JP3840817B2 - 車両用空調装置の送風機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用空調装置の送風機において、吸い込まれた水がモータへ侵入することを阻止する技術に係わる。
【0002】
【従来の技術】
自動車など車両に搭載される空調装置は、室内気と室外気との切換箱の下面に、ファンの回転軸を縦に配した遠心式送風機の吸入口を接続した送風機ユニットを備える。遠心式送風機の吐出口は、ダクトを介して内部にエバポレータが収容されたクーリングユニットに連結されている。
【0003】
この車両用空調装置の送風機は、縦軸を有するように取り付けられ、上側板に吸入口が開口するとともに下側板にモータ装着穴が形成され、前記上側板と前記下側板の外縁を連結する渦巻き状周壁に設けたノーズ部(スクロールノーズ)を介して、略接線方向を指向した吐出口が設けられているスクロールケーシングと、該スクロールケーシング内に装着され縦軸を有する遠心式ファンと、前記モータ装着穴を塞いで締結されたフランジと、該フランジの中心に縦に固定され、出力軸が前記遠心式ファンに連結されたモータとを備える。
なお、ブラシの温度を下げて耐久性を向上させるため、近年、空冷能力が高いS型モータ(ストリップモータ)が良く採用される。
【0004】
自動車の前窓の前部(カウルトップ)は、構造によっては雨水などがカウル部より送風機ユニット内へ吸い込まれる。この吸い込まれた水は、大部分がファンによりスクロールケーシング内を旋回して吐出口の下流に設置されているクーリングユニット内に吹き出される。しかしながら、吸い込まれた水の一部は、ファンの下側のスクロールケーシングの下側板および該下側板に嵌め込まれたモータフランジに付着して旋回する。吸い込んだ水の量や吸込抵抗、送風機の下流の圧損によっては、その水がスクロールノーズ側よりモータフランジの中央に設けたモータ保持筒部壁またはモータハウジングの側壁を乗り越えてモータハウジングの上端に開口したモータ冷却口からモータ内に侵入し、モータの故障(錆つきロック)を招く。
【0005】
モータ内への水の侵入を防ぐ技術として、従来より下記に示すものが知られている。
スクロールケーシングの下板にリブを立てる(従来例1)。
モータを環状突起で包囲する(従来例2;特開平5- 133393号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来例1の技術は、水侵入には多少の効果があるものの、送風性能やモータ冷却性能に悪影響を及ぼす。
従来例2の技術は、環状突起内に水が溜まるまでは効果があるが、溜まり出す(一旦溜まると出ない)と逆にモータ内に水が侵入し易くなる。
【0007】
本願発明者は、図7、図8に示す如く、モータフランジ5の上面またはスクロールケーシング2の下側板23の上面に付着して旋回する水滴の運動を観察した結果、モータ4内に侵入する水は、モータフランジ5のノーズ部27側において、水滴がノーズ部27から吸い込まれる空気によって中心方向への運動エネルギーを付与されて矢印のように移動することを見出した。
【0008】
この水滴は図7に示す矢印の如く、モータ4を保持しているモータフランジ5の保持筒51を乗り越えて、モータ4のハウジング42のモータ冷却口45に到達することを見出した。
本発明の目的は、送風性能の低下を招かずに、送風機内に入り込んだ水のファンモータ内への侵入を有効に阻止できる車両用空調装置の送風機の提供にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
〔請求項1について〕
モータフランジの上面に、モータの軸を中心とする複数の円弧状リブを、少なくともノーズ部側が多重となるように同心円的に形成している。
モータの軸を中心とする複数の円弧状リブを同心円的に形成しているので、スクロールケーシング内に入り込んだ水の一部がリブ間を流れる。この水流が外側のリブを乗り越えてリブ間に入り込んだ水をリブ間から押し出すので、モータ内への水の侵入を阻止できる。
なお、ノーズ部は低圧であり水が集まり易いので、ノーズ部側が多重になるように円弧状リブを同心円的に形成している。
【0010】
また、モータフランジの上面に、複数の円弧状リブを同心円状に形成しているので、スクロールケーシング内の気流を乱すことが少なく、圧損・騒音の増大や、送風性能の低下を招かない。
【0011】
〔請求項2について〕
複数の円弧状リブは、ノーズ部の反対側に欠落部を有し、外側に位置する円弧状リブの円弧角を内側に位置する円弧状リブの円弧角より小さくするとともに、外側に位置する円弧状リブの端を内側に位置する円弧状リブの端より後退させている。
これにより、リブ間を流れる水流の水量を多くすることができ、外側のリブを乗り越えてリブ間に入り込んだ水をリブ間から強力に押し出せ、モータ内への水の侵入を確実に阻止できる。
【0012】
〔請求項3について〕
ノーズ部は圧力が最も低いので、スクロールケーシング内に侵入した水が集まり易い。
しかし、請求項3の構成では、モータフランジの上面に、ノーズ部で重なるように、内側リブをノーズ部の近傍から遠心式ファンの回転方向に延設し、外側リブをノーズ部の近傍から遠心式ファンの反回転方向に延設している。
これにより、外側リブを乗り越えて外側リブ内に侵入して来た水を、内側リブ内の通路と、リブが重なった内側リブ- 外側リブ間の通路とに分流することができる。よって、モータ内へ侵入し易い状態の水の水量を減らすことができるので、モータ内への水の侵入を阻止することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の第1実施例(請求項1、2に対応)を、図とともに説明する。図1および図2は本発明にかかる車両用空調装置の送風機1を示す。
送風機1は、自動車のエンジンルーム内に回転軸が縦となるように取り付けられており、スクロールケーシング2を備える。
スクロールケーシング2は、上側板21の中心部にベルマウス付きの吸入口22が開口しており、上側に設置された内気・外気切替箱20とともに送風機ユニットを構成している。
【0014】
スクロールケーシング2の下側板23には、中心部にモータ4を装着するためのモータ装着穴24が開口している。
モータ4は、モータ装着穴24を塞ぐモータフランジ5により縦に固定されている。
モータフランジ5は、外径がモータ装着穴24に対応した寸法に設定された円環板状を呈し、中央から上方に、モータ4を保持する保持筒51が延設されている。
【0015】
スクロールケーシング2内には、遠心式ファン3が収容されており、本実施例では、モータ4により左回転方向に駆動される。
スクロールケーシング2の渦巻き状周壁25には、略接線方向を指向した吐出口26が設けられており、吐出口26の回転方向側(図示上側)はノーズ部27となっている。
【0016】
ノーズ部27は、ファン3の外周に近接して吐出口26とスクロールケーシング2の内部とを区隔している。
このため、ノーズ部27の図示上側(スクロールケーシング2内)の静圧は、ノーズ部27の図示下側(吐出口26内)の静圧より低くなっている。この結果、吐出口26からノーズ部27とファン3の外周との隙間を通じてスクロールケーシング2内に洩れる図示上方へ気流が存在する。
【0017】
ファン3は、中央部が上方に膨出した膨出部31となっている底板32を備える。この底板32の外周部33は、環状の平板となっており翼列34が列設されている。翼列34の上端は連結環35により連結されている。膨出部31の中心には、モータ4の出力軸41が嵌め込まれる軸穴36が貫設されている。
【0018】
モータ4は、上方に出力軸41が突設され、ハウジング42の上部44がモータフランジ5の保持筒51に嵌め込まれて固定されている。
モータ装着穴24は、ファン3の外形より幾分大きい直径を有する。
ファン3およびモータ4の組付は、出力軸41に固定されたファン3とともにモータ4の上部44を、モータ装着穴24からスクロールケーシング2内に挿入し、モータフランジ5の外周を下側板23に締結してなされている。モータ4の上部44は、ファン3の膨出部31内に突き出した状態で配され、ハウジング42の上端面にはモータ4を冷却するためのモータ冷却口45が開けられている。
【0019】
モータフランジ5の上面には、モータ4の軸を中心とする円弧状の内側突条6および外側突条7が形成されている。
内側突条6(高さ6mm)は、ファン底板の膨出部31の外周部に位置する。この内側突条6の高さは、後述する外側突条7の高さ+2mm〜3mmが好適である。また、本実施例では、内側突条6の円弧角は270度であるが、突条間を流れる水流量から鑑み、270度±10度の範囲(何方回転のモータにも対応)が好適である。
なお、モータの回転方向が決まっている場合には、最低限、ノーズ部位置の上流120度からノーズ部位置の下流15度まで内側突条6を形成すれば良い。
【0020】
外側突条7(高さ4.5mm)は、ファン底板の平板となっている外周部33の下方に位置する。この外側突条7の高さは、外側突条7の突起上面とファン部材底面とのキャップが3mm以上となる寸法に決定する。
また、本実施例では、外側突条7の円弧角は240度であり、外側突条7の端を内側突条6の端より15度後退させている。なお、外側突条7の円弧角は、突条間を流れる水流量から鑑み、内側突条6の円弧角−(10度〜30度)が好適である。
【0021】
また、本実施例では、内側突条6- 外側突条7間の隙間は10mmであるが、7mm〜13mmの範囲が好適である。隙間が広過ぎる(13mmを越える)と水流の流れが弱くて押し出し力が不足し、狭過ぎる(7mm未満)と水が内側突条6内に入ってしまう。
【0022】
つぎに、送風機1内に吸い込まれた水の様子を説明する。
送風機1に吸い込まれた水の一部は、図1、図2に示す如く、一旦はスクロールケーシング2の渦巻き状周壁25に付着して下側板23の上面に流下する。この下側板23の上面に付着した水滴は、矢印の如く、下側板23の上面を旋回しながら大部分は吐出口26から、下流のクーリングユニットに吹き出される。そして、一部の水滴が旋回しながら外側突条7を乗り越え、内側突条6- 外側突条7間に入り込む。
【0023】
しかし、ノーズ部27の反対側に欠落部を有し、外側突条7の円弧角を内側突条6の円弧より30度小さくするとともに、外側突条7の端を内側突条6の端より15度後退させている。
これにより、内側突条6- 外側突条7間に水が入り易くなって、リブ間を流れる水流の水量を多くすることができ、この水流により外側突条7を乗り越えてリブ間に入り込んだ水をリブ間から強力に押し出し、モータ4内への水の侵入を確実に阻止できる。
【0024】
この結果、水の侵入に起因するモータ故障(錆つきロック)を防止することができる。なお、未対策品(図7、図8のもの)で20ccの混入が生じる様な条件で第1実施例品(図1、図2のもの)に対して水侵入試験を行ったところ、水の侵入は確認されなかった。なお、洗車する際に使用する洗剤液に対しても同様の侵入防止効果が確認された。
そして、内側突条6および外側突条7の外周に沿って回転方向に導かれた水は、半径方向の圧力差の少ない欠落部から遠心力で外側に移動し、さらに旋回運動して吐出口26から排出される。
【0025】
図3は、本発明の第2実施例(請求項1、2に対応)を示す。
本実施例では、外側突条7(高さ4.5mm)の外側に更に最外側突条8を形成している。
本実施例では、最外側突条8の円弧角は210度であり、最外側突条8の各端を外側突条7の各端より各々15度後退させている。なお、最外側突条8の円弧角は、外側突条7と最外側突条8との突条間を流れる水流量から鑑み、外側突条7の円弧角−(10度〜30度)が好適である。
【0026】
本実施例のものは、第1実施例のものより更に一層、モータ4内への水の侵入を阻止することができる。
【0027】
図4、図5は、本発明の第3実施例(請求項1、3に対応)を示す。
本実施例では、ノーズ部27に曲線距離で20mmのラップ代(重なり部分)ができる様に、ファン底板の平板となっている外周部33に、外側突条7と内側突条6とを形成している。
【0028】
本実施例では、内側突条6は高さが6mm、円弧角は100度、外側突条7は高さが4.5mm、円弧角は130度である。また、重なり部における内側突条6- 外側突条7間の隙間は10mmである。
後述する分流を効果的に行うため円弧角や高さは以下の範囲が好適である。
内側突条6の円弧角はノーズ部27から風下側に90度以上、120度以下。内側突条6の高さは、外側突条7の高さ+2mm〜3mm。外側突起7の円弧角はノーズ部27から風上側に120度以上、150度以下。ラップ代はノーズ部27を中心に曲線距離で20mm以上。
【0029】
つぎに、送風機1内に吸い込まれた水の様子を説明する。
ノーズ部27は圧力が最も低いので、スクロールケーシング2内に侵入した水がノーズ部27の近傍からモータ4内に入り易い。しかし、ラップ代を設けて外側突条7と内側突条6とを形成しているので、外側突条7を乗り越えて外側突条7内に侵入して来た水を、内側突条6内の通路と、ラップ代の内側突条6- 外側突条7間の通路とに分流することができる。よって、モータ4内へ侵入し易い状態の水の水量を減らすことができるので、モータ4内への水の侵入を阻止することができる。
【0030】
なお、未対策品(図7、図8のもの)で20ccの混入が生じる様な条件で第3実施例品(図4、図5のもの)に対して水侵入試験を行ったところ、5ccの侵入に抑えられた。
【0031】
図6は、本発明の第4実施例(請求項1、3に対応)を示す。
本実施例では、外側突条7(高さ4.5mm)の外側に更に第二の外側突条9を形成している。
第二の外側突条9は、ノーズ部27から風上側に形成され、その円弧角は90度である。
本実施例のものは、第3実施例のものよりモータ4内への水の侵入を阻止することができ、同様の条件で2ccの侵入に抑えられた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例にかかる送風機の横断面図である。
【図2】本発明の第1実施例にかかる送風機の縦断面図である。
【図3】本発明の第2実施例にかかる送風機の横断面図である。
【図4】本発明の第3実施例にかかる送風機の横断面図である。
【図5】本発明の第3実施例にかかる送風機の縦断面図である。
【図6】本発明の第4実施例にかかる送風機の横断面図である。
【図7】従来技術にかかる送風機の横断面図である。
【図8】従来技術にかかる送風機の縦断面図である。
【符号の説明】
1 送風機
2 スクロールケーシング
3 遠心式ファン
4 モータ
5 モータフランジ
6 内側突条(円弧状リブ)
7 外側突条(円弧状リブ)
8 最外側突条(円弧状リブ)
9 第二の外側突条(円弧状リブ)
21 上側板
22 吸入口
23 下側板
24 モータ装着穴
25 渦巻き状周壁
26 吐出口(吹出口)
27 ノーズ部
41 出力軸
Claims (3)
- 縦軸を有するように取り付けられ、上側板に吸入口が開口するとともに下側板にモータ装着穴が形成され、前記上側板と前記下側板の外縁を連結する渦巻き状周壁に設けたノーズ部を有し略接線方向に吹き出す吹出口が設けられているスクロールケーシングと、
該スクロールケーシング内に装着され縦軸を有する遠心式ファンと、
前記モータ装着穴を塞いで締結されたモータフランジと、
該モータフランジの中心に縦に固定され、出力軸が前記遠心式ファンに連結されたモータとからなる車両用空調装置の送風機において、
前記モータフランジの上面に、前記モータの軸を中心とする複数の円弧状リブを、少なくともノーズ部側が多重となるように同心円的に形成したことを特徴とする車両用空調装置の送風機。 - 前記複数の円弧状リブは前記ノーズ部の反対側に欠落部を有し、
外側に位置する円弧状リブの円弧角を内側に位置する円弧状リブの円弧角より小さくするとともに、外側に位置する円弧状リブの端を内側に位置する円弧状リブの端より後退させたことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置の送風機。 - 縦軸を有するように取り付けられ、上側板に吸入口が開口するとともに下側板にモータ装着穴が形成され、前記上側板と前記下側板の外縁を連結する渦巻き状周壁に設けたノーズ部を有し略接線方向に吹き出す吹出口が設けられているスクロールケーシングと、
該スクロールケーシング内に装着され縦軸を有する遠心式ファンと、
前記モータ装着穴を塞いで締結されたモータフランジと、
該モータフランジの中心に縦に固定され、出力軸が前記遠心式ファンに連結されたモータとからなる車両用空調装置の送風機において、
前記モータフランジの上面に、前記ノーズ部で重なるように、内側リブを前記ノーズ部の近傍から前記遠心式ファンの回転方向に延設し、外側リブを前記ノーズ部の近傍から前記遠心式ファンの反回転方向に延設したことを特徴とする車両用空調装置の送風機。
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