JP3821613B2 - 後2軸車両の後前輪操舵制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トラック等の後前軸及び後後軸を有する後2軸車両の後前輪の操舵を制御する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両にはステアリングホイールの回転により前輪を操舵する前輪操舵手段が設けられ、このステアリングホイールを運転者が回転させて前輪を操舵することによりその車両は前輪の操舵角に従って旋回し、運転者はこのようにステアリングホイールを回転することにより目的方向に従って車両を旋回させることができるようになっている。一方、車両は直進しようとする慣性力に抗して操舵された前軸の操舵角に従って旋回するので、一般的に前輪の操舵角はその前軸のアッカーマンステア角より大きくなり、前輪にはその操舵角がアッカーマンステア角に近づこうとする力が生じ、ステアリングホイールには回転させた方向と逆方向に回転しようとする力が生じる。このため、旋回した後の車両を再び直線走行させる場合には、運転者はステアリングホイールを回転させていた操舵力を減じるだけの動作でステアリングホイールを旋回時に回転させていた方向と逆方向に回転させることができ、前輪が直進方向に達した時点でそのステアリングホイールの回転動作を終了させることにより運転者は比較的容易に旋回した車両を直進させることができるようになっている。
【0003】
また、車両がトラック等の後前軸及び後後軸を有するものである場合には、後前輪を操舵する後前輪操舵手段を有する後2軸車両が知られている。この後2軸車両にあっては、ステアリングホイールを運転者が回転させて前輪を操舵すると、前輪の操舵角に応じた車両の旋回半径から求められる後前軸のアッカーマンステア角に略等しい所定の操舵角でその後前輪を前輪と同一方向にその後前輪操舵手段が操舵するように構成される。このように前輪の操舵角に応じて後前輪を操舵することにより後前輪を目的方向になめらかに旋回させて、後前輪及び後後輪の引きずりを回避し、車両の操縦安定性を向上することができるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、後前輪操舵手段を有する後2軸車両では、後前輪が車両の旋回半径から求められる所定の操舵角で操舵させるので、前輪の操舵角が前軸のアッカーマンステア角に近づくことになり、車両の直線走行性が損なわれ、従来ステアリングホイールに生じていた反対方向に回転しようするとする力が弱められ、旋回後におけるステアリングホイールのいわゆる戻り性が低下する不具合がある。このため、旋回した後で車両を再び直線走行させる場合には運転者が回転させていた操舵力を減じるだけの動作だけではでステアリングホイールを逆方向に戻すことができず、積極的にそのステアリングホイールを逆方向に回転させなければ旋回した車両を直進させることができない問題点がある。
【0005】
この点を解消するためには、所定の操舵角以下の操舵角で後前輪を操舵することも考えられるが、その所定の操舵角以下の操舵角で後前輪を操舵することは、車両の旋回時における後前輪の引きずりに起因するタイヤの摩耗を促進させ、旋回時における車両の操縦安定性を低下させる不具合がある。
【0006】
本発明の目的は、旋回時における操縦安定性を向上し、かつ旋回後におけるステアリングホイールの戻り性を向上し得る後2軸車両の後前輪操舵制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、図1、図5及び図6に示すように、ステアリングホイール23の回転により前輪11を操舵する前輪操舵手段21と、後前輪13を操舵する後前輪操舵手段22と、前輪11の操舵角δfを検出するフロント舵角センサ56と、ステアリングホイール23を回転させる操舵力を検出する操舵力センサ58と、フロント舵角センサ56及び操舵力センサ58の各検出出力に基づいて後前輪13を前輪11と同一方向に操舵するように後前輪操舵手段22を制御するコントローラ59とを備えた後2軸車両の後前輪操舵制御装置であって、操舵力センサ58により検出される操舵力方向がフロント舵角センサ56により検出される操舵方向と同一方向であるときに前輪11の操舵角に対する後前輪13の操舵角の舵角比δr/δfが所定の第1舵角比γ1となるようにコントローラ59が後前輪操舵手段22を制御し、操舵力センサ58により検出される操舵力がゼロであるとき又はその操舵力方向がフロント舵角センサ56により検出される操舵方向と逆方向であるときに舵角比δr/δfが第1舵角比γ1より小さな所定の第2舵角比γ2となるようにコントローラ59が後前輪操舵手段22を制御するように構成されたことを特徴とする後2軸車両の後前輪操舵制御装置である。
【0008】
この請求項1に記載された後2軸車両の後前輪操舵制御装置では、走行中に車両を旋回させるために運転者がステアリングホイール23を回すと、操舵力センサ58により検出される操舵力方向がフロント舵角センサ56により検出される操舵方向と同一方向になり、コントローラ59は後前輪操舵手段22を介して後前輪13を前輪11と同一方向にかつ前輪11に対する後前輪13の舵角比δr/δfが第1舵角比γ1となるように操舵する。この結果、前軸12のアッカーマンステア角θfと前輪11の操舵角δfとが略同一になり、後前軸14のアッカーマンステア角θrと後前輪13の操舵角δrとが略同一になるので、旋回時における操縦安定性は向上し、後前輪13の摩耗を低減することができる。ここで、アッカーマンステア角とは、車両の旋回時にその旋回中心が後後軸17の延長線上にある場合、前軸12及び後後軸17の軸間距離(又は後前軸14及び後後軸17の軸間距離)と後後軸17中心の旋回半径の比を正接とする角度をいう。
【0009】
また、旋回している車両を直進させるために、運転者が操舵力を減じてそのステアリングホイール23を逆方向に戻そうとすると、操舵力センサ58により検出される操舵力がゼロ又はその操舵力方向がフロント舵角センサ56により検出される操舵方向と逆方向になり、舵角比δr/δfが第1舵角比γ1より小さな所定の第2舵角比γ2となるようにコントローラ49が後前輪操舵手段22を制御する。第1舵角比γ1より小さな値である第2舵角比γ2で制御された後前輪13の操舵角δrは、後前軸14のアッカーマンステア角θrより小さくなり、前輪11の操舵角δfは前軸12のアッカーマンステア角θfより大きくなる(図5)。このため、前輪11にはその操舵角δfが前軸12のアッカーマンステア角θfに近づこうとする力が生じ、ステアリングホイール23には旋回時に回転させていた方向と逆方向に回転しようとする力が生じる。この力により運転者は積極的にそのステアリングホイール23を逆方向に回転させなくてもステアリングホイール23は逆方向に回転し、旋回状態の車両を比較的容易に直進方向に向けることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図5に示すように、トラック10は両端に前輪11が取付けられた前軸12と、両端に後前輪13が取付けられた後前軸14と、両端に後後輪16が取付けられた後後軸17とを備える。この実施の形態では、前輪11及び後前輪13が操舵可能に構成され、かつ後後輪16が操舵不能に構成される。後後軸17にはデファレンシャル18が設けられる(図2、図3及び図5)。エンジンにより発生した駆動力は図示しない変速機及びプロペラシャフトを介してデファレンシャル18に伝達され、後後軸17の駆動軸17a(図3)を介して後後輪16に伝達されるように構成される。また前輪11は前輪操舵手段21により操舵され、後前輪13は後前輪操舵手段22により操舵されるように構成される。
【0011】
前輪操舵手段21は図1に示すように、ステアリングホイール23にステアリングシャフト24を介して連結されたパワーステアリング装置26と、このパワーステアリング装置26にピットマンアーム27及びフロントドラッグリンク28を介して連結されたフロントナックル29とを有する。フロントナックル29には前輪11が回転可能に取付けられる。またパワーステアリング装置26はこの実施の形態ではコントロールバルブ及びパワーシリンダがステアリングギヤと一体的に構成されたインテグラル式のパワーステアリング装置であり、ステアリングホイール23の操舵力を支援する。
【0012】
後前輪操舵手段22は図2〜図4に示すように、後前軸14の両端に一対のリヤキングピン31,31を介してそれぞれ枢着された一対のリヤナックル32,32と、後前軸14より後方に車幅方向に延びて設けられかつ両端が一対のリヤナックル32,32の連結アーム32a,32a(図2)にそれぞれ連結されたリヤタイロッド33と、基端が一方のリヤキングピン31に嵌着されかつ先端が油圧シリンダ34のピストンロッド34aに連結されたナックルアーム32bとを有する。シャシフレーム36の一対のサイドメンバ36a,36aには後前軸14の前方に位置するように第1クロスメンバ36bが架設され、後前軸14と第1クロスメンバ36bとの間に位置するように第2クロスメンバ36cが架設される(図2及び図3)。
【0013】
油圧シリンダ34の基端は第1クロスメンバ36bに枢着され、油圧シリンダ34のピストンロッド34aは後方に向って突出し揺動リンク37の上端に連結される。この揺動リンク37の略中央は第2クロスメンバ36cに枢着される。揺動リンク37の下端にはリヤドラッグリンク38の前端が連結され、リヤドラッグリンク38の後端はナックルアーム32bの先端に連結される(図2及び図3)。リヤキングピン31は後前軸14の端部に回動可能に挿通され、リヤナックル32の基端に回動不能に挿通される(図4)。またリヤナックル32の先端には従動軸39が挿着され、この従動軸39には軸受40を介して後前輪13が回転可能に取付けられる。油圧シリンダ34のピストンロッド34aが伸縮することにより、揺動リンク37、リヤドラッグリンク38、リヤナックル32及びリヤタイロッド33を介して後前輪13が操舵されるように構成される。
【0014】
一方、図1に示すように、パワーステアリング装置26にはエンジンにより駆動される油圧ポンプ41から主供給管42を通って作動油43が供給され、パワーステアリング装置26から排出された作動油43は主戻り管44を通ってオイルタンク46に戻されるように構成される。主供給管42には分流弁47が設けられ、この分流弁47は絞り部47aと分岐ポート47bとを有する。分岐ポート47bは分岐供給管48を介して油圧シリンダ34の第1ポート34bに接続され、油圧シリンダ34の第2ポート34cは分岐戻り管49を介して主戻り管44に接続される。分岐供給管48及び分岐戻り管49には比例バルブ51及びカットオフバルブ52が設けられる。油圧ポンプ41により分流弁47に供給された作動油43は絞り部47aにより一定流量に絞られてパワーステアリング装置26に供給され、上記一定流量を超える作動油43は分岐ポート47bから油圧シリンダ34に供給されるように構成される。
【0015】
比例バルブ51は4ポート3位置切換弁であり、第1ポート51aは分流弁47側の分岐供給管48に接続され、第2ポート51bは油圧シリンダ34側の分岐供給管48に接続される。また第3ポート51cは分流弁47側の分岐戻り管49に接続され、第4ポート51dは油圧シリンダ34側の分岐戻り管49に接続される。このバルブ51は第1及び第2制御部51e,51fにより電磁的及び機械的(ばね)に切換え制御されるように構成される。第1制御部51eをオンし第2制御部51fをオフすると、第1及び第2ポート51a,51bが連通接続され、かつ第3及び第4ポート51c,51dが連通接続される。また第1制御部51eをオフし第2制御部51fをオンすると、第1及び第4ポート51a,51dが連通接続され、かつ第2及び第3ポート51b,51cが連通接続される。更に第1及び第2制御部51e,51fをともにオフすると、各ポート51a〜51dが遮断されるように構成される。
【0016】
カットオフバルブ52は2ポート2位置切換弁であり、第1ポート52aは分岐供給管48に接続され、第2ポート52bは分岐戻り管49に接続される。このバルブ52は制御部52cにより電磁的及び機械的(ばね)に切換え制御されるように構成される。制御部52cをオンすると第1ポート52aと第2ポート52bが連通接続され、制御部52cをオフすると第1ポート52aと第2ポート52bとが遮断されるように構成される。このバルブ52は油圧シリンダ34が失陥した場合にオンするように構成される。なお、図1中の符号53及び54はリリーフ弁である。
【0017】
パワーステアリング装置26にはピットマンアーム27の回転角を検出するフロント舵角センサ56が設けられ、揺動リンク37の近傍にはこの揺動リンク37の回転角を検出するリヤ舵角センサ57が設けられる。また、ステアリングシャフト24にはこのステアリングシャフト24に生じるひずみによりステアリングホイール23を回転させる操舵力及びその方向を検出する操舵力センサ58が設けられる。フロント舵角センサ56、リヤ舵角センサ57及び操舵力センサ58の各検出出力はコントローラ59の制御入力にそれぞれ接続され、コントローラ59の制御出力は比例バルブ51の第1及び第2制御部51e,51fとカットオフバルブ52の制御部52cにそれぞれ接続される。
【0018】
コントローラ59にはメモリ59aが設けられ、このメモリ59aには前輪11の操舵角をδfとし、後前輪13の操舵角をδrとするときに、前輪11の操舵角δfに対する操舵力の方向の異同により決定される第1及び第2舵角比δr/δfがマップとして記憶される。即ち、メモリ59aには図6に示すように、操舵力センサ58により検出される操舵力方向がフロント舵角センサ56により検出される操舵方向と同一方向であるときの第1舵角比γ1と、その操舵力センサ58により検出される操舵力がゼロであるとき又はその操舵力方向が舵角センサ56により検出される操舵方向と逆方向であるときの第2舵角比γ2が記憶される。第1舵角比γ1は、後前輪13の操舵角δrが、前輪11の操舵角に応じて旋回しようとするトラック10の後前軸14のアッカーマンステア角θrと略同一になるような比であって、この実施の形態では0.29である。第2舵角比γ2は第1舵角比γ1より小さな値であって、この実施の形態では0.21である。
【0019】
図2及び図3に示すように、後前軸14には第1ばね61を介してシャシフレーム36が載置され、後後軸17には第2ばね62を介してシャシフレーム36が載置される。第1及び第2ばね61,62はこの実施の形態では空気ばねである。後前軸14の下面にはシャシフレーム36の一対のサイドメンバ36a,36aと略平行に延びる一対の第1支持具71,71の中央がそれぞれ取付けられる。これらの第1支持具71,71の前端及び後端と一対のサイドメンバ36a,36aとの間には4つの第1ばね61がそれぞれ介装される(図2)。また後後軸17の下面には一対のサイドメンバ36a,36aと略平行に延びる一対の第2支持具72,72の中央がそれぞれ取付けられる。これらの第2支持具72,72の前端及び後端と一対のサイドメンバ36a,36aとの間には4つの第2ばね62がそれぞれ介装される。
【0020】
後前軸14及び後後軸17はトランピング(地たんだ運動)及びワインドアップ等を抑制するために第1及び第2トルクロッド81,82によりシャシフレーム36にそれぞれ連結される(図2及び図3)。第1トルクロッド81は後端が後前軸14の中央上部に枢着され前端が後前軸14より前方のシャシフレーム36にそれぞれ枢着された一対の第1アッパロッド81a,81aと、後端が一対の第1支持具71,71の中央にそれぞれ枢着され前端が後前軸14より前方の第1スタビライザバー91の両端にそれぞれ固着された一対の第1ロアロッド81b,81bとを有する。また第2トルクロッド82は前端が後後軸17の中央上部に枢着され後端が後後軸17より後方のシャシフレーム36にそれぞれ枢着された一対の第2アッパロッド82a,82aと、前端が一対の第2支持具72,72の中央にそれぞれ枢着され後端が後後軸17より後方の第2スタビライザバー92の両端にそれぞれ固着された一対の第2ロアロッド82b,82bとを有する。第1スタビライザバー91は一対のサイドメンバ36a,36aから垂下されたフロントブラケット63(図3)により回動可能に保持され、第2スタビライザバー92は一対のサイドメンバ36a,36aから垂下されたリヤブラケット64(図3)により回動可能に保持される。
【0021】
このように構成された後前輪操舵制御装置の動作を説明する。
トラック10の走行中に左旋回するために運転者がステアリングホイール23を左(図1の実線矢印で示す方向)に回すと、ピットマンアーム27がパワーステアリング装置26の支援を受けて一点鎖線矢印で示す方向に回転するので、前輪11はステアリングホイール23の回転角に応じた角度だけ左向き(破線矢印で示す方向)に操舵される。一方、運転者がステアリングホイール23を回すことにより生じるステアリングシャフト24のひずみから操舵力センサ58はステアリングホイール23を左に回転させる操舵力を検出する。一方、ピットマンアーム27が一点鎖線矢印の方向に所定の角度だけ回転したことをフロント舵角センサ56が検出すると、コントローラ59はこれらセンサ58,56の各検出出力に基づいて比例バルブ51の第2制御部51fをオンする。
【0022】
これにより比例バルブ51の第1及び第4ポート51a,51dが連通接続し、かつ第2及び第3ポート51b,51cが連通接続するので、油圧シリンダ34の第2ポート34cから油圧シリンダ34の反ロッド側室(図示せず)に作動油43が供給され、油圧シリンダ34の第1ポート34bから油圧シリンダ34のロッド側室(図示せず)の作動油43が排出される。これによりピストンロッド34aが図1の実線で示す方向に突出し、揺動リンク37を介してリヤドラッグリンク38が一点鎖線矢印で示す方向に移動するので、後前輪13は前輪11と同一方向、即ち破線矢印で示す方向に回転する。揺動リンク37の回転角はコントローラ59の制御入力にフィードバックされ、この場合操舵力センサ58により検出される操舵力方向がフロント舵角センサ56により検出される操舵方向と同一方向であるので、前輪11に対する後前輪13の舵角比δr/δfが第1舵角比γ1(この実施の形態では、γ1=0.29)となったときに、比例バルブ51の第2制御部51fをオフして油圧シリンダ34への作動油43の供給を停止する。この結果、前軸12のアッカーマンステア角θfと前輪11の操舵角δfとが略同一になり、後前軸14のアッカーマンステア角θrと後前輪13の操舵角δrとが略同一になるので(図5)、旋回時における操縦安定性が向上し後前輪13の摩耗を低減することができる。
【0023】
トラック10が左旋回から直進に移行するために、運転者がステアリングホイール23を回転させていた操舵力を減じてそのステアリングホイール23を逆方向に戻そうとすると、ステアリングシャフト24のひずみから操舵力センサ58は操舵力がゼロであること又はステアリングホイール23を右に回転させる操舵力を検出する。一方、フロント舵角センサ56はピットマンアーム27が図1の一点鎖線矢印の方向に回転していることを検出しているため、コントローラ59はこれらセンサ58,56の各検出出力により舵角比δr/δfが第1舵角比γ1より小さな第2舵角比γ2となるように後前輪操舵手段22を制御する。具体的に、コントローラ59は、操舵力センサ58及びフロント舵角センサ56の各検出出力に基づいて比例バルブ51の第1制御部51eをオンする。これにより比例バルブ51の第1及び第2ポート51a,51bが連通接続し、かつ第3及び第4ポート51c,51dが連通接続するので、油圧シリンダ34の第1ポート34bから油圧シリンダ34のロッド側室に作動油43が供給され、油圧シリンダ34の第2ポート34cから油圧シリンダ34の反ロッド側室の作動油43が排出されてピストンロッド34aが引込み、後前輪13は上記とは逆の方向に回転する。このときの揺動リンク37の回転角はコントローラ59の制御入力にフィードバックされ、前輪11に対する後前輪13の舵角比δr/δfが第2舵角比γ2(この実施の形態では、γ2=0.21)となったときに、比例バルブ51の第1制御部51eをオフして油圧シリンダ34への作動油43の供給を停止する。
【0024】
第2舵角比γ2は第1舵角比γ1より小さな値であるので、この第2舵角比γ2で制御された後前輪13の操舵角δrは後前軸14のアッカーマンステア角θrより小さくなり、前輪11の操舵角δfは前軸12のアッカーマンステア角θfより大きくなる(図5)。このため、前輪11にはその操舵角δfが前軸12のアッカーマンステア角θfに近づこうとする力が生じ、ステアリングホイール23には旋回時に回転させていた方向と逆方向に回転しようとする力が生じる。この力により運転者は積極的にそのステアリングホイール23を逆方向に回転させなくてもステアリングホイール23は逆方向に回転し、トラック10を比較的容易に直進方向に向けることができる。
【0025】
なお、ステアリングホイール23を右に回したとき及び回した状態から戻すときには、上記とは逆の動作となるので繰り返しての説明を省略する。
また、この実施の形態で挙げた車速及び舵角比の数値は一例であって、これらの数値に限定されるものではない。
【0026】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、操舵力センサにより検出される操舵力方向がフロント舵角センサにより検出される操舵方向と同一方向であるときに前輪の操舵角に対する後前輪の操舵角の舵角比が所定の第1舵角比となるようにコントローラが後前輪操舵手段を制御するように構成したので、走行中に車両を旋回させるために運転者がステアリングホイールを回すと、操舵力センサにより検出される操舵力方向がフロント舵角センサにより検出される操舵方向と同一方向になり、コントローラは後前輪操舵手段を介して後前輪を前輪と同一方向にかつ前輪に対する後前輪の舵角比が第1舵角比となるように操舵する。この結果、前軸のアッカーマンステア角と前輪の操舵角とが略同一になり、後前軸のアッカーマンステア角と後前輪の操舵角が略同一になるので、旋回時における操縦安定性は向上し、後前輪の摩耗を低減することができる。
【0027】
また、操舵力センサにより検出される操舵力がゼロであるとき又はその操舵力方向がフロント舵角センサにより検出される操舵方向と逆方向であるときに舵角比が第1舵角比より小さな所定の第2舵角比となるようにコントローラが後前輪操舵手段を制御するように構成したので、旋回している車両を直進させるために、運転者が操舵力を減じてその回転させていたステアリングホイールを逆方向に戻そうとすると、操舵力センサにより検出される操舵力がゼロ又はその操舵力方向がフロント舵角センサにより検出される操舵方向と逆方向になり、舵角比が第1舵角比より小さな所定の第2舵角比となるようにコントローラが後前輪操舵手段を制御する。第1舵角比より小さな値である第2舵角比で制御された後前輪の操舵角は、後前軸のアッカーマンステア角より小さくなり、前輪の操舵角は前軸のアッカーマンステア角より大きくなる。このため、前輪にはその操舵角が前軸のアッカーマンステア角に近づこうとする力が生じ、ステアリングホイールには旋回時に回転させていた方向と逆方向に回転させようとする力が生じる。この力により運転者は積極的にそのステアリングホイールを逆方向に回転させなくてもステアリングホイールは逆方向に回転し、旋回状態の車両を比較的容易に直進方向に向けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の後前輪操舵制御装置の制御回路構成図。
【図2】図3のA矢視図。
【図3】図2のB−B線断面図。
【図4】図2のC−C線断面図。
【図5】その後前輪操舵制御装置を備えたトラックの平面構成図。
【図6】第1及び第2舵角比δr/δfの関係を示す図。
【符号の説明】
11 前輪
13 後前輪
21 前輪操舵手段
22 後前輪操舵手段
23 ステアリングホイール
56 フロント舵角センサ
58 操舵力センサ
59 コントローラ
δf 前輪の操舵角
δr 後前輪の操舵角
γ1 第1舵角比
γ2 第2舵角比
【発明の属する技術分野】
本発明は、トラック等の後前軸及び後後軸を有する後2軸車両の後前輪の操舵を制御する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両にはステアリングホイールの回転により前輪を操舵する前輪操舵手段が設けられ、このステアリングホイールを運転者が回転させて前輪を操舵することによりその車両は前輪の操舵角に従って旋回し、運転者はこのようにステアリングホイールを回転することにより目的方向に従って車両を旋回させることができるようになっている。一方、車両は直進しようとする慣性力に抗して操舵された前軸の操舵角に従って旋回するので、一般的に前輪の操舵角はその前軸のアッカーマンステア角より大きくなり、前輪にはその操舵角がアッカーマンステア角に近づこうとする力が生じ、ステアリングホイールには回転させた方向と逆方向に回転しようとする力が生じる。このため、旋回した後の車両を再び直線走行させる場合には、運転者はステアリングホイールを回転させていた操舵力を減じるだけの動作でステアリングホイールを旋回時に回転させていた方向と逆方向に回転させることができ、前輪が直進方向に達した時点でそのステアリングホイールの回転動作を終了させることにより運転者は比較的容易に旋回した車両を直進させることができるようになっている。
【0003】
また、車両がトラック等の後前軸及び後後軸を有するものである場合には、後前輪を操舵する後前輪操舵手段を有する後2軸車両が知られている。この後2軸車両にあっては、ステアリングホイールを運転者が回転させて前輪を操舵すると、前輪の操舵角に応じた車両の旋回半径から求められる後前軸のアッカーマンステア角に略等しい所定の操舵角でその後前輪を前輪と同一方向にその後前輪操舵手段が操舵するように構成される。このように前輪の操舵角に応じて後前輪を操舵することにより後前輪を目的方向になめらかに旋回させて、後前輪及び後後輪の引きずりを回避し、車両の操縦安定性を向上することができるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、後前輪操舵手段を有する後2軸車両では、後前輪が車両の旋回半径から求められる所定の操舵角で操舵させるので、前輪の操舵角が前軸のアッカーマンステア角に近づくことになり、車両の直線走行性が損なわれ、従来ステアリングホイールに生じていた反対方向に回転しようするとする力が弱められ、旋回後におけるステアリングホイールのいわゆる戻り性が低下する不具合がある。このため、旋回した後で車両を再び直線走行させる場合には運転者が回転させていた操舵力を減じるだけの動作だけではでステアリングホイールを逆方向に戻すことができず、積極的にそのステアリングホイールを逆方向に回転させなければ旋回した車両を直進させることができない問題点がある。
【0005】
この点を解消するためには、所定の操舵角以下の操舵角で後前輪を操舵することも考えられるが、その所定の操舵角以下の操舵角で後前輪を操舵することは、車両の旋回時における後前輪の引きずりに起因するタイヤの摩耗を促進させ、旋回時における車両の操縦安定性を低下させる不具合がある。
【0006】
本発明の目的は、旋回時における操縦安定性を向上し、かつ旋回後におけるステアリングホイールの戻り性を向上し得る後2軸車両の後前輪操舵制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、図1、図5及び図6に示すように、ステアリングホイール23の回転により前輪11を操舵する前輪操舵手段21と、後前輪13を操舵する後前輪操舵手段22と、前輪11の操舵角δfを検出するフロント舵角センサ56と、ステアリングホイール23を回転させる操舵力を検出する操舵力センサ58と、フロント舵角センサ56及び操舵力センサ58の各検出出力に基づいて後前輪13を前輪11と同一方向に操舵するように後前輪操舵手段22を制御するコントローラ59とを備えた後2軸車両の後前輪操舵制御装置であって、操舵力センサ58により検出される操舵力方向がフロント舵角センサ56により検出される操舵方向と同一方向であるときに前輪11の操舵角に対する後前輪13の操舵角の舵角比δr/δfが所定の第1舵角比γ1となるようにコントローラ59が後前輪操舵手段22を制御し、操舵力センサ58により検出される操舵力がゼロであるとき又はその操舵力方向がフロント舵角センサ56により検出される操舵方向と逆方向であるときに舵角比δr/δfが第1舵角比γ1より小さな所定の第2舵角比γ2となるようにコントローラ59が後前輪操舵手段22を制御するように構成されたことを特徴とする後2軸車両の後前輪操舵制御装置である。
【0008】
この請求項1に記載された後2軸車両の後前輪操舵制御装置では、走行中に車両を旋回させるために運転者がステアリングホイール23を回すと、操舵力センサ58により検出される操舵力方向がフロント舵角センサ56により検出される操舵方向と同一方向になり、コントローラ59は後前輪操舵手段22を介して後前輪13を前輪11と同一方向にかつ前輪11に対する後前輪13の舵角比δr/δfが第1舵角比γ1となるように操舵する。この結果、前軸12のアッカーマンステア角θfと前輪11の操舵角δfとが略同一になり、後前軸14のアッカーマンステア角θrと後前輪13の操舵角δrとが略同一になるので、旋回時における操縦安定性は向上し、後前輪13の摩耗を低減することができる。ここで、アッカーマンステア角とは、車両の旋回時にその旋回中心が後後軸17の延長線上にある場合、前軸12及び後後軸17の軸間距離(又は後前軸14及び後後軸17の軸間距離)と後後軸17中心の旋回半径の比を正接とする角度をいう。
【0009】
また、旋回している車両を直進させるために、運転者が操舵力を減じてそのステアリングホイール23を逆方向に戻そうとすると、操舵力センサ58により検出される操舵力がゼロ又はその操舵力方向がフロント舵角センサ56により検出される操舵方向と逆方向になり、舵角比δr/δfが第1舵角比γ1より小さな所定の第2舵角比γ2となるようにコントローラ49が後前輪操舵手段22を制御する。第1舵角比γ1より小さな値である第2舵角比γ2で制御された後前輪13の操舵角δrは、後前軸14のアッカーマンステア角θrより小さくなり、前輪11の操舵角δfは前軸12のアッカーマンステア角θfより大きくなる(図5)。このため、前輪11にはその操舵角δfが前軸12のアッカーマンステア角θfに近づこうとする力が生じ、ステアリングホイール23には旋回時に回転させていた方向と逆方向に回転しようとする力が生じる。この力により運転者は積極的にそのステアリングホイール23を逆方向に回転させなくてもステアリングホイール23は逆方向に回転し、旋回状態の車両を比較的容易に直進方向に向けることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図5に示すように、トラック10は両端に前輪11が取付けられた前軸12と、両端に後前輪13が取付けられた後前軸14と、両端に後後輪16が取付けられた後後軸17とを備える。この実施の形態では、前輪11及び後前輪13が操舵可能に構成され、かつ後後輪16が操舵不能に構成される。後後軸17にはデファレンシャル18が設けられる(図2、図3及び図5)。エンジンにより発生した駆動力は図示しない変速機及びプロペラシャフトを介してデファレンシャル18に伝達され、後後軸17の駆動軸17a(図3)を介して後後輪16に伝達されるように構成される。また前輪11は前輪操舵手段21により操舵され、後前輪13は後前輪操舵手段22により操舵されるように構成される。
【0011】
前輪操舵手段21は図1に示すように、ステアリングホイール23にステアリングシャフト24を介して連結されたパワーステアリング装置26と、このパワーステアリング装置26にピットマンアーム27及びフロントドラッグリンク28を介して連結されたフロントナックル29とを有する。フロントナックル29には前輪11が回転可能に取付けられる。またパワーステアリング装置26はこの実施の形態ではコントロールバルブ及びパワーシリンダがステアリングギヤと一体的に構成されたインテグラル式のパワーステアリング装置であり、ステアリングホイール23の操舵力を支援する。
【0012】
後前輪操舵手段22は図2〜図4に示すように、後前軸14の両端に一対のリヤキングピン31,31を介してそれぞれ枢着された一対のリヤナックル32,32と、後前軸14より後方に車幅方向に延びて設けられかつ両端が一対のリヤナックル32,32の連結アーム32a,32a(図2)にそれぞれ連結されたリヤタイロッド33と、基端が一方のリヤキングピン31に嵌着されかつ先端が油圧シリンダ34のピストンロッド34aに連結されたナックルアーム32bとを有する。シャシフレーム36の一対のサイドメンバ36a,36aには後前軸14の前方に位置するように第1クロスメンバ36bが架設され、後前軸14と第1クロスメンバ36bとの間に位置するように第2クロスメンバ36cが架設される(図2及び図3)。
【0013】
油圧シリンダ34の基端は第1クロスメンバ36bに枢着され、油圧シリンダ34のピストンロッド34aは後方に向って突出し揺動リンク37の上端に連結される。この揺動リンク37の略中央は第2クロスメンバ36cに枢着される。揺動リンク37の下端にはリヤドラッグリンク38の前端が連結され、リヤドラッグリンク38の後端はナックルアーム32bの先端に連結される(図2及び図3)。リヤキングピン31は後前軸14の端部に回動可能に挿通され、リヤナックル32の基端に回動不能に挿通される(図4)。またリヤナックル32の先端には従動軸39が挿着され、この従動軸39には軸受40を介して後前輪13が回転可能に取付けられる。油圧シリンダ34のピストンロッド34aが伸縮することにより、揺動リンク37、リヤドラッグリンク38、リヤナックル32及びリヤタイロッド33を介して後前輪13が操舵されるように構成される。
【0014】
一方、図1に示すように、パワーステアリング装置26にはエンジンにより駆動される油圧ポンプ41から主供給管42を通って作動油43が供給され、パワーステアリング装置26から排出された作動油43は主戻り管44を通ってオイルタンク46に戻されるように構成される。主供給管42には分流弁47が設けられ、この分流弁47は絞り部47aと分岐ポート47bとを有する。分岐ポート47bは分岐供給管48を介して油圧シリンダ34の第1ポート34bに接続され、油圧シリンダ34の第2ポート34cは分岐戻り管49を介して主戻り管44に接続される。分岐供給管48及び分岐戻り管49には比例バルブ51及びカットオフバルブ52が設けられる。油圧ポンプ41により分流弁47に供給された作動油43は絞り部47aにより一定流量に絞られてパワーステアリング装置26に供給され、上記一定流量を超える作動油43は分岐ポート47bから油圧シリンダ34に供給されるように構成される。
【0015】
比例バルブ51は4ポート3位置切換弁であり、第1ポート51aは分流弁47側の分岐供給管48に接続され、第2ポート51bは油圧シリンダ34側の分岐供給管48に接続される。また第3ポート51cは分流弁47側の分岐戻り管49に接続され、第4ポート51dは油圧シリンダ34側の分岐戻り管49に接続される。このバルブ51は第1及び第2制御部51e,51fにより電磁的及び機械的(ばね)に切換え制御されるように構成される。第1制御部51eをオンし第2制御部51fをオフすると、第1及び第2ポート51a,51bが連通接続され、かつ第3及び第4ポート51c,51dが連通接続される。また第1制御部51eをオフし第2制御部51fをオンすると、第1及び第4ポート51a,51dが連通接続され、かつ第2及び第3ポート51b,51cが連通接続される。更に第1及び第2制御部51e,51fをともにオフすると、各ポート51a〜51dが遮断されるように構成される。
【0016】
カットオフバルブ52は2ポート2位置切換弁であり、第1ポート52aは分岐供給管48に接続され、第2ポート52bは分岐戻り管49に接続される。このバルブ52は制御部52cにより電磁的及び機械的(ばね)に切換え制御されるように構成される。制御部52cをオンすると第1ポート52aと第2ポート52bが連通接続され、制御部52cをオフすると第1ポート52aと第2ポート52bとが遮断されるように構成される。このバルブ52は油圧シリンダ34が失陥した場合にオンするように構成される。なお、図1中の符号53及び54はリリーフ弁である。
【0017】
パワーステアリング装置26にはピットマンアーム27の回転角を検出するフロント舵角センサ56が設けられ、揺動リンク37の近傍にはこの揺動リンク37の回転角を検出するリヤ舵角センサ57が設けられる。また、ステアリングシャフト24にはこのステアリングシャフト24に生じるひずみによりステアリングホイール23を回転させる操舵力及びその方向を検出する操舵力センサ58が設けられる。フロント舵角センサ56、リヤ舵角センサ57及び操舵力センサ58の各検出出力はコントローラ59の制御入力にそれぞれ接続され、コントローラ59の制御出力は比例バルブ51の第1及び第2制御部51e,51fとカットオフバルブ52の制御部52cにそれぞれ接続される。
【0018】
コントローラ59にはメモリ59aが設けられ、このメモリ59aには前輪11の操舵角をδfとし、後前輪13の操舵角をδrとするときに、前輪11の操舵角δfに対する操舵力の方向の異同により決定される第1及び第2舵角比δr/δfがマップとして記憶される。即ち、メモリ59aには図6に示すように、操舵力センサ58により検出される操舵力方向がフロント舵角センサ56により検出される操舵方向と同一方向であるときの第1舵角比γ1と、その操舵力センサ58により検出される操舵力がゼロであるとき又はその操舵力方向が舵角センサ56により検出される操舵方向と逆方向であるときの第2舵角比γ2が記憶される。第1舵角比γ1は、後前輪13の操舵角δrが、前輪11の操舵角に応じて旋回しようとするトラック10の後前軸14のアッカーマンステア角θrと略同一になるような比であって、この実施の形態では0.29である。第2舵角比γ2は第1舵角比γ1より小さな値であって、この実施の形態では0.21である。
【0019】
図2及び図3に示すように、後前軸14には第1ばね61を介してシャシフレーム36が載置され、後後軸17には第2ばね62を介してシャシフレーム36が載置される。第1及び第2ばね61,62はこの実施の形態では空気ばねである。後前軸14の下面にはシャシフレーム36の一対のサイドメンバ36a,36aと略平行に延びる一対の第1支持具71,71の中央がそれぞれ取付けられる。これらの第1支持具71,71の前端及び後端と一対のサイドメンバ36a,36aとの間には4つの第1ばね61がそれぞれ介装される(図2)。また後後軸17の下面には一対のサイドメンバ36a,36aと略平行に延びる一対の第2支持具72,72の中央がそれぞれ取付けられる。これらの第2支持具72,72の前端及び後端と一対のサイドメンバ36a,36aとの間には4つの第2ばね62がそれぞれ介装される。
【0020】
後前軸14及び後後軸17はトランピング(地たんだ運動)及びワインドアップ等を抑制するために第1及び第2トルクロッド81,82によりシャシフレーム36にそれぞれ連結される(図2及び図3)。第1トルクロッド81は後端が後前軸14の中央上部に枢着され前端が後前軸14より前方のシャシフレーム36にそれぞれ枢着された一対の第1アッパロッド81a,81aと、後端が一対の第1支持具71,71の中央にそれぞれ枢着され前端が後前軸14より前方の第1スタビライザバー91の両端にそれぞれ固着された一対の第1ロアロッド81b,81bとを有する。また第2トルクロッド82は前端が後後軸17の中央上部に枢着され後端が後後軸17より後方のシャシフレーム36にそれぞれ枢着された一対の第2アッパロッド82a,82aと、前端が一対の第2支持具72,72の中央にそれぞれ枢着され後端が後後軸17より後方の第2スタビライザバー92の両端にそれぞれ固着された一対の第2ロアロッド82b,82bとを有する。第1スタビライザバー91は一対のサイドメンバ36a,36aから垂下されたフロントブラケット63(図3)により回動可能に保持され、第2スタビライザバー92は一対のサイドメンバ36a,36aから垂下されたリヤブラケット64(図3)により回動可能に保持される。
【0021】
このように構成された後前輪操舵制御装置の動作を説明する。
トラック10の走行中に左旋回するために運転者がステアリングホイール23を左(図1の実線矢印で示す方向)に回すと、ピットマンアーム27がパワーステアリング装置26の支援を受けて一点鎖線矢印で示す方向に回転するので、前輪11はステアリングホイール23の回転角に応じた角度だけ左向き(破線矢印で示す方向)に操舵される。一方、運転者がステアリングホイール23を回すことにより生じるステアリングシャフト24のひずみから操舵力センサ58はステアリングホイール23を左に回転させる操舵力を検出する。一方、ピットマンアーム27が一点鎖線矢印の方向に所定の角度だけ回転したことをフロント舵角センサ56が検出すると、コントローラ59はこれらセンサ58,56の各検出出力に基づいて比例バルブ51の第2制御部51fをオンする。
【0022】
これにより比例バルブ51の第1及び第4ポート51a,51dが連通接続し、かつ第2及び第3ポート51b,51cが連通接続するので、油圧シリンダ34の第2ポート34cから油圧シリンダ34の反ロッド側室(図示せず)に作動油43が供給され、油圧シリンダ34の第1ポート34bから油圧シリンダ34のロッド側室(図示せず)の作動油43が排出される。これによりピストンロッド34aが図1の実線で示す方向に突出し、揺動リンク37を介してリヤドラッグリンク38が一点鎖線矢印で示す方向に移動するので、後前輪13は前輪11と同一方向、即ち破線矢印で示す方向に回転する。揺動リンク37の回転角はコントローラ59の制御入力にフィードバックされ、この場合操舵力センサ58により検出される操舵力方向がフロント舵角センサ56により検出される操舵方向と同一方向であるので、前輪11に対する後前輪13の舵角比δr/δfが第1舵角比γ1(この実施の形態では、γ1=0.29)となったときに、比例バルブ51の第2制御部51fをオフして油圧シリンダ34への作動油43の供給を停止する。この結果、前軸12のアッカーマンステア角θfと前輪11の操舵角δfとが略同一になり、後前軸14のアッカーマンステア角θrと後前輪13の操舵角δrとが略同一になるので(図5)、旋回時における操縦安定性が向上し後前輪13の摩耗を低減することができる。
【0023】
トラック10が左旋回から直進に移行するために、運転者がステアリングホイール23を回転させていた操舵力を減じてそのステアリングホイール23を逆方向に戻そうとすると、ステアリングシャフト24のひずみから操舵力センサ58は操舵力がゼロであること又はステアリングホイール23を右に回転させる操舵力を検出する。一方、フロント舵角センサ56はピットマンアーム27が図1の一点鎖線矢印の方向に回転していることを検出しているため、コントローラ59はこれらセンサ58,56の各検出出力により舵角比δr/δfが第1舵角比γ1より小さな第2舵角比γ2となるように後前輪操舵手段22を制御する。具体的に、コントローラ59は、操舵力センサ58及びフロント舵角センサ56の各検出出力に基づいて比例バルブ51の第1制御部51eをオンする。これにより比例バルブ51の第1及び第2ポート51a,51bが連通接続し、かつ第3及び第4ポート51c,51dが連通接続するので、油圧シリンダ34の第1ポート34bから油圧シリンダ34のロッド側室に作動油43が供給され、油圧シリンダ34の第2ポート34cから油圧シリンダ34の反ロッド側室の作動油43が排出されてピストンロッド34aが引込み、後前輪13は上記とは逆の方向に回転する。このときの揺動リンク37の回転角はコントローラ59の制御入力にフィードバックされ、前輪11に対する後前輪13の舵角比δr/δfが第2舵角比γ2(この実施の形態では、γ2=0.21)となったときに、比例バルブ51の第1制御部51eをオフして油圧シリンダ34への作動油43の供給を停止する。
【0024】
第2舵角比γ2は第1舵角比γ1より小さな値であるので、この第2舵角比γ2で制御された後前輪13の操舵角δrは後前軸14のアッカーマンステア角θrより小さくなり、前輪11の操舵角δfは前軸12のアッカーマンステア角θfより大きくなる(図5)。このため、前輪11にはその操舵角δfが前軸12のアッカーマンステア角θfに近づこうとする力が生じ、ステアリングホイール23には旋回時に回転させていた方向と逆方向に回転しようとする力が生じる。この力により運転者は積極的にそのステアリングホイール23を逆方向に回転させなくてもステアリングホイール23は逆方向に回転し、トラック10を比較的容易に直進方向に向けることができる。
【0025】
なお、ステアリングホイール23を右に回したとき及び回した状態から戻すときには、上記とは逆の動作となるので繰り返しての説明を省略する。
また、この実施の形態で挙げた車速及び舵角比の数値は一例であって、これらの数値に限定されるものではない。
【0026】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、操舵力センサにより検出される操舵力方向がフロント舵角センサにより検出される操舵方向と同一方向であるときに前輪の操舵角に対する後前輪の操舵角の舵角比が所定の第1舵角比となるようにコントローラが後前輪操舵手段を制御するように構成したので、走行中に車両を旋回させるために運転者がステアリングホイールを回すと、操舵力センサにより検出される操舵力方向がフロント舵角センサにより検出される操舵方向と同一方向になり、コントローラは後前輪操舵手段を介して後前輪を前輪と同一方向にかつ前輪に対する後前輪の舵角比が第1舵角比となるように操舵する。この結果、前軸のアッカーマンステア角と前輪の操舵角とが略同一になり、後前軸のアッカーマンステア角と後前輪の操舵角が略同一になるので、旋回時における操縦安定性は向上し、後前輪の摩耗を低減することができる。
【0027】
また、操舵力センサにより検出される操舵力がゼロであるとき又はその操舵力方向がフロント舵角センサにより検出される操舵方向と逆方向であるときに舵角比が第1舵角比より小さな所定の第2舵角比となるようにコントローラが後前輪操舵手段を制御するように構成したので、旋回している車両を直進させるために、運転者が操舵力を減じてその回転させていたステアリングホイールを逆方向に戻そうとすると、操舵力センサにより検出される操舵力がゼロ又はその操舵力方向がフロント舵角センサにより検出される操舵方向と逆方向になり、舵角比が第1舵角比より小さな所定の第2舵角比となるようにコントローラが後前輪操舵手段を制御する。第1舵角比より小さな値である第2舵角比で制御された後前輪の操舵角は、後前軸のアッカーマンステア角より小さくなり、前輪の操舵角は前軸のアッカーマンステア角より大きくなる。このため、前輪にはその操舵角が前軸のアッカーマンステア角に近づこうとする力が生じ、ステアリングホイールには旋回時に回転させていた方向と逆方向に回転させようとする力が生じる。この力により運転者は積極的にそのステアリングホイールを逆方向に回転させなくてもステアリングホイールは逆方向に回転し、旋回状態の車両を比較的容易に直進方向に向けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の後前輪操舵制御装置の制御回路構成図。
【図2】図3のA矢視図。
【図3】図2のB−B線断面図。
【図4】図2のC−C線断面図。
【図5】その後前輪操舵制御装置を備えたトラックの平面構成図。
【図6】第1及び第2舵角比δr/δfの関係を示す図。
【符号の説明】
11 前輪
13 後前輪
21 前輪操舵手段
22 後前輪操舵手段
23 ステアリングホイール
56 フロント舵角センサ
58 操舵力センサ
59 コントローラ
δf 前輪の操舵角
δr 後前輪の操舵角
γ1 第1舵角比
γ2 第2舵角比
Claims (1)
- ステアリングホイール(23)の回転により前輪(11)を操舵する前輪操舵手段(21)と、後前輪(13)を操舵する後前輪操舵手段(22)と、前記前輪(11)の操舵角(δf)を検出するフロント舵角センサ(56)と、前記ステアリングホイール(23)を回転させる操舵力を検出する操舵力センサ(58)と、前記フロント舵角センサ(56)及び前記操舵力センサ(58)の各検出出力に基づいて前記後前輪(13)を前記前輪(11)と同一方向に操舵するように前記後前輪操舵手段(22)を制御するコントローラ(59)とを備えた後2軸車両の後前輪操舵制御装置であって、
前記操舵力センサ(58)により検出される操舵力方向が前記フロント舵角センサ(56)により検出される操舵方向と同一方向であるときに前記前輪(11)の操舵角に対する前記後前輪(13)の操舵角の舵角比(δr/δf)が所定の第1舵角比(γ1)となるように前記コントローラ(59)が前記後前輪操舵手段(22)を制御し、
前記操舵力センサ(58)により検出される操舵力がゼロであるとき又はその操舵力方向が前記フロント舵角センサ(56)により検出される操舵方向と逆方向であるときに前記舵角比(δr/δf)が前記第1舵角比(γ1)より小さな所定の第2舵角比(γ2)となるように前記コントローラ(59)が前記後前輪操舵手段(22)を制御するように構成された
ことを特徴とする後2軸車両の後前輪操舵制御装置。
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