JP2004106471A - 金属缶印刷用ブランケット - Google Patents
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Abstract
【課題】硬質材料で曲面を有する金属缶(ツーピース缶など)の高速印刷に適しており、網点再現性と耐久性とを兼ね備え、インキ転移性のよい印刷用ブランケットを提供する。
【解決手段】支持体層12上に表面印刷層14が形成されており、前記表面印刷層はゴム100重量部、亜鉛華7〜23phrおよび可塑剤10〜42phrを含む加硫ゴム組成物で形成されている金属缶印刷用ブランケット10。本ブランケットは、裏面に粘着加工15を施し、前記表面印刷層は、tanδ(損失正接)が0.1以下であり、かつ引張強度が4MPa以上であることが好ましい。
【選択図】図1
【解決手段】支持体層12上に表面印刷層14が形成されており、前記表面印刷層はゴム100重量部、亜鉛華7〜23phrおよび可塑剤10〜42phrを含む加硫ゴム組成物で形成されている金属缶印刷用ブランケット10。本ブランケットは、裏面に粘着加工15を施し、前記表面印刷層は、tanδ(損失正接)が0.1以下であり、かつ引張強度が4MPa以上であることが好ましい。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属缶、たとえば飲料用等のツーピース缶の表面印刷に適した印刷用ブランケットに関する。
【0002】
【従来の技術】
金属缶は、保存性、耐久性等の面から食品容器として優れており、とくに近年はビールや清涼飲料等の飲料容器として広く使用されている。飲料用缶としては、円筒体(缶胴)と底部が一体成形されており、内容物を充填してから蓋を接合するいわゆるツーピース缶が代表的なタイプである。その金属素材としては、アルミ、スチール等が用いられている。
【0003】
金属缶の表面には、その商品を顧客にアピールするために絵柄等の印刷を施しており、これはオフセット印刷などによる多色印刷で行われている。金属缶、とりわけツーピース缶の場合、その印刷は円筒体という特殊形状になされることから、印刷作業の迅速化を目的に、これまでにいくつかの多色印刷方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これらの印刷方法は、ブランケットローラーへのインキ画像の積層塗布工程、硬化工程の条件に関するものである。
【0004】
一方、ツーピース缶のような金属曲面印刷のように、高速で印刷するオフセット印刷機において、印刷用ブランケットがブランケット胴に装着後、緩みやずれが生ずるのを防ぐためにブランケットの裏面に粘着剤を付けることが知られている(特許文献2参照)。また、缶のような円筒容器の印刷において、版胴の表面にインキの透過性が低い剥離層を塗布し、これをブランケットに転移させることによって、ブランケット上のインキの残留を防止し、印刷品質を向上させることが知られている(特許文献3参照)。
【0005】
さらに、金属缶等の硬質部材への印刷であってもインキ着肉性と網点再現性を両立できるように、支持体層上に設けられた表面印刷層を有するブランケットにおいて、圧縮変形させた際に、厚み方向に生じる反力が1.65〜3.3MPaの範囲内にすることが提案されている(特許文献4参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平7−285262号公報(請求項1、図2)
【特許文献2】特開平11−227357号公報(請求項1、図1)
【特許文献3】特開平7−195809号公報(請求項1、図1)
【特許文献4】特開2001−191660号公報(請求項1、図1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一般に金属缶の表面に印刷するときは、紙などの被印刷体に比べて圧力を強くすることが必要であり、このために印刷用ブランケットはヘタリを生じやすく、耐久性が要求されている。ところが、従来の金属缶用印刷ブランケットは、インキ潰し性(ベタ印刷の良否)か、耐膨潤性・網点再現性か、のいずれかに偏って開発されてきた傾向がある。このために、高速で次々と印刷する金属缶印刷において、網点再現性と破損に強い耐久性の両方を兼ね備えた印刷用ブランケットが要望されている。本発明は、かかる金属缶印刷用ブランケットを提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、網点再現性、耐久性、インキ転移性等を向上させることに適した表面印刷層を有する印刷用ブランケットを開発すべく、当該表面印刷層を構成するための加硫ゴム組成物の処方について種々検討した結果、本発明の金属缶用印刷ブランケットを完成したものである。
すなわち、本発明は、以下の金属印刷用ブランケットを提供するものである。
【0009】
1)支持体層上に表面印刷層を形成してなる金属缶印刷用ブランケットであって、前記表面印刷層がゴム100重量部、亜鉛華7〜23phrおよび可塑剤10〜42phrを含む加硫ゴム組成物で形成されていることを特徴とする金属缶印刷用ブランケット。
2)前記表面印刷層のtanδが0.1以下あり、かつ引張強度が4MPa以上である上記1)項記載の金属缶印刷用ブランケット。
3)前記加硫ゴム組成物が亜鉛華10〜20phrおよび可塑剤10〜30Phrを含むものである上記1)項または2)項記載の金属缶印刷用ブランケット。
【0010】
4)前記表面印刷層のtanδが0.08以下あり、かつ引張強度が5MPa以上である上記1)〜3)項のいずれかに記載の金属缶印刷用ブランケット。
5)前記支持体層の裏面に粘着加工してなる上記1)〜4)項のいずれかに記載の金属缶印刷用ブランケット。
前記において、phrは、配合剤の質量をゴム100重量部に対する部数で示すときに用いる記号を意味し、「parts per hundred parts of rubber」の略称である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の金属缶用印刷ブランケットは、表面印刷層がゴム100重量部、亜鉛華7〜23phrおよび可塑剤10〜42phrを含む加硫ゴム組成物で形成されているものである。本金属缶用印刷ブランケットには、金属円筒上に高速印刷を行う際に緩みやズレを生ずることがないように、あるいはブランケットの取替えを簡単にするために、通常は支持体層の裏面に粘着加工が施される。
【0012】
本金属印刷用ブランケット10の構成例を図1(拡大断面図)に示す。この図のように、支持体層12上に表面印刷層14が形成されており、通常は支持体層の裏面には裏面に粘着加工15が施されている。
前記支持体層12は、常法により作製すればよく、例えばゴム組成物を含浸させた複数層の基布16a〜16dと、必要に応じて設けられる少なくとも1層の圧縮性層17とを積層して形成される。基布としては、綿、ポリエステル、レーヨンなどの織布が用いられる。基布同士は、例えば前記NBRやACMなどの耐油性のゴムに加硫剤、加硫促進剤などの成分を配合したいわゆる加硫接着剤を介して積層し、全体加硫によって加硫接着剤を加硫することにより接着、一体化させるのが好ましい。
【0013】
前記圧縮性層はエラストマーからなり、かつ振動吸収性にすぐれた多孔質状に形成されるが、その多孔質の構造は、主として層内の空隙がそれぞれ独立した独立気孔構造または層内の空隙が連結した連続気孔構造に分けられる。本発明においてはいずれの気孔構造であってもよい。前記圧縮性層の、空隙の割合を示す空隙率は、20〜80%であることが好ましい。圧縮性層の空隙率が上記範囲未満では、当該圧縮性層が、十分な衝撃吸収性を発現しなくなるおそれがあり、逆に空隙率が上記範囲を超えた場合には、圧縮性層の強度が低下して、へたり等を生じやすく、金属缶印刷用ブランケットの寿命が短くなるおそれがある。圧縮性層の空隙率は、上記範囲内でも、より好ましくは30〜70%である。
【0014】
次に、本発明の金属缶印刷用ブランケットにおける表面印刷層について説明する。
前記表面印刷層は、ゴム100重量部、亜鉛華7〜23phrおよび可塑剤10〜42phrを含む加硫ゴム組成物より形成される。当該ゴム材料としては、耐油性にすぐれたものが好適に使用されるが、具体例としては、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム(U)あるいはアクリルゴム(ACM)等の耐油性の合成ゴムが挙げられるほか、水素添加NBRなども使用できる。特に、NBRが好ましく用いられる。
【0015】
可塑剤としては、ゴム用として使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジオクチルアジペート(DOA)、ジブチルフタレート(DBP)、トリブチルホスフェート(TBP)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ビス(ブチルジグリコール)アジペート(BXA−R)あるいはジブチルセバケート(DBS)等があげられ、なかでもDBA系統のDBA、DIBA等がNBRとの相溶性の面から好ましい。可塑剤の配合量は、前記したとおりであり、10phrに達しないときは、硬度が高くなるので適当ではなく、一方40phrを超えるとゴム組成物を混練した後にブリードを起しやはり適当ではない。
【0016】
本発明において、亜鉛華(酸化亜鉛、ZnO)の7〜23phrを、前記可塑剤と共に添加することにより、網点再現性、耐久性およびインキ転移性等が向上した金属印刷用ブランケットが作製される。亜鉛華が7phrに達しないときは、耐久性およびインキ転移が低下し、一方23phrを超えるとゴム組成物の加硫が早く表面印刷層の作製には不適当になる。
亜鉛華および可塑剤は、前記量の範囲で配合されるが、とりわけ亜鉛華を10〜20phrおよび可塑剤を10〜30phrの範囲で併用することにより、網点再現性、耐久性およびインキ転移性を向上させるために一層有効である。
【0017】
本発明の金属缶印刷用ブランケットにおける表面印刷層は、それを構成する加硫ゴム組成物の機械的特性として、tanδが0.1以下であり、かつ引張強度が4MPa以上であるように調整するのが好ましい。ここで、tanδは損失正接を意味し、正弦波振動を与えたときの損失弾性係数と貯蔵弾性係数の比で表わされる。亜鉛華および可塑剤の配合量を、前記の範囲に調整することが、上記の機械的特性を有する加硫ゴム組成物とするための要件となり得る。更に、tanδが0.08以下であり、かつ引張強度が5MPa以上であるように調整すればより一層好ましくなる。
【0018】
本明細書におけるtanδおよび引張強度は、次の方法により測定した値を意味する。
・tanδ(損失正接)の測定
試験ピース(形状:幅4mm×長さ30mm×厚さ0.2mm)を粘弾性スペクトロメーターにより、温度23℃、10Hz、振幅50μm、チャック間距離20mm、初期歪み2mmを加えたときのtanδを測定する。粘弾性スペクトロメーターとしては、上島製の機種名「VR−7110」等を用いることができる。
・引張強度の測定
JIS K6251(加硫ゴムの引張試験方法)に規定する方法により測定される引張強さ(Tb)を意味する。測定試験機には、(株)島津製作所製オートグラフを用いることができる。
【0019】
本発明において、表面印刷層用のゴム組成物は、前記配合量の亜鉛華および可塑剤と、加硫剤とを含有し、さらに加硫促進剤、加硫促進助剤あるいは加硫遅延剤など加硫のための成分が適宜添加される。
加硫剤としては、たとえば硫黄、有機含硫黄化合物、有機過酸化物等があげられ、このうち有機含硫黄化合物としては、たとえばN,N′−ジチオビスモルホリン等があげられ、有機過酸化物としては、たとえばベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等があげられる。
【0020】
加硫促進剤としては、たとえばテトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;ジブチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカーバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカーバミン酸テルル等のジチオカーバミン酸類;2−メルカプトベンゾチアゾール、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のチアゾール類;トリメチルチオ尿素、N,N′−ジエチルチオ尿素等のチオウレア類などの有機促進剤や、あるいは消石灰、酸化マグネシウム、酸化チタン、リサージ(PbO)等の無機促進剤があげられる。
【0021】
加硫促進助剤としては、たとえばステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸などがあげられる。
加硫遅延剤としては、たとえばサリチル酸、無水フタル酸、安息香酸等の芳香族有機酸;N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジハイドロキノン、N−ニトロソフェニル−β−ナフチルアミン等のニトロソ化合物などがあげられる。
【0022】
前記表面印刷層用のゴム組成物には、品質改良を目的に、老化防止剤、補強剤、充填剤、軟化剤、粘着性付与剤などの各種添加剤を適宜、配合してもよい。
老化防止剤としては、たとえば2−メルカプトベンゾイミダゾール等のイミダゾール類;フェニル−α−ナフチルアミン、N,N′−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン等のアミン類;ジ−t−ブチル−p−クレゾール、スチレン化フェノール等のフェノール類などがあげられる。
【0023】
補強剤としては主にカーボンブラックが使用される他、シリカ系あるいはケイ酸塩系のホワイトカーボン、表面処理沈降性炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー等の無機補強剤や、あるいはクマロンインデン樹脂、フェノール樹脂、ハイスチレン樹脂(スチレン含有量の多いスチレン−ブタジエン共重合体)等の有機補強剤も使用できる。
充填剤としては、たとえば炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム、珪藻土、マイカ、アスベスト、グラファイト等の無機充填剤や、あるいはアスファルト類、スチレン樹脂、にかわ等の有機充填剤などがあげられる。
【0024】
軟化剤としては、たとえば脂肪酸(ステアリン酸、ラウリン酸等)、綿実油、トール油、アスファルト物質、パラフィンワックス等の、植物油系、鉱物油系、および合成系の各種軟化剤があげられる。
本発明において、表面印刷層の厚みは、0.2〜0.5mmであるのが好ましい。表面印刷層の厚みが上記範囲未満では、ベタ着肉性の低下によって、ベタ部にかすれ等が発生するおそれがある。また逆に、表面印刷層の厚みが上記範囲を超えた場合には、金属缶印刷時に、印刷用ブランケットの回転方向下流側への、表面印刷層のずれが大きくなり、その分だけ周長変化率が大きくなるため、印刷画像が不鮮明化して、印刷品質が悪化するおそれがある。表面印刷層の厚みは、上記範囲内でもとくに、0.2〜0.4mmであるのが好ましく、0.25〜0.35mmであるのがさらに好ましい。
【0025】
本発明の金属缶用印刷ブランケットは、支持体層上に前記の表面印刷層を積層し、支持体層の裏面(ブランケット胴に接着される)に粘着加工を施すことが好ましい。前記支持体層は圧縮性層を含むエァータイプであることが好ましく、圧縮性層を含まないソリッドタイプとするときは、前述した機械的特性を有する表面印刷層の機能を発揮するには適しないことが多い。前記支持体層の厚みは、通常、1.90〜2.20mmの範囲とし、接着剤引き基布(0.2〜0.5mm)を適宜の枚数積層することによって目的が達せられる。
【0026】
次に、本発明の金属缶印刷用ブランケットの作製につき説明する。
作製工程は、接着剤引き基布を積層して支持体層を作製する工程、その支持体層上に前記した表面印刷層の未加硫ゴム組成物を塗布する工程およびその積層体を全体加硫する工程と、さらに支持体層の裏面に適宜、粘着加工を施す工程を含み、さらに通常は表面印刷層を研磨することにより所定の表面粗さならびに所定の厚みに仕上げる工程を経て目的とする金属缶印刷用ブランケットが作製される。
【0027】
基布としては、前述のとおり従来と同様に綿、ポリエステルあるいはレーヨンなどの織布が使用できる。基布上に、接着剤用ゴム糊を塗布し、所望の厚みとなるように必要な枚数の基布を積層する。接着剤用ゴム糊としては、たとえば前記NBRやACMなどの耐油性のゴムに加硫剤、加硫促進剤などの成分を配合したものが用いられる。支持体層は、前記のとおり、圧縮性層を含むことが好ましい。
【0028】
次に、前記の表面印刷層用のゴム組成物(未加硫)を有機溶剤(トルエンなど)に溶解し、そのゴム糊を前記支持体層上にドクターブレードやドクターロール等を使用して所定の厚みに塗布(糊引き)し、乾燥させる。その後、得られる積層体を、加圧、加熱して全体加硫して一体化させることにより、加硫ゴム組成物よりなる表面印刷層が形成される。
全体加硫には、従来同様に加硫缶を用いてもよく、連続加硫機や熱プレスなどを用いてもよいが、要は生産性の向上や、加硫がバラツキなく均等に行われ、均一な特性を有する印刷ブランケットが作製できる方法を適宜、選択する。
【0029】
支持体層裏面への粘着加工は、例えば、予め調製したアクリル系粘着剤を離型紙上に均一に引いて前記ブランケットとダブリングするなどの方法により施すことができる。粘着剤の厚みは、0.07mm程度とするのがよい。
上記のように形成された表面印刷層の表面は、通常、研磨により所定の表面粗さならびに所定の厚みに仕上げられる。表面印刷層の表面粗さは、印刷精度と密接に係わっているので、とくに厳密に仕上げる必要がある。その表面粗さの具体的な範囲は、とくに限定されないが、10点平均粗さ(Rz)で表して、3〜10μmの範囲内であるのが好ましい。また表面粗さは、上記範囲内でもとくに、10点平均粗さ(Rz)で表して、3〜8μmの範囲内であるのが好ましく、3〜6μmの範囲内であるのがさらに好ましい。なかでも、スチール缶の印刷用の場合は、3〜7μmであることが好ましい。
【0030】
本発明の金属缶印刷用ブランケットの無負荷時における総厚みは、1.90〜2.20mm程度とするのが好ましい。無負荷時の総厚みが、前記範囲を下回ると、十分な印圧が得られなくなって良好な印刷が行えなくなるおそれが生じる。逆に、無負荷時の総厚みが前記範囲を超えると、印圧によって生じる歪が大きくなって、良好な印刷が印刷を行えなくなるおそれが生じる。
【0031】
【実施例】
以下に、実施例および比較例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1〜7
図1に示す構成のブランケットを、次のようにして作製した。
(i)支持体層12の形成
基布として綿布16d上に、表1に示す圧縮性層用の成分が混練りされたゴムをトルエンに溶解し、そのゴム糊を塗布し、乾燥後、フェルト加硫機(135℃、0.2m/min.)により連続加硫して、圧縮性層17を形成した。
【0032】
【表1】
【0033】
表中、加硫促進剤としてtetraethylthiuramdisulfide(商品名「ノクセラーTET」)を、また老化防止剤として2,2’−methylenebis(商品名「ノクラックNS−6」)をそれぞれ用いた。
上記圧縮性層と基布としての綿布3枚(16a,16b,16c)を、表2に示す各成分をトルエンに溶かし、その接着用ゴム糊をそれぞれの層間に塗布することによって接着し、乾燥させた。
【0034】
【表2】
【0035】
表中、チアゾール系加硫促進剤としては、dibenzothiazyldisulfide(商品名「ノクセラーDM」)、チウラム系加硫促進剤としてはtetraethylthiuramdisulfide(商品名「ノクセラーTET」)をそれぞれ用いた。
(ii)表面印刷層の形成
前記の支持体層12のうち、最表層にある基布16dの上に、表3に示す各成分をトルエンに溶かした各表面印刷層用のゴム糊を塗布した。この表3において、酸化亜鉛(配合量をYphrとする)と可塑剤(配合量をZphrとする)は、実施例1〜7によって、後述の表4に示すように、配合割合を変化させた。また、表3において、ゴム成分はNBRと多硫化ゴムを合わせて100重量部であり、このうち多硫化ゴムをX重量部とする。
【0036】
前記のとおり、表面印刷用ゴム糊を塗布後、積層体を乾燥させた。
【0037】
【表3】
【0038】
表中、顔料としてイプシロンブルー(商品名「住化カラーLB510」)を、酸化チタンとして石原産業製の商品名「A−IUU」を、老化防止剤として2,6−di−tert−butyl−4−methylphenol(商品名「ノクラック200」)および2,2’−methylenebis(商品名「ノクラックNS−6」)をそれぞれ用いた。また、加硫促進剤として、表2に記載のものと同じくチアゾール系およびチウラム系のものを用いた。
【0039】
(iii)加硫および表面の研磨
次に、上記の積層体を連続加硫機にて、150℃、0.3m/min.ベルト圧力100Barの条件で加硫した。さらに、表面印刷層14の表面を研磨することによって、表面の粗さがRz6程度になるように調整した。
(Vi)粘着加工15
予め調製したアクリル系粘着剤を離型紙上に厚み0.07mm均一に引いて、これを上記の積層体の基布16a側にダブリングすることにより加工15を施して、図1に示す層構成を有する、本発明の金属缶用印刷ブランケット10(無負荷時の厚み:1.97mm、但し、離型紙の厚みを除く)を得た。
【0040】
比較例1
表面印刷用ゴム糊の調製において、ゴム分としてNBR85重量部と多硫化ゴム15重量部(合計100重量部)を、酸化亜鉛を5phr、可塑剤DOPを15phrとしたこと以外は、前記の実施例と同様に調製して印刷用ブランケットを得た。
比較例2
比較例1において、ゴム分をNBR100重量部としたこと以外は、同様に調製して印刷用ブランケットを得た。
【0041】
比較例3
比較例2において、酸化亜鉛量を25phrとしたこと以外は、同様に印刷用ブランケットの調製を試みたが、加硫が早く作製不能であった。
比較例4
比較例2において、酸化亜鉛量を15phr、可塑剤DOPを45phrとしたこと以外は、同様にして印刷用ブランケットを調製したが、可塑剤がブリードを起した。
<実機試験>
上記実施例および比較例で作製した印刷用ブランケットを、ツーピース缶印刷機(コンコルド)のブランケット胴に装着して、アルミ缶に印刷速度1500缶/分で連続的に使用したのち、次の方法により印刷特性を評価した。
[印刷特性の評価方法]
・網点再現性: 印刷後の缶について印刷状態(文字等の流れ)から次のように判定した。
【0042】
○;網点再現性がよい。
△;網点再現性がやや悪い
×;網点再現性が悪い
・耐久性: 上記の印刷を7日間連続運転し、表面印刷層のゴムの欠け発生状況を目視することにより、次の基準で評価した。
○;ゴムの欠けが発生せず。
【0043】
△;ゴムの欠け少し発生する。
×;ゴムの欠けが発生する。
・インキ転移性: プルーバウ印刷評価機を用い、印圧1000N、印刷速度8m/secで測定し、次の基準で評価した。
○;インキ転移がよい。
△;インキ転移がやや悪い。
【0044】
×;インキ転移が悪い。
上記の評価結果を下記の表4に示す。
【0045】
【表4】
【0046】
表4の結果から、実施例1〜7で得られた本発明の金属缶用印刷ブランケットは、網点再現性がよく、耐久性およびインキ転移もよく金属缶印刷に適するものであった。これらの印刷用ブランケットは、表面印刷層を構成するゴム組成物に、酸化亜鉛を7〜23phr、可塑剤(DOP)を10〜42phrの各範囲内に含有させて作製しいたものである。また、これらの印刷用ブランケットは、tanδが0.1以下で、かつ引張強度(Tb)が4MPa以上であることから、柔軟性がありしかも強さを有する印刷ブランケットであった。とりわけ、実施例3、4および5で得たものが、tanδが0.08以下で、かつ引張強度(Tb)が5MPa以上であることから一層好ましいものであった。
これに対して、比較例1および2は従来のように、表面印刷層のゴム組成物における酸化亜鉛(5phr)および可塑剤TPO(15phr)を配合した例であるが、比較例1は多硫化ゴムを配合したことにより、網点再現性がよいものの、耐久性およびインキ転移において劣っており、引張強度も満足する程度ではなかった。比較例2のものは、網点再現性がやや悪く、またtanδも高い傾向にあった。比較例3では、前記したように、加硫が早く作製不能であった。また、比較例4のように、可塑剤(DOP)量を多くすると、表面印刷層の強度が弱く、可塑剤のブリードが認められ、金属缶印刷用ブランケットとして適当ではなかった。
【0047】
【発明の効果】
本発明の金属缶印刷用ブランケットは、金属缶印刷において、網点再現性と耐久性の両方を兼ね備え、しかもインキ転移性がよいものであり、長時間の高速印刷を可能にする。従って、飲料用などのアルミ缶あるいはスチール缶などのツーピース缶の表面印刷用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る金属缶印刷用ブランケットの一実施形態を示す拡大断面である。
【符号の説明】
10 金属缶印刷用ブランケット
12 支持体層
14 表面印刷層
15 粘着加工
16a〜16d 基布層
17 圧縮性層
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属缶、たとえば飲料用等のツーピース缶の表面印刷に適した印刷用ブランケットに関する。
【0002】
【従来の技術】
金属缶は、保存性、耐久性等の面から食品容器として優れており、とくに近年はビールや清涼飲料等の飲料容器として広く使用されている。飲料用缶としては、円筒体(缶胴)と底部が一体成形されており、内容物を充填してから蓋を接合するいわゆるツーピース缶が代表的なタイプである。その金属素材としては、アルミ、スチール等が用いられている。
【0003】
金属缶の表面には、その商品を顧客にアピールするために絵柄等の印刷を施しており、これはオフセット印刷などによる多色印刷で行われている。金属缶、とりわけツーピース缶の場合、その印刷は円筒体という特殊形状になされることから、印刷作業の迅速化を目的に、これまでにいくつかの多色印刷方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これらの印刷方法は、ブランケットローラーへのインキ画像の積層塗布工程、硬化工程の条件に関するものである。
【0004】
一方、ツーピース缶のような金属曲面印刷のように、高速で印刷するオフセット印刷機において、印刷用ブランケットがブランケット胴に装着後、緩みやずれが生ずるのを防ぐためにブランケットの裏面に粘着剤を付けることが知られている(特許文献2参照)。また、缶のような円筒容器の印刷において、版胴の表面にインキの透過性が低い剥離層を塗布し、これをブランケットに転移させることによって、ブランケット上のインキの残留を防止し、印刷品質を向上させることが知られている(特許文献3参照)。
【0005】
さらに、金属缶等の硬質部材への印刷であってもインキ着肉性と網点再現性を両立できるように、支持体層上に設けられた表面印刷層を有するブランケットにおいて、圧縮変形させた際に、厚み方向に生じる反力が1.65〜3.3MPaの範囲内にすることが提案されている(特許文献4参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平7−285262号公報(請求項1、図2)
【特許文献2】特開平11−227357号公報(請求項1、図1)
【特許文献3】特開平7−195809号公報(請求項1、図1)
【特許文献4】特開2001−191660号公報(請求項1、図1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一般に金属缶の表面に印刷するときは、紙などの被印刷体に比べて圧力を強くすることが必要であり、このために印刷用ブランケットはヘタリを生じやすく、耐久性が要求されている。ところが、従来の金属缶用印刷ブランケットは、インキ潰し性(ベタ印刷の良否)か、耐膨潤性・網点再現性か、のいずれかに偏って開発されてきた傾向がある。このために、高速で次々と印刷する金属缶印刷において、網点再現性と破損に強い耐久性の両方を兼ね備えた印刷用ブランケットが要望されている。本発明は、かかる金属缶印刷用ブランケットを提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、網点再現性、耐久性、インキ転移性等を向上させることに適した表面印刷層を有する印刷用ブランケットを開発すべく、当該表面印刷層を構成するための加硫ゴム組成物の処方について種々検討した結果、本発明の金属缶用印刷ブランケットを完成したものである。
すなわち、本発明は、以下の金属印刷用ブランケットを提供するものである。
【0009】
1)支持体層上に表面印刷層を形成してなる金属缶印刷用ブランケットであって、前記表面印刷層がゴム100重量部、亜鉛華7〜23phrおよび可塑剤10〜42phrを含む加硫ゴム組成物で形成されていることを特徴とする金属缶印刷用ブランケット。
2)前記表面印刷層のtanδが0.1以下あり、かつ引張強度が4MPa以上である上記1)項記載の金属缶印刷用ブランケット。
3)前記加硫ゴム組成物が亜鉛華10〜20phrおよび可塑剤10〜30Phrを含むものである上記1)項または2)項記載の金属缶印刷用ブランケット。
【0010】
4)前記表面印刷層のtanδが0.08以下あり、かつ引張強度が5MPa以上である上記1)〜3)項のいずれかに記載の金属缶印刷用ブランケット。
5)前記支持体層の裏面に粘着加工してなる上記1)〜4)項のいずれかに記載の金属缶印刷用ブランケット。
前記において、phrは、配合剤の質量をゴム100重量部に対する部数で示すときに用いる記号を意味し、「parts per hundred parts of rubber」の略称である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の金属缶用印刷ブランケットは、表面印刷層がゴム100重量部、亜鉛華7〜23phrおよび可塑剤10〜42phrを含む加硫ゴム組成物で形成されているものである。本金属缶用印刷ブランケットには、金属円筒上に高速印刷を行う際に緩みやズレを生ずることがないように、あるいはブランケットの取替えを簡単にするために、通常は支持体層の裏面に粘着加工が施される。
【0012】
本金属印刷用ブランケット10の構成例を図1(拡大断面図)に示す。この図のように、支持体層12上に表面印刷層14が形成されており、通常は支持体層の裏面には裏面に粘着加工15が施されている。
前記支持体層12は、常法により作製すればよく、例えばゴム組成物を含浸させた複数層の基布16a〜16dと、必要に応じて設けられる少なくとも1層の圧縮性層17とを積層して形成される。基布としては、綿、ポリエステル、レーヨンなどの織布が用いられる。基布同士は、例えば前記NBRやACMなどの耐油性のゴムに加硫剤、加硫促進剤などの成分を配合したいわゆる加硫接着剤を介して積層し、全体加硫によって加硫接着剤を加硫することにより接着、一体化させるのが好ましい。
【0013】
前記圧縮性層はエラストマーからなり、かつ振動吸収性にすぐれた多孔質状に形成されるが、その多孔質の構造は、主として層内の空隙がそれぞれ独立した独立気孔構造または層内の空隙が連結した連続気孔構造に分けられる。本発明においてはいずれの気孔構造であってもよい。前記圧縮性層の、空隙の割合を示す空隙率は、20〜80%であることが好ましい。圧縮性層の空隙率が上記範囲未満では、当該圧縮性層が、十分な衝撃吸収性を発現しなくなるおそれがあり、逆に空隙率が上記範囲を超えた場合には、圧縮性層の強度が低下して、へたり等を生じやすく、金属缶印刷用ブランケットの寿命が短くなるおそれがある。圧縮性層の空隙率は、上記範囲内でも、より好ましくは30〜70%である。
【0014】
次に、本発明の金属缶印刷用ブランケットにおける表面印刷層について説明する。
前記表面印刷層は、ゴム100重量部、亜鉛華7〜23phrおよび可塑剤10〜42phrを含む加硫ゴム組成物より形成される。当該ゴム材料としては、耐油性にすぐれたものが好適に使用されるが、具体例としては、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム(U)あるいはアクリルゴム(ACM)等の耐油性の合成ゴムが挙げられるほか、水素添加NBRなども使用できる。特に、NBRが好ましく用いられる。
【0015】
可塑剤としては、ゴム用として使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジオクチルアジペート(DOA)、ジブチルフタレート(DBP)、トリブチルホスフェート(TBP)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ビス(ブチルジグリコール)アジペート(BXA−R)あるいはジブチルセバケート(DBS)等があげられ、なかでもDBA系統のDBA、DIBA等がNBRとの相溶性の面から好ましい。可塑剤の配合量は、前記したとおりであり、10phrに達しないときは、硬度が高くなるので適当ではなく、一方40phrを超えるとゴム組成物を混練した後にブリードを起しやはり適当ではない。
【0016】
本発明において、亜鉛華(酸化亜鉛、ZnO)の7〜23phrを、前記可塑剤と共に添加することにより、網点再現性、耐久性およびインキ転移性等が向上した金属印刷用ブランケットが作製される。亜鉛華が7phrに達しないときは、耐久性およびインキ転移が低下し、一方23phrを超えるとゴム組成物の加硫が早く表面印刷層の作製には不適当になる。
亜鉛華および可塑剤は、前記量の範囲で配合されるが、とりわけ亜鉛華を10〜20phrおよび可塑剤を10〜30phrの範囲で併用することにより、網点再現性、耐久性およびインキ転移性を向上させるために一層有効である。
【0017】
本発明の金属缶印刷用ブランケットにおける表面印刷層は、それを構成する加硫ゴム組成物の機械的特性として、tanδが0.1以下であり、かつ引張強度が4MPa以上であるように調整するのが好ましい。ここで、tanδは損失正接を意味し、正弦波振動を与えたときの損失弾性係数と貯蔵弾性係数の比で表わされる。亜鉛華および可塑剤の配合量を、前記の範囲に調整することが、上記の機械的特性を有する加硫ゴム組成物とするための要件となり得る。更に、tanδが0.08以下であり、かつ引張強度が5MPa以上であるように調整すればより一層好ましくなる。
【0018】
本明細書におけるtanδおよび引張強度は、次の方法により測定した値を意味する。
・tanδ(損失正接)の測定
試験ピース(形状:幅4mm×長さ30mm×厚さ0.2mm)を粘弾性スペクトロメーターにより、温度23℃、10Hz、振幅50μm、チャック間距離20mm、初期歪み2mmを加えたときのtanδを測定する。粘弾性スペクトロメーターとしては、上島製の機種名「VR−7110」等を用いることができる。
・引張強度の測定
JIS K6251(加硫ゴムの引張試験方法)に規定する方法により測定される引張強さ(Tb)を意味する。測定試験機には、(株)島津製作所製オートグラフを用いることができる。
【0019】
本発明において、表面印刷層用のゴム組成物は、前記配合量の亜鉛華および可塑剤と、加硫剤とを含有し、さらに加硫促進剤、加硫促進助剤あるいは加硫遅延剤など加硫のための成分が適宜添加される。
加硫剤としては、たとえば硫黄、有機含硫黄化合物、有機過酸化物等があげられ、このうち有機含硫黄化合物としては、たとえばN,N′−ジチオビスモルホリン等があげられ、有機過酸化物としては、たとえばベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等があげられる。
【0020】
加硫促進剤としては、たとえばテトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;ジブチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカーバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカーバミン酸テルル等のジチオカーバミン酸類;2−メルカプトベンゾチアゾール、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のチアゾール類;トリメチルチオ尿素、N,N′−ジエチルチオ尿素等のチオウレア類などの有機促進剤や、あるいは消石灰、酸化マグネシウム、酸化チタン、リサージ(PbO)等の無機促進剤があげられる。
【0021】
加硫促進助剤としては、たとえばステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸などがあげられる。
加硫遅延剤としては、たとえばサリチル酸、無水フタル酸、安息香酸等の芳香族有機酸;N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジハイドロキノン、N−ニトロソフェニル−β−ナフチルアミン等のニトロソ化合物などがあげられる。
【0022】
前記表面印刷層用のゴム組成物には、品質改良を目的に、老化防止剤、補強剤、充填剤、軟化剤、粘着性付与剤などの各種添加剤を適宜、配合してもよい。
老化防止剤としては、たとえば2−メルカプトベンゾイミダゾール等のイミダゾール類;フェニル−α−ナフチルアミン、N,N′−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン等のアミン類;ジ−t−ブチル−p−クレゾール、スチレン化フェノール等のフェノール類などがあげられる。
【0023】
補強剤としては主にカーボンブラックが使用される他、シリカ系あるいはケイ酸塩系のホワイトカーボン、表面処理沈降性炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー等の無機補強剤や、あるいはクマロンインデン樹脂、フェノール樹脂、ハイスチレン樹脂(スチレン含有量の多いスチレン−ブタジエン共重合体)等の有機補強剤も使用できる。
充填剤としては、たとえば炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム、珪藻土、マイカ、アスベスト、グラファイト等の無機充填剤や、あるいはアスファルト類、スチレン樹脂、にかわ等の有機充填剤などがあげられる。
【0024】
軟化剤としては、たとえば脂肪酸(ステアリン酸、ラウリン酸等)、綿実油、トール油、アスファルト物質、パラフィンワックス等の、植物油系、鉱物油系、および合成系の各種軟化剤があげられる。
本発明において、表面印刷層の厚みは、0.2〜0.5mmであるのが好ましい。表面印刷層の厚みが上記範囲未満では、ベタ着肉性の低下によって、ベタ部にかすれ等が発生するおそれがある。また逆に、表面印刷層の厚みが上記範囲を超えた場合には、金属缶印刷時に、印刷用ブランケットの回転方向下流側への、表面印刷層のずれが大きくなり、その分だけ周長変化率が大きくなるため、印刷画像が不鮮明化して、印刷品質が悪化するおそれがある。表面印刷層の厚みは、上記範囲内でもとくに、0.2〜0.4mmであるのが好ましく、0.25〜0.35mmであるのがさらに好ましい。
【0025】
本発明の金属缶用印刷ブランケットは、支持体層上に前記の表面印刷層を積層し、支持体層の裏面(ブランケット胴に接着される)に粘着加工を施すことが好ましい。前記支持体層は圧縮性層を含むエァータイプであることが好ましく、圧縮性層を含まないソリッドタイプとするときは、前述した機械的特性を有する表面印刷層の機能を発揮するには適しないことが多い。前記支持体層の厚みは、通常、1.90〜2.20mmの範囲とし、接着剤引き基布(0.2〜0.5mm)を適宜の枚数積層することによって目的が達せられる。
【0026】
次に、本発明の金属缶印刷用ブランケットの作製につき説明する。
作製工程は、接着剤引き基布を積層して支持体層を作製する工程、その支持体層上に前記した表面印刷層の未加硫ゴム組成物を塗布する工程およびその積層体を全体加硫する工程と、さらに支持体層の裏面に適宜、粘着加工を施す工程を含み、さらに通常は表面印刷層を研磨することにより所定の表面粗さならびに所定の厚みに仕上げる工程を経て目的とする金属缶印刷用ブランケットが作製される。
【0027】
基布としては、前述のとおり従来と同様に綿、ポリエステルあるいはレーヨンなどの織布が使用できる。基布上に、接着剤用ゴム糊を塗布し、所望の厚みとなるように必要な枚数の基布を積層する。接着剤用ゴム糊としては、たとえば前記NBRやACMなどの耐油性のゴムに加硫剤、加硫促進剤などの成分を配合したものが用いられる。支持体層は、前記のとおり、圧縮性層を含むことが好ましい。
【0028】
次に、前記の表面印刷層用のゴム組成物(未加硫)を有機溶剤(トルエンなど)に溶解し、そのゴム糊を前記支持体層上にドクターブレードやドクターロール等を使用して所定の厚みに塗布(糊引き)し、乾燥させる。その後、得られる積層体を、加圧、加熱して全体加硫して一体化させることにより、加硫ゴム組成物よりなる表面印刷層が形成される。
全体加硫には、従来同様に加硫缶を用いてもよく、連続加硫機や熱プレスなどを用いてもよいが、要は生産性の向上や、加硫がバラツキなく均等に行われ、均一な特性を有する印刷ブランケットが作製できる方法を適宜、選択する。
【0029】
支持体層裏面への粘着加工は、例えば、予め調製したアクリル系粘着剤を離型紙上に均一に引いて前記ブランケットとダブリングするなどの方法により施すことができる。粘着剤の厚みは、0.07mm程度とするのがよい。
上記のように形成された表面印刷層の表面は、通常、研磨により所定の表面粗さならびに所定の厚みに仕上げられる。表面印刷層の表面粗さは、印刷精度と密接に係わっているので、とくに厳密に仕上げる必要がある。その表面粗さの具体的な範囲は、とくに限定されないが、10点平均粗さ(Rz)で表して、3〜10μmの範囲内であるのが好ましい。また表面粗さは、上記範囲内でもとくに、10点平均粗さ(Rz)で表して、3〜8μmの範囲内であるのが好ましく、3〜6μmの範囲内であるのがさらに好ましい。なかでも、スチール缶の印刷用の場合は、3〜7μmであることが好ましい。
【0030】
本発明の金属缶印刷用ブランケットの無負荷時における総厚みは、1.90〜2.20mm程度とするのが好ましい。無負荷時の総厚みが、前記範囲を下回ると、十分な印圧が得られなくなって良好な印刷が行えなくなるおそれが生じる。逆に、無負荷時の総厚みが前記範囲を超えると、印圧によって生じる歪が大きくなって、良好な印刷が印刷を行えなくなるおそれが生じる。
【0031】
【実施例】
以下に、実施例および比較例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1〜7
図1に示す構成のブランケットを、次のようにして作製した。
(i)支持体層12の形成
基布として綿布16d上に、表1に示す圧縮性層用の成分が混練りされたゴムをトルエンに溶解し、そのゴム糊を塗布し、乾燥後、フェルト加硫機(135℃、0.2m/min.)により連続加硫して、圧縮性層17を形成した。
【0032】
【表1】
【0033】
表中、加硫促進剤としてtetraethylthiuramdisulfide(商品名「ノクセラーTET」)を、また老化防止剤として2,2’−methylenebis(商品名「ノクラックNS−6」)をそれぞれ用いた。
上記圧縮性層と基布としての綿布3枚(16a,16b,16c)を、表2に示す各成分をトルエンに溶かし、その接着用ゴム糊をそれぞれの層間に塗布することによって接着し、乾燥させた。
【0034】
【表2】
【0035】
表中、チアゾール系加硫促進剤としては、dibenzothiazyldisulfide(商品名「ノクセラーDM」)、チウラム系加硫促進剤としてはtetraethylthiuramdisulfide(商品名「ノクセラーTET」)をそれぞれ用いた。
(ii)表面印刷層の形成
前記の支持体層12のうち、最表層にある基布16dの上に、表3に示す各成分をトルエンに溶かした各表面印刷層用のゴム糊を塗布した。この表3において、酸化亜鉛(配合量をYphrとする)と可塑剤(配合量をZphrとする)は、実施例1〜7によって、後述の表4に示すように、配合割合を変化させた。また、表3において、ゴム成分はNBRと多硫化ゴムを合わせて100重量部であり、このうち多硫化ゴムをX重量部とする。
【0036】
前記のとおり、表面印刷用ゴム糊を塗布後、積層体を乾燥させた。
【0037】
【表3】
【0038】
表中、顔料としてイプシロンブルー(商品名「住化カラーLB510」)を、酸化チタンとして石原産業製の商品名「A−IUU」を、老化防止剤として2,6−di−tert−butyl−4−methylphenol(商品名「ノクラック200」)および2,2’−methylenebis(商品名「ノクラックNS−6」)をそれぞれ用いた。また、加硫促進剤として、表2に記載のものと同じくチアゾール系およびチウラム系のものを用いた。
【0039】
(iii)加硫および表面の研磨
次に、上記の積層体を連続加硫機にて、150℃、0.3m/min.ベルト圧力100Barの条件で加硫した。さらに、表面印刷層14の表面を研磨することによって、表面の粗さがRz6程度になるように調整した。
(Vi)粘着加工15
予め調製したアクリル系粘着剤を離型紙上に厚み0.07mm均一に引いて、これを上記の積層体の基布16a側にダブリングすることにより加工15を施して、図1に示す層構成を有する、本発明の金属缶用印刷ブランケット10(無負荷時の厚み:1.97mm、但し、離型紙の厚みを除く)を得た。
【0040】
比較例1
表面印刷用ゴム糊の調製において、ゴム分としてNBR85重量部と多硫化ゴム15重量部(合計100重量部)を、酸化亜鉛を5phr、可塑剤DOPを15phrとしたこと以外は、前記の実施例と同様に調製して印刷用ブランケットを得た。
比較例2
比較例1において、ゴム分をNBR100重量部としたこと以外は、同様に調製して印刷用ブランケットを得た。
【0041】
比較例3
比較例2において、酸化亜鉛量を25phrとしたこと以外は、同様に印刷用ブランケットの調製を試みたが、加硫が早く作製不能であった。
比較例4
比較例2において、酸化亜鉛量を15phr、可塑剤DOPを45phrとしたこと以外は、同様にして印刷用ブランケットを調製したが、可塑剤がブリードを起した。
<実機試験>
上記実施例および比較例で作製した印刷用ブランケットを、ツーピース缶印刷機(コンコルド)のブランケット胴に装着して、アルミ缶に印刷速度1500缶/分で連続的に使用したのち、次の方法により印刷特性を評価した。
[印刷特性の評価方法]
・網点再現性: 印刷後の缶について印刷状態(文字等の流れ)から次のように判定した。
【0042】
○;網点再現性がよい。
△;網点再現性がやや悪い
×;網点再現性が悪い
・耐久性: 上記の印刷を7日間連続運転し、表面印刷層のゴムの欠け発生状況を目視することにより、次の基準で評価した。
○;ゴムの欠けが発生せず。
【0043】
△;ゴムの欠け少し発生する。
×;ゴムの欠けが発生する。
・インキ転移性: プルーバウ印刷評価機を用い、印圧1000N、印刷速度8m/secで測定し、次の基準で評価した。
○;インキ転移がよい。
△;インキ転移がやや悪い。
【0044】
×;インキ転移が悪い。
上記の評価結果を下記の表4に示す。
【0045】
【表4】
【0046】
表4の結果から、実施例1〜7で得られた本発明の金属缶用印刷ブランケットは、網点再現性がよく、耐久性およびインキ転移もよく金属缶印刷に適するものであった。これらの印刷用ブランケットは、表面印刷層を構成するゴム組成物に、酸化亜鉛を7〜23phr、可塑剤(DOP)を10〜42phrの各範囲内に含有させて作製しいたものである。また、これらの印刷用ブランケットは、tanδが0.1以下で、かつ引張強度(Tb)が4MPa以上であることから、柔軟性がありしかも強さを有する印刷ブランケットであった。とりわけ、実施例3、4および5で得たものが、tanδが0.08以下で、かつ引張強度(Tb)が5MPa以上であることから一層好ましいものであった。
これに対して、比較例1および2は従来のように、表面印刷層のゴム組成物における酸化亜鉛(5phr)および可塑剤TPO(15phr)を配合した例であるが、比較例1は多硫化ゴムを配合したことにより、網点再現性がよいものの、耐久性およびインキ転移において劣っており、引張強度も満足する程度ではなかった。比較例2のものは、網点再現性がやや悪く、またtanδも高い傾向にあった。比較例3では、前記したように、加硫が早く作製不能であった。また、比較例4のように、可塑剤(DOP)量を多くすると、表面印刷層の強度が弱く、可塑剤のブリードが認められ、金属缶印刷用ブランケットとして適当ではなかった。
【0047】
【発明の効果】
本発明の金属缶印刷用ブランケットは、金属缶印刷において、網点再現性と耐久性の両方を兼ね備え、しかもインキ転移性がよいものであり、長時間の高速印刷を可能にする。従って、飲料用などのアルミ缶あるいはスチール缶などのツーピース缶の表面印刷用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る金属缶印刷用ブランケットの一実施形態を示す拡大断面である。
【符号の説明】
10 金属缶印刷用ブランケット
12 支持体層
14 表面印刷層
15 粘着加工
16a〜16d 基布層
17 圧縮性層
Claims (5)
- 支持体層上に表面印刷層を形成してなる金属缶印刷用ブランケットであって、前記表面印刷層がゴム100重量部、亜鉛華7〜23phrおよび可塑剤10〜42phrを含む加硫ゴム組成物で形成されていることを特徴とする金属缶印刷用ブランケット。
- 前記表面印刷層のtanδが0.1以下あり、かつ引張強度が4MPa以上である請求項1記載の金属缶印刷用ブランケット。
- 前記加硫ゴム組成物が亜鉛華10〜20phrおよび可塑剤10〜30Phrを含むものである請求項1または2記載の金属缶印刷用ブランケット。
- 前記表面印刷層のtanδが0.08以下あり、かつ引張強度が5MPa以上である請求項1〜3のいずれかに記載の金属缶印刷用ブランケット。
- 前記支持体層の裏面に粘着加工してなる請求項1〜4のいずれかに記載の金属缶印刷用ブランケット。
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JP2009274376A (ja) * | 2008-05-16 | 2009-11-26 | Fujikura Rubber Ltd | 印刷用ブランケット及びオフセット印刷機 |
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2002
- 2002-09-20 JP JP2002275421A patent/JP2004106471A/ja active Pending
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Effective date: 20070626 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 |
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A02 | Decision of refusal |
Effective date: 20071023 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 |