JP3837420B2 - 印刷用ブランケット - Google Patents
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Description
圧縮性層は、内部の孔の構造により、連続気泡構造と独立気泡構造とがあり、前者の連続気泡構造は、食塩等の可溶性粒子をポリマーに配合、分散し、このポリマーを用いて圧縮性層を加硫成形した後、温水等の溶媒で可溶性粒子を溶出させることによって形成される。一方、後者の独立気泡構造は、加熱等により分解、気化する発泡剤、または、熱可塑性樹脂からなる球状の殻体(中空微小球)をポリマーに配合、分散し、このポリマーを用いて圧縮性層を加硫成形することによって形成されるものであって、前者の連続気泡構造のものに比べて、圧縮性層の耐久性の面で優れている。
しかしながら、印刷用ブランケットの圧縮性層に着目すると、その耐久性を向上させるための手段は、気泡の形成に用いる中空微小球の種類、性状等の観点からの検討が主であって(特許文献1および2参照)、圧縮性層の基材となるポリマーについての検討は十分に進められていないのが現状である。
本発明に係る印刷用ブランケットとしては、例えば図1に示す層構成を有するものが挙げられる。図1に示す印刷用ブランケット10は、インキの担持面をなす表面印刷層12と、その支持体14とを備えている。支持体14は、綿布等の基布16にゴム糊を含浸してなる基布層18を、多孔質の弾性部材からなる圧縮性層20を介して、合計4枚積層したものである。
圧縮性層形成用のポリマーとしてNBRを使用する場合において、その結合アクリロニトリルの含有量(AN量)は特に限定されるものでないが、25%以上、36%未満であるのが好ましい。すなわち、本発明においては、AN量が25%以上、31%未満である、いわゆる中ニトリルNBRや、AN量が31%以上、36%未満である、いわゆる中高ニトリルNBRを用いるのが好適である。
加硫剤としては、例えば、硫黄、有機含硫黄化合物、有機過酸化物等が挙げられ、このうち有機含硫黄化合物としては、例えばN,N′−ジチオビスモルホリン等が挙げられ、有機過酸化物としては、例えばベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等が挙げられる。
加硫遅延剤としては、例えば、サリチル酸、無水フタル酸、安息香酸等の芳香族有機酸、N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジハイドロキノン、N−ニトロソフェニル−β−ナフチルアミン等のニトロソ化合物等が挙げられる。
補強剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカ系またはケイ酸塩系のホワイトカーボン、亜鉛華、表面処理沈降性炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー等の無機補強剤、または、クマロンインデン樹脂、フェノール樹脂、ハイスチレン樹脂(スチレン含有量の多いスチレン−ブタジエン共重合体)等の有機補強剤が挙げられる。
軟化剤としては、例えば、脂肪酸(ステアリン酸、ラウリン酸等)、綿実油、トール油、アスファルト物質、パラフィンワックス等の、植物油系、鉱物油系、および合成系の各種軟化剤が挙げられる。
本発明の印刷用ブランケットにおいて、表面印刷層は、ゴム糊の塗布、乾燥によって形成された未加硫のゴム層を加硫することにより、または、ゴムコンパウンドからなる未加硫のゴムシートを加硫することにより形成される。表面印刷層を形成するのに用いられるゴムとしては、例えば、前述したNBR、CR、U等の耐油性のゴムが挙げられる。これらのほか、多硫化ゴム(T)、水素添加NBR等を使用することもできる。
本発明の印刷用ブランケットにおいて、支持体を形成する基布層は、基布にゴム糊を含浸させて、乾燥、加硫することにより形成される。
上記基布としては、例えば、綿、ポリエステル、レーヨン等の織布が用いられる。含浸させるゴム糊は、例えば、NBRやクロロプレンゴム等をトルエン、キシレン等の溶剤に溶解して、加硫剤、加硫促進剤等を配合し、さらに、必要に応じて、増粘剤等を配合した上で、攪拌、混合することによって調製することができる。こうして得られたゴム糊は、ブレードコーティング等の塗布手段によって織布にコーティングすればよい。
印刷用ブランケットを構成する上記の各層は、例えば、1枚の基布層に圧縮性層を形成した後、さらに他の基布層および表面印刷層と重ね合わせて、全体をまとめて加硫してもよい。また、各層毎に、あるいはいくつかの層をまとめて加硫した後、所望の層構成となるように積層して、全体を接着または加硫接着してもよい。加硫条件については特に限定されるものではなく、従来の印刷用ブランケットの製造時と同様の条件となるように設定すればよい。
実施例および比較例に使用した成分の略号と、製造メーカー等を下記に示す。アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)については、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mn、および、アクリロニトリル含有量(AN量)をあわせて示す。
「Nipol DN302」:Mw/Mnが3.13、AN量が27.5%であるNBR、日本ゼオン(株)製
「JSR N236H」:Mw/Mnが3.05、AN量が32%であるNBR、JSR(株)製
「Nipol 1052J」:Mw/Mnが2.75、AN量が33.5%であるNBR、日本ゼオン(株)製
「Nipol DN2850」:Mw/Mn比3.38、AN量28.0%であるNBR、日本ゼオン(株)製
GPF:カーボンブラック
「ノクラックNS−6」:老化防止剤、大内新興化学(株)製
CZ:スルフェンアミド系の加硫促進剤
TET:チウラム系の加硫促進剤
F50D:中空微小球、松本油脂製薬(株)製のマイクロスフェアーFシリーズ
印刷用ブランケットの製造
実施例1
「JSR N241」100重量部に対し、GPF50重量部、「ノクラックNS−6」1重量部、酸化亜鉛5重量部、ステアリン酸1重量部、粉末硫黄2重量部、CZ1.5重量部およびTET0.6重量部を配合して、ニーダーで混練りした。混練り後、ゴム組成物にトルエンを加えて攪拌し、さらに、こうして得られたゴム糊にF50Dを配合して攪拌することによって、圧縮性層形成用のゴム組成物(ゴム糊)を得た。F50Dの配合割合は、発泡後のゴムに対して50体積%となるように設定した。こうして得られた圧縮性層形成用のゴム糊を、幅1mの長尺帯状である綿布(基布)上に連続的に塗布し、これを乾燥させることによって、厚み0.3mmの未加硫ゴム組成物の層と基布との積層体を得た。
一方、積層体の残りの部分については、その表面に表面印刷層を形成することにより、印刷用ブランケットを得た。
表面印刷層の形成には、「JSR N241」100重量部に対し、GPF50重量部、「ノクラックNS−6」1重量部、酸化亜鉛5重量部、ステアリン酸1重量部、粉末硫黄2重量部、CZ1.5重量部およびTET0.6重量部を配合して、ニーダーで混練りし、さらに、トルエンを加えて調製されたゴム糊を使用した。表面印刷層の形成後、印刷用ブランケット(表面印刷層を含む積層体全体)を、連続加硫機によって、140℃で30分間、加硫した。
「JSR N241」に代えて、「Nipol DN302」を用いた以外は、実施例1と同様にして、圧縮性層と基布との積層体および印刷用ブランケットを得た。
実施例3
「JSR N241」に代えて、「JSR N236H」を用いた以外は、実施例1と同様にして、圧縮性層と基布との積層体および印刷用ブランケットを得た。
「JSR N241」に代えて、「Nipol 1052J」を用いた以外は、実施例1と同様にして、圧縮性層と基布との積層体および印刷用ブランケットを得た。
比較例2
「JSR N241」に代えて、「Nipol DN2850」を用いた以外は、実施例1と同様にして、圧縮性層と基布との積層体および印刷用ブランケットを得た。
加硫促進剤の配合量を変えたこと以外は、実施例1と同様にして、圧縮性層と基布との積層体および印刷用ブランケットを得た。
物性評価
(1)圧縮性層の損失係数tanδ
上記実施例および比較例で得られた、圧縮性層の物性を評価するためのサンプルを用いて、圧縮性層の損失係数tanδを測定した。この損失係数tanδは、JIS K 7198に規定の方法に基づき、動的ひずみ10Hz、振幅0.2%、初期ひずみ10%、温度23℃の条件下で測定した。結果を表1に示す。
上記実施例および比較例で得られたサンプルについて、それぞれ、一対のロール間に配置して、圧縮性層の厚みの変化量(減少量)が常に0.2mmとなるようにロール間距離を固定した。
次に、一対のロールを連続30日間回転させて(毎秒1回転)、圧縮性層の厚みの変化を測定することにより、圧縮永久ひずみの量(mm)を求めた。結果を表1に示す。
(3)カール量
上記実施例および比較例で得られた印刷用ブランケットを、それぞれ、オフセット印刷機のブランケット胴に装着して、コート紙に対する印刷試験を繰り返し行った。次いで、かかる印刷試験に供した用紙(コート紙)計100枚を、平台上に順次積み重ねて、当該用紙の端部が平台から浮き上がった距離を求めて、これをカール量(mm)とした。結果を表1に示す。
上記実施例および比較例で得られた印刷用ブランケットを、それぞれ、オフセット印刷機のブランケット胴に装着した後、印刷用ブランケット全体の厚みの変化量(減少量)が常に0.2mmとなるようにして、ブランケット胴と、このブランケット胴に装着された印刷用ブランケットの表面に接するロールとの間の距離を固定した。
このひずみ量、または、いわゆるヘタリ量が少ないほど、印刷用ブランケットの復元特性が良好で、耐久性に優れているといえる。
14 圧縮性層
Claims (2)
- 表面印刷層と、圧縮性層を有する支持体とを備え、
前記圧縮性層が、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが2.75〜3.2であるポリマーと、中空微小球と、を含むゴム組成物からなる、独立気泡構造を有する層であり、かつ、
当該圧縮性層の損失係数tanδが、0.06〜0.15であることを特徴とする、印刷用ブランケット。 - 上記ポリマーがアクリロニトリルブタジエンゴムである請求項1に記載の印刷用ブランケット。
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