JP3856495B2 - 繊維の色の深みおよび鮮明性を改善するための樹脂加工用組成物およびそれを用いた繊維材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維の色の深みおよび鮮明性を改善するための樹脂加工用組成物に関する。本発明は、また、色の深みおよび鮮明性が改善された着色繊維材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
繊維の濃色染色物の色の濃さ、例えば、黒色に染色された織編物の黒さを向上せる技術は、ポリエステル織物を使用した婦人用フォーマルブラック衣料、羊毛製の男性用の礼服、絹製の和服、学生服、中近東の民族衣装などに広く実施されている。
【0003】
その加工手法としては、特公昭58−51557に記載されている如き屈折率1.45以下のポリマーを繊維の表面に付着させる方法、特開昭57−139585に記載されている如きカチオン性のウレタン樹脂の存在下にアクリル樹脂を重合させて得られるエマルジョンを繊維に付与する方法、特公昭61−39438に記載されている如きシリカなどの無機粒子を付着させた後にフッ素樹脂やシリコン樹脂を付着させる2段処理方法などがある。
【0004】
また、特公昭63−3076に記載されているように、繊維表面にアニオン性のポリマーを付着させて、水中での繊維表面のマイナス荷電を増加させ、カチオン性の薬品の吸着性を高める処理をした後に、カチオン性のポリマーを吸着させる2段処理方法も知られている。
さらに、特開昭62−289685には、カチオン性界面活性剤の存在下にアクリル単量体を重合させて得られる、ガラス転移点20〜110℃、屈折率1.50以下およびゼータ電位が+5〜+80mvの範囲にある、濃色化剤が記載されている。このような濃色化剤には市販のフッ素撥水剤の殆どが含まれ、濃色化剤としてすでに使用実績がある。
【0005】
しかして、これらの技術は、繊維の表面に微細凹凸を形成するか、または低屈折率の樹脂により、繊維表面での可視光線の反射を抑え、吸収を高めるかの、いずれかの方法に分類できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の方法では色の深みや鮮明性の改善効果が少なかったり、あるいは2段処理方法では色の深みや鮮明性の改善効果はあるものの、加工工程が複雑で長くなるために、加工欠点が発生しやすいという問題がある。さらに、従来より、短繊維織物は、表面の毛羽のため、濃色に染めても濃く見えず、鮮明な染料で染めても鮮明にならないという欠点があり、近年、市場よりこの問題の解決要求が高まってきた。
【0007】
また、近年、繊維の太さが細い織編物、特にポリエステルやナイロンのファインデニール糸織編物の開発が盛んになってきているけれども、これらの織編物では糸の表面での可視光線の反射が増加するため、多量に染料を使用しても濃色が得られないという欠点があり、同様に色の深みや鮮明性の改善の要望が高まってきている。
【0008】
従って、本発明は、安定した加工ができ、短繊維織編物やファインデニール糸織編物に対しても十分な色の深みおよび鮮明性を与えることのできる樹脂加工用組成物、および色の深みおよび鮮明性に優れた着色繊維材料を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、三次元内部架橋されたカチオン性アクリル樹脂エマルジョンと酸性リン酸エステル塩とを含有してなる繊維の色の深みおよび鮮明性を改善するための樹脂加工用組成物を提供する。
本発明は、また、そのような樹脂加工用組成物が適用された着色繊維材料を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、3次元内部架橋されたカチオン性アクリル樹脂の合成に使用される単量体は、
▲1▼ メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ヘプタフルオロブチルメタクリレート、ペンタデカフルオロオクチルアクリレートなどの、重合可能な二重結合を1個有する単量体と、
▲2▼ エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、N,N′−メチレンビスアクリルアミドなどの、重合可能な二重結合を2個以上有する単量体と、および
▲3▼ N−メチロールアクリルアミド、グリシジルメタクリレートなどの、重合可能な二重結合と後反応可能な官能基を有する単量体と
の混合物である。これらの単量体は、繊維に付与した後、別の架橋剤、例えば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などと反応させることができる。
【0011】
上記単量体の配合組成物中(▲1▼+▲2▼+▲3▼)における重合可能な二重結合を2個以上有する単量体▲2▼の割合は0.5重量%以上50重量%以下であるのが望ましい。重合可能な二重結合を2個以上有する単量体▲2▼の割合が少なすぎると、架橋効果が小さく、所期の効果を得ることができない。また、重合可能な二重結合を2個以上有する単量体▲2▼の割合が多すぎると、固くもろい樹脂になり、織編物に適用したときに白化しやすくなる。
【0012】
このような単量体の配合組成物を乳化重合すれば、重合完了時点で既に3次元内部架橋した微粒子からなるエマルジョンが得られる。一般的にはこのような重合物はミクロゲルと呼ばれる。これらの単量体の乳化重合に使用する界面活性剤としては、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルアンモニウムクロライドなどのカチオン性の界面活性剤を挙げることができる。かかる乳化重合に際して、ポリオキシエチレンノニルフェニル−エーテルなどの非イオン界面活性剤を少量併用してもよい。
【0013】
重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロリド、過酸化ベンゾイル、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどを使用することができる。このような化合物を用いて加熱下に重合すれば、3次元内部架橋した微粒子状のカチオン性アクリル樹脂エマルジョンが得られる。
【0014】
粒子内部に3次元架橋がない場合、樹脂の軟化点以上の熱を与えると粒子同士が融着して皮膜を形成するが、本発明のアクリル樹脂は水中で粒子状に分散しており、しかも3次元架橋しているため、加熱乾燥しても融着し難く、繊維表面で粒子状を保ち易い。このため、微細凹凸が形成されて可視光線の吸収が高まる結果、より優れた色の深みとより高い鮮明性を与えることのできる、優れた改善効果が得られる。
【0015】
これらのアクリル樹脂は屈折率が低いものであるのがよい。具体的には、アクリル樹脂エマルジョンの乾燥皮膜の屈折率は1.5以下であるのが好ましい。
市販されているカチオン性アクリル樹脂エマルジョンの中には、屈折率が1.4以下のフッ素系アクリル樹脂で撥水加工に使用されるものがあり、後反応できる官能基を導入し、撥水性の耐久性を高めた自己架橋性のものもある。これらの樹脂は、屈折率が低い点で、繊維の色の深みの改善や鮮明性の向上に使用される場合がある。しかしながら、これらの樹脂では、本発明の樹脂と異なり、3次元内部架橋していない樹脂であるために、加熱乾燥時に繊維の表面で融着しながら皮膜を形成してしまうため、微細凹凸の形成は不可能である。よって、本発明で得られる如き十分な効果は得られない。すなわち、カチオン性アクリル樹脂としては、樹脂の屈折率が低く、しかも微細凹凸を形成するものであるのがよい。
【0016】
また、内部架橋したアクリル樹脂の水中における平均粒子径は、100〜300nmの範囲にあるのがよい。
この範囲外では、色の濃さが十分でなかったり、色相が変化するので好ましくない。例えば、黒染め品に粒子が小さ過ぎる樹脂を使用した場合には黄赤味の色相になり、また粒径が大き過ぎる樹脂を使用した場合には赤青味の色相になり、黒に必要な無彩色ではなくなり、色の深みが欠けたり、好ましくない色相になる場合がある。
【0017】
本発明の樹脂加工用組成物を繊維材料に付与することにより形成される繊維表面の微細凹凸の大きさは、0.2〜0.5μmの範囲にあるのがよい。
この大きさは可視光線の波長に匹敵し、微細凹凸と低屈折率の樹脂が可視光線の吸収を高める結果、優れた色の深みと鮮明性とを改善する効果が得られるからである。
【0018】
また、本発明に使用される酸性リン酸エステル塩は、無水リン酸とメチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコールなどのアルコール類との反応で得られる酸性リン酸モノアルキルエステルまたは酸性リン酸ジアルキルエステルの、苛性ソーダ、苛性カリ、アルカノールアミンなどによる中和物である。
【0019】
これらの酸性リン酸エステル塩は、一般に、帯電防止剤、湿潤剤、耐アルカリ性浸透剤などに使用されている。
通常、カチオン性の薬品とアニオン性の薬品を配合するのは非常識とされる。当然、イオン性が異なれば、エマルジョン破壊などの分散系の破壊が生じる危険性がある。
【0020】
一般的には、繊維の表面は、水中でマイナスのゼータ電位を持っており、そのためカチオン性の樹脂加工剤を選択吸着し易い。しかしながら、異種薬剤を配合した場合、カチオン性の樹脂加工剤は吸着が妨げられ、目的とする加工効果をまったく発揮しないことが多い。
本発明者らは、鋭意研究を重ねたところ、酸性リン酸エステル塩が配合された場合において、内部架橋され、ゼータ電位が+30mv以下のカチオン性アクリル樹脂エマルジョンは、繊維表面への吸着性が低下するよりむしろ高まり、微細な凹凸樹脂膜を緻密に形成し、反射光を効率に吸収する結果、繊維の色の深みと鮮明性を著しく改善することを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0021】
この理由としては、酸性リン酸エステル塩が繊維表面に吸着して、繊維側のマイナス電位を高めるため、カチオン性のアクリル樹脂の吸着性を高めると考えることができる。あるいは、カチオン性のアクリル樹脂がマイナス電位を持つ繊維に吸着する場合、繊維表面はプラスに変化するが、この状態ではさらにカチオン性のアクリル樹脂が吸着しようとすると吸着が妨げられることになるが、しかしアニオン性界面活性剤である酸性リン酸エステル塩が存在するとプラスに変化した繊維の表面電位を中和し、再びカチオン性アクリル樹脂の吸着性が増加すると考えることもできる。また、カチオン性アクリル樹脂とアニオン性界面活性剤が共存する系では、カチオン性アクリル樹脂粒子の周囲をブチル基等のアルキル基を有するアニオン性界面活性剤が中和するように取り囲み、そのため粒子の疎水性が高まり、疎水性の繊維に吸着し易くなるという考え方もできる。かかる考え方のいずれによっても、カチオン性のアクリル樹脂の吸着性が高まる結果、繊維の色の深みと鮮明性の改善効果が高まるのであることは間違いない。
【0022】
本発明の樹脂加工用組成物に併用する帯電防止剤、浸透剤などの併用剤が非イオン性界面活性剤であったり、カチオン性界面活性剤であると、カチオン性アクリル樹脂の水分散体の吸着性が低下し、繊維の色の深みや鮮明性の改善効果が著しく低下する。さらに、柔軟剤、浸透剤、消泡剤、架橋剤その他の併用薬品についても、非イオン性やカチオン性界面活性剤を含む薬品を多量に使用すれば、所期の効果を大幅に低下させる。
【0023】
例えば、カチオン性や非イオン性のアミノシリコン柔軟剤を使用すると全く効果が得られない場合がある。また、非イオン性の浸透剤を併用すると効果が大幅に低下する。
柔軟剤を用いる必要があれば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、エポキシシリコン、アミノシリコン、高級脂肪酸誘導体などの公知の柔軟剤の中から、繊維の色の深みおよび鮮明性の改善効果を低下させず、安定な配合液を与えるものを選択する必要がある。
【0024】
内部架橋されたアクリル樹脂固形分と酸性リン酸エステル塩固形分の混合割合は、重量比で95:5〜30:70であるのがよく、さらに好ましくは80:20〜50:50である。配合比が50:50を越えて酸性リン酸エステル塩を添加しても、50:50のときに得られる色の深みや鮮明性以上の効果がなく、同一レベルである。
【0025】
また、本発明の樹脂加工用組成物に水系のメラミン樹脂やエポキシ樹脂を配合してもよい。
次に、本発明の樹脂加工用組成物を適用した着色繊維材料について述べる。
本発明の樹脂加工用組成物を適用することのできる繊維材料は、ポリエステルなどの合成繊維、トリアセテートなどの半合成繊維、ウール、絹などの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維などからなる長短繊維を用いた織物、編物および不織布である。
【0026】
さらには、ポリエステルやナイロンなどのファインデニール繊維や新合繊からなる織物、編物および不織布に適用することができる。
また、着色された上記繊維材料の色相は、黒、赤、ネビーなどの濃色および鮮明色であるのが特に有効である。
樹脂加工用組成物の繊維材料への付与方法としては、樹脂加工用組成物の水溶液に繊維材料を含浸させた後、マングルで絞り、乾燥し、次いでテンターでセットする方法、樹脂加工用組成物の水溶液を繊維材料にスプレーで付与する方法などを用いることができる。
【0027】
樹脂加工用組成物の繊維への付着量としてはカチオン性アクリル樹脂の固形分で0.05〜2.0重量%であるのが好ましく、より好ましくは0.2〜0.7重量%であり、これより多過ぎても少な過ぎても効果が低下する。
【0028】
【発明の効果】
市販されているカチオン性のウレタン樹脂の存在下にアクリル樹脂を重合させたエマルジョン状態の濃色化加工剤は、通常カチオン性や非イオンの帯電防止剤がいっしょに用いられるが、ゼータ電位が30mv以上と高いため、アニオン性の帯電防止剤(酸性リン酸エステル塩等)を配合するとエマルジョン破壊を引き起こす。
【0029】
また、前述した市販の撥水剤用のフッ素系アクリル樹脂エマルジョン、例えば、旭硝子のアサヒガードAG730,AG−925や、住友スリーエムのスコッチガードFC−232などにも酸性リン酸エステル塩を配合することができ、単独使用の場合より、繊維の色の深さを高めることができるが、本発明の樹脂加工用組成物により得られるほどの効果は認められない。その理由については、前述したようにフッ素樹脂は低屈折率という点で有利であるが、繊維表面で凹凸樹脂膜ができ難いためと考えられる。
【0030】
また、特開昭62−289685には、カチオン性界面活性剤の存在下にアクリル単量体を重合させて、ガラス転移点20〜110℃、屈折率1.50以下およびゼータ電位が+5〜+80mvの範囲にある濃色化剤が記載されており、この範囲には市販の撥水剤の殆どが含まれ、すでに濃色化剤として使用された例もある。しかしながら、この種の濃色化剤は非内部架橋タイプであるため、本発明の樹脂加工用組成物により得られるほどの効果は得られない。
【0031】
以上のように、本発明の樹脂加工用組成物を用いて繊維材料の加工を行えば、安定して加工ができ、加工コストも安く、短繊維織編物や、ファインデニール糸および新合繊使い織編物に対しても十分な色の深みおよび鮮明性の改善を行うことができる。
【0032】
【実施例】
以下に実施例により、本発明を具体的に説明する。
なお、色の深みや鮮明性を測定するため、クラボーのAU COLOR Uシステムを用い、L値(明度)、a値およびb値を測定した。
耐擦過性の評価方法は、JIS L 849に規定されている摩擦試験機II型を用い、試験布に対し500gの負荷がかかるように荷重を調整し、同種の布で100回摩擦した後、摩擦子に取りつけた試験布の白化の程度を、変褪色用グレースケールを用いて級判定した。数字の大きいものほど耐擦過性が良いことを示す。
【0033】
下記の例において、部および%は、重量基準で示す。
加工用樹脂の合成例1
攪拌装置および滴下コックを備えた500mlの4つ口フラスコに、イオン交換水105.2部、30%セチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液(花王製、コータミン60W)7.0部およびポリオキシエチレンノニリルフェニルエーテル(第一工業製薬製、ノイゲンEA−150)2.0部を加え、攪拌しながら溶解させ、次いでメチルメタクリレート80.0部、イソブチルアクリレート110.0部、トリメチロールプロパントリメタクリレート4.0部および60%N−メチロールアクリルアミド水溶液10.0部を添加して、モノマー混合懸濁液を調製する。次に、窒素導入管、還流冷却管および攪拌装置を備えた1000mlの4つ口フラスコに、イオン交換水681.8部、前記モノマー混合物懸濁液63.6部および2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.4部を添加して、65℃で重合を開始した。さらに、前記モノマー混合物懸濁液254.3部を2時間に渡り滴下し、乳白色の、安定な、樹脂固形分20.0%、平均粒子径200nm、屈折率1.48およびゼータ電位21mvの、三次元内部架橋されたカチオン性アクリル樹脂エマルジョンを得た。
【0034】
加工用樹脂の合成例2
攪拌装置および滴下コックを備えた500mlの4つ口フラスコに、イオン交換水105.2部、30%セチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液(花王製、コータミン60W)7.0部およびポリオキシエチレンノニリルフェニルエーテル(第一工業製薬製、ノイゲンEA−120)2.0部を加え、攪拌しながら溶解させ、次いでメチルメタクリレート66.7部、イソブチルアクリレート103.4部、エチレンジメタクリレート4.0部、ヘプタフルオロオキシエチルメタクリレート(ヘキスト製、Fluowet MAE−812)20.0部および60%N−メチロールアクリルアミド水溶液10.0部を添加して、モノマー混合懸濁液を調製する。次に、窒素導入管、還流冷却管および攪拌装置を備えた1000mlの4つ口フラスコに、イオン交換水681.8部、前記モノマー混合物懸濁液63.6部および2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.4部を添加して、65℃で重合を開始した。さらに、前記モノマー混合物懸濁液254.3部を2時間に渡り滴下し、乳白色の、安定な、樹脂固形分20.0%、平均粒子径200nm、屈折率1.42およびゼータ電位21mvの、三次元内部架橋されたカチオン性アクリル樹脂エマルジョンを得た。
【0035】
加工用樹脂の合成例3
攪拌装置および滴下コックを備えた500mlの4つ口フラスコに、イオン交換水105.2部、30%セチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液(花王製、コータミン60W)7.0部およびポリオキシエチレンノニリルフェニルエーテル(第一工業製薬製、ノイゲンEA−150)2.0部を加え、攪拌しながら溶解させ、次いでイソブチルメタクリレート60.0部、イソブチルアクリレート90部、ヒドロキシエチルメタクリレート24.0部、エチレンジメタクリレート10部、ネオペンチルジアクリレート10.0部および60%N−メチロールメタクリルアミド水溶液10.0部を添加して、モノマー混合懸濁液を調製する。窒素導入管、還流冷却管および攪拌装置を備えた1000mlの4つ口フラスコに、イオン交換水681.8部、前記モノマー混合物懸濁液63.6部および2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.4部を添加して、65℃で重合を開始した。さらに、前記モノマー混合物懸濁液254.3部を2時間に渡り滴下し、乳白色の、安定な、樹脂固形分20.0%、平均粒子径200nm、屈折率1.47およびゼータ電位21mvの、三次元内部架橋されたカチオン性アクリル樹脂エマルジョンを得た。
【0036】
比較合成例1
攪拌装置および滴下コックを備えた500mlの4つ口フラスコに、イオン交換水105.2部、30%セチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液(花王製、コータミン60W)7.0部およびポリオキシエチレンノニリルフェニルエーテル(第一工業製薬製、ノイゲンEA−150)2.0部を加え、攪拌しながら溶解させ、次いでメチルメタクリレート82.0部、イソブチルアクリレート112.0部および60%N−メチロールアクリルアミド水溶液10.0部を添加して、モノマー懸濁液を調製する。次に、窒素導入管、還流冷却管および攪拌装置を備えた1000mlの4つ口フラスコに、イオン交換水681.8部、前記モノマー混合物懸濁液63.6部および2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.4部を添加して、65℃で重合を開始した。さらに、前記モノマー混合物懸濁液254.3部を2時間に渡り滴下し、乳白色の、安定な、樹脂固形分20.0%、平均粒子径200nm、屈折率1.48およびゼータ電位21mvの、内部非架橋カチオン性アクリル樹脂エマルジョンを得た。
【0037】
比較合成例2
攪拌装置および滴下コックを備えた500mlの4つ口フラスコに、イオン交換水105.2部および75%ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド水溶液(花王製、コータミンD−86P)3.0部を加え、攪拌しながら溶解させ、次いでメチルメタクリレート85.0部およびイソブチルアクリレート119.0部を添加して、モノマー懸濁液を調製する。窒素導入管、還流冷却管および攪拌装置を備えた1000mlの4つ口フラスコに、イオン交換水681.8部、前記モノマー混合物懸濁液63.6部および2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.4部を添加して、65℃で重合を開始した。さらに、前記モノマー混合物懸濁液254.3部を2時間に渡り滴下し、乳白色の、安定な、樹脂固形分20.0%、平均粒子径200nm、屈折率1.48およびゼータ電位21mvの、内部非架橋カチオン性アクリル樹脂エマルジョンを得た。
【0038】
実施例1
ポリエステル100%からなるパレス織物を、分散染料カヤロンポリエステルブラックEX−SFを繊維重量に対して15%の量で使用し、130℃で黒色に染色した。次いで、常法により還元洗浄し、乾燥後、160℃で30秒間セットした。
【0039】
次に、繊維の色の深みおよび鮮明性の改善のため、次の組成の樹脂加工用処理液を調製した。
三次元内部架橋カチオン性アクリル樹脂エマルジョン 3.5%
(合成例1のもの)
酸性リン酸メチルエステルナトリウム塩20%水溶液 1.5%
前記処理液を織物に含浸させた後、マングルでピックアップ40%に絞った。次いで、120℃で3分間乾燥し、150℃で30秒間セットした。
【0040】
処理織物のL値(明度)を測定したところ、加工前のL値14.1に対して加工後のそれは11.8であり、繊維の色の深みが著しく改善されていることが認められた。結果を表1に示す。
また、繊維表面を電子顕微鏡で観察したところ0.3〜0.5μmの微細な凹凸が多数観られた。
【0041】
比較例1
下記組成の処理液を用いた以外は、実施例1と同じ操作を繰り返した。
内部非架橋カチオン性アクリル樹脂エマルジョン 3.5%
(比較合成例1のもの)
酸性リン酸メチルエステルナトリウム塩20%水溶液 1.5%
得られた加工布のL値は12.7であり、実施例1に比べて繊維の色の深みの改善効果が劣ることが認められた。結果を表1に示す。
【0042】
また、繊維表面を電子顕微鏡で観察したが、実施例1のような微細な凹凸は観られなかった。
比較例2
下記組成の処理液を用いた以外は、実施例1と同じ操作を繰り返した。
内部非架橋カチオン性アクリル樹脂エマルジョン 3.5%
(比較合成例2のもの)
酸性リン酸メチルエステルナトリウム塩20%水溶液 1.5%
得られた加工布のL値を測定したところ13.2であり、実施例1に比べ繊維の色の深みの改善効果が劣ることが認められた。結果を表1に示す。
【0043】
また、繊維表面を電子顕微鏡で観察したが、実施例1のような微細な凹凸は観られなかった。
比較例3
下記組成の処理液を用いた以外は、実施例1と同じ操作を繰り返した。
3次元内部架橋カチオン性アクリル樹脂エマルジョン 3.5%
(合成例1のもの)
得られた加工布のL値を測定したとゃろ12.9であり、実施例1に比べ繊維の色の深みの改善効果が劣ることがわかった。結果を表1に示す。
【0044】
比較例4
市販の撥水剤による下記組成の処理液を用いた以外は、実施例1と同じ操作を繰り返した。
処理液A
スコッチガードFC−232 3%
(住友スリーエム製、撥水剤)
処理液B
スコッチガードFC−232 3%
(住友スリーエム製、撥水剤)
酸性リン酸メチルエステルナトリウム塩20%水溶液 1.5%
得られた加工布のL値を測定したところ、処理液Aを用いた加工布のそれは13.0であり、処理液Bを用いた加工布のそれは12.5であり、いずれも実施例1に比べ繊維の色の深みの改善効果が劣ることがわかった。結果を表1に示す。
【0045】
また、繊維表面を電子顕微鏡で観察したが、実施例1のような微細な凹凸は観られなかった。
【0046】
【表1】
【0047】
実施例2
ポリエステル100%からなるジョーゼット織物(目付150g/m2 )を試験に使用した。カヤロンポリエステルブラックFM−FSを繊維重量に対して15%の量で使用し、130℃で50分間染色し、常法により還元洗浄した後、乾燥し、170℃で30秒間セットした。
【0048】
次に、繊維の色の深みおよび鮮明性の改善のため、次の組成の樹脂加工用処理液を調製した。
3次元内部架橋カチオン性アクリル樹脂エマルジョン 3%
(合成例1のもの)
酸性リン酸ブチルエステルナトリウム塩20%水溶液 1%
エポキシシリコン柔軟剤 0.6%
(東芝シリコン製、TSF4751)
前記処理液を織物に含浸させた後、マングルでピックアップ70%に絞り、130℃で3分間乾燥した後、170℃で30秒間セットした。
【0049】
処理織物のL値(明度)を測定したところ、未加工品のL値13.5に対して加工後のそれは9.2であり、繊維の色の深みが著しく改善されていることが認められた。結果を表2に示す。
比較例5
下記組成の処理液を用いた以外は、実施例2の操作を繰り返した。
【0050】
3次元内部架橋カチオン性アクリル樹脂エマルジョン 3%
(合成例1のもの)
エポキシシリコン柔軟剤 0.6%
(東芝シリコン製、TSF4751)
得られた加工布のL値は10.2であり、実施例2に比べ繊維の色の深みの改善効果が劣ることが認められた。結果を表2に示す。
【0051】
上記より、実施例2の如く、酸性リン酸エステル塩を併用することが、色の深みを改善する効果を高めることがわかる。
比較例6
下記組成の処理液を用いた以外は、実施例2の操作を繰り返した。
3次元内部架橋カチオン性アクリル樹脂エマルジョン 3%
(合成例1のもの)
非イオン性帯電防止剤 1%
(日華化学製、ナイスポールFE26)
エポキシシリコン柔軟剤 0.6%
(東芝シリコン製、TSF4751)
得られた加工布のL値は11.2であり、実施例2に比べ繊維の色の深みの改善効果が大幅に劣ることが認められた。結果を表2に示す。
【0052】
これは、酸性リン酸エステル塩(アニオン性)に代えて非イオン性帯電防止剤を用いたため、加工剤の吸着性が低下したことによるものと思われる。
比較例7
下記組成の処理液を用いた以外は、実施例2の操作を繰り返した。
3次元内部架橋カチオン性アクリル樹脂 3%
(固形分20%、合成例1のもの)
カチオン性帯電防止剤 1%
(日華化学製、ナイスポールFL)
エポキシシリコン柔軟剤 0.6%
(東芝シリコン製、TSF4751)
得られた加工布のL値は11.4であり、実施例2に比べ繊維の色の深みの改善効果が大幅に劣ることが認められた。結果を表2に示す。
【0053】
これは、酸性リン酸エステル塩(アニオン性)に代えてカチオン性帯電防止剤を用いたため、加工剤の吸着性が低下したことによるものと思われる。
比較例8
実施例2に使用したのと同じ黒染め布を試験に用い、花王(株)製品のシュワット濃色化加工剤により、以下の手順で2段階処理した。
【0054】
下記の1段目処理液を織物に含浸させた後、マングルでピックアップ70%に絞り、130℃で3分間乾燥した後、170℃で30秒間セットした。
1段目処理液
シュワットA10(花王製、アニオン性) 6%
シュワットN20(花王製) 0.3%
次に、下記の2段目処理液を織物に含浸させた後、マングルでピックアップ70%に絞り、130℃で3分間乾燥した後、170℃で30秒間セットした。
【0055】
2段目処理液
シュワットTR420(花王製、カチオン性) 6%
帯電防止剤TA267(花王製、カチオン性) 1.5%
得られた加工布のL値は10.9であり、実施例2に比べ明度が1.7高く、繊維の色の深みの改善効果が劣ることが認められた。結果を表2に示す。
【0056】
比較例9
下記の組成、
シュワットTR420 6%
酸性リン酸ブチルエステルナトリウム塩20%水溶液 1%
の濃色化加工剤にアニオン帯電防止剤を併用したところ、短時間の間にエマルジョンが破壊されて沈殿し、加工することができなかった。
【0057】
これは、実施例2で用いたカチオン性アクリル樹脂エマルジョンはゼータ電位が21mvであるのに比べ、シュワットTR420はゼータ電位が40mvと高く、相溶性がないためと考えられる。
結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
実施例3
ポリエステル100%からなる短繊維の平織物(目付200g/m2 )を、赤色分散染料を用いて、鮮明な赤色に染色した。次に、下記の処理液を調製し、前記織物に含浸させた後、ピックアップ80%に絞り、130℃で3分間乾燥した後、170℃で30秒セットした。
【0060】
3次元内部架橋カチオン性アクリル樹脂エマルジョン 3.5%
(合成例1のもの)
酸性リン酸ブチルエステルナトリウム塩20%水溶液 1%
アミノシリコン柔軟剤 0.5%
(東レダウシリコン製、SM8709)
加工前後の織物の色相を測色した結果を表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
上記の結果、L値が低下したことから濃度が向上し、また平方根(a2 +b2 )の数値が大きくなったことから鮮明性が向上したことがわかる。
実施例4
ウール100%からなるツイル織物(目付180g/m2 )を反応染料で黒色に染色し、次に下記組成の処理液を調製した。
【0063】
3次元内部架橋カチオン性アクリル樹脂 3%
(合成例2のもの)
酸性リン酸ブチルエステルナトリウム塩20%水溶液 1%
メチルハイドロジェンポリシロキサン 0.5%
(日華化学製、ドライポン600)
上記処理液を黒色染色織物に含浸させ、ピックアップ100%に絞った。次いで、110℃で5分間乾燥させた後、150℃で20秒間セットした。
【0064】
加工前のL値13.2に対して加工後のそれは9.5であり、繊維の色の深みが著しく改善された。
実施例5
三菱レーヨンから市販されている商標名WAY(ポリエステルフィブリル化繊維)のパレス織物を使用し、カヤロンポリエステルブラックEX−SFを繊維重量に対して15%の量で用い、130℃で45分間染色した。次いで、常法により還元洗浄し、120℃で乾燥した後、160℃で30秒間セットした。
【0065】
次に、実施例4と同じ処理液を準備し、上記織物を同じ手順で加工した。
加工前のL値21.0に対して加工後のそれは18.0であり、繊維の色の深みが著しく改善された。
実施例6
実施例1で用いたと同じ黒色染色織物に、下記組成の処理液を含浸させた。
【0066】
3次元内部架橋カチオン性アクリル樹脂エマルジョン 3%
(合成例1のもの)
酸性リン酸ブチルエステルナトリウム塩20%水溶液 1%
メラミン樹脂 0.2%
(大日本インキ製、ベッカミンPMN 固形分70%)
メラミン用硬化触媒 0.02%
(住友化学製、スミテックスアクセレレーターX−80)
アミノシリコン柔軟剤 0.5%
(東レダウシリコン製、SM8709)
次いで、含浸織物をマングルでピックアップ70%に絞り、120℃で3分間乾燥した後、170℃で30秒間セットした。
【0067】
加工前のL値(明度)14.1に対して加工後のそれは11.7であり、実施例1と同様に、繊維の色の深みが著しく改善されることが認められた。
実施例7
下記組成の処理液を用いた以外は、実施例1と同じ操作を繰り返した。
3次元内部架橋カチオン性アクリル樹脂 3.5%
(合成例3のもの)
酸性リン酸メチルエステルナトリウム塩20%水溶液 1.5%
加工前のL値(明度)14.1に対して加工後のそれは10.2であり、実施例1で得られたものよりさらに黒い加工布が得られた。
Claims (6)
- 三次元内部架橋されたカチオン性アクリル樹脂エマルジョンと酸性リン酸エステル塩とを含有してなる繊維の色の深みおよび鮮明性を改善するための樹脂加工用組成物。
- 三次元内部架橋されたカチオン性アクリル樹脂の平均粒子径が100〜300nmであり、そのゼータ電位が+30mv以下であり、かつ、前記アクリル樹脂エマルジョンの乾燥皮膜の屈折率が1.5以下である、請求項1記載の組成物。
- 三次元内部架橋されたカチオン性アクリル樹脂が、二重結合を2個以上有する単量体を必須の構成成分とする樹脂である請求項1または2記載の組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂加工用組成物が適用された着色繊維材料。
- 三次元内部架橋されたカチオン性アクリル樹脂により形成された微細凹凸層を表面に有する請求項4記載の着色繊維材料。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂加工用組成物を繊維に含浸させることを特徴とする繊維の色の深みおよび鮮明性の改善方法。
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