JP3855243B2 - 医用挿入補助具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医用挿入補助具に関する。さらに詳しくは、本発明は、シースとダイレータからなり、血管内への挿入抵抗が小さい医用挿入補助具に関する。
【0002】
【従来の技術】
カテーテルを用いる診断及び治療が普及し、X線透視下に心臓にカテーテルを進め、心内圧測定と血液の採取を行う心臓カテーテル法、脳血管、腹部血管、末梢血管の造影診断法、心腔及び大血管内異物、動脈管開存症、異常血管、弁狭窄症に対する治療法などとして広く行われている。カテーテルを経皮的に血管の目的位置まで進めるためには、まず医用挿入補助具を血管に挿入する必要がある。
医用挿入補助具の血管への挿入は、あらかじめ血管内に挿入したガイドワイヤに、シースにダイレータを挿通して遠位端を突出した状態の医用挿入補助具のダイレータを嵌装し、ガイドワイヤに沿って医用挿入補助具を血管の目的位置まで進める。この際、医用挿入補助具の先端が生体組織に衝突すると、挿入の抵抗が増し、患者に不快感や苦痛を与えるばかりでなく、生体組織を傷つけるおそれがある。
医用挿入補助具の血管内への挿入時の抵抗を減少するために、従来より種々の形状の医用挿入補助具が提案されている。例えば、ダイレータの遠位端部がやじり形状をしたもの(実公平6−39723号公報、特開平6−178814号公報)、遠位端部が先細り部と先太り部とを有するもの(実開平6−44553号公報)、遠位端部にくびれを設けたもの(特開平7−246241号公報)などが知られている。これらは、いずれも、遠位端を可能な限り鋭角のテーパ形状とすることによって、またシースの遠位端をやじり形状部分などの背後に隠してダイレータとシースの外径に段差が生じないようにし、挿入時にシースの遠位端が衝突するときの抵抗を低減することをねらっているものである。しかし、実際には、挿入補助具を挿入する際には、挿入補助具に力が加わり曲がる。ダイレータの曲がりに対しシースの曲がりが追従できないので、シースの遠位端がダイレータの外壁から離れて外径に段差を生じ、期待したほど挿入抵抗は低減しなかった。
本発明者らは、先にダイレータの膨らみ部分の遠位端から近位端方向に向かって縮径する部分に、シースの遠位端を密着させ得る医用挿入補助具を提案し(特開平6−335531号公報)、生体組織への挿入時の抵抗の大幅な減少を達成したが、さらに一層円滑に挿入することができる医用挿入補助具が求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、生体組織へ挿入時の抵抗が小さく、患者に不快感や疼痛を与えることがなく、生体組織を傷つけるおそれがない医用挿入補助具を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、医用挿入補助具の挿入抵抗の増加は、曲げたときのシースとダイレータとの段差によるものであるため、その段差が生じない構造とし、且つ、ダイレータの先端部が曲がりにくいものとすることにより、挿入抵抗を著しく減少させ得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)ルーメンを有する管形状のシース、該シースの近位端に接続されシースのルーメンと連通する中空部を有するシースハブ、ルーメンを有する管形状のダイレータ及び該ダイレータの近位端に接続されダイレータのルーメンと連通する中空部を有するダイレータハブを有し、ダイレータが、ダイレータの遠位端から近位端方向に向かって、しだいに拡径する第一拡径部分、第一拡径部分よりも緩やかにしだいに拡径する第二拡径部分、しだいに縮径する縮径部分及び外径がほぼ一定の寸胴部分からなり、ダイレータの縮径部分と寸胴部分の境界における外径は寸胴部分の外径に等しく、ダイレータがシースのルーメン内に挿入されてダイレータハブとシースハブが嵌合された状態で、シースの遠位端の内壁がダイレータの縮径部分の外壁に密着していることを特徴とする医用挿入補助具、及び、
(2)ダイレータの縮径部分の両端の外径の差が0 . 03〜0 . 07mmである第 ( 1 ) 項に記載の医用挿入補助具、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の医用挿入補助具の一態様のシース部の断面図である。シース部は、近位端から遠位端に通じるルーメン1を有する管形状のシース2と、シースの近位端に接続されシースのルーメンと連通する中空部3を有するシースハブ4から構成される。シースの遠位端5は、近位端側よりも管径の小さい形状とすることが、ダイレータとの密着性を高めるために好ましい。また、シースの遠位端は、近位端側よりもその肉厚を薄くすることが、外径の段差をなくす上で好ましい。シースハブには、ダイレータ挿入口6、分岐管7及び止血弁8が設けられる。
本発明において、シースの材料としては弾性高分子材料を使用することができ曲げ弾性率が通常2,000〜30,000kg/cm2のものが使用される。ショア硬度がA80〜D75の範囲にある弾性高分子材料を好適に使用することができる。ショア硬度が小さくなると、形状が安定しがたくシースの遠位端が反転してめくれるおそれがある。必要に応じて、シース遠位端部に中間部より硬度の大きい材料を使用することができる。ショア硬度が大きくなると、柔軟性が乏しく、キンクしやすいシースとなるおそれがある。また、シースの材料は、常温における10分間の5%延伸において、残留歪みが0.1%以下であることが好ましく、残留歪みが0.01%以下であることがより好ましい。残留歪みが大きい材料はクリープを起こしやすく、医用挿入補助具を体内に設置しているときに、シースの遠位端の密着部の締め付け弾力が低下して、ダイレータ表面からシースの遠位端が浮き上がるおそれがある。本発明においてシースに使用する材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレンゴム、フッ素樹脂などを挙げることができる。
【0006】
本発明において、シースハブの材料には特に制限はないが、分岐管及び止血弁を設け、ダイレータハブと嵌合させるために適当な弾性と硬度を有する材料であることが好ましく、このような材料としては、例えば、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂などを挙げることができる。
本発明において、シースハブには、分岐管及び止血弁を設けることが好ましい。分岐管は、シースを通じての体内への薬剤の注入及び体内からの血液の採取などに使用することができる。止血弁は、水密状態を保って、ダイレータ、カテーテルなどをシースに挿入することを可能とし、シースを血管内に留置したとき血液が漏出することを防止する。図2は、止血弁の一態様の斜視図である。止血弁は、円盤状の弾性体9よりなり、円盤の両面を貫通するスリット10を有する。止血弁の材料は、ショア硬度がA20〜A60であることが好ましく、A30〜A50であることがより好ましい。このような弾性体としては、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、ポリウレタン、ポリブタジエン、フッ素ゴムなどを挙げることができる。
図3は、本発明の医用挿入補助具の一態様のダイレータ部の断面図である。ダイレータ部は、近位端から遠位端に通じるルーメン11を有する管形状のダイレータ12と、ダイレータの近位端に接続されルーメン11と連通する中空部13を有するダイレータハブ14から構成される。ダイレータの遠位端15には、遠位端から近位端方向に向かって、しだいに拡径する第一拡径部分16、第一拡径部分よりも緩やかにしだいに拡径する第二拡径部分17及びしだいに縮径する縮径部分18が構成され、外径がほぼ一定の寸胴部分19によって近位端に至る。ダイレータは、シースのルーメン内に挿入することができる。ダイレータの材料としては、ショア硬度が通常A90以上のものが用いられる。具体的には、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ステンレス鋼などが挙げられる。ダイレータの外径により、硬度を変えることが好ましい。例えば、外径1.5mmでは硬度を75Dに、外径3.0mmでは硬度55Dにする。
【0007】
図4は、本発明の医用挿入補助具において、ダイレータがシースのルーメン内に挿入された状態を示す断面図である。ダイレータハブ14とシースハブ4が嵌合され、ダイレータ12がダイレータ挿入口6及び止血弁8を通じてシースのルーメン1内に挿入されている。ダイレータの遠位端15はシースの遠位端5から突出し、シースの遠位端の内壁が、ダイレータの縮径部分18の外壁に密着している。
図5は、ダイレータの遠位端近傍の部分断面図である。ダイレータの遠位端には、遠位端から近位端方向に向かって、しだいに拡径する第一拡径部分16、第一拡径部分よりも緩やかにしだいに拡径する第二拡径部分17及びしだいに縮径する縮径部分18が構成され、さらに外径がほぼ一定の寸胴部分19に連続している。ダイレータの大きさ及び形状は、使用する患部に応じて適宜選定することができるが、通常は、第一拡径部分の長さが0.5〜10mm、第二拡径部分が4.5〜90mm、第一拡径部分と第二拡径部分の合計の長さが5〜100mmであり、縮径部分の長さが0.5〜50mmであることが好ましい。ダイレータの外径は、第一拡径部分の開始端において0.5〜3mmであり、第一拡径部分と第二拡径部分の境界において0.6〜4mmであり、第二拡径部分と縮径部分の境界において0.7〜8mmであることが好ましい。縮径部分と寸胴部分の境界における外径は、寸胴部分の外径に等しく、0.5〜7.5mmであることが好ましく、2〜7.5mmであることがより好ましい。第一拡径部分の両端の外径の差すなわち第一拡径部分における拡径量は0.1〜1mmであり、第二拡径部分の両端の外径の差すなわち第二拡径部分における拡径量は0.1〜4mmであり、縮径部分の両端の外径の差すなわち縮径部分における縮径量は0.01〜3mmであることが好ましく、縮径部分における縮径量は0.03〜0.07mmであることがより好ましい。第一拡径部分の開始端、第一拡径部分と第二拡径部分の境界及び第二拡径部分と縮径部分の境界は、稜線を形成することなく、なだらかな曲面で連続することが好ましい。これらの開始端及び境界をなだらかな曲面で連続することにより、医用挿入補助具を血管内へ挿入する際の挿入抵抗を低減することができる。
【0008】
図6は、ダイレータがシースのルーメン内に挿入された状態のダイレータの遠位端近傍の部分断面図である。ダイレータの遠位端15がシースの遠位端5から突出し、ダイレータの縮径部分18において、シースが押し広げられ、シースの遠位端5の内壁が、ダイレータの縮径部分18の外壁に密着している。シースの遠位端の内壁とダイレータの縮径部分の外壁の密着する部分の長さは、1mm以上であることが好ましい。
従来の医用挿入補助具の生体組織への挿入時の挙動を観察したところ、挿入補助具を曲げると、ダイレータとシースとの曲げ性に差があるために、シースの遠位端がダイレータの外壁から離れる。そのため、シースの遠位端が挿入時に生体組織に衝突し、挿入抵抗が増加することが確認された。本発明の医用挿入補助具の挿入時の挙動を観察すると、挿入補助具を曲げてもシースの遠位端はダイレータの外壁に密着した状態が保たれることが確認された。本発明の医用挿入補助具において、生体組織への挿入時の挿入抵抗が低減する理由は、このようにシースの遠位端が生体組織の孔壁に衝突することなく挿入されるためと考えられる。シースの遠位端の内壁が、ダイレータの縮径部分の外壁に密着し、且つ、ダイレータの拡径部分の径が太く、ダイレータの遠位端が曲がりにくくなっているので、ダイレータとシースの曲げ性が同程度になる。本発明の医用挿入補助具を曲げて挿入しても、シースの遠位端がダイレータから離れないので、挿入抵抗が小さくなる。
【0009】
【発明の効果】
本発明の医用挿入補助具によれば、曲げられた状態においてシース遠位端がダイレータ外壁から離れないから、シースの遠位端が生体組織に衝突することがないので、生体組織へ挿入時の抵抗が小さく、患者に不快感や疼痛を与えることがなく、生体組織を傷つけるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の医用挿入補助具の一態様のシース部の断面図である。
【図2】図2は、止血弁の一態様の斜視図である。
【図3】図3は、本発明の医用挿入補助具の一態様のダイレータ部の断面図である。
【図4】図4は、本発明の医用挿入補助具において、ダイレータがシースのルーメン内に挿入された状態を示す断面図である。
【図5】図5は、ダイレータの遠位端近傍の部分断面図である。
【図6】図6は、ダイレータがシースのルーメン内に挿入された状態のダイレータの遠位端近傍の部分断面図である。
【符号の説明】
1 ルーメン
2 シース
3 中空部
4 シースハブ
5 シースの遠位端
6 ダイレータ挿入口
7 分岐管
8 止血弁
9 円盤状の弾性体
10 スリット
11 ルーメン
12 ダイレータ
13 中空部
14 ダイレータハブ
15 ダイレータの遠位端
16 第一拡径部分
17 第二拡径部分
18 縮径部分
19 寸胴部分
Claims (2)
- ルーメンを有する管形状のシース、該シースの近位端に接続されシースのルーメンと連通する中空部を有するシースハブ、ルーメンを有する管形状のダイレータ及び該ダイレータの近位端に接続されダイレータのルーメンと連通する中空部を有するダイレータハブを有し、ダイレータが、ダイレータの遠位端から近位端方向に向かって、しだいに拡径する第一拡径部分、第一拡径部分よりも緩やかにしだいに拡径する第二拡径部分、しだいに縮径する縮径部分及び外径がほぼ一定の寸胴部分からなり、ダイレータの縮径部分と寸胴部分の境界における外径は寸胴部分の外径に等しく、ダイレータがシースのルーメン内に挿入されてダイレータハブとシースハブが嵌合された状態で、シースの遠位端の内壁がダイレータの縮径部分の外壁に密着していることを特徴とする医用挿入補助具。
- ダイレータの縮径部分の両端の外径の差が0 . 03〜0 . 07mmである請求項1に記載の医用挿入補助具。
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