JP3788857B2 - 印刷用ブランケット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は印刷用ブランケットに関し、より詳しくは、高速印刷時における印刷適性、とりわけ排紙性が向上した印刷用ブランケットに関する。
【0002】
【従来の技術】
平板オフセット印刷に使用される印刷用ブランケットは、通常、内部に多孔質の圧縮性層を有することのある支持体層上に表面印刷層を設けたものである。
このうち表面印刷層には、通常、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)等の、高い耐油性を有するゴム材料が用いられている。特にNBRは、JISK 6384に規定の結合アクリロニトリル量(AN量)が多いほどポリマーの極性が高くなり、その結果、インキの溶剤が浸透しにくくなって耐油性が向上する。このため、表面印刷層用のゴムには、AN量の多いNBR、具体的にはAN量が31%以上36%未満である中高ニトリルNBRや、AN量が36%以上である高ニトリルNBRが広く用いられている(特公平7−110554号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、中高ニトリルNBRや高ニトリルNBRは、AN量が多いことに起因してポリマーの変形に伴う内部摩擦が大きい。このため、エネルギーロスも大きくなり、その結果、粘着性が高くなる。従って、かかるNBRからなる表面印刷層を有するブランケットは排紙性(紙離れ性)が低いといった問題がある。
【0004】
このようなブランケットを高速印刷に使用すると、印刷紙とオフセットブランケットの間に生じる粘着力によって、スラー、ダブリ等の印刷障害が生じたり、印刷紙にカールや破断が生じる。なお、ここでいうダブリとは、網点がずれて二重に印刷される現象であって、特に紙が排紙される方向へのずれによって生じやすい。かかるダブリが発生すると網点が大きくなるため、その網点によって表現された部分の色が、他の部分よりも濃くなってしまう。また、スラーとは、網点の形状がいびつになって、ひげや尻尾状のものが現れる現象である。
【0005】
また、オフセット輪転機に使用すると、ブランケットに印刷紙が貼りついて汚れてしまう、いわゆるデラミネーションが発生する。さらに、ブランケットの表面にインキがのりにくく、ベタ着肉性が低くなるという問題もある。
一方、従来より排紙性を改善するために、表面印刷層の表面を粗くしたり、表面印刷層に用いるゴム材料の硬度を高くしたりする等の試みがなされている。しかしながら、表面印刷層の表面を粗くすると網点の形状が悪くなって網点再現性が損なわれてしまい、表面印刷層を硬くするとベタ部分におけるインキの着肉性がより一層低下し、印刷品質が低下してしまう。
【0006】
そこで本発明の目的は、印刷品質の低下や製造工程の煩雑化を招くことなく、排紙性やベタ着肉性が改良された印刷用ブランケットを提供することである。
本発明の他の目的は、排紙性やベタ着肉性に優れ、かつ耐久性にも優れた印刷用ブランケットを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、支持体層と、この支持体層上に設けられた表面印刷層とからなる印刷用ブランケットにおいて、
前記表面印刷層を構成するゴム組成物中のポリマー成分が、
結合アクリロニトリル量が25%以上31%未満のアクリロニトリル−ブタジエンゴムと、結合アクリロニトリル量が31%以上36%未満のアクリロニトリル−ブタジエンゴムとの組み合わせ、または、
結合アクリロニトリル量が25%未満のアクリロニトリル−ブタジエンゴムと、結合アクリロニトリル量が25%以上31%未満のアクリロニトリル−ブタジエンゴムと、結合アクリロニトリル量が31%以上36%未満のアクリロニトリル−ブタジエンゴムとの組み合わせ、からなり、
前記ポリマー成分100重量部のうち、結合アクリロニトリル量が25%以上31%未満のアクリロニトリル−ブタジエンゴムの含有割合が、20〜80重量部であり、かつ、
結合アクリロニトリル量が25%未満のアクリロニトリル−ブタジエンゴムの含有割合が、10重量部以下であるときは、スラー、ダブリ、デラミネーション等の印刷障害やベタ着肉性の低下が生じることなく、表面印刷層の耐油性を維持しつつ、優れた排紙性をも有するという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
AN量が25%以上31%未満である中ニトリルNBRは、中高ニトリルNBRや高ニトリルNBRに比べて耐油性の点で劣っている。しかしながら、中ニトリルNBRはエネルギーロスが小さく、粘着性が低いことから、これを表面印刷層用のゴムとして使用した場合には、中高ニトリルNBRや高ニトリルNBRを使用した場合に比べて排紙性が著しく向上する。
【0010】
すなわち上記本発明によれば、表面印刷層用のゴム組成物に所定量の中ニトリルNBRを配合することにより、耐油性を維持しつつ、優れた排紙性を有する印刷用ブランケットを得ることができる。
なお、上記AN量とは、JIS K 6384 「合成ゴムNBRの試験方法」−5.3に規定の「結合アクリロニトリル量」に準拠して、ケルダール装置を用いて測定した。
【0011】
また、上記本発明の印刷用ブランケットにおいて、表面印刷層を構成するゴム組成物が、当該ゴム組成物中のポリマー成分100重量部に対して、シランカップリング剤0.1〜5重量部と含水シリカ10〜40重量部とを含有するときは、表面印刷層の耐油性がより一層向上する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の印刷用ブランケットについて、その一例を示す図1を参照しつつ詳細に説明する。
本発明の印刷用ブランケット10は、支持体層12とその表面に設けた表面印刷層11とからなる。
【0013】
表面印刷層11を構成するゴム組成物としては、当該ゴム組成物中のポリマー成分100重量部に対して、結合アクリロニトリル量が25%以上31%未満であるアクリロニトリル−ブタジエンゴム(中ニトリルNBR)を20〜80重量部の割合で含有するものが用いられる。
上記中ニトリルNBRは、その結合アクリロニトリル量(AN量)が上記範囲内でもさらに26〜29%であるのが好ましい。当該NBRのAN量が31%以上になると、排紙性やベタ着肉性を向上させる効果が得られなくなるために好ましくない。逆にAN量が25%を下回ると、表面印刷層の耐油性が極めて低くなり、ひいては、印刷用ブランケットの耐久性が著しく低下するために好ましくない。
【0014】
AN量が上記範囲を満足する中ニトリルNBRとしては、例えば日本ゼオン(株)製の商品名「ニッポール(Nipol)」、バイエル社製の商品名「クライナック」、日本合成ゴム(株)製のNBR等があげられる。
また、上記中ニトリルNBRの含有割合は、ポリマー成分100重量部に対して20〜80重量部であり、好ましくは20〜50重量部である。中ニトリルNBRの含有割合が20重量部を下回ると、排紙性やベタ着肉性を向上させる効果が得られなくなるために好ましくない。一方、中ニトリルNBRの含有割合が20〜50重量部の範囲内にあるときは、極めて優れた耐油性を示す表面印刷層を得ることができ、その結果、排紙性やベタ着肉性だけでなく、耐久性にも優れた印刷用ブランケットが得られる。
【0016】
なお、表面印刷層11を構成するポリマー成分に占めるNBRの割合が小さくなると耐油性が低下しやすくなる。表面印刷層11の耐油性の観点から、前記ポリマー成分に占めるNBRの含有割合を、当該NBRのAN量に関わらず、ポリマー成分100重量部に対して100重量部とするのが適当である。
【0017】
AN量が25%以上31%未満の範囲以外のNBRとしては、低ニトリルNBR(AN量が25%未満のNBR)、中高ニトリルNBR(AN量が31%以上36%未満のNBR)および高ニトリルNBR(AN量が36%以上のNBR)に分けられる。
本発明におけるポリマー成分において、上記例示のNBRのうち、低ニトリルNBRの含有量が多くなると、耐油性が低下しやすくなる。このため、低ニトリルNBRの含有量をポリマー成分100重量部に対して20重量部以下、好ましくは10重量部以下とするのが適当である。また、ポリマー成分中には低ニトリルNBRを全く配合しないのがより好ましい。
【0018】
また、ポリマー成分における高ニトリルNBRの含有量が多くなると、エネルギーロスが大きくなって排紙性が低下しやすくなる。このため、高ニトリルNBRの含有量をポリマー成分100重量部に対して20重量部以下、好ましくは10重量部以下とするのが適当である。また、ポリマー成分中には高ニトリルNBRを全く配合しないのがより好ましい。
【0019】
一方、中高ニトリルNBRは、AN量が25%以上31%未満である中ニトリルNBRと混合して用いるのに最も適している。具体的には、ポリマー成分100重量部に対して、中ニトリルNBRの含有量を上記範囲に設定するとともに、中ニトリルNBRと中高ニトリルNBRとの割合を70重量部以上、好ましくは80重量部以上、より好ましくは90重量部以上、なかんづく100重量部とすることによって、極めて優れた耐油性、排紙性、ベタ着肉性および耐久性を達成することができる。
【0020】
表面印刷層11を構成するゴム組成物には、シランカップリング剤を配合してもよい。かかるシランカップリング剤としては、例えば一般式(1) :
【0021】
【化1】
【0022】
(式中、Rはビニル基、グリシジル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基またはイミド基を示し、Xはアルコキシ基または塩素原子を示す。)
または一般式(2) :
【0023】
【化2】
【0024】
(式中、nは1〜4の整数を表し、mおよびkは同一または異なって1〜6の整数を表す。)
で表される化合物が使用可能である。
上記一般式(1) 中の基Xで表されるアルコキシ基としては、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等の炭素数が1〜6の基があげられる。
【0025】
一般式(1) で表されるシランカップリング剤の具体例としては、例えばビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等があげられる。
【0026】
一般式(2) で表されるシランカップリング剤の具体例としては、例えばビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン〔デグッサ社製の商品名「Si69」〕等があげられる。
上記シランカップリング剤の配合量は、表面印刷層用ゴム組成物におけるポリマー成分100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜3重量部の範囲で設定するのが適当である。シランカップリング剤の配合量が上記範囲を下回ると、耐油性を向上させる効果が得られなくなる。一方、上記範囲を超えて配合しても耐油性を向上させる効果に変化がなく、かえってコストアップにつながるために好ましくない。
【0027】
表面印刷層11を構成するゴム組成物には、含水シリカをも配合してもよい。かかる含水シリカとしては、例えば従来公知の種々のシリカゲル、コロイダルシリカ等が使用可能である。
上記含水シリカの配合量は、上記ポリマー成分100重量部に対して10〜40重量部、好ましくは15〜30重量部の範囲で設定するのが適当である。含水シリカの配合量が上記範囲を下回ると、耐油性を向上させる効果が得られなくなる。一方、上記範囲を超えて配合すると、表面印刷層の硬度が高くなりすぎてしまう。この結果、印刷機へのブランケットの装着性が悪化しやすくなり、またヒステリシスロスが大きくなって排紙性が低下し易くなったり、ベタ着肉性も低下し易くなるといった問題が生じる。
【0028】
上記シランカップリング剤および含水シリカを配合する場合には、表面印刷層用ゴム組成物中のポリマー成分がすべて中ニトリルNBRからなる場合であっても、上記シランカップリング剤および含水シリカの作用により、十分な耐油性を得ることができ、その結果、排紙性およびベタ着肉性だけでなく、耐久性にも優れた印刷用ブランケットを得ることができる。
【0029】
表面印刷層11は、上記ゴム材料に、所定量の加硫剤、加硫促進剤および必要に応じて充填剤等を配合し、これをトルエン、メチルエチルケトン等に溶解させてゴム糊とした後、後述する支持体層13上に所定の厚みになるまでブレードコーティングすることによって作製される。
表面印刷層11の厚みは特に限定されないが、通常、0.05〜0.8mm、好ましくは0.1〜0.6mm、より好ましくは0.2〜0.4mmの範囲で設定するのが適当である。表面印刷層11の厚みが上記範囲を下回ると、基布の模様が印刷画像に現れるおそれがある。逆に厚みが上記範囲を超えると、印刷時のひずみが大きくなりすぎて印刷品質が低下するおそれがある。
【0030】
表面印刷層11の硬度は特に限定されないが、JIS A硬度で50〜70°、好ましくは55〜65°の範囲に調整するのが適当である。表面印刷層11の硬度が上記範囲を下回ると、印刷時のひずみが大きくなりすぎて排紙性が低下し、見当合わせの精度も低下するおそれがある。逆に硬度が上記範囲を超えると、表面印刷層の柔軟性が不十分になるため、ベタ着肉性が低下するおそれがある。
【0031】
また、表面印刷層11の表面粗さも特に限定されないが、10点平均粗さRZ で10μm以下であるのが好ましい。表面印刷層11の表面粗さが上記範囲を超えると、印刷された網点の形状が乱れるなどして、印刷品質が低下するという問題が生じる。
上記表面印刷層11用のゴム中に含まれる加硫剤としては、例えばテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、N,N′−ジチオビスモルホリン等の有機含硫黄化合物や硫黄等があげられる。また、加硫剤として有機過酸化物系の架橋剤を使用することもできる。有機過酸化物系架橋剤の具体例としては、tert−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート等があげられる。
【0032】
また、加硫促進剤としては、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(OBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)等のチアゾール類が主促進剤として挙げられ、必要に応じて、1,3−ジフェニルグアニジン(DPG)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、ジメチルジチオカーバミン酸亜鉛(ZnMDC)、エチルフェニルジチオカーバミン酸亜鉛(ZnEPDC)、および加硫剤のところで挙げたテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)等を2次促進剤として適宜配合することもできる。
【0033】
充填剤としては、炭酸カルシウム、ハードクレー、ソフトクレー、無水珪酸、硫酸バリウム、珪藻土、タルク、マイカ、アスベスト、グラファイト、軽石等の無機充填剤;再生ゴム、粉末ゴム、アスファルト類、スチレン樹脂、にかわ等の有機充填剤が挙げられる。
本発明の印刷用ブランケット10において、支持体層12は、複数(図では4つ)の基布層(補強層)13a,13b,13c,13dと、必要に応じて設けられる少なくとも1層の圧縮性層14とを積層して作製されるものである。
【0034】
基布層13a,13b,13c,13dは、綿、ポリエステル、レーヨン等の織布または不織布からなる基布にゴム糊を含浸させたものであって、なかでも伸び取り加工を施した織布が好ましい。基布層用ゴム糊には、例えばアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)等のゴム材料に、所定量の加硫剤、加硫促進剤および必要に応じて増粘剤等を配合したものが用いられる。
【0035】
基布層の厚みは特に限定されないが、通常、0.15〜0.5mm、好ましくは0.20〜0.45mmの範囲で設定するのが適当である。また、支持体層12全体の厚みは、後述する圧縮性層14の厚み等に応じて設定されるものであるが、通常1.45〜1.85mm、好ましくは1.55〜1.75mmの範囲で設定される。なお、基布層の数は、製品に要求される特性等に応じて適宜設定すればよく、通常1〜5層であるのが好ましい。
【0036】
なお、本発明においては、上記基布層13a,13b,13c,13dに代えて、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ナイロン等の合成樹脂製のフィルムや、あるいはアルミニウム、ステンレス等の金属の薄板を用いることもできる。
圧縮性層14を構成するゴムとしては特に限定されないが、例えばアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム(U)等の、インキや洗浄液に対する耐性を有する耐油性のゴムが好適に使用される。
【0037】
圧縮性層14は、上記ゴム材料に、所定量の加硫剤、加硫促進剤および必要に応じて増粘剤等を配合し、さらに後述する発泡剤あるいは中空微粒子等の充填剤を必要に応じて配合したものを前記基布層上にコーティングし、次いで加硫することによって形成される。また、前記発泡剤や中空微粒子に代えて食塩を配合したものを用いて、加硫後に水等によって食塩を溶出させることによって圧縮性層を形成することもできる。
【0038】
圧縮性層14に使用するゴムの硬度は特に限定されないが、JIS A硬度で40〜80°、好ましくは45〜75°、より好ましくは50〜70°の範囲に調整するのが適当である。圧縮性層14の硬度が上記範囲を下回ると、圧縮性層14、ひいては印刷用ブランケット10自体の復元性が低下してヘタリが生じたり、印刷に必要な印圧が得られなくなるおそれがある。逆に硬度が上記範囲を超えると、圧縮性が低下して印圧の調整が不十分になるおそれがある。 圧縮性層14の厚みは特に限定されないが、通常、0.1〜0.8mm、好ましくは0.2〜0.5mmの範囲で設定するのが適当である。圧縮性層14の厚みが上記範囲を下回ると、圧縮性が低下して印圧の調整が不十分になるおそれがある。逆に厚みが上記範囲を超えると、印刷時のひずみが大きくなりすぎて印刷品質が低下するおそれがある。
【0039】
圧縮性層14は、前述のように多孔質の弾性部材からなるものであって、該層内部の各気孔がそれぞれ独立した独立気孔構造のものと、各気孔が互いに連通した連続気孔構造のものとがある。本発明ではこのいずれの構造であってもよく、両方の構造を併用してもよい。
上記のうち独立気孔構造の圧縮性層は、例えば加熱分解してガスを発生する発泡剤を未加硫のゴム中に分散して、ゴムの加硫と同時に発泡させる方法や、あるいはゴム中に中空微粒子を分散させる方法(マイクロバルーン法)によって形成される。一方、連続気孔構造の圧縮性層は、未加硫のゴム中に食塩等の抽出可能な粒子を分散し、加硫後に、ゴムの性質に影響を及ぼさない溶媒(食塩の場合は水)により上記粒子を抽出する方法(リーチング法)によって形成される。
【0040】
圧縮性層14内の気孔(空隙)の割合(以下、「空隙率」という)は特に限定されないが、通常、30〜70%、好ましくは35〜60%、より好ましくは40〜55%の範囲に調整するのが適当である。圧縮性層14の空隙率が上記範囲を下回ると、圧縮性が低下して印圧の調整が不十分になるおそれがある。逆に空隙率が上記範囲を超えると、復元性が低下してヘタリが生じたり、印刷に必要な印圧が得られなくなるおそれがある。
【0041】
本発明の印刷用ブランケット10は、上記支持体層12上に、プライマー層を介して前述の表面印刷層用ゴム糊をコーティングして、こうして得られた積層体を所定の圧力と温度で加熱加圧して加硫させることによって得られる。
こうして得られた印刷用ブランケットは、直接または下貼材を介してブランケット胴のシリンダの周面上に装着して使用される。
【0042】
【実施例】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を説明する。
実施例1〜7および比較例1〜3
(印刷用ブランケットの作製)
下記の条件にて図1に示す印刷用ブランケット10を作製した。
【0043】
(i) 支持体層12の作製
基布として綿布、ポリエステルおよびレーヨンの繊維を組み合わせてなる混紡織物を用いた。この基布に含浸させるゴム糊には、結合アクリロニトリル量(AN量)が32%であるアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)100重量部に対して、沈降炭酸カルシウム30重量部、ジオクチルアジペート10重量部、酸化チタン5重量部、亜鉛華3重量部、ステアリン酸1重量部、硫黄1重量部および加硫促進剤(チアゾール類)2重量部を配合し、トルエンおよびメチルエチルケトンに溶解させたものを用いた。
【0044】
上記基布上に、上記の基布層用ゴム糊を糊引きして、ゴム糊によるゴムの厚みを0.08mmに調整した。こうして得られた3枚の基布をロールで圧着させて基布層13a,13bおよび13cを積層した。
次いで、前出のNBR100重量部に対して、カーボンブラック45重量部、亜鉛華5重量部、ステアリン酸1重量部、ジオクチルアジペート5重量部、硫黄1重量部および加硫促進剤(チアゾール類)2重量部を配合し、トルエン/メチルエチルケトンに溶解させ、さらに食塩粒子(粒径1〜50μm)を配合して、圧縮性層用ゴム糊を得た。
【0045】
この圧縮性層用ゴム糊を基布層13dに塗布した後、リーチング法によって厚さ0.5mm、空隙率50体積%の圧縮性層14を上記基布層13dに形成した。
次いで、この圧縮性層14の露出したゴム面上に基布層用ゴム糊を糊引きし、この糊引きした面を上記基布層13a,13bおよび13cからなる積層体の基布層13cの露出面と貼り合わせた後、ロールで加圧して密着させて、支持体層12を作製した。
【0046】
(ii)表面印刷層11の作製
表面印刷層用ゴム糊としては、ポリマー成分としてのアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)にハードクレー(充填剤)を表1に示す割合で混合し、さらにポリマー成分(NBR)の総量100重量部に対して、亜鉛華3重量部、ステアリン酸1重量部、ジオクチルアジペート5重量部、硫黄1重量部、加硫促進剤(チアゾール類)2重量部をトルエン/メチルエチルケトンに溶解させたものを用いた。
【0047】
上記NBRには、日本ゼオン(株)製の「DN2850(AN量=28%)」、「DN315(AN量=26%)」、「1043(AN量=29%)」(以上、中ニトリルNBR)、「1042(AN量=33.5%)」(中高ニトリルNBR)および「DN402(AN量=22%)」(低ニトリルNBR)のいずれかを単独でまたは2種を組み合わせて用いた。
【0048】
上記支持体層12上に、表1に示した表面印刷層用ゴム糊をブレードコーティング法にて糊引きし、乾燥させて、厚さ0.4mmの表面印刷層11を形成した。
(iii) 加硫・成形
上記(i) および(ii)の方法によって得られた未加硫の積層体を、圧力1kg/cm2 、温度150℃で加硫・成形した。加硫後、表面印刷層の表面の10点平均粗さ(Rz、JIS B 0601−1982)が3〜6μmになるように研磨して、図1に示す印刷用ブランケット10を得た。
【0049】
(印刷試験)
上記各実施例および比較例の印刷用ブランケットを用いて印刷試験を行い、排紙性、ベタ着肉性および耐久性を評価した。
印刷試験は、各ブランケット(厚さ1.95mm)をオフセット印刷機(リョービ社製の560型)のブランケット胴に装着して、コート紙(大王製紙(株)製の「ユトリロコート110kg」)への印刷により行った。印刷速度は10,000枚/時間であった。
【0050】
なお、上記各項目の評価基準は次のとおりである。
(a) 排紙性
総ベタで印刷したコート紙を10枚重ね、紙がカールしているくわえじり部分の高さh(mm)を測定した。カールの高さが低いほど排紙性が良好であることを示す。排紙性の評価基準は次のとおりである。
【0051】
◎ 0≦h<5 排紙性が極めて良好であった。
〇 5≦h<10 排紙性が実用上十分であった。
△ 10≦h<15 排紙性が実用上不十分であった。
× 15≦h 排紙性が極めて低かった。
(b) ベタ着肉性
画像解析によってベタ部分の濃度分布を調べ、その標準偏差(n)を求めた。標準偏差が小さいほどベタ着肉性が良好であることを示す。ベタ着肉性の評価基準は次のとおりである。
【0052】
◎ n≦7 ベタ着肉性が極めて良好であった。
〇 7<n≦9 ベタ着肉性が実用上十分であった。
△ 9<n≦11 ベタ着肉性が実用上不十分であった。
× 11<n ベタ着肉性が極めて低かった。
(c) 耐久性
オフセット輪転印刷機(三菱重工業(株)製の「リソピア」)にて500万枚の印刷を行った後、ブランケットの表面を観察し、目視で評価した。
【0053】
◎:表面印刷層の切れおよび磨耗は観察されず、耐久性が極めて良好であった。
〇:切れおよび摩耗が僅かに観察されたものの、耐久性は良好であった。
△:切れおよび摩耗が多く観察されたものの、耐久性は実用に供することができるレベルであった。
【0054】
×:表面印刷層の切れおよび磨耗によって、500万枚の印刷を最後まで行うことができず、耐久性が不十分であった。
以上の結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例8〜16および比較例4
表面印刷層用ゴム糊として、前出のNBR(ポリマー成分)とシランカップリング剤(デグッサ社製の「Si69」、前出)と含水シリカ(日本シリカ社製の「ニプシールVN3」)とを表2に示す割合で混合し、さらにポリマー成分の総量100重量部に対して亜鉛華3重量部、ステアリン酸1重量部、ジオクチルアジペート5重量部、硫黄1重量部、加硫促進剤(チアゾール類)2重量部をトルエン/メチルエチルケトンに溶解させたものを用いたほかは、実施例1〜7および比較例1〜3と同様にして、印刷用ブランケット10を得た。
【0057】
上記実施例および比較例で得られたブランケットを用いて、前述と同様にして印刷試験を行い、排紙性、ベタ着肉性および耐久性を評価した。その結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
実施例17、18および比較例5、6
中ニトリルNBRと中高ニトリルNBRの配合量を代えたほかは、実施例10と同様にして、印刷用ブランケット10を得た。
上記実施例および比較例で得られたブランケットを用いて、前述と同様にして印刷試験を行い、排紙性、ベタ着肉性および耐久性を評価した。その結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
表1〜3より明らかなように、ポリマー成分中に中ニトリルNBRを所定の割合で含むゴム組成物を用いて表面印刷層を作製した実施例1〜18によれば、排紙性およびベタ着肉性のいずれにおいても良好な結果が得られた。また、表面印刷層は十分な耐油性を有するため、印刷用ブランケットの耐久性も実用上十分であった。
【0062】
とりわけ、シランカップリング剤および含水シリカを所定量配合した実施例8〜18では、排紙性および着肉性が優れているとともに、表面印刷層の耐油性が極めて良好で、優れた耐久性を示した。
これに対し、比較例1〜6によれば、中高ニトリルNBRの割合が多いものは排紙性および着肉性が低く、低ニトリルNBRを用いたものは耐久性が低いという結果が得られた。また、含水シリカの含有量が多過ぎると、排紙性や着肉性が低下し、シランカップリング剤を配合せずに含水シリカのみを配合すると、表面印刷層のtanδが上昇して排紙性が低下した。
【0063】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、排紙性、ベタ着肉性および耐油性(耐久性)に優れた印刷用ブランケットが得られる。
従って、本発明の印刷用ブランケットは、特にオフセット輪転機における高速印刷等の用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の印刷用ブランケットの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
10 印刷用ブランケット
11 表面印刷層
12 支持体層
14 圧縮性層
Claims (2)
- 支持体層と、前記支持体層上に設けられた表面印刷層とからなる印刷用ブランケットにおいて、
前記表面印刷層を構成するゴム組成物中のポリマー成分が、
結合アクリロニトリル量が25%以上31%未満のアクリロニトリル−ブタジエンゴムと、結合アクリロニトリル量が31%以上36%未満のアクリロニトリル−ブタジエンゴムとの組み合わせ、または、
結合アクリロニトリル量が25%未満のアクリロニトリル−ブタジエンゴムと、結合アクリロニトリル量が25%以上31%未満のアクリロニトリル−ブタジエンゴムと、結合アクリロニトリル量が31%以上36%未満のアクリロニトリル−ブタジエンゴムとの組み合わせ、からなり、
前記ポリマー成分100重量部のうち、結合アクリロニトリル量が25%以上31%未満のアクリロニトリル−ブタジエンゴムの含有割合が、20〜80重量部であり、かつ、
結合アクリロニトリル量が25%未満のアクリロニトリル−ブタジエンゴムの含有割合が、10重量部以下である
ことを特徴とする、印刷用ブランケット。 - 前記ゴム組成物は、前記ポリマー成分100重量部に対して、シランカップリング剤0.1〜5重量部と、含水シリカ10〜40重量部とが含有されたものであることを特徴とする、請求項1記載の印刷用ブランケット。
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