JP3907582B2 - 制振装置および制振方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、柱と梁で構成され、柱間、梁間、柱梁間、柱と梁の交差部間、柱と梁の交差部と柱との間もしくは柱と梁の交差部と梁との間にダンパを配設したラーメンの振動および変形を抑制する制振方法および制振装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種制振装置としては、例えば、特許出願人が先に提案した制振装置(たとえば、特許文献1参照)が知られている。
【0003】
すなわち、この制振装置は、構造物中の柱と梁でつくられるラーメン内の柱と梁の交差部間の対角線上に斜材としてのダンパを配設してなり、この制振装置に使用されるダンパとしては、ピストン速度に依存した減衰力を発生するものが使用されている。
【0004】
そして、この制振装置を適用した構造物が地震等により振動が負荷され、構造物のラーメンに水平力が作用した場合、柱が撓んだり、ラーメンが変形したりするが、上記交差部間に配設のダンパがその撓みや変形に対し減衰力を発揮して抵抗し、かつ、振動エネルギを吸収し、結果としてラーメンの振動および変形を抑制するものである。
【0005】
また、この制振装置では振動の周波数に応じたエネルギ吸収を可能にするため、上記したようにピストン速度に依存した減衰力を発生するダンパが使用されており、地震等によりラーメンに作用する比較的高い周波数の振動およびその変形を効果的に抑制している。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−54677号公報(第3頁右欄第25行目から第3頁右欄第45行目、図1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した制振装置は、地震等により構造物中のラーメンに作用する比較的高い周波数の振動を効果的に抑制してはいるものの、ラーメンが風等によりゆっくり振動する場合、すなわち、周波数の比較的低い振動が作用した場合には、上記の制振装置では、ダンパは充分な減衰力を発揮できないので、柱の撓みやラーメンの変形に対し抵抗することができず、結果的に構造物の振動を抑制できないと指摘される可能性がある。
【0008】
したがって、ダンパが振動を抑制し得ない領域の振動をカバーするためには、ラーメンの柱の太さを想定される振動の入力に充分対抗できるように太くするか、筋交い追加するなどの対応が必要となる。
【0009】
しかし、筋交いを追加して風などの入力によるラーメンに作用する比較的低い周波数の振動を抑制する場合では、地震等による振動エネルギを吸収することができず、筋交いに使用される鋼材は塑性変形すると繰り返しの使用に耐えられない。
【0010】
また、柱を太くする対応では、構造物の重量が増すので、柱の太さを単に振動を抑制するのに必要な太さとしただけでは収まらないので、ラーメンを採用する構造物建設のコストアップは甚だしくなる。強風が吹くような立地条件に構造物を建設する場合には、特に顕著である。
【0011】
そこで、本発明は上記弊害を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、特に柱を太くしなくても、風などによりラーメンに作用する周波数の比較的低い振動およびラーメンの変形を抑制可能な制振方法および制振装置を提供し、ラーメンを採用する構造物の建設コストを向上することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、第1の課題解決手段における制振方法は、柱と梁とで構成され、柱間、梁間、柱梁間、柱と梁の交差部間、柱と梁の交差部と柱との間もしくは柱と梁の交差部と梁との間にダンパを配設したラーメンにおいて、任意の1つ以上のラーメン毎に、1つ以上の所定のクラッキング圧で開放動作するリリーフ弁のみを備えたダンパと、1つ以上のピストン速度に依存する減衰力を発生するダンパを配設して、上記リリーフ弁のクラッキング圧に達するまでの外力に対してはリリーフ弁のみを備えたダンパでラーメンの振動および変形を抑制し、このクラッキング圧を超える外力に対しては上記リリーフ弁のみを備えたダンパとピストン速度に依存する減衰力を発生するダンパの双方のダンパでラーメンの振動および変形を抑制することを特徴とする。
【0013】
また、第2の課題解決手段は、第1の課題解決手段における制振方法において、各ダンパをラーメンに互い違いとなるように配設してラーメンの振動および変形を抑制することを特徴とする。
【0014】
さらに、第3の課題解決手段は、第1の課題解決手段における制振方法において、柱もしくは梁に結合したV型ブレースの凸状部分の先端に上記各ダンパの一端を接合し、他端を柱もしくは梁に接合させることによりラーメンの振動および変形を抑制する。
【0015】
また、第4の課題解決手段における制振方法は、柱と梁とで構成され、柱間、梁間、柱梁間、柱と梁の交差部間、柱と梁の交差部と柱との間もしくは柱と梁の交差部と梁との間にダンパを配設したラーメンにおいて、任意のラーメンに、1つ以上の所定のクラッキング圧で開放動作するリリーフ弁のみを備えたダンパを配設するとともに、他の任意のラーメンに1つ以上のピストン速度に依存する減衰力を発生するダンパを配設して、上記リリーフ弁のクラッキング圧に達するまでの外力に対してはリリーフ弁のみを備えたダンパでラーメンの振動および変形を抑制し、このクラッキング圧を超える外力に対しては上記リリーフ弁のみを備えたダンパとピストン速度に依存する減衰力を発生するダンパの双方のダンパでラーメンの振動および変形を抑制することを特徴とする。
【0016】
さらに、第5の課題解決手段は、第4の課題解決手段における制振方法において、柱もしくは梁に結合したV型ブレースの凸状部分の先端に上記ダンパの一端を接合し、他端を柱もしくは梁に接合させることによりラーメンの振動および変形を抑制する。
【0017】
また、第6の課題解決手段は、第1から第5のいずれかの課題解決手段における制振方法において、所定のクラッキング圧で開放動作するリリーフ弁のみを備えたダンパが、シリンダと、ピストンと、シリンダ内にピストンを介して移動自在に挿入したピストンロッドと、シリンダ内にピストンにより区画される伸側室および圧側室とを備えた両ロッド型のダンパであって、伸側室と圧側室とをリリーフ弁を介して連通させたことを特徴とする。
【0018】
そして、第7の課題解決手段は、第1から第6のいずれかの課題解決手段における制振方法において、ピストン速度に依存する減衰力を発生するダンパが、シリンダと、ピストンと、シリンダ内にピストンを介して移動自在に挿入したピストンロッドと、シリンダ内にピストンにより区画される伸側室および圧側室とを備えた両ロッド型のダンパであって、伸側室と圧側室とを並列に設けたピストン速度により比例する比例弁およびリリーフ弁を介して連通さたことを特徴とする。
【0019】
また、第8の課題解決手段における制振装置は、柱と梁でラーメンを構成し、ラーメン内の柱間、梁間、柱梁間、柱と梁の交差部間、柱と梁の交差部と柱との間もしくは柱と梁の交差部と梁との間に配設したダンパでラーメンの振動および変形を抑制する制振装置において、任意の1つ以上のラーメン毎に1つ以上の所定のクラッキング圧で開放動作するリリーフ弁のみを備えたダンパと、1つ以上のピストン速度に依存する減衰力を発生するダンパとを配設したことを特徴とする。
【0020】
さらに、第9の課題解決手段は、第8の課題解決手段における制振装置において、各ダンパをラーメンに互い違いとなるように配設したことを特徴とする。
【0021】
そして、第10の課題解決手段は、第8の課題解決手段における制振装置において、柱もしくは梁に結合したV型ブレースの凸状部分の先端に上記各ダンパの一端を接合し、他端を柱もしくは梁に接合したことを特徴とする。
【0022】
また、第11の課題解決手段における制振装置は、柱と梁でラーメンを構成し、ラーメン内の柱間、梁間、柱梁間、柱と梁の交差部間、柱と梁の交差部と柱との間もしくは柱と梁の交差部と梁との間に配設したダンパでラーメンの振動および変形を抑制する制振装置において、任意のラーメンに、1つ以上の所定のクラッキング圧で開放動作するリリーフ弁のみを備えたダンパを配設するとともに、他の任意のラーメンに1つ以上のピストン速度に依存する減衰力を発生するダンパを配設したことを特徴とする。
【0023】
さらに、第12の課題解決手段は、第11の課題解決手段における制振装置において、柱もしくは梁に結合したV型ブレースの凸状部分の先端に上記ダンパの一端を接合し、他端を柱もしくは梁に接合したことを特徴とする。
【0024】
また、第13の課題解決手段は、第8から第12の課題解決手段における制振装置において、所定のクラッキング圧で開放動作するリリーフ弁のみを備えたダンパが、シリンダと、ピストンと、シリンダ内にピストンを介して移動自在に挿入したピストンロッドと、シリンダ内にピストンにより区画される伸側室および圧側室とを備えた両ロッド型のダンパであって、伸側室と圧側室とをリリーフ弁を介して連通させたことを特徴とする。
【0025】
そして、第14の課題解決手段は、第8から第13の課題解決手段における制振装置において、ピストン速度に依存する減衰力を発生するダンパが、シリンダと、ピストンと、シリンダ内にピストンを介して移動自在に挿入したピストンロッドと、シリンダ内にピストンにより区画される伸側室および圧側室とを備えた両ロッド型のダンパであって、伸側室と圧側室とを並列に設けたピストン速度により比例する比例弁およびリリーフ弁を介して連通さたことを特徴とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図にもと基づいて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態における制振装置を構造物に利用した簡略化したモデル図である。
【0027】
構造物は、縦方向に起立する柱1、1を多数前後左右に配置し、その隣接する柱1、1間に梁2、2を多数架設したものであり、1つ以上のラーメンLを構成している。そして、制振装置はそのラーメンL内の柱1,1間、梁2,2間、柱梁1,2間、柱1と梁2の交差部間、柱1と梁2の交差部と柱1との間もしくは柱1と梁2の交差部と梁2との間に配設されたダンパD1,D2で構成され、構造物の振動を抑制するために使用されるものである。そして、制振方法はこの制振装置を使用して構造物の振動を抑制するものである。
【0028】
以下、詳細に説明すると、第1の実施の形態における制振装置の基本形態は、任意のラーメンLの対角線上の柱1と梁2の交差部に結合した上下のブラケット11,11と、このブラケット11,11間に配設されたダンパD1と、他の任意のラーメンLの対角線上の柱1と梁2の交差部に結合した上下のブラケット11,11と、このブラケット11,11間に配設されたダンパD2とにより構成され、これらの部材はすべて柱1,1と梁2,2との間の空間に収められている。
【0029】
ブラケット11,11は柱1と梁2の交差部であって、柱1と梁2に結合されているので、せん断力のみが負荷される場合のある柱のみもしくは梁のみに結合されるものより、強度上優れている。
【0030】
そして、ダンパD1,D2は、図示するように、各ラーメンLのブラケット11,11との間に配設されるが、ダンパD1、D2のシリンダをブレース12を介してブラケット11に接合し、他方ピストンロッド側をブラケット11に接合している。本実施の形態においては、各ブラケット11,11にピン(付示せず)で接合され、各ブラケット11,11に対し揺動可能である。また、ダンパと各ブラケットの接合は、ピン接合の他に球面軸受を介してもよい。この場合にも、ダンパD1,D2はブラケット11,11に対し揺動可能となる。
【0031】
なお、ブレース12は、後述する各ダンパD1,D2が両ロッド型に設定されているので、その伸縮を妨げないように、少なくともピストンロッドのシリンダからの出没範囲部分は中空となっている。
【0032】
また、各ダンパD1,D2は、各ダンパD1,D2の軸線の延長線上に、柱1と梁2の軸芯の交点が位置するように取付けられており、このように各ダンパD1,D2を柱1および梁2に取付けることにより、柱1および梁2に不必要な曲げモーメントが負荷されることを防止している。
【0033】
ダンパD1は、図2に示すように、たとえば、シリンダ50と、ピストン52と、シリンダ50内にピストン52を介して移動自在に挿入されたピストンロッド51とを備えてなり、シリンダ50内をピストン52が区画する伸側室R2と圧側室R1とに作動油等を封入し、いわゆる両ロッド型に設定され、伸側室R2と圧側室R1とをリリーフ弁53,53を介して連通させており、このリリーフ弁53,53が開放されることによって、シリンダ50に対しピストンロッド51が出没する際に減衰力を発生可能なものである。
【0034】
そして、リリーフ弁53は、ピストン52内に設けた通路56の途中に設けられており、附勢バネ54によって上記通路56を閉じる方向に附勢され常閉型に設定されるとともに、通路56の上流側の圧力が高まるとこの圧力が通路55を介して上記附勢バネ54のバネ力に抗して通路56を連通することが可能となる。
このリリーフ弁53,53は、伸側室R2から圧側室R1への作動油の流れを許容するものと圧側室R1から伸側室R2への作動油の流れを許容するものと2つ設けられているので、ダンパD1は、このダンパD1が伸縮するとどちらかのリリーフ弁53,53が通路56,56を連通し、作動油が通路56,56を通過するときに所定の減衰力を発生する。
【0035】
なお、上記通路56,56およびリリーフ弁53,53は、所定の減衰力を発生可能であればピストン52内以外に設けても良い。
【0036】
すなわち、このダンパD1は、図4に示すような減衰特性を有しており、たとえば、ダンパD1が伸長する場合には、所定のピストン速度になると、圧側室R1内の圧力が高まり、リリーフ弁53はクラッキング圧F1に達すると通路56を開放し、図4中線Aのごとくのなだらかな減衰特性を示す。
【0037】
また、ダンパD2は、図3に示すように、シリンダ70と、ピストン72と、シリンダ70内にピストン72を介して移動自在に挿入したピストンロッド71と、シリンダ70内にピストン72により区画される伸側室R4および圧側室R3とを備えた両ロッド型のダンパであって、伸側室R4と圧側室R3とを並列に設けたピストン速度により比例する比例弁61,61およびリリーフ弁63,63を介して連通させており、この比例弁61,61およびリリーフ弁63,63によって、シリンダ70に対しピストンロッド71が出没する際に減衰力を発生可能なものである。
【0038】
そして、比例弁61は、ピストン72内に設けた通路66の途中に設けられており、附勢バネ62によって上記通路66を閉じる方向に附勢されており、通路66の上流側の圧力に比例して通路66を徐々に開放するものであり、この比例弁61,61は、伸側室R4から圧側室R3への作動油の流れを許容するものと圧側室R3から伸側室R4への作動油の流れを許容するものと2つ設けられているので、ダンパD2は、このダンパD2が伸縮するとどちらかの比例弁61,61が通路66,66を連通し、作動油が比例弁61,61を通過するときに所定の減衰力を発生する。
【0039】
また、リリーフ弁63は、ピストン72内に設けた通路67の途中に設けられており、附勢バネ64によって上記通路67を閉じる方向に附勢され常閉型に設定されるとともに、通路67の上流側の圧力が高まるとこの圧力が通路65を介して上記附勢バネ64のバネ力に抗して通路67を連通することが可能となる。
【0040】
このリリーフ弁63,63は、伸側室R4から圧側室R3への作動油の流れを許容するものと圧側室R3から伸側室R4への作動油の流れを許容するものと2つ設けられている。
【0041】
すなわち、このダンパD2にあっては、上記した比例弁61,61により減衰力を発生するだけでなく、このダンパD2が伸縮し、圧側室R3または伸側室R4内の圧力が高まり、どちらかのリリーフ弁63,63はクラッキング圧F2に達すると通路67,67を連通し、作動油が上述の比例弁61,61と通路67,67を通過し、所定の減衰力を発生することとなる。
【0042】
なお、上記各通路66,66,67,67および比例弁61,61およびリリーフ弁63,63は、所定の減衰力を発生可能であればピストン72内以外に設けても良い。
【0043】
したがって、このダンパD2は、図5に示すような減衰特性を有しており、たとえば、ダンパD2が伸長する場合、ピストン速度が低速時にあっては、先ず比例弁61を作動油が通過して減衰力を発生するので、図5中直線Bのごとくのピストン速度に依存した減衰特性を示し、所定のピストン速度に達すると、圧側室R3内の圧力が高まり、リリーフ弁63はクラッキング圧F2に達すると通路67を開放するので、図5中直線Cのごとくのなだらかな減衰特性を示す。
【0044】
そして、この制振装置が適用された構造物のラーメンLに風等の比較的低い周波数の振動が作用した場合、すなわち、ダンパD1のリリーフ弁53が通路56を連通するクラッキング圧F1に達しない場合には、ダンパD2は、振動の周波数に依存して、すなわちピストン速度に依存した減衰力を発揮し、振動によりラーメンLに作用する力に抵抗するが、このとき、振動の周波数が低いと低い減衰力しか発揮できないので、ラーメンLの振動および変形を充分抑制し得ないこととなるが、他方、ダンパD1は、振動の周波数が低い場合には、リリーフ弁53のクラッキング圧F1に達するまでは、伸縮しないので、剛体状態となり、ラーメンLの変形や柱1の撓みを抑制する事ができるので、ラーメンLの振動を効果的に抑制する事が可能となる。
【0045】
さらに、ダンパD1は、ダンパD2のリリーフ弁63がクラッキング圧F2に達して通路67を連通するまでは、図4ないし図5に示すようにダンパD2に比較して高い減衰力を発生するので、振動の周波数がこの領域にあるときにも、充分ラーメンLの振動および変形を抑制する事が可能である。
【0046】
逆に、ラーメンに地震等の比較的高い周波数の振動が作用した場合には、ダンパD1のリリーフ弁53がクラッキング圧F1に達して連通する場合には、ダンパD1およびダンパD2の双方が減衰力を発生してラーメンLに作用する力に抵抗して、振動エネルギを吸収してラーメンの振動を抑制することとなる。
【0047】
そして、さらに、振動の周波数が高くなり、ダンパD2のリリーフ弁63が通路66を連通するクラッキング圧F2に達すると、上述したようにダンパD2の減衰特性は図5中の直線Cのごとくとなり、ダンパD2の発生する減衰力は頭打ちとなる。したがって、ダンパD2が連結されている柱1や梁2やブラケット11に過剰な力が負荷されることが防止され、結果的に柱等の損傷が防止されることとなる。
【0048】
したがって、この制振装置および制振方法では、異なる減衰特性のダンパD1,D2の組合せにより、地震等による構造物中のラーメンLに作用する比較的周波数の高い振動だけでなく、従来のように単一の減衰特性のダンパを使用する制振装置では充分振動を抑制できなかった風などの入力によるラーメンLに作用する比較的低い周波数の振動およびラーメンLの変形をも、効果的に抑制する事が可能となる。すなわち、ラーメンLを採用する構造物に作用する低い周波数の振動をも抑制する事が可能である。
【0049】
すると、ラーメンの柱を太くせずに、広範な周波数の振動を抑制できるから、ラーメンを採用する構造物の建設コストを低く抑えることができ、特に強風が吹くような立地条件に構造物を建設する場合には、特にコストダウン効果が高い。
【0050】
さらに、ラーメンに筋交い等を追加して風などの入力によるラーメンの比較的低い周波数の振動およびその時のラーメンの変形を抑制する場合では、地震等による振動エネルギを吸収することができず、筋交いに使用される鋼材は塑性変形すると繰り返しの使用に耐えられないが、本発明では、これらの振動を効果的に抑制でき、また、ダンパは伸縮するので、鋼材のように塑性変形しないので、繰り返しの使用に耐えるので、維持管理費の点でも有利である。
【0051】
また、本実施の形態では、各ダンパをラーメンの対角線上に取付けているので、各ダンパは水平方向の振動以外にも垂直方向の振動にも作用することが可能である。
【0052】
なお、各ダンパD2については、上述したところでは、比例弁およびリリーフ弁を備えているが、柱等の損傷が防止効果は失われるが、比例弁やオリフィスやリーフバルブのみを備えたピストン速度に依存する減衰特性を発揮するものを使用しても良い。
【0053】
つぎに、図6に示す第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、任意のラーメンLの柱1と梁2の交差部に結合した上下のブラケット11,11と、柱1に結合したブラケット15と、各ブラケット11,11間に配設した2つのダンパD1、D2と、他の任意のラーメンLの柱1と梁2の交差部に結合した上下のブラケット11,11と、柱1に結合したブラケット15と、このブラケット11,11間に配設されたダンパD2とにより構成され、これらの部材はすべて柱1、1と梁2、2との間の空間に収められている。
【0054】
そして、ダンパD1、D2は、図示するように、上下のダンパD1、D2が互い違いとなるようにブラケット11とブラケット15との間に配設されるが、ダンパD1、D2のシリンダをブレース12を介してブラケット11に接合し、他方ピストンロッド側をブラケット15に接合している。
【0055】
また、第1の実施の形態と同様に、各ブラケット11,15にピン(付示せず)で接合され、各ブラケット11,15に対し揺動可能である。また、ダンパと各ブラケットの接合は、ピン接合の他に球面軸受を介してもよい。この場合にも、ダンパD1、D2はブラケット11,15に対し揺動可能となる。また、各ダンパD1、D2は、各ダンパD1、D2の軸線の延長線上に、柱と梁の軸芯の交点が位置するように取付けられており、このように各ダンパD1、D2を柱1および梁2に取付けることにより、柱1および梁2に不必要な曲げモーメントが負荷されることを防止していることも同様である。
【0056】
ダンパD1およびダンパD2は、第1の実施の形態と同様のものを使用している。したがって、風等による周波数の低い振動に対してはダンパD1がラーメンLの振動および変形を抑制し、地震等の周波数の高い振動に対しては双方のダンパD1,D2が作用しラーメンの振動および変形を抑制するので、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0057】
さらに、単一のダンパをラーメンLの対角線上に配設した場合には柱間が狭くなると、柱に対するダンパの取付角度が小さくなるので、充分な水平抵抗力を得られなくなってしまい、また、この場合には充分な水平抵抗力を得ようとすると鉛直方向に大きな力が作用してしまい、仕口やブラケットに負担がかかってしまうが、この実施の形態においては、柱間が狭い場合にも、複数のダンパを互い違いに柱および梁に取付けているので、ダンパの柱に対する取り付け角度が大きくなり、充分な水平力を得ることが可能であるとともに、仕口やブラケットに負荷される負担を軽減できるので、仕口やブラケットの損傷を防止できる。
【0058】
また、この実施の形態では、1つのラーメンL内に異なる減衰特性を有するダンパD1,D2を配在しているが、複数のラーメンL内にダンパを配設する場合には、任意のラーメンL内に複数のダンパD1のみを配設し、別の任意のラーメンL内に複数のダンパD2のみを配設しても良い。
【0059】
すなわち、図6に示した制振装置を例にすれば、図中左側のラーメンL内のダンパを全てダンパD1とし、図中右側のラーメンL内のダンパを全てダンパD2とすることによっても、上記した作用効果を果たすことができる。
【0060】
また、本実施の形態では、隣り合ったラーメンL,Lに各ダンパD1,D2を配設しているが、図7に示すように、隣接していないラーメンL,Lに
各ダンパD1,D2を配設しても良い。
【0061】
さらに、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態は、任意のラーメンLの下側の梁2に二股側を結合したV型ブレース20と、V型ブレース20の凸状の先端に設けたブラケット21と、上側の梁2に結合したブラケット22と、各ブラケット21,22間に配設したダンパD1と、他の任意のラーメンLの下側の梁2に二股側を結合したV型ブレース20と、V型ブレース20の凸状の先端に設けたブラケット21と、上側の梁2に結合したブラケット22と、各ブラケット21,22間に配設したダンパD2とにより構成され、これらの部材はすべて柱1,1と梁2,2との間の空間に収められている。また、第1の実施の形態と同様に、各ブラケット21,22にピン(付示せず)で接合され、各ブラケット21,22に対し揺動可能である。また、ダンパと各ブラケットの接合は、ピン接合の他に球面軸受を介してもよい。この場合にも、ダンパD1,D2はブラケット21,22に対し揺動可能となる。そして、ダンパD1,D2は、第1の実施の形態と同様のものである。
【0062】
この場合には、ラーメンに振動が入力され、ラーメンLに水平力が作用すると、上側の梁2と下側の梁2とが相対運動するが、梁2,2間にダンパD1,D2が配設されているので、第1の実施の形態と同様に、風等による周波数の低い振動に対してはダンパD1が振動を抑制し、地震等の周波数の高い振動に対しては双方のダンパD1,D2が作用し振動を抑制するので、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0063】
また、この実施の形態では異なるラーメンL毎にいずれかのダンパD1,D2を配設しているが、図9に示すように、V型ブレース20の凸上の先端のブラケット21の両側にダンパD1とダンパD2の一端を連結し、各ダンパD1,D2の他端側を上側の梁2に設けたブラケット22,22に連結してもよい。
【0064】
このように制振装置を構成しても、ラーメンの振動および変形を抑制する事が可能であるので、ラーメンを採用する構造物に作用する低い周波数の振動をも抑制する事が可能である。
【0065】
【発明の効果】
各請求項の発明によれば、異なる減衰特性のダンパの組合せにより、地震等によりラーメンに作用する比較的周波数の高い振動だけでなく、従来のように単一の減衰特性のダンパを使用する制振装置では充分振動を抑制できなかった風などの入力によりラーメンに作用する比較的低い周波数の振動およびラーメンの変形をも、効果的に抑制する事が可能となる。すなわち、ラーメンを採用する構造物に作用する比較的低い周波数の振動をも抑制する事が可能である。
【0066】
すると、ラーメンの柱を太くせずに、広範な周波数の振動を抑制できるから、ラーメンを採用する構造物の建設コストを低く抑えることができ、特に強風が吹くような立地条件に構造物を建設する場合には、特にコストダウン効果が高い。
【0067】
さらに、ラーメンに筋交い等を追加して風などの入力による構造物の比較的低い周波数の振動を抑制する場合では、地震等による振動エネルギを吸収することができず、筋交いに使用される鋼材は塑性変形すると繰り返しの使用に耐えられないが、本発明では、これらの振動を効果的に抑制でき、また、ダンパは伸縮するので、鋼材のように塑性変形しないので、繰り返しの使用に耐えるので、維持管理費の点でも有利である。
【0068】
また、各ダンパをラーメンの対角線上に取付ければ、各ダンパは水平方向の振動以外にも垂直方向の振動にも作用することが可能であり、効果的に振動を抑制しうる。
【0069】
請求項2および9の発明によれば、柱間が狭い場合にも、複数のダンパを互い違いに柱および梁に取付けているので、ダンパの柱に対する取り付け角度が大きくなり、充分な水平力を得ることが可能であるとともに、仕口やブラケットに負荷される負担を軽減できるので、仕口やブラケットの損傷を防止できる。
【0070】
請求項4および11の発明によれば、各ダンパを各ダンパの軸線の延長線上に、柱と梁の軸芯の交点が位置するように取付ければ、柱および梁に不必要な曲げモーメントが負荷されることを防止できる。
【0071】
請求項6および13の発明によれば、所定のクラッキング圧で開放動作するリリーフ弁のみを備えたダンパのリリーフ弁が開放されるクラッキング圧に達しない場合には、伸縮しないので、剛体状態となり、ラーメンの変形や柱の撓みを抑制する事ができるので、ラーメンを採用する構造物の振動を効果的に抑制する事が可能となる。
【0072】
さらに、所定のクラッキング圧で開放動作するリリーフ弁のみを備えたダンパは、ピストン速度に依存する減衰力を発生するダンパに比較して、高い減衰力を発生するので、クラッキング圧に達する周波数の振動の入力があるときにも、充分振動を抑制する事が可能である。
【0073】
請求項7および14の発明によれば、比例弁の他にリリーフ弁を備えているので、ラーメンに作用する振動の周波数が高くなり、ダンパのリリーフ弁が開放されるクラッキング圧に達すると、ダンパの発生する減衰力は頭打ちとなる。したがって、ダンパが連結されている柱や梁やブラケットに過剰な力が負荷されることが防止され、結果的に柱等の損傷が防止されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態における制振装置を構造物のラーメンに適用した状態を示すモデル図である。
【図2】所定のクラッキング圧で開放動作するリリーフ弁のみを備えたダンパの略示縦断面図である。
【図3】ピストン速度に依存する減衰力を発生するダンパの略示縦断面図である。
【図4】所定のクラッキング圧で開放動作するリリーフ弁のみを備えたダンパの減衰特性を示す図である。
【図5】ピストン速度に依存する減衰力を発生するダンパの減衰特性を示す図である。
【図6】第2の実施の形態における制振装置を構造物のラーメンに適用した状態を示すモデル図である。
【図7】第2の実施の形態における制振装置を構造物のラーメンに適用した状態を示すモデル図である。
【図8】第3の実施の形態における制振装置を構造物のラーメンに適用した状態を示すモデル図である。
【図9】第3の実施の形態における制振装置を構造物のラーメンに適用した状態を示すモデル図である。
【符号の説明】
1 柱
2 梁
11、15、21、22 ブラケット
12 ブレース
20 V型ブレース
50、70 シリンダ
51、71 ピストンロッド
52、72 ピストン
53、63 リリーフ弁
61 比例弁
D1、D2 ダンパ
L ラーメン
R1、R3 圧側室
R2、R4 伸側室
Claims (14)
- 柱と梁とで構成され、柱間、梁間、柱梁間、柱と梁の交差部間、柱と梁の交差部と柱との間もしくは柱と梁の交差部と梁との間にダンパを配設したラーメンにおいて、任意の1つ以上のラーメン毎に、1つ以上の所定のクラッキング圧で開放動作するリリーフ弁のみを備えたダンパと、1つ以上のピストン速度に依存する減衰力を発生するダンパを配設して、上記リリーフ弁のクラッキング圧に達するまでの外力に対してはリリーフ弁のみを備えたダンパでラーメンの振動および変形を抑制し、このクラッキング圧を超える外力に対しては上記リリーフ弁のみを備えたダンパとピストン速度に依存する減衰力を発生するダンパの双方のダンパでラーメンの振動および変形を抑制することを特徴とする制振方法。
- 各ダンパをラーメンに互い違いとなるように配設してラーメンの振動および変形を抑制することを特徴とする請求項1に記載の制振方法。
- 柱もしくは梁に結合したV型ブレースの凸状部分の先端に上記各ダンパの一端を接合し、他端を柱もしくは梁に接合させることによりラーメンの振動および変形を抑制する請求項1の制振方法。
- 柱と梁とで構成され、柱間、梁間、柱梁間、柱と梁の交差部間、柱と梁の交差部と柱との間もしくは柱と梁の交差部と梁との間にダンパを配設したラーメンにおいて、任意のラーメンに、1つ以上の所定のクラッキング圧で開放動作するリリーフ弁のみを備えたダンパを配設するとともに、他の任意のラーメンに1つ以上のピストン速度に依存する減衰力を発生するダンパを配設して、上記リリーフ弁のクラッキング圧に達するまでの外力に対してはリリーフ弁のみを備えたダンパでラーメンの振動および変形を抑制し、このクラッキング圧を超える外力に対しては上記リリーフ弁のみを備えたダンパとピストン速度に依存する減衰力を発生するダンパの双方のダンパでラーメンの振動および変形を抑制することを特徴とする制振方法。
- 柱もしくは梁に結合したV型ブレースの凸状部分の先端に上記ダンパの一端を接合し、他端を柱もしくは梁に接合させることによりラーメンの振動および変形を抑制する請求項4の制振方法。
- 所定のクラッキング圧で開放動作するリリーフ弁のみを備えたダンパが、シリンダと、ピストンと、シリンダ内にピストンを介して移動自在に挿入したピストンロッドと、シリンダ内にピストンにより区画される伸側室および圧側室とを備えた両ロッド型のダンパであって、伸側室と圧側室とをリリーフ弁を介して連通させたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の制振方法。
- ピストン速度に依存する減衰力を発生するダンパが、シリンダと、ピストンと、シリンダ内にピストンを介して移動自在に挿入したピストンロッドと、シリンダ内にピストンにより区画される伸側室および圧側室とを備えた両ロッド型のダンパであって、伸側室と圧側室とを並列に設けたピストン速度により比例する比例弁およびリリーフ弁を介して連通さたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の制振方法。
- 柱と梁でラーメンを構成し、ラーメン内の柱間、梁間、柱梁間、柱と梁の交差部間、柱と梁の交差部と柱との間もしくは柱と梁の交差部と梁との間に配設したダンパでラーメンの振動および変形を抑制する制振装置において、任意の1つ以上のラーメン毎に1つ以上の所定のクラッキング圧で開放動作するリリーフ弁のみを備えたダンパと、1つ以上のピストン速度に依存する減衰力を発生するダンパとを配設したことを特徴とする制振装置。
- 各ダンパをラーメンに互い違いとなるように配設したことを特徴とする請求項8に記載の制振装置。
- 柱もしくは梁に結合したV型ブレースの凸状部分の先端に上記各ダンパの一端を接合し、他端を柱もしくは梁に接合したことを特徴とする請求項8の制振装置。
- 柱と梁でラーメンを構成し、ラーメン内の柱間、梁間、柱梁間、柱と梁の交差部間、柱と梁の交差部と柱との間もしくは柱と梁の交差部と梁との間に配設したダンパでラーメンの振動および変形を抑制する制振装置において、任意のラーメンに、1つ以上の所定のクラッキング圧で開放動作するリリーフ弁のみを備えたダンパを配設するとともに、他の任意のラーメンに1つ以上のピストン速度に依存する減衰力を発生するダンパを配設したことを特徴とする制振装置。
- 柱もしくは梁に結合したV型ブレースの凸状部分の先端に上記ダンパの一端を接合し、他端を柱もしくは梁に接合したことを特徴とする請求項11の制振装置。
- 所定のクラッキング圧で開放動作するリリーフ弁のみを備えたダンパが、シリンダと、ピストンと、シリンダ内にピストンを介して移動自在に挿入したピストンロッドと、シリンダ内にピストンにより区画される伸側室および圧側室とを備えた両ロッド型のダンパであって、伸側室と圧側室とをリリーフ弁を介して連通させたことを特徴とする請求項8から12のいずれかに記載の制振装置。
- ピストン速度に依存する減衰力を発生するダンパが、シリンダと、ピストンと、シリンダ内にピストンを介して移動自在に挿入したピストンロッドと、シリンダ内にピストンにより区画される伸側室および圧側室とを備えた両ロッド型のダンパであって、伸側室と圧側室とを並列に設けたピストン速度により比例する比例弁およびリリーフ弁を介して連通さたことを特徴とする請求項8から13のいずれかに記載の制振装置。
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