JP3847182B2 - 基準穴穴開け機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は多層プリント配線板のガイドマークを観測して、対応する所定の基準穴を開ける穴開け機に係わり、特に各内層のズレに規則性の無いとき等に有用な基準穴を形成する穴開け機に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、ICチップ、抵抗、コンデンサ等の表面実装用の電子部品の小型化に伴い、これらを実装するプリント配線板も高密度化が要求されて、多層化されるものが多い。民生用でも4層、6層等の多層プリント配線板が使用され、産業用では更に層数の多い高多層プリント配線板が使用される趨勢にある。
多層プリント配線板は表裏2層の外部に露出した導体層と、数層の露出しない内層の導体層で構成され、各導体層の間に絶縁性の基板が挿入され、この基板によって導体層が接着された構造となっている。
【0003】
多層プリント配線板の導体層としては、たとえば厚さ18μm程度の銅箔が使用される。
基板材料としては、熱硬化性のガラス・エポキシ樹脂の使用が主流であり、高多層配線板ではガラス・ポリイミド樹脂、ガラス・BT樹脂等の耐熱樹脂も使用される。
【0004】
多層プリント配線板で6層以上のものは単に内層の導体数が多いだけなので、多層プリント配線板の製造法として、以下、図8および図9を参照して、6層の多層プリント配線板の製造法を簡単に説明する。
図8(a)は6層プリント配線板の構成を模式的に示した斜視図であり、図8(b)は内層となる両面配線板の導体部分に形成されたプリントパターンを模式的に示す平面図である。図8(c)は後述するレイアップの際に使用される治具板の側面図を示す。図9は6層配線板の断面であり、(a)はホットプレス工程直前を、(b)はホットプレス工程で基板が熱硬化し、導体層を接着して1枚の多層プリント配線板となった状態を、それぞれ示している。
【0005】
図8(a)に示すように、6層の多層プリント配線板60は2層の露出した導体層62、62と、内層となる2枚の両面プリント配線板61、61の間にプリプレグ64、64a、64を挟んで形成される。
内層を構成する両面プリント配線板61、61には、表裏の銅箔面に最終製品となる(図では6個の)単一配線板パターン61a、・・・61a等が、通常エッチングによって形成されている。
【0006】
予め、位置決め用の少なくとも2個の基準穴65、65が上記の両面配線板61、61に開けられ、この基準穴65、65を基準にして表裏両面のパターン61a、・・・61a等が形成されるので、平面的には、両面プリント配線板61、61の表裏のパターンは相互にその位置が保たれている。このように2枚の両面配線板61、61は同じ座標位置の基準穴65、65を使用してパターン61a、・・・61a等が形成される。
内層板となる両面プリント配線板61に形成されたパターンには、単一配線板のパターン61a、・・・61aの他に、後工程に使用する基準穴用のガイドマーク66、66、・・・が通常4個以上(最低3個)用意され、エッチング工程でこれらのガイドマークも形成される。
【0007】
複数枚のエッチング済みの内層用両面プリント配線板を重ねて、それぞれの配線板の導体部に形成されたパターンの位置関係を正しく揃えることをレイアップ(Lay up)と言う。
両面プリント配線板61にパターン61a、・・・61a等を形成したとき使用した基準穴65、65の中心距離と等しい中心距離を持つピン68a、68aを設けた治具板68が用意される。1枚のエッチング済みの両面プリント配線板61が、その基準穴65に治具板68のピン68a、68aを挿通して治具板68上に置かれる。その上に基準穴65、65を開けられた、加熱前の基板材料(プリプレグと呼ばれる)64aが載せられる。更に他の1枚の両面配線板61が、そのガイド穴65、65に治具板68のピン68a、68aを挿通して治具板68上に重ねられる。この段階で2枚の両面配線板61、61とその間のプリプレグ64aの外周を仮止めしてレイアップが完了する。
このように、上記の基準穴65、65はレイアップの際の基準穴としても使用され、レイアップ用基準穴と呼ぶこともできる。以降混乱の恐れのある場合は基準穴65、65をレイアップ用基準穴65、65と呼ぶ場合もある。
【0008】
図9の断面図に示すように、レイアップされた2枚の両面プリント配線板61、61の両側にプリプレグ64、64と導体材料の銅箔62、62をおいてホットプレスで加圧加熱すると、銅箔62や両面配線板61の間に挿入されたプリプレグ64、64a、64が熱硬化して(絶縁)基板63に変化し、各導体間の接着も完了し、1枚の多層プリント配線板60となる。
この後、多層配線板の内層パターンに対応した新たな基準穴が開けられ、この新基準穴を基準として最外層の導体配線パターンのエッチング、スルーホール等の穴開け加工などが行われる。更に、めっき工程、防錆処理工程等を施し、機械加工で単一配線板に分割し、所要の外形形状に切り出して多層プリント配線板が完成する。
【0009】
既に説明したように、内層板を形成する両面配線板の導体層には、単一配線板のパターン61a、・・・61aの他に、基準穴形成のためのガイドマーク66、66、66等が3個以上用意され、エッチング工程でこのガイドマークもエッチングされている。これらのガイドマークの座標は、単一配線板のパターン61a、・・・61aとある位置関係を保つよう定められているので、これらのガイドマークの位置を測定して、電気回路を構成するパターンの配置を推定し、後工程で使用する基準穴位置を決定することになる。
【0010】
上記の多層配線板60の内層に形成されたガイドマーク66、66、・・・に対応した新たな基準穴を開けるのに、通常は、X線(基準穴)穴開け機が使用される。
前述のように、ホットプレスで加圧加熱された多層配線板の表裏両外面は無垢の導体層で覆われており、肉眼で可視光線を使って内層に形成されたガイドマークを明瞭に透視することは不可能である。
現在では微弱なX線で多層配線板を透視して、内層板に形成されたガイドマーク位置を測定する方式が一般的であるが、超音波その他の測定法も種々研究されている。いずれにしても、可視光線以外を使用して内層板に形成されたガイドマーク位置を測定する方式として一括できる。
【0011】
基準穴穴開け機は可視光線以外でガイドマークを観測する観測装置、基準穴を穴開けする穴開け装置を持ち、加工物である多層配線板(表裏が無垢の導体層を持つ)を載置し固定するテーブル、これらを支承する架台等で構成されている。一般に、架台に固定して設定されたX、Y、Zの3軸で記述される直角座標とされた機械座標系を持ち、上記の観測装置、穴開け装置、及びテーブルはX軸とY軸に沿ってXY平面上を移動する。そして、観測装置と穴開け装置は、相対的にテーブル上に載置された多層配線板の任意位置に移動し、ガイドマークの観測、基準穴の穴開け加工を行えるよう構成されている。
【0012】
ガイドマークは基準穴穴開け機で観測するのに適した形状とされ、配線板上のガイドマークの配置位置は配線板の4隅等の外周部に形成して配線板全体の変形程度を反映するのが普通である。
通常は、単一配線板のパターン61a、・・・61aの配置の際、設計座標系を設定し、パターンを構成するランドの位置、穴の位置等をこの設計座標系の座標値を使用して記述する。
同一の設計座標系を使ってガイドマーク66の座標も記述され、更にレイアップ後の工程に使用する基準穴の座標もこの設計座標系によって記述されている。
【0013】
ワークであるレイアップ後の多層プリント配線板の外周の形状と内層パターンとの間には厳密には位置的な関係は保たれていない。
従ってワークが穴開け機のテーブル上に載置されたとき、上記の設計座標系の原点座標、座標軸の方向は不明である。
従って、基準穴穴開け機はテーブル上に載置された多層プリント配線板の内層の導体層に形成されたガイドマークを観測して、機械座標系の座標値として記述されたガイドマークの観測値から多層配線板の内層の導体パターンの属する設計座標系の原点座標、XY軸の方向を推定するために必要な各種の計算手段をその制御装置に内蔵している。
【0014】
観測装置で、テーブル上に載置された多層配線板の内層に形成されたガイドマークを観測すると、その座標値は架台に固定された機械座標系で表示される。最近は少なくとも1導体層につき3個以上(通常は4個)のガイドマークを形成して観測する場合が多い。
ホットプレス工程で受ける熱と圧力で、上記の1層の導体層を形成する1枚の銅箔内、及び、各層間でも各ガイドマークの位置は不規則な移動を生じており、このようなバラツキ(誤差)を持った観測値から、それぞれの観測値と設計上のガイドマークの座標との誤差が最も少なくなる設計座標系の原点座標、XY軸の方向を推定する必要がある。
【0015】
このような誤差を含んだ値からある分布(関数)を推定するには、一般に最小二乗法(method of least squares )を適用し、その誤差の二乗の和が最小となるような関数を求めることが行われている。
具体的な手順としては、先ず、基準穴穴開け機のガイドマークを観測して機械座標系の座標値を測定する。これから求めたいものはガイドマークが形成された際に使用された設計座標系の原点の位置と座標軸の傾きの2数値であり、これが上記の機械座標系で表されることである。この2数値が知られれば、設計座標系で既知である基準穴の座標値を機械座標系で記述された座標値に(周知の座標変換式で)換算することができる。
基準穴穴開け機に設定された機械座標系のX軸とY軸に沿って移動する穴開け装置で、機械座標系の座標値に変換された基準穴の座標位置に穴開けをすることは容易である。
なお、上記の例で最小二乗法を適用する場合、設計座標系の原点の位置をある数値に固定して計算を進めると推論が容易なので、この原点を不動点と呼ぶこともある。
【0016】
多くの場合、ホットプレスで多層配線板を加熱・加圧して一体化するホットプレス工程で発生する多層配線板の変形は、大略、多層配線板の中心近くの1点を不動点として外側に変位し、各点の変位量はこの不動点からの距離に比例すると考えて良い。
この不動点は厳密には内層の導体層それぞれで異なり得るし、ホットプレス工程の力の掛かり具合でも微妙に変化するが、ガイドマークはパターンの外周部に設けられることが多いので、各ガイドマークがすべて(質量mを持つ大きさの無い点である)質点と見なして、ガイドマークの重心点を計算すると、その重心点の座標値は、ほぼ、多層配線板の中心近くになる。便法としてガイドマークの重心点を不動点と見なしても、大きな不都合の生じないことが多い。
【0017】
従って、ホットプレス工程における多層配線板の変形の中心(即ち不動点)はガイドマークの重心点であると仮定して最小二乗法を適用すれば、設計座標系の原点の位置と座標軸の傾きを求めることができる。
本出願人は「特願2000−130764(平成12/4/28出願)」に於いて、ガイドマークの重心点に変形の中心があると仮定して複数個のガイドマーク位置を測定して、内層パターンの設計座標系の原点の位置と座標軸の傾きを計算する方法を出願している。
【0018】
このように、多層プリント配線板の変形の中心(不動点)はガイドマークの重心点にあると仮定して基準穴を開けホットプレス以後の加工を行うと、多くの場合、実用上充分に狂いの少ない基準穴として使用することができる。
しかし、時に基準穴位置が不適当な場合も散見する。例えば、内層の特定の導体層が1層のみ際だった変形をしている場合等は不動点を重心点と仮定すると1層のパターンが大きくずれてしまうことがある。
特に、多層プリント配線板の全導体層を貫通したスルーホールやビアホール(バイアホール・・・部品の取付に使用しない層間の電気的接続をする穴)で或る1層のランドの変位が大きく、不良品となる場合がある。
【0019】
図10(a)、(b)は多層プリント配線板に設けられたスルーホールの模式的な平面、及び、板厚方向断面を投影図として示し、全導体層(図では6層)の同一座標に直径2Rの円形のランド100を設け、これらのランド100の中心に直径2rのスルーホール穴101を貫通し、穴の内面に金属メッキを施して各ランドを電気的に接続している。
各導体層に変位がなければ、同図(a)に示すように各ランド100は重なって1個の円として見える。スルーホール穴101は全てのランド100の中心に開けることができる。
導体層が変位してランド位置が動いてバラついて、例えば、平面図では同図(c)のようになり、側面図では同図(d)に示すようになったとする。
各ランドの配置にバラツキがあるとき、スルーホール穴101は全てのランド100の内部にあれば良いと仮定すれば、各ランドの位置の狂いは最大限(R−r)未満が許される。
【0020】
同図(c)、(d)に示すように、導体層の第2層に形成されたランド100(2)の変位が特に大きい場合、重心を不動点として位置決めされたスルーホール穴101とランド100(2)の座標の狂いは(R−r)を越えて、スルーホール穴101を中心102に開けると、同図(c)の符号103で示す位置で、スルーホール穴101はランド100(2)の外縁からはみ出してしまい、スルーホールは不良品となる。
なお、この図のように重なった各ランドの外形線を分離して観測することは、通常のX線の透視ではできないが、説明の便のため、平面図(a)、(c)は各導体層の外周を多層基板の板厚方向に透視可能としたイメージ図として表現している。
【0021】
しかし、図10(e)、(f)は図10(c)、(d)と全く同一のランドの狂いを示すが、今まで点102に中心のあったスルーホール穴を点102aが中心になるように移動すれば、スルーホール穴101aは全てのランド100の内部にあり、多層プリント配線板は良品として使用することができる。
現実には不可能であるが、仮に、作業者が図10(c)、(e)のような透視を必要な全ての穴に対して同時に行うことができれば、総合的に穴明け位置を修正することが可能な筈であり、不動点がガイドマークの重心にあるとして基準穴を開けるよりも、更に良い基準穴の位置が存在することを示唆している。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
上記のスルーホールの例で見るように、ホットプレス以降の加工の規範となる基準穴を設定する場合、不動点がガイドマークの重心にあるとして基準穴位置を決めるよりも、更に良い基準穴位置が存在する場合がある。
このような基準穴位置を得ることができれば、常にガイドマークの重心を座標原点と見なすより、多層プリント配線板の歩留まり向上が期待でき、製品の歩留まり向上は現状の基準穴穴開け機に求められている大きな問題である。
確率的には少ないとは言え、穴開け機で開けた基準穴は製造工程の後半で使用され、特に製造工程半ば以降の不良発生は累計の投下コストも大きく、僅かな歩留まり向上でも大きな経済的効果を生むことになるので、ユーザからの改善要望の声も高い。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記のような問題点を解決するために、直交するXm軸とYm軸を持つ機械座標系を設定した基準穴穴開け機筺体に固定された架台と、
多層プリント配線板の構成要素であるプリント配線板の導体層に形成され、且つ、前記プリント配線板の導体層に固定された設計座標系で座標値を記述された、少なくとも3点のガイドマークを観測する観測装置と、
前記プリント配線板に基準穴を穴開けする穴開け装置と、
前記Xm軸と前記Ym軸に平行な送り方向を持ち、前記プリント配線板と前記観測装置及び前記穴開け装置の相対位置を変換する送り装置と、
前記観測装置により観測された前記ガイドマークの座標値から前記設計座標系の配置を算出し、前記設計座標系で記述された基準穴座標値を前記機械座標系の座標値に変換して、前記送り装置を制御する制御装置と、
を備えた基準穴穴開け機において、
前記制御装置は、重み関数を所定の値に設定して前記プリント配線板の前記設計座標系の原点を前記機械座標系で記述された座標値として算出する原点座標値算出手段と、
前記設計座標系の座標軸が前記機械座標系の座標軸となす角度を算出する座標軸角度算出手段と、
前記機械座標値に変換された前記ガイドマークの座標値とガイドマークの観測値から個別誤差を算出し、該個別誤差を比較し、複数の前記設計座標の選別を行う誤差比較手段とを、
備えた基準穴穴開け機を提供する。
【0024】
本発明の基準穴穴開け機は、前記ガイドマークの座標値観測後、全てのガイドマークの重み関数を1として第1の前記設計座標系の前記原点座標値、及び、前記座標軸角度を算出した後に、重み関数の値を変えて第2の前記設計座標系の前記原点座標値、及び、前記座標軸角度を算出し、前記ガイドマークの個別誤差の比較により第1または第2の前記設計座標系のいずれかを採用するようにしている。
また、本発明の基準穴穴開け機は、第1の前記設計座標の前記原点座標値及び前記座標軸角度に基づいて算出した前記ガイドマークの個別誤差の最大、及び、最小の値を持つ前記ガイドマークの前記重み関数のみを1として、第2の前記設計座標系の前記原点座標値、及び、前記座標軸角度を算出し、第1、及び、第2の前記ガイドマークの前記個別誤差を比較して誤差幅のより少ない第1または第2の前記設計座標系のいずれかを採用することにしている。
【0025】
更に、本発明の基準穴穴開け機は、全てのガイドマークの重み関数を1として第1の前記設計座標の前記原点座標値、及び、前記座標軸角度を算出した後に、重み関数の値を変えて前記設計座標の前記原点座標値、及び、前記座標軸角度の算出を複数回繰り返して、その都度、前記ガイドマークの前記個別誤差の比較を行い、前記個別誤差が増加するか、または、予め設定した最小誤差を下回るか、または算出回数が予め設定した繰り返し回数に達した時点で算出作業を終了し、いずれかの設計座標系を採用するように構成することもできる。
【0026】
【発明の実施の形態】
便宜上、以下の4項目に分けて説明する。
1.穴開け機の構造説明。
2.ガイドマークの観測値から、最小二乗法を適用した内層の導体パターンの設計座標系を推定する方法の説明。
3.計算式の説明。
4.本発明の実施の形態の説明。
【0027】
1.穴開け機の構造説明。
【0028】
本発明の実施の形態である多点振り分け方式の基準穴穴開け機(以下穴開け機と略称する)の一般的構造を図1〜図3を参照して説明する。図1は本発明の穴開け機1の外観の斜視図であり、筺体2を透視して表している。
図2、3は穴開け機を投影図として示し、図2(a)は穴開け機1の正面図、図2(b)は側面図である。図3(a)(b)は穴開け機1の可動テーブル12の位置を変えた平面図を示し、図2、図3とも筺体2を透視して内部を表している。
【0029】
また、各図に記入した機械座標系(Xm、Ym、Zm、原点Om)は穴開け機1の不動部分(例えば筺体1や架台3)に固定された座標系で、送り装置の各種機械部分の移動方向がこの座標軸に平行になされている。X線カメラで多層配線板のガイドマークを観測して得られる座標値や、基準穴の穴開け座標も基本的にこの座標系を用いて算出される。
なお、図1の白抜きの矢印17は作業者の定位置を示し、作業者は矢の方向(Ym軸の正方向)に向かって立ち、基準穴を穴開けする多層プリント配線板を投入し、穴開けが終われば穴開け機1から取り出す。
【0030】
ここでは、ホットプレス終了後の表裏の導体層が一面の銅箔とされたままの(6層の)多層プリント配線板を投入し、内層導体のガイドマークをそれぞれ観測して、基準穴を穴開けする作業として説明する。
図4は多層プリント配線板60の4隅に設けられたガイドマーク66の周辺部を模式的に示したものである。ほぼ、実際のガイドマークの形状に近い例が挙げられている。
図4(a)に示すように、内層導体62aは(図では6個の)単一配線板のパターン61a、61aを持ち、周辺部を額縁状に銅箔を残し、この額縁状の銅箔の四隅に角窓71a〜dを形成し、その近傍に形成された丸窓73の内部に、基準穴穴径より大きい直径の基準穴マーク72として円形に銅箔が残されている。なお、図4(a)は各内層導体62a(2)、・・・、62a(5)を同一方向から透視して描いている。
【0031】
図4(c)の多層プリント配線板60の断面図を参照すれば、無垢の銅箔である表層の導体62、62を除いて、角窓71a〜dは4層の内層導体62a、・・・62aの透視可能の位置に配置されている。内層導体62a、・・・62aのガイドマーク66は角窓71内で透視したとき重ならないように配置されている。従って、左上部に配置された角窓71a周辺を広く透視すると、各導体層の角窓71a近辺を示す図4(d)〜(g)を合成したのと同じ結果となり、同図(b)に示すように4個のガイドマーク66(2)〜66(5)が角窓71a内に現れる。
また、丸窓73の内部には、基準穴マーク72が重なってリング状の隙間が現れる。多層プリント配線板60の四隅に同じようなマークが現れることになる。
【0032】
上記の例では、穴開け機は多層配線板の隅の1個所当たりガイドマーク4個づつを観測し、その座標値を記憶し、4隅では合計16個のガイドマークを観測する。全ガイドマークの観測終了後に機械座標系に換算された基準穴位置に基準穴を穴開けする。
6層の多層プリント配線板に基準穴を開けるには、この程度の観測回数を要するが、以下の動作説明では観測は1ヶ所1回と省略して説明する。また、ガイドマークと基準穴は共に4個で、対応するガイドマークの近傍に基準穴があると仮定する。
【0033】
図1〜3に戻り、穴開け機1の筺体2の内部に、架台3が固定されている。左右1対のX移動架台10、10は、ほぼ、チャンネル状に形成され、左右で鏡像関係をなす形状とされている。このX移動架台10、10は架台3の上端に配置された直線ガイド10a、10aによって支承されている。ボールねじ10bとこれと係合するX移動架台10の下面に取り付けられたボールナット(図示せず)により、基準穴を穴開けする配線板の大きさに従って、あらかじめ、Xm軸に平行に移動してガイドマークが観測可能の位置に待機している。
なお、X移動架台10、10を個別に駆動するために、ボールねじ10bは各X移動架台10毎に配置されている。
【0034】
X移動架台10、10の上部にX線発生装置4、4が固定され、下部には直線ガイド11a、11aが取り付けられている。そして、Y移動架台11、11がこの直線ガイド11aで支承されている。ボールねじ11bとこれと係合するY移動架台11の下面に取り付けられたボールナット(図示せず)により、Y移動架台11、11はYm軸に平行に移動可能である。
Y移動架台11、11はチャンネル状に形成され、上部にX線防護管5が配置され、図2に示すように、これと並んでクランパ9とクランパ9を上下動させるエアシリンダ9aが設置されている。下部にはスピンドル7とX線カメラ6が固定されている。
【0035】
Ym軸と平行に配置され筺体の中央部分に固定された直線ガイド12aとボールねじ12bにより支承され、駆動されて、多層プリント配線板を搭載する可動テーブル12はYm軸に平行に運動する。
可動テーブル12は12Aの位置で、ワークである基準穴を穴開けする多層プリント配線板を載置し、Ym軸に沿って移動してガイドマーク測定、基準穴開け位置に引き込まれる。
なお、ボールねじ10b、11b、12bを駆動し、X移動架台10、10とY移動架台11、11、および可動テーブル12の移動を制御する制御装置は図示されていない。
【0036】
ここで、穴開け機の主要構成要素として、X線発生装置4とX線防護管5およびX線カメラ6でガイドマークの観測装置、スピンドル7とクランパ9で穴開け装置、X移動架台10とY移動架台11と可動テーブル12およびこれらを支承し、駆動する直線ガイド10a、11a、12a、ボールねじ10b、11b、12b等で駆動装置をそれぞれ形成している。
また、図示されていない制御装置は、一連の穴開け作業手順に従って、上記の各種装置の制御を行う。更に観測装置で観測したガイドマークのX線像から座標値を算出し、この座標値と予め入力された基準穴の設計座標から、基準穴穴開け位置を計算する役割も分担している。
【0037】
可動テーブル12は通常金属製で平坦な板状に形成され、ガイドマーク透視、基準穴穴開けのための逃げ穴(1、2穴用)13、13、逃げ穴(3、4穴用)13a、13aが左右に開けられている。
多層プリント配線板60は、その外形の大きさに従って、配線板の先端部分が揃うようにして投入される。基準穴の1、2穴は逃げ穴13を使い、基準穴の3、4穴は逃げ穴13aを使って穴開けが行われる。
【0038】
2.作業手順
【0039】
上記の穴開け機を使って、1例として4穴の基準穴を開ける作業手順を以下に説明する。
図4は多層プリント配線板60の4隅に設けられたガイドマーク66の周辺部を模式的に示したものであり、ほぼ、実際のガイドマークの形状に近い例が挙げられている。
図4(a)に示すように、内層導体62aは6個の単一配線板のパターン61a、・・・61aを持ち、周辺部を額縁状に銅箔を残し、この額縁状の銅箔の四隅に角窓71a〜dを形成し、その近傍に形成された丸窓73の内部に、基準穴穴径より大きい直径の基準穴マーク72として円形に銅箔が残されている。
なお、図4は各内層導体62a(2)、・・・、62a(5)を同一方向から透視して描いている。
【0040】
図4(c)に示す、多層プリント配線板60の側面の断面図を参照すれば、無垢の銅箔である表層の導体62、62を除いて、角窓71a〜dは4層の内層導体62a、・・・62aのほぼ同位置に配置されている。内層導体62a、・・・62aに形成されたガイドマーク66は角窓71内で透視したとき重ならないように配置されている。左上部に配置された角窓71a周辺を示す同図(d)〜(g)を合成すると、同図(b)に示すように4個のガイドマーク66(2)〜66(5)が角窓71a内に現れる。
また、丸窓73の内部には、基準穴マーク72が重なってリング状の隙間が現れる。多層プリント配線板60の四隅のそれぞれには、角窓71a〜71d、基準穴マーク72a〜dとして上記と同じようなマークが現れることになる。
なお、基準穴のマークは必ずしも導体層に形成しなくとも良いが、基準穴加工の確認と後の作業の目印として設ける場合が多い。
【0041】
穴開け機は1ヶ所当たりガイドマーク4個づつを観測し、その座標値を記憶し、合計16個のガイドマークを観測する。全ガイドマークの観測終了後に機械座標系に換算された基準穴位置に基準穴を穴開けする。
6層の多層プリント配線板に基準穴を開けるにはこの程度の観測回数は必要であるが、以下の動作説明では観測は1ヶ所1回と省略して説明する。また、ガイドマークと基準穴は共に4個で、ガイドマークと基準穴は近接しているものと仮定する。
【0042】
ガイドマークを観測する際は、ガイドマークが1個づつカメラの視野に入るよう、穴開け機側でカメラ位置がプログラムされている。
従って、概略の手順として、(1)ガイドマーク62を観測する、(2)ガイドマーク62の観測値から設計座標系の座標原点と座標軸の傾きを推定する、(3)設計座標系で記述された基準穴位置を機械座標系に換算する、の3ステップが必要となる。
【0043】
なお、以降の手順説明では煩雑さを避けるため、角窓1個には1個のガイドマークがあり、各ガイドマークの近傍に基準穴が設けられ、同一隅に配置されたガイドマークと基準穴が接近しているものとする。
ホットプレス終了後の多層プリント配線板の内層導体62aのパターンと、配線板周辺部の形状とは厳密には座標的な関連は無いが、周辺部の外形ガイドでカメラの視野内にガイドマークを収める程度は可能な場合が多い。従って、一般には、穴開け機に投入された多層プリント配線板は、その外形をガイドしてガイドマークをカメラの視野内に置くようにする。
【0044】
まず、基準穴を穴開けするワークである多層プリント配線板(例えば図4または図8、9に示す)60の外形寸法と(設計上の)基準穴座標からX移動架台10、10のXm軸に沿った位置が決まり、予め、X移動架台10、10は、そこに移動して待機している。
可動テーブル12が(図1の)12Aの位置で、作業者は多層プリント配線板60を可動テーブル12上の所定位置に載置する。配線板60は可動テーブル12に仮固定される。可動テーブル12はX線カメラ4に内蔵されたX線発生管4aの下に作業者から見て先端側のガイドマーク2個(66、66)が来る位置に移動する。
先端側のガイドマーク(66、66)をX線で透視してX線カメラ6、6で観測し、その座標値を測定する。座標値は図示しない制御装置のメモリに記憶される。
手前側のガイドマーク(66、66)がX線発生管4aの下に来る距離だけ、可動テーブル12はYm方向に移動する。次いでX線を照射して、X線カメラ6、6でガイドマーク2個を観測し、その座標値を記憶する。
ここで、計算方法は後述するが、ガイドマーク4点の座標から設計座標系の原点座標と座標軸の傾きを求め、これから基準穴4個の(機械座標系の)座標値を計算し、まず、スピンドル7、7が手前側の基準穴2個の座標位置まで移動し、基準穴を穴開けする。
可動テーブル12が移動して先端側のガイドマーク(66、66)をX線で透視した位置の近傍まで戻り、スピンドル7、7が先端側の基準穴の座標位置に移動し、基準穴2個を穴開けする。
可動テーブルが投入位置12Aまで動いて、穴開けの済んだ配線板60を作業者が取り出すと基準穴加工工程が終了する。
なお、図4に示すように、ガイドマークの個数が各ガイドマークのそれぞれに対して実際は4個づつ対応している場合でも、測定回数が4倍になるだけで、その手順は上記したものと殆ど変化なく行える。
【0045】
ここで開けられた基準穴は、外層の2面の導体層のパターン形成やスルーホール、ビアホール等のパターン内部の穴明け等に使用される。いずれも治具板に設けられた位置決め用のピンに多層基板の基準穴を挿通して位置決めされる。
実際には、加工精度維持のため、1度に4本以上のピンを使用することも多く、治具板のピンを何回も挿通することによる穴径の拡大を恐れて基準穴の再度の使用をせず、1工程毎に異なった基準穴を使用する場合もある。この場合は、後工程で使用する複数の治具板のピン数やその座標に合わせた複数組の基準穴が開けられることになる。
これら複数組の基準穴の座標も、全て同一の設計座標系で記述されているので、この設計座標系の原点座標と座標軸の傾きさえ決まれば、個々の座標計算と穴明けの手間が増えるのみで、原理的には同じことの繰り返しで良い。
【0046】
3.計算式の説明
【0047】
一般に、基準穴は後工程で治具板のピンに挿通してワークの位置決めに使用されるので、1組の基準穴は使用する治具板のピンの座標位置と同じ配置を持ち、各基準穴相互の距離が所定の値に収まり、導体パターン等と一定の誤差内で開けられる必要がある。これは誤差を各基準穴に振り分けることにより達成されるので、通常振り分け式と呼ばれる。観測するガイドマークの数が3個以上の場合を多点振り分け方式と呼ぶ場合もある。
【0048】
既に述べたように、導体層に形成されるガイドマークは導体パターンと同時に形成される。多層プリント配線板の内層に形成された導体パターンと基準穴、及び、ガイドマーク等の全ての導体層に属する要素の座標は、全て1個の設計座標系で記述され、その関係は既知とされている。
従って、(1)穴開け機テーブル上の多層プリント配線板に形成されたガイドマークを観測して、穴開け機に固定された機械座標系による各ガイドマークの座標値を読み、(2)この値から設計座標系の原点座標と座標軸の傾きを求め、(3)穴開け機に搭載された穴開け装置で穴を開けるには、設計座標系で記述された基準穴の座標値を機械座標系で表示された座標値に変換する手続きが必要となる。
【0049】
この一連の手続きの中で、(1)は単なるガイドマークの観測であり、(3)は周知の三角関数を使用した座標変換式を適用すれば容易に計算できる。
(2)の観測された各ガイドマークの機械座標系の座標値から設計座標系の原点座標と座標軸の傾きを求めることが多点振分け方式の計算式の主要部となる。この計算式は前記「特願」の明細書に詳細に説明されているので、その要点のみを以下に述べる。
【0050】
図5を参照して導体パターン設計時の設計座標系と穴開け機に設定された機械座標系との関係を説明する。
図5(a)は設計座標系の説明のための平面的な模式図であり、設計座標系はODを座標原点とし、直交するX軸相当のUD軸、Y軸相当のVD軸を持っている。多層プリント配線板60が置かれ、その内層導体層に形成される(図では6個の)単一配線板のパターン61aA、・・・61aA、ガイドマークPD1、・・・PD4、基準穴H1、・・・H4等の位置が、設計座標系の座標値で記述されている。この設計座標系を使用して、単一配線板のパターン61aA内部の形状や穴位置も同様に記述されている。
【0051】
同図(b)に示すように、多層プリント配線板60に形成されたガイドマークPD1〜PD4に着目し、ガイドマークのそれぞれを質点と見なした時の重心点が廻転中心となるよう、座標原点をOとし、UD軸、VD軸に平行なU、V軸を持つ(新)設計座標系を設定する。
【0052】
図5(c)は、X線カメラで個別に観測したガイドマーク位置P1〜P4を穴開け機に設定された機械座標系(原点Om、直交する座標軸をXm、Ymとする)上で(その観測座標値に基づき)プロットしたものである。やはり、ガイドマークP1〜P4を質点と見なしてその重心Ogを求め、Ogを座標原点とし、Xm、Ym軸に平行なX軸、Y軸を持つ(新)機械座標系を設定する。
なお、設計座標系、機械座標系ともガイドマークの重心位置に原点を移して、(新)設計座標系、(新)機械座標系ができたが、両者とも新旧の座標軸が平行なので、単に新原点の座標値の加減算だけで座標変換が行われる。
【0053】
ここで、同図(c)の上に、同図(b)に示された多層プリント配線板60上のガイドマークPD1〜PD4を描く。先ず、多層プリント配線板60を(新)設計座標系の原点Oと(新)機械座標系の原点Ogを一致させ、U軸とX軸(Xm軸とも)が平行、V軸とY軸(Ym軸とも)が平行となるように置くと想定する。今までの(新)設計座標系と(新)機械座標系設定の過程から、Xm軸とUD軸、Ym軸とVD軸は共に平行である。
図5(d)では1点鎖線で示した長方形Sの各頂点の黒丸が(設計上の)ガイドマークPD1〜PD4に相当する。(設計上の)ガイドマークPD1〜4と(観測された)ガイドマークP1〜4が一枚の紙の上に置かれてはいるが、この段階では両者の重心が一致しているだけである。
【0054】
(設計上の)ガイドマークPD1と(観測された)ガイドマークP1との距離L1、PD2とP2の距離L2、同様に距離L3、L4をそれぞれ二乗した合計が最小となるα゜(例えばU軸とX軸とのなす角度)は最小二乗法を適用した結果として計算で求めることができる。
図5(d)で、上記の多層プリント配線板60を(新)設計座標系の原点Oの周りにα゜廻転させ、例えば、黒点で表す(設計上の)ガイドマーク(PD1)が白抜きの丸で表すPD1まで廻転する。このとき(観測された)ガイドマークP1と(設計上の)ガイドマークPD1の距離はL1で示され、P2とPD1の距離はL2、同様にL3、L4が示されている。図5(d)でL1〜L4の二乗の和を最小となった位置を描いている。
前述の明細書にαを求める式とその算出法の詳細が説明されており、αの絶対値が小さい時に、(新)機械座標系によるガイドマークPiの座標をxi、yi、(新)設計座標系による(設計上の)ガイドマークPDiの座標をUi、Viとしたとき、αの正接を次の{数1}で求めることができる。
【数1】
・・・・{数1}
【0055】
逆に、上記の(新)設計座標系の座標原点(重心位置)、及び、座標軸の角度(α゜)に基づいて(設計上の)ガイドマークPD1〜PD4を(新)機械座標系及び機械座標系上に記入したのが、図5(d)で示されているとも言える。
同図(d)に示された、(設計上の)ガイドマークPD1〜PD4と(観測された)ガイドマークP1〜P4との距離L1〜L4の二乗の和が最小であることは、実際に検算しても知られる。
【0056】
このように、最小二乗法を適用して、(新)機械座標系による(新)設計座標系の座標原点(重心位置)、及び、座標軸の角度(α゜)を求めることができた。この(新)設計座標系の座標原点と座標軸の角度によって設計座標系で記述された座標は全て機械座標系の座標に換算することができる。
従って、穴開け機は設計座標系で記述された基準穴を機械座標系の座標値に変換して穴開けすることが可能となる。
【0057】
4.本発明の実施の形態の説明。
【0058】
最小二乗法は一般的には次のように説明される。即ち、対象を測定してn個の観測値〔f(xi)・・・i=1〜n ・・・(1)〕を得たとき、n個の観測値に重み付けをする重み関数(ω(x)、weighting function)を適当に選び、且つ比較的簡単な関数形のgn(x)を仮定して重み関数との差の二乗との積を求め、その和Ω(i=1〜nの和)が最小となるようなgn(x)を求めることとされている。従って、Ωは下記の式(2)で表される。
〔Ω=Σω(xi)・{f(xi)−gn(xi)}2 ・・・(2) 〕
ここでΣはω(xi)・{f(xi)−gn(xi)}2のiに1〜nを代入して合計することを意味する。
【0059】
本例ではn個のガイドマークを観測してその(観測された)ガイドマークの座標値(xi、yi)をn個得る。この観測値から知りたい数値は機械座標系の座標値で表された設計座標系の原点座標と座標軸の傾きである。
最小二乗法適用の手順は、適当な重み関数を仮定して設計座標系の原点座標を定め、この原点位置で誤差が最小となる座標軸の角度を求めることになる。
なお、繰り返しになるが、多層配線板の導電層には、導体パターンやこれに付随した穴類、ガイドマーク、基準穴等の諸要素の座標値等は全てこの設計座標系で記述されて既知である。従って、設計座標系の原点座標と座標軸の傾きを知ることは、導電層に属する要素の全ての配置(座標)が機械座標系に換算可能となることを意味する。
【0060】
重み関数が(観測された)ガイドマークn個に対して全て1として、ガイドマークの重心を設計座標系の不動点として設計座標系の座標軸の傾きを求める手法が前記「特願」の明細書で説明され、同明細書にも他の不動点を採用しても良いとの示唆がなされている。
以降、先に説明した重み関数の定義と厳密には合わない点もあるが、(観測された)ガイドマークn個に対して、設計座標系の原点座標値を定めるために、適当な重み関数ω(x)を仮定することを、重み関数ω(x)の使用と呼ぶ。
【0061】
上記の呼び方では、観測されたガイドマークP1〜4を質点と見なし、その重心が不動点となるとしたことは、重み関数が全て1、即ち、ω(x)=1としたことに他ならない。
例えば、ガイドマーク総数が4点のとき、そのx座標をxiとして、重心のx座標G(x)を求めると、その質量をmとして
〔G(x)=(m・x1+m・x2+m・x3+m・x4)/4m 〕
〔 =Σ(xi)/4 ・・・(3) 〕
となり、各ガイドマークの重み関数がすべて1としたことに相当する。
重み関数の選び方を変えると、最小二乗法を適用した結果を大きく変えることができる。
【0062】
図6は1枚の多層プリント配線板の4隅に設けられた(設計上の)ガイドマークPD1〜PD4と(観測された)ガイドマークP1〜P4を模式的に示しており、(観測された)ガイドマークP1〜P4は図4に示すように各隅4個で構成されている。
多層配線板の各隅の4個のガイドマークは各設計座標値を一括してハッチングを付けた1個の円で表し、(設計上の)ガイドマークPD1〜PD4とする。(設計上の)ガイドマークPD1に相当する、(観測された)ガイドマークP1の4個は誤差量だけ中心を移動した円の外周線で表している。他の3隅も同様に表示し、(設計上の)ガイドマークPD1〜PD4の中心は長方形Sの各頂点を占める。
これらの関係は図10のスルーホールとランドとの関係と同様、概念的に(設計上の)ガイドマークPD1〜PD4を示すハッチングを付けた円が、(観測された)ガイドマークP1〜P4を示す円の外周線から外へ出れば誤差の限界を超え不良品となることを示すと考えて良い。
【0063】
図6(a)は(設計上の)ガイドマークPD1〜PD4と(観測された)ガイドマークP1〜P4のそれぞれの重心を一致させた(不動点とした)従来方法でガイドマークPD1〜4の位置を決めた結果であり、(設計上の)ガイドマークPD4の円が2層目の(観測された)ガイドマークP4(2)の円と交差して不良品となったことを示している。
【0064】
これに対し、本発明の実施の形態の要点は、重心点を不動点として最小二乗法適用後、重み関数の選び方を変えて不動点位置を変更し、再度最小二乗法を適用し、両者の結果を比較して誤差の少ないものを採用することにある。
不動点位置を変更した結果が図6(b)に示されており、設計座標の座標原点が、OgからO2に移動し、新しい原点座標で計算式{数1}を適用すると、座標軸角度もα゜からα2゜に変更された。この結果、(設計上の)ガイドマークPD1〜PD4は長方形sの関係を保ったまま移動及び廻転し、図6(a)の位置から(b)に図示する位置に移ったことになる。
この結果、(設計上の)ガイドマークPD4と(観測された)ガイドマークP4(2)との交差はなくなり、良品と認められる位置に基準穴が開けられたことが判る。
【0065】
本発明の実施の形態の1例として、設計座標系の推定のための計算の実行、判断は基準穴穴開け機の制御装置で行われる。
即ち、前述の基準穴穴開け機の観測装置、穴開け装置、及び、送り装置の制御を行う制御装置内に、原点座標値算出手段、座標軸角度算出手段、及び、誤差比較手段が計算プログラムとして内蔵され、制御装置内のCPUからの指令により、各計算を分担して処理をする。
この3手段の処理する計算内容と実際の処理手順の流れの対応を示した図7のブロック図を参照して説明する。図7(a)は制御装置内の部分的な構成を示し、同図(b)は矢印に沿って処理手順の流れを示す。図7(a)の各手段は、その下に記入された図7(b)の各処理を矢印に従って処理して行く。
【0066】
計算手順は次の様に行われる。ガイドマークの観測値に基づき、(1)原点座標値算出手段により座標原点(重心位置)が計算され、重心点を不動点として最小二乗法を適用し、(新)機械座標系による(新)設計座標系の座標原点(重心位置)が計算され、座標軸角度計算手段で、{数1}の計算をして座標軸の角度(α゜)が求められ、第1座標系が得られる。これから(設計上の)ガイドマークPDiの座標値を機械座標系の座標に換算する。従来はこの設計座標系を使って基準穴の機械座標系の座標値を求め、即座に基準穴を形成していた。
【0067】
第1座標系の計算に引き続き、次の計算がなされる。
(2)(設計上の)ガイドマークPDiと対応する、各(観測された)ガイドマークPiの誤差(個別誤差)を求める。
個別誤差は機械座標系で座標軸別に求める。即ち、各(設計上の)ガイドマークPDiの座標値を(PDix、PDiy)とし、各(観測された)ガイドマークPi(j)の座標値を(Pi(j)x、Pi(j)y)とし、座標軸別の個別誤差をΔPi(j)x、ΔPi(j)yとするとき、
x軸について〔 ΔPi(j)x=Pi(j)x−PDix ・・・(4) 〕
y軸について〔 ΔPi(j)y=Pi(j)y−PDiy ・・・(5) 〕
と計算される。ここでiは(設計上の)ガイドマークPDi(基板外周の各隅のナンバ)に相当し、jは導体層のナンバ(例えば図4(c)参照)に相当する。
【0068】
(3)最大最小の誤差を持つ(観測された)ガイドマークPi(j)を選択する。
一般の手順としては、誤差を昇順または降順に並べた誤差系列の両端のガイドマークを選ぶ。即ち、座標軸別に個別誤差を符号を含んで小から大の順、または大から小の順に並べ、その両端に位置するガイドマークPi(j)を選ぶ。例えばX軸に対してP2(3)とP4(1)、Y軸に対してP1(4)とP3(2)等と選ぶ。
なお、同誤差の複数個のガイドマークがあるときは、その中から任意の1個を取ればよい。
【0069】
(4)各ガイドマークの機械座標系による座標値の算術平均を求め、この値を第二の座標原点とする。例えば上例なら、
〔(P2(3)x+P4(1)x)/2=新不動点のx座標 ・・・(6)〕
〔(P1(4)y+P3(2)y)/2=新不動点のy座標 ・・・(7)〕
上記の計算は、通常の重心の計算式で誤差系列の両端のガイドマークの重み関数を1、他を0としたことに相当する。
【0070】
上記の座標値の算術平均をそれぞれx、y座標とする点を第2原点Og2とする第2機械座標系を作成する。第2機械座標系のX2軸、Y2軸は元のXm軸、Ym軸と平行である。これは図6(b)に対応する。但し、UV軸と近接するのでX2軸、Y2軸は記入されていない。(観測された)ガイドマークPi(j)の座標値は座標原点のOgからOg2への平行移動により、新しい値に更新される。
(新)設計座標系の原点座標をOg2に移動する。(新)設計座標系の内部では(設計上の)ガイドマークPD1〜PD4の重心に座標原点があり、いわば(新)設計座標系全体が(その上の点も含んで)OgからOg2に平行移動したことになる。
【0071】
座標軸角度算出手段において、第2原点Og2を第2の不動点とし、最小二乗法を適用して設計座標系の座標軸と機械座標系の座標軸との角度(α2゜)を求める。計算式は{数1}と同一で良い。
第2の設計座標系の原点座標O2(第2原点Og2に等しい)と座標軸の角度(α2゜)により、(設計上の)ガイドマークPDiは機械座標系上に記述することができる。
【0072】
これらの第2座標系で表された(設計上の)ガイドマークPDiの座標値は誤差比較手段に送られ、(5)第2の設計座標系から機械座標系に換算した(設計上の)ガイドマークPDiと(観測された)ガイドマークPi(j)の座標値との座標軸別の個別誤差を計算する。計算方法は前述の第1座標系の個別誤差の計算と同様である。
(6)第2の座標系の個別誤差(5)と従来手法の第1の座標系の個別誤差(2)と比較し判定する。一般には、誤差の広がり(最大誤差−最小誤差)が少ない方を採用すれば良い。
(7)有利な設計座標系の配置を採用する。
なお、特定の要請が或る場合、例えば、或る導体層が特に重要である場合などは、その層の誤差が少ない方を選ぶ等、採否の判定条件を適宜定めてもよい。
【0073】
このように、基準穴穴開け機の観測装置、穴開け装置、及び、送り装置の制御を行う制御装置内に内蔵される計算プログラムである、原点座標値算出手段、座標軸角度算出手段、及び、誤差比較手段で設計座標系の位置が推定され、穴開け機に設定された機械座標系により、多点振り分け式の基準穴の座標値が決定される。
特に、ガイドマークの個別誤差を算出し、特定の誤差を持つガイドマークを選別し、いずれの座標系が有利かの判定をする誤差比較手段を新設したことで、複数の設計座標系から最適なものを求め、選択された最適な設計座標系により、より精度の高い基準穴位置が得られることは、ワークの不良率を低減する上に大きな貢献をすると言える。
【0074】
通常は上記の手順に沿って、第1回の(観測された)ガイドマークPi(j)の重心を不動点とした最小二乗法の適用結果と、第2回の最大最小の誤差を持つガイドマークの座標値の算術平均で求めた第2の不動点とした最小二乗法の適用結果との比較で良好な結果を得ることができる。
【0075】
必要に応じて、算術平均による第2回目以降の最小二乗法適用を複数回繰り返すことも可能である。この場合は、初めに得られた誤差が初めに指定した最大誤差より小さくなったときに繰り返しを止めたり、2回目以降の計算を指定回数行ったら停止する等の方法を採用して、2個以上の座標系を想定して最高の座標系を選択することも可能である。
【0076】
第2回目以降の計算に使用する重み関数の与え方を変えても違った結果が得られる。例えば、全ての導体層に予め1を配分し、重要な要素の存在する導体層の重み関数を2とすると、この導体層に形成されたパターンは他の導体層に形成されたパターンに比べ誤差を少なくすることが可能である。
【0077】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明は、請求項2に述べるように、ガイドマークの重心が不動点とする従来手法で多層プリント配線板の第1の配置を決めた後に、再度不動点位置を変更して第2の多層基板の配置を算出し、いずれか誤差の少ないものを採用するので良品となる機会が増加し不良率減少に貢献する。先に述べたように、ホットプレス以降の工程は加工度が進んでいるため、僅かな不良率の減少も大きな廃棄原価の削減となり、生産コストに寄与するところ大である。
【0078】
また、請求項3に述べるように、多層配線板の導体層の内1艘のズレが大きい時などに第1の誤差の大きなガイドマークを選んで第2の不動点を設定すると、多層配線基盤の導体層の内1層のズレが大きい時などに特に効果を発揮する。1層のズレが大きい場合が不良全体のかなりの率を占めるで、不良率の減少に発生を防ぐことができる。先に述べたようにホットプレス以降の工程は加工度が進んでいるため、僅かな不良率の減少も大きな廃棄原価の削減となり、生産コストに寄与するところ大である。
【0079】
また、本発明では請求項4に述べるように、多層プリント配線板の配置を繰り返し求めことにより、満足の行く結果を得ることができる。特に層数の多い高多層配線板の不良率低減に効果が大きい。
【0080】
更に、請求項1に述べるように、本発明を実施するのに既に市場に供給されている振り分け式の基準穴穴開け機の機械構造部分を殆ど変更せずに、制御装置に内蔵されるプログラムの改良のみで対処することができる。プログラム変更は納品後でも比較的容易であり、既に市販された基準穴穴開け機の性能向上にも対応できる効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態である基準穴穴開け機の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態である基準穴穴開け機の構造を模式的に示す正面図及び側面図である。
【図3】本発明の実施の形態である基準穴穴開け機の構造を模式的に示す平面図である。
【図4】実用される多層配線板に設けられたガイドマークの配置とガイドマーク近傍に形成された基準穴(マーク)を示す模式図である。
【図5】多数穴基準の振り分け穴開けの原理を説明する模式図である。
【図6】多層配線板の導体層に設けられたガイドマークと、観測されたガイドマークの関係を示す模式図である。
【図7】基準穴穴開け機の制御装置の一部の構成と設計座標系位置の算出手順を対比したブロック図である。
【図8】多層プリント配線板の構成を説明する斜視図と内層の導体層の平面図、及びレイアップ用治具の側面図である。
【図9】多層プリント配線板の構成を説明する板厚方向の断面図である。
【図10】多層プリント配線板のパターン内に設けられたスルーホールを示す平面及び板厚方向の断面図である。
【符号の説明】
1 穴開け機、2 筺体、3 架台、4 X線発生装置、4a X線発生管、5 X線防護管、5a 穴、6 X線カメラ、7 スピンドル、7a チャック、7b ドリル、7c エアシリンダ、8 スピンドル架台、9 クランパ、9a エアシリンダ、9b クランパ支持具、9c クランパねじ、10 X移動架台、11 Y移動架台、12 可動テーブル、10a、11a、12a 直線ガイド(LMガイド)、10b、11b、12b ボールねじ、16 穴開け位置(1、2穴)、16a 穴開け位置(3、4穴)、17 作業者位置(白抜き矢印)、50 機械座標系(Xm、Ym、Zm、機械原点Om)、P1、P2、P3、P4 (観測された)ガイドマーク(機械座標系で記述)、PD1、PD2、PD3、PD4 (設計上の)ガイドマーク(設計座標系で記述)、H1、H2、H3、H4 基準穴、α 回転角(U軸とX軸のなす角度)、60 多層プリント配線板、61、61A 両面配線板、61a、61aA 単一配線板のパターン、62 導体、63 (絶縁)基板、64 プリプレグ、64a、64aA プリプレグ(基準穴付き)、65、65A、65B (レイアップ用)基準穴、66 ガイドマーク、67 基準穴、68、68A レイアップ治具板、68a、68aA、68aB 位置決めピン、71(b、c、d、e) 方形窓、72(b、c、d、e) 円形マーク、73 円形窓、100、102(2)ランド、101、101a スルーホール穴、102、102a スルーホール穴中心、
Claims (4)
- 直交するXm軸とYm軸を持つ機械座標系を設定した基準穴穴開け機筺体に固定された架台と、
多層プリント配線板の構成要素であるプリント配線板の導体層に形成され、且つ、前記プリント配線板の導体層に固定された設計座標系で座標値を記述された、少なくとも3点のガイドマークを観測する観測装置と、
前記プリント配線板に基準穴を穴開けする穴開け装置と、
前記Xm軸と前記Ym軸に平行な送り方向を持ち、前記プリント配線板と前記観測装置及び前記穴開け装置の相対位置を変換する送り装置と、
前記観測装置により観測された前記ガイドマークの座標値から前記設計座標系の配置を算出し、前記設計座標系で記述された基準穴座標値を前記機械座標系の座標値に変換して、前記送り装置を制御する制御装置と、
を備えた基準穴穴開け機において、
前記制御装置は、重み関数を所定の値に設定して前記プリント配線板の前記設計座標系の原点を前記機械座標系で記述された座標値として算出する原点座標値算出手段と、
前記設計座標系の座標軸が前記機械座標系の座標軸となす角度を算出する座標軸角度算出手段と、
前記機械座標値に変換された前記ガイドマークの座標値とガイドマークの観測値から個別誤差を算出し、該個別誤差を比較し、複数の前記設計座標の選別を行う誤差比較手段とを、
備えたことを特徴とする基準穴穴開け機。 - 前記ガイドマークの座標値観測後、全てのガイドマークの重み関数を1として第1の前記設計座標系の前記原点座標値、及び、前記座標軸角度を算出した後に、重み関数の値を変えて第2の前記設計座標系の前記原点座標値、及び、前記座標軸角度を算出し、前記ガイドマークの個別誤差の比較により第1または第2の前記設計座標系のいずれかを採用することを特徴とする請求項1に記載の基準穴穴開け機。
- 第1の前記設計座標の前記原点座標値及び前記座標軸角度に基づいて算出した前記ガイドマークの個別誤差の最大、及び、最小の値を持つ前記ガイドマークの前記重み関数のみを1として、第2の前記設計座標系の前記原点座標値、及び、前記座標軸角度を算出し、第1、及び、第2の前記ガイドマークの前記個別誤差を比較して誤差幅のより少ない第1または第2の前記設計座標系のいずれかを採用することを特徴とする請求項2に記載の基準穴穴開け機。
- 全ての前記ガイドマークの重み関数を1として第1の前記設計座標の前記原点座標値、及び、前記座標軸角度を算出した後に、重み関数の値を変えて前記設計座標の前記原点座標値、及び、前記座標軸角度の算出を複数回繰り返して、その都度、前記ガイドマークの前記個別誤差の比較を行い、前記個別誤差が増加するか、または、予め設定した最小誤差を下回るか、または算出回数が予め設定した繰り返し回数に達した時点で算出作業を終了し、いずれかの設計座標系を採用することを特徴とする請求項1に記載の基準穴穴開け機。
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