JP4686376B2 - 建具 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載された止水構造は、窓枠の上枠、下枠、および左右の縦枠における室内側および室外側の片と、障子の上框、下框、および左右の縦框における室内側の気密材および室外側の水返しとが当接することで、窓枠と各框材との間に空間が形成されている。そして、下枠に形成した外気導入部(外圧導入孔)から外気を導入して、窓枠と各框材との間の空間を外気との等圧空間とすることで、風圧力を伴う雨水等が等圧空間に吹き込まず、室内側の気密材を越えて室内側に浸入しにくくなっている。
さらに、この止水構造では、外気導入部の周囲に撥水処理を施し、外気導入部に水膜が形成されないようにすることで、外気導入部を小さくしても窓枠と各框材との間の空間が室外空間と等圧に維持できるとされている。
そして、上部外気導通経路は、風雨が直接かかりやすい下枠の上面側(レール部の上側)に形成されているため、レール側方空間への雨水の直接的な浸入を防止するために上部外気導通経路を狭く形成する、つまりレール部と下框の底面部との隙間およびレール部と室外側垂下片との隙間を狭く設定することが望ましい。このように上部外気導通経路を狭くした場合でも、下枠の中空部を介して雨水が直接かかりにくい下部外気導通経路を通してレール側方空間に外気を導入することができるので、強風時においてもレール側方空間が室外空間に対して差圧が生じにくく、等圧空間を維持することができる。
従って、強風を伴う雨水のレール側方空間への浸入を防止することができるので、このレール側方空間と室内空間とを仕切る気密材位置からの雨水の浸入を防止して、水密性能の向上を図ることができる。
このような構成によれば、室外側レール部よりも室内側に形成される室外側レール側方空間に、第1の連通孔、中空部、および第3の連通孔を介して外気を導入することで、強風時においても室外側レール側方空間を室外空間と等圧な空間とすることができ、この室外側レール側方空間への強風を伴う雨水の浸入を防止して、水密性能のさらなる向上を図ることができる。
このような構成によれば、下枠上面部に雨水が浸入したとしても、この雨水が止水部材で阻止されて室外側障子の戸先框が当接する縦枠側に流れていくことが防止されるとともに、止水部材と室外側障子の戸先框が当接する縦枠との間に位置する室外側レール側方空間に第3の連通孔が開口して設けられているので、この部分の室外側レール側方空間が室外空間と等圧になって雨水の浸入が防止できる。従って、室外側障子の戸先框が当接する縦枠と下枠との接合部分(メタルタッチ部分)に雨水が浸入しにくくなるので、縦枠と下枠との隙間を介して室内空間への雨水の浸入が防止でき、水密性能をより一層向上させることができる。
図1は、本発明の実施形態に係る建具である引違い窓1の一部を示す縦断面図である。図2は、引違い窓1を示す横断面図である。図3および図4は、それぞれ引違い窓1の下枠4を拡大して示す縦断面図であり、図3は、閉じた状態の室内側障子10A位置での縦断面図であり、図4は、閉じた状態の室外側障子10B位置での縦断面図である。図5(
A),(B)は、それぞれ下枠4を示す平面図および正面図であり、図6および図7は、そ
れぞれ下枠4を示す斜視図である。図8は、下枠4と縦枠5との接合部分を示す斜視図である。
図1および図2において、引違い窓1は、建物の外壁開口部に固定される窓枠2と、窓枠2の内部に開閉自在に支持された室内外一対の障子10(室内側障子10A、室外側障子10B)とを有して構成されている。窓枠2は、それぞれアルミ形材製の上枠(不図示)、下枠4、および左右の縦枠5を四周枠組みして形成されている。障子10は、それぞれアルミ形材製の上框(不図示)、下框12、左右の縦框である戸先框13および召合せ框14(内召合せ框14A、外召合せ框14B)と、これらを四周框組みした内部に嵌め込んだガラスパネル15とを有して構成されている。そして、室内側障子10Aおよび室外側障子10Bは、各々の戸先框13が縦枠5に当接するとともに、内外の召合せ框14A,14Bが見込み方向に重なって閉じるようになっている。
また、下枠4と室外側障子10Bの下框12との間には、室外側レール部43、下枠上面部41、下枠中空部45の室外側側面部453、延出片部46、気密材46A、下框12の室内側垂下片123および底面部122で囲まれた室外側レール側方空間48が形成されている。この室外側レール側方空間48は、室外側レール部43と室外側障子10Bの下框12の底面部122との隙間、および室外側レール部43と下框12の室外側垂下片124との隙間を介して室外空間に連通されている。このような室外側レール部43の上側を通って室外側レール側方空間48を室外空間に連通させる経路によって、室外側障子10Bにおける上部(第1)外気導通経路が構成される。
また、下枠中空部45の上面部451おいて、閉じた状態の室内側障子10Aにおける内召合せ框14Aの下方位置および戸先框13の下方位置の互いに離隔した2箇所には、第2連通孔456が設けられている。これらの第2連通孔456を介して下枠中空部45が室内側レール側方空間47に連通されている。
以上のような第1連通孔455および第2連通孔456によって、室内側レール側方空間47が室外空間に連通されており、このような下枠中空部45を介した経路によって、室内側障子10Aにおける下部(第2)外気導通経路が構成される。
さらに、室内側レール部42における、閉じた状態の室内側障子10Aにおける内召合せ框14Aの下方位置には、当該室内側レール部42を見込み方向に貫通する召合せ部連通孔458が設けられている。この召合せ部連通孔458は、内召合せ框14Aの中空内部空間を室外空間に連通させるもので、内召合せ框14A内部に外気を導入して等圧空間とするためのものである。
止水ブロック49は、樹脂製の部材であって、室外側レール部43の基端部および下枠上面部41に密接する底面部491と、延出片部46の下側に隙間を介して対向する上面部492と、室外側障子10Bの室内側垂下片123に沿った側面部493とを有して形成されている。そして、止水ブロック49の上面部492と延出片部46との間に隙間が形成されることで、この隙間を介して通気がなされるため、止水ブロック49で仕切られた室外側レール側方空間48の左右の空間が連通されている。
図9(A)は、下枠4の室内側レール部42近傍と室内側障子10Aの下框12との水密構造を説明する縦断面図であり、図9(B)は、室内側レール部42近傍における通気状態を説明する図である。図10は、下枠4の室内側レール部42近傍と室内側障子10Aの下框12との水密構造を具体的に説明する縦断面図である。
図9(A)および図10に示すように、室内側レール部42と下框12の室外側垂下片124との隙間寸法がW1 であり、室外側垂下片124の下端縁から室内側レール部42の上端縁までの高さ寸法がhであり、室内側レール部42の上端縁と下框12の底面部122との隙間寸法がW2 である。一方、図9(B)に示すように、室外空間の気圧がPo 、室内空間の気圧がPi 、室内側レール側方空間47の気圧がPc であり、室内側レール部42の上側を通る上部外気導通経路における通気量がQa であり、下枠中空部45を介した下部外気導通経路における通気量がQb であり、室内側垂下片123と気密材44Aとの隙間から室内空間に流入する通気量がQi である。
また、一般的に通気量Qは、次の式(1)で算出される。この式(1)において、Cは空気流量係数であり、Aは開口面積であり、ΔPは圧力差(ΔP=Po−Pc)であり、ρは空気密度である。
さらに、隙間寸法W1 部分(室内側レール部42と室外側垂下片124との隙間)の開口面積A1 および空気流量係数C1 と、隙間寸法W2 部分(室内側レール部42上端と下框12の底面部122との隙間)の開口面積A2 および空気流量係数C2 とを、式(2)に代入することで、次の式(3)が導かれる。そして、式(3)から、式(4)のような開口面積A1 ,A2 同士の関係式、および式(5)のような隙間寸法W1 ,W2 同士の関係式が導かれる。この式(4)、あるいは式(5)を満足するように、開口面積A2 あるいは隙間寸法W2 を設定する、つまり室内側レール部42上端と下框12の底面部122との隙間間隔を小さく設定することで、室内側レール部42を越えて室内側レール側方空間47に雨水が浸入することが防止できるようになる。
下框12の室外側垂下片124下端縁から室内側レール部42の上端縁までの高さ寸法hを、7.0mmに設定した(h=7.0mm)。
また、上部外気導通経路における隙間寸法W1 を、6.1mmに設定し(W1 =6.1mm)、隙間寸法W2 を、2.4mmに設定した(W2 =2.4mm)。これにより、室内側障子10Aの幅寸法を1.0m とした場合の上部外気導通経路における開口面積Aa は、隙間寸法の小さいW2 に基づいて、次のようになる。
Aa =2.4×10-3 (m 2)
また、下部外気導通経路における開口面積Ab は、第1連通孔455および第2連通孔456としてφ8の孔を6個設けたとすれば、次のようになる。
Ab =3.02×10-4(m2)
さらに、室内側垂下片123と気密材44Aとの隙間(室内側開口面積Ai )として、次のように設定した。
Ai =4.1×10-5(m2)
Po =1500Pa=1500/9.8(kg/m2)
また、室内側レール側方空間47の気圧Pc を、次のように設定した。
Pc =1430(Pa)=1430/9.8(kg/m2)
さらに、空気流量係数Cとして、室内側の空気流量係数Ci を1.0と設定し(Ci =1.0)、上部外気導通経路における空気流量係数Ca を水膜が張ったものとして0.8と設定した(Ca =0.8)。
Qi =2.0×10-3(m3/s)
そして、Qa +Qb =Qi の関係式、および開口面積Aa ,Ab の比率より、上部外気導通経路における通気量Qa は、次のように算出される。
Qa =Aa/(Aa+Ab)・Qi=1.77×10-4(m3/s)
これにより、上部外気導通経路における流速Vは、次のようになる。
V=Qa/(Ca・Aa)=363.6×10-3(m/s)
この流速Vを前記式(2)に代入することで、室内側レール部42の必要高さ寸法hreq が以下のように算出される。
hreq>1/2g・(Qa/CaAa)2=6.74×10-3(m)=6.74(mm)
従って、下框12の室外側垂下片124下端縁から室内側レール部42の上端縁までの高さ寸法hを7.0mmに設定するとともに、室内側レール部42上端と下框12の底面部122との隙間寸法W2 を2.4mmに設定したことで、雨水が室内側レール部42を越えて室内側レール側方空間47に浸入することがないことが分かった。
(1)すなわち、室内側障子10の下框12と下枠4との間に形成される室内側レール側方空間47は、室内側レール部42の上側を通る上部外気導通経路と、下枠中空部45を介した下部外気導通経路とによって、室外空間に連通されているので、この室内側レール側方空間47が室外空間と等圧な空間になりやすく、室内側レール側方空間47への雨水の浸入が防止できる。
さらに、上部外気導通経路(特に、隙間寸法W2 )を狭く設定し、室内側レール部42を越える雨水の浸入を防止した場合でも、下部外気導通経路を通して室内側レール側方空間47に外気を導入することができるので、強風時においても室内側レール側方空間47が室外空間に対して差圧が生じにくく、等圧空間を維持することができる。
従って、強風を伴う雨水の室内側レール側方空間47への浸入を防止することができるので、この室内側レール側方空間47と室内空間とを仕切る気密材44A位置からの雨水の浸入を防止して、水密性能の向上を図ることができる。
例えば、前記実施形態においては、室内外一対(二枚)の障子10を有した引違い窓1について説明したが、本発明の建具は、三枚建ての引違い窓や四枚建ての引違い窓でもよい。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
Claims (3)
- 上枠、下枠、および左右の縦枠を有する窓枠と、この窓枠内に開閉自在に支持された室内外一対の障子とを備えた建具であって、
前記下枠は、前記室内外の障子の戸車をそれぞれ案内する室内側および室外側のレール部と、室内側レール部の室内側に対向して設けられた室内側側壁部と、室内側レール部および室内側側壁部の下側で室内側レール部の室内側に設けられた中空部とを備え、
前記室内外の障子は、それぞれ上框、下框、および左右の縦框を備えて構成され、前記下框には、前記下枠のレール部上方に位置する底面部と、この底面部に連続して下方に延出する室内側および室外側の垂下片とが設けられ、前記室内側障子における前記室内側垂下片と前記下枠の室内側側壁部とが気密材を介して接続され、
前記下枠と室内側障子との間には、前記室内側レール部、中空部の上面、室内側側壁部、気密材、前記下框の室内側垂下片および底面部で囲まれた室内側レール側方空間が形成され、この室内側レール側方空間が前記下枠の室内側レール部と下框の底面部との隙間、および室内側レール部と室外側垂下片との隙間を介して室外空間に連通され、
前記下枠の中空部の室外側側面には、当該中空部を室外空間に連通させる第1の連通孔が設けられ、前記中空部の上面には、前記室内側障子を閉じた状態において当該中空部を前記室内側レール側方空間に連通させる第2の連通孔が設けられ、
前記第1の連通孔は、閉じた状態の前記室内側障子における召合せ框の下方位置に設けられ、
前記第2の連通孔は、閉じた状態の前記室内側障子における召合せ框の下方位置および戸先框の下方位置に設けられている建具。 - 前記下枠は、前記中空部の室外側下端部から室外側に延びて前記室外側レール部の基端に連続した下枠上面部と、前記中空部の室外側側面から室外側に延出した延出片部とを備え、前記室外側障子における前記室内側垂下片と前記下枠の延出片部とが気密材を介して接続され、
前記下枠と室外側障子との間には、前記室外側レール部、下枠上面部、中空部の室外側側面、延出片部、気密材、前記下框の室内側垂下片および底面部で囲まれた室外側レール側方空間が形成され、この室外側レール側方空間が前記下枠の室外側レール部と下框の底面部との隙間、および室外側レール部と室外側垂下片との隙間を介して室外空間に連通され、
前記下枠の中空部の室外側側面には、前記室外側障子を閉じた状態において当該中空部を前記室外側レール側方空間に連通させる第3の連通孔が設けられている請求項1に記載の建具。 - 前記下枠の下枠上面部における閉じた状態の前記室外側障子の下方位置には、当該下枠上面部上の水を止める止水部材が設けられ、この止水部材よりも前記室外側障子の戸先框が当接する縦枠寄りに前記第3の連通孔が設けられている請求項2に記載の建具。
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