JP3840428B2 - サッシ用排水弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、サッシ用排水弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
図4は、従来技術を示すサッシの要部縦断面図である。サッシは窓枠とその窓枠に建て付けられた障子とからなるが、図4において、1はその窓枠を構成する下枠であり、2,3はその窓枠に建て付けられた引き違い障子を構成する内障子と外障子である。
障子2,3には、その下框の屋外側縦壁の下端部の内面に、屋内方向に突出する水密用フィン4,5が装着されて、その先端が下枠1のレール6,7に弾力的に接触されて、降雨時に雨水が各障子よりも屋内側に浸入することを防止する工夫が施され、また、召し合せ框の下端面にも、召し合せ框と下枠上面の間の隙間を塞ぐ水密部材(図示省略)が装着されて、雨水が召し合せ部よりも屋内側に浸入することを防止する工夫が施されいる。
【0003】
しかし、屋内外のとくに外気圧が内気圧よりも大きくなる急激な気圧変動が生じた場合は、障子の屋外側面を流下した雨水が、とくに召し合せ框の下端部と下枠の上面との間から、また、風圧により撓んだ外障子のフィン5とレール7との間から、屋内側に浸入する場合がある。
【0004】
そのような雨水の浸入量が多い時は、レール6,7間の溝に溜まり、最悪の場合は、溜まった雨水の水位WLが下枠1の屋内側堰壁8の上端部付近まで達することもある。また、寒冷地などでは、暖房時に障子2,3に生じた結露水が下枠1の上面まで流下し、長時間の内にレール6,7間の溝に溜まる場合もある。
【0005】
困ったことに、防水のために両障子に装着したフィン4,5や、召し合せ框下端面に装着した水密部材は、下枠1に溜まった水の排水性を妨げる原因になる。
そこで、従来は、図4に示すように、外障子の下框9の屋外側の縦壁10の下部に貫通孔11を設けて、その貫通孔に排水弁12を設けて、下枠1の上面に水が溜まった場合は、その排水弁12から水圧により屋外側に自然排出するようにしている。
【0006】
従来の排水弁12は、貫通孔11に嵌着できる形態の弁箱12aと、その弁箱の通路に通路の上端部に設けられた水平な支軸回りに、弁箱の通路の下端部から屋外方向にのみ回動できるように回転自在に支持された弁体12bとから構成されたものであった。そして、弁体12bは、レール6,7間に水が存在しない時は、弁体12bは自重により図4に実線で示されているようにほぼ垂直状態を維持し、通路を遮閉しているが、レール6,7間に水が溜まった時は、その水圧により弁体12bが図4に鎖線で示されているように、屋外側に回動して通路を開放するので、排水効果が得られるようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の排水弁12は、弁体12bが一つのみであるので、開放された通路が十分な排水性を確保し得る大きさにするためには、弁体12bの長さが必然的に大きくなり、そのため、弁の全開状態になった時は、図4に示されているように、弁体12bの先端が外障子3の下框の屋外側面から屋外方向に突出することとなる。
【0008】
図4において、13は外障子の摺動面よりも屋外側においてレール14を介して窓枠に移動自在に建て付けられた網戸であるが、サッシ窓枠の見込み幅は、規格により制限されているため、網戸13の屋内側面と外障子3の屋外側面との間の距離は、例えば、3..6mm程度しか離れていない。そのため、従来の排水弁12は、例えば風を受けた弁体が全開された状態において網戸13を移動すると、弁体12bがその網戸13に激突されて排水弁12が破損されたり、弁体12bが弁箱12aから脱落されたりする問題があった。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その課題は、弁体が全開状態にある時に網戸が移動されても、破損又は弁体の離脱を生じないサッシ用排水弁を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明によるサッシ用排水弁は、障子の下框の屋外側壁又は窓枠の下枠の屋外側壁に形成された孔に取付けられ、屋内外方向に貫通する通路を有する弁箱と、その弁箱の通路に水平な支軸回りに揺動自在に支持され、揺動に伴って前記通路を開閉する弁体とを有するサッシ用排水弁において、前記弁体を上下複数枚に分けて、全開状態とされた時に前記弁体の先端が前記弁箱の屋外面から突出しないようにしたことを特徴としている。
【0011】
上記構成において、弁体は上下複数枚に分割されているので、弁体一枚当たりの幅が小さい。従って、全開位置に回動された弁体の先端は弁箱の屋外面から突出しない。
【0012】
上記弁体は、全閉状態において屋外側に傾斜されていることが望ましい。
これにより、弁体は閉じた時に自重により弁箱と確実に接触し、弁体が微風などを受けた時に簡単に揺動して騒音を出すことがない。
【0013】
弁箱には、弁体の間に仕切り部が設けられていることが望ましい。
これにより、弁箱の剛性が向上し、弁体同士の密着による排水性の低減が防止される。
【0014】
さらに、少なくとも最上位の弁体に、全開状態においてその弁体が弁箱に密着することを防止するための凸部が設けてあることが望ましい。
これにより、少なくとも最上位の弁体が全開位置まで回転した時に、その弁体が水の表面張力により弁箱の天井面に密着して、排水後に通路が遮閉されない状態が発生することが予防される。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について、図1ないし図3の図面に基づいて説明する。なお、図4の構成部材と同一又は相当する部材には、同一の符号を用いる。図1は、本発明に係る排水弁の構成及び全閉状態及び全開状態を示す断面図、図2は、同排水弁を図4と同一のサッシに取付けた状態を示す要部の縦断面図である。
【0016】
図1及び図2において、12Nは本発明に係る排水弁であり、従来と同様に、弁箱12aと弁体12bとからなっている。弁箱12aは、その中央に屋内外方向に貫通する通路12cを有しており、その通路は、その高さ方向中間部の屋内側部分に形成された仕切り部12dにより上下に二分されている。そして、上部通路12c1 と下部通路12c2 にそれぞれの通路を開閉可能な弁体12b1 ,12b2 が、それぞれの弁体の上端部に設けられた水平な支軸12e1 ,12e2 の両端部を弁箱12aの側壁に形成された切欠孔12f1 ,12f2 に挿通することにより、その支軸回りに回転自在に支持されている。
【0017】
弁箱12aの中間部に仕切り部12dを設けたので、弁箱の剛性が向上するため、排水弁の取付け状態を堅固にすることができる。また、仕切り部12dを、上部弁体12b1 の支軸12e1 を通る垂直線よりも屋外側まで延出させ、かつ、上部弁体12b1 の長さが支軸12e1 から仕切り部12dまでの垂直距離よりもやや大きく設定することにより、上部弁体12b1 が全閉状態にある時は、その弁体12b1 が図1(a)に示すように屋外側に少し傾斜するようになっている。
下部弁体12b2 の長さも、その支軸12e2 から下部通路12c2 の下端部を形成している段部12gまでの垂直距離よりもやや大きく設定することにより、下部弁体12b2 が全閉状態にある時は、その弁体が屋外側に少し傾斜するようになっている。
【0018】
また、各弁体12b1 ,12b2 の支軸12e1 ,12e2 は、断面円形に形成されるとともに、それぞれ弁箱12aの天井面又は仕切り部12dの底面にできるだけ近い位置に設けられ、かつ、各弁体12b1 ,12b2 の下端部には、仕切り部12dの屋外側端部に形成された凸曲面及び段部12gの屋外側端部に形成された凸曲面にそれぞれ緊密に合致する凹面が形成してあって、各弁体12b1 ,12b2 が全閉位置にある時は、自重によりそれらの凸曲面と凹面が密着して、通路12cが完全に密閉するようにしてある。
弁体12b1 ,12b2 をこのように自重で傾斜状態に保つことにより、常に各弁体はその下端部が仕切り部12d又は段部12gに確実に接触するため、微風により揺動して騒音を発生することが防止され、また、排水弁12Nよりも屋内側に水が溜まった時に、水圧により容易確実に開放されるので、無騒音・高排水性の排水弁である。
【0019】
さらに、好ましくは、上部弁体12b1 の屋外側面の中間部には、屋外方向に突出する点状又は連続状の凸部12hが形成してある。これにより、図1(b)に示されているように、弁体12b1 が全開状態になった時でも、弁体の上面が弁箱12aの天井面に密着することを防止している。従って、下枠1の上面からの排水完了後に、全開状態において上部弁体12b1 が水に濡れていても、水の表面張力により弁箱の天井面に密着して通路12c1 が遮閉されない状態になることが予防される。従って、排水後のサッシの気密性が確保される。
【0020】
図1に示すように、本発明による排水弁においては、弁箱に2個の弁体を上下に配設するので各弁体の幅寸法が小さくなり、全開状態においても弁体の先端が弁箱12aの屋外面から突出しないようにすることが容易にできる。
従って、図2に示すように、本発明による排水弁12Nを従来の排水弁取付け位置に同様に取付けても、全開状態において弁体が外障子3の屋外側面から突出しないので、網戸13を移動する際にその網戸が弁体の先端に激突して弁箱又は弁体を破損させたり、外障子から脱落させたりすることがない。
全開状態において弁体の先端が弁箱12aの屋外面から突出しても、その突出量が網戸13の移動面まで達しない最小量であれば、同じ効果が得られる。
また、下側の弁体12b2 に埃やゴミ等が付着して開きにくい場合でも、上部弁体12b1 は埃やゴミ等が付着しにくいので、排水性能は維持される。
【0021】
図1に示す例は、弁体を2個備えたものであるが、間口寸法がとくに大きいサッシの場合は、十分な排水能力を備えるため、通路の面積の大きい排水弁を用いる必要がある。その場合は、全開状態において先端が弁箱の屋外側面から突出しない高さを有する2個又は3個以上の弁体を上下方向に配設すればよい。
【0022】
上記の実施の形態は、閉鎖位置の外障子の下部と下枠1のレール6,7間及び堰壁8の間に浸入した雨水又は結露水を排水するため、本発明に係る排水弁をサッシの引き違い障子の外障子3の下框に取付けた例であったが、本発明に係る排水弁12Nは、取付け位置が引き違い障子のほか、片引き障子、嵌め殺し障子などにも取付けることができる。
【0023】
さらに、図3に示すように、各種の障子が建て付けられるサッシの下枠1Eの、屋外側壁15の、上下の連結壁16,17の間の部分に貫通孔18を設け、その貫通孔に本発明に係る排水弁12Nを取付けて、下枠1Eの上面に浸入した雨水又は結露水を、上部連結壁16に形成した孔19から上下の連結壁16,17の間に流入させ、その排水弁12Nを経て屋外側に排出させるのにも使用することができる。
【0024】
図3に示す下枠1のように、屋外側壁15と上部連結壁16の間に十分に大きな間隔がない場合は、従来の1個の弁体を用いる排水弁では、その弁体の先端が全開時に屋外側壁15から屋外方向に突出しないように取付けることが困難であったが、本発明による排水弁12Nは、弁体を複数個にしたことで、各弁体の高さが従来の弁体の高さの複数分の一になるので、弁箱の見込み幅が相対的に小さくなるため、屋外側壁15と上部連結壁16との間の排水弁取付け部の奥行きが少ない部位でも、全開時に弁体の先端を屋外側壁15から屋外方向に突出させることなく、排水弁12Nの取付けが容易にできる。
【0025】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1の発明によれば、弁体を上下複数枚に分けて、弁体が全開状態とされた時にその弁体の先端が弁箱の屋外面から突出しないか、突出しても突出量を最小にしたので、弁体が全開状態にある時に網戸が移動されても、破損又は弁体の離脱を生じないサッシ用排水弁を提供することができ、排水弁取付け部の奥行きが少ない部位でも排水弁の取付けが容易にできる。
【0026】
請求項2の発明によれば、弁体は全閉状態において屋外側に傾斜されているので、弁体は閉じた時に自重により弁箱と確実に接触し、弁体が微風などを受けた時に簡単に揺動して騒音を出すことがない。
【0027】
請求項3の発明よれば、弁体の間に仕切り部が設けられているので、弁箱の剛性が向上するとともに、弁体同士の密着による排水性の低減が防止される。
【0028】
請求項4の発明によれば、最上位の弁体に、全開状態においてその弁体が弁箱に密着することを防止するための凸部が設けてあるので、少なくとも最上位の弁体が全開位置まで回転した時に、その弁体が水の表面張力により弁箱の天井面に密着して、排水後に通路が遮閉されない状態が発生することが予防される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る排水弁の構成及び作用を示す縦断面図。
【図2】図1の排水弁を取付けたサッシの要部断面図。
【図3】排水弁の正面図。
【図4】本発明の他の取付け例を示すの要部の縦断面図。
【図5】従来の排水弁の構成及び取付け状態を示す要部断面図。
【符号の説明】
12 排水弁
12N 排水弁
12a 弁箱
12b1 ,12b2 弁体
12c,12c1 ,12c2 通路
12d 仕切り部
Claims (4)
- 障子の下框の屋外側壁又は窓枠の下枠の屋外側壁に形成された孔に取付けられ、屋内外方向に貫通する通路を有する弁箱と、その弁箱の通路に水平な支軸回りに揺動自在に支持され、揺動に伴って前記通路を開閉する弁体とを有するサッシ用排水弁において、
前記弁体を上下複数枚に分けて、前記弁体が全開状態とされた時に、前記弁体の先端が前記弁箱の屋外面から突出しないか、突出しても突出量を最小にしたことを特徴とするサッシ用排水弁。 - 弁体は、全閉状態において屋外側に傾斜されていることを特徴とする請求項1に記載されたサッシ用排水弁。
- 弁箱には、弁体の間に仕切り部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載されたサッシ用排水弁。
- 少なくとも最上位の弁体に、全開状態においてその弁体が弁箱に密着することを防止するための凸部が設けてあることを特徴とする請求項1,2,又は3に記載されたサッシ用排水弁。
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