JP3766532B2 - 印刷用ブランケット - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は圧縮性層を有する印刷用ブランケットに関し、より詳しくは、優れた復元性と衝撃吸収性とを備えた印刷用ブランケットに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、印刷機の高速化や印刷画像の高画質化に対応すべく、ゴム等のエラストマーからなる多孔質の圧縮性層を介在させた、いわゆるエアータイプの印刷用ブランケットが普及しつつある。
このエアータイプの印刷用ブランケットは、圧縮性層を有しない、いわゆるソリッドタイプのものに比べて、版胴等との圧接によって生じるニップ変形部での圧縮応力が低く、かつ歪み量の変化に伴う圧縮応力の変動が小さいことを特徴とする。このため、エアータイプの印刷用ブランケットは衝撃吸収性が良好であって、例えば印刷機の歯車の送り時に生じる衝撃や、平板状のブランケットをブランケット胴に巻き付けたときの継ぎ目がニップ変形部を通過する際に発生する衝撃等が印刷精度に悪影響を及ぼすのを防止する効果に優れている。
【0003】
また、ソリッドタイプの印刷用ブランケットでは、ニップ変形部において表面印刷層に応力が集中してバルジが発生すると、印刷用ブランケットの周方向に表面印刷層が伸びて、その結果、見当ズレ、紙送り不良、ダブリ、網点パターンの変形(特に網点の太り)等の印刷不良が発生するおそれがある。これに対し、前述のエアータイプの印刷用ブランケットでは、表面印刷層に応力が集中するのを圧縮性層が緩和するため、上記印刷不良が発生するのを防止できる。
【0004】
かかるエアータイプの印刷用ブランケットにおける圧縮性層には、該層内の気泡がそれぞれ独立したいわゆる独立気泡構造のものと各気泡が互いに繋がったいわゆる連続気泡構造のものとがある。前記独立気泡構造は、例えば加熱により分解して気体を発生する発泡剤によりゴムを発泡させたり、中空状微小粒子をゴム中に配合して得られる。一方、前記連続気泡構造は、ゴムの性質に影響を及ぼすことのない溶剤で抽出可能な粒子をゴム中に分散し、加硫後に前記粒子を溶剤で抽出除去する方法(リーチング法)によって形成される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記両構造の圧縮性層にはそれぞれ一長一短がある。
独立気泡構造の圧縮性層は、気泡の周囲が閉じられていることから版胴等の圧接により受ける剪断力に対して大きな反発力を示し、かつ圧縮により変形した後に速やかに元の形状に戻る性質、すなわち優れた復元性を有する。また、独立気泡構造の圧縮性層によれば、例えば版胴との間に異物が挟まって、印刷用ブランケットが部分的に大きく変形した後も、圧縮性層が速やかに復元するため、かかる変形の跡が印刷物の画像上に現れるといった印刷不良を最小限に抑えることができる。
【0006】
しかし、独立気泡構造の圧縮性層は、空隙率が同じ場合には連続気泡構造のものに比べてニップ変形部での圧縮応力が高く、かつ歪み量の変化に伴う圧縮応力の変動が大きいため、前述の衝撃吸収性が低くなる。従って、かかる独立気泡構造の圧縮性層を有する印刷用ブランケットは、連続気泡構造の圧縮性層を有するものに比べて、衝撃による印刷精度の低下が起こりやすいという問題がある。
【0007】
一方、連続気泡構造の圧縮性層は、版胴等によって圧接されたときに気泡内部の空気が外部に逃げることができることから、独立気泡構造のものに比べてニップ変形部での圧縮応力が低く、かつ歪み量の変化に伴う圧縮応力の変動が小さくなり、その結果、優れた衝撃吸収性を発揮する。
しかしながら、連続気泡構造の圧縮性層は、版胴等の圧接により受ける剪断力に対する反発力が小さいため、圧縮によって生じた変形を速やかに元の状態に戻すことができない(すなわち復元性が低い)。従って、とりわけ高速印刷時には、ニップ変形部を通過し、再度ニップ変形部に達するまでの間に圧縮により生じた変形が元に戻らず、その結果、印刷用ブランケットにいわゆるヘタリが生じて、印圧が所定の値より低下するという問題が顕著に現れる。また、版胴との間の異物による変形の跡が印刷物に現れてしまう印刷不良が多量に発生しやすいという問題もある。
【0008】
さらに、連続気泡構造の圧縮性層は、版胴等の圧接による剪断力を受けて印刷用ブランケットの周方向に伸びが生じやすいという短所もあり、前記周方向への網点太り等の印刷不良を発生するおそれもある。
そこで、本発明の目的は、優れた復元性と衝撃吸収性とを両立した印刷用ブランケットを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、少なくとも1層の圧縮性層を有する支持体層と、この支持体層上に設けられた表面印刷層とからなる印刷用ブランケットにおいて、前記圧縮性層が連続気泡構造を有し、かつ該層内に加硫ゴム粒子を含有するときは、連続気泡の作用により優れた衝撃吸収性が得られるとともに、前記加硫ゴム粒子の作用により圧縮性層のヘタリが抑制され、版胴等の圧接に対する優れた復元性をも得ることができるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の印刷用ブランケットについて、その実施形態の一例を示す図面を参照しつつ、詳細に説明する。
まず、図1(a),(b) に示す例について説明する。
図1(a),(b) に示す印刷用ブランケット10はシート状のものであって、少なくとも1層の圧縮性層11を含む支持体層12と、この支持体層12上に設けられた表面印刷層13とで構成されている。前記支持体層12は、基布14と接着層15とからなる基布層16を複数(図1では3層)積層し、圧縮性層12を介してさらに基布層(補強層)16aを設けたものである。
【0011】
上記のうち圧縮性層11は、図1に示すように、連続気泡17と加硫ゴム粒子18とを有する、多孔質のゴムにて形成される。連続気泡17と前記粒子18とは、両者の効果が印刷用ブランケット10の全面にわたって均質化するために、図1(b) に示すようにランダムに混在しているのが好ましい。
圧縮性層11内の気泡の割合を示す空隙率は、これに限定されないが、衝撃吸収性の観点から30〜60%、好ましくは35〜60%、より好ましくは40〜55%の範囲で設定するのが適当である。空隙率が上記範囲を下回ると、印刷用ブランケットの衝撃吸収性が不十分になって、印刷機の歯車の送り時に生じる衝撃や、平板状のブランケットをブランケット胴に巻き付けたときの継ぎ目がニップ変形部を通過する際に発生する衝撃等によって印刷精度が低下するおそれが生じるため好ましくない。逆に、空隙率が上記範囲を超えると圧縮性層全体の強度が低下して圧縮時の反力も低下し、その結果、十分な印圧が得られなくなったり、たとえ加硫ゴム粒子を添加したとしても圧縮性層11にヘタリが生じるのを抑制できなくなったりするおそれがあるため好ましくない。
【0012】
圧縮性層11中の加硫ゴム粒子18の配合量は、圧縮性層11の総体積から加硫ゴム粒子18および気泡部分17の体積を差し引いた体積Aと、該層11に配合された加硫ゴム粒子18の総体積Bとの比(A:B)が80:20〜20:80、好ましくは70:30〜30:70、より好ましくは70:30〜50:50となるように設定される。
【0013】
加硫ゴム粒子の総体積Bの比率は、廃自動車用タイヤ等の加硫ゴムをリサイクルするという観点から上記範囲の中でもより高いのが好ましい。しかし、加硫ゴム粒子の総体積Bの比率が上記範囲を超えると、圧縮性層の加工が困難になるため好ましくない。逆に、前記総体積Bの比率が上記範囲を下回ると圧縮性層のヘタリを抑制することができなくなり、版胴等の圧接に対する復元性が失われるおそれがあるため好ましくない。
【0014】
圧縮性層11に配合される加硫ゴム粒子には、廃自動車用タイヤ等の加硫ゴムをリサイクルし、粒子状に粉砕したものを用いることができる。すなわち、本発明によれば、廃自動車用タイヤ等をリサイクルして利用できるというメリットがある。
上記加硫ゴムの材質は特に限定されないが、例えばブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、ウレタンゴム等の反発弾性が高いゴムまたはこれらのブレンド物であるのが好ましい。
【0015】
また、加硫ゴム粒子としては、その平均粒径が3〜250μm、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜150μmの範囲にあるものが用いられる。加硫ゴム粒子の平均粒径が上記範囲を下回ると、圧縮性層のヘタリを抑制する効果が不十分になるおそれがあるために好ましくない。逆に、前記平均粒径が上記範囲を超えると、加硫ゴム粒子が圧縮性層内で異物として作用して、印刷精度が低下する等の問題が生じるおそれがあるために好ましくない。
【0016】
圧縮性層11の硬さはこれに限定されないが、連続気泡が形成されていない状態(すなわち、マトリックスゴムの状態)で、ショア硬さA形(JIS A)で表したときに40〜80、好ましくは45〜75、より好ましくは50〜70の範囲となるように設定するのが適当である。該層11の硬さが上記範囲を下回ると強度が低下するため、復元性が低下したり、印刷に必要な印圧が得られなくなるおそれがある。逆に、前記層11の硬さが上記範囲を超えると、圧縮性が低下して印刷時における圧縮性層の体積変化が減少するため、表面印刷層13にバルジが発生して、印刷障害が起こるおそれがある。
【0017】
圧縮性層11の厚みは、印刷用ブランケット10の全体の厚みの10〜50%、好ましくは15〜45%、より好ましくは20〜40%の範囲で設定するのが適当である。圧縮性層11の厚みが上記範囲を下回ると、該層11の機能、すなわち印刷機の歯車の送り時に生じる衝撃や、平板状のブランケットをブランケット胴に巻き付けたときの継ぎ目がニップ変形部を通過する際に発生する衝撃等を吸収して、印刷精度に悪影響を及ぼすのを防止する効果が不十分となるおそれがある。逆に、圧縮性層11の厚みが上記範囲を超えると、圧縮性層11全体としての圧縮応力が低下して、印刷に必要な印圧が得られないという問題を生じるおそれがある。
【0018】
圧縮性層11の連続気泡17は従来公知のリーチング法により形成される。すなわち圧縮性層11の作製方法としては、例えば圧縮性層用の未加硫のゴムを適当な溶剤に溶解し、これに連続気泡の元になるリーチング用の粒子と、加硫ゴム粒子とを配合して圧縮性層用のゴム糊を作製し、このゴム糊を下地となる層(図1に示す例の場合には、支持体層12における最上層の基布層16または補強層16a)上に塗布、乾燥させた後、加熱して加硫する。
【0019】
次いで、こうして形成された層の内部に分散するリーチング用の粒子を適当な溶剤で抽出すると上記粒子の跡が連続気泡17となり、層内部に連続気泡と加硫ゴム粒子とを有する多孔質の圧縮性層11が形成される。
また、圧縮性層11は、未加硫のゴムにリーチング用の粒子と加硫ゴム粒子とを添加したゴムコンパウンドから未加硫のゴムシートを成形し、これを前述の下地となる層に接着して形成することもできる。
【0020】
圧縮性層11を構成するゴムには種々のゴムを用いることができるが、インキや洗浄液等に対する耐性を考慮して、耐油性に優れたものを用いるのが好ましい。かかる耐油性のゴムとしては、これに限定されないが、例えばアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム等があげられる。
【0021】
圧縮性層11の硬さを前述の範囲内にするには、加硫度を調整したり、あるいはゴム中に配合する補強剤、充填剤、可塑剤等の量を調整したりすればよい。
リーチング法によって連続気泡を形成するための粒子としては、抽出用の溶剤として水を用いるのが、安全性やコストの点で有利であるため、水により抽出可能な粒子が好適に使用される。具体的には、例えば、食塩、澱粉、砂糖、ポリビニルアルコール、ゼラチン、尿素、セルロース、硫酸ナトリウム、塩化カリウム等の、種々の水溶性の有機物や無機物の粒子があげられる。
【0022】
上記リーチング用の粒子の粒径や添加量等は、前述した圧縮性層11の空隙率等に応じて適宜設定される。
圧縮性層11とともに印刷用ブランケット10を構成する支持体層12(すなわち、基布層16,16a)や表面印刷層14は、それぞれ従来同様の構成とすることができる。
【0023】
例えば支持体層12は、綿、ポリエステル、レーヨン等の織布または不織布からなる基布14を複数枚(図1の場合は3枚)、接着用のゴム糊を介して積層した後、上記ゴム糊を加硫することにより形成される。また、補強層としての基布層16aも、上記と同様の基布14により形成される。
表面印刷層13は、ゴム糊の塗布、乾燥により形成された未加硫のゴム層、またはゴムコンパウンドからなる未加硫のゴムシートを加硫することにより形成される。
【0024】
表面印刷層13を構成するゴムとしては、例えば前述したNBR、CR、ウレタンゴム等の耐油性のゴムが好適に使用される他、多硫化ゴム、水素添加NBR等を使用することもできる。
上記各層の厚みも、従来と同程度でよい。具体的には、支持体層12を構成する基布層16の厚みが0.2〜0.5mm程度、圧縮性層11を介して上記基布層16を積層した支持体層12全体の厚みが0.6〜1.3mm程度、表面印刷層13の厚みが0.1〜1.0mm程度であるのが好ましい。
【0025】
印刷用ブランケット10を構成する上記の各層はそれぞれ、
(1) 未加硫の層同士を直接に、あるいは接着用のゴム糊を介して積層した状態で、両層の加硫と同時に接着する、
(2) 加硫した層同士を、接着用のゴム糊を介して積層した状態で、当該ゴム糊の加硫により接着する、
等の方法により、互いに接着される。
【0026】
なお圧縮性層11は、リーチング用の粒子を抽出除去する関係上、該層11の両面に他の層が積層される前に(すなわち、圧縮性層11のいずれか一方の表面が基布層等の他の層によって被覆されていない状態で)加硫して、粒子を抽出しておくのが好ましい。
上記平板状の印刷用ブランケット10は、直接にまたは下貼り材を介してブランケット胴軸に装着されて使用される。
【0027】
次に、図2に示す例について説明する。
図2に示す印刷用ブランケット20は、円筒状のスリーブ25の外周面上に形成された、周方向に継ぎ目のない円筒状のものであって、スリーブ25上に、圧縮性層21および非伸縮性層24からなる支持体層22と、表面印刷層23とを、接着層g1,g2,g3を介してこの順に積層したものである。また、印刷用ブランケット20の厚みの嵩上げを目的として、スリーブ25と圧縮性層21との間に直接または接着層を介してベース層を設けてもよい。
【0028】
上記のうち圧縮性層21は、先の例で示した図1(b) に示されるように、連続気泡と加硫ゴム粒子とが混在した多孔質のゴムにより、継ぎ目のない円筒状に形成される。
圧縮性層21の空隙率や、圧縮性層21の総体積から加硫ゴム粒子および気泡部分の体積を差し引いた体積Aと、当該圧縮性層21に配合された加硫ゴム粒子の総体積Bとの比(A:B)については、前記と同じ範囲であるのが好ましい。その理由は前述したとおりである。また、圧縮性層21の厚みは、図2に示す例の場合、スリーブ20を除いた各層と、当該各層間に設けてもよい接着層との合計の厚みに対して10〜50%程度であるのが好ましい。この理由も前述のとおりである。
【0029】
さらに圧縮性層21の形成方法も、前記と同様である。なお、圧縮性層21を継ぎ目のない円筒状とするには、接着層g1(またはベース層)上に、前述のリーチング用の粒子と加硫ゴム粒子とを配合した圧縮性層用ゴム糊を塗布し、乾燥、加硫後、前記粒子を抽出すればよい。また、リーチング用の粒子と加硫ゴム粒子とを配合したゴムコンパウンドから形成した未加硫のゴムシートを、接着用のゴム糊を介して接着層g1(またはベース層)上に巻回した状態で加硫して、周方向の継ぎ目を加硫と同時に溶着し、一体化してもよい。
【0030】
圧縮性層21を構成するゴムやリーチング用の粒子には、前記と同様の材料があげられる。
上記圧縮性層21とともに印刷用ブランケット20を構成するスリーブ25、ベース層、非伸縮性層24および表面印刷層23は、従来同様の構成とすることができる。
【0031】
例えばスリーブ25には、ニッケル薄板等のごく薄い金属材料で形成されたものや、ガラス繊維強化プラスチックで形成されたもの等があげられる。
ベース層および表面印刷層23は、それぞれゴム糊の塗布、乾燥により形成された未加硫のゴム層、またはゴムコンパウンドからなる未加硫のゴムシートを加硫することにより形成される。上記両層はともに、継ぎ目のない円筒状に形成される。その方法は圧縮性層21の場合と同じである。
【0032】
ベース層を構成するゴムとしては、例えば前述したNBR、CR、ウレタンゴム等の耐油性のゴムが好適に使用される。一方、表面印刷層23を構成するゴムとしては、前記のようにNBR、CR、ウレタンゴム、多硫化ゴムおよび水素添加NBR等があげられる。
非伸縮性層24は、綿糸、ポリエステル糸、レーヨン糸、ナイロン糸、芳香族ポリアミド糸等の非伸縮性の線材24aを、圧縮性層21の周囲に、張力をかけながららせん状に巻回した後、ゴム糊を加硫して固定することにより形成される。
【0033】
上記各層の厚みは、前記と同程度でよい。また支持体層22を構成する線材24aの直径についても、従来と同程度でよい。具体的には、線材24aの直径は0.1〜0.5mm程度が好ましい。
印刷用ブランケット20を構成する上記の各層は、スリーブ25に近い層から外側の層へ順次、積層形成される。なお各層は、形成する毎に加硫してもよいし、複数層をまとめて加硫してもよい。例えば圧縮性層21は、リーチング用の粒子を抽出する関係上、表面印刷層23を積層する前に加硫して、粒子を抽出しておくのが好ましい。
【0034】
上記円筒状の印刷用ブランケット20は、印刷機のブランケット胴軸に外挿して使用される。
以上で説明した例の印刷用ブランケット10、20を構成する各層のゴムコンパウンドやゴム糊には、従来同様に各種の添加剤を配合することができる。
かかる添加剤としては、例えば加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤等のゴムを加硫させるための薬剤の他、老化防止剤、補強剤、充填剤、軟化剤、可塑剤等があげられる。これら添加剤の添加量は従来と同程度でよい。
【0035】
上記のうち加硫剤としては、例えば硫黄、有機含硫黄化合物、有機過酸化物等があげられる。このうち有機含硫黄化合物としては、例えばN,N′−ジチオビスモルホリン等があげられ、有機過酸化物としては、例えばベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等があげられる。
加硫促進剤としては、例えばテトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;ジブチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカーバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカーバミン酸テルル等のジチオカーバミン酸類;2−メルカプトベンゾチアゾール、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のチアゾール類;トリメチルチオ尿素、N,N′−ジエチルチオ尿素等のチオウレア類等の有機促進剤、あるいは消石灰、酸化マグネシウム、酸化チタン、リサージ(PbO)等の無機促進剤があげられる。
【0036】
加硫促進助剤としては、例えば亜鉛華等の金属酸化物、あるいはステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸があげられる。
加硫遅延剤としては、例えばサリチル酸、無水フタル酸、安息香酸等の芳香族有機酸;N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジハイドロキノン、N−ニトロソフェニル−β−ナフチルアミン等のニトロソ化合物があげられる。
【0037】
老化防止剤としては、例えば2−メルカプトベンゾイミダゾール等のイミダゾール類;フェニル−α−ナフチルアミン、N,N′−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン等のアミン類;ジ−t−ブチル−p−クレゾール、スチレン化フェノール等ノフェノール類があげられる。
【0038】
補強剤としては主にカーボンブラックが使用される他、シリカ系あるいはケイ酸塩系のホワイトカーボン、亜鉛華、表面処理沈降性炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー等の無機補強剤、あるいはクマロンインデン樹脂、フェノール樹脂、ハイスチレン樹脂(スチレン含有量の多いスチレン−ブタジエン共重合体)等の有機補強剤も使用できる。
【0039】
充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム、珪藻土、マイカ、アスベスト、グラファイト等の無機充填剤、あるいは再生ゴム、粉末ゴム、アスファルト類、スチレン樹脂、にかわ等の有機充填剤があげられる。
軟化剤としては、例えば脂肪酸(ステアリン酸、ラウリン酸等)、綿実油、トール油、アスファルト物質、パラフィンワックス等の、植物油系、鉱物油系、および合成系の各種軟化剤があげられる。
【0040】
可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジルフォスフェート等の各種可塑剤があげられる。
上記以外にも、例えば粘着性付与剤、分散剤、溶剤等を適宜ゴムに配合してもよい。
なお、本発明の印刷用ブランケットの構成は、図示したものには限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で、種々の設計変更を施すことができる。
【0041】
例えば図1に示した平板状の印刷用ブランケット10における圧縮性層11の位置またはその他の層の構成は、適宜変更することができる。同様に、図2に示した円筒状の印刷用ブランケット20における圧縮性層21の位置やその他の層の構成も、適宜変更することができる。
【0042】
【実施例】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を説明する。
実施例1〜5
基布としての綿布(厚み0.3mm)を、それぞれNBR系のゴム糊からなる接着層を介して3枚積層した後、最上層の基布の表面に圧縮性層用ゴム糊を糊引きして乾燥させ、加圧、加熱して加硫した。
【0043】
圧縮性層用ゴム糊は、下記の成分からなる圧縮性層用ゴム50重量部と、食塩粒子(粒径1〜100μm)100重量部とをトルエン200重量部に加え、さらに加硫ゴム粒子を配合したものを用いた。
上記圧縮性層用ゴム糊において、加硫ゴム粒子には、廃自動車用タイヤのトレッドゴムを粉砕し、表1に示す平均粒径となるように調整したものを用いた。
【0044】
また、加硫ゴム粒子の配合量は、圧縮性層の総体積から加硫ゴム粒子および気泡部分の体積を差し引いた体積Aと、当該圧縮性層に配合された加硫ゴム粒子の総体積Bとの比(A:B)が50:50となるように調節した。
なお、前記体積Aおよび加硫ゴム粒子の総体積Bは、比重計で測定した比重をもとに算出した。
【0045】
上記圧縮性層用ゴム糊を加硫した後、80℃の温水に5時間浸漬して、食塩粒子を抽出するリーチング処理を行い、さらに乾燥させて、厚み0.95mmの支持体層の上に厚み0.35mmの圧縮性層が積層された積層体を形成した。前記圧縮性層の空隙率は50%であった。
次に、上記積層体における圧縮性層の表面に、基布としての綿布(厚み0.25mm)1枚を、NBR系のゴム糊からなる接着層を介して積層した後、この基布の表面に、NBR系のゴム糊を糊引きして乾燥させ、加圧、加熱して加硫した後、表面を研磨して厚み0.25mmの表面印刷層を形成した。こうして、図1(a) に示す層構成を有する、総厚み1.95mmのシート状の印刷用ブランケット10を製造した。
【0046】
比較例1
圧縮性層用ゴム糊中に加硫ゴム粒子を配合しなかったほかは、実施例1〜5と同様にして、図1(a) に示す層構成を有するシート状の印刷用ブランケット10を製造した。なお、食塩の配合量は、圧縮性層11の空隙率が50%となるように調整した。かかる印刷用ブランケット10の圧縮性層11は連続気泡構造を有していた。
【0047】
比較例2
実施例1と同様にして基布3枚を接着層を介して積層した後、最上層の基布の表面に圧縮性層用ゴム糊を糊引きして乾燥させ、加圧、加熱して加硫した。
圧縮性層用ゴム糊としては、加硫ゴム粒子を配合せず、かつ食塩粒子に代えて中空状微小粒子(エクスパンセル社製の「エクスパンセル091DE100」、粒径10〜100μm)を配合したほかは、実施例1〜5における圧縮性層用ゴム糊と同様にして調整したものを用いた。なお、中空状微小粒子の配合量は、圧縮性層の空隙率が50%となるように調整した。
【0048】
加硫後、得られた積層体における圧縮性層の表面に、実施例1〜5と同様にして、接着層を介して基布を積層し、さらにその表面に表面印刷層を形成した。こうして、図1(a) に示す層構成を有するシート状の印刷用ブランケット10を製造した。かかる印刷用ブランケット10の圧縮性層は独立気泡構造を有していた。
【0049】
上記実施例1〜5および比較例1、2で製造した印刷用ブランケットについて、それぞれ以下の試験(i),(ii)を行い、その特性を評価した。
(i) 復元性試験
各印刷用ブランケットを、オフセット印刷機〔リョービ(株)製の560型〕のブランケット胴軸に装着するとともに、印刷用ブランケット/版胴の印圧が15/100mmとなるように調整した。
【0050】
次いで、コート紙〔大王製紙(株)製の商品名「ユトリロコート」、坪量110kg〕の中央に厚み0.2mmの10cm角の厚紙を張りつけたものを、厚紙が印刷用ブランケットの側を向くようにして上記版胴と印刷用ブランケットとの間に挟着させることにより、印刷用ブランケットの表面を部分的に変形させた。つぎに、上記変形直後のブランケットを用いて、印圧15/100mm、印刷速度10000枚/時の条件で、前記と同じコート紙の表面に東洋インキ(株)製のインキ(商品名「ハイプラス ベニ」)を用いてベタ印刷を連続的に行った。
【0051】
そして、印刷何枚目で、変形部とその周囲の濃度差がなくなったか、つまり部分的な変形が復元したかを計数して、下記の基準により、印刷用ブランケットの復元性を評価した。
◎:印刷100枚目以前に復元した。(復元性良好)
〇:印刷101枚目〜500枚目の間に復元した。
【0052】
×:印刷501枚目以降に復元した。(復元性不良)
(ii)衝撃吸収性試験
各印刷用ブランケットを上記復元性試験と同じオフセット印刷機に装着して、印圧15/100mm、印刷速度10000枚/時の条件で、前記と同じコート紙の表面に、東洋インキ(株)製のインキ(前出)による70%総網版の印刷を行った。
【0053】
そして、印刷機の歯車の送り時に生じる衝撃の影響(網点の狂い、いわゆるギア目)が印刷に現れたか否かを目視にて観察して、下記の基準により、印刷用ブランケットの衝撃吸収性を評価した。
◎:ギア目は全く確認できなかった。(衝撃吸収性良好)
〇:ギア目がかすかに確認されたものの、実用上の問題はなかった。
【0054】
×:ギア目がハッキリと確認できた。(衝撃吸収性不良)
以上の結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1より明らかなように、実施例1〜5の印刷用ブランケットによれば、復元性と衝撃吸収性とのいずれもが良好であって、両者を両立することができた。
一方、比較例1では、連続気泡構造を有するものの、加硫ゴム粒子が配合されていないため、復元性が不十分であった。また、比較例2では、独立気泡構造のみを有することから、衝撃吸収性が不十分であった。
【0057】
実施例6、7および比較例3、4
加硫ゴム粒子の配合量を変えたほかは、すなわち圧縮性層の総体積から加硫ゴム粒子および気泡部分の体積を差し引いた体積Aと、当該圧縮性層に配合された加硫ゴム粒子の総体積Bとの比(A:B)を変えたほかは、実施例3と同様にして印刷用ブランケットを製造した。次いで、得られた印刷用ブランケットについて前述の試験(i),(ii)を行い、その特性を評価した。その結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
表2より明らかなように、前記比A:Bが80:20〜20:80の範囲であるときは、復元性と衝撃吸収性とのいずれもが良好であって、両者を両立することができた。
【0060】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、優れた復元性と衝撃吸収性とを両立した印刷用ブランケットが得られる。
かかる本発明の印刷用ブランケットは、高速印刷時においても高画質の印刷画像を形成できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】同図(a) は本発明の印刷用ブランケットの一実施形態を示す断面図、同図(b) はその要部を拡大した断面図である。
【図2】同図(a) は本発明の印刷用ブランケットの他の実施形態を示す斜視図、同図(b) はそのA−A断面図である。
【符号の説明】
10,20 印刷用ブランケット
11,21 圧縮性層
12,22 支持体層
13,23 表面印刷層
17 連続気泡
18 加硫ゴム粒子
【発明の属する技術分野】
本発明は圧縮性層を有する印刷用ブランケットに関し、より詳しくは、優れた復元性と衝撃吸収性とを備えた印刷用ブランケットに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、印刷機の高速化や印刷画像の高画質化に対応すべく、ゴム等のエラストマーからなる多孔質の圧縮性層を介在させた、いわゆるエアータイプの印刷用ブランケットが普及しつつある。
このエアータイプの印刷用ブランケットは、圧縮性層を有しない、いわゆるソリッドタイプのものに比べて、版胴等との圧接によって生じるニップ変形部での圧縮応力が低く、かつ歪み量の変化に伴う圧縮応力の変動が小さいことを特徴とする。このため、エアータイプの印刷用ブランケットは衝撃吸収性が良好であって、例えば印刷機の歯車の送り時に生じる衝撃や、平板状のブランケットをブランケット胴に巻き付けたときの継ぎ目がニップ変形部を通過する際に発生する衝撃等が印刷精度に悪影響を及ぼすのを防止する効果に優れている。
【0003】
また、ソリッドタイプの印刷用ブランケットでは、ニップ変形部において表面印刷層に応力が集中してバルジが発生すると、印刷用ブランケットの周方向に表面印刷層が伸びて、その結果、見当ズレ、紙送り不良、ダブリ、網点パターンの変形(特に網点の太り)等の印刷不良が発生するおそれがある。これに対し、前述のエアータイプの印刷用ブランケットでは、表面印刷層に応力が集中するのを圧縮性層が緩和するため、上記印刷不良が発生するのを防止できる。
【0004】
かかるエアータイプの印刷用ブランケットにおける圧縮性層には、該層内の気泡がそれぞれ独立したいわゆる独立気泡構造のものと各気泡が互いに繋がったいわゆる連続気泡構造のものとがある。前記独立気泡構造は、例えば加熱により分解して気体を発生する発泡剤によりゴムを発泡させたり、中空状微小粒子をゴム中に配合して得られる。一方、前記連続気泡構造は、ゴムの性質に影響を及ぼすことのない溶剤で抽出可能な粒子をゴム中に分散し、加硫後に前記粒子を溶剤で抽出除去する方法(リーチング法)によって形成される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記両構造の圧縮性層にはそれぞれ一長一短がある。
独立気泡構造の圧縮性層は、気泡の周囲が閉じられていることから版胴等の圧接により受ける剪断力に対して大きな反発力を示し、かつ圧縮により変形した後に速やかに元の形状に戻る性質、すなわち優れた復元性を有する。また、独立気泡構造の圧縮性層によれば、例えば版胴との間に異物が挟まって、印刷用ブランケットが部分的に大きく変形した後も、圧縮性層が速やかに復元するため、かかる変形の跡が印刷物の画像上に現れるといった印刷不良を最小限に抑えることができる。
【0006】
しかし、独立気泡構造の圧縮性層は、空隙率が同じ場合には連続気泡構造のものに比べてニップ変形部での圧縮応力が高く、かつ歪み量の変化に伴う圧縮応力の変動が大きいため、前述の衝撃吸収性が低くなる。従って、かかる独立気泡構造の圧縮性層を有する印刷用ブランケットは、連続気泡構造の圧縮性層を有するものに比べて、衝撃による印刷精度の低下が起こりやすいという問題がある。
【0007】
一方、連続気泡構造の圧縮性層は、版胴等によって圧接されたときに気泡内部の空気が外部に逃げることができることから、独立気泡構造のものに比べてニップ変形部での圧縮応力が低く、かつ歪み量の変化に伴う圧縮応力の変動が小さくなり、その結果、優れた衝撃吸収性を発揮する。
しかしながら、連続気泡構造の圧縮性層は、版胴等の圧接により受ける剪断力に対する反発力が小さいため、圧縮によって生じた変形を速やかに元の状態に戻すことができない(すなわち復元性が低い)。従って、とりわけ高速印刷時には、ニップ変形部を通過し、再度ニップ変形部に達するまでの間に圧縮により生じた変形が元に戻らず、その結果、印刷用ブランケットにいわゆるヘタリが生じて、印圧が所定の値より低下するという問題が顕著に現れる。また、版胴との間の異物による変形の跡が印刷物に現れてしまう印刷不良が多量に発生しやすいという問題もある。
【0008】
さらに、連続気泡構造の圧縮性層は、版胴等の圧接による剪断力を受けて印刷用ブランケットの周方向に伸びが生じやすいという短所もあり、前記周方向への網点太り等の印刷不良を発生するおそれもある。
そこで、本発明の目的は、優れた復元性と衝撃吸収性とを両立した印刷用ブランケットを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、少なくとも1層の圧縮性層を有する支持体層と、この支持体層上に設けられた表面印刷層とからなる印刷用ブランケットにおいて、前記圧縮性層が連続気泡構造を有し、かつ該層内に加硫ゴム粒子を含有するときは、連続気泡の作用により優れた衝撃吸収性が得られるとともに、前記加硫ゴム粒子の作用により圧縮性層のヘタリが抑制され、版胴等の圧接に対する優れた復元性をも得ることができるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の印刷用ブランケットについて、その実施形態の一例を示す図面を参照しつつ、詳細に説明する。
まず、図1(a),(b) に示す例について説明する。
図1(a),(b) に示す印刷用ブランケット10はシート状のものであって、少なくとも1層の圧縮性層11を含む支持体層12と、この支持体層12上に設けられた表面印刷層13とで構成されている。前記支持体層12は、基布14と接着層15とからなる基布層16を複数(図1では3層)積層し、圧縮性層12を介してさらに基布層(補強層)16aを設けたものである。
【0011】
上記のうち圧縮性層11は、図1に示すように、連続気泡17と加硫ゴム粒子18とを有する、多孔質のゴムにて形成される。連続気泡17と前記粒子18とは、両者の効果が印刷用ブランケット10の全面にわたって均質化するために、図1(b) に示すようにランダムに混在しているのが好ましい。
圧縮性層11内の気泡の割合を示す空隙率は、これに限定されないが、衝撃吸収性の観点から30〜60%、好ましくは35〜60%、より好ましくは40〜55%の範囲で設定するのが適当である。空隙率が上記範囲を下回ると、印刷用ブランケットの衝撃吸収性が不十分になって、印刷機の歯車の送り時に生じる衝撃や、平板状のブランケットをブランケット胴に巻き付けたときの継ぎ目がニップ変形部を通過する際に発生する衝撃等によって印刷精度が低下するおそれが生じるため好ましくない。逆に、空隙率が上記範囲を超えると圧縮性層全体の強度が低下して圧縮時の反力も低下し、その結果、十分な印圧が得られなくなったり、たとえ加硫ゴム粒子を添加したとしても圧縮性層11にヘタリが生じるのを抑制できなくなったりするおそれがあるため好ましくない。
【0012】
圧縮性層11中の加硫ゴム粒子18の配合量は、圧縮性層11の総体積から加硫ゴム粒子18および気泡部分17の体積を差し引いた体積Aと、該層11に配合された加硫ゴム粒子18の総体積Bとの比(A:B)が80:20〜20:80、好ましくは70:30〜30:70、より好ましくは70:30〜50:50となるように設定される。
【0013】
加硫ゴム粒子の総体積Bの比率は、廃自動車用タイヤ等の加硫ゴムをリサイクルするという観点から上記範囲の中でもより高いのが好ましい。しかし、加硫ゴム粒子の総体積Bの比率が上記範囲を超えると、圧縮性層の加工が困難になるため好ましくない。逆に、前記総体積Bの比率が上記範囲を下回ると圧縮性層のヘタリを抑制することができなくなり、版胴等の圧接に対する復元性が失われるおそれがあるため好ましくない。
【0014】
圧縮性層11に配合される加硫ゴム粒子には、廃自動車用タイヤ等の加硫ゴムをリサイクルし、粒子状に粉砕したものを用いることができる。すなわち、本発明によれば、廃自動車用タイヤ等をリサイクルして利用できるというメリットがある。
上記加硫ゴムの材質は特に限定されないが、例えばブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、ウレタンゴム等の反発弾性が高いゴムまたはこれらのブレンド物であるのが好ましい。
【0015】
また、加硫ゴム粒子としては、その平均粒径が3〜250μm、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜150μmの範囲にあるものが用いられる。加硫ゴム粒子の平均粒径が上記範囲を下回ると、圧縮性層のヘタリを抑制する効果が不十分になるおそれがあるために好ましくない。逆に、前記平均粒径が上記範囲を超えると、加硫ゴム粒子が圧縮性層内で異物として作用して、印刷精度が低下する等の問題が生じるおそれがあるために好ましくない。
【0016】
圧縮性層11の硬さはこれに限定されないが、連続気泡が形成されていない状態(すなわち、マトリックスゴムの状態)で、ショア硬さA形(JIS A)で表したときに40〜80、好ましくは45〜75、より好ましくは50〜70の範囲となるように設定するのが適当である。該層11の硬さが上記範囲を下回ると強度が低下するため、復元性が低下したり、印刷に必要な印圧が得られなくなるおそれがある。逆に、前記層11の硬さが上記範囲を超えると、圧縮性が低下して印刷時における圧縮性層の体積変化が減少するため、表面印刷層13にバルジが発生して、印刷障害が起こるおそれがある。
【0017】
圧縮性層11の厚みは、印刷用ブランケット10の全体の厚みの10〜50%、好ましくは15〜45%、より好ましくは20〜40%の範囲で設定するのが適当である。圧縮性層11の厚みが上記範囲を下回ると、該層11の機能、すなわち印刷機の歯車の送り時に生じる衝撃や、平板状のブランケットをブランケット胴に巻き付けたときの継ぎ目がニップ変形部を通過する際に発生する衝撃等を吸収して、印刷精度に悪影響を及ぼすのを防止する効果が不十分となるおそれがある。逆に、圧縮性層11の厚みが上記範囲を超えると、圧縮性層11全体としての圧縮応力が低下して、印刷に必要な印圧が得られないという問題を生じるおそれがある。
【0018】
圧縮性層11の連続気泡17は従来公知のリーチング法により形成される。すなわち圧縮性層11の作製方法としては、例えば圧縮性層用の未加硫のゴムを適当な溶剤に溶解し、これに連続気泡の元になるリーチング用の粒子と、加硫ゴム粒子とを配合して圧縮性層用のゴム糊を作製し、このゴム糊を下地となる層(図1に示す例の場合には、支持体層12における最上層の基布層16または補強層16a)上に塗布、乾燥させた後、加熱して加硫する。
【0019】
次いで、こうして形成された層の内部に分散するリーチング用の粒子を適当な溶剤で抽出すると上記粒子の跡が連続気泡17となり、層内部に連続気泡と加硫ゴム粒子とを有する多孔質の圧縮性層11が形成される。
また、圧縮性層11は、未加硫のゴムにリーチング用の粒子と加硫ゴム粒子とを添加したゴムコンパウンドから未加硫のゴムシートを成形し、これを前述の下地となる層に接着して形成することもできる。
【0020】
圧縮性層11を構成するゴムには種々のゴムを用いることができるが、インキや洗浄液等に対する耐性を考慮して、耐油性に優れたものを用いるのが好ましい。かかる耐油性のゴムとしては、これに限定されないが、例えばアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム等があげられる。
【0021】
圧縮性層11の硬さを前述の範囲内にするには、加硫度を調整したり、あるいはゴム中に配合する補強剤、充填剤、可塑剤等の量を調整したりすればよい。
リーチング法によって連続気泡を形成するための粒子としては、抽出用の溶剤として水を用いるのが、安全性やコストの点で有利であるため、水により抽出可能な粒子が好適に使用される。具体的には、例えば、食塩、澱粉、砂糖、ポリビニルアルコール、ゼラチン、尿素、セルロース、硫酸ナトリウム、塩化カリウム等の、種々の水溶性の有機物や無機物の粒子があげられる。
【0022】
上記リーチング用の粒子の粒径や添加量等は、前述した圧縮性層11の空隙率等に応じて適宜設定される。
圧縮性層11とともに印刷用ブランケット10を構成する支持体層12(すなわち、基布層16,16a)や表面印刷層14は、それぞれ従来同様の構成とすることができる。
【0023】
例えば支持体層12は、綿、ポリエステル、レーヨン等の織布または不織布からなる基布14を複数枚(図1の場合は3枚)、接着用のゴム糊を介して積層した後、上記ゴム糊を加硫することにより形成される。また、補強層としての基布層16aも、上記と同様の基布14により形成される。
表面印刷層13は、ゴム糊の塗布、乾燥により形成された未加硫のゴム層、またはゴムコンパウンドからなる未加硫のゴムシートを加硫することにより形成される。
【0024】
表面印刷層13を構成するゴムとしては、例えば前述したNBR、CR、ウレタンゴム等の耐油性のゴムが好適に使用される他、多硫化ゴム、水素添加NBR等を使用することもできる。
上記各層の厚みも、従来と同程度でよい。具体的には、支持体層12を構成する基布層16の厚みが0.2〜0.5mm程度、圧縮性層11を介して上記基布層16を積層した支持体層12全体の厚みが0.6〜1.3mm程度、表面印刷層13の厚みが0.1〜1.0mm程度であるのが好ましい。
【0025】
印刷用ブランケット10を構成する上記の各層はそれぞれ、
(1) 未加硫の層同士を直接に、あるいは接着用のゴム糊を介して積層した状態で、両層の加硫と同時に接着する、
(2) 加硫した層同士を、接着用のゴム糊を介して積層した状態で、当該ゴム糊の加硫により接着する、
等の方法により、互いに接着される。
【0026】
なお圧縮性層11は、リーチング用の粒子を抽出除去する関係上、該層11の両面に他の層が積層される前に(すなわち、圧縮性層11のいずれか一方の表面が基布層等の他の層によって被覆されていない状態で)加硫して、粒子を抽出しておくのが好ましい。
上記平板状の印刷用ブランケット10は、直接にまたは下貼り材を介してブランケット胴軸に装着されて使用される。
【0027】
次に、図2に示す例について説明する。
図2に示す印刷用ブランケット20は、円筒状のスリーブ25の外周面上に形成された、周方向に継ぎ目のない円筒状のものであって、スリーブ25上に、圧縮性層21および非伸縮性層24からなる支持体層22と、表面印刷層23とを、接着層g1,g2,g3を介してこの順に積層したものである。また、印刷用ブランケット20の厚みの嵩上げを目的として、スリーブ25と圧縮性層21との間に直接または接着層を介してベース層を設けてもよい。
【0028】
上記のうち圧縮性層21は、先の例で示した図1(b) に示されるように、連続気泡と加硫ゴム粒子とが混在した多孔質のゴムにより、継ぎ目のない円筒状に形成される。
圧縮性層21の空隙率や、圧縮性層21の総体積から加硫ゴム粒子および気泡部分の体積を差し引いた体積Aと、当該圧縮性層21に配合された加硫ゴム粒子の総体積Bとの比(A:B)については、前記と同じ範囲であるのが好ましい。その理由は前述したとおりである。また、圧縮性層21の厚みは、図2に示す例の場合、スリーブ20を除いた各層と、当該各層間に設けてもよい接着層との合計の厚みに対して10〜50%程度であるのが好ましい。この理由も前述のとおりである。
【0029】
さらに圧縮性層21の形成方法も、前記と同様である。なお、圧縮性層21を継ぎ目のない円筒状とするには、接着層g1(またはベース層)上に、前述のリーチング用の粒子と加硫ゴム粒子とを配合した圧縮性層用ゴム糊を塗布し、乾燥、加硫後、前記粒子を抽出すればよい。また、リーチング用の粒子と加硫ゴム粒子とを配合したゴムコンパウンドから形成した未加硫のゴムシートを、接着用のゴム糊を介して接着層g1(またはベース層)上に巻回した状態で加硫して、周方向の継ぎ目を加硫と同時に溶着し、一体化してもよい。
【0030】
圧縮性層21を構成するゴムやリーチング用の粒子には、前記と同様の材料があげられる。
上記圧縮性層21とともに印刷用ブランケット20を構成するスリーブ25、ベース層、非伸縮性層24および表面印刷層23は、従来同様の構成とすることができる。
【0031】
例えばスリーブ25には、ニッケル薄板等のごく薄い金属材料で形成されたものや、ガラス繊維強化プラスチックで形成されたもの等があげられる。
ベース層および表面印刷層23は、それぞれゴム糊の塗布、乾燥により形成された未加硫のゴム層、またはゴムコンパウンドからなる未加硫のゴムシートを加硫することにより形成される。上記両層はともに、継ぎ目のない円筒状に形成される。その方法は圧縮性層21の場合と同じである。
【0032】
ベース層を構成するゴムとしては、例えば前述したNBR、CR、ウレタンゴム等の耐油性のゴムが好適に使用される。一方、表面印刷層23を構成するゴムとしては、前記のようにNBR、CR、ウレタンゴム、多硫化ゴムおよび水素添加NBR等があげられる。
非伸縮性層24は、綿糸、ポリエステル糸、レーヨン糸、ナイロン糸、芳香族ポリアミド糸等の非伸縮性の線材24aを、圧縮性層21の周囲に、張力をかけながららせん状に巻回した後、ゴム糊を加硫して固定することにより形成される。
【0033】
上記各層の厚みは、前記と同程度でよい。また支持体層22を構成する線材24aの直径についても、従来と同程度でよい。具体的には、線材24aの直径は0.1〜0.5mm程度が好ましい。
印刷用ブランケット20を構成する上記の各層は、スリーブ25に近い層から外側の層へ順次、積層形成される。なお各層は、形成する毎に加硫してもよいし、複数層をまとめて加硫してもよい。例えば圧縮性層21は、リーチング用の粒子を抽出する関係上、表面印刷層23を積層する前に加硫して、粒子を抽出しておくのが好ましい。
【0034】
上記円筒状の印刷用ブランケット20は、印刷機のブランケット胴軸に外挿して使用される。
以上で説明した例の印刷用ブランケット10、20を構成する各層のゴムコンパウンドやゴム糊には、従来同様に各種の添加剤を配合することができる。
かかる添加剤としては、例えば加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤等のゴムを加硫させるための薬剤の他、老化防止剤、補強剤、充填剤、軟化剤、可塑剤等があげられる。これら添加剤の添加量は従来と同程度でよい。
【0035】
上記のうち加硫剤としては、例えば硫黄、有機含硫黄化合物、有機過酸化物等があげられる。このうち有機含硫黄化合物としては、例えばN,N′−ジチオビスモルホリン等があげられ、有機過酸化物としては、例えばベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等があげられる。
加硫促進剤としては、例えばテトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;ジブチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカーバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカーバミン酸テルル等のジチオカーバミン酸類;2−メルカプトベンゾチアゾール、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のチアゾール類;トリメチルチオ尿素、N,N′−ジエチルチオ尿素等のチオウレア類等の有機促進剤、あるいは消石灰、酸化マグネシウム、酸化チタン、リサージ(PbO)等の無機促進剤があげられる。
【0036】
加硫促進助剤としては、例えば亜鉛華等の金属酸化物、あるいはステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸があげられる。
加硫遅延剤としては、例えばサリチル酸、無水フタル酸、安息香酸等の芳香族有機酸;N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジハイドロキノン、N−ニトロソフェニル−β−ナフチルアミン等のニトロソ化合物があげられる。
【0037】
老化防止剤としては、例えば2−メルカプトベンゾイミダゾール等のイミダゾール類;フェニル−α−ナフチルアミン、N,N′−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン等のアミン類;ジ−t−ブチル−p−クレゾール、スチレン化フェノール等ノフェノール類があげられる。
【0038】
補強剤としては主にカーボンブラックが使用される他、シリカ系あるいはケイ酸塩系のホワイトカーボン、亜鉛華、表面処理沈降性炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー等の無機補強剤、あるいはクマロンインデン樹脂、フェノール樹脂、ハイスチレン樹脂(スチレン含有量の多いスチレン−ブタジエン共重合体)等の有機補強剤も使用できる。
【0039】
充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム、珪藻土、マイカ、アスベスト、グラファイト等の無機充填剤、あるいは再生ゴム、粉末ゴム、アスファルト類、スチレン樹脂、にかわ等の有機充填剤があげられる。
軟化剤としては、例えば脂肪酸(ステアリン酸、ラウリン酸等)、綿実油、トール油、アスファルト物質、パラフィンワックス等の、植物油系、鉱物油系、および合成系の各種軟化剤があげられる。
【0040】
可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジルフォスフェート等の各種可塑剤があげられる。
上記以外にも、例えば粘着性付与剤、分散剤、溶剤等を適宜ゴムに配合してもよい。
なお、本発明の印刷用ブランケットの構成は、図示したものには限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で、種々の設計変更を施すことができる。
【0041】
例えば図1に示した平板状の印刷用ブランケット10における圧縮性層11の位置またはその他の層の構成は、適宜変更することができる。同様に、図2に示した円筒状の印刷用ブランケット20における圧縮性層21の位置やその他の層の構成も、適宜変更することができる。
【0042】
【実施例】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を説明する。
実施例1〜5
基布としての綿布(厚み0.3mm)を、それぞれNBR系のゴム糊からなる接着層を介して3枚積層した後、最上層の基布の表面に圧縮性層用ゴム糊を糊引きして乾燥させ、加圧、加熱して加硫した。
【0043】
圧縮性層用ゴム糊は、下記の成分からなる圧縮性層用ゴム50重量部と、食塩粒子(粒径1〜100μm)100重量部とをトルエン200重量部に加え、さらに加硫ゴム粒子を配合したものを用いた。
上記圧縮性層用ゴム糊において、加硫ゴム粒子には、廃自動車用タイヤのトレッドゴムを粉砕し、表1に示す平均粒径となるように調整したものを用いた。
【0044】
また、加硫ゴム粒子の配合量は、圧縮性層の総体積から加硫ゴム粒子および気泡部分の体積を差し引いた体積Aと、当該圧縮性層に配合された加硫ゴム粒子の総体積Bとの比(A:B)が50:50となるように調節した。
なお、前記体積Aおよび加硫ゴム粒子の総体積Bは、比重計で測定した比重をもとに算出した。
【0045】
上記圧縮性層用ゴム糊を加硫した後、80℃の温水に5時間浸漬して、食塩粒子を抽出するリーチング処理を行い、さらに乾燥させて、厚み0.95mmの支持体層の上に厚み0.35mmの圧縮性層が積層された積層体を形成した。前記圧縮性層の空隙率は50%であった。
次に、上記積層体における圧縮性層の表面に、基布としての綿布(厚み0.25mm)1枚を、NBR系のゴム糊からなる接着層を介して積層した後、この基布の表面に、NBR系のゴム糊を糊引きして乾燥させ、加圧、加熱して加硫した後、表面を研磨して厚み0.25mmの表面印刷層を形成した。こうして、図1(a) に示す層構成を有する、総厚み1.95mmのシート状の印刷用ブランケット10を製造した。
【0046】
比較例1
圧縮性層用ゴム糊中に加硫ゴム粒子を配合しなかったほかは、実施例1〜5と同様にして、図1(a) に示す層構成を有するシート状の印刷用ブランケット10を製造した。なお、食塩の配合量は、圧縮性層11の空隙率が50%となるように調整した。かかる印刷用ブランケット10の圧縮性層11は連続気泡構造を有していた。
【0047】
比較例2
実施例1と同様にして基布3枚を接着層を介して積層した後、最上層の基布の表面に圧縮性層用ゴム糊を糊引きして乾燥させ、加圧、加熱して加硫した。
圧縮性層用ゴム糊としては、加硫ゴム粒子を配合せず、かつ食塩粒子に代えて中空状微小粒子(エクスパンセル社製の「エクスパンセル091DE100」、粒径10〜100μm)を配合したほかは、実施例1〜5における圧縮性層用ゴム糊と同様にして調整したものを用いた。なお、中空状微小粒子の配合量は、圧縮性層の空隙率が50%となるように調整した。
【0048】
加硫後、得られた積層体における圧縮性層の表面に、実施例1〜5と同様にして、接着層を介して基布を積層し、さらにその表面に表面印刷層を形成した。こうして、図1(a) に示す層構成を有するシート状の印刷用ブランケット10を製造した。かかる印刷用ブランケット10の圧縮性層は独立気泡構造を有していた。
【0049】
上記実施例1〜5および比較例1、2で製造した印刷用ブランケットについて、それぞれ以下の試験(i),(ii)を行い、その特性を評価した。
(i) 復元性試験
各印刷用ブランケットを、オフセット印刷機〔リョービ(株)製の560型〕のブランケット胴軸に装着するとともに、印刷用ブランケット/版胴の印圧が15/100mmとなるように調整した。
【0050】
次いで、コート紙〔大王製紙(株)製の商品名「ユトリロコート」、坪量110kg〕の中央に厚み0.2mmの10cm角の厚紙を張りつけたものを、厚紙が印刷用ブランケットの側を向くようにして上記版胴と印刷用ブランケットとの間に挟着させることにより、印刷用ブランケットの表面を部分的に変形させた。つぎに、上記変形直後のブランケットを用いて、印圧15/100mm、印刷速度10000枚/時の条件で、前記と同じコート紙の表面に東洋インキ(株)製のインキ(商品名「ハイプラス ベニ」)を用いてベタ印刷を連続的に行った。
【0051】
そして、印刷何枚目で、変形部とその周囲の濃度差がなくなったか、つまり部分的な変形が復元したかを計数して、下記の基準により、印刷用ブランケットの復元性を評価した。
◎:印刷100枚目以前に復元した。(復元性良好)
〇:印刷101枚目〜500枚目の間に復元した。
【0052】
×:印刷501枚目以降に復元した。(復元性不良)
(ii)衝撃吸収性試験
各印刷用ブランケットを上記復元性試験と同じオフセット印刷機に装着して、印圧15/100mm、印刷速度10000枚/時の条件で、前記と同じコート紙の表面に、東洋インキ(株)製のインキ(前出)による70%総網版の印刷を行った。
【0053】
そして、印刷機の歯車の送り時に生じる衝撃の影響(網点の狂い、いわゆるギア目)が印刷に現れたか否かを目視にて観察して、下記の基準により、印刷用ブランケットの衝撃吸収性を評価した。
◎:ギア目は全く確認できなかった。(衝撃吸収性良好)
〇:ギア目がかすかに確認されたものの、実用上の問題はなかった。
【0054】
×:ギア目がハッキリと確認できた。(衝撃吸収性不良)
以上の結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1より明らかなように、実施例1〜5の印刷用ブランケットによれば、復元性と衝撃吸収性とのいずれもが良好であって、両者を両立することができた。
一方、比較例1では、連続気泡構造を有するものの、加硫ゴム粒子が配合されていないため、復元性が不十分であった。また、比較例2では、独立気泡構造のみを有することから、衝撃吸収性が不十分であった。
【0057】
実施例6、7および比較例3、4
加硫ゴム粒子の配合量を変えたほかは、すなわち圧縮性層の総体積から加硫ゴム粒子および気泡部分の体積を差し引いた体積Aと、当該圧縮性層に配合された加硫ゴム粒子の総体積Bとの比(A:B)を変えたほかは、実施例3と同様にして印刷用ブランケットを製造した。次いで、得られた印刷用ブランケットについて前述の試験(i),(ii)を行い、その特性を評価した。その結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
表2より明らかなように、前記比A:Bが80:20〜20:80の範囲であるときは、復元性と衝撃吸収性とのいずれもが良好であって、両者を両立することができた。
【0060】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、優れた復元性と衝撃吸収性とを両立した印刷用ブランケットが得られる。
かかる本発明の印刷用ブランケットは、高速印刷時においても高画質の印刷画像を形成できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】同図(a) は本発明の印刷用ブランケットの一実施形態を示す断面図、同図(b) はその要部を拡大した断面図である。
【図2】同図(a) は本発明の印刷用ブランケットの他の実施形態を示す斜視図、同図(b) はそのA−A断面図である。
【符号の説明】
10,20 印刷用ブランケット
11,21 圧縮性層
12,22 支持体層
13,23 表面印刷層
17 連続気泡
18 加硫ゴム粒子
Claims (3)
- 少なくとも1層の圧縮性層を有する支持体層と、この支持体層上に設けられた表面印刷層とからなる印刷用ブランケットにおいて、前記圧縮性層が連続気泡構造を有し、かつ該層内に加硫ゴム粒子を含有することを特徴とする印刷用ブランケット。
- 前記加硫ゴム粒子の平均粒径が5〜200μmである請求項1記載の印刷用ブランケット。
- 前記圧縮性層の総体積から加硫ゴム粒子および気泡部分の体積を差し引いた体積と、加硫ゴム粒子の総体積との比が、80:20〜20:80である請求項1または2記載の印刷用ブランケット。
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