪を前輪より少なめの舵角で制御する一対の第2案内溝と、第1案内溝と第2案内溝とを連通接続する一対の傾斜中間溝とを有する。
【0005】
このように構成された操舵装置では、前輪の操舵角の大小によって前輪ナックルアームのレバーの長さに対する後輪ナックルアームのレバーの長さのレバー比を変化させる。この結果、操舵角が小さい高速走行時には後前輪を前輪と同位相で前輪舵角よりも多めの舵角とすることにより、操縦安定性を向上させることができる。また操舵角が大きい低速走行時には後前輪を前輪と同位相で前輪舵角よりも少なめの舵角とすることにより、旋回時に後前輪が滑らかに回転することができるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記第2従来例に上記第1従来例を適用する、即ち後2軸車において、低速時に前輪に対する後前輪の舵角比を大きく、車速の上昇に伴って上記舵角比を小さくし、更に所定車速以上で上記舵角比をゼロとするように構成した場合、車速がゼロであっても後輪が操舵されるため、例えば後前輪の目標操舵角と実測操舵角との舵角差が大きいと、車両がスムーズに発進できない不具合があった。また車速がゼロの状態で後前輪の目標操舵角と実測操舵角との舵角差を小さくしようとすると、大きな後前輪の操舵力を必要とし、後前輪を操舵するアクチュエータを大型化しなければならない不具合があった。
本発明の目的は、比較的小型の後前輪操舵手段により後前輪を操舵することができ、車両をスムーズに発進させることができる、後2軸車両の後前輪操舵制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、図1,図2及び図8に示すように、エンジンにより駆動され前輪11を操舵する前輪操舵手段21と、エンジンにより駆動され後前輪13を操舵する後前輪操舵手段22と、前輪11の操舵角δfを検出するフロント舵角センサ56と、車速Vを検出する車速センサ58と、エンジンを制御しかつフロント舵角センサ56及び車速センサ58の各検出出力に基づいて後前輪13を前輪11と同一方向に操舵するように後前輪操舵手段22を制御するコントローラ60とを備えた後2軸車両の後輪操舵制御装置であって、後前輪13の操舵角δrを検出するリヤ舵角センサ57を更に備え、車速センサ58が第1基準値V0未満の車速Vを検出し、かつコントローラ60により演算された前輪11の操舵角δfに基づく後前輪13の目標操舵角δPとリヤ舵角センサ57により検出された後前輪13の実測操舵角δrとの舵角差が第2基準値δ0以上であるときに、コントローラ60がエンジンの回転速度Nを第3基準値N0まで上昇させ、かつ上記舵角差が第2基準値δ0未満になったとき或いは所定時間T0経過したときに、エンジンの回転速度Nを元の状態に戻すように構成されたところにある。
【0008】
この請求項1に記載された後2軸車両の後前輪操舵制御装置では、車両10を停止するときに、後前輪13の実測操舵角δrが目標操舵角δPに対して大きく異なった状態にある場合があり、この状態でエンジンを再始動すると、コントローラ60はフロント舵角センサ56,リヤ舵角センサ57及び車速センサ58の各検出出力を読込んだ後に、前輪11の操舵角δfに対する後前輪13の目標操舵角δPを演算する。このとき車両10はアイドリング状態で停止しているので、コントローラ60はこの車速センサ58の検出出力から、車速Vが第1基準値V0未満であると判断する。次にコントローラ60は後前輪13の目標操舵角δPと実測操舵角δrとの舵角差を演算し、この舵角差を第2基準値δ0と比較して、舵角差が第2基準値δ0以上であると判断する。このためコントローラ60はエンジンの回転速度を第3基準値N0まで上昇させた後に、後前輪操舵手段22を作動して後前輪13を操舵する。後前輪13の目標操舵角δPと実測操舵角δrとの舵角差が第2基準値δ0未満になると、或いは後前輪操舵手段22を作動して所定時間T0が経過すると、後前輪操舵手段22を停止した後に、エンジンの回転速度を元に戻す。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図2に示すように、トラック10は両端に前輪11が取付けられた前軸12と、両端に後前輪13が取付けられた後前軸14と、両端に後後輪16が取付けられた後後軸17とを備える。この実施の形態では、前輪11及び後前輪13が操舵可能に構成され、かつ後後輪16が操舵不能に構成される(図1及び図2)。後後軸17にはデファレンシャル18が設けられる(図2〜図4)。エンジンにより発生した駆動力は図示しない変速機及びプロペラシャフトを介してデファレンシャル18に伝達され、後後軸17の駆動軸17a(図4)を介して後後輪16に伝達されるように構成される。また前輪11は前輪操舵手段21により操舵され、後前輪13は後前輪操舵手段22により操舵されるように構成される。
【0010】
前輪操舵手段21は図1に示すように、ステアリングホイール23にステアリングシャフト24を介して連結されたパワーステアリング装置26と、このパワーステアリング装置26にピットマンアーム27及びフロントドラッグリンク28を介して連結されたフロントナックル29とを有する。フロントナックル29には前輪11が回転可能に取付けられる。またパワーステアリング装置26はこの実施の形態ではコントロールバルブ及びパワーシリンダがステアリングギヤと一体的に構成されたインテグラル式のパワーステアリング装置であり、ステアリングホイール23の操舵力を支援する。
【0011】
後前輪操舵手段22は図3〜図5に示すように、後前軸14の両端に一対のリヤキングピン31,31を介してそれぞれ枢着された一対のリヤナックル32,32と、後前軸14より後方に車幅方向に延びて設けられかつ両端が一対のリヤナックル32,32の連結アーム32a,32a(図3)にそれぞれ連結されたリヤタイロッド33と、基端が一方のリヤキングピン31に嵌着されかつ先端が油圧シリンダ34のピストンロッド34aに連結されたナックルアーム32bとを有する。シャシフレーム36の一対のサイドメンバ36a,36aには後前軸14の前方に位置するように第1クロスメンバ36bが架設され、後前軸14と第1クロスメンバ36bとの間に位置するように第2クロスメンバ36cが架設される(図3及び図4)。
【0012】
油圧シリンダ34の基端は第1クロスメンバ36bに枢着され、油圧シリンダ34のピストンロッド34aは後方に向って突出し揺動リンク37の上端に連結される。この揺動リンク37の略中央は第2クロスメンバ36cに枢着される。揺動リンク37の下端にはリヤドラッグリンク38の前端が連結され、リヤドラッグリンク38の後端はナックルアーム32bの先端に連結される(図3及び図4)。リヤキングピン31は後前軸14の端部に回動可能に挿通され、リヤナックル32の基端に回動不能に挿通される(図5)。またリヤナックル32の先端には従動軸39が挿着され、この従動軸39には軸受40を介して後前輪13が回転可能に取付けられる。油圧シリンダ34のピストンロッド34aが伸縮することにより、揺動リンク37、リヤドラッグリンク38、リヤナックル32及びリヤタイロッド33を介して後前輪13が操舵されるように構成される。
【0013】
一方、図1に示すように、パワーステアリング装置26にはエンジンにより駆動される油圧ポンプ41から主供給管42を通って作動油43が供給され、パワーステアリング装置26から排出された作動油43は主戻り管44を通ってオイルタンク46に戻されるように構成される。主供給管42には分流弁47が設けられ、この分流弁47は絞り部47aと分岐ポート47bとを有する。分岐ポート47bは分岐供給管48を介して油圧シリンダ34の第1ポート34bに接続され、油圧シリンダ34の第2ポート34cは分岐戻り管49を介して主戻り管44に接続される。分岐供給管48及び分岐戻り管49には比例バルブ51及びカットオフバルブ52が設けられる。油圧ポンプ41により分流弁47に供給された作動油43は絞り部47aにより一定流量に絞られてパワーステアリング装置26に供給され、上記一定流量を超える作動油43は分岐ポート47bから油圧シリンダ34に供給されるように構成される。
【0014】
比例バルブ51は4ポート3位置切換弁であり、第1ポート51aは分流弁47側の分岐供給管48に接続され、第2ポート51bは油圧シリンダ34側の分岐供給管48に接続される。また第3ポート51cは分流弁47側の分岐戻り管49に接続され、第4ポート51dは油圧シリンダ34側の分岐戻り管49に接続される。このバルブ51は第1及び第2制御部51e,51fにより電磁的及び機械的(ばね)に切換え制御されるように構成される。第1制御部51eをオンし第2制御部51fをオフすると、第1及び第2ポート51a,51bが連通接続され、かつ第3及び第4ポート51c,51dが連通接続される。また第1制御部51eをオフし第2制御部51fをオンすると、第1及び第4ポート51a,51dが連通接続され、かつ第2及び第3ポート51b,51cが連通接続される。更に第1及び第2制御部51e,51fをともにオフすると、各ポート51a〜51dが遮断されるように構成される。
【0015】
カットオフバルブ52は2ポート2位置切換弁であり、第1ポート52aは分岐供給管48に接続され、第2ポート52bは分岐戻り管49に接続される。このバルブ52は制御部52cにより電磁的及び機械的(ばね)に切換え制御されるように構成される。制御部52cをオンすると第1ポート52aと第2ポート52bが連通接続され、制御部52cをオフすると第1ポート52aと第2ポート52bとが遮断されるように構成される。このバルブ52は油圧シリンダ34が失陥した場合にオンするように構成される。なお、図1中の符号53及び54はリリーフ弁である。また符号55はアクセルペダル(図示せず)の踏込み量に応じてエンジンへの燃料噴射量を制御する電子ガバナである。
【0016】
パワーステアリング装置26にはピットマンアーム27の回転角を検出するフロント舵角センサ56が設けられ、揺動リンク37の近傍にはこの揺動リンク37の回転角を検出するリヤ舵角センサ57が設けられる。図1中の符号58はトラックの車速を検出する車速センサである。また符号59a及び符号59bはエンジンの回転速度を検出するエンジン回転センサ及びエンジンの負荷を検出するエンジン負荷センサである。フロント舵角センサ56,リヤ舵角センサ57,車速センサ58,エンジン回転センサ59a及びエンジン負荷センサ59bの各検出出力はコントローラ60の制御入力にそれぞれ接続され、コントローラ60の制御出力は比例バルブ51の第1及び第2制御部51e,51fと、カットオフバルブ52の制御部52cと、電子ガバナ55にそれぞれ接続される。
【0017】
コントローラ60は前輪11の実測操舵角δfに基づく後前輪13の目標操舵角δPと、リヤ舵角センサ57により検出された後前輪13の実測操舵角δrとの舵角差を演算するように構成される。またコントローラ60にはメモリ60aが設けられる。このメモリ60aには車速センサ58の検出する車速Vと比較される第1基準値V0と、上記後前輪13の目標操舵角δP 及び実測操舵角δ r 舵角差と比較される第2基準値δ0と、エンジンの実際の回転速度Nと比較される第3基準値N0とが記憶される。第1基準値V0は0km/時を越えかつ3km/時以下の範囲内の所定値(例えば1km/時)であることが好ましく、第2基準値δ0は3度以上かつ6度以下の範囲内の所定値(例えば3度)であることが好ましく、更に第3基準値N0は500rpm以上かつ600rpm以下の範囲内の所定値(例えば600rpm)であることが好ましい。
【0018】
第1基準値V0を0km/時を越えかつ3km/時以下の範囲に限定したのは、3km/時を越えるとエンジン回転速度Nを上昇させなくても後前輪13をスムーズに操舵できるからである。第2基準値δ0を3度以上かつ6度以下の範囲に限定したのは、3度未満とするとエンジン回転速度Nを上昇させなくても後前輪13をスムーズに操舵でき、6度を越えるとトラック10を発進させ難くなる場合が生じるからである。また第3基準値N0を500rpm以上かつ600rpm以下の範囲に限定したのは、500rpm未満とするとエンジン回転速度Nが低すぎて油圧ポンプ41の作動油吐出量が不足し操舵できない場合が生じ、600rpmを越えると燃費が悪くなり、また油圧ポンプ41の回転速度と吐出量とが比例しない領域に入ってしまい、油圧ポンプ41の吐出量の増加がなくなって非効率になるからである。更にコントローラ60にはタイマ(図示せず)が接続される。
【0019】
なお、図6の斜線部分は第2基準値δ0を3度としたときのトラック10が発進可能な後前輪13の目標操舵角δPと実測操舵角δrとの舵角差の許容範囲を示す。またメモリ60aには図7に示すように前輪11の操舵角δfに対する後前輪13の操舵角δrが記憶される。具体的には図7の前輪11の操舵角δfが0〜1度の範囲では高速走行時の安定性のために後前輪13の操舵角δrを0度とし(この範囲は中立不感帯と呼ばれる。)、前輪11の操舵角δfが1〜38度の範囲では後前輪13は所定の舵角比(δr/δf=0.29)で操舵され、前輪11の操舵角δfが38度を越えると後前輪13の操舵角δrがシャシフレーム36等により制約されるため後前輪13の操舵角δrは11度に保たれるようになっている。また図2のθfは前輪11のアッカーマンステア角であり、θrは後前輪13のアッカーマンステア角である。
【0020】
図3及び図4に戻って、後前軸14には第1ばね61を介してシャシフレーム36が載置され、後後軸17には第2ばね62を介してシャシフレーム36が載置される。第1及び第2ばね61,62はこの実施の形態では空気ばねである。後前軸14の下面にはシャシフレーム36の一対のサイドメンバ36a,36aと略平行に延びる一対の第1支持具71,71の中央がそれぞれ取付けられる。これらの第1支持具71,71の前端及び後端と一対のサイドメンバ36a,36aとの間には4つの第1ばね61がそれぞれ介装される(図3)。また後後軸17の下面には一対のサイドメンバ36a,36aと略平行に延びる一対の第2支持具72,72の中央がそれぞれ取付けられる。これらの第2支持具72,72の前端及び後端と一対のサイドメンバ36a,36aとの間には4つの第2ばね62がそれぞれ介装される。
【0021】
後前軸14及び後後軸17はトランピング(地たんだ運動)及びワインドアップ等を抑制するために第1及び第2トルクロッド81,82によりシャシフレーム36にそれぞれ連結される(図3及び図4)。第1トルクロッド81は後端が後前軸14の中央上部に枢着され前端が後前軸14より前方のシャシフレーム36にそれぞれ枢着された一対の第1アッパロッド81a,81aと、後端が一対の第1支持具71,71の中央にそれぞれ枢着され前端が後前軸14より前方の第1スタビライザバー91の両端にそれぞれ固着された一対の第1ロアロッド81b,81bとを有する。また第2トルクロッド82は前端が後後軸17の中央上部に枢着され後端が後後軸17より後方のシャシフレーム36にそれぞれ枢着された一対の第2アッパロッド82a,82aと、前端が一対の第2支持具72,72の中央にそれぞれ枢着され後端が後後軸17より後方の第2スタビライザバー92の両端にそれぞれ固着された一対の第2ロアロッド82b,82bとを有する。第1スタビライザバー91は一対のサイドメンバ36a,36aから垂下されたフロントブラケット63(図4)により回動可能に保持され、第2スタビライザバー92は一対のサイドメンバ36a,36aから垂下されたリヤブラケット64(図4)により回動可能に保持される。
【0022】
このように構成された後前輪操舵制御装置の動作を図8のフローチャートに基づいて説明する。
トラック10を駐車場等の所定の場所に停止するときには、通常、後前輪13の実測操舵角δrは目標操舵角δPに一致している。この状態でエンジンを再始動すると、コントローラ60はフロント舵角センサ56,リヤ舵角センサ57,車速センサ58及びエンジン回転センサ59aの各検出出力を読込んだ後に、前輪11の操舵角δfに対する後前輪13の目標操舵角δ P を演算する。このときトラック10はアイドリング状態で停止しているので、車速センサ58の検出した車速Vは0km/時である。コントローラ60はこの車速センサ58の検出出力とメモリ60aに記憶された第1基準値V0(例えば1km/時)とを比較し、車速Vが第1基準値V0未満であると判断する。次にコントローラ60は後前輪13の目標操舵角δPと実測操舵角δrとの舵角差の絶対値を演算し、この舵角差の絶対値をメモリ60aに記憶された第2基準値δ0(例えば3度)と比較して、後前輪13の目標操舵角δPと実測操舵角δrとの舵角差の絶対値が第2基準値δ0未満であると判断する。この状態でトラック10を発進させると、トラック10はスムーズに発進する。トラック10が発進して車速Vが第1基準値V0以上になり、前輪11の実測操舵角δfがδ1以下(例えば0〜1度の範囲)の中立不感帯である場合には、コントローラ60はフロント舵角センサ56等の読込みを繰返し、比例バルブ51をオフの状態に保つ。
【0023】
走行中に運転者がステアリングホイール23を例えば左方向に切ると、前輪11が図1の破線矢印の方向に回転し、前輪11の実測操舵角δfが中立不感帯δ1の範囲を越える。このときコントローラ60はエンジン回転速度Nが第3基準値N0(例えば600rpm)以上である場合にはそのまま、第3基準値N0未満である場合には電子ガバナ55を制御して第3基準値N0まで上昇させた後に、比例バルブ51の第2制御部51fをオンする。これにより比例バルブ51の第1及び第4ポート51a,51dが連通接続し、かつ第2及び第3ポート51b,51cが連通接続するので、油圧シリンダ34の第2ポート34cから油圧シリンダ34の反ロッド側室(図示せず)に作動油43が供給され、油圧シリンダ34の第1ポート34bから油圧シリンダ34のロッド側室(図示せず)の作動油43が排出される。このためピストンロッド34aが図1の実線で示す方向に突出し、揺動リンク37を介してリヤドラッグリンク38が一点鎖線矢印で示す方向に移動するので、後前輪13は前輪11と同一方向に、即ち破線矢印で示す方向に回転する。揺動リンク37の回転角はコントローラ60の制御入力にフィードバックされ、後前輪13の実測操舵角δrが目標操舵角δPになったときに比例バルブ51の第2制御部51fをオフする。
【0024】
一方、トラック10を駐車場等の所定の場所に停止するときに、後前輪13の実測操舵角δrが目標操舵角δPに対して大きく異なった状態にある場合がある。例えばトラック10を停止して右方向にステアリングホイール23を切った後に、急に左方向に切って後前輪13が目標操舵角δPに達する前にエンジンを切った場合である。この状態でエンジンを再始動すると、コントローラ60は上記と同様にフロント舵角センサ56,リヤ舵角センサ57,車速センサ58及びエンジン回転センサ59aの各検出出力を読込んだ後に、前輪11の操舵角δfに対する後前輪13の目標操舵角δPを演算する。このときトラック10はアイドリング状態で停止しているので、車速センサ58の検出した車速は0km/時である。コントローラ60はこの車速センサ58の検出出力とメモリ60aに記憶された第1基準値V0とを比較し、車速Vが第1基準値V0未満であると判断する。次にコントローラ60は後前輪13の目標操舵角δPと実測操舵角δrとの舵角差の絶対値を演算し、この舵角差の絶対値をメモリ60aに記憶された第2基準値δ0と比較して、舵角差の絶対値が第2基準値δ0以上であると判断する。このためコントローラ60は電子ガバナ55を制御してエンジンの回転速度を第3基準値N0まで上昇させる。
【0025】
この状態でコントローラ60は比例バルブ51の第2制御部51fをオンする。これにより上記と同様に比例バルブ51の第1及び第4ポート51a,51dが連通接続し、かつ第2及び第3ポート51b,51cが連通接続するので、油圧シリンダ34の第2ポート34cから油圧シリンダ34の反ロッド側室(図示せず)に作動油43が供給され、油圧シリンダ34の第1ポート34bから油圧シリンダ34のロッド側室(図示せず)の作動油43が排出される。このためピストンロッド34aが図1の実線で示す方向に突出し、揺動リンク37を介してリヤドラッグリンク38が一点鎖線矢印で示す方向に移動するので、後前輪13は破線矢印で示す方向に回転する。揺動リンク37の回転角はコントローラ60の制御入力にフィードバックされ、後前輪13の目標操舵角δPと実測操舵角δrとの舵角差の絶対値が第2基準値δ0未満になったときに比例バルブ51の第2制御部51fをオフした後に、エンジンの回転速度を元に戻す。この結果、後前輪13の目標操舵角δPと実測操舵角δrとの舵角差が第2基準値δ0未満であるため、トラック10はスムーズに発進することができる。
【0026】
なお、コントローラ60は比例バルブ51の第2制御部51fをオンすると同時にタイマをT0秒間(例えば10秒間)をセットする。これにより後前輪13の目標操舵角δPと実測操舵角δrとの舵角差の絶対値が上記T0秒間に第2基準値δ0未満にならなかったときには、T0秒間経過後に比例バブル51の第2制御部51fをオフし、エンジンの回転速度を元に戻す。これは油圧シリンダ34に大きな圧力が作用し続けて油温が上昇するのを抑えるためである。
【0027】
またトラック10を停止して上記とは逆に左方向にステアリングホイール23を切った後に、急に右方向に切って後前輪13が目標操舵角δPに達する前にエンジンを切った場合には、コントローラ60は比例バルブ51の第1制御部51eをオンする。これにより比例バルブ51の第1及び第2ポート51a,51bが連通接続し、かつ第3及び第4ポート51c,51dが連通接続するので、油圧シリンダ34の第1ポート34bから油圧シリンダ34のロッド側室に作動油43が供給され、油圧シリンダ34の第2ポート34cから油圧シリンダ34の反ロッド側室の作動油43が排出される。この結果、ピストンロッド34aが引込むので、後前輪13は上記とは逆の方向に回転し、後前輪13の目標操舵角δPと実測操舵角δrとの舵角差の絶対値が第2基準値δ0未満になったときに、コントローラ60が比例バルブ51の第1制御部51eをオフして油圧シリンダ34への作動油43の供給を停止し、更にエンジンの回転速度を元に戻す。
【0028】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、前輪操舵手段及び後前輪操舵手段をエンジンにより駆動し、コントローラがエンジンを制御し、かつ前輪の操舵角を検出するフロント舵角センサ及び車速を検出する車速センサの各検出出力に基づいて後前輪を前輪と同一方向に操舵するように後前輪操舵手段を制御するので、車速センサが第1基準値未満の車速を検出し、かつ前輪の操舵角に基づく後前輪の目標操舵角と後前輪の実測操舵角との舵角差が第2基準値以上であるときに、コントローラがエンジンの回転速度を第3基準値まで上昇させ、かつ上記舵角差が第2基準値未満になったとき或いは所定時間経過したときに、エンジンの回転速度を元の状態に戻す。この結果、後前輪の目標操舵角と実測操舵角との舵角差が第2基準値未満になるため、車両はスムーズに発進することができる。
またエンジンの回転速度を上昇させることにより、後前輪操舵手段の駆動力を増大したので、後前輪操舵手段を大型化しなくて済む。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施形態の後輪操舵制御装置の制御回路構成図。
【図2】その装置を搭載したトラックの平面構成図。
【図3】図4のA矢視図。
【図4】図3のB−B線断面図。
【図5】図3のC−C線断面図。
【図6】第1基準値を3度としたときのトラックが発進可能な後前輪の舵角差の許容範囲を示す図。
【図7】前輪の操舵角の変化に対する後前輪の操舵角の変化を示す図。
【図8】その装置の動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
10 トラック(車両)
11 前輪
後前輪
21 前輪操舵手段
22 後前輪操舵手段
56 フロント舵角センサ
57 リヤ舵角センサ
58 車速センサ
60 コントローラ
δf 前輪の実測操舵角
δP 後前輪の目標操舵角
δr 後前輪の実測操舵角
0 第1基準値
δ0 第2基準値
0 第3基準値
V 車速
N エンジン回転速度
0 タイマの計測する時間

Claims (4)

  1. エンジンにより駆動され前輪(11)を操舵する前輪操舵手段(21)と、
    前記エンジンにより駆動され後前輪(13)を操舵する後前輪操舵手段(22)と、
    前記前輪(11)の操舵角(δf)を検出するフロント舵角センサ(56)と、
    車速(V)を検出する車速センサ(58)と、
    前記エンジンを制御しかつ前記フロント舵角センサ(56)及び前記車速センサ(58)の各検出出力に基づいて前記後前輪(13)を前記前輪(11)と同一方向に操舵するように前記後前輪操舵手段(22)を制御するコントローラ(60)と
    を備えた後2軸車両の後輪操舵制御装置であって、
    前記後前輪(13)の操舵角(δr)を検出するリヤ舵角センサ(57)を更に備え、
    前記車速センサ(58)が第1基準値(V0)未満の車速(V)を検出し、かつ前記コントローラ(60)により演算された前記前輪(11)の操舵角(δf)に基づく前記後前輪(13)の目標操舵角(δP)と前記リヤ舵角センサ(57)により検出された前記後前輪(13)の実測操舵角(δr)との舵角差が第2基準値(δ0)以上であるときに、前記コントローラ(60)がエンジンの回転速度を第3基準値(N0)まで上昇させ、かつ前記舵角差が第2基準値(δ0)未満になったとき或いは所定時間(T0)経過したときに、前記エンジンの回転速度(N)を元の状態に戻すように構成された
    ことを特徴とする後2軸車両の後前輪操舵制御装置。
  2. 第1基準値(V0)が0km/時を越えかつ3km/時以下の範囲内の所定値である請求項1記載の後2軸車両の後前輪操舵制御装置。
  3. 第2基準値(δ0)が3度以上かつ6度以下の範囲内の所定値である請求項1記載の後2軸車両の後前輪操舵制御装置。
  4. 第3基準値(N0)が500rpm以上かつ600rpm以下の範囲内の所定値である請求項1記載の後2軸車両の後前輪操舵制御装置。
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