JP3839743B2 - 住宅建築物用油圧ダンパ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物に用いられる油圧ダンパ、特に一般住宅建築物用油圧ダンパの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高層建築物等に設けられる制震構造として、従来、例えば特開2000−24032号公報に開示されたものがある。
【0003】
これについて説明すると、図9に示すように、相対峙する柱51,51と上下の水平梁55,52からなる構造枠の内側にサポートメンバ53が固定され、このサポートメンバ53と構造枠の水平梁55との間に油圧ダンパ54が設けられる。
【0004】
油圧ダンパ54は、円筒状のシリンダと、このシリンダの先端から突出するピストンロッドとを備え、シリンダの基端が水平梁55に連結され、ピストンロッドの先端がサポートメンバ53に連結される。
【0005】
建物が地震等によって横揺れした場合、構造枠における上下の水平梁55と52が相対的に横方向に変位するのに伴って油圧ダンパ54が伸縮作動し、構造枠の振動を減衰し、建物の揺れを減少させる。
【0006】
重量鉄骨の構造枠では、上下の水平梁55,52間の距離より柱51,51間の距離が大きく、油圧ダンパ54の取り付けスペースを十分に確保することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の住宅建築物用油圧ダンパ54を一般のプレハブ住宅等の構造枠に設けようとすると、柱間の距離が短いため、油圧ダンパ54の取り付けスペースが不足して構造枠を構成できなかったり、十分な制震効果が得られないという問題点があった。
【0008】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、特に一般のプレハブ住宅等に適用できる住宅建築物用油圧ダンパを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、住宅の上梁と下梁および対の柱からなり、上梁と下梁間の距離Hより柱間の距離Wが小さい構造枠と、上梁または下梁に固定されるサポートメンバとの間に設けられ、この構造枠の振動を減衰する住宅建築物用油圧ダンパに適用する。
【0010】
そして、筒状のシリンダと、このシリンダの端部から突出するピストンロッドとを備え、シリンダの胴部の中央部に前記サポートメンバに対して連結されるシリンダ連結部を形成し、このシリンダ連結部が構造枠の中心線上に配置され、に変位させることが可能ピストンロッドをに変位させることが可能構造枠に対して垂直方向に延びるピンを介して摺動可能に結合する滑り軸受を備え、に変位させることが可能シリンダ連結部がに変位させることが可能サポートメンバに対して水平方向に延びる対のトラニオンピンを介して回動可能に結合され、このトラニオンピンをに変位させることが可能シリンダの胴部の中央部から突出させたたことを特徴とするものとした。
【0013】
【発明の作用および効果】
第1の発明によると、建物が地震等によって横揺れした場合、構造枠が横方向に変形するのに伴って油圧ダンパが伸縮作動することにより減衰力を発生し、建物の揺れを減少させる。
【0014】
油圧ダンパはシリンダの胴部の中央部がシリンダ連結部を介してサポートメンバに固定されているため、油圧ダンパの取り付けピッチがその全長より短くなり、油圧ダンパの両端がサポートメンバと水平梁とにそれぞれ連結された従来構造に比べて油圧ダンパの取り付けスペースとストロークに対する制限を減らすことができる。これにより、油圧ダンパは限られたスペースのなかで必要なストロークが確保され、十分な制震効果を得ることができ、特にプレハブ住宅等のような上梁と下梁間の距離Hより柱間の距離Wが小さい構造枠に適用することが可能となる。
【0015】
油圧ダンパはサポートメンバに対するシリンダ連結部が構造枠の中心線O上に配置されているため、油圧ダンパに生じる減衰力が構造枠の左右方向について均等に働き、バランスが良く補強等が不要になる。
【0016】
そして、構造枠の変形に応じてピストンロッドの先端部がピンに対して上下に摺動することにより、油圧ダンパの円滑な作動性が
【0017】
そして、構造枠の変形に応じてシリンダがトラニオンピンを中心に回動することにより、油圧ダンパの円滑な作動性が得られる。
【0018】
【発明の実施の形態】
まず、本発明が適用可能な参考例を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1はプレハブ住宅等の一般住宅建築物を構成する構造枠31を正面から見た図であり、以下、この図において紙面に直交して手前側を前方とし、奥側を後方として説明する。
【0020】
耐力壁となる構造枠31は、水平方向に延びる上梁32および下梁33と、垂直方向に延びる対の柱34とを備える。構造枠31は、一般住宅の寸法規格に基づいて上梁32および下梁33間の長さが決まり、上梁32と下梁33間の距離Hより柱ピッチWが小さい。
【0021】
構造枠31の内側には、図示しない前後ブレース(筋交い)が互いに交差して設けられるとともに、この前後ブレースを避けるようにしてサポートメンバ40が下梁33に固定され、このサポートメンバ40を介して油圧ダンパ1が構造枠31に取り付けられる。住宅建築物用油圧ダンパ1は、サポートメンバ40と上梁32の間で伸縮するように取り付けられ、上梁32と下梁33間の振動を減衰するようになっている。
【0022】
油圧ダンパ1は例えば複筒式円筒状のシリンダ2と、このシリンダ2の一端から突出するピストンロッド3とを備え、シリンダ2の内部に図示しない減衰力発生機構が内蔵される。シリンダ2に対してピストンロッド3が伸縮作動するのに伴って作動油がシリンダ2内で流動し、減衰力発生機構がこの作動油に抵抗を付与するようになっている。
【0023】
なお、減衰力発生機構はシリンダ2に対するピストンロッド3の移動速度が例えば3cm/s前後においてリリーフ特性を持つバイリニア特性を発揮し、また3cm/s以下の微低速域においてオリフィス特性を発揮してリリーフする減衰力特性に設定されている。これにより、地震により大きな加振外力が作用したときに、過大な減衰力が発生して構造枠31が破壊されることを防止できる。
【0024】
油圧ダンパ1はシリンダ2の一端からピストンロッド3が突出する片ロッド形ダンパであり、複筒式シリンダ2の内部にはピストンロッド3の侵入体積分の作動油を溜める油溜室が画成されている。
【0025】
なお、油圧ダンパはシリンダの両端からピストンロッドが突出する両ロッド形ダンパとしても良い。この場合、ピストンロッドの侵入体積分の作動油を溜める油溜室が不要となり、単筒式シリンダを用いて構造の簡素化がはかれる。
【0026】
そして、シリンダ2の胴部20の中央部をサポートメンバ40に固定するため、シリンダ2はその胴部20の中央部にサポートメンバ40に対する取付座21を有する。
【0027】
取付座21はシリンダ2の胴部20から軸線と直交方向に突出して形成される。サポートメンバ40の先端にはこの取付座21に当接するブラケット41が形成される。取付座21が複数のボルト8を介してブラケット41に締結される。
【0028】
サポートメンバ40及びブラケット41は構造枠31の中心線Oについて対称的に形成され、サポートメンバ40に対するシリンダ2の連結部が構造枠31の中心線O上に配置される。
【0029】
ピストンロッド3の先端が構造枠31の上梁32に対して上下方向に変位可能に連結される。図2に示すように、上梁32にはブラケット35を介して垂直方向に延びるピン36が固定される。ピストンロッド3の先端にはアイ部材27を介して滑り軸受28が固定される。この滑り軸受28がピン36に摺動可能に嵌合し、ピストンロッド3が構造枠31に対して上下方向に変位可能、かつ構造枠31に対して回動可能に連結される。図2に示す状態で、滑り軸受28はピン36に対して上方向に距離Lだけ摺動できる。
【0030】
以上のように構成され、建物が地震等によって横揺れした場合、上梁32と下梁33の間に略水平方向の相対変位が生じる。上梁32が図3に矢印で示す方向に変位するのに伴って油圧ダンパ1が伸張し、この矢印と逆方向に変位するのに伴って油圧ダンパ1が収縮する。油圧ダンパ1はこうして伸縮作動することにより減衰力を発生し、上梁32の変位を抑えて建物の揺れを減少させる。
【0031】
図3に示す構造枠31の変形によって上梁32に対して油圧ダンパ1が上下にH−H′だけ変位する場合、ピストンロッド3の先端部が滑り軸受28を介してピン36に対して上下に摺動することにより、油圧ダンパ1の円滑な作動性が得られる。
【0032】
油圧ダンパ1はサポートメンバ40に対するシリンダ2の連結部が構造枠31の中心線O上に配置されているため、油圧ダンパ1に生じる減衰力が構造枠31の左右方向について均等に働き、構造枠31のバランスが良く補強等が不要になる。
【0033】
しかし、構造枠31は、上梁32と下梁33間の距離Hより柱ピッチWが小さい長方形に形成されているため、この柱ピッチWの範囲内に収められるよう油圧ダンパ1におけるシリンダ2の胴部の中央部がサポートメンバ40に固定されているため、油圧ダンパ1の取り付けピッチがその全長より短くなり、油圧ダンパ1の両端がサポートメンバと水平梁とに連結された従来構造に比べて油圧ダンパ1のストロークに対する制限を受けることがない。これにより、油圧ダンパ1は限られたスペースのなかで必要なストロークが確保され、十分な制震効果が得られる。
【0034】
他の参考例として、図4に示すように、サポートメンバ40を上梁32に固定し、油圧ダンパ1をサポートメンバ40と下梁33の間で伸縮するように取り付けて、上梁32と下梁33間の振動を減衰するようにしても良い。
【0035】
本発明の実施の形態として、図5に示すように、本発明のシリンダ連結部としてシリンダ2の胴部20の中央部から水平方向に突出する対のトラニオンピン23が形成され、このトラニオンピン23がブラケット43を介してサポートメンバ40に回動可能に支持される。
【0036】
一方、ピストンロッド3の先端がピン36を介して上下方向に変位可能に連結される。
【0037】
建物が地震等によって横揺れした場合、構造枠31の変形に応じてシリンダ2がトラニオンピン23を中心に回動するとともに、ピストンロッド3の先端部がピン36に対して上下に摺動することにより、油圧ダンパ1の円滑な作動性が得られる。
【0038】
また、図6に示す参考例は、シリンダ連結部としてシリンダ2の胴部20から水平方向に突出する対のトラニオンピン23が形成される一方、ピストンロッド3の先端が水平方向に延びるピン37を介して連結され、トラニオンピン23による回動変位が許容される。
【0039】
この場合、構造枠31の変形に応じてシリンダ2がトラニオンピン23を中心に回動するとともに、ピストンロッド3の先端部がピン36に対して上下に摺動することにより、油圧ダンパ1の円滑な作動性が得られる。
【0040】
しかし、シリンダ2の胴部20からトラニオンピン23を突出させる構造とすると、油圧ダンパ1の前後幅が大きくなり、これを住宅用の壁厚内に収めることが難しい。
【0041】
図7に示す参考例は、シリンダ連結部としてシリンダ2の胴部20から下方に突出するブラケット25を介して水平方向に延びるピン26が設けられ、このピン26がブラケット43を介してサポートメンバ40に回動可能に支持される。
【0042】
一方、ピストンロッド3の先端がピン36を介して上下方向に変位可能に連結される。
【0043】
この場合、構造枠31の変形に応じてシリンダ2がピン26を中心に回動するとともに、ピストンロッド3の先端部がピン36に対して上下に摺動することにより、油圧ダンパ1の円滑な作動性が得られる。
【0044】
また、図8に示す参考例は、シリンダ連結部としてシリンダ2の胴部20から下方に突出するブラケット25を介して水平方向に延びるピン26が形成される一方、ピストンロッド3の先端が水平方向に延びるピン37を介して連結され、ピン26による回動を許容する。
【0045】
この場合も、構造枠31の変形に応じてシリンダ2がピン26を中心に回動するとともに、ピストンロッド3の先端部がピン37により回動することにより、油圧ダンパ1の円滑な作動性が得られる。
【0046】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例を示す構造枠等の正面図。
【図2】同じくブラケット等の断面図。
【図3】同じく構造枠が変形する様子を示す正面図。
【図4】他の参考例を示す構造枠等の正面図。
【図5】本発明の実施の形態を示す構造枠等の正面図。
【図6】さらに他の参考例を示す構造枠等の正面図。
【図7】さらに他の参考例を示す構造枠等の正面図。
【図8】さらに他の参考例を示す構造枠等の正面図。
【図9】従来例を示す構造枠等の正面図。
【符号の説明】
1 油圧ダンパ
2 シリンダ
3 ピストンロッド
23 トラニオンピン(シリンダ連結部)
31 構造枠
32 上梁
33 下梁
34 柱
36 ピン
40 サポートメンバ
Claims (1)
- 住宅の上梁と下梁および対の柱からなり、上梁と下梁間の距離Hより柱間の距離Wが小さい構造枠と、上梁または下梁に固定されるサポートメンバとの間に設けられ、この構造枠の振動を減衰する住宅建築物用油圧ダンパにおいて、筒状のシリンダと、このシリンダの端部から突出するピストンロッドとを備え、シリンダの胴部の中央部に前記サポートメンバに対して連結されるシリンダ連結部を形成し、このシリンダ連結部が構造枠の中心線上に配置され、前記ピストンロッドを前記構造枠に対して垂直方向に延びるピンを介して摺動可能に結合する滑り軸受を備え、前記シリンダ連結部が前記サポートメンバに対して水平方向に延びる対のトラニオンピンを介して回動可能に結合され、このトラニオンピンを前記シリンダの胴部の中央部から突出させたことを特徴とするものとした。
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