JP3853076B2 - 炊飯米に冷媒の機能をもたせた米飯食品 - Google Patents

炊飯米に冷媒の機能をもたせた米飯食品 Download PDF

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Description

【0001】
【産業の属する技術分野】
本発明は、炊飯米に冷媒の機能をもたせた米飯食品に関する。また、本発明は、解凍方法に制限がない米飯食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
米を炊飯した米飯は、時間の経過と共に硬くなってゆく。この現象は米飯の老化と呼ばれ、その変化の度合いは低温の方が大きい。老化はデンプンの経時的な変化であり、水と熱により糊化したデンプンが、再結晶化するために起こるといわれている。米飯の老化を制御する方法としては、炊飯時の加水量を多くすることや酵素類(αアミラーゼ、βアミラーゼ、グルコアミラーゼ、プロテアーゼ等)、デンプン類(α化デンプン、加工デンプン等)、多糖類(ジェランガム、ヒアルロン酸等)、糖類(アンヒドロ糖、デキストリン、ブドウ糖、果糖、サイクロデキストリン)、糖アルコール類(トレハロース、マルチトール、ソルビトール、ラクチトール等)、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド)の添加等がある。これらは各々若干の効果を有するものの、これらの技術のみで米飯の老化を抑えることはできない。例えば、上記いずれの技術を用いた場合あるいは組み合わせた場合でも、5℃で24時間保存した米飯は硬く、そのまま食するのは困難な状態となる。
【0003】
冷凍米飯はその長期の保存性が主たる利点であるが、解凍の仕方によっては飯のつや・透明感が低下し、硬く、粘りのない食感になり、さらに劣化が激しいものでは白蝋化が生じることがある。このような変化の起こった飯は喫食には適さない。上記の理由により、一旦低温下に保存されたご飯は電子レンジ等の加熱が必要となる。
米飯とその他の食品を組み合わせた弁当類は、日によって売上数が大きく変動し、保存の問題からその日のうちに製造販売することが行われている。その際、早朝に製造しなければならず大きな負担となっている。そこで昼時間に普通に製造したものを一旦冷凍保存して、必要な分だけ解凍する技術が待ち望まれている。数多く冷凍食品が販売されているように単一の加工食品についてはほぼ技術的には解決しているが、米飯とその他の食品を組み合わせた食品を公知の方法で冷凍保存しても解凍しても満足できるものはできていないのが実情である。
冷凍惣菜では、特に野菜類等のおかず類の冷凍変性による食感変化が著しく、また本総菜では直ちに喫食しようとする場合、必ず電子レンジの加熱が必要である。
【0004】
冷凍米飯食品を未加熱で解凍する場合も、デンプンの老化は障害となり、これは特に低温での未加熱解凍で顕著である。そのため、冷凍米飯食品を解凍する場合には電子レンジによる解凍もしくは常温以上での自然解凍が必要である。この理由により、実際に低温で解凍可能な冷凍米飯商材は存在せず、冷凍米飯類は低温流通、低温販売されることはない。また、特に米飯の食感が重要視され、かつ加熱解凍が難しい冷凍寿司では米飯の老化を抑えるために多量の糖類や食品用界面活性剤が添加されていることが多く、異味や異臭を感じる場合さえある。
【0005】
よって、一般に弁当惣菜店においては、そのまま喫食する場合も想定して米飯の老化が少ない15℃以上あるいは凍結して流通、販売されている。すなわち15℃以上で流通販売すれば米飯の老化は抑制されるわけであるが、本温度帯では細菌の繁殖が問題となり、静菌剤等の使用が必要となる。よって本来、より低温で保存可能な(低温で変化が少ない)おかず類へも静菌剤を使用せざるを得ない。うるち米とは遺伝的な性質が異なるもち米も難老化性が高いことが知られている。しかしながら、もち米には特有な臭いがあり、また、食感も粘りが強すぎることから前記の惣菜類には向かない。
【0006】
さらに、米飯食品類の種類によっても老化のしやすさは異なる。例えば、オニギリよりも寿司の方が老化による変化は小さく、実際に常温以上の温度で解凍する冷凍寿司商材は存在するが、レンジ加熱を必要としない冷凍オニギリ商材は存在しない。また、7〜10℃で流通されているチルド寿司商材があるのに対して、他の米飯食品では低温流通、特に細菌繁殖がほとんどなく、制菌剤を必要としない5℃以下で流通されているものはない。すなわち、7〜10℃で流通されている現存のチルド寿司においても、ネタの保存性等の問題からより低温での流通が望まれるが、米飯を5℃にて流通できる技術が確立していないために、7〜10℃で流通されている訳である。また、寿司が老化しにくい理由は、糖類など調味料によるわずかな耐老化性向上と、ネタと一緒に喫食するという米飯の食感が分かりにくい食品形態のためである。うるち米とは遺伝的な性質が異なるもち米も難老化性が高いことが知られている。しかしながら、もち米には特有な臭いがあり、また、食感も粘りが強すぎることから前記の総菜類には向かない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、蓄冷能力を大きくして、商品としての鮮度と日もちをのばした米飯とその他の食品を組み合わせた米飯食品を提供することを目的とする。
本発明は、特殊な添加物あるいは解凍装置を使用することなく、凍結前の品質を解凍後も保持できるような、米飯とその他の食品を組み合わせた米飯食品を提供することを目的とする。
本発明は、低温流通のカテゴリーに制限がない、すなわちチルド流通、フローズンチルド流通および凍結流通のいずれの状態で流通しても未加熱でおいしく喫食できる、米飯とその他の食品を組み合わせた米飯食品を提供することを目的とする。
本発明は、解凍方法に制限がない、すなわち自然解凍、冷蔵庫解凍および電子レンジ解凍のいずれの方法で解凍してもおいしく喫食できる、米飯とその他の食品を組み合わせた米飯食品を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、うるち米の精米を用いた米飯食品であって、当該炊飯米に冷媒の機能をもたせたことを特徴とする米飯食品を要旨としている。上記のうるちが米低老化品種うるち米であり、したがって本発明は、低老化品種うるち米の精米を用いた米飯食品であって、当該炊飯米に冷媒の機能をもたせたことを特徴とする米飯食品を要旨としている。
【0009】
上記の当該炊飯米は、自然解凍、冷蔵庫解凍および電子レンジ解凍のいずれの方法で解凍してもおいしく喫食できる凍結米飯であり、したがって本発明は、うるち米の精米を用いた米飯食品であって、自然解凍、冷蔵庫解凍および電子レンジ解凍のいずれの方法で解凍してもおいしく喫食できる凍結米飯とすることで当該炊飯米に冷媒の機能をもたせたことを特徴とする米飯食品を要旨としている。また本発明は、低老化品種うるち米の精米を用いた米飯食品であって、自然解凍、冷蔵庫解凍および電子レンジ解凍のいずれの方法で解凍してもおいしく喫食できる凍結米飯とすることで当該炊飯米に冷媒の機能をもたせたことを特徴とする米飯食品を要旨としている。
上記の凍結米飯が、凍結前に近い硬さ、粘り、外観を保持した炊飯米に戻る凍結米飯類であり、したがって本発明は、うるち米の精米を用いた米飯食品であって、自然解凍、冷蔵庫解凍および電子レンジ解凍のいずれの方法で解凍しても凍結前に近い硬さ、粘り、外観を保持した炊飯米に戻る凍結米飯とすることで当該炊飯米に冷媒の機能をもたせたことを特徴とする米飯食品を要旨としている。また本発明は、低老化品種うるち米の精米を用いた米飯食品であって、自然解凍、冷蔵庫解凍および電子レンジ解凍のいずれの方法で解凍しても凍結前に近い硬さ、粘り、外観を保持した炊飯米に戻る凍結米飯とすることで当該炊飯米に冷媒の機能をもたせたことを特徴とする米飯食品を要旨としている。
【0010】
上記の米飯食品は、うるち米の精米の炊飯米とその他の1種以上の食品を組み合わせた米飯食品であり、したがって本発明は、うるち米の精米の炊飯米とその他の1種以上の食品を組み合わせた米飯食品であって、当該炊飯米に冷媒の機能をもたせたことを特徴とする米飯食品を要旨としている。また本発明は、低老化品種うるち米の精米の炊飯米とその他の1種以上の食品を組み合わせた米飯食品であって、当該炊飯米に冷媒の機能をもたせたことを特徴とする米飯食品を要旨としている。また本発明は、低老化品種うるち米の精米の炊飯米とその他の1種以上の食品を組み合わせた米飯食品であって、自然解凍、冷蔵庫解凍および電子レンジ解凍のいずれの方法で解凍してもおいしく喫食できる凍結米飯とすることで当該炊飯米に冷媒の機能をもたせたことを特徴とする米飯食品を要旨としている。さらにまた本発明は、低老化品種うるち米の精米の炊飯米とその他の1種以上の食品を組み合わせた米飯食品であって、自然解凍、冷蔵庫解凍および電子レンジ解凍のいずれの方法で解凍しても凍結前に近い硬さ、粘り、外観を保持した炊飯米に戻る凍結米飯とすることで当該炊飯米に冷媒の機能をもたせたことを特徴とする米飯食品を要旨としている。
【0011】
本発明は、低老化品種うるち米の精米を用いた米飯食品であって、解凍方法に制限がない当該炊飯米の凍結品を用いたことを特徴とする米飯食品を要旨としている。
上記の凍結米飯が、凍結前に近い硬さ、粘り、外観を保持した炊飯米に戻る凍結米飯であり、したがって本発明は、低老化品種うるち米の精米を用いた米飯食品であって、自然解凍、冷蔵庫解凍および電子レンジ解凍のいずれの方法で解凍しても凍結前に近い硬さ、粘り、外観を保持した炊飯米に戻る当該炊飯米の凍結品を用いたことを特徴とする米飯食品を要旨としている。
上記の米飯食品は、うるち米の精米の炊飯米とその他の1種以上の食品を組み合わせた米飯食品であり、したがって本発明は、低老化品種うるち米の精米の炊飯米とその他の1種以上の食品を組み合わせた米飯食品であって、解凍方法に制限がない当該炊飯米の凍結品を用いたことを特徴とする米飯食品を要旨としている。また本発明は、低老化品種うるち米の精米の炊飯米とその他の1種以上の食品を組み合わせた米飯食品であって、自然解凍、冷蔵庫解凍および電子レンジ解凍のいずれの方法で解凍しても凍結前に近い硬さ、粘り、外観を保持した炊飯米に戻る当該炊飯米の凍結品を用いたことを特徴とする米飯食品を要旨としている。
【0012】
上記のうるち米の精米の炊飯米とその他の1種以上の食品を組合せは、容量の大きな炊飯米のかたまりとその他の1種以上の食品を組み合わせたもの、冷凍ご飯と未凍結おかず、あるいは冷凍ご飯と凍結おかずの組合せからなることができる。上記の米飯食品は、チルド、フローズンチルドおよび凍結のいずれの形態でも流通可能である。
【0013】
【発明の実施の形態】
《原料米として用いる精白米》
本発明の米飯食品は原料米とし低老化品種うるち米を用いる。ここで低老化品種うるち米とは、通常の品種よりも老化が進行するのが遅いいずれの品種のうるち米でもよい。低老化品種は糊化度で、リン含量とアミロース含量などで規定することができる。
特開平9−22061号によると、糊化度とは米飯中の澱粉のうち、糊化状態をとっている澱粉の割合であり、生米は糊化度が0であり、炊きたての米飯は糊化度が100である。糊化度は保存する時間が経過するにしたがって下がってゆき、10℃で1日保存するとほとんどの品種は糊化度が90未満になってしまう。糊化度が90を下回ると官能的に許容できない硬さとなってしまう。そこで10℃で24時間保存した時の糊化度が90以上の品種を低老化品種と規定する。
本発明者らはリン含量が1200ppm以上、かつ、アミロース含量が15%以下の低アミロース米が難老化性を示すことを見いだし、これらが低温流通、販売に適することを発見した。この発見を基に本発明は完成されたものである。
本発明は原料米としてリン含量が1200ppm以上、好ましくは1300ppm以上、最も好ましくは1400ppm以上である精白米を用いる。
本発明が原料米として用いる精白米としてはうるち米、好ましくはアミロース含量15%以下のうるち米、最も好ましくはアミロース含量12%以下のうるち米が挙げられ、奥羽344号、奥羽343号または奥羽354号の品種に属するうるち米から選択される。
【0014】
本発明中で述べる「リン含量」は、90%に搗精した精白米(米中のリンは糊粉層に多く含まれることから、搗精率に注意してリン含量の測定を行う必要がある。)を硫酸にて加水分解した後に、バナドモリブドリン酸による比色法にて測定したものであり、乾物中の含量で示している。本法にて測定した21種の米中のリン含量は1079−1699ppmであり、特に1300ppmを超えるリン含量を有する低アミロース米が耐老化性が高かった。
米中のリンは、フィチン酸、リン脂質、デンプン中のリンとして存在することが知られている。フィチン酸はmyo−イシトールの六リン酸エステルであり、リン酸の貯蔵物質として穀類種子に存在している。米中のリン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンなどとして存在しており、ホスファチジルコリンは食品用界面活性剤としても使用されている。デンプン中のリンは、根茎デンプンに多いことが知られており、馬鈴薯デンプンを材料として、結合リン酸がαアミラーゼの作用障害になること、デンプンのアミロペクチン区分に局在することなどが知られている。(しかしながら、本発明者らの検討結果では、低アミロース米間で、リン含量とアミロペクチン含量との間に相関を認めていない。)また、本発明者らがデンプン中のリンについて測定を行った結果、冷アルカリ法にて抽出した未脱脂デンプン中のリンは、耐老化性が高い奥羽344号(アミロース含量;11.3%)で92〜211ppmであり、奥羽344号より耐老化性が劣るミルキークイーン(アミロース含量;10.8%)で68ppmと、米中のリン含量と同様に耐老化性が高い品種でその含量が高い結果であり、未脱脂ではあるが、デンプン中のリン含量と耐老化性に関連がある可能性が示唆されている。
デンプン中のリンは、グルコースの2位、3位、6位の炭素にリン酸としてエステル結合しており、ほとんどB鎖に、また、B鎖の中でも大部分が外部鎖に結合していることが知られている。さらにこれらは、分岐結合から9グルコース残基以上離れた位置に結合していることから、鎖長を認識するリン酸化酵素の存在の可能性があるとの報告がある。これらのことから、デンプンに結合しているリンが耐老化性と関与すると仮定すると、育種場面においては、このリン酸化酵素を指標あるいは遺伝子導入等の技術により、効率的に耐老化性が高い低アミロース米を選択することが可能と考えられる。
【0015】
また、本発明中で述べる「アミロース含量」はヨウ素親和力測定法やヨウ素呈色比色法で測定される見かけのアミロース含量であり、真のアミロース含量ととは異なっている。一般にデンプン中のα−1,4結合のみからなる成分がアミロースと定義されているが、実際のアミロース成分中には多少ともα−1,6結合も含むため、前記の如くアミロースとヨウ素との親和力を利用した見かけのアミロース含量がアミロース含量として一般に多用されている。これらは、乾物換算で表され、前記の方法にて測定された一般的な日本産うるち米のアミロース含量は15〜22%である。一般にアミロース含量とデンプンの老化は密接に関係し、その含量が高いものほど老化しやすいことがいわれている。しかしながら、発明者らの検討結果では低アミロース米間でアミロース含量と耐老化性に関連は認められていない。すなわち、生産年度が異なっても耐老化性が維持されている奥羽344号、奥羽343号のアミロース含量は3.7〜13.6%と非常に大きく変動する。換言すると、低アミロース米の耐老化性は、アミロース含量のみでは説明できず、他の要因が大きく関与することを意味している。本発明においての耐老化性はリン含量が1200ppm以上で、且つアミロース含量が15%以下で効果が確認され、リン含量が1300ppm以上で、且つアミロース含量が12%以下でその効果は顕著であった。
現在までに低アミロース米として新品種保護法で品種登録されている品種は奥羽344号、ミルキークイーン、ソフト158、彩、西海215号の5品種である。また、中間母本として中母農13号、中母農14号がある。これらは何れも耐老化特性を有するが、特に奥羽344号や種苗登録されていないものでは奥羽343号、奥羽354号、群馬14号がその特性が強いことを確認している。また、これら低アミロース米でも含有リン量が高い方が耐老化性は高く、特に1300ppm以上で顕著である。そして、低アミロース品種間でも耐老化性が高い奥羽344号とその姉妹品種である奥羽343号のリン含有は恒常的に高く、平成6年から平成8年に収穫された7試料の平均は、1500ppmであり、他品種の同8試料では1228ppmであった。すなわち、奥羽344号とその姉妹品種である奥羽343号では、リン含有は1389〜1630ppmと高い位置で安定している。さらに、生産年度によっては、低アミロース米のうち、奥羽344号と同程度の耐老化性を示すものが出現する。例えば、奥羽344号の平成6〜平成8年産と同程度の耐老化性を示す平成8年産のソフト158では、リン含有が1430ppmと、耐老化性が低い平成7年産(同1235ppm)よりもリン含有が高かった。これらのことから、リン含有と耐老化性は何らかの関係があるものと推定できる。
新品種育成時にリン含量が1300ppmを越える低アミロース米を選抜すれば、この品種は耐老化性が高いものであることが推定される。また、施肥中のリンを増加させることにより、米中のリン含量を増加させる。このとき、前記米成分中のいずれのリン含量が増加するかは明らかでないが、施肥のコントロールにより耐老化性が向上する可能性がある。
【0016】
本発明の原料米とし低老化品種うるち米を用いる米飯食品は、Ca塩などの塩類を食品添加物として添加して炊飯したものが好ましい。リン含有が、高い低アミロース米に対して、炊飯前あるいは炊飯後に食品用添加物を添加することにより、より耐老化性を高めることができる。食品用添加物としては、塩類が最適であり、アニオン種に関係なくNa、K、Mg、Ca塩などの添加により耐老化性は向上し、その効果は特にCaで顕著である。これらの塩類の添加量は味に影響しない程度の添加量が好ましく、最終製品に対して100ppm以上が適当であり、500ppm以上でその効果が大きい。また、塩類を添加する方法以外でも本来水が含む塩類を濃縮しても同様の効果が得られ、濃縮する方法としては逆浸透膜を利用する方法が代表される。また、本発明者らは、これらの塩類を添加あるいは濃縮水にて炊飯する手法は、特に奥羽344号で効果が高いことを確認しており、その理由として奥羽344号が塩との反応性が高く、その結果他の米より耐老化性が向上すると推定している。上記のように塩類は例えば塩濃縮水または添加した水を用いて炊飯することにより添加されるが、制菌剤を使用しないものであることを特徴としている。
【0017】
その他の添加物を用いても、耐老化性を向上させることが可能である。食品用酵素では、αーアミラーゼ、βーアミラーゼ、グルコアミラーゼ、プロテアーゼを0.01〜100U/米1gの添加が有効であり、これらは炊飯前あるいは炊飯後のいずれに添加しても有効である。デンプンとしてはアミロペクチン含有が高いワキシーコーンスターチ、白玉粉、タピオカデンプンあるいは化工デンプンおよびこれらの分解物が適しており、生米に対して0.5〜20%(W/W)添加が適している。その他の糖類ではジェランガム(対生米0.1〜5.0%)、ヒアルロン酸(対生米0.05〜0.8%)、アンヒドロ酸(対生米0.3〜30%)、デキストリン(対生米0.5〜20%)、サイクロデキストリン(対生米0.5〜20%)、オリゴ糖(0.5〜20%)が良い(括弧内はW/W)。糖アルコールとしてはトレハロース、ラクチトール、マルチトール、ソルビトールが難老化性を高め、これらの添加量は対生米で0.1〜10%が適当である。乳化剤ではショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセド、リゾレシチン、ジグリセリン脂肪酸エステルの添加が有効であり、好ましくはHLB12以上の乳化剤を対生米0.05〜1.0添加が効果的である。
【0018】
《凍結前に近い硬さ、粘り、外観を保持した炊飯米にもどる凍結米飯》
一般に、プラスの温度帯では5℃前後をピークとした易老化温度域にて流通された米飯類を炊飯直後に近い食感に戻すためには電子レンジなどの加熱を必要とするが、本発明によれば加熱を必要とせず、炊飯直後と同様の食感を得ることができる。また、電子レンジなどの加熱により温かい米飯として喫食する場合も従来の米飯より美味しい。これは老化したアミロースが再糊化し難いためであり、通常のうるち米よりアミロース含有が低い低アミロース米では再加熱により、より軟らかく粘りがある食感となるためである。
【0019】
《その他の1種以上の食品との組合せ》
上記のうるち米の精米の炊飯米とその他の1種以上の食品を組合せは、容量の大きな炊飯米のかたまりとその他の1種以上の食品を組み合わせたもの、冷凍ご飯と未凍結おかず、あるいは冷凍ご飯と凍結おかずの組合せからなることができる。
容量の大きな炊飯米のかたまりを電子レンジで解凍すると、中心に加熱不十分なところが残ることがあり、通常の米飯では、その部分が老化して食に耐えないため、電子レンジ加熱を十分に長くする必要があったが、耐老化米の場合、解凍さえしていればそのような心配もなく、必要以上に長い電子レンジ加熱時間を要しない。丼物、カレーなどで上の具材が過加熱になるのを防ぐことができる。
すなわち本発明の冷凍米飯は電子レンジ耐性もあり、解凍むらがあってもおいしさが変わらない特徴を有する。
米飯とその他の1種以上の食品を組み合わせた米飯食品の好適な具体例としては、上記のような丼物、カレーライスの他に、さば、あじ、かになどの魚介類を酢飯のうえに載せて加圧成形した押し寿司や、焼き魚、卵焼き、フライ、てんぷらなどの総菜類と米飯を組み合わせた幕の内弁当などを例示できるが、特にそれらには限定されず、巻き寿司や、具入りおにぎりをはじめとして、米飯とその他1種以上の食品を組み合わせたものであれば広く適用が可能であることはいうまでもない。そのほか、茹でそばと冷凍ご飯のセット弁当、茹でそばと冷凍すしのセット弁当、生野菜サラダと冷凍ご飯のセット弁当、生野菜入りライスバーガーなどが例示される。ライスバーガーについても生野菜の場合に限らず、きんぴらごぼうなど加熱解凍の場合にも対応できるものである。
【0020】
《解凍方法に制限がない凍結米飯》
上記の炊飯米は、自然解凍、冷蔵庫解凍および電子レンジ解凍のいずれの方法で解凍してもおいしく喫食できる凍結米飯である。本発明の解凍方法に制限がない凍結米飯は、冷凍寿司米である場合、例えば冷凍した生魚がのっているとき、冷蔵庫内で解凍するものから、稲荷ずしのように電子レンジで加熱してもよい寿司まで使うことができる汎用性のある寿司米の冷凍品である。
冷凍した米飯食品を低温解凍して食することも可能である。低温解凍する冷凍米飯の代表としては冷凍寿司が挙げられる。冷凍寿司では、加熱解凍時に特に魚介類の寿司種が加熱変性しやすい。本発明は低温解凍によっても炊飯直後と同様の米飯食感が得られるため、喫食時に米飯だけでなく、魚介類も製造直後に近い食感を得ることが可能である。同様に冷凍のおにぎり、ピラフ、混ぜご飯などにも適しており、これらは低温解凍と同様に前述の如く電子レンジなどの加熱によっても美味しく食べられる。
これは老化したアミロースが再糊化し難いためであり、通常のうるち米よりアミロース含有が低い低アミロース米では再加熱により、より軟らかく粘りがある食感となるためである。
【0021】
《低温流通のカテゴリーに制限がない米飯食品》
上記のように解凍方法に制限がないため、本発明の米飯食品は、チルド、フローズンチルドおよび凍結のいずれの形態でも流通可能である。
本発明のチルド、フローズンチルドおよび凍結のいずれの形態でも流通可能である米飯食品は、15℃以下の低温で、好ましくは10℃以下の低温で、さらに好ましくは5℃以下の低温で流通・販売できる米飯食品である。本発明中のチルド、フローズンチルドおよび凍結した状態での流通とは10℃以下を示し、プラスの温度帯では5℃前後をピークとした易老化温度域での米飯の流通、さらに、低温解凍に適さない冷凍米飯食品の低温解凍、流通をもターゲットとしている。
本発明において、「チルド」流通とは10℃以下で、凍結しない温度帯での流通を意味する。「フローズンチルド」流通とは、凍結した後で、10℃以下の凍結しない温度帯での流通を意味する。「常温以上での自然解凍」とは、室温に放置した解凍、室温での送風解凍、流水解凍等の自然解凍を意味し、「加熱」とは、デンプンが糊化する50℃以上の温度のままで、電子レンジあるいは湯煎等により上昇させることを意味する。
【0022】
【実施例】
本願発明の詳細を実施例で説明する。本願発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0023】
実施例1
(冷凍ご飯と未凍結おかずの組み合わせ)
耐老化性が高い品種を用いた炊飯米(200g)を冷凍後に、未凍結の生野菜サラダ、卵焼き、刺身などと共に保冷効果が高いトレーに詰めて、弁当を作製した。本品を25℃に保管し、その後官能評価を行った。
ご飯の解凍に要した時間は6時間であり、このとき、ご飯、おかず共においしく喫食できた。更に、本品を6時間後に喫食した際も同様であった。
また、本品を微生物検査(一般生菌数)に供した結果を表1に示した。
【0024】
【表1】
Figure 0003853076
【0025】
冷凍ご飯を冷媒とした保冷効果により、生野菜、卵焼き、刺し身といった冷凍変性しやすいものの食味が維持され、更に微生物増殖抑制にも効果が認められた。
【0026】
比較例1
(未凍結ご飯と未凍結おかずの組み合わせ)
通常のうるち米を用いた炊飯米(200g)を未凍結の生野菜サラダ、卵焼き、刺身などと共に通常のトレーに詰めて、弁当を作製した。本品を25℃に保管し、その後官能評価を行った。
作製6時間後には、ご飯おかず共においしく喫食できたが、更に本品を6時間保存したとき、野菜類、刺身は変色しており、また微生物の増殖も認められた。
【0027】
【表2】
Figure 0003853076
【0028】
冷凍ご飯を冷媒とした保冷効果により、生野菜、卵焼き、刺し身といった冷凍変性しやすいものの食味が維持され、更に微生物増殖抑制にも効果が認められた。
【0029】
実施例2
(冷凍ご飯と冷凍おかずの組み合わせ)
耐老化性が高い品種を用いた炊飯米(200g)を用いて、にぎりずしを作製、凍結した。そして、別途作製した自然解凍用冷凍そうめんと共に保冷効果が高いトレーに詰め、冷凍弁当を作製した。
本弁当は、自然解凍のみならず冷蔵庫解凍によってもおいしく喫食できた。
【0030】
実施例3
(全がゆ)
米150gに対し、水870gを加え1時間浸漬後電気炊飯器にて炊飯し、全がゆを調製した。これを200gずつパウチ袋につめ、冷凍し、冷凍がゆとした。(1週間−20℃で保存した後)、室温での自然解凍、および5℃で15時間放置解凍したものを米専門パネル5名にて評価したところ、以下のようであった。
【0031】
【表3】
Figure 0003853076
【0032】
解凍温度によらず、耐老化性の高い品種を用いたかゆは解凍後も調製直後と同等の品質が得られた。
【0033】
【発明の効果】
米飯とその他の食品を組み合わせた米飯食品について、蓄冷能力を大きくして、商品としての鮮度と日もちをのばすことができる。
米飯食品について、特殊な添加物あるいは解凍装置を使用することなく、凍結前の品質を解凍後も保持できるような、米飯とその他の食品を組み合わせた米飯食品を提供することができる。
低温流通のカテゴリーに制限がない、すなわちチルド流通、フローズンチルド流通および凍結流通のいずれの状態で流通しても未加熱でおいしく喫食できる、米飯とその他の食品を組み合わせた米飯食品を提供することができる。
解凍方法に制限がない、すなわち自然解凍、冷蔵庫解凍および電子レンジ解凍のいずれの方法で解凍してもおいしく喫食できる、米飯とその他の食品を組み合わせた米飯食品を提供することができる。

Claims (4)

  1. 解凍方法に制限がない低老化品種うるち米の精米の炊飯米の凍結品を、米飯とその他の1種以上の未凍結おかずを組み合わせる弁当の米飯として用いることを特徴とする凍結米飯を弁当の冷媒として利用する方法。
  2. 上記の炊飯米が、自然解凍、冷蔵庫解凍および電子レンジ解凍のいずれの方法で解凍してもおいしく喫食できる凍結米飯である請求項1の凍結米飯を弁当の冷媒として利用する方法。
  3. 上記の凍結米飯が、凍結前に近い硬さ、粘り、外観を保持した炊飯米に戻る凍結米飯である請求項2の凍結米飯を弁当の冷媒として利用する方法。
  4. 上記の弁当が自然解凍または冷蔵庫解凍にて食される弁当である請求項1ないしのいずれかの凍結米飯を弁当の冷媒として利用する方法。
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