JP3855885B2 - 電子写真機器用無端ベルトおよびその製法 - Google Patents

電子写真機器用無端ベルトおよびその製法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、フルカラー複写機,フルカラープリンター等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、感光体上のトナー像を写し取る中間転写体等に用いられる電子写真機器用無端ベルトおよびその製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、フルカラー複写機,フルカラープリンター等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、感光体上のトナー像を写し取る中間転写体等に用いられる無端ベルトは、一次転写ローラ、二次転写ローラ等の数本のローラに張架された状態で使用されるため、長期の使用によって徐々にベルトが伸びて、色ずれ(位置ずれ)等が発生する。また、上記無端ベルトは、ローラに張架された状態で走行されるため、走行中にベルトに割れやひび等が発生する。したがって、上記無端ベルトには、ベルトの伸びによる色ずれ(位置ずれ)等の発生防止や走行中のベルト割れ等の発生防止が要求される。そのため、上記無端ベルトとしては、高弾性率のポリウレタン材料が用いられており、例えば、ポリオールと、低分子量の芳香族アミンと、二官能基および三官能基を有する脂肪族イソシアネートを用いたポリウレタン材料を用いたベルト(特開2001−142311号)や、ポリエーテルウレア系エラストマー材を主剤とするポリウレタン材料を用いたベルト(特開2000−250328号)等が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に記載の手法は、常温でもウレタン化反応が進行するため、ポットライフが短い。そのため、材料リサイクルが不可能で、材料ロスが多くなり、不経済であるとともに加工性に劣るという難点がある。
【0004】
この発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ポットライフが長く、加工性に優れた電子写真機器用無端ベルトおよびその製法の提供をその目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、この発明は、表面が感光体に接するかもしくは近接した状態で駆動される電子写真機器用無端ベルトであって、多層ないし単層の構成層を備えた総厚み50〜250μmであり、その層の少なくとも層が、下記の必須成分(A)および(B)を用いて形成されていることを特徴とする電子写真機器用無端ベルトを第1の要旨とし、上記電子写真機器用無端ベルトの製法であって、上記(A)および(B)を必須成分とする材料を遠心成形型に注型して成型した後、脱型する工程を有する電子写真機器用無端ベルトの製法を第2の要旨とする。
(A)ポリイソシアネート化合物の末端イソシアネート基の少なくとも一部を、ブロック剤にてブロックしてなるブロックイソシアネート。
(B)分子構造中にアミノ基を少なくとも2個有するアミン化合物。
【0006】
すなわち、この発明者らは、ポットライフが長く、加工性に優れた電子写真機器用無端ベルトを得るべく、鋭意研究を重ねた。その結果、ポリイソシアネート化合物の末端イソシアネート基の少なくとも一部を、ブロック剤にてブロックしてなるブロックイソシアネートと、分子構造中にアミノ基を少なくとも2個有するアミン化合物とを併用すると、常温では不活性となりウレタン化反応が進行しないため、ポットライフが長くなり、加工性がより良好となることを見いだし、この発明に到達した。
【0007】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
【0008】
この発明の電子写真機器用無端ベルトは、表面が感光体に接するかもしくは近接した状態で駆動される電子写真機器用無端ベルトであって、多層ないし単層の構成層を備え、その層の少なくとも層が、上記特定の材料を用いて形成されている。
【0009】
上記構成層の少なくとも層を形成する特定の材料(層用材料)としては、特定のブロックイソシアネート(A成分)と、分子構造中にアミノ基を少なくとも2個有するアミン化合物(B成分)とが必須成分として用いられる。
【0010】
上記特定のブロックイソシアネート(A成分)は、ポリイソシアネート化合物の末端イソシアネート基の少なくとも一部を、ブロック剤にてブロックしたイソシアネートである。
【0011】
この発明において、上記ポリイソシアネート化合物とは、通常のポリイソシアネートの他、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなるイソシアネート(NCO)プレポリマー(以下、単に「プレポリマー」と称する)をも含む趣旨である。したがって、上記特定のブロックイソシアネート(A成分)も、ブロック対象となるポリイソシアネート化合物の種類に応じて、下記の2種類のブロックイソシアネートに大別される。具体的には、ポリイソシアネート化合物がポリイソシアネートである場合、このポリイソシアネートの末端イソシアネート基の少なくとも一部を、ブロック剤にてブロックしてなる第1のブロックイソシアネートと、ポリイソシアネート化合物がプレポリマーである場合、このプレポリマーの末端イソシアネート基の少なくとも一部を、ブロック剤にてブロックしてなる第2のブロックイソシアネートに大別される。
【0012】
上記ポリイソシアネートとしては、特に限定はないが、より高弾性率が得られる点から、芳香族系ポリイソシアネートが好ましい。上記芳香族系ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、トリレンジイソシアネート(TDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)等や、これらイソシアネートのビュレットタイプ、イソシアヌレートタイプ、トリメチロールプロパン変性タイプ、カルボジイミド変性タイプ等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0013】
上記第1のブロックイソシアネートは、例えば、ポリイソシアネートに対して、ブロック剤を所定量配合し、窒素雰囲気下、所定の条件(例えば、50℃×2時間)で反応させて、ポリイソシアネートの末端イソシアネート基の少なくとも一部をブロック剤にてブロックすることにより作製することができる。また、上記ブロックイソシアネートは、ポリイソシアネートをジメチルホルムアミド(DMF)等の溶剤に溶解した後、このイソシアネート溶液に対してブロック剤を所定量配合し、窒素雰囲気下、所定の条件(例えば、50℃×2時間)で反応させることにより作製することも可能である。
【0014】
上記ブロック剤は、活性水素化合物であれば特に限定はなく、例えば、メチルエチルケトンオキシム(MEKO),ブタノンオキシム,ホルムアミドオキシム,アセトアミドオキシム,アセトンオキシム,メチルイソブチルケトンオキシム,メチルアミルケトンオキシム,ジアセチルモノオキシム,ベンゾフェノンオキシム,シクロヘキサノンオキシム,メチルヘキサノンオキシム等のケトオキシム誘導体、ε−カプロラクタム,δ−カプロラクタム,β−ブチロラクタム,β−プロピオラクタム等のラクタム誘導体、フェノール,クレゾール,キシレノール,エチルフェノール,ノニルフェノール,イソプロピルフェノール,p−tert−ブチルフェノール,チモール,p−ニトロフェノール,p−ナフトール,p−クロロフェノール,p−tert−オクチルフェノール等のフェノール誘導体、アセト酢酸エチル,マロン酸ジエチル,アロト酢酸メチル,アセト酢酸メチル,マロン酸ジメチル,アセチルアセトン等の活性メチレン誘導体、メタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノール,2−エチルヘキサノール等のアルコール誘導体、ブチルメルカプタン,t−ドデシルメルカプタン,チオフェノール等のメルカプタン誘導体、アセトアニリド,アセトアニラド,酢酸アミド,アクリルアミド,ベンズアミド等の酸アミド誘導体、コハク酸イミド,マレイン酸イミド等のイミド誘導体、2−フェニルイミダゾリン,イミダゾール,ピラゾール,トリアゾール等のイミダゾール誘導体、尿素,チオ尿素,エチレン尿素,ジフェニル尿素等の尿素誘導体、N−フェニルカルバミン酸フェニル,2−オキサゾリドン等のカルバミン酸塩誘導体等をあげることができる。これらのなかでも、液安定性および反応性の点から、メチルエチルケトンオキシム(MEKO)が好適に用いられる。なお、ポットライフの調節は、末端イソシアネート基に対する、ブロック剤の当量比を適宜調節することにより行うことができる。
【0015】
上記第2のブロックイソシアネートは、例えば、ポリイソシアネートに、あらかじめ所定の条件(例えば、80℃で1時間)で真空脱泡脱水したポリオールを配合し、窒素雰囲気下、所定の条件(例えば、80℃で3時間)で反応させることにより、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを作製した後、このプレポリマーに対し、メチルエチルケトンオキシム(MEKO)等のブロック剤を配合し、窒素雰囲気下、所定の条件(例えば、50℃×2時間)で反応を行い、プレポリマーの末端イソシアネート基の少なくとも一部をブロック剤にてブロックすることにより作製することができる。また、上記第2のブロックイソシアネートは、上記ポリイソシアネートに、あらかじめ所定の条件(例えば、80℃で1時間)で真空脱泡脱水したポリオールを配合し、窒素雰囲気下、所定の条件(例えば、80℃で3時間)で反応を行い、これをジメチルホルムアミド(DMF)等の溶剤に溶解させて、末端にイソシアネート基を有するプレポリマー溶液を作製した後、このプレポリマー溶液に対し、メチルエチルケトンオキシム(MEKO)等のブロック剤を配合し、窒素雰囲気下、所定の条件(例えば、50℃×2時間)で反応を行い、プレポリマーの末端イソシアネート基の少なくとも一部をブロック剤にてブロックすることにより作製することも可能である。このように、ポリイソシアネート化合物にプレポリマーを用いた場合は、ポリマー成分の粘度が高くなり、液だれ等が抑制できるため、より加工性が向上する。
【0016】
上記プレポリマーの作製に用いるポリオールとしては、特に限定はないが、ポリエステルポリオールが好ましく、例えば、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、PEAとPBAの共重合体、ポリイソブチレンアジペート等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0017】
なお、この発明において、末端イソシアネート基とは、通常、ポリイソシアネート化合物の片末端もしくは両末端にあるイソシアネート基をいうが、ポリイソシアネート化合物の分子鎖の末端にあるイソシアネート基をも含む意味である。
【0018】
上記特定のブロックイソシアネート(A成分)としては、ポリイソシアネート化合物の末端イソシアネート基の少なくとも一部が、ブロック剤にてブロックしてなるものであれば特に限定はないが、ポットライフがより長くなり、加工性がより良好となる点から、末端イソシアネート基の全部がブロックされたブロックイソシアネートが好適に用いられる。
【0019】
上記特定のブロックイソシアネート(A成分)とともに用いられるアミン化合物(B成分)は、分子構造中にアミノ基(−NH2 )を少なくとも2個有するものであれば特に限定はないが、より高弾性率が得られる点から、芳香族系アミン化合物が好ましい。上記芳香族系アミン化合物としては、例えば、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、2,2′,3,3′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン(TCDAM)、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジエチル−5,5′−ジメチルジフェニルメタン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0020】
上記アミン化合物(B成分)の配合割合は、アミン化合物のアミノ基のモル量に対する上記ブロックイソシアネート(A成分)の有効イソシアネート基量(ブロック剤が全て解離した時のイソシアネート基のモル量)のモル比〔イソシアネート基/アミノ基〕が0.7〜1.5の範囲内になるように配合することが好ましく、特に好ましくは1.0〜1.2の範囲内である。すなわち、モル比〔イソシアネート基/アミノ基〕が0.7未満であると、分子量が大きくならずにクリープ特性が悪化する傾向がみられ、逆に1.5を超えると、未反応のイソシアネート基が多く残るために、物性の経時変化が大きくなる傾向がみられるからである。
【0021】
この発明においては、上記ブロックイソシアネート(A成分)およびアミン化合物(B成分)とともに、ポリオールを用いることも可能である。上記ポリオールとしては、特に限定はなく、例えば、前記プレポリマーの作製に用いたポリオールと同様のものがあげられる。
【0022】
なお、上記層用材料には、上記A成分およびB成分に加えて、必要に応じて、導電剤、鎖延長剤、架橋剤、帯電防止剤等を含有させてもよい。
【0023】
上記導電剤としては、アルミニウム粉末,ステンレス粉末等の金属粉末、c−ZnO,c−TiO2 ,c−Fe3 4 ,c−SnO2 等の導電性金属酸化物、グラファイト,カーボンブラック等の導電性粉末、第四級アンモニウム塩,リン酸エステル,スルホン酸塩,脂肪族多価アルコール,脂肪族アルコールサルフェート塩等のイオン性導電剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なお、上記「c−」とは、導電性を有するという意味である。
【0024】
この発明の電子写真機器用無端ベルトは、例えばつぎのようにして作製することができる。すなわち、まず、ポリオールと、特定のアミン化合物(B成分)とを所定の割合で配合し、所定の条件(好ましくは、150℃で1時間)で加熱した後、トリメチロールプロパン(TMP)等の架橋剤を配合し、減圧下で攪拌しながら、所定の条件(好ましくは、80℃で20分間)で脱泡脱水する。これにブロックイソシアネート(A成分)である第1のブロックイソシアネートを加え、攪拌羽根で混合した後、必要に応じて、カーボンブラック等の導電剤を混練し、所定温度(好ましくは、180℃)に予熱した遠心成形型に注型して成型し、ついで脱型することにより、図1に示したような単層構造の無端ベルトを作製することができる。なお、上記第1のブロックイソシアネートに代えて、プレポリマーの末端イソシアネート基をブロックしてなる第2のブロックイソシアネートを用いる場合も、上記製法に準じて作製することができる。
【0025】
この発明の電子写真機器用無端ベルトの製法は、上記方法に限定されるものではなく、例えば、スプレーコーティング法、多層押出成形法、インフレーション法、ディッピング法等の方法により作製しても差し支えない。
【0026】
この発明の電子写真機器用無端ベルトは、前記図1に示した単層構造のものに限定されるものではなく、2層以上の多層構造であっても差し支えない。ただし、無端ベルトを構成する構成層の少なくとも層は、上記A〜B成分を必須成分とする材料を用いて形成する必要がある。なお、上記構成層の最外層(単層構造の場合はその層)の外周面に、トナー離型性に優れた現像剤担持層を形成しても差し支えない。
【0027】
このようにして得られるこの発明の電子写真機器用無端ベルトの総厚みは、50〜250μmであり、好ましくは100〜200μmである。また、この発明の電子写真機器用無端ベルトは、内周長が200〜600mmで、幅が250〜500mm程度のものが好ましい。このような寸法であると、電子写真複写機等に組み込んで用いるのに適当な大きさとなるからである。
【0028】
なお、この発明の電子写真機器用無端ベルトは、主としてフルカラー複写機,フルカラープリンター等の中間転写体として用いられるが、フルカラーではない単色の電子写真複写機等の中間転写体として用いることもできる。
【0029】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0030】
まず、実施例および比較例に先立って、下記に示す材料を準備した。
【0031】
〔ブロックイソシアネート(1)
イソホロンジイソシアネート(IPDI)のヌレート変性体の末端イソシアネート基の全部を、メチルエチルケトンオキシム(MEKO)でブロックしてなるブロックイソシアネート(住化バイエルウレタン社製、デスモジュールBL4265SN、固形分含量:65重量%)
【0032】
〔ブロックイソシアネート(2)
クルードMDIの末端イソシアネート基の全部を、メチルエチルケトンオキシム(MEKO)でブロックしてなるブロックイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、コロネート2516、固形分含量:80重量%)
【0033】
〔ブロックイソシアネート(3)
クルードMDIとPPGとを反応させたプレポリマーの、末端イソシアネート基の全部を、メチルエチルケトンオキシム(MEKO)でブロックしてなるブロックイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、コロネート2521、固形分含量:65重量%)
【0034】
【実施例1】
PEAとPBAの共重合体(日本ポリウレタン工業社製、ニッポラン141、OH価:108KOHmg/g)100重量部(以下「部」と略す)に、2,2′,3,3′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン(TCDAM)50部を配合し、150℃で1時間加熱した後、トリメチロールプロパン10部を配合し、減圧下で攪拌しながら、80℃で20分間脱泡脱水した。これにブロックイソシアネート(1) 257部を加え、攪拌羽根で混合した後、カーボンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル社製、ケッチェンブラックEC)5部を混練し、180℃に予熱した遠心成形型に注型して成型し、ついで脱型することにより、厚み150μmの単層構造の無端ベルト(図1参照)を作製した。
【0035】
【実施例2】
ブロックイソシアネート(1) 257部に代えて、ブロックイソシアネート(2) 144部を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、無端ベルトを作製した。
【0036】
【実施例3】
ブロックイソシアネート(3) 100部と、メチルエチルケトン(MEK)17部と、エチレンジアミン3部を配合し、80℃で1時間攪拌羽根で混合した後、カーボンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル社製、ケッチェンブラックEC)5部を混練し、180℃に予熱した遠心成形型に注型して成型し、ついで脱型することにより、厚み150μmの単層構造の無端ベルトを作製した。
【0037】
【実施例4】
エチレンジアミン3部に代えて、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジエチル−5,5′−ジメチルジフェニルメタン(イハラケミカル工業社製、キュアハードMD)15部を用いた。それ以外は、実施例3と同様にして、無端ベルトを作製した。
【0038】
【実施例5】
エチレンジアミン3部に代えて、2,2′,3,3′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン(TCDAM)17部を用いた。それ以外は、実施例3と同様にして、無端ベルトを作製した。
【0039】
【実施例6】
ブロックイソシアネート(3) 100部と、メチルエチルケトン(MEK)17部と、2,2′,3,3′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン(TCDAM)17部を配合し、80℃で1時間攪拌羽根で混合した後、導電剤であるホウ酸カリウム塩(日本カーリット社製、LR147)2部を混練し、180℃に予熱した遠心成形型に注型して成型し、ついで脱型することにより、厚み150μmの単層構造の無端ベルトを作製した。
【0040】
【実施例7】
PEAとPBAの共重合体(日本ポリウレタン工業社製、ニッポラン141、OH価:108KOHmg/g)100部に、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン(イハラケミカル工業社製、イハラキュアミンMT)39部を配合し、150℃で1時間加熱した後、トリメチロールプロパン10部を配合し、減圧下で攪拌しながら、80℃で20分間脱泡脱水した。これにブロックイソシアネート(1) 257部を加え、攪拌羽根で混合した後、カーボンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル社製、ケッチェンブラックEC)5部を混練し、180℃に予熱した遠心成形型に注型して成型し、ついで脱型することにより、厚み150μmの単層構造の無端ベルトを作製した。
【0041】
【実施例8】
ブロックイソシアネート(1) 257部に代えて、ブロックイソシアネート(2) 144部を用いた。それ以外は、実施例7と同様にして、無端ベルトを作製した。
【0042】
【実施例9】
ブロックイソシアネート(3) 100部と、メチルエチルケトン(MEK)17部と、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン(イハラケミカル工業社製、イハラキュアミンMT)13部を配合し、80℃で1時間攪拌羽根で混合した後、カーボンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル社製、ケッチェンブラックEC)5部を混練し、180℃に予熱した遠心成形型に注型して成型し、ついで脱型することにより、厚み150μmの単層構造の無端ベルトを作製した。
【0043】
【実施例10】
ブロックイソシアネート(3) 100部と、メチルエチルケトン(MEK)17部と、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン(イハラケミカル工業社製、イハラキュアミンMT)13部を配合し、80℃で1時間攪拌羽根で混合した後、導電剤であるホウ酸カリウム塩(日本カーリット社製、LR147)2部を混練し、180℃に予熱した遠心成形型に注型して成型し、ついで脱型することにより、厚み150μmの単層構造の無端ベルトを作製した。
【0044】
【実施例11】
〔ブロックイソシアネート(4) の作製〕
イソホロンジイソシアネート(IPDI)のヌレート変性体(住化バイエルウレタン社製、デスモジュールZ4470MPA/X、固形分含量:70重量%)100部に、メチルエチルケトンオキシム(MEKO)16部を配合し、窒素雰囲気下、50℃で2時間反応させることにより、末端イソシアネート基の一部が、ブロック剤にてブロックされたブロックイソシアネートを作製した。
【0045】
〔無端ベルトの作製〕
PEAとPBAの共重合体(日本ポリウレタン工業社製、ニッポラン141、OH価:108KOHmg/g)100部に、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジエチル−5,5′−ジメチルジフェニルメタン(イハラケミカル工業社製、キュアハードMD)50部を配合し、150℃で1時間加熱した後、トリメチロールプロパン10部を配合し、減圧下で攪拌しながら、80℃で20分間脱泡脱水した。これにブロックイソシアネート(4) 217部を加え、攪拌羽根で混合した後、カーボンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル社製、ケッチェンブラックEC)5部を混練し、180℃に予熱した遠心成形型に注型して成型し、ついで脱型することにより、厚み150μmの単層構造の無端ベルトを作製した。
【0046】
【比較例】
ブロックイソシアネート(4) に代えて、イソホロンジイソシアネート(IPDI)のヌレート変性体(住化バイエルウレタン社製、デスモジュールZ4470MPA/X、固形分含量:70重量%)187部を用いた。それ以外は、実施例11と同様にして、無端ベルトを作製した。
【0047】
このようにして得られた実施例品および比較例品を用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表1および表2に併せて示した。
【0048】
〔ポットライフ〕
上記層形成用材料(ウレタン材料)を混合した後、流動性がなくなるまでの時間を測定した。
【0049】
〔引張弾性率〕
JIS K 7127に準じて、引張弾性率(MPa)を測定した。なお、引張速度は、毎分10±2.0mmとした。
【0050】
〔ベルト性能〕
得られた無端ベルトを市販のフルカラー電子写真複写機に組み込み、80g/m2 紙によるハーフトーン、カラー画像の出力を行い、初期画出し評価を行った。評価は、色ずれ、色抜け、むら等の画像不良がなく、良好な画像が得られたものを○、色ずれ、色抜け、むら等の画像不良が発生したものを×とした。
【0051】
【表1】
Figure 0003855885
【0052】
【表2】
Figure 0003855885
【0053】
上記結果から、実施例品は全て、ブロックイソシアネートを用いているため、ポットライフが長く、加工性に優れることがわかる。
【0054】
これに対して、比較例品は、ブロック化していないイソシアネートを用いているため、硬化反応が速く生起し、ポットライフが短いことがわかる。また、未反応成形残査の再利用ができず、成形途中で粘度が上昇してしまうため、加工性に劣る。
【0055】
【発明の効果】
以上のように、この発明の電子写真機器用無端ベルトは、構成層の少なくとも層が、ポリイソシアネート化合物の末端イソシアネート基の少なくとも一部を、ブロック剤にてブロックしてなるブロックイソシアネート(A成分)および分子構造中にアミノ基を少なくとも2個有するアミン化合物(B成分)を用いて形成されている。そのため、常温では不活性となりウレタン化反応が進行しないため、ポットライフが長くなり、加工性がより良好となるという優れた効果を奏する。また、上記特定のブロックイソシアネート(A成分)と、特定のアミン化合物(B成分)とを反応させて得られるウレタンは、分子構造中にウレア結合(−NHCONH−)を有するため、高弾性率が得られるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の電子写真機器用無端ベルトの一例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 無端ベルト

Claims (4)

  1. 表面が感光体に接するかもしくは近接した状態で駆動される電子写真機器用無端ベルトであって、多層ないし単層の構成層を備えた総厚み50〜250μmであり、その層の少なくとも層が、下記の必須成分(A)および(B)を用いて形成されていることを特徴とする電子写真機器用無端ベルト。
    (A)ポリイソシアネート化合物の末端イソシアネート基の少なくとも一部を、ブロック剤にてブロックしてなるブロックイソシアネート。
    (B)分子構造中にアミノ基を少なくとも2個有するアミン化合物。
  2. 上記層の少なくとも基層が、上記(A)および(B)とともに導電剤を用いて形成されている請求項1記載の電子写真機器用無端ベルト。
  3. 上記(B)のアミン化合物が、エチレンジアミン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、2,2′,3,3′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン(TCDAM)および4,4′−ジアミノ−3,3′−ジエチル−5,5′−ジメチルジフェニルメタンからなる群から選ばれた少なくとも一つである請求項1または2記載の電子写真機器用無端ベルト。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真機器用無端ベルトの製法であって、上記(A)および(B)を必須成分とする材料を遠心成形型に注型して成型した後、脱型する工程を有することを特徴とする電子写真機器用無端ベルトの製法。
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