JP2004106418A - 印刷ブランケット - Google Patents
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Abstract
【課題】油性インキおよびUVインキの両方の印刷に使用することができ、しかもこの両方のインキについて種々の問題を生じることなく、良好な印刷を行うことが可能な、新規な印刷ブランケットを提供する。
【解決手段】アクリルニトリル−ブタジエン共重合ゴムとエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムとを重量比で60/40〜95/5の割合で配合してなり、なおかつアクリロニトリル量が30〜40%である配合ゴムにて表面印刷層を形成した印刷ブランケットである。
【選択図】 なし
【解決手段】アクリルニトリル−ブタジエン共重合ゴムとエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムとを重量比で60/40〜95/5の割合で配合してなり、なおかつアクリロニトリル量が30〜40%である配合ゴムにて表面印刷層を形成した印刷ブランケットである。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、印刷ブランケットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
印刷ブランケットを用いたオフセット印刷法においては、インキとして、油性インキ(酸化重合タイプ)やUVインキ(紫外線硬化タイプ)を用いるのが一般的である。
このうち油性インキは古くから使用され、安価で経済的である。しかしその反面、有機溶剤を含むため、作業環境等の保全のためには、その取り扱いに十分に注意を払う必要がある。
【0003】
また油性インキは、硬化するまでに比較的、長い時間を要するため、印刷物を積み重ねるいわゆる棒積み時に、上に積んだ印刷物の裏面に下側の印刷物のインキが付着するのを防止するためには、印刷後の印刷物の、表裏いずれかの面にパウダーを散布する必要がある。このため作業環境等の保全のためには、パウダーの飛散防止にも十分に注意を払わなければならない。
一方のUVインキは、紫外線照射によって瞬時に硬化するので棒積み時にパウダーを散布する必要がない上、基本的に有機溶剤を含まないため、作業環境等の保全という観点では、油性インキよりも優れている。
【0004】
しかし油性インキに比べて高価であり、しかも印刷時の取り扱いが難しいため、油性インキの全量を、UVインキに置き換えるまでには至っておらず、印刷目的等に応じて両者を使い分けているのが現状である。
ところが、油性インキとUVインキとではその組成が全く異なるため、そのそれぞれに適した特性を有する表面印刷層を備えた印刷ブランケットを、インキに応じて使い分ける必要があり、インキが替わるごとに印刷ブランケットを交換しなければならないという問題がある。
【0005】
すなわち油性インキ用としては、有機溶剤に対する耐膨潤性と加工性とを考慮して、アクリロニトリル量が31〜35%程度に調整されたアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、いわゆる中高ニトリルゴムにて表面印刷層を形成した印刷ブランケットが一般的に用いられる。
しかし中高ニトリルゴムは、UVインキ中に含まれるアクリルモノマーに対する耐膨潤性が不十分である。表面印刷層の表面は、ある程度はインキに膨潤できないと、版からのインキの転写性(着肉性)が不十分になって良好な印刷を行えないが、中高ニトリルゴムからなる表面印刷層は、UVインキに使用すると膨潤しすぎる。このため、版からのインキの転写時や被印刷物へのインキの転写時などの変形量が大きくなりすぎて、印刷品質が低下するという問題を生じる。したがって表面印刷層を中高ニトリルゴムにて形成した印刷ブランケットは、UVインキには使用することができない。
【0006】
一方、UVインキ用としては、アクリルモノマーに対する耐膨潤性に優れた、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)等の非極性のゴムにて表面印刷層を形成した印刷ブランケットが好適に用いられる。
ところがEPDM等の非極性のゴムは、逆に油性インキに含まれる有機溶剤に対する耐膨潤性が不十分であるため、前記と同じ理由で、表面印刷層を非極性のゴムにて形成した印刷ブランケットは、油性インキには使用することができない。
【0007】
このため従来は、前記のようにインキが替わるごとに、印刷ブランケットを交換する必要があった。
しかし印刷ブランケットを、張力を調整しながら印刷機のブランケット胴軸に巻き付けて固定する装着作業は決して容易ではなく、熟練した作業者であってもそれなりの時間と労力とを必要とする。
したがって、インキが替わるごとに印刷ブランケットを交換していたのでは非常に手間がかかって、印刷機の稼働率を低下させるといった問題を生じる。
【0008】
そこで特許文献1において、油性インキとUVインキの両方に使用することができ、インキが替わっても交換する必要のない印刷ブランケットが提案された。
すなわち、上記公報に記載の印刷ブランケットは、ムーニー粘度75ML1+4(100℃)以上、アクリロニトリル量31〜35%の中高ニトリルゴムと、ムーニー粘度45ML1+4(100℃)以上、アクリロニトリル量43〜50%の極高ニトリルゴムとを配合した配合ゴムにて表面印刷層を形成したものである。
【0009】
かかる印刷ブランケットにおいては、中高ニトリルゴムのムーニー粘度を上記の範囲とし、かつ極高ニトリルを加えて、配合ゴム中でのアクリロニトリル量を37〜40%に調整することによって、有機溶剤およびアクリルモノマーに対する耐膨潤性を、ともに向上している。また、極高ニトリルゴムのムーニー粘度を上記の範囲とすることによって、配合ゴムの加工性等を確保している。
しかし発明者らの検討によると、上記の表面印刷層は、ともに有機溶剤に対する耐膨潤性に優れた中高ニトリルゴムと極高ニトリルゴムとで形成されるため、特に油性インキに対する耐膨潤性が高すぎる。このため、油性インキの膨潤量が少なすぎて、当該油性インキによる印刷時に、前述した着肉性が不十分になるおそれがある。
【0010】
また上記の表面印刷層は、主に極高ニトリルゴムの特性によって、動的弾性率E’と損失弾性率E”との比E”/E’で表される損失正接tanδが大きいため、被印刷物の表面に圧接してインキを転写した後の、被印刷物のはく離のしやすさを示す紙離れ性が悪く、特に高速で連続印刷した際に紙詰まり等を生じやすくなるおそれもあった。
また特許文献2には、水素添加NBRと通常のNBRとの配合ゴムにて表面印刷層を形成した印刷ブランケットが開示されている。また特許文献3には、アクリロニトリル−ブタジエン−イソプレン共重合ゴムと、多硫化ゴムとの配合ゴムにて表面印刷層を形成した印刷ブランケットが開示されている。
【0011】
しかしこのいずれのものも、2種のゴムの配合ゴムにて表面印刷層を形成すること以外は、この発明との類似点はない。いずれの公報にも、NBRとEPDMとを所定の割合で配合することや、アクリロニトリル量を所定の範囲に調整すること、それによって油性インキとUVインキの両方について良好な印刷が可能な表面印刷層を有する印刷ブランケットを形成できることについては一切、記載されていない。
【0012】
したがってこれらの公報に記載の発明は、この発明を開示も示唆もするものではない。
【0013】
【特許文献1】
特公平7−17113号公報(第2頁左欄第33行〜第45行)
【特許文献2】
特開平5−77578号公報(第0007欄、第0008欄)
【特許文献3】
特開平7−228071号公報(第0009欄)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の目的は、油性インキおよびUVインキの両方の印刷に使用することができ、しかもこの両方のインキについて、上記のような種々の問題を生じることなく、良好な印刷を行うことが可能な、新規な印刷ブランケットを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
請求項1記載の発明は、アクリルニトリル−ブタジエン共重合ゴムと、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムとを、重量比で60/40〜95/5の割合で配合してなり、アクリロニトリル量が30〜40%である配合ゴムにて表面印刷層を形成したことを特徴とする印刷ブランケットである。
請求項1の構成では、前記従来例のように、ともに有機溶剤に対する耐膨潤性にすぐれたNBR同士(中高ニトリルゴムと極高ニトリルゴム)を配合するのではなく、NBRと、アクリルモノマーに対しては膨潤しにくいが、有機溶剤に対しては膨潤しやすいEPDMとを、上記のように重量比で60/40〜95/5の割合で配合した配合ゴムにて表面印刷層を形成している。それゆえ表面印刷層は、油性インキおよびUVインキの両方に対して良好に膨潤することができ、いずれのインキについても、着肉性の低下を生じることなく良好に印刷することができる。
【0016】
また請求項1の構成では、前述したように有機溶剤に対して膨潤しにくいNBRと、上記のようにアクリルモノマーに対して膨潤しにくいEPDMとを併用しているとともに、NBRのアクリロニトリル量を調整することによって、配合ゴムのアクリロニトリル量を30〜40%の範囲内としている。このため、かかる配合ゴムからなる表面印刷層は、油性インキおよびUVインキの両方に対して高い耐膨潤性を有しており、いずれのインキに使用した際にも膨潤しすぎることがない。よって版からのインキの転写時や、被印刷物へのインキの転写時などの変形量が大きくなりすぎて、印刷品質が低下するといった問題を生じるおそれもない。
【0017】
さらに請求項1の構成では、上記の配合ゴムにて形成することによって、表面印刷層の損失正接tanδを小さくすることもできるため、被印刷物の紙離れ性を向上して、紙詰まり等の発生をより確実に防止することもできる。
したがって請求項1の構成によれば、油性インキおよびUVインキの両方の印刷に使用することができ、しかもこの両方のインキについて種々の問題を生じることなく、良好な印刷を行うことができる印刷ブランケットを提供することが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明を説明する。
この発明の印刷ブランケットは、前述したように、NBRとEPDMとを、重量比で60/40〜95/5の割合で配合してなり、アクリロニトリル量が30〜40%である配合ゴムにて表面印刷層を形成したものである。
NBRとEPDMとの配合割合を上記の範囲に限定するのは、下記の理由による。
【0019】
すなわち、重量比で95/5よりもEPDMの割合が少ない場合には、当該EPDMを配合したことによる、前述した、表面印刷層の、有機溶剤に対する膨潤性を高めて、油性インキの着肉性を向上する効果と、アクリルモノマーに対する耐膨潤性を高めて、UVインキで印刷した際の印刷品質を向上する効果とがともに得られない。
一方、重量比で60/40よりもNBRの割合が少ない場合には、NBRにおけるアクリロニトリル量の上限が50%であるため、配合ゴムにおけるアクリロニトリル量が30%未満となり、表面印刷層の、特に有機溶剤に対する耐膨潤性が低下して、油性インキで印刷した際の印刷品質を向上する効果が得られない。
【0020】
なお、これらの効果のバランスを考慮して、より良好な印刷特性を有する印刷ブランケットを得るためには、NBRとEPDMとの配合割合は、上記の範囲内でも特に、重量比で65/35〜90/10であるのが好ましい。
またこの発明において、配合ゴムにおけるアクリロニトリル量を前記の範囲に限定するのは、下記の理由による。
すなわち、配合ゴムにおけるアクリロニトリル量が30%未満では、上に述べたように表面印刷層の、特に有機溶剤に対する耐膨潤性が低下して、油性インキで印刷した際の印刷品質を向上する効果が得られない。
【0021】
逆に、配合ゴムにおけるアクリロニトリル量が40%を超える場合には、表面印刷層の、有機溶剤に対する耐膨潤性が高くなりすぎるため、油性インキの膨潤性を高めて、当該油性インキによる印刷時に着肉性を向上する効果が得られない。
なお、これらの効果のバランスを考慮して、より良好な印刷特性を有する印刷ブランケットを得るためには、配合ゴムにおけるアクリロニトリル量は、上記の範囲内でも特に32.5〜37.5%であるのが好ましい。
【0022】
ここで言う配合ゴムのアクリロニトリル量NCR(%)とは、配合ゴムにおけるNBRの配合量WN(重量部)およびEPDMの配合量WE(重量部)と、NBRのアクリロニトリル量NN(%)とから、式(1):
NCR(%)=NN×WN/(WN+WE) (1)
によって求められる、配合ゴム中でのアクリロニトリル単位の含有割合である。配合ゴムのアクリロニトリル量NCR(%)を前記の範囲に調整するには、上記式(1)から明らかなように、NBRのアクリロニトリル量NN(%)と、配合ゴムにおけるNBRとEPDMとの配合割合を調整すればよい。
【0023】
このうちNBRのアクリロニトリル量NN(%)を調整するには、使用するNBRの種類を選択すればよい。
すなわちNBRとしては、アクリロニトリル量NN(%)によって低ニトリルゴム(18〜24%)、中ニトリルゴム(25〜30%)、中高ニトリルゴム(31〜35%)、高ニトリル(36〜42%)および極高ニトリルゴム(43〜50%)に分類される各種のNBRの中から、EPDMと所定の重量比で配合した際に、上記式(1)で求められる配合ゴムのアクリロニトリル量NCR(%)が30〜40%の範囲内となる任意のNBRを選択して使用することができる。
【0024】
なお低ニトリルゴムと中ニトリルゴムはアクリロニトリル量NN(%)が小さすぎるため、単独で、前述した重量比の範囲でEPDMと配合しても、配合ゴムのアクリロニトリル量NCR(%)を前記の範囲にできないが、中高ニトリルゴム以上の他のNBRと併用することはできる。また、中高ニトリルゴム以上の2種のNBRを併用しても良い。
一方のEPDMとしては、エチレン、プロピレン、およびジエンの各成分の割合を調整したり、あるいは新たな第4の成分などを加えたりすることによって製造された、種々の特性を有する各種のEPDMを用いることができる。
【0025】
上記NBRとEPDMとを含む配合ゴムにて表面印刷層を形成するこの発明の印刷ブランケットは、例えば下記の方法によって製造することができる。
すなわちまず、NBRとEPDMとを含む配合ゴムに、例えば加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、補強剤、充てん剤、軟化剤、可塑剤、着色剤等の各種添加剤を配合するとともに、溶剤を加得て粘度を調整して表面印刷層用のゴム糊を作製する。
【0026】
次にこのゴム糊を、基布や圧縮性層などを含む支持体層上に、所定の厚みとなるように糊引きする。
そして、例えば連続加硫機や加硫缶などを用いて所定の温度に加熱すると、糊引き層のゴムが加硫されるとともに、支持体層と一体化される。
この後、必要に応じて、加硫された糊引き層を所定の表面粗さ、および所定の厚みとなるように研磨すると、この発明の印刷ブランケットが製造される。
【0027】
あるいはまた、NBRとEPDMとを含む配合ゴムに上記各添加剤を配合したゴムコンパウンドを、支持体層上に、必要に応じて加硫接着剤を介して積層したのち、同様に連続加硫機や加硫缶などを用いて加熱したのち、同様に必要に応じて研磨することによっても、この発明の印刷ブランケットを製造することができる。
ゴム糊やゴムコンパウンドに配合する添加剤のうち加硫剤としては、例えば硫黄、有機含硫黄化合物、有機過酸化物等があげられ、このうち有機含硫黄化合物としては、例えばN,N′−ジチオビスモルホリン等があげられ、有機過酸化物としては、例えばベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等があげられる。
【0028】
また加硫促進剤としては、例えばテトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;ジブチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカーバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカーバミン酸テルル等のジチオカーバミン酸類;2−メルカプトベンゾチアゾール、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のチアゾール類;トリメチルチオ尿素、N,N′−ジエチルチオ尿素等のチオウレア類などの有機促進剤や、あるいは消石灰、酸化マグネシウム、酸化チタン、リサージ(PbO)等の無機促進剤があげられる。
【0029】
加硫促進助剤としては、例えば亜鉛華等の金属酸化物や、あるいはステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸などがあげられる。
加硫遅延剤としては、例えばサリチル酸、無水フタル酸、安息香酸等の芳香族有機酸;N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジハイドロキノン、N−ニトロソフェニル−β−ナフチルアミン等のニトロソ化合物などがあげられる。
【0030】
老化防止剤としては、例えば2−メルカプトベンゾイミダゾール等のイミダゾール類;フェニル−α−ナフチルアミン、N,N′−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン等のアミン類;ジ−t−ブチル−p−クレゾール、スチレン化フェノール等ノフェノール類などがあげられる。
補強剤としてはカーボンブラック、シリカ系あるいはケイ酸塩系のホワイトカーボン、亜鉛華、表面処理沈降性炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー等の無機補強剤や、あるいはクマロンインデン樹脂、フェノール樹脂、ハイスチレン樹脂(スチレン含有量の多いスチレン−ブタジエン共重合体)等の有機補強剤も使用できる。
【0031】
また充てん剤としては、例えば炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム、珪藻土、マイカ、アスベスト、グラファイト等の無機充てん剤や、あるいは再生ゴム、粉末ゴム、アスファルト類、スチレン樹脂、にかわ等の有機充てん剤などがあげられる。
軟化剤としては、例えば脂肪酸(ステアリン酸、ラウリン酸等)、綿実油、トール油、アスファルト物質、パラフィンワックス等の、植物油系、鉱物油系、および合成系の各種軟化剤があげられる。
【0032】
可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジルフォスフェート等の各種可塑剤があげられる。
着色剤としては各色の顔料等があげられる。
上記以外にもゴムには、例えば粘着性付与剤、分散剤、溶剤等を適宜、配合してもよい。
表面印刷層とともに印刷ブランケットを形成する支持体層としては、例えば合成あるいは天然繊維からなる基布や、多孔質構造を有する圧縮性層などを適宜の層数と配置で積層した多層構造を有するものが好適に使用される。
【0033】
このうち圧縮性層としては、各種ゴムに発泡剤を配合して加硫とともに発泡させるか、あるいは中空状の微小粒子を配合することで形成した独立気孔構造を有するものや、あるいはゴムに食塩の粒子を分散させて加硫したのち、温水によって食塩の粒子を溶解除去して形成した連続気孔構造を有するものを用いることができる。
かくして製造されたこの発明の印刷ブランケットは、前述したように表面印刷層が、油性インキに含まれる有機溶剤、およびUVインキに含まれるアクリルモノマーに対して適度な膨潤性を有している。
【0034】
表面印刷層が、有機溶剤およびアクリルモノマーに対してどの程度の膨潤性を有しているかについては特に限定されないものの、有機溶剤の代表例としてのトルエンに対する膨潤率は85〜145%であるのが好ましく、95〜135%であるのがさらに好ましい。また、かかる膨潤率を有する表面印刷層は、同時にアクリルモノマーに対する膨潤率が5〜35%であるのが好ましく、10〜30%であるのがさらに好ましい。
【0035】
トルエンに対する膨潤率が上記の範囲未満では、表面印刷層の、有機溶剤に対する耐膨潤性が高くなりすぎるため、油性インキの膨潤性を高めて、当該油性インキによる印刷時に着肉性を向上する効果が得られないおそれがある。
また逆に、トルエンに対する膨潤率が上記の範囲を超える場合には、表面印刷層の、有機溶剤に対する耐膨潤性が低すぎて、油性インキで印刷した際の印刷品質を向上する効果が得られないおそれがある。
【0036】
また同様に、アクリルモノマーに対する膨潤率が上記の範囲未満では、表面印刷層の、アクリルモノマーに対する耐膨潤性が高くなりすぎるため、油性インキの場合と同様に、UVインキの膨潤性を高めて、当該UVインキによる印刷時に着肉性を向上する効果が得られないおそれがある。
また逆に、アクリルモノマーに対する膨潤率が上記の範囲を超える場合には、アクリルモノマーに対する耐膨潤性を高めて、UVインキで印刷した際の印刷品質を向上する効果が得られないおそれがある。
【0037】
これに対し、有機溶剤およびアクリルモノマーに対する膨潤率が前記の範囲内にあり、良好な膨潤性を有する表面印刷層を備えたこの発明の印刷ブランケットによれば、油性インキおよびUVインキのいずれを使用した場合にも、良好な印刷を行うことができる。
すなわち、印刷のベタ部の濃度むらを規定するベタ部の輝度標準偏差が、油性インキを使用した印刷の場合と、UVインキを使用した印刷の場合とでともに10以下であるような、ベタ部の濃度の均一な印刷を行うことが可能となる。
【0038】
【実施例】
以下にこの発明を、実施例、比較例に基づいて説明する。
実施例1
(プライマーゴム糊の調製)
下記の各成分を、その総重量の2倍量のトルエンと配合してプライマーゴム糊を調製した。
【0039】
(成分) (重量部)
NBR 100
〔JSR(株)製のN232S、アクリロニトリル量35%〕
クマロン樹脂 15
亜鉛華 5
ステアリン酸 1
ジオクチルアジペート 5
硫黄 2
ノクセラーDM 1
〔ジベンゾチアジルジスルフィド、大内新興化学(株)製の登録商標。〕
ノクセラーTT 1
〔テトラメチルチウラムジスルフィド、大内新興化学(株)製の登録商標。〕
(圧縮性層用ゴム糊の調製)
下記の各成分を、その総重量の2倍量のトルエンと配合して圧縮性層用ゴム糊を調製した。
【0040】
(成分) (重量部)
NBR 100
〔日本ゼオン(株)製のNIPOL(登録商標)DN202、アクリロニトリル量31%〕
カーボンブラックHAF 40
亜鉛華 5
ステアリン酸 1
ジオクチルアジペート 5
硫黄 2
ノクセラーDM 1
〔ジベンゾチアジルジスルフィド、大内新興化学(株)製の登録商標。〕
ノクセラーTT 1
〔テトラメチルチウラムジスルフィド、大内新興化学(株)製の登録商標。〕
マイクロバルーン 7
〔松本油脂製薬(株)製のマツモトマイクロスフェアー(登録商標)F50D〕
(支持体層の作製)
1枚の綿布の片面に前記プライマーゴム糊を塗布した後、その上に別の綿布を貼り合せる作業を繰り返して、3枚の綿布を積層した。
【0041】
また、別に用意した1枚の綿布の片面に、上記圧縮性層用ゴム糊を塗布した後、連続加硫機で加硫して、独立気孔構造を有する圧縮性層を形成した。加硫条件は、圧力19.6kPa、温度140℃、加硫時間30分間とした。
そして先の積層体の、露出した綿布の表面に、前記プライマーゴム糊を塗布した後、その上に圧縮性層を貼り合せて、綿布(上層基布)/圧縮性層/綿布(下層基布)/綿布(下層基布)/綿布(下層基布)の5層構造を有する支持体層を作製した。
【0042】
(表面印刷層用ゴム糊の調製)
NBR〔アクリロニトリル量35%、JSR(株)製のN232S〕と、EPDM〔住友化学工業(株)製のエスプレン(登録商標)505A〕とを、重量比で95/5の割合で配合して配合ゴムとした。この配合ゴムにおけるアクリロニトリル量は33.3%であった。
次にこの配合ゴム100重量部を含む下記の各成分を、その総重量の2倍量のトルエンと配合して表面印刷層用ゴム糊を調製した。
【0043】
(成分) (重量部)
配合ゴム 100
シリカ 10
〔日本シリカ工業(株)製のNipsil(登録商標)VN3〕
亜鉛華1号 3
ジオクチルフタレート 5
ステアリン酸 1
老化防止剤2246 1
〔2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、三新化学(株)製〕
顔料(イプシロンブルー) 1
酸化チタン 5
硫黄 1.2
ノクセラーDM 1
〔ジベンゾチアジルジスルフィド、大内新興化学(株)製の登録商標。〕
ノクセラーCZ 0.8
〔N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学(株)製の登録商標。〕
ノクセラーTET 1
〔テトラエチルチウラムジスルフィド、大内新興化学(株)製の登録商標。〕
(印刷ブランケットの製造)
前記支持体層の、上層基布としての綿布の表面に、上記表面印刷層用ゴム糊を塗布し、連続加硫機で加硫した後、表面を研磨して表面印刷層を形成して、表面印刷層/綿布(上層基布)/圧縮性層/綿布(下層基布)/綿布(下層基布)/綿布(下層基布)の6層構造を有する印刷ブランケットを製造した。
【0044】
加硫条件は、圧力196kPa、温度150℃、加硫時間30分間とした。
また各層の厚みは、下層基布としての3枚の綿布がそれぞれ0.3mm、圧縮性層が0.4mm、上層基布としての綿布が0.3mm、表面印刷層が0.3mm、下層基布としての3枚の綿布間、および下層基布としての一番上の綿布と圧縮性層との間のプライマーゴム糊の層(プライマー層)が0.01mmであった。
【0045】
実施例2〜10、比較例1〜7
表1、2に示す配合ゴム100重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、同じ6層構造を有する印刷ブランケットを製造した。
上記各実施例、比較例で製造した印刷ブランケットについて、下記の各試験を行ってその特性を評価した。
(トルエンに対する膨潤率測定)
実施例、比較例で製造した印刷ブランケットから一定体積の表面印刷層を切り出し、液温23℃のトルエンに24時間、浸漬したのち、アルキメデス比重計で体積増加率を測定して、トルエンに対する膨潤率(%)とした。
【0046】
(アクリルモノマーに対する膨潤率測定)
実施例、比較例で製造した印刷ブランケットから一定体積の表面印刷層を切り出し、液温23℃のアクリルモノマーに24時間、浸漬したのち、アルキメデス比重計で体積増加率を測定して、アクリルモノマーに対する膨潤率(%)とした。
(損失正接tanδの測定)
(株)レオロジー製の粘弾性スペクトロメータを用いて測定した。測定条件は、温度23℃、試験振幅50μm、初期歪み二mm(伸長)、チャック開距離20mm、周波数10Hzとした。
【0047】
損失正接tanδが小さいほど、印刷ブランケットは紙離れ性が良好である。
(実機試験)
実施例、比較例で製造した印刷ブランケットを、オフセット印刷機〔リョービ(株)製の560型〕のブランケット胴軸に装着して、印圧15/100mm、印刷速度10000枚/時の条件で、コート紙〔大王製紙(株)製のユトリロコート(登録商標)、坪量110kg〕の表面に、油性インキ〔大日本インキ化学工業(株)製のナチュラリス(登録商標)紅〕、またはUVインキ〔大日本インキ化学工業(株)製のセプター(登録商標)DT紅〕を用いて網版のベタの印刷を連続的に行った。
【0048】
そして、それぞれ100枚目の印刷面を画像処理解析装置〔ピアス社製LA555〕によって解析して輝度標準偏差を求めた。
輝度標準偏差が小さいほど、印刷ブランケットは、ベタ部の濃度が均一な、良好な印刷が可能である。
また油性インキを用いて印刷した100枚目から10枚の、印刷直後の印刷物を重ねて定盤上に置き、そのカールした高さの最高値をカール高さ(mm)として測定して、紙離れ性を評価した。
【0049】
カール高さが小さいほど、印刷ブランケットは紙離れ性が良好である。
以上の結果を表1、2に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
両表中のNBRは下記のとおり。
#1:アクリロニトリル量35%、JSR(株)製のN232S。
#2:アクリロニトリル量40.5%、日本ゼオン(株)製のNIPOL(登録商標)1041。
#3:アクリロニトリル量50%、日本ゼオン(株)製のNIPOL(登録商標)DN009。
【0053】
表1より、EPDMを単独で用いた比較例1の印刷ブランケットは、トルエンに対する膨潤率が大きすぎるため、油性インキを使用した際に、ベタ部に濃度むらを生じることがわかった。またアクリルニトリル量が35%である#1のNBRを単独で用いた比較例2の印刷ブランケットは、アクリルモノマーに対する膨潤率が大きすぎるため、UVインキを使用した際に、ベタ部に濃度むらを生じることがわかった。
【0054】
これに対し、上記のNBRとEPDMとを重量比で95/5の割合で併用することによって、配合ゴムのアクリルニトリル量を33.3%に調整した実施例1の印刷ブランケットは、トルエンおよびアクリルモノマーの両方に対して適度な膨潤率を有しており、油性インキ、UVインキの両方で、ベタ部の濃度むらのない良好な印刷が可能であることが確認された。また実施例1の印刷ブランケットは損失正接tanδが小さく、かつカール高さが小さいことから、紙離れ性に優れることも確認された。
【0055】
また、アクリロニトリル量が40.5%である#2のNBRを単独で用いた比較例3の印刷ブランケットは、前記比較例2のものに比べてトルエンおよびアクリルモノマーの両方に対して膨潤率を小さくできるが、トルエンに対する膨潤率が小さすぎて着肉性が低下する結果、油性インキを使用した際に、却ってベタ部に濃度むらを生じることがわかった。また比較例3の印刷ブランケットは損失正接が大きく、かつカール高さが大きいことから、紙離れ性も悪いことがわかった。
【0056】
また、上記#2のNBRとEPDMとを、重量比で70/30の割合で配合した比較例4の印刷ブランケットは、両者の配合割合こそこの発明で規定した範囲に入るものの、配合ゴムのアクリロニトリル量が28.4%と低いために、トルエンに対する膨潤率が大きすぎて、油性インキを使用した際に、ベタ部に濃度むらを生じることがわかった。
これに対し、上記のNBRとEPDMとを、重量比で75/25〜95/5の割合で配合してなり、なおかつ配合ゴムのアクリロニトリル量を30.4〜38.5%に調整した実施例2〜6の印刷ブランケットはいずれも、トルエンおよびアクリルモノマーの両方に対して適度な膨潤率を有しており、油性インキ、UVインキの両方で、ベタ部の濃度むらのない良好な印刷が可能であることが確認された。また実施例2〜6の印刷ブランケットはいずれも損失正接tanδが小さく、かつカール高さが小さいことから、紙離れ性に優れることも確認された。
【0057】
また表2より、アクリロニトリル量が50%である#3のNBRを単独で用いた比較例5の印刷ブランケット、並びにこの#3のNBRとEPDMとを、重量比で85/15の割合で配合してなるものの、配合ゴムのアクリロニトリル量が42.5%と高かった比較例6の印刷ブランケットはともに、前記比較例3と同様の結果を生じた。すなわち比較例5、6印刷ブランケットはともに、前記比較例2のものに比べてトルエンおよびアクリルモノマーの両方に対して膨潤率を小さくできるが、トルエンに対する膨潤率が小さすぎて着肉性が低下する結果、油性インキを使用した際に、却ってベタ部に濃度むらを生じることがわかった。また比較例5、6の印刷ブランケットはともに損失正接が大きく、かつカール高さが大きいことから、紙離れ性も悪いことがわかった。
【0058】
また#3のNBRとEPDMとを、重量比で55/45の割合で配合してなり、配合ゴムのアクリロニトリル量が27.5%と低かった比較例7の印刷ブランケットは、トルエンに対する膨潤率が大きすぎるため、油性インキを使用した際に、ベタ部に濃度むらを生じることがわかった。
これに対し、#3のNBRとEPDMとを、重量比で80/20〜60/40の割合で配合してなり、なおかつ配合ゴムのアクリロニトリル量を30〜40%に調整した実施例7〜10の印刷ブランケットはいずれも、トルエンおよびアクリルモノマーの両方に対して適度な膨潤率を有しており、油性インキ、UVインキの両方で、ベタ部の濃度むらのない良好な印刷が可能であることが確認された。また実施例7〜10の印刷ブランケットはいずれも損失正接tanδが小さく、かつカール高さが小さいことから、紙離れ性に優れることも確認された。
【0059】
さらにNBRとして、#2のNBRと#3のNBRとを併用するとともに、当該併用したNBRとEPDMとを、重量比で80/20の割合で配合してなり、なおかつ配合ゴムのアクリロニトリル量を36.2%に調整した実施例11の印刷ブランケットは、配合ゴムのアクリロニトリル量が近い実施例3や実施例8と類似した結果が得られており、このことから2種以上のNBRを併用しても、ほぼ同様の結果が得られることが確認された。
【発明の属する技術分野】
この発明は、印刷ブランケットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
印刷ブランケットを用いたオフセット印刷法においては、インキとして、油性インキ(酸化重合タイプ)やUVインキ(紫外線硬化タイプ)を用いるのが一般的である。
このうち油性インキは古くから使用され、安価で経済的である。しかしその反面、有機溶剤を含むため、作業環境等の保全のためには、その取り扱いに十分に注意を払う必要がある。
【0003】
また油性インキは、硬化するまでに比較的、長い時間を要するため、印刷物を積み重ねるいわゆる棒積み時に、上に積んだ印刷物の裏面に下側の印刷物のインキが付着するのを防止するためには、印刷後の印刷物の、表裏いずれかの面にパウダーを散布する必要がある。このため作業環境等の保全のためには、パウダーの飛散防止にも十分に注意を払わなければならない。
一方のUVインキは、紫外線照射によって瞬時に硬化するので棒積み時にパウダーを散布する必要がない上、基本的に有機溶剤を含まないため、作業環境等の保全という観点では、油性インキよりも優れている。
【0004】
しかし油性インキに比べて高価であり、しかも印刷時の取り扱いが難しいため、油性インキの全量を、UVインキに置き換えるまでには至っておらず、印刷目的等に応じて両者を使い分けているのが現状である。
ところが、油性インキとUVインキとではその組成が全く異なるため、そのそれぞれに適した特性を有する表面印刷層を備えた印刷ブランケットを、インキに応じて使い分ける必要があり、インキが替わるごとに印刷ブランケットを交換しなければならないという問題がある。
【0005】
すなわち油性インキ用としては、有機溶剤に対する耐膨潤性と加工性とを考慮して、アクリロニトリル量が31〜35%程度に調整されたアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、いわゆる中高ニトリルゴムにて表面印刷層を形成した印刷ブランケットが一般的に用いられる。
しかし中高ニトリルゴムは、UVインキ中に含まれるアクリルモノマーに対する耐膨潤性が不十分である。表面印刷層の表面は、ある程度はインキに膨潤できないと、版からのインキの転写性(着肉性)が不十分になって良好な印刷を行えないが、中高ニトリルゴムからなる表面印刷層は、UVインキに使用すると膨潤しすぎる。このため、版からのインキの転写時や被印刷物へのインキの転写時などの変形量が大きくなりすぎて、印刷品質が低下するという問題を生じる。したがって表面印刷層を中高ニトリルゴムにて形成した印刷ブランケットは、UVインキには使用することができない。
【0006】
一方、UVインキ用としては、アクリルモノマーに対する耐膨潤性に優れた、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)等の非極性のゴムにて表面印刷層を形成した印刷ブランケットが好適に用いられる。
ところがEPDM等の非極性のゴムは、逆に油性インキに含まれる有機溶剤に対する耐膨潤性が不十分であるため、前記と同じ理由で、表面印刷層を非極性のゴムにて形成した印刷ブランケットは、油性インキには使用することができない。
【0007】
このため従来は、前記のようにインキが替わるごとに、印刷ブランケットを交換する必要があった。
しかし印刷ブランケットを、張力を調整しながら印刷機のブランケット胴軸に巻き付けて固定する装着作業は決して容易ではなく、熟練した作業者であってもそれなりの時間と労力とを必要とする。
したがって、インキが替わるごとに印刷ブランケットを交換していたのでは非常に手間がかかって、印刷機の稼働率を低下させるといった問題を生じる。
【0008】
そこで特許文献1において、油性インキとUVインキの両方に使用することができ、インキが替わっても交換する必要のない印刷ブランケットが提案された。
すなわち、上記公報に記載の印刷ブランケットは、ムーニー粘度75ML1+4(100℃)以上、アクリロニトリル量31〜35%の中高ニトリルゴムと、ムーニー粘度45ML1+4(100℃)以上、アクリロニトリル量43〜50%の極高ニトリルゴムとを配合した配合ゴムにて表面印刷層を形成したものである。
【0009】
かかる印刷ブランケットにおいては、中高ニトリルゴムのムーニー粘度を上記の範囲とし、かつ極高ニトリルを加えて、配合ゴム中でのアクリロニトリル量を37〜40%に調整することによって、有機溶剤およびアクリルモノマーに対する耐膨潤性を、ともに向上している。また、極高ニトリルゴムのムーニー粘度を上記の範囲とすることによって、配合ゴムの加工性等を確保している。
しかし発明者らの検討によると、上記の表面印刷層は、ともに有機溶剤に対する耐膨潤性に優れた中高ニトリルゴムと極高ニトリルゴムとで形成されるため、特に油性インキに対する耐膨潤性が高すぎる。このため、油性インキの膨潤量が少なすぎて、当該油性インキによる印刷時に、前述した着肉性が不十分になるおそれがある。
【0010】
また上記の表面印刷層は、主に極高ニトリルゴムの特性によって、動的弾性率E’と損失弾性率E”との比E”/E’で表される損失正接tanδが大きいため、被印刷物の表面に圧接してインキを転写した後の、被印刷物のはく離のしやすさを示す紙離れ性が悪く、特に高速で連続印刷した際に紙詰まり等を生じやすくなるおそれもあった。
また特許文献2には、水素添加NBRと通常のNBRとの配合ゴムにて表面印刷層を形成した印刷ブランケットが開示されている。また特許文献3には、アクリロニトリル−ブタジエン−イソプレン共重合ゴムと、多硫化ゴムとの配合ゴムにて表面印刷層を形成した印刷ブランケットが開示されている。
【0011】
しかしこのいずれのものも、2種のゴムの配合ゴムにて表面印刷層を形成すること以外は、この発明との類似点はない。いずれの公報にも、NBRとEPDMとを所定の割合で配合することや、アクリロニトリル量を所定の範囲に調整すること、それによって油性インキとUVインキの両方について良好な印刷が可能な表面印刷層を有する印刷ブランケットを形成できることについては一切、記載されていない。
【0012】
したがってこれらの公報に記載の発明は、この発明を開示も示唆もするものではない。
【0013】
【特許文献1】
特公平7−17113号公報(第2頁左欄第33行〜第45行)
【特許文献2】
特開平5−77578号公報(第0007欄、第0008欄)
【特許文献3】
特開平7−228071号公報(第0009欄)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の目的は、油性インキおよびUVインキの両方の印刷に使用することができ、しかもこの両方のインキについて、上記のような種々の問題を生じることなく、良好な印刷を行うことが可能な、新規な印刷ブランケットを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
請求項1記載の発明は、アクリルニトリル−ブタジエン共重合ゴムと、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムとを、重量比で60/40〜95/5の割合で配合してなり、アクリロニトリル量が30〜40%である配合ゴムにて表面印刷層を形成したことを特徴とする印刷ブランケットである。
請求項1の構成では、前記従来例のように、ともに有機溶剤に対する耐膨潤性にすぐれたNBR同士(中高ニトリルゴムと極高ニトリルゴム)を配合するのではなく、NBRと、アクリルモノマーに対しては膨潤しにくいが、有機溶剤に対しては膨潤しやすいEPDMとを、上記のように重量比で60/40〜95/5の割合で配合した配合ゴムにて表面印刷層を形成している。それゆえ表面印刷層は、油性インキおよびUVインキの両方に対して良好に膨潤することができ、いずれのインキについても、着肉性の低下を生じることなく良好に印刷することができる。
【0016】
また請求項1の構成では、前述したように有機溶剤に対して膨潤しにくいNBRと、上記のようにアクリルモノマーに対して膨潤しにくいEPDMとを併用しているとともに、NBRのアクリロニトリル量を調整することによって、配合ゴムのアクリロニトリル量を30〜40%の範囲内としている。このため、かかる配合ゴムからなる表面印刷層は、油性インキおよびUVインキの両方に対して高い耐膨潤性を有しており、いずれのインキに使用した際にも膨潤しすぎることがない。よって版からのインキの転写時や、被印刷物へのインキの転写時などの変形量が大きくなりすぎて、印刷品質が低下するといった問題を生じるおそれもない。
【0017】
さらに請求項1の構成では、上記の配合ゴムにて形成することによって、表面印刷層の損失正接tanδを小さくすることもできるため、被印刷物の紙離れ性を向上して、紙詰まり等の発生をより確実に防止することもできる。
したがって請求項1の構成によれば、油性インキおよびUVインキの両方の印刷に使用することができ、しかもこの両方のインキについて種々の問題を生じることなく、良好な印刷を行うことができる印刷ブランケットを提供することが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明を説明する。
この発明の印刷ブランケットは、前述したように、NBRとEPDMとを、重量比で60/40〜95/5の割合で配合してなり、アクリロニトリル量が30〜40%である配合ゴムにて表面印刷層を形成したものである。
NBRとEPDMとの配合割合を上記の範囲に限定するのは、下記の理由による。
【0019】
すなわち、重量比で95/5よりもEPDMの割合が少ない場合には、当該EPDMを配合したことによる、前述した、表面印刷層の、有機溶剤に対する膨潤性を高めて、油性インキの着肉性を向上する効果と、アクリルモノマーに対する耐膨潤性を高めて、UVインキで印刷した際の印刷品質を向上する効果とがともに得られない。
一方、重量比で60/40よりもNBRの割合が少ない場合には、NBRにおけるアクリロニトリル量の上限が50%であるため、配合ゴムにおけるアクリロニトリル量が30%未満となり、表面印刷層の、特に有機溶剤に対する耐膨潤性が低下して、油性インキで印刷した際の印刷品質を向上する効果が得られない。
【0020】
なお、これらの効果のバランスを考慮して、より良好な印刷特性を有する印刷ブランケットを得るためには、NBRとEPDMとの配合割合は、上記の範囲内でも特に、重量比で65/35〜90/10であるのが好ましい。
またこの発明において、配合ゴムにおけるアクリロニトリル量を前記の範囲に限定するのは、下記の理由による。
すなわち、配合ゴムにおけるアクリロニトリル量が30%未満では、上に述べたように表面印刷層の、特に有機溶剤に対する耐膨潤性が低下して、油性インキで印刷した際の印刷品質を向上する効果が得られない。
【0021】
逆に、配合ゴムにおけるアクリロニトリル量が40%を超える場合には、表面印刷層の、有機溶剤に対する耐膨潤性が高くなりすぎるため、油性インキの膨潤性を高めて、当該油性インキによる印刷時に着肉性を向上する効果が得られない。
なお、これらの効果のバランスを考慮して、より良好な印刷特性を有する印刷ブランケットを得るためには、配合ゴムにおけるアクリロニトリル量は、上記の範囲内でも特に32.5〜37.5%であるのが好ましい。
【0022】
ここで言う配合ゴムのアクリロニトリル量NCR(%)とは、配合ゴムにおけるNBRの配合量WN(重量部)およびEPDMの配合量WE(重量部)と、NBRのアクリロニトリル量NN(%)とから、式(1):
NCR(%)=NN×WN/(WN+WE) (1)
によって求められる、配合ゴム中でのアクリロニトリル単位の含有割合である。配合ゴムのアクリロニトリル量NCR(%)を前記の範囲に調整するには、上記式(1)から明らかなように、NBRのアクリロニトリル量NN(%)と、配合ゴムにおけるNBRとEPDMとの配合割合を調整すればよい。
【0023】
このうちNBRのアクリロニトリル量NN(%)を調整するには、使用するNBRの種類を選択すればよい。
すなわちNBRとしては、アクリロニトリル量NN(%)によって低ニトリルゴム(18〜24%)、中ニトリルゴム(25〜30%)、中高ニトリルゴム(31〜35%)、高ニトリル(36〜42%)および極高ニトリルゴム(43〜50%)に分類される各種のNBRの中から、EPDMと所定の重量比で配合した際に、上記式(1)で求められる配合ゴムのアクリロニトリル量NCR(%)が30〜40%の範囲内となる任意のNBRを選択して使用することができる。
【0024】
なお低ニトリルゴムと中ニトリルゴムはアクリロニトリル量NN(%)が小さすぎるため、単独で、前述した重量比の範囲でEPDMと配合しても、配合ゴムのアクリロニトリル量NCR(%)を前記の範囲にできないが、中高ニトリルゴム以上の他のNBRと併用することはできる。また、中高ニトリルゴム以上の2種のNBRを併用しても良い。
一方のEPDMとしては、エチレン、プロピレン、およびジエンの各成分の割合を調整したり、あるいは新たな第4の成分などを加えたりすることによって製造された、種々の特性を有する各種のEPDMを用いることができる。
【0025】
上記NBRとEPDMとを含む配合ゴムにて表面印刷層を形成するこの発明の印刷ブランケットは、例えば下記の方法によって製造することができる。
すなわちまず、NBRとEPDMとを含む配合ゴムに、例えば加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、補強剤、充てん剤、軟化剤、可塑剤、着色剤等の各種添加剤を配合するとともに、溶剤を加得て粘度を調整して表面印刷層用のゴム糊を作製する。
【0026】
次にこのゴム糊を、基布や圧縮性層などを含む支持体層上に、所定の厚みとなるように糊引きする。
そして、例えば連続加硫機や加硫缶などを用いて所定の温度に加熱すると、糊引き層のゴムが加硫されるとともに、支持体層と一体化される。
この後、必要に応じて、加硫された糊引き層を所定の表面粗さ、および所定の厚みとなるように研磨すると、この発明の印刷ブランケットが製造される。
【0027】
あるいはまた、NBRとEPDMとを含む配合ゴムに上記各添加剤を配合したゴムコンパウンドを、支持体層上に、必要に応じて加硫接着剤を介して積層したのち、同様に連続加硫機や加硫缶などを用いて加熱したのち、同様に必要に応じて研磨することによっても、この発明の印刷ブランケットを製造することができる。
ゴム糊やゴムコンパウンドに配合する添加剤のうち加硫剤としては、例えば硫黄、有機含硫黄化合物、有機過酸化物等があげられ、このうち有機含硫黄化合物としては、例えばN,N′−ジチオビスモルホリン等があげられ、有機過酸化物としては、例えばベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等があげられる。
【0028】
また加硫促進剤としては、例えばテトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;ジブチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカーバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカーバミン酸テルル等のジチオカーバミン酸類;2−メルカプトベンゾチアゾール、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のチアゾール類;トリメチルチオ尿素、N,N′−ジエチルチオ尿素等のチオウレア類などの有機促進剤や、あるいは消石灰、酸化マグネシウム、酸化チタン、リサージ(PbO)等の無機促進剤があげられる。
【0029】
加硫促進助剤としては、例えば亜鉛華等の金属酸化物や、あるいはステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸などがあげられる。
加硫遅延剤としては、例えばサリチル酸、無水フタル酸、安息香酸等の芳香族有機酸;N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジハイドロキノン、N−ニトロソフェニル−β−ナフチルアミン等のニトロソ化合物などがあげられる。
【0030】
老化防止剤としては、例えば2−メルカプトベンゾイミダゾール等のイミダゾール類;フェニル−α−ナフチルアミン、N,N′−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン等のアミン類;ジ−t−ブチル−p−クレゾール、スチレン化フェノール等ノフェノール類などがあげられる。
補強剤としてはカーボンブラック、シリカ系あるいはケイ酸塩系のホワイトカーボン、亜鉛華、表面処理沈降性炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー等の無機補強剤や、あるいはクマロンインデン樹脂、フェノール樹脂、ハイスチレン樹脂(スチレン含有量の多いスチレン−ブタジエン共重合体)等の有機補強剤も使用できる。
【0031】
また充てん剤としては、例えば炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム、珪藻土、マイカ、アスベスト、グラファイト等の無機充てん剤や、あるいは再生ゴム、粉末ゴム、アスファルト類、スチレン樹脂、にかわ等の有機充てん剤などがあげられる。
軟化剤としては、例えば脂肪酸(ステアリン酸、ラウリン酸等)、綿実油、トール油、アスファルト物質、パラフィンワックス等の、植物油系、鉱物油系、および合成系の各種軟化剤があげられる。
【0032】
可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジルフォスフェート等の各種可塑剤があげられる。
着色剤としては各色の顔料等があげられる。
上記以外にもゴムには、例えば粘着性付与剤、分散剤、溶剤等を適宜、配合してもよい。
表面印刷層とともに印刷ブランケットを形成する支持体層としては、例えば合成あるいは天然繊維からなる基布や、多孔質構造を有する圧縮性層などを適宜の層数と配置で積層した多層構造を有するものが好適に使用される。
【0033】
このうち圧縮性層としては、各種ゴムに発泡剤を配合して加硫とともに発泡させるか、あるいは中空状の微小粒子を配合することで形成した独立気孔構造を有するものや、あるいはゴムに食塩の粒子を分散させて加硫したのち、温水によって食塩の粒子を溶解除去して形成した連続気孔構造を有するものを用いることができる。
かくして製造されたこの発明の印刷ブランケットは、前述したように表面印刷層が、油性インキに含まれる有機溶剤、およびUVインキに含まれるアクリルモノマーに対して適度な膨潤性を有している。
【0034】
表面印刷層が、有機溶剤およびアクリルモノマーに対してどの程度の膨潤性を有しているかについては特に限定されないものの、有機溶剤の代表例としてのトルエンに対する膨潤率は85〜145%であるのが好ましく、95〜135%であるのがさらに好ましい。また、かかる膨潤率を有する表面印刷層は、同時にアクリルモノマーに対する膨潤率が5〜35%であるのが好ましく、10〜30%であるのがさらに好ましい。
【0035】
トルエンに対する膨潤率が上記の範囲未満では、表面印刷層の、有機溶剤に対する耐膨潤性が高くなりすぎるため、油性インキの膨潤性を高めて、当該油性インキによる印刷時に着肉性を向上する効果が得られないおそれがある。
また逆に、トルエンに対する膨潤率が上記の範囲を超える場合には、表面印刷層の、有機溶剤に対する耐膨潤性が低すぎて、油性インキで印刷した際の印刷品質を向上する効果が得られないおそれがある。
【0036】
また同様に、アクリルモノマーに対する膨潤率が上記の範囲未満では、表面印刷層の、アクリルモノマーに対する耐膨潤性が高くなりすぎるため、油性インキの場合と同様に、UVインキの膨潤性を高めて、当該UVインキによる印刷時に着肉性を向上する効果が得られないおそれがある。
また逆に、アクリルモノマーに対する膨潤率が上記の範囲を超える場合には、アクリルモノマーに対する耐膨潤性を高めて、UVインキで印刷した際の印刷品質を向上する効果が得られないおそれがある。
【0037】
これに対し、有機溶剤およびアクリルモノマーに対する膨潤率が前記の範囲内にあり、良好な膨潤性を有する表面印刷層を備えたこの発明の印刷ブランケットによれば、油性インキおよびUVインキのいずれを使用した場合にも、良好な印刷を行うことができる。
すなわち、印刷のベタ部の濃度むらを規定するベタ部の輝度標準偏差が、油性インキを使用した印刷の場合と、UVインキを使用した印刷の場合とでともに10以下であるような、ベタ部の濃度の均一な印刷を行うことが可能となる。
【0038】
【実施例】
以下にこの発明を、実施例、比較例に基づいて説明する。
実施例1
(プライマーゴム糊の調製)
下記の各成分を、その総重量の2倍量のトルエンと配合してプライマーゴム糊を調製した。
【0039】
(成分) (重量部)
NBR 100
〔JSR(株)製のN232S、アクリロニトリル量35%〕
クマロン樹脂 15
亜鉛華 5
ステアリン酸 1
ジオクチルアジペート 5
硫黄 2
ノクセラーDM 1
〔ジベンゾチアジルジスルフィド、大内新興化学(株)製の登録商標。〕
ノクセラーTT 1
〔テトラメチルチウラムジスルフィド、大内新興化学(株)製の登録商標。〕
(圧縮性層用ゴム糊の調製)
下記の各成分を、その総重量の2倍量のトルエンと配合して圧縮性層用ゴム糊を調製した。
【0040】
(成分) (重量部)
NBR 100
〔日本ゼオン(株)製のNIPOL(登録商標)DN202、アクリロニトリル量31%〕
カーボンブラックHAF 40
亜鉛華 5
ステアリン酸 1
ジオクチルアジペート 5
硫黄 2
ノクセラーDM 1
〔ジベンゾチアジルジスルフィド、大内新興化学(株)製の登録商標。〕
ノクセラーTT 1
〔テトラメチルチウラムジスルフィド、大内新興化学(株)製の登録商標。〕
マイクロバルーン 7
〔松本油脂製薬(株)製のマツモトマイクロスフェアー(登録商標)F50D〕
(支持体層の作製)
1枚の綿布の片面に前記プライマーゴム糊を塗布した後、その上に別の綿布を貼り合せる作業を繰り返して、3枚の綿布を積層した。
【0041】
また、別に用意した1枚の綿布の片面に、上記圧縮性層用ゴム糊を塗布した後、連続加硫機で加硫して、独立気孔構造を有する圧縮性層を形成した。加硫条件は、圧力19.6kPa、温度140℃、加硫時間30分間とした。
そして先の積層体の、露出した綿布の表面に、前記プライマーゴム糊を塗布した後、その上に圧縮性層を貼り合せて、綿布(上層基布)/圧縮性層/綿布(下層基布)/綿布(下層基布)/綿布(下層基布)の5層構造を有する支持体層を作製した。
【0042】
(表面印刷層用ゴム糊の調製)
NBR〔アクリロニトリル量35%、JSR(株)製のN232S〕と、EPDM〔住友化学工業(株)製のエスプレン(登録商標)505A〕とを、重量比で95/5の割合で配合して配合ゴムとした。この配合ゴムにおけるアクリロニトリル量は33.3%であった。
次にこの配合ゴム100重量部を含む下記の各成分を、その総重量の2倍量のトルエンと配合して表面印刷層用ゴム糊を調製した。
【0043】
(成分) (重量部)
配合ゴム 100
シリカ 10
〔日本シリカ工業(株)製のNipsil(登録商標)VN3〕
亜鉛華1号 3
ジオクチルフタレート 5
ステアリン酸 1
老化防止剤2246 1
〔2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、三新化学(株)製〕
顔料(イプシロンブルー) 1
酸化チタン 5
硫黄 1.2
ノクセラーDM 1
〔ジベンゾチアジルジスルフィド、大内新興化学(株)製の登録商標。〕
ノクセラーCZ 0.8
〔N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学(株)製の登録商標。〕
ノクセラーTET 1
〔テトラエチルチウラムジスルフィド、大内新興化学(株)製の登録商標。〕
(印刷ブランケットの製造)
前記支持体層の、上層基布としての綿布の表面に、上記表面印刷層用ゴム糊を塗布し、連続加硫機で加硫した後、表面を研磨して表面印刷層を形成して、表面印刷層/綿布(上層基布)/圧縮性層/綿布(下層基布)/綿布(下層基布)/綿布(下層基布)の6層構造を有する印刷ブランケットを製造した。
【0044】
加硫条件は、圧力196kPa、温度150℃、加硫時間30分間とした。
また各層の厚みは、下層基布としての3枚の綿布がそれぞれ0.3mm、圧縮性層が0.4mm、上層基布としての綿布が0.3mm、表面印刷層が0.3mm、下層基布としての3枚の綿布間、および下層基布としての一番上の綿布と圧縮性層との間のプライマーゴム糊の層(プライマー層)が0.01mmであった。
【0045】
実施例2〜10、比較例1〜7
表1、2に示す配合ゴム100重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、同じ6層構造を有する印刷ブランケットを製造した。
上記各実施例、比較例で製造した印刷ブランケットについて、下記の各試験を行ってその特性を評価した。
(トルエンに対する膨潤率測定)
実施例、比較例で製造した印刷ブランケットから一定体積の表面印刷層を切り出し、液温23℃のトルエンに24時間、浸漬したのち、アルキメデス比重計で体積増加率を測定して、トルエンに対する膨潤率(%)とした。
【0046】
(アクリルモノマーに対する膨潤率測定)
実施例、比較例で製造した印刷ブランケットから一定体積の表面印刷層を切り出し、液温23℃のアクリルモノマーに24時間、浸漬したのち、アルキメデス比重計で体積増加率を測定して、アクリルモノマーに対する膨潤率(%)とした。
(損失正接tanδの測定)
(株)レオロジー製の粘弾性スペクトロメータを用いて測定した。測定条件は、温度23℃、試験振幅50μm、初期歪み二mm(伸長)、チャック開距離20mm、周波数10Hzとした。
【0047】
損失正接tanδが小さいほど、印刷ブランケットは紙離れ性が良好である。
(実機試験)
実施例、比較例で製造した印刷ブランケットを、オフセット印刷機〔リョービ(株)製の560型〕のブランケット胴軸に装着して、印圧15/100mm、印刷速度10000枚/時の条件で、コート紙〔大王製紙(株)製のユトリロコート(登録商標)、坪量110kg〕の表面に、油性インキ〔大日本インキ化学工業(株)製のナチュラリス(登録商標)紅〕、またはUVインキ〔大日本インキ化学工業(株)製のセプター(登録商標)DT紅〕を用いて網版のベタの印刷を連続的に行った。
【0048】
そして、それぞれ100枚目の印刷面を画像処理解析装置〔ピアス社製LA555〕によって解析して輝度標準偏差を求めた。
輝度標準偏差が小さいほど、印刷ブランケットは、ベタ部の濃度が均一な、良好な印刷が可能である。
また油性インキを用いて印刷した100枚目から10枚の、印刷直後の印刷物を重ねて定盤上に置き、そのカールした高さの最高値をカール高さ(mm)として測定して、紙離れ性を評価した。
【0049】
カール高さが小さいほど、印刷ブランケットは紙離れ性が良好である。
以上の結果を表1、2に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
両表中のNBRは下記のとおり。
#1:アクリロニトリル量35%、JSR(株)製のN232S。
#2:アクリロニトリル量40.5%、日本ゼオン(株)製のNIPOL(登録商標)1041。
#3:アクリロニトリル量50%、日本ゼオン(株)製のNIPOL(登録商標)DN009。
【0053】
表1より、EPDMを単独で用いた比較例1の印刷ブランケットは、トルエンに対する膨潤率が大きすぎるため、油性インキを使用した際に、ベタ部に濃度むらを生じることがわかった。またアクリルニトリル量が35%である#1のNBRを単独で用いた比較例2の印刷ブランケットは、アクリルモノマーに対する膨潤率が大きすぎるため、UVインキを使用した際に、ベタ部に濃度むらを生じることがわかった。
【0054】
これに対し、上記のNBRとEPDMとを重量比で95/5の割合で併用することによって、配合ゴムのアクリルニトリル量を33.3%に調整した実施例1の印刷ブランケットは、トルエンおよびアクリルモノマーの両方に対して適度な膨潤率を有しており、油性インキ、UVインキの両方で、ベタ部の濃度むらのない良好な印刷が可能であることが確認された。また実施例1の印刷ブランケットは損失正接tanδが小さく、かつカール高さが小さいことから、紙離れ性に優れることも確認された。
【0055】
また、アクリロニトリル量が40.5%である#2のNBRを単独で用いた比較例3の印刷ブランケットは、前記比較例2のものに比べてトルエンおよびアクリルモノマーの両方に対して膨潤率を小さくできるが、トルエンに対する膨潤率が小さすぎて着肉性が低下する結果、油性インキを使用した際に、却ってベタ部に濃度むらを生じることがわかった。また比較例3の印刷ブランケットは損失正接が大きく、かつカール高さが大きいことから、紙離れ性も悪いことがわかった。
【0056】
また、上記#2のNBRとEPDMとを、重量比で70/30の割合で配合した比較例4の印刷ブランケットは、両者の配合割合こそこの発明で規定した範囲に入るものの、配合ゴムのアクリロニトリル量が28.4%と低いために、トルエンに対する膨潤率が大きすぎて、油性インキを使用した際に、ベタ部に濃度むらを生じることがわかった。
これに対し、上記のNBRとEPDMとを、重量比で75/25〜95/5の割合で配合してなり、なおかつ配合ゴムのアクリロニトリル量を30.4〜38.5%に調整した実施例2〜6の印刷ブランケットはいずれも、トルエンおよびアクリルモノマーの両方に対して適度な膨潤率を有しており、油性インキ、UVインキの両方で、ベタ部の濃度むらのない良好な印刷が可能であることが確認された。また実施例2〜6の印刷ブランケットはいずれも損失正接tanδが小さく、かつカール高さが小さいことから、紙離れ性に優れることも確認された。
【0057】
また表2より、アクリロニトリル量が50%である#3のNBRを単独で用いた比較例5の印刷ブランケット、並びにこの#3のNBRとEPDMとを、重量比で85/15の割合で配合してなるものの、配合ゴムのアクリロニトリル量が42.5%と高かった比較例6の印刷ブランケットはともに、前記比較例3と同様の結果を生じた。すなわち比較例5、6印刷ブランケットはともに、前記比較例2のものに比べてトルエンおよびアクリルモノマーの両方に対して膨潤率を小さくできるが、トルエンに対する膨潤率が小さすぎて着肉性が低下する結果、油性インキを使用した際に、却ってベタ部に濃度むらを生じることがわかった。また比較例5、6の印刷ブランケットはともに損失正接が大きく、かつカール高さが大きいことから、紙離れ性も悪いことがわかった。
【0058】
また#3のNBRとEPDMとを、重量比で55/45の割合で配合してなり、配合ゴムのアクリロニトリル量が27.5%と低かった比較例7の印刷ブランケットは、トルエンに対する膨潤率が大きすぎるため、油性インキを使用した際に、ベタ部に濃度むらを生じることがわかった。
これに対し、#3のNBRとEPDMとを、重量比で80/20〜60/40の割合で配合してなり、なおかつ配合ゴムのアクリロニトリル量を30〜40%に調整した実施例7〜10の印刷ブランケットはいずれも、トルエンおよびアクリルモノマーの両方に対して適度な膨潤率を有しており、油性インキ、UVインキの両方で、ベタ部の濃度むらのない良好な印刷が可能であることが確認された。また実施例7〜10の印刷ブランケットはいずれも損失正接tanδが小さく、かつカール高さが小さいことから、紙離れ性に優れることも確認された。
【0059】
さらにNBRとして、#2のNBRと#3のNBRとを併用するとともに、当該併用したNBRとEPDMとを、重量比で80/20の割合で配合してなり、なおかつ配合ゴムのアクリロニトリル量を36.2%に調整した実施例11の印刷ブランケットは、配合ゴムのアクリロニトリル量が近い実施例3や実施例8と類似した結果が得られており、このことから2種以上のNBRを併用しても、ほぼ同様の結果が得られることが確認された。
Claims (1)
- アクリルニトリル−ブタジエン共重合ゴムと、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムとを、重量比で60/40〜95/5の割合で配合してなり、アクリロニトリル量が30〜40%である配合ゴムにて表面印刷層を形成したことを特徴とする印刷ブランケット。
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JP2011173376A (ja) * | 2010-02-25 | 2011-09-08 | Sumitomo Rubber Ind Ltd | 印刷ブランケット |
CN103804732A (zh) * | 2014-02-21 | 2014-05-21 | 河北春风银星胶辊有限公司 | 一种uv油墨与普通油墨两用印刷胶辊的包覆胶胶料 |
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- 2002-09-19 JP JP2002273853A patent/JP2004106418A/ja active Pending
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