JP2006103201A - 印刷ブランケット用圧縮性層とそれを用いた印刷ブランケット - Google Patents

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啓 田島
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Abstract

【課題】 個々の気孔径が大きすぎないため、ヘタリを生じにくい印刷ブランケット用圧縮性層と、それを用いた印刷ブランケットとを提供する。
【解決手段】 印刷ブランケット用圧縮性層は、未加硫のマトリクスゴム中に、熱可塑性樹脂の殻体を有する中空微小球を分散させた、未加硫状態のムーニー粘度ML1+4(130℃)が40〜70であるゴムの層を加硫して形成し、加硫されたゴムの層の100%モジュラスM100を4.5〜7.0MPaとした。印刷ブランケットは、この印刷ブランケット用圧縮性層を組み込んだ。
【選択図】 なし

Description

本発明は、印刷ブランケットに組み込まれる、多孔質構造を有する加硫ゴム製の印刷ブランケット用圧縮性層と、この印刷ブランケット用圧縮性層を組み込んだ印刷ブランケットに関するものである。
ゴムなどのエラストマーからなる表面印刷層の下に、同じくゴムなどのエラストマーからなり、多孔質構造を有する圧縮性層を設けた、いわゆるエアータイプの印刷ブランケットが、広く一般に普及している。
エアータイプの印刷ブランケットは、圧縮性層のないソリッドタイプのものに比べて、版胴などとの圧接によって生じるニップ変形部での圧縮応力が低く、かつ歪み量の変化にともなう圧縮応力の変動が小さいために衝撃吸収性にすぐれており、例えば印刷機の歯車の送り時に生じる衝撃などが印刷精度に悪影響を及ぼすのを防止する効果に優れるという利点を有している。
また、ソリッドタイプの印刷ブランケットにおいては、ニップ変形部での、表面印刷層への応力集中によっていわゆるバルジを生じて、周方向の伸びによる見当ずれ、紙送り不良、ダブリ、網点パターンの変形などの印刷不良を発生するおそれがあるが、エアータイプの印刷ブランケットによれば、圧縮性層が、表面印刷層への応力集中を緩和する働きをするため、これらの印刷不良が生じるのを防止できるという利点もある。
多孔質構造を有する圧縮性層としては、従来、
(a) 食塩等の水溶性の粒子をマトリクスゴム中に分散したものを層状に形成し、加硫した後、水溶性の粒子を温水などで抽出する、いわゆるリーチング法によって形成される連続気孔構造を有するものと、
(b) 例えば加熱により分解して気体を発生する発泡剤をマトリクスゴム中に分散したものを層状に形成し、加硫時の加熱によってゴムの加硫と同時に発泡剤を発泡させるなどして形成される、独立気孔構造を有するもの
とが知られており、このうち後者の、独立気孔構造を有する圧縮性層が、前者に比べて耐久性などにすぐれるため、近年になって注目されつつある。
しかし、独立気孔構造を有する圧縮性層は、発泡剤の発泡の制御が困難で、形成される個々の独立気孔の大きさにばらつきを生じたり、発泡過程で複数の気孔同士が連通して巨大な空隙を形成したりする結果、圧縮性層の気孔構造が不均一になって圧縮特性にばらつきを生じ、それが印刷特性に悪影響を及ぼすという問題がある。
そこで、熱可塑性樹脂からなる球形の殻体を備えた中空微小球を使用して、独立気孔構造を有する圧縮性層を形成することが検討された。中空微小球は、その形状および粒径がほぼ一定に揃えられた形で供給されるため、これをマトリクスゴム中に分散したものを層状に形成してマトリクスゴムを加硫させれば、気孔構造が均一で圧縮特性にばらつきのない圧縮性層が得られると考えられた。
しかし、従来どおり加硫缶を用いて、中空微小球を分散したマトリクスゴムを加熱、加圧して加硫したのでは、十分な圧縮特性を有する圧縮性層を得ることはできなかった。これは、熱可塑性樹脂からなる殻体が、マトリクスゴムを加硫する際の長時間の加熱によって軟化、溶融すると共に、加硫時の加圧によって変形、圧壊するため、圧縮性層中に、十分な空隙率を持った、均一な独立気孔構造が形成されないためである。
そこで、中空微小球を変形、圧壊させずにマトリクスゴムを加硫させるため、特許文献1において、マトリクスゴム中に中空微小球を分散させたゴムの層を含むシート状の中間部材を、当該中間部材と直接に接触して加熱、加圧する部材を備えた加硫装置を用いて、所定の加硫圧、および加硫温度条件下で、1〜50分間、加熱、加圧してゴムの層を加硫させることが提案された。
特開2001−30650号公報(特許請求の範囲、第0019欄〜第0024欄)
特許文献1に記載の方法を採用すれば、確かに、中空微小球が変形したり圧壊したりするのを防止して、均一な独立気孔構造を有する圧縮性層を形成することはできる。しかし、均一ではあるものの、個々の気孔径が大きすぎて、連続印刷した際に、圧縮性層の復元力が低下して、その厚みが小さくなったまま戻らなくなる圧縮永久歪み、いわゆるヘタリを生じる場合があった。
本発明の目的は、個々の気孔径が大きすぎないため、ヘタリを生じにくい印刷ブランケット用圧縮性層と、それを用いた印刷ブランケットとを提供することにある。
発明者の検討によると、加硫後の圧縮性層中に形成される気孔の気孔径が大きくなりすぎるのは、ゴムの層を加熱、加圧して加硫させる工程において、加硫途中のゴムの層が軟らかくなりすぎて、加熱された中空微小球が過剰に膨張することが原因である。ゴムの層として、加硫途中でもある程度の硬さを有するものを使用すれば、気孔径が大きくなりすぎるのを防止して、ヘタリを生じにくくすることができる。
しかし、加硫途中のゴムの層の硬さを規定することは技術的に困難であるので、発明者は、ムーニー粘度で表される未加硫状態のゴムの層の硬さと、引張試験における100%モジュラスM100で表される、加硫されたゴムの層の硬さとを所定の範囲に規定することを検討した。
その結果、圧縮性層となるゴムの層として、未加硫状態でのムーニー粘度ML1+4(130℃)が40以上で、かつ加硫されたゴムの層の100%モジュラスM100が4.5MPa以上となるものを選択的に使用すれば、当該ゴムの層は、加硫途中でもある程度の硬さを有するため、加熱された中空微小球が過剰に膨張するのを防止して、個々の気孔径が大きすぎず、ヘタリを生じにくい印刷ブランケット用圧縮性層を提供できることを見出した。
ただし、ゴムの層が硬すぎる場合には、そのもとになるマトリクスゴムが硬すぎたり、カーボンブラック等の補強剤の補強効果が強すぎたりする場合が多く、その場合には、中空微小球や補強剤が均一に分散されたゴムの層や、そのもとになるゴム糊、あるいは、そのもとになる練りゴム等を製造するのが困難になるという、新たな問題があった。
そこで、発明者は、ゴムの層の、未加硫状態でのムーニー粘度と、加硫されたゴムの層の100%モジュラスM100の上限についても検討した結果、中空微小球や補強剤が均一に分散されたゴムの層を、効率よく製造するためには、当該ゴムの層の、未加硫状態でのムーニー粘度ML1+4(130℃)が70以下で、かつ加硫されたゴムの層の100%モジュラスM100が7.0MPa以下である必要があることを見出した。
したがって、請求項1記載の発明は、印刷ブランケットに組み込まれる、加硫ゴム製で多孔質構造を有する印刷ブランケット用圧縮性層であって、未加硫のマトリクスゴム中に、熱可塑性樹脂の殻体を有する中空微小球を分散させた、未加硫状態のムーニー粘度ML1+4(130℃)が40〜70であるゴムの層を加硫して形成されると共に、加硫されたゴムの層の100%モジュラスM100が4.5〜7.0MPaであることを特徴とする印刷ブランケット用圧縮性層である。
また、上記印刷ブランケット用圧縮性層はヘタリを生じにくいため、当該印刷ブランケット用圧縮性層を組み込んだ印刷ブランケットは耐久性に優れ、長期間に亘って良好な印刷を行うことが可能である。
したがって、請求項2記載の発明は、請求項1記載の印刷ブランケット用圧縮性層を、印刷ブランケットを構成する他の層と積層した状態で、全体を加硫して形成されることを特徴とする印刷ブランケットである。
以下に、本発明を説明する。
本発明の印刷ブランケット用圧縮性層は、前記のように、未加硫のマトリクスゴム中に、熱可塑性樹脂の殻体を有する中空微小球を分散させた、未加硫状態のムーニー粘度ML1+4(130℃)が40〜70であるゴムの層を加硫して形成されると共に、加硫されたゴムの層の100%モジュラスM100が4.5〜7.0MPaであることを特徴とするものである。
かかる印刷ブランケット用圧縮性層のもとになるゴムの層の、未加硫状態のムーニー粘度、および加硫後の、ゴムの層の100%モジュラスM100が上記の範囲に限定されるのは、ムーニー粘度ML1+4(130℃)が40未満であるか、若しくは100%モジュラスM100が4.5MPa未満では、このいずれの場合においても、加硫時のゴムの層が軟らかくなりすぎて、加熱された中空微小球が過剰に膨張するのを防止することができず、個々の気孔径が大きくなりすぎて、加硫後のゴムの層を含む印刷ブランケット用圧縮性層が、復元力の小さい、ヘタリを生じやすいものとなるためである。
復元力の大きい、ヘタリを生じにくい印刷ブランケット用圧縮性層を得るためには、ゴムの層の、未加硫状態のムーニー粘度ML1+4(130℃)が40以上であると共に、加硫後のゴムの層の100%モジュラスM100が4.5MPa以上である必要がある。
また、未加硫状態のムーニー粘度ML1+4(130℃)が70を超えるか、若しくは100%モジュラスM100が7.0MPaを超えるゴムの層は、そのもとになるマトリクスゴムが硬すぎたり、カーボンブラック等の補強剤の補強効果が強すぎたりする場合が多い。そして、その場合には、例えば、
(i) マトリクスゴムに補強剤その他の添加剤を添加し、混練して練りゴムを作製する際の溶融粘度が高すぎて、特に補強剤としてのカーボンブラックを、マトリクスゴム中に均一に分散させることができず、いわゆるカーボンゲルが発生して、その後の工程で、トルエン、メチルエチルケトンなどの溶媒を加えてゴム糊を作製するのを断念せざるを得なくなったり、
(ii) カーボンブラックを均一に分散できても、練りゴムの、溶媒に対する溶解性が低いため、溶媒を加えてかく拌した際に十分に溶解しない塊が残る等して、良好に糊化することができなかったりするため、
中空微小球や補強剤が均一に分散された、良好なゴムの層を形成することができない。敢えて形成しようとすれば、上記の、溶媒に溶解しない塊等を除去しなければならず、材料の無駄が大きい。
これに対し、未加硫状態のムーニー粘度ML1+4(130℃)が70以下であると共に、加硫後のゴムの層の100%モジュラスM100が7.0MPa以下であるゴムの層のもとになるマトリクスゴムは硬すぎず、またカーボンブラックは補強効果が強すぎないため、上記のような種々の問題を生じることなしに、中空微小球や補強剤が均一に分散された良好なゴムの層を、より効率よく形成することができる。
ゴムの層の、未加硫状態のムーニー粘度、および加硫後の、ゴムの層の100%モジュラスM100を上記の範囲内に調整するためには、上で述べたことからも明らかなように、マトリクスゴムの硬さを調整したり、マトリクスゴムに配合する可塑剤、軟化剤、補強剤その他添加剤の種類および添加量を調整したりすればよい。例えば、マトリクスゴムとしてアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)を使用する場合は、アクリロニトリル含量の異なるグレードのNBRを選択したり、2種以上のグレードのNBRを併用してアクリロニトリル含量を調整したりすればよい。また、補強剤であるカーボンブラックとして、粒径、ヨウ素吸着量、DBP吸油量、かさ密度等の特性が異なるため、ゴムを補強する補強効果の強さが異なるものを選択して使用することも有効である。
ゴムの層を構成するマトリクスゴムとしては、種々のゴムが挙げられるが、特にインキや洗浄液等に対する耐性を考慮すると、耐油性にすぐれたものが好ましい。そのような耐油性のゴムとしては、上記NBRが挙げられる他、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム(U)、アクリルゴム(ACM)等を使用することもできる。
また、中空微小球としては、例えば米国特許第4,770,928号公報、特開平3−244595号公報、特表平7‐505341号公報などに開示された、殻体が熱可塑性樹脂にて形成された、従来公知の種々の中空微小球が、いずれも使用可能である。
特に、印刷インキに対する耐油性などを考慮すると、塩化ビニリデン、(メタ)アクリロニトリルなどの、重合性のモノマーの単独重合体、これらモノマーを含む共重合体、あるいはこれらモノマーを含む三元以上の多元共重合体などによって殻体が形成された中空微小球が好ましい。
中空微小球の粒径は特に限定されないが、均一な独立気孔構造を形成して、印刷ブランケット用圧縮性層に良好な圧縮特性を付与するためには、中空微小球の平均粒径が、およそ10〜200μm程度であるのが好ましい。なお粒径は、以下に述べる未発泡の中空微小球の場合、加熱して発泡させた後の粒径である。
中空微小球の具体例としては、例えばノーベル社製のエクスパンセルシリーズの中空微小球や、あるいは松本油脂製薬(株)製の中空微小球などが挙げられる。これらの中空微小球はいずれも、熱可塑性樹脂の殻体中に、空隙のもとになる有機溶剤が封入された未発泡のものと、有機溶剤を加熱により気化させて、殻体の内部に空隙を形成した発泡済みのものとが供給されており、本発明では、このいずれのものも使用可能である。
なお前者の、未発泡の中空微小球を使用する場合は、
(1) ゴム糊に加えてゴムの層を形成する前、
(2) ゴムの層を加熱、加圧して加硫する前、または
(3) ゴムの層の加硫時、
のいずれかの段階で、加熱により殻体中の有機溶剤を気化させて、中空微小球を所定の粒径まで発泡させるのが好ましい。
ゴムの層における、中空微小球の配合割合は特に限定されないが、形成される印刷ブランケット用圧縮性層の圧縮特性などを考慮すると、マトリクスゴムRに対する、発泡状態の中空微小球Mの体積比M/Rで表して、M/R=20/80〜80/20の範囲内であるのが好ましく、特にM/R=70/30〜30/70の範囲内であるのが好ましい。
ゴムの層には、上記両成分に加えて、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤などの、ゴムを加硫させるための成分が添加される他、老化防止剤、補強剤、充てん剤、軟化剤、可塑剤などの各種添加剤が、必要に応じて添加される。添加剤の添加量は、従来と同程度でよい。
本発明の印刷ブランケット用圧縮性層は、上記ゴムの層を用いること以外は、従来と同様にして製造することができるが、特に、中空微小球が変形したり圧壊したりするのを防止して、均一な独立気孔構造を有する圧縮性層を形成することを考慮すると、前記特許文献1に記載された製造方法によって製造することが好ましい。
具体的には、まず、基布上に、前記の各成分を含むゴム糊を塗布して乾燥させる等して、ゴムの層を形成することで、シート状の中間部材を作製する。中間部材は適宜の寸法、形状に形成することができる。例えば中間部材は、あらかじめ一枚の印刷ブランケットの寸法にあわせた所定の長さに形成してもよい。ただし、加硫装置として連続加硫機を使用する場合、当該連続加硫機は、被加硫物を、長さに関係なく連続的に加硫できる装置であるので、印刷ブランケット用圧縮性層、および印刷ブランケットの生産性などを考慮すると、中間部材は、多数枚の印刷ブランケットの分が連続した長尺のシート状に形成するのが好ましい。
長尺の中間部材は、例えば
(a) ゴム糊を、長尺帯状の基布上に、加硫接着剤を介して、または直接に、ナイフコーター、ロールコーター、スプレーコーター、フローコーター等を用いて連続的に塗布して乾燥させるか、あるいは
(b) 例えば特開昭59−14995号公報の第1図に記載されているように、長尺帯状の基布を、連続的に、ゴム糊に浸漬したのち引き上げて乾燥させることによって、
製造することができる。基布としては、従来同様に綿、ポリエステル、レーヨンなどの織布が使用される。
次に、上記中間部材を、当該中間部材と直接に接触して加熱、加圧する部材を備えた加硫装置を用いて、所定の加硫圧Pv〔kPa〕、および加硫温度Tv(℃)の条件下、所定時間、加熱して加硫させる。
この際の加硫圧Pvは、ゲージ圧で、
0<Pv≦300kPa
であるのが好ましく、加硫温度Tvは、
Td≦Tv≦Td+50℃
〔式中Tdは、中空微小球を加圧せずに大気圧中で加熱した際の変形温度(℃)である。〕であるのが好ましい。また、加硫時間は1〜50分間であるのが好ましい。
なお、変形温度Td(℃)は、例えば中空微小球を、一定温度に保持されたオーブン中などの、加圧しない大気圧条件下で、一定時間(30分間程度)、加熱した際に、この一定時間内に殻体が軟化、溶融して、融着により多数の中空微小球が凝集、一体化する現象が発生する最低温度でもって規定することとする。
加硫圧Pvが前記の範囲であるのが好ましいのは、300kPaを超える場合には、中空微小球が、高圧によって変形、圧壊して、印刷ブランケット用圧縮性層の空隙率が大きく低下したり、場所によってばらついたりして圧縮特性が悪化するおそれがあるためである。また、0kPa、つまり加圧しない大気圧条件下では、加硫時の熱によって中空微小球が不均一に膨張して、印刷ブランケット用圧縮性層の内部構造が不均一になり、その厚みにばらつきを生じるおそれがあるためである。
なお、加硫圧Pvは、圧縮性層の厚みのばらつき、中空微小球の形状や大きさ、分散状態などのばらつきを抑えて、より一層、均一な厚みと均一な内部構造とを有する印刷ブランケット用圧縮性層を形成することを考慮すると、上記の範囲内でも小さければ小さいほど好ましく、20kPa以下、特に7kPa以下であるのが好ましい。また、加硫圧Pvの下限は、特に限定されないものの、加硫装置における加圧の精度の限界などを考慮すると、およそ1kPa程度であるのが好ましい。
また、加硫温度Tv(℃)と加硫時間が前記の範囲であるのが好ましいのは、加硫温度Tv(℃)と加硫時間のうち、いずれか一方でも前記の範囲を超える場合には、中空微小球が、このような高温、長時間の加熱によって変形、圧壊して、印刷ブランケット用圧縮性層の空隙率が大きく低下したり、場所によってばらついたりして、圧縮特性が悪化するおそれがあるためである。
一方、加硫温度Tv(℃)と加硫時間のうち、いずれか一方でも上記の範囲未満である場合には、マトリクスゴムの加硫が不十分となって、次工程である二次加硫時に、中空微小球が変形、圧壊する箇所などが生じる結果、やはり印刷ブランケット用圧縮性層の空隙率が大きく低下したり、場所によってばらついたりして、圧縮特性が悪化するおそれがあるためである。
なお、加硫温度Tv(℃)は、中空微小球をほとんど変形、圧壊させずにマトリクスゴムのみを加硫させて、均一ですぐれた圧縮特性を示す印刷ブランケット用圧縮性層を形成することを考慮すると、前記の範囲内でも特にTv≦Td+40℃であるのが好ましく、Tv≦Td+35℃であるのがさらに好ましい。
また、印刷ブランケット用圧縮性層を短時間で効率よく形成することを考慮すると、加硫温度Tv(℃)は、前記の範囲内でも特にTd+10℃≦Tvであるのが好ましく、Td+15℃≦Tvであるのがさらに好ましい。
また、加硫時間は、マトリクスゴムを確実かつ均一に加硫させることを考慮すると、前記の範囲内でも特に3分間以上であるのが好ましく、印刷ブランケット用圧縮性層の生産性などを考慮すると、前記の範囲内でも特に40分間以下であるのが好ましい。
シート状の中間部材を加硫して、印刷ブランケット用圧縮性層を製造するための加硫装置としては、中間部材と直接に接触して加熱、加圧する部材を備え、中間部材を上記の条件で加硫しうる種々の方式の加硫装置が、いずれも使用可能である。
ただし、前記加硫圧Pvの範囲の全域に亘って均一な加圧を行うためには、例えば図1に示すように、図中実線の矢印で示す方向に一定速度で回転する熱ローラ1と、それに一定圧で圧接されて、図中一点鎖線の矢印で示す方向に、熱ローラの回転と同期して回転する無端状のベルト2とを備えた、一般にアダムソン(Adamson)社(米国)の装置名からロートキュア(Roto-Cure)式、あるいはベルストルフ(Berstorff)社(ドイツ)の装置名からオーマ(AUMA)式と呼ばれている連続加硫機が好適に使用される。
ベルト2としては、金属の薄板から金属ベルトや、金属ワイヤで編み、その製品側の表面を耐熱ゴムで被覆した複合ベルト、あるいは基布で補強した加硫ゴム製のベルトなど、上記の連続加硫機において通常に使用されるベルトが、いずれも使用可能である。ただし、加硫圧Pvが20kPa以下といった低圧の領域において、従来のベルトを使用した場合には、これらのベルトがいずれもその厚み方向、すなわち中間部材を加圧する方向に剛直であるため、均一な加圧を精度よく行うのが容易でなく、加硫圧にばらつきを生じて、特に圧縮性層の厚みが僅かながらばらつく傾向を生じる。
そこで、加硫圧Pvが20kPa以下の低圧で加硫を行う際には、従来のベルトに代えて、例えば各種製造方法で製造されるフェルトやその類似物などの、フェルト状を呈するベルトを使用するのが好ましい。当該フェルト状のベルトは、その厚み方向に高い柔軟性と弾力性とを有するために、特に加硫圧Pvが20kPa以下の低圧の条件下で、均一でかつ精度のよい加圧が可能であり、前記のように圧縮性層の厚みのばらつき、中空微小球の形状や大きさ、分散状態などのばらつきを抑えて、より一層、均一な厚みと均一な内部構造とを有する印刷ブランケット用圧縮性層を製造するために好適である。
フェルト状のベルトとしては、例えばその製造方法によって分類される織りフェルト、プレスフェルト、ニードルフェルトなどの各種フェルトや、あるいは不織布のうちフェルトに類似した外観を有するものなどが、いずれも使用可能である。フェルト状のベルト2は、その厚み方向に、高い柔軟性と弾力性とを有することによって、前述した加硫圧Pvの範囲の全域に亘って均一な加圧を精度よく行うことができるものであり、その仕様は、これに限定されるものではないが、その厚みが3〜20mm程度で、かつ単位面積あたりの重量が500〜10000g/m2程度であるのが好ましい。
なお、図において符号21〜23はいずれも、ベルト2を、熱ローラ1に一定圧で圧接させつつ一定速度で回転させるためのローラである。当該図の連続加硫機を用いて、前記のように未加硫の、長尺シート状の中間部材3を加硫するには、まず当該中間部材3を、図中白抜きの矢印で示すように、その長さ方向に沿って、熱ローラ1とベルト2との間に連続的に挿入する。そうすると、この両者の回転にともなってその間に巻き込まれた中間部材3が、ベルト2の、熱ローラ1への圧接力によって一定圧に加圧されつつ、熱ローラ1の熱によって連続的に加熱される。
そして、この加熱によって、中間部材3の未加硫のゴムの層が連続的に加硫されて、加硫ゴム製の印刷ブランケット用圧縮性層が連続的に形成されたのち、図中黒矢印で示すように、熱ローラ1とベルト2との間から連続的に排出される。
図の連続加硫機を用いる場合、前述した加硫の条件のうち加硫温度Tv(℃)は、熱ローラ1の加熱温度を調整することによって、前記の範囲内に調整される。例えば、加熱水蒸気によって加熱する方式の熱ローラ1の場合は、当該加熱水蒸気の温度を、前記の範囲内に調整すればよい。
また、加硫時間は、中間部材3が熱ローラ1と圧接されている距離と、当該熱ローラ1の回転速度とによって規定され、このうち圧接距離は装置の大きさに応じてほぼ一定で大きく変更できないために、一般には熱ローラ1、ならびに当該熱ローラ1とともに回転するベルト2の回転速度を変化させることで加硫時間を調整するのがよい。
さらに加硫圧Pvは、ベルト2の、熱ローラ1への圧接力を変化させることによって調整される。具体的には例えば、ローラ21〜23と熱ローラ1との位置関係を調整したり、あるいは図示していないが、例えばローラ22、23間などにベルト2の張力を調整する部材を配置して、その調整によってベルト2の張力を変化させたりすることによって、ベルト2の、熱ローラ1への圧接力を変化させて、加硫圧Pvが調整される。また、ベルト2としてフェルト状のベルトを使用する場合にはその仕様を変更することでも、加硫圧Pvが細かく調整される。
なお加硫装置としては、連続加硫機以外にも例えば、熱プレスなどを使用することもできる。加硫後の印刷ブランケット用圧縮性層は、例えばその表面粗さなどを調整するために、表面を研磨してもよい。
次に、本発明の印刷ブランケットについて説明する。
本発明の印刷ブランケットは、上記のようにして連続的に製造される、加硫されたゴムの層と基布との積層体である印刷ブランケット用圧縮性層を、印刷ブランケットを構成する他の層と積層して全体を加硫することにより製造される。
印刷ブランケットを構成する他の層としては、例えば補強層となる複数枚の基布や、あるいは表面印刷層のもとになるゴムの層などの、従来公知の種々の層が挙げられる。このうち基布としては、前記と同様に綿、ポリエステル、レーヨンなどの織布が挙げられる。これらの層も、印刷ブランケットの生産性などを考慮すると、中間部材と同様に、多数枚の印刷ブランケットの分が連続した長尺状に形成され、それが、積層体と連続的に積層されるのが好ましい。
なお、上記各層のうち補強層を形成する基布同士や、あるいは、かかる基布と、すでにゴムの層が加硫された状態の印刷ブランケット用圧縮性層などとは、例えば前記NBRやACMなどの耐油性のゴムに加硫剤、加硫促進剤などの成分を配合したいわゆる加硫接着剤を介して積層して、全体加硫によって加硫接着剤を加硫することにより接着、一体化させるのが好ましい。
また、表面印刷層のもとになるゴムの層は、練りゴムに溶剤を加えて調製したゴム糊を下地上に直接に、または加硫接着剤を介して連続的に塗布して乾燥させることにより形成される。そして、全体加硫によってゴムの層を加硫させるとともに、下地と接着、一体化させることで、表面印刷層が形成される。表面印刷層は、印刷ブランケットの印刷特性を向上することを考慮すると、中空微小球を含有しないのが好ましい。
表面印刷層用のゴムの層を構成するマトリクスゴムとしては、やはり前記NBR、CR、U、ACM等の耐油性のゴムが好適に使用される他、水素添加NBRなども使用でき、さらに、これら各種のゴムと、多硫化ゴム(T)との混合物なども使用できる。
表面印刷層用のゴムの層には、前記と同様に、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤などの、ゴムを加硫させるための成分が添加される他、老化防止剤、補強剤、充てん剤、軟化剤、可塑剤、粘着性付与剤などの各種添加剤を適宜、配合してもよい。全体加硫には、従来同様に加硫缶を用いてもよいが、印刷ブランケットの生産性を向上するとともに、加硫がばらつきなく均等に行われた、均一な特性を有する印刷ブランケットを製造するためには、やはりこの場合も、連続加硫機や熱プレスなどを用いるのが好ましい。
連続加硫機や熱プレスなどを用いた全体加硫の条件については特に限定されない。これは、全体加硫時に高温、高圧が加えられて、圧縮性層中で、中空微小球を構成する殻体が軟化、溶融し、あるいはマトリクスゴムと相溶して消失するようなことがあったとしても、先の連続加硫によって既にある程度まで加硫されている、中空微小球の周囲のマトリクスゴムが、当該中空微小球のあった空隙の形状を維持するために、印刷ブランケットに組み込まれた印刷ブランケット用圧縮性層の特性にはほとんど影響しないためである。
ただし、全体加硫時の加硫圧があまりに高すぎるときは、空隙の形状を維持しているマトリクスゴム自体が圧壊して、空隙が変形、圧壊するおそれがあるので、加硫圧についてはおよそ300kPa以下程度の範囲とするのが好ましい。
加硫後、必要に応じて表面印刷層の表面を研磨すれば、印刷ブランケットが製造される。
印刷ブランケットを構成する各層に添加される添加剤のうち加硫剤としては、例えば硫黄、有機含硫黄化合物、有機過酸化物等が挙げられ、このうち有機含硫黄化合物としては、例えばN,N′−ジチオビスモルホリン等が挙げられ、有機過酸化物としては、例えばベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等が挙げられる。
また、加硫促進剤としては、例えばテトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;ジブチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカーバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカーバミン酸テルル等のジチオカーバミン酸類;2−メルカプトベンゾチアゾール、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のチアゾール類;トリメチルチオ尿素、N,N′−ジエチルチオ尿素等のチオウレア類などの有機促進剤や、あるいは消石灰、酸化マグネシウム、酸化チタン、リサージ(PbO)等の無機促進剤が挙げられる。
加硫促進助剤としては、例えば亜鉛華等の金属酸化物や、あるいはステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸などが挙げられる。加硫遅延剤としては、例えばサリチル酸、無水フタル酸、安息香酸等の芳香族有機酸;N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジハイドロキノン、N−ニトロソフェニル−β−ナフチルアミン等のニトロソ化合物などが挙げられる。
老化防止剤としては、例えば2−メルカプトベンゾイミダゾール等のイミダゾール類;フェニル−α−ナフチルアミン、N,N′−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N ′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン等のアミン類;ジ−t−ブチル−p−クレゾール、スチレン化フェノール等のフェノール類などが挙げられる。
補強剤としては主にカーボンブラックが使用される他、シリカ系あるいはケイ酸塩系のホワイトカーボン、亜鉛華、表面処理沈降性炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー等の無機補強剤や、あるいはクマロンインデン樹脂、フェノール樹脂、ハイスチレン樹脂(スチレン含有量の多いスチレン−ブタジエン共重合体)等の有機補強剤も使用できる。
充てん剤としては、例えば炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム、珪藻土、マイカ、アスベスト、グラファイト等の無機充てん剤や、あるいはアスファルト類、スチレン樹脂、にかわ等の有機充てん剤などが挙げられる。軟化剤としては、例えば脂肪酸(ステアリン酸、ラウリン酸等)、綿実油、トール油、アスファルト物質、パラフィンワックス等の、植物油系、鉱物油系、および合成系の各種軟化剤が挙げられる。
可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジルフォスフェート等の各種可塑剤が挙げられる。上記以外の添加剤としては、例えば粘着性付与剤、分散剤、溶剤等が挙げられる。
以下に本発明を、実施例、比較例に基づいて説明する。
実施例1:
《印刷ブランケット用圧縮性層》
実施例1:
〈ゴム糊の調製〉
マトリクスゴムとして、アクリロニトリル含量が28%、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が50であるNBR〔日本ゼオン(株)製のDN2850〕を用い、このNBRを、下記の各成分と共に、60Lニーダー〔(株)モリヤマ製〕を使用して混練して練りゴムを作製した。
(成 分) (重量部)
NBR 100
カーボンブラックGPF 50
粉末硫黄*1
加硫促進剤CZ*2 1.5
加硫促進剤TET*3 0.6
ステアリン酸 1
酸化亜鉛*4
老化防止剤*5
*1:鶴見化学工業(株)製
*2:スルフェンアミド系加硫促進剤
*3:チウラム系加硫促進剤
*4:2種酸化亜鉛、三井金属鉱業(株)製
*5:大内新興化学(株)製の商品名「ノクラックNS−6」
上記練りゴムをトルエンに浸漬し、かく拌してゴム糊を調製した。次に、このゴム糊に、中空微小球〔松本油脂製薬(株)製のF50D、殻体がアクリロニトリルとメタクリル酸メチルの共重合体からなる未発泡の中空微小球、Td=120℃〕を加えてさらにかく拌した後、幅1mの長尺帯状の綿布上に連続的に塗布し、乾燥させて、厚み0.3mmの未加硫のゴムの層を形成して、このゴムの層と基布との積層体である、長尺シート状の中間部材を形成した。なお、中空微小球の添加量は、当該中空微小球の、発泡後の平均粒径が50μmになると仮定した際に、各成分のうちNBRと同体積となる量、つまり、前記M/R=50/50となる量に設定した。
次に、この中間部材を、図1に示した構造を有し、かつベルト2として、装置に標準装備された繊維補強ゴム製のものに代えてフェルト状のベルト〔アラミド繊維製、厚み8mm、単位面積あたりの重量3000g/m2〕を装着した連続加硫機を用いて、加硫圧Pv=3kPa、加硫温度Tv=140℃、加硫時間30分間の条件下、連続的に加熱して中空微小球を発泡させながら、ゴムの層を連続的に加硫して、加硫されたゴムの層と基布との積層体である印刷ブランケット用圧縮性層を製造した。
上記のうち、加硫前のゴムの層のムーニー粘度ML1+4(130℃)を、下記の方法によって測定したところ、40.8であった。また、加硫後のゴムの層の100%モジュラスM100を、下記の方法によって測定したところ、5.2MPaであった。
ムーニー粘度ML1+4(130℃)の測定:
ゴムの層を形成したのと同じ未加硫のゴム糊を乾燥させて、日本工業規格JIS K6300−1:2001「未加硫ゴム−物理特性−第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」で規定された形状および寸法を有する試験片を作製し、この試験片を用いて、この規格に所載の測定方法に則って、ムーニー粘度ML1+4(130℃)を測定した。
100%モジュラスM100の測定:
ゴムの層を形成したのと同じ未加硫のゴム糊を、金属板上に層状に塗布し、乾燥させ、熱プレスを用いて、上記と同じ条件で加硫させた後、打ち抜いて、JIS K6251:1993「加硫ゴムの引張試験方法」で規定されたダンベル状1号形試験片を作製し、この試験片を用いて、この規格に所載の測定方法に則って引張試験した際の、100%モジュラスM100を測定した。
実施例2:
マトリクスゴムとして、アクリロニトリル含量が32%、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が72であるNBR〔JSR(株)製のN236H〕100重量部を使用したこと以外は実施例1と同様にして、印刷ブランケット用圧縮性層を製造した。加硫前のゴムの層のムーニー粘度ML1+4(130℃)は57.5、加硫後のゴムの層の100%モジュラスM100は5.7MPaであった。
実施例3:
マトリクスゴムとして、アクリロニトリル含量が29%、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が56であるNBR〔JSR(株)製のN241〕100重量部を使用したこと以外は実施例1と同様にして、印刷ブランケット用圧縮性層を製造した。加硫前のゴムの層のムーニー粘度ML1+4(130℃)は45.2、加硫後のゴムの層の100%モジュラスM100は4.7MPaであった。
実施例4:
補強剤として、カーボンブラックGPFに代えて、同量のカーボンブラックHAFを使用したこと以外は実施例1と同様にして、印刷ブランケット用圧縮性層を製造した。加硫前のゴムの層のムーニー粘度ML1+4(130℃)は69.6、加硫後のゴムの層の100%モジュラスM100は6.9MPaであった。
比較例1:
マトリクスゴムとして、アクリロニトリル含量が33.5%、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が27であるNBR〔日本ゼオン(株)製のDN219〕100重量部を使用したこと以外は実施例1と同様にして、印刷ブランケット用圧縮性層を製造した。加硫前のゴムの層のムーニー粘度ML1+4(130℃)は22.1、加硫後のゴムの層の100%モジュラスM100は5.7MPaであった。
比較例2:
マトリクスゴムとして、アクリロニトリル含量が33%、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が80であるNBR〔日本ゼオン(株)製のDN3380〕100重量部を使用したこと以外は実施例1と同様にして、印刷ブランケット用圧縮性層を製造した。加硫前のゴムの層のムーニー粘度ML1+4(130℃)は71.3、加硫後のゴムの層の100%モジュラスM100は4.3MPaであった。
比較例3:
補強剤として、カーボンブラックHAFに代えて、同量のカーボンブラックFEFを使用したこと以外は実施例4と同様にして、印刷ブランケット用圧縮性層を製造した。加硫前のゴムの層のムーニー粘度ML1+4(130℃)は79.0、加硫後のゴムの層の100%モジュラスM100は7.1MPaであった。
比較例4:
補強剤として、カーボンブラックHAFに代えて、同量のカーボンブラックISAFを使用したこと以外は実施例1と同様にして、印刷ブランケット用圧縮性層を製造することを試みたが、混練中にカーボンゲルが多発したため、糊化を断念した。
なお、カーボンゲルの部分を除いた練りゴムをシート状に成形し、積層した後、打ち抜いて、前記JIS K6300−1:2001で規定された形状および寸法を有する試験片を作製し、この試験片を用いて、この規格に所載の測定方法に則って、ムーニー粘度ML1+4(130℃)を測定したところ、85.9であった。また、上記練りゴムをシート状に成形した後、打ち抜いて、前記JIS K6251:1993で規定されたダンベル状1号形試験片を作製し、この試験片を用いて、この規格に所載の測定方法に則って引張試験した際の、100%モジュラスM100を測定したところ、7.2MPaであった。
比較例5:
補強剤として、カーボンブラックHAFに代えて、同量のカーボンブラックSAFを使用したこと以外は実施例1と同様にして、印刷ブランケット用圧縮性層を製造することを試みたが、混練中にカーボンゲルが多発したため、糊化を断念した。
なお、カーボンゲルの部分を除いた練りゴムをシート状に成形し、積層した後、打ち抜いて、前記JIS K6300−1:2001で規定された形状および寸法を有する試験片を作製し、この試験片を用いて、この規格に所載の測定方法に則って、ムーニー粘度ML1+4(130℃)を測定したところ、89.6であった。また、上記練りゴムをシート状に成形した後、打ち抜いて、前記JIS K6251:1993で規定されたダンベル状1号形試験片を作製し、この試験片を用いて、この規格に所載の測定方法に則って引張試験した際の、100%モジュラスM100を測定したところ、7.5MPaであった。
上記各実施例、比較例の印刷ブランケット用圧縮性層について、下記の各試験を行って、その特性を評価した。
糊化性評価:
マトリクスゴムその他の成分を混練して練りゴムを作製し、この練りゴムをトルエンに浸漬し、かく拌してゴム糊を調製した際の状態を、糊化性として、下記の基準で評価した。
○:混練工程では各成分を良好に混練して均一な練りゴムを作製することができ、また、糊化工程では、この練りゴムを、トルエンに良好に溶解させて、均一なゴム糊を調製することができた。糊化性良好。
△:混練工程では、各成分を良好に混練して均一な練りゴムを作製することができたが、糊化工程では、練りゴムの一部が溶けずに、塊となって残ったため、ゴム糊として使用する際には、この塊を除去する必要があった。糊化性不良。
×:混練工程で、各成分を良好に混練することができず、カーボンゲルが多発したため、これ以降の工程は断念した。糊化性極めて不良。
セル状態の評価:
製造した印刷ブランケット用圧縮性層を厚み方向に切断して、加硫後のゴムの層中で、多孔質構造を構成する中空微小球の、発泡後の平均粒径を測定した。そして平均粒径が50μm未満のものをセル状態良好(○)、50μm以上のものをセル状態不良(×)として評価した。
耐久性試験1:
製造した印刷ブランケット用圧縮性層を、一対の金属製のロールの一方の外周に巻きつけて固定し、もう一方のロールを、巻きつけた印刷ブランケット用圧縮性層の表面に、当該圧縮性層が常に0.2mm、厚み方向に圧縮されるように当接させた状態で、両ロールを、毎秒1回転の回転速度で、30日間、連続して回転させた。そして連続回転後、ロールから取り外した圧縮性層の厚みの、元の厚みからの減少量を、ヘタリ量として測定し、ヘタリ量が0.05mm以下であったものを耐久性良好(○)、0.05mmを超えるものを耐久性不良(×)として評価した。
耐久性試験2:
製造した印刷ブランケット用圧縮性層のうち、ゴムの層側の表面に、下記の各成分と、トルエンとを混合した加硫接着剤を介して、基布としての3枚の綿布を積層した。
(成分) (重量部)
NBR 100
白艶華 30
亜鉛華 3
ステアリン酸 1
可塑剤 5
粘着付与剤 5
硫黄 1
チアゾール系加硫促進剤 1.5
チウラム系加硫促進剤 0.5
また、印刷ブランケット用圧縮性層のうち、基布側の表面には、下記の各成分と、トルエンとを混合した表面印刷層用のゴム糊を塗布し、乾燥させて、厚み0.50mmの未加硫のゴムの層を形成した。
(成分) (重量部)
NBR 100
シリカ 20
顔料 1
亜鉛華 3
ステアリン酸 1
可塑剤 10
老化防止剤 2
硫黄 1
チアゾール系加硫促進剤 1.5
チウラム系加硫促進剤 0.5
次に、上記の積層体を、図1に示した構造を有し、かつベルト2として、装置に標準装備された繊維補強ゴム製のものを装着した連続加硫機を用いて、加硫温度Tv=160℃、加硫時間5分間、加硫圧196kPaの条件下で連続的に加熱して、未加硫ゴムを含む各層を加硫して、印刷ブランケットを製造した。
そして、この印刷ブランケットを、オフセット輪転印刷機のブランケット胴に装着して、実際の印刷に2週間、連続的に使用したのち、ブランケット胴から取り外した印刷ブランケットの厚みの、元の厚みからの減少量を、ヘタリ量として測定し、ヘタリ量が0.05mm以下であったものを耐久性良好(○)、0.05mmを超えるものを耐久性不良(×)として評価した。
以上の結果を表1、2に示す。
Figure 2006103201
Figure 2006103201
両表より、圧縮性層を構成するゴムの層の、未加硫状態のムーニー粘度ML1+4(130℃)が40未満である比較例1は、糊化性は良好であったものの、セル状態が不良で、個々の気孔径が大きすぎるため、復元力が不十分で、ヘタリを生じることがわかった。また、圧縮性層を構成するゴムの層の、未加硫状態のムーニー粘度ML1+4(130℃)が70を超えると共に、加硫されたゴムの層の100%モジュラスM100が4.5MPa未満である比較例2は、糊化性が不良である上、セル状態も不良で、個々の気孔径が大きすぎるため、復元力が不十分で、ヘタリを生じることがわかった。
また、圧縮性層を構成するゴムの層の、未加硫状態のムーニー粘度ML1+4(130℃)が70を超えると共に、加硫されたゴムの層の100%モジュラスM100が7.0MPaを超える比較例3は、セル状態が良好で、個々の気孔径が大きすぎないため、十分な復元力を有し、ヘタリを生じないものの、糊化性が不良であることがわかった。
さらに、圧縮性層を構成するゴムの層の、未加硫状態のムーニー粘度ML1+4(130℃)が70を大きく上回ると共に、加硫されたゴムの層の100%モジュラスM100が7.0MPaを超える比較例4、5は、いずれも糊化性が極めて不良で、ゴム層を形成できないことがわかった。
これに対し、圧縮性層を構成するゴムの層の、未加硫状態のムーニー粘度ML1+4(130℃)が40〜70で、かつ加硫されたゴムの層の100%モジュラスM100が4.5〜7.0MPaである実施例1〜4は、いずれも糊化性が良好である上、セル状態が良好で、個々の気孔径が大きすぎないため、十分な復元力を有し、ヘタリを生じないものの、糊化性が不良であることが確認された。
本発明の印刷ブランケット用圧縮性層を製造する際に使用される、中間部材と直接に接触して加熱、加圧する部材を備えた加硫装置の一例としての連続加硫機を示す正面図である。
符号の説明
3 中間部材

Claims (2)

  1. 印刷ブランケットに組み込まれる、加硫ゴム製で多孔質構造を有する印刷ブランケット用圧縮性層であって、未加硫のマトリクスゴム中に、熱可塑性樹脂の殻体を有する中空微小球を分散させた、未加硫状態のムーニー粘度ML1+4(130℃)が40〜70であるゴムの層を加硫して形成されると共に、加硫されたゴムの層の100%モジュラスM100が4.5〜7.0MPaであることを特徴とする印刷ブランケット用圧縮性層。
  2. 請求項1記載の印刷ブランケット用圧縮性層を、印刷ブランケットを構成する他の層と積層した状態で、全体を加硫して形成されることを特徴とする印刷ブランケット。
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