JP3851708B2 - 面状排水材及びこの面状排水材を用いた廃棄物処分場の遮水構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として、廃棄物処分場に埋め立てた廃棄物から染み出る汚染水により周囲の環境が汚染されるのを防止するために廃棄物処分場に敷設して使用される面状排水材及びこの面状排水材を用いた廃棄物処分場の遮水構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、産業廃棄物や一般廃棄物を焼却した残滓、その他の廃棄物を埋め立てにより処分する廃棄物処分場では、廃棄物処分場に埋め立てた廃棄物から染み出る汚染水により周囲の環境が汚染されないように、廃棄物処分場に遮水工を施すようにしている。
この遮水工としては、施工性、経済性、確実性、安全性等の観点から、従来より、廃棄物処分場にポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等の合成樹脂製の遮水シート又はゴム製の遮水シートを敷設する方式の遮水構造が広く用いられている。
【0003】
ところで、廃棄物処分場に遮水シートを敷設する遮水構造の場合、埋め立てられた廃棄物自体の重量や埋め立てられた廃棄物に含まれる鋭利な物体等により遮水シートが損傷を受けることがある。
そして、遮水シートが損傷を受けると、この損傷箇所から汚染水が漏出し、周囲の環境を汚染することとなるため、遮水シートの損傷箇所の有無を速やかに検知するとともに、検知した損傷箇所に適当な補修を施す必要があり、このための検知方法及び補修方法が多数提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの方法によっても、遮水シートの損傷箇所の補修が完了するまでに一定の時間を要することから、汚染水の漏出による周囲の環境の汚染を完全には防止できなかった。
また、遮水シートが損傷を受けると、この損傷箇所から漏出した汚染水が、急速に遮水シートの下面全体に広がることから、遮水シートの損傷箇所を正確に検出することが困難であり、損傷箇所の補修に時間と費用を要するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の廃棄物処分場の有する問題点を解決し、遮水シートが損傷を受けた場合に、損傷箇所から漏出する汚染水の絶対量を低減することにより、周囲の環境の汚染を防止することができるとともに、遮水シートの損傷箇所を正確に検出することができる面状排水材及びこの面状排水材を用いた廃棄物処分場の遮水構造を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の面状排水材は、表面に多数の突起を形成することにより連続した空隙を有するようにした合成樹脂製シートからなり、廃棄物処分場に重ねて敷設した遮水シートの間に配設する面状排水材において、面状排水材の突起を千鳥状に形成するとともに、面状排水材の端部に空隙と連通する帯状の通水溝を形成し、該通水溝に沿って遮水壁を形成し、面状排水材の表面を通水性を有する不織布フィルタで被覆したことを特徴とする。
【0007】
この面状排水材は、千鳥状に形成した多数の突起により形成される空隙を流通する水を、この空隙と連通する帯状の通水溝を介して速やかに排出することができるとともに、通水溝に沿って形成した遮水壁により、流通する水が周囲に漏出することを防止することができる。
【0008】
そして、面状排水材の表面を通水性を有する不織布フィルタで被覆することにより、合成樹脂製シートからなる面状排水材の空隙に土砂や廃棄物が侵入することを防止して、面状排水材の通水性を長期間に亘って良好に維持することができる。
【0009】
また、合成樹脂製シートからなる面状排水材と不織布フィルタとを一体化する場合、面状排水材に形成した通水溝や、この通水溝に沿って形成した遮水壁の部分において、両者を線状にホットメルト等により接着することができる。
【0010】
また、同じ目的を達成するため、本発明の廃棄物処分場の遮水構造は、廃棄物処分場に重ねて敷設した遮水シートの間に、上記の面状排水材を、該面状排水材に形成した通水溝が法面の天端から法尻方向に連続するようにして配設したことを特徴とする。
【0011】
この廃棄物処分場の遮水構造は、遮水シートが損傷を受けた場合に、損傷箇所から漏出する汚染水を、遮水シートの間に配設した面状排水材に形成した通水溝を介して速やかに排出することができ、損傷箇所から周囲の地盤に漏出する汚染水の絶対量を著しく低減することができる。
また、通水溝に沿って形成した遮水壁により、汚染水が法面の横方向に広く漏出することを防止することができ、遮水シートの損傷箇所を正確に検出することができる。
【0012】
この場合において、面状排水材に、前記法面の天端から法尻方向に連続する通水溝と直角に連通する帯状の通水溝及び該通水溝に沿う遮水壁を形成した面状排水材を用いることができる。
【0013】
これにより、法面の天端から法尻方向に連続する通水溝と直角に連通する帯状の通水溝に沿って形成した遮水壁により、汚染水が法面の上下方向に広く漏出することを防止することができ、遮水シートの損傷箇所をより正確に検出することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の面状排水材及びこの面状排水材を用いた廃棄物処分場の遮水構造の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に、本発明の面状排水材の一実施例を示す。
この面状排水材1は、表面に多数の突起11を図1(a)に示すように千鳥状に形成した高密度ポリエチレン等の合成樹脂製シート10の両端部に、この多数の突起11により形成される空隙と連通する帯状の通水溝12を形成するとともに、この通水溝12に沿って遮水壁13を形成し、さらに、この合成樹脂製シート10の上面及び下面を、ポリプロピレン等の不織布フィルタ14,15で被覆して構成したものである。
【0016】
この帯状の通水溝12は、突起11が形成されていないため、多数の突起11により形成される空隙部分より通水性能が高く、空隙を流通する水を速やかに排出することができる。
また、遮水壁13は、上記空隙及び通水溝12を流通する水が、周囲に漏出することを防止することができるように、突起11と略同じ高さで、通水溝12に沿って形成するようにする。なお、本実施例のように、合成樹脂製シート10の上面を不織布フィルタ14で被覆した場合には、上記空隙及び通水溝12を流通する水量がきわめて多いときには、例外的に、不織布フィルタ14を介して若干量の水が越流することが考えられる。
また、不織布フィルタ14,15は、合成樹脂製シート10の多数の突起11により形成される空隙に土砂等が侵入することを防止して、面状排水材1の通水性を長期間に亘って良好に維持することができるようにする。
【0017】
合成樹脂製シート10と不織布フィルタ14,15とは、面状排水材1に形成した突起11、通水溝12及びこの通水溝12に沿って形成した遮水壁13の先端部分にホットメルト接着剤等の接着剤を塗布すること等により接着、一体化することができるが、この場合、通水溝12及びこの通水溝12に沿って形成した遮水壁13の先端部分においては、両者を線状に接着することができ、これにより、両者を強固に一体化することができるとともに、接着作業を効率的に、かつ、接着剤の無駄をなくして低コストで行うことができるものとなる。
【0018】
この場合において、合成樹脂製シート10の通水溝12を形成する位置は、必ずしも本実施例に示す合成樹脂製シート10の両端部に限定されるものではなく、例えば、合成樹脂製シート10の一端部や中間位置に形成し、必要に応じて、並設した合成樹脂製シート10間で通水溝12を共用するようにしたり、また、後述の本発明の廃棄物処分場の遮水構造の変形実施例で用いる面状排水材のように、帯状の通水溝を直角に連通するように形成することもできる。
また、合成樹脂製シート10の上面及び下面を被覆する不織布フィルタ14,15のうち、合成樹脂製シート10の下面を被覆する不織布フィルタ15を省略することもできる。
【0019】
図2に、この面状排水材1を用いた本発明の廃棄物処分場の遮水構造の一実施例を示す。
この廃棄物処分場は、図示するように、廃棄物を埋め立て処分しやすい、天端41から法尻42にかけて緩やかな斜面の法面4で構成した擂り鉢形状をしている。
【0020】
廃棄物処分場の表面には、重ねて敷設した遮水シート2,3の間に、上記の面状排水材1を、面状排水材1に形成した通水溝12が法面4の天端41から法尻42方向に連続するようにして配設し、遮水層を形成するようにする。
なお、遮水層の上には、必要に応じて、上から順に、通水性を有する砕石層や砂等の覆土層を形成するとともに、その適宜位置において遮水層を窪ませ、その上に形成した砕石層中に多数の透孔を有する耐圧構造の合成樹脂製排水管を配設し、汚染水を廃棄物処分場の外に排出するように構成することができる。また、遮水層には、遮水シート2,3が損傷を受けた場合に、損傷箇所から漏出する汚染水を廃棄物処分場の外に排出するための汚染水排水設備を設けるようにする。この汚染水排水設備は、遮水層の上に形成した砕石層中に配設した合成樹脂製排水管の汚染水排水設備と共用することができる。
【0021】
この場合において、遮水シート2,3には、従来使用されているポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等の合成樹脂製のシートやゴム製のシートを用いることができる。
また、面状排水材1の合成樹脂製シート10の上面及び下面を被覆する不織布フィルタ14,15は、合成樹脂製シート10の多数の突起11により形成される空隙に土砂等が侵入することを防止する作用に加えて、遮水シート2,3が受ける衝撃力等を緩和して遮水シート2,3が損傷を受けることを防止する作用を有する。
【0022】
この廃棄物処分場の遮水構造は、遮水シート2が損傷を受けた場合に、損傷箇所から漏出する汚染水を、遮水シート2,3の間に配設した面状排水材1の合成樹脂製シート10に形成した通水溝12を介して速やかに排出することができ、損傷箇所から周囲の地盤に漏出する汚染水の絶対量を著しく低減することができる。
また、通水溝12に沿って形成した遮水壁13により、汚染水が法面4の横方向に広く漏出することを防止することができるため、あらかじめ遮水層に配設しておいたセンサ等によって、遮水シート2の損傷箇所を正確に検出することができる。
【0023】
図3に、上記実施例の廃棄物処分場の遮水構造の変形例を示す。
ここでは、面状排水材として、帯状の通水溝12a,12aと直角に連通する帯状の通水溝12bを形成するとともに、それぞれの通水溝12a,12a,12bに沿って遮水壁13a,13a,13bを形成した合成樹脂製シート10を有する面状排水材1(合成樹脂製シート10の上面及び下面を、ポリプロピレン等の不織布フィルタで被覆することは、上記実施例と同じ。)を用い、一方の通水溝12a,12aを法面4の天端41から法尻42方向に連続するように、これと直角に連通する他方の通水溝12bを法面4の横方向に連続するようにして遮水シート2,3の間に配設し、遮水層を形成するようにする。
【0024】
この廃棄物処分場の遮水構造は、遮水シート2が損傷を受けた場合に、損傷箇所から漏出する汚染水を、遮水シート2,3の間に配設した面状排水材1の合成樹脂製シート10に形成した通水溝12a,12bを介して速やかに排出することができ、損傷箇所から周囲の地盤に漏出する汚染水の絶対量を著しく低減することができる。
また、通水溝12aに沿って形成した遮水壁13aにより、汚染水が法面4の横方向に、また、通水溝12bに沿って形成した遮水壁13bにより、汚染水が法面4の上下方向に、広く漏出することを防止することができるため、あらかじめ遮水層に配設しておいたセンサ等によって、遮水シート2の損傷箇所を正確に検出することができる。
【0025】
【発明の効果】
本発明の面状排水材によれば、千鳥状に形成した多数の突起により形成される空隙を流通する水を、この空隙と連通する帯状の通水溝を介して速やかに排出することができるとともに、通水溝に沿って形成した遮水壁により、流通する水が周囲に漏出することを防止することができる。
そして、面状排水材の表面を通水性を有する不織布フィルタで被覆することにより、合成樹脂製シートからなる面状排水材の空隙に土砂や廃棄物が侵入することを防止して、面状排水材の通水性を長期間に亘って良好に維持することができる。
【0026】
なお、合成樹脂製シートからなる面状排水材と不織布フィルタとを一体化する場合、面状排水材に形成した通水溝や、この通水溝に沿って形成した遮水壁の部分において、両者を線状にホットメルト等により接着することができ、これにより、両者を強固に一体化することができるとともに、接着作業を効率的に、かつ、低コストで行うことができる。
【0027】
本発明の廃棄物処分場の遮水構造によれば、遮水シートが損傷を受けた場合に、損傷箇所から漏出する汚染水を、遮水シートの間に配設した面状排水材に形成した通水溝を介して速やかに排出することができ、損傷箇所から周囲の地盤に漏出する汚染水の絶対量を著しく低減することができる。
また、通水溝に沿って形成した遮水壁により、汚染水が法面の横方向に広く漏出することを防止することができ、あらかじめ遮水層に配設しておいたセンサ等によって、遮水シートの損傷箇所を正確に検出することができる。
【0028】
また、面状排水材に、前記法面の天端から法尻方向に連続する通水溝と直角に連通する帯状の通水溝及び該通水溝に沿う遮水壁を形成した面状排水材を用いることにより、法面の天端から法尻方向に連続する通水溝と直角に連通する帯状の通水溝に沿って形成した遮水壁により、汚染水が法面の上下方向に広く漏出することを防止することができ、あらかじめ遮水層に配設しておいたセンサ等によって、遮水シートの損傷箇所をより正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の面状排水材の一実施例を示し、(a)は不織布フィルタの一部を切除した平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】 本発明の廃棄物処分場の遮水構造の一実施例を示し、(a)は断面図、(b)は遮水シートの一部を切除した正面図である。
【図3】 同変形例を示し、(a)は断面図、(b)は遮水シートの一部を切除した正面図である。
【符号の説明】
1 面状排水材
10 合成樹脂製シート
11 突起
12 通水溝
12a 通水溝
12b 通水溝
13 遮水壁
13a 遮水壁
13b 遮水壁
14 不織布フィルタ
15 不織布フィルタ
2 遮水シート
3 遮水シート
4 法面
41 天端
42 法尻
Claims (3)
- 表面に多数の突起を形成することにより連続した空隙を有するようにした合成樹脂製シートからなり、廃棄物処分場に重ねて敷設した遮水シートの間に配設する面状排水材において、面状排水材の突起を千鳥状に形成するとともに、面状排水材の端部に空隙と連通する帯状の通水溝を形成し、該通水溝に沿って遮水壁を形成し、面状排水材の表面を通水性を有する不織布フィルタで被覆したことを特徴とする面状排水材。
- 廃棄物処分場に重ねて敷設した遮水シートの間に、請求項1記載の面状排水材を、該面状排水材に形成した通水溝が法面の天端から法尻方向に連続するようにして配設したことを特徴とする廃棄物処分場の遮水構造。
- 面状排水材に、前記法面の天端から法尻方向に連続する通水溝と直角に連通する帯状の通水溝及び該通水溝に沿う遮水壁を形成した面状排水材を用いたことを特徴とする請求項2記載の廃棄物処分場の遮水構造。
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JP15790597A JP3851708B2 (ja) | 1997-05-30 | 1997-05-30 | 面状排水材及びこの面状排水材を用いた廃棄物処分場の遮水構造 |
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JPH10328635A JPH10328635A (ja) | 1998-12-15 |
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JP4195140B2 (ja) * | 1999-01-12 | 2008-12-10 | タキロン株式会社 | 廃棄物処分場の遮水構造 |
-
1997
- 1997-05-30 JP JP15790597A patent/JP3851708B2/ja not_active Expired - Lifetime
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