JP3855736B2 - 電子写真用ローラ及び該電子写真用ローラを備える画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真プロセスを利用した電子写真装置に利用し得る電子写真用ローラ及び該電子写真用ローラを備える画像形成装置に関する。ここで、本発明における電子写真用ローラとは、例えば、帯電ローラ、転写ローラ、中間転写方式に用いられる1次転写ローラ及び2次転写ローラ等の導電性乃至半導電性ローラであって、像担持体としての感光体又は中間転写体に接触し、ニップを形成するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真プロセスとしては、特公昭42−23910号公報等に記載されているように多数の方法が知られている。一般的には、光導電性物質を利用した感光体(潜像保持体)表面に、種々の手段により電気的に潜像を形成し、形成された潜像を、トナーを用いて現像しトナー画像を形成した後、感光体表面のトナー画像を、中間転写体を介して若しくは介さずに、用紙等の転写材表面に転写し、この転写画像を加熱、加圧若しくは加熱加圧あるいは溶剤蒸気等により定着する、という複数の工程を経て、定着画像が形成される。感光体表面に残ったトナーは、必要に応じて種々の方法によりクリーニングされ、再び上記の複数の工程に供される。
【0003】
上記電子写真プロセスにより画像を形成する画像形成装置には、典型的に、オゾンの発生が非常に少ない接触帯電方式及び接触転写方式が採用されている。かかる接触帯電方式及び接触転写方式においては、耐磨耗性や転写部における転写材の搬送性に優れたローラ状の部材が好適に使用されている。
【0004】
上記のローラ状の部材としては、一般的に、ステンレス(SUS)や鉄等の芯金上に、カーボン、イオン導電性剤等により、その表面抵抗値を1×105〜1×1012の範囲で調節した半導電性の弾性層を設けた電子写真用ローラ(半導電性ローラ)が用いられる。かかる電子写真用ローラは、弾性層を有するため、像担持体である感光体や中間転写体に対して確実にニップを形成することができる。
【0005】
上記電子写真用ローラは、弾性層を形成するゴム内には、ベースポリマーを合成する際に投入する反応開始剤の残留物やその際に生成する副生成物、ベースポリマーの低分子成分、ゴムローラ成型時に添加する加硫剤や軟化剤、可塑剤等の成分が含まれる。これらの成分は、感光体や中間転写体と反応しやすいものが多く、長時間、電子写真用ローラと、感光体又は中間転写体と、を圧接した状態で放置すると、上記の成分が弾性層より滲出して感光体や中間転写体に付着し、反応して感光体や中間転写体の表面物性を改質してしまうという問題がある。
【0006】
この問題を解決するために、電子写真用ローラの弾性層の表面に、弾性層に含有する成分が滲出するのを防止するためにバリア層となり得る物質をコーティングすることが考えられるが、これにより電子写真用ローラは複数層構造となるため、材料費が増加することや製造工程が複雑になるためにコストが高くなるという問題を有していた。
【0007】
また、電子写真用ローラの弾性層は、ゴム材料にカーボンや金属酸化物、あるいはイオン導電剤を機械的に混合分散して抵抗を調整する。従って、電気抵抗値にムラを生じ易かったり、イオン導電剤を用いる場合においては高温高湿環境下でイオン導電剤が表面に析出する現象、所謂、ブリードが発生し、感光体や中間転写体を汚染してしまうという問題を生じる場合もあった。
【0008】
一方、近年、電子写真プロセスを用いた画像形成装置においては、静粛性が求められるようになってきている。特に、電子写真用ローラの1種である帯電ローラに直流バイアスに高周波の交流バイアスを重畳印加した場合に、該帯電ローラから生じる、所謂、帯電音は不快な耳触りの音であり、かかる帯電音の低減が大きな技術課題となっている。
【0009】
この帯電音を低減させるための一つの方法として、帯電ローラと接触する感光体の内部に重りをいれ、帯電ローラからの高周波の振動伝達を防止する方法が提案されているが、重りとなる部材と、それを感光体の内部に固定する、例えば、接着工程が新たに必要となり、コストアップは免れない。また、帯電音を低減するための他の方法として帯電ローラに発泡層を設け、振動を吸収する手法も採用されているが、発泡層を形成する材料はゴム材料であるため、上述したように、接触する感光体に悪影響を及ぼす問題から逃れることはできなかった。
【0010】
更に、プリントやコピーなどの印刷物の単価の低減(所謂、ランニングコスト低減)のために、感光体の長寿命化が求められている。しかし、上述したように、帯電ローラに直流バイアスに高周波の交流バイアスを重畳印加する場合には、感光体と帯電ローラ間の微少ギャップで生じる放電により、感光体表面が削られる、所謂、エッチング現象が発生し易いという問題を有していた。
【0011】
帯電音及び感光体のエッチング現象を低減する方法として、帯電ローラに直流バイアスのみを印加する、所謂、DC帯電が提案されている。かかるDC帯電によって帯電ローラを均一に帯電させるには、今まで以上に帯電ローラの抵抗均一性や表面平滑性が求められる。しかし、上述したように、帯電ローラは、その表面に汚れが付着することにより抵抗の均一性が保てなくなり易いという問題を有しているため、根本的な問題の解決にはならなかった。
【0012】
また、帯電音及び感光体のエッチング現象を低減する他の方法として、注入帯電なる新たな像担持体表面の帯電技術が提案され、一部の商品に採用されている。かかる技術は、印加した直流バイアス値がそのまま感光体表面の電位とすることが可能であるため、交流バイアスの印加は理論的には必要ない。
【0013】
しかしながら、前記注入帯電技術は、金属スリーブ内部の磁石により金属スリーブ外周に磁性体粉末を保持する、所謂、磁気ブラシ帯電部材と、電荷注入層を備えた感光体と、の組み合わせを必要とする技術であって、磁気ブラシ及び電荷注入層を備えた感光体は何れも高価であるという短所を有していた。
【0014】
また、前記注入帯電技術では、磁気ブラシを、電荷注入層を備えた感光体よりも高速で回転させ、電荷注入の機会を増加させる必要がある。このため、磁気ブラシと感光体の両者の間には、ギヤやベルト等の駆動伝達機構が新たに必要とされている。更には、磁性体としての金属粉末で、感光体表面を摺擦し続けるため、感光体表面のエッチング現象が発生することは勿論であるが、時には、電荷注入層を貫通するほどの傷をつけてしまう可能性も潜んでいる。
【0015】
更に、金属スリーブ外周の磁性体粉末にトナーや紙粉が付着し、電気抵抗値が変化することに伴い、電荷注入能力が低下する問題や、金属スリーブ外周の磁性体粉末が脱落し電荷注入密度が低下したり、脱落した磁性体が画像上(用紙上)にまで到達し、画像不良を起こす問題も発生する場合がある。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、上述の従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、簡易かつ低コストで、帯電音及び像担持体のエッチング現象を低減することが可能である電子写真用ローラ及び該電子写真用ローラを備える画像形成装置を提供することである。また、本発明の他の目的は、抵抗均一性及び表面平滑性が良好である電子写真用ローラ及び該電子写真用ローラを備える画像形成装置を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述した電子写真用ローラの抱える問題を根本から解決することの可能な電子写真用ローラの構造を見出し、本発明に至った。
上記目的は、以下の本発明により達成される。すなわち本発明は、
【0018】
<1> 外層と、該外層の内周面全体に内接するように設けられた導電性層と、からなる変形可能な円筒形基体と、前記円筒形基体を回転支持するシャフトと、前記円筒形基体の内部容積を満たさない程度に封入される導電性粉体と、を備えてなることを特徴とする電子写真用ローラである。
【0019】
<2> 前記導電性層の電気抵抗値が、107Ωcm以下であることを特徴とする<1>に記載の電子写真用ローラである。
【0020】
<3> 前記導電性層のヤング率が、50N/mm2以上であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の電子写真用ローラである。
【0021】
<4> 前記導電性層の厚みが、10〜500μmの範囲にあることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の電子写真用ローラである。
【0022】
<5> 前記導電性層が、シームレスチューブ又はフィルムから形成されていることを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載の電子写真用ローラである。
【0023】
<6> 前記導電性粉体全体の電気抵抗値が、10-8〜108Ωcmの範囲にあることを特徴とする<1>〜<5>のいずれかに記載の電子写真用ローラである。
【0024】
<7> 前記導電性粉体が複数の種類の粉体からなる混合物であり、各種類毎の粉体の電気抵抗値が10-8〜1017Ωcmの範囲にあることを特徴とする<1>〜<6>のいずれかに記載の電子写真用ローラである。
【0025】
<8> 前記導電性粉体の数平均粒子径が、10-5μm〜1mmの範囲にあることを特徴とする<1>〜<7>のいずれかに記載の電子写真用ローラである。
【0026】
<9> 像担持体と、該像担持体に接触しその表面を帯電する帯電手段と、を備える画像形成装置であって、前記帯電手段が<1>〜<8>のいずれかに記載の電子写真用ローラであることを特徴とする画像形成装置である。
【0027】
<10> 前記帯電手段は、直流電圧に交流電圧を重畳してなるバイアス、又は、直流電圧によるバイアスを印加する手段であることを特徴とする<9>に記載の画像形成装置である。
【0028】
<11> 前記像担持体と、<1>〜<8>のいずれかに記載の電子写真用ローラと、の間に周速差があることを特徴とする<9>又は<10>に記載の画像形成装置である。
【0029】
<12> 像担持体と、該像担持体に接触しその表面のトナー像を転写材に転写する転写手段と、を備える画像形成装置であって、前記転写手段が<1>〜<8>のいずれかに記載の電子写真用ローラであることを特徴とする画像形成装置である。
【0030】
<13> 前記像担持体と、<1>〜<8>のいずれかに記載の電子写真用ローラと、の間に周速差があることを特徴とする<12>に記載の画像形成装置である。
【0031】
<14> 像担持体と、該像担持体の表面のトナー像を中間転写体に転写する1次転写手段と、前記中間転写体上のトナー像を転写材に転写する2次転写手段と、を備える画像形成装置であって、前記1次転写手段及び/又は前記2次転写手段が、<1>〜<8>のいずれかに記載の電子写真用ローラであることを特徴とする画像形成装置である。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照し、本発明の電子写真用ローラ及び該電子写真用ローラを備える画像形成装置について説明する。
【0033】
<電子写真用ローラ>
図1及び図2を参照して、以下、本発明の電子写真用ローラについて詳細に説明する。ここで、図1は、本発明の電子写真用ローラ100の構造を説明するための側面断面図である。図2は、図1に示す本発明の電子写真用ローラ100のA−A断面図である。
【0034】
図1に示すように、電子写真用ローラ100は、金属製シャフト110と、外層122及び導電性層124からなる円筒形基体120と、導電性粉体130と、フランジ部140と、を備える。
【0035】
金属製シャフト110は、例えば、SUS、SUM等からなり、円筒形基体120を貫くように配され、後述のフランジ部140を介して円筒形基体120を回転自在に支持する。従って、金属製シャフト110は、電子写真用ローラ100の回転軸として機能する。また、金属製シャフト110には、図示されない外部電源が接続され、所望のバイアスが印加される。
【0036】
円筒形基体120は、外層122と導電性層124とからなり、封入される導電性粉体130の自重や移動に応じて、自由に変形可能なものである。
【0037】
外層122は、封入される導電性粉体130の自重や移動に応じて、自由に変形可能なものが用いられる。
外層122を構成するバインダー材料としては、例えば、ブリード防止の表面処理を施した天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、エピクロルヒドリンゴム(EPM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソブチレン・イソプレンゴム(IIR)、フッ素ゴム等のゴム類;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ナイロン、エチレン酢酸ビニル、エチレンエチルアクリレート、エチレンアクリル酸メチル、スチレンブタジエン、ポリアリレート、ポリカーボネート、テフロン(R)、シリコン等の樹脂材料;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレンビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等を挙げることができる。更に、ポリメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、パラフィンワックス、カルナバワックス等が用いられるが、特にこれらに限定されない。
【0038】
上記バインダー材料は、単体で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよく、更に、共重合体又は変性体を用いてもよい。
上記バインダー材料としては、像担持体及び中間転写体に対して汚染等の悪影響を与えないためにも、低分子量成分や可塑剤等が表面に析出、所謂ブリードするような成分を含まないもの、又は、ブリード防止の処理を施されたもの、から選択されることが好ましい。
【0039】
外層122は、上記バインダー材料を用い、押し出し成形法や共押し出し成形法、射出成形法や、プレス形成法、インジェクションブロー、真空成形法等によって作製される。また、市販のシームレスチューブを用いてもよい。
【0040】
また、外層122は、上記各種バインダー材料に、導電性材料を混入することで表面抵抗値が所定の範囲、例えば、104〜1010Ω/□に調整される。
外層122は、積層構造を有してもよく、各層が同じ材料で形成されていてもよいし、それぞれ異なった材料で形成されていてもよい。その際にも、電気抵抗を上記所定の範囲とすることが好ましい。
外層122の厚みは、上記バインダー材料からなる層の硬度により任意に調整されるものであり、その硬度は特に制限されるものではない。
【0041】
また、外層122は、上記各種バインダー材料に、磁性体を混入することで磁性を有するように形成されてもよい。
用いられる磁性体としては、例えば、ストロンチウム、バリウム、希土類等の所謂ハードフェライト;マグネタイト、銅、亜鉛、ニッケル及びマンガン等のフェライト、又はこれらの表面を必要に応じ導電処理したもの;等が好ましく、上記各種の磁性体を単体で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
導電性層124は、前記外層122の内周面全体に内接するように設けられており、外層122の変形に追従可能なものが用いられる。
【0043】
導電性層124の電気抵抗値は、107Ωcm以下であることが好ましく、104Ωcm以下であることがより好ましい。電気抵抗値が前記上限値よりも大きいと、導電性層124としての働きが小さい、つまり、該導電性層124内で電圧降下を起こすため、外層122へと通電する電流量が不足する場合がある。
ここで、本発明において、導電性層124の電気抵抗値は、三菱油化社製ハイレスターUP(型番:MCP−HT450)により測定した、体積抵抗値である。
【0044】
導電性層124のヤング率は、50N/mm2以上であることが好ましく、100N/mm2以上であることがより好ましい。このように導電性層124のヤング率が上記の50N/mm2以上である場合、導電性粉体130の移動により発生する振動が効率よく円筒形基体120に伝達するので、電子写真用ローラの表面に付着するトナーや外添剤、紙粉等のゴミを振るい落とす効果をもたらすことができる。一方、ヤング率が50N/mm2より小さい場合には、導電性粉体130の移動により発生する振動が導電性層124に吸収されてしまい、ゴミを振るい落とす効果を発現することが困難となる場合がある。一方、上限値としては、導電性層124が外層122の変形に追従可能な程度、つまり、50000N/mm2以下であることが好ましい。
【0045】
導電性層124の厚みは、10〜500μmの範囲であることが好ましく、50〜200μmの範囲であることがより好ましい。導電性層124の厚みが10μmより小さいと、導電性粉体130の移動により発生する振動が外層122に効率よく伝わりにくい場合がある。一方、導電性層124の厚みが500μmより大きいと、外層122の硬度に影響を及ぼし、円筒形基体120全体としての硬度が高くなってしまう場合がある。
【0046】
導電性層124としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、チタン、鉄等の金属箔や、導電性樹脂フィルム及び導電性樹脂チューブ、導電性ゴムフィルム及び導電性ゴムチューブなどを挙げることができるが、これらは、単体で用いてもよいし、2種以上を積層して用いてもよい。
また、導電性層124は、バインダー材料と導電性材料から構成されてもよい。バインダー材料としては、例えば、上記の外層122に用いたものと同様のバインダー材料を用いることができる。また、導電性材料としては、例えば、カーボン、鉄、錫、銅、銀等の粉体を用いることができる。
【0047】
導電性層124は、図3(a)に示されるように、シームレスチューブ124aから形成されていてもよいし、図3(b)に示されるように、フィルム124bから形成されていてもよい。更には、共押し出し成形機を用いて、多層押し出しや、多層インジェクションなどの手段を用いることにより、外層122と導電性層124とを1度に成形してもよい。ここで、図3は導電性層124の外層122への取り付け方法の一例を示した概略斜視図である。
【0048】
図3(a)に示されるように、導電性層124がシームレスチューブ124aから形成される場合には、円筒形基体120の内周部との間に隙間ができないように、円筒形基体120の内径に応じた外径を有するシームレスチューブ124aを作製又は選択し、そのシームレスチューブ124aを円筒形基体120に挿入することで、取り付けが完了する。
シームレスチューブ124aは、上記の材料を、押し出し成形法、射出成形法、プレス成形法、インジェクションブロー、真空形成法等を用いることにより作製される。また、市販のものを用いてもよい。
【0049】
図3(b)に示されるように、導電性層124がフィルム124bから形成される場合には、少なくとも、円筒形基体120の内周部を覆う程度の面積を有するフィルム124bを作製又は選択し、そのフィルム124bを筒状に巻いて円筒形基体120に挿入することで、フィルム124bの復元力により円筒形基体120の内周部との間に隙間ができないような外径に拡径して、取り付けが完了する。
フィルム124bは、上記の材料を、押し出し成形法、射出成形法、塗布法、カレンダーロール法等を用いることにより作製される。また、市販のものを用いてもよい。
【0050】
また、導電性層124は、蒸着法、塗布法、内部スプレー法、内部ディッピング法などの方法で取りつけられてもよい。
【0051】
導電性層124は、積層構造を有してもよく、各層が同じ材料で形成されていてもよいし、それぞれ異なった材料で形成されていてもよい。
【0052】
導電性層124は、後述する導電性粉体130が外層122の内周面に吸着して形成される層であってもよい。導電性粉体130が吸着されてなる層は、導電性粉体130が微少粒子であり、外層122を構成する材料が多少の粘着性を有しているような条件の場合に形成される。この場合、上述したような導電性層124a及び124bを設けることを省くことができる。但し、外層122を構成する材料が粘着性を有する場合には、処理剤やコーティングを用いることにより、外層122の外周面側の粘着性を抑える処理を施しておくことは言うまでもない。
【0053】
導電性粉体130は、図2に示すように、円筒形基体120の内部容積を完全に満たさない程度に封入される。
導電性粉体130の充填率としては、50〜95%の範囲であることが好ましく、70〜90%の範囲であることがより好ましい。充填率が50%より少ない場合、導電性粉体130が金属製シャフト110に接触しないためにバイアスが導電性粉体へと流れ込むことができない場合があるという問題や、環境変化に伴って収縮及び膨張を起こす空気層が多いために円筒形基体120の形状に影響を及ぼしてしまう場合があるという問題を有している。一方、充填率が95%より多い場合、導電性粉体130の流動性が低下するために、ニップ形成の自由度が低下するという問題を有している。
【0054】
ここで、本発明における充填率とは、予め、金属製シャフト110の容積分を除いた容積に対する充填率100%の導電性粉体130の質量を測定し、その質量を基に算出する。充填率100%の場合の導電性粉体130の質量は、実際に使用される金属製シャフト110の容積分を除いた円筒形基体120と同じ容積である容器に、導電性粉体130を完全に充填して、その質量の増加量を測定することで求められる。従って、例えば、充填率100%の場合の導電性粉体130の質量が10gである場合、円筒形基体120に封入された導電性粉体130が8gであれば、充填率は80%となる。
【0055】
導電性粉体130は、少なくともその自重によって円筒形基体120の形状を変形させることができる。導電性粉体130は、その自重によって円筒形基体120の下方に集まることから、円筒形基体120は変形する。従って、かかる変形を利用することで、電子写真用ローラ100を、例えば、像担持体に接触させると、該像担持体の形状に沿って円筒形基体120が変形し、ニップを形成することができる。また、電子写真用ローラ100の回転と共に、封入された導電性粉体130が移動し、常に一定の荷重により像担持体に接触することから、均一のニップを長期間に渡り保持することができる。
また、導電性粉体130の充填率や電子写真用ローラ100の押し当て量等の条件を変化させることによって、所望のニップ幅、ニップ圧を調整することができる。
【0056】
導電性粉体130全体としての電気抵抗値は、10-8〜108Ωcmの範囲であることが好ましく、10-5〜106Ωcmの範囲であることがより好ましく、更に、10-3〜104Ωcmの範囲であることが特に好ましい。電気抵抗値が前記下限値よりも小さい場合、電子写真用ローラ100としての表面抵抗値が得られない場合がある。一方、電気抵抗値が前記上限値よりも大きい場合は、金属製シャフト110と円筒形基体120とを十分に導通させることが困難となる。
【0057】
導電性粉体130は、1種の粉体から構成されていてもよいし、2種以上の粉体から構成される混合物であってもよい。導電性粉体130が混合物である場合に、その混合物を構成する粉体の各種類毎の電気抵抗値は1×10-8〜1×1017の範囲のものを使用することができる。その際、上述のように、導電性粉体130全体としての電気抵抗値が上記範囲に調整されていることがより好ましい。
【0058】
導電性粉体130に使用し得る粉体としては、例えば、磁性粉、すず、鉄、銅等の金属粉体や樹脂との混合物;金属繊維;酸化亜鉛、酸化すず、酸化チタン等の金属酸化物;硫化銅、硫化亜鉛等の金属硫化物;カーボンブラック、グラファイト等の炭素粉;ストロンチウム、バリウム、希土類等の所謂ハードフェライト;マグネタイト、銅、亜鉛、ニッケル及びマンガン等のフェライト、又はこれらの表面を必要に応じ導電処理したもの;銅、鉄、マンガン、ニッケル、亜鉛、コバルト、バリウム、アルミニウム、錫、リチウム、マグネシウム、シリコン等の異なる金属元素を含んだ酸化物、水酸化物、炭酸塩又は金属化合物;高温中で焼成して得られる金属酸化物の固溶体、所謂、複合金属酸化物;等の導電性粉体が挙げられる。また、セラミック粒子、ガラスビーズ、ラテックス粒子、天然石、粉砕石、砂等の絶縁性粉体を用いてもよい。これらの粉体は、好ましくは、上述のように導電性粉体130全体としての電気抵抗値の条件を満たすように、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いても構わない。
【0059】
本発明において、導電性粉体130を構成する粉体の電気抵抗値は、以下のようにして測定する。
天面と底面が金属製で、胴部が絶縁体により構成される円筒形状ホルダー(天面及び底面が共に10mmφ、高さ10mm)に、測定試料としての粉体を充填し、98kPa(10kg/cm2)の圧力で圧縮しつつ、100Vの電圧を印加し、その際に流れる電流値を測定し、電気抵抗値を算出した。
また、導電性粉体130が1種類の粉体から構成されているならば、導電性粉体130全体としての電気抵抗値は、その1種の粉体単独の電気抵抗値がそのまま導電性粉体130全体としての電気抵抗値となる。一方、導電性粉体130が複数の種類の粉体から構成されているならば、導電性粉体130全体としての電気抵抗値は、それら粉体の混合物を十分に攪拌した後に、上記と同様の測定法で求められたものが、導電性粉体130全体としての電気抵抗値となる。
【0060】
また、導電性粉体130の数平均粒子径は10-5μm〜1mmの範囲であることが好ましく、5〜300μmの範囲であることがより好ましく、更に、40〜70μmの範囲であることが特に好ましい。数平均粒子径が前記下限値よりも小さい場合、粉体の流動性が悪くなり場合があり、数平均粒子径が前記上限値よりも大きい場合は、粒子間の接点が少なくなり、導通回路が不足するため、電子写真用ローラ100表面の導電性に斑が発生してしまう場合がある。
【0061】
更に、導電性粉体130には、磁性粉が含有されていてもよい。磁性粉が含有されている場合、粉体の磁性を利用することで電子写真用ローラ100の配置を様々に設定することができる。例えば、磁性を利用して、電子写真用ローラ100を像担持体に対して下(反重力方向)から接触させてニップを形成してもよい。
【0062】
より詳細には、磁性を利用してニップを形成する場合、像担持体の内周部に、球状マグネット等の磁力発生部材(磁界形成手段)を配し、導電性粉体を引き寄せる磁界を形成し、かつ、導電性粉体130に磁性粉が含有されていれば、導電性粉体130は磁界発生部材に引き寄せられて、重力方向とは無関係に移動し、円筒形基体120を変形させて、像担持体との間にニップを形成することができる。この際、上述のように、円筒形基体120自身も磁性を有していれば、その表面の磁性は一定に保たれ、電子写真用ローラ100の回転に伴う導電性粉体130の移動もより均一になり、その結果、本発明の電子写真用ローラ100と像担持体との間に形成されるニップが長期間、均一に保持される。
【0063】
前記磁界形成手段としては、像担持体の内周部の電子写真用ローラ100に対向する位置に配されたマグネット等の磁力発生部材から構成されてもよいし、像担持体の内周面全体に張り巡らされた磁性を有するフィルム等から構成されてもよい。また、像担持体の基体そのものが鉄などの磁性を有する材料で形成されて、磁界形成手段として機能してもよい。
【0064】
フランジ部140は、円筒形基体120の両端に設けられ、封入された導電性粉体130が外部に漏れないように封止する部材である。フランジ部140を形成する材料としては、特に限定はされないが、円筒形基体120の変形に応じて変形するような弾性体であることが好ましい。前記弾性体としては、スポンジ、ゴム、熱可塑性エラストマー等を用いることができるが、この中でもスキン層を有するスポンジが好適に用いられる。
【0065】
フランジ部140としてスキン層を有するスポンジを使用する場合には、スキン層を導電性粉体130と接触するように円筒形基体120の内部に向けて設置することで、導電性粉体130の漏洩を完全に防止することができる。
【0066】
このように、本発明の電子写真用ローラ100は、導電性粉体130が電子写真用ローラ100表面への通電量を支配し、その環境変動を起こすことがないため、定電流制御や環境制御を必要とせず、画像形成装置を製造する際のコスト低減に大きく貢献することができる。特に、電子写真用ローラ100は、円筒形基体120が外層122の内周部に導電性層124を設けてなる構造を有するため、金属製シャフト110に印加されたバイアスが導電性粉体130を介して円筒形基体120に通電する際に、その通電量が位置を問わず均一化され、接触してニップを形成する像担持体に対し均一なバイアスの供給を行うことができる。また、本発明の電子写真用ローラ100の外周面は、通電量が位置を問わず均一化されているため、像担持体に対して円筒形基体120をどのような方向から押し当てても、像担持体に対し均一なバイアスの供給を行うことができる。
【0067】
また、本発明の電子写真用ローラ100は、ニップを形成するために感光体に対して印加される圧力を低減することができるため、従来の電子写真用ローラに求められてきた形状安定性やたわみを防ぐための剛性を必要としない。従って、シャフトの小径化及びそれに伴う電子写真用ローラ100自体の小型化を達成することができる。
【0068】
更に、本発明の電子写真用ローラ100は、導電性粉体130を変形可能な円筒形基体120に、内部容積を満たさない程度に導電性粉体130が封入される構造を有するため、導電性粉体130は円筒形基体120の回転と共に移動し、円筒形基体120の内壁に衝突することから、円筒形基体120の表面に付着したトナーや紙粉などの汚れを振るい落とすことができ、良好な表面平滑性を維持することが可能となる。
【0069】
以上説明してきた本発明の電子写真用ローラは、それぞれ求められる電気特性や表面特性等を適宜調整することで、帯電ローラ、転写ローラ(後述する1次、2次の双方も含む)等に好適に用いることができる。
【0070】
上述したように、本発明の電子写真用ローラは、構造が複雑ではないため、従来の帯電ローラや転写ローラなどよりもより簡便に製造することができる。従って、本発明の電子写真用ローラは、大きなコスト低減を可能とし、該電子写真用ローラを有する画像形成装置のコスト低減をも達成することができる。
【0071】
<画像形成装置>
以下、本発明の電子写真用ローラを備える画像形成装置(本発明の画像形成装置)の一例を示すが、本発明はこれに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部のみを説明し、その他はその説明を省略する。
【0072】
図4は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。図4に示す画像形成装置は、矢印B方向に回転する感光体(像担持体)51と、その周囲に配される、感光体51表面を所定の電位に帯電させる帯電ローラ(帯電手段)52、帯電された感光体51表面を画像信号に基づくレーザ光線53よって露光して静電潜像を形成する露光装置(露光手段)56、帯電されたトナー(現像剤)を供給して前記静電潜像を現像する現像装置(現像手段)54、現像されたトナー像を記録紙(転写材)P上に転写する転写ローラ(転写手段)55、及び、転写後の感光体51表面に残留するトナーを除去するクリーニングユニット57が順に配設されている。ここで、図4に示す画像形成装置には、帯電ローラ52として、上述の本発明の電子写真用ローラが用いられており、該電子写真用ローラの各構成要素は、図2と同一の符号が付されている。
【0073】
まず、感光体51はその表面を帯電ローラ52によって−600V〜−800V程度の電位に帯電される。感光体51は、導電性の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗であるが、露光装置56からレーザ光線53が照射されると、レーザ光線53が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体51の表面に、図示しない制御部から送られてくる画像データに従って、露光装置56を介してレーザ光線53を出力する。レーザ光線53は、感光体51の表面の感光層に照射され、それにより、印字パターンの静電潜像が感光体51の表面に形成される。
【0074】
このようにして感光体51表面に形成された静電潜像は、感光体51の矢印B方向への回転により所定の現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体51上の静電潜像が、現像装置54によって可視像(トナー像)化される。
【0075】
感光体51の表面が現像装置54を通過することにより、感光体51表面の除電された潜像部にのみトナーが静電的に付着し、潜像がトナーによって現像される。感光体51は、引続き矢印B方向に回転し、感光体51表面に現像されたトナー像が所定の転写位置へ搬送される。
【0076】
感光体51表面のトナー像が転写位置へ搬送されると、転写ローラ55に所定の転写バイアスが印加され、感光体51から転写ローラ55に向う静電気力がトナー像に作用し、感光体51表面のトナー像が記録紙P上へ転写される。また、感光体51表面の残留トナーは、クリーニングユニット57により除去される。
【0077】
図4に示す画像形成装置によれば、帯電ローラ52として本発明の電子写真用ローラを用いているため、直流バイアスに高周波の交流バイアスを重畳したバイアスが印加されても、内部に封入された導電性粉体130がその粉体としての特性により振動の伝達を防止することから、帯電音を小さくすることができる。
【0078】
また、上述のように、本発明の電子写真用ローラは、円筒形基体120の表面に付着したトナーや紙粉などの汚れを振るい落とすことができるため、表面平滑性が高く、更に、抵抗均一性が優れている。そのため、帯電ローラ52として本発明の電子写真用ローラを用いることにより、直流バイアスのみを印加するDC帯電を可能とし、感光体表面に発生するエッチング現象を大幅に低減することができる。その結果、ランニングコストの低減をも図ることができる。
【0079】
次に、本発明の画像形成装置の他の一例を示す。
図5は、4連タンデム方式のフルカラー画像形成装置(本発明の画像形成装置)を示す概略構成図である。図5に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1〜第4の画像形成ステーション10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ステーション(以下、単にステーションと称する)10Y、10M、10C、10Kは、略水平方向に互いに所定距離離間して並設されている。
【0080】
各ステーション10Y、10M、10C、10Kの上方には、各ステーションを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、横方向に互いに離間して配置された駆動ローラ22及び支持ローラ24に巻回されて張架され、第1ステーション10Yから第4ステーション10Kに向う方向に無端走行されるようになっている。なお、支持ローラ24は、図示しないいバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に付勢されており、両者の間に張架された中間転写ベルト20に所定のテンションが与えられている。また、中間転写ベルト20の像担持側面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
【0081】
上述した第1〜第4ステーション10Y、10M、10C、10Kは、略同一の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1ステーション10Yについて代表して説明する。なお、第1ステーション10Yと同一の機能を有する部材に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した同一参照符号を付すことにより、第2〜第4ステーション10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0082】
第1ステーション10Yは、像担持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの回転方向に順に、感光体1Yの表面を所定の電位に帯電させる帯電ローラ(帯電手段)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電潜像を形成する露光装置3、帯電したトナー(現像剤)を供給して前記静電潜像を現像する現像装置4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ(1次転写手段)5Y、及び、1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置6Yが配設されている。なお、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部(制御手段)による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
【0083】
以下、第1ステーション10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600V〜−800V程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3によりレーザ光線3Yが出力される。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電潜像が感光体1Yの表面に形成される。
【0084】
静電潜像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
【0085】
このようにして感光体1Y上に形成された静電潜像は、感光体1Yの回転により所定の現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電潜像が、現像装置4Yによって可視像(トナー像)化される。
【0086】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロー着色剤とワックスと結着樹脂と脂肪族炭化水素−炭素数9以上の芳香族炭化水素共重合石油樹脂にて形成された体積平均粒子径が7μmのイエロートナーが収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y表面の帯電荷と同極性(−)の電荷を有している。感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面の除電された潜像部にのみイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。感光体1Yは、引続き回転し、感光体1Y表面に現像されたトナー像が所定の1次転写位置へ搬送される。
【0087】
感光体1Y表面のイエロートナー像が1次転写位置へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに所定の1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向う静電気力がトナー像に作用し、感光体1Y表面のトナー像が中間転写ベルト20表面に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ステーション10Yでは制御部(図示せず)によって+10μA程度に定電流制御されている。
【0088】
また、第2ステーション10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも同様に制御されている。
こうして、第1ステーション10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2〜第4ステーション10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が同様に重ねられて多重転写される。
【0089】
第1〜第4ステーションを通して全ての色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、矢印C方向に周動搬送され、中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像担持面側に配置される2次転写ローラ(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録紙(転写材)Pが、供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20との間に所定のタイミングで給紙され、所定の2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性(−)であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー像に作用し、中間転写ベルト20表面のトナー像が記録紙P表面に転写される。なお、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、定電圧で制御されている。
【0090】
その後、記録紙Pは定着装置28へと送り込まれトナー像が加熱・加圧され、色重ねされたトナー像が溶融されて、記録紙P表面へ永久定着される。カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて矢印D方向に搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0091】
図5に示す画像形成装置において、図4に示す画像形成装置と同様に、帯電ローラ2Y、2M、2C、2Kとして、上述した本発明の電子写真用ローラを好適に用いることもできるが、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5K、及び/又は、2次転写ローラ26としても本発明の電子写真用ローラを用いることができる。なお、転写ローラ26として使用する場合には、その構造上、導電性粉体130の自重によるニップの形成が困難であるため、磁性粉を導電性粉体130に含有させ、かつ、支持ローラ24の内部には磁界形成手段を設け、磁性の特性を用いてニップを形成させることが好ましい。
【0092】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明はその要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。例えば、本発明の電子写真用ローラは、静電記録プロセスや磁気記録プロセス等を有する画像形成装置に用いることもできる。
【0093】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0094】
[実施例1]
(電子写真用ローラR−1の作製)
外層を形成するシームレスチューブとして、スチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブッロクコポリマー(SEBC)(製品名:DYNARON 4600P、日本合成ゴム社製)100質量部に、導電性カーボン(製品名:ケッチェンブラックEC、ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製)13質量部と、導電性酸化チタン(製品名:ET−500W、石原産業社製)20質量部と、充填剤5質量部と、分散助剤1質量部と、表面改質剤0.5質量部とを添加し、ドライブレンドした後、加圧ニーダーを用いて200℃で10分間、十分に混練した。
【0095】
加圧ニーダーより取り出した混練物を粉砕したのち、2軸押し出し成形機を用いてペレット化した。得られたペレットを、クロスヘッドを備えた単軸押し出し成形機を用い外径14mmφで肉厚300μmのシームレスチューブを作製した。
得られたシームレスチューブの体積抵抗値は2×106Ωcmであり、その外周面の表面平滑性は十点平均粗さRzにおいて0.8μmであった。
【0096】
そして、得られたシームレスチューブを長さ230mmに切断し、その内周に、縦220mm、横84mm、厚さ25μmの導電性ポリエチレンフィルムを2重巻きにして挿入し、厚み50μmの導電性層を形成した。使用した導電性ポリエチレンフィルムは、体積抵抗値5×102Ωcm、ヤング率120N/mm2であった。
【0097】
次いで、導電性ポリエチレンフィルムを内接したシームレスチューブの一端に、孔径6mmφの穴が中心に空いたフランジ部材を接着剤を用いて固定し、その中心の穴に6mmφ、長さ340mmの金属シャフトを通し接着剤を用いて固定した。
【0098】
そして、導電性ポリエチレンフィルムを内接したシームレスチューブの固定されていない方向から、導電性粒子として磁性粉と樹脂との球状複合体粒子(MRC、戸田工業社製)をシームレスチューブの容積の2/3に相当する量だけ(充填率67%)充填し、先ほどとは逆のシームレスチューブの開口している端部を、前記と同様に中心に穴の空いたフランジ部材を接着剤を用いて固定し電子写真用ローラR−1を作製した。
なお、上記MRCとは、Magnetic Particle & Resin Composite Carrierの略称であり、その電気抵抗値は1×105Ωcmであり、数平均粒子径は60μmのものをここでは用いている。
【0099】
(評価)
(1)帯電音の評価
得られた電子写真用ローラR−1をカラーレーザープリンタ(富士ゼロックス社製Docu Print C620)の帯電部材として取り付け、筒状の像担持体表面にセットし無響室(35db以下)で帯電音の測定を行った。ここでの印加バイアスは直流電圧−700Vに交流電圧2000Vppを重畳印加し、交流電圧の周波数を500〜2000Hzまで変化させた。なお、かかる実験では、カラーレーザープリンタの帯電部材のみを稼動させて行った。
【0100】
その結果、いずれの周波数の場合でも帯電音は50dB以下であった。通常、画像形成装置の稼動音は52〜55dBであるため、本発明の電子写真用ローラから発生する帯電音は実用上の問題にはならなかった。
【0101】
(2)表面汚れ性及び像担持体のエッチング現象の評価
得られた電子写真用ローラR−1を、カラーレーザープリンタ(富士ゼロックス社製Docu Print C620)の帯電部材として取り付け、下記に示す各環境下で100000枚の画出しテストに供した。なお、ここでの印加バイアスは直流電圧−1300Vを用いた。
【0102】
その結果、高温/高湿環境(温度28℃、湿度85%RH)、低温/低湿環境(温度10℃、湿度15%RH)、標準環境(温度22℃、湿度55%RH)の何れの環境下においても、初期と100000枚目の画像には全く問題が無く、帯電部材の表面に傷やピンホール等の異常は全く観察されなかった。また、電子写真用ローラR−1の外周面への汚れ(トナー、紙粉等)の付着も殆ど認められなかった。テスト中、シームレスチューブとその中に挿入した導電性ポリエチレンフィルムとの密着性にも、何ら問題は無かった。
更に、本テストにおいて、感光体の電荷輸送層の削れ量は、低温/低湿環境(温度10℃、湿度15%RH)の下で平均3μmであった。
【0103】
(3)帯電性の評価
得られた電子写真用ローラR−1を、カラーレーザープリンタ(富士ゼロックス社製Docu Print C620)の帯電部材として取り付け、電子写真用ローラR−1によって帯電された感光体の表面電位を長手方向に20mmの間隔で測定した。測定結果による感光体の表面電位の均一性を、帯電性の評価指標とした。なお、ここでの印加バイアスは直流電圧−1300Vを用いた。
その結果を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1に示されるように、感光体の表面電位が最大差で10Vであるため、本発明の電子写真用ローラR−1は、感光体の表面電位の均一性を良好にするという効果を有していた。
【0106】
[実施例2]
(電子写真用ローラR−2の作製)
軟化剤及び可塑剤を低減させ、かつ、エポキシ系処理剤にてブリード防止の処理を施したエピクロルヒドリンチューブ(外径14mmφ、肉厚500μm)を、長さ230mmに切断し、その内周に、導電性ナイロン11樹脂に導電性カーボンを混練した後、押し出し成形機を用いて作製した外径13mmφ、長さ230mmの導電性ナイロンチューブを挿入し、導電性層を形成した。作製した導電性ナイロンチューブは、体積抵抗値7×102Ωcm、厚み50μm、ヤング率600N/mm2であった。
【0107】
その後、実施例1と同様にして、シームレスチューブの一端に、孔径6mmφの穴が中心に空いたフランジ部材を接着剤を用いて固定し、その中心の穴に6mmφ、長さ340mmの金属シャフトを通し接着剤を用いて固定した。
【0108】
そして、シームレスチューブの固定されていない方向から、フェライト系キャリア/DFC(同和鉄粉工業社製)をシームレスチューブの容積の3/4に相当する量だけ(充填率75%)充填し、電子写真用ローラR−2を作製した。なお、前述のフェライト系キャリア/DFCの電気抵抗値は1×106Ωcmであり、数平均粒子径は45μmのものをここでは用いている。
【0109】
(評価)
(1)帯電音の評価
得られた電子写真用ローラR−2について実施例1と同様の方法及び条件で帯電音の測定を行った。
その結果、いずれの周波数の場合でも帯電音は50dB以下であり、帯電音としては実用上の問題にはならない程度であった。
【0110】
(2)表面汚れ性及び像担持体のエッチング現象の評価
得られた電子写真用ローラR−2を、カラーレーザープリンタ(富士ゼロックス社製Docu Print C620)の帯電部材として取り付け、更に、電子写真用ローラR−2の回転軸に5°の傾斜がつくように前記カラーレーザープリンタを傾け、下記に示す各環境下で100000枚の画出しテストに供した。なお、ここでの印加バイアスは直流電圧−1300Vを用いた。
【0111】
その結果、高温/高湿環境(温度28℃、湿度85%RH)、低温/低湿環境(温度10℃、湿度15%RH)、標準環境(温度22℃、湿度55%RH)のいずれの環境下においても初期と100000枚目の画像には全く問題が無く、帯電部材の表面に傷やピンホール等の異常は全く観察されなかった。また、電子写真用ローラR−2の外周面への汚れ(トナー、紙粉等)の付着も殆ど認められなかった。ここで、テスト中、シームレスチューブとその中に挿入した導電性ポリエチレンフィルムとの密着性にも、何ら問題は無かった。
更に、本テストにおいて、感光体の感光層の削れ量は、低温/低湿環境(温度10℃、湿度15%RH)の下で平均1μmであった。
【0112】
(3)帯電性の評価
得られた電子写真用ローラR−1を、カラーレーザープリンタ(富士ゼロックス社製Docu Print C620)の帯電部材として取り付け、電子写真用ローラR−1によって帯電された感光体の表面電位を長手方向に20mmの間隔で測定した。測定結果による感光体の表面電位の均一性を、帯電性の評価指標とした。なお、ここでの印加バイアスは直流電圧−1300Vを用いた。
その結果を上記表1に併記する。表1に示されるように、感光体の表面電位が最大差で8Vであるため、本発明の電子写真用ローラR−2は、感光体の表面電位の均一性を良好にするという効果を有していた。
【0113】
[比較例1]
実施例1において、導電性層を設けなかった他は、実施例1と同様にして電子写真用ローラR−3を作製し、その評価を行った。
その結果、高温/高湿環境(温度28℃、湿度85%RH)、低温/低湿環境(温度10℃、湿度15%RH)、標準環境(温度22℃、湿度55%RH)のいずれの環境下においても初期と100000枚目の画像には全く問題が無く、帯電部材の表面に傷やピンホール等の異常は全く観察されなかった。また、電子写真用ローラR−3の外周面への汚れ(トナー、紙粉等)の付着は殆ど認められなかった。
更に、帯電性の評価においては、上記表1に示されるように、感光体の表面電位が最大差で59Vであり、電位差が大きいために、画像上の濃度差、濃度ムラが目立つ場合があった。
【0114】
[比較例2]
実施例2において、導電性層を設けなかった他は、実施例2と同様にして電子写真用ローラR−4を作製し、その評価を行った。
その結果、高温/高湿環境(温度28℃、湿度85%RH)、低温/低湿環境(温度10℃、湿度15%RH)、標準環境(温度22℃、湿度55%RH)のいずれの環境下においても初期と100000枚目の画像には全く問題が無く、帯電部材の表面に傷やピンホール等の異常は全く観察されなかった。また、電子写真用ローラR−3の外周面への汚れ(トナー、紙粉等)の付着は殆ど認められなかった。
更に、帯電性の評価においては、上記表1に示されるように、感光体の表面電位が最大差で51Vであり、電位差が大きいために、画像上の濃度差、濃度ムラが目立つ場合があった。
【0115】
【発明の効果】
本発明によれば、簡易かつ低コストで、帯電音及び像担持体のエッチング現象を低減することが可能である電子写真用ローラ及び該電子写真用ローラを備える画像形成装置を提供することができる。また、抵抗均一性及び表面平滑性が良好である電子写真用ローラ及び該電子写真用ローラを備える画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の電子写真用ローラの構造を説明するための側面断面図である。
【図2】 図1に示す本発明の電子写真用ローラのA−A断面図である。
【図3】 導電性層の外層への取り付け方法の一例を示した概略斜視図である。
【図4】 本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図5】 4連タンデム方式のフルカラー画像形成装置(本発明の画像形成装置)を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1Y、1M、1C、1K 、51 感光体(像担持体)
2Y、2M、2C、2K 、52 帯電ローラ(帯電手段)
3Y、3M、3C、3K 、53 レーザ光線
3、56 露光装置
4Y、4M、4C、4K 、54 現像装置
5Y、5M、5C、5K 1次転写ローラ(1次転写手段)
6Y、6M、6C、6K 、57 感光体クリーニング装置
10Y、10M、10C、10K ステーション
20 中間転写ベルト(中間転写体)
22 駆動ローラ
24 支持ローラ
26 2次転写ローラ(2次転写手段)
28 定着装置
30 中間転写体クリーニング装置
55 転写ローラ(転写手段)
100 電子写真用ローラ
110 金属製シャフト
120 円筒形基体
122 外層
124 導電性層
130 導電性粉体
140 フランジ部
160 外部電源
P 記録紙(転写材)
Claims (14)
- 外層と、該外層の内周面全体に内接するように設けられた導電性層と、からなる変形可能な円筒形基体と、
前記円筒形基体を回転支持するシャフトと、
前記円筒形基体の内部容積を満たさない程度に封入される導電性粉体と、
を備えてなることを特徴とする電子写真用ローラ。 - 前記導電性層の電気抵抗値が、107Ωcm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用ローラ。
- 前記導電性層のヤング率が、50N/mm2以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真用ローラ。
- 前記導電性層の厚みが、10〜500μmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真用ローラ。
- 前記導電性層が、シームレスチューブ又はフィルムから形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用ローラ。
- 前記導電性粉体全体の電気抵抗値が、10-8〜108Ωcmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真用ローラ。
- 前記導電性粉体が複数の種類の粉体からなる混合物であり、各種類毎の粉体の電気抵抗値が10-8〜1017Ωcmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電子写真用ローラ。
- 前記導電性粉体の数平均粒子径が、10-5μm〜1mmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電子写真用ローラ。
- 像担持体と、該像担持体に接触しその表面を帯電する帯電手段と、を備える画像形成装置であって、
前記帯電手段が請求項1〜8のいずれかに記載の電子写真用ローラであることを特徴とする画像形成装置。 - 前記帯電手段は、直流電圧に交流電圧を重畳してなるバイアス、又は、直流電圧によるバイアスを印加する手段であることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
- 前記像担持体と、請求項1〜8のいずれかに記載の電子写真用ローラと、の間に周速差があることを特徴とする請求項9又は10に記載の画像形成装置。
- 像担持体と、該像担持体に接触しその表面のトナー像を転写材に転写する転写手段と、を備える画像形成装置であって、
前記転写手段が請求項1〜8のいずれかに記載の電子写真用ローラであることを特徴とする画像形成装置。 - 前記像担持体と、請求項1〜8のいずれかに記載の電子写真用ローラと、の間に周速差があることを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
- 像担持体と、該像担持体の表面のトナー像を中間転写体に転写する1次転写手段と、前記中間転写体上のトナー像を転写材に転写する2次転写手段と、を備える画像形成装置であって、
前記1次転写手段及び/又は前記2次転写手段が、請求項1〜8のいずれかに記載の電子写真用ローラであることを特徴とする画像形成装置。
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