JP3836757B2 - オレフィンの重合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はオレフィンの重合方法に関する。更に詳しくは、特定の高い重合活性を有する重合触媒を用いて、工業的なスケールでの連続運転を長期間にわたり可能なオレフィンの重合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オレフィンを重合してオレフィン重合体を製造するにあたり、(1)メタロセン化合物および(2)層状珪酸塩等からなる触媒を用いる方法が提案されている(特開平5−301917号、同8−127613号公報等)。
これらの触媒を用いた重合方法は、従来のいわゆるメチルアルモキサンをシリカ、アルミナ等の無機酸化物もしくは有機物等の担体に担持して用いる方法(特開昭60−35007号、同61−31404号、同61−108610号、同61−276805号、同61−296008号公報等)と比較して遷移金属当たり、Al当たりだけでなく、固体成分当たりの重合活性が高い。また、助触媒である層状珪酸塩を噴霧造粒によって球状にして触媒粒子および製品ポリマー粒子の流動性を改良する試みもある(特開平7−228621号公報等)。
【0003】
しかし、これらの触媒でオレフィンを重合した場合、重合活性が未だ不十分であったり、重合初期の反応性(いわゆる初期活性)が低かったりして、重合反応器内で凝集、付着を起こしやすい微粉粒子、すなわち低活性粒子が増え、安定な重合運転の妨げとなったり、粒子毎に組成のばらつきを生じて低融点粒子が生成して、凝集、付着を増長して重合反応器内壁面、製品抜出配管内壁、重合ガス循環系配管等に付着ポリマーや塊状ポリマーが生成し、工業的に長期にわたる重合運転は困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高いオレフィン重合活性を有しながらも、反応器内壁面、配管内壁面での付着ポリマーの生成や閉塞塊状物の生成が無く、オレフィン重合体を工業的に長期間にわたり安定して製造することが可能なオレフィン重合用触媒を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、高い重合活性と適度に高い初期活性を有する触媒を創生し、これを用いてオレフィンの重合を行えば、重合反応器中で速やかに粒子径が増大して、凝集・付着といった微粉発生のトラブルを防ぐことができ、また流動性に優れたオレフィン重合体粒子が製造可能となることを見出した。重合反応器の中に投入された直後の触媒粒子は、その粒子径が他の重合粒子に比べて小さいため、反応器壁面への粒子付着、粒子同士の凝集、反応器からの飛散等が起こりやすく、重合の安定運転の障害となりやすい。本発明では、これらの障害を防止するため、重合反応器に投入された触媒は速やかに重合反応が進行し、その粒子径を増加させる。このために、本発明においては、特定のメタロセン成分[後述するA1]、成分[A2]を助触媒である層状珪酸塩と共に同一触媒上に共存させることによって、各々の成分単独では為し得なかった活性効率の向上が、二成分の相乗効果によって初めて達成できることを見出し本発明に到達した。
即ち、本発明の要旨は、共役五員環配位子を少なくとも1個有するハフニウム化合物または下記一般式[20]
【化7】
(式中、A及びA’は同一又は異なる共役五員環構造を有する配位子を示し、Qは2つの共役五員環配位子を任意の位置で架橋する結合性基、XおよびYは同一又は異なるMと結合した水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を示す。)で表される架橋ジルコニウム化合物[A1]、下記一般式[5]
【化8】
(式中、A及びA’は同一又は異なる共役五員環構造を有する配位子を示し、XおよびYは同一又は異なるジルコニウムと結合した水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を示す。)で表される非架橋型のジルコニウム化合物[A2]及び層状珪酸塩[B]を含むオレフィン重合用触媒の存在下に、(a)エチレンと、(b)炭素数3〜20のα−オレフィンの少なくとも一種とを共重合することを特徴とするオレフィンの重合方法に存する。
また、本発明の他の要旨は、前記[A1]がハフニウム化合物である前記のオレフィンの重合方法に存する。
また、本発明の他の要旨は、前記[A1]が、前記一般式[1]で表されるハフニウム化合物である前記のオレフィンの重合方法に存する。
また、本発明の他の要旨は、前記[A1]が、前記一般式[2]で表されるメタロセン系化合物である前記のオレフィンの重合方法に存する。
また、本発明の他の要旨は、前記の一般式[1]または[2]におけるA及びA’が、1位及び/又は3位に置換基を有するシクロペンタジエニル基である前記のオレフィンの重合方法に存する。
また、本発明の他の要旨は、前記一般式[5]のA及びA’が、1位及び/又は3位に置換基を有するシクロペンタジエニル基である前記のオレフィンの重合方法に存する。
また、本発明の他の要旨は、前記[B]層状珪酸塩が、スメクタイト族である前記のオレフィンの重合方法に存する。
また、本発明の他の要旨は、前記オレフィン重合用触媒を予めオレフィンと接触させて、[B]層状珪酸塩1g当たり0.01〜1000gのオレフィンを予備重合する前記のオレフィンの重合方法に存する。
また、本発明の他の要旨は、前記(b)α−オレフィンが少なくとも1−ヘキセンを含む前記のオレフィンの重合方法に存する。
また、本発明の他の要旨は、オレフィンを気相にて重合する前記のオレフィンの重合方法に存する。
また、本発明の他の要旨は、得られるオレフィン共重合体が、密度0.890〜0.930g/cm3、MI0.1〜20g/10分を満たすエチレン・α−オレフィン共重合体である前記のオレフィンの重合方法に存する。
また、本発明の他の要旨は、共役五員環配位子を少なくとも1個有するハフニウム化合物または下記一般式[20]
【化9】
(式中、A及びA’は同一又は異なる共役五員環構造を有する配位子を示し、Qは2つの共役五員環配位子を任意の位置で架橋する結合性基、XおよびYは同一又は異なるMと結合した水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を示す。)で表される架橋ジルコニウム化合物[A1]、前記一般式[5]で表される非架橋型のジルコニウム化合物[A2]及び層状珪酸塩[B]を含む、(a)エチレンと、(b)炭素数3〜20のα−オレフィンの少なくとも一種との気相共重合用触媒に存する。
なお、本明細書において、(i)「共役五員環配位子を少なくとも1個有するハフニウム化合物または一般式 [ 20 ] で表される架橋ジルコニウム化合物」を、[A1]又は成分[A1]ということがあり、(ii)「一般式[5]で表される非架橋型のジルコニウム化合物」を、[A2]又は成分[A2]ということがあり、(iii)[A1]と[A2]を総称して、[A]又は成分[A]ということがあり、(iv)層状珪酸塩を、[B]又は成分[B]ということがあり、(v)有機アルミニウム化合物を、[C]又は成分[C]ということがある。
【0006】
【発明の実施の形態】
〔[A]〕
<共役五員環配位子を少なくとも1個有するハフニウム化合物または架橋ジルコニウム化合物[A1]>
本発明で用いられる好ましい[A1]は、下記一般式[1]
【化6】
(式中、A及びA’は同一又は異なる共役五員環構造を有する配位子を示し、XおよびYは同一又は異なるハフニウムと結合した水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を示す。)で表されるハフニウム化合物である。
また、同様に好ましい[A1]は、下記一般式[2]
【化7】
(式中、A及びA’は同一又は異なる共役五員環構造を有する配位子を示し、Qは2つの共役五員環配位子を任意の位置で架橋する結合性基、Mはハフニウム原子またはジルコニウム原子を、XおよびYは同一又は異なるMと結合した水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を示す。)で表される架橋メタロセン系化合物である。
【0007】
この共役五員環配位子の好ましい典型例としては、共役炭素五員環配位子、すなわちシクロペンタジエニル基であり、このシクロペンタジエニル基はその水素原子が置換基で置換されていてもよい。
【0008】
シクロペンタジエニル基の置換基としては、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12の炭化水素基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素)、アルコキシ基(例えばC1〜C12のもの)、ケイ素含有炭化水素基(例えばケイ素原子を−Si(R1)(R2)(R3)の形で含む炭素数1〜24程度の基)、リン含有炭化水素基(例えば、リン原子を−P(R1)(R2)の形で含む炭素数1〜18程度の基)、窒素含有炭化水素基(例えば、窒素原子を−N(R1)(R2)の形で含む炭素数1〜18程度の基)あるいはホウ素含有炭化水素基(例えば、ホウ素原子を−B(R1)(R2)の形で含む炭素数1〜18程度の基)が好ましく挙げられる。
【0009】
この置換基は、これが複数存在するときにそのうちの2個がそれぞれ他端(ω−端)で結合してシクロペンタジエニル基の一部とともに環を形成していてもよい。好ましくは、隣接した置換基の炭素原子を共有して縮合六員環であるインデニル環骨格を形成してもよく、縮合六員環がシクロペンタジエニル基の共役位置に2個結合したフルオレニル環を形成しても良く、及び縮合七員環であるアズレニル環を形成してもよい。
【0010】
Qは、二つの共役五員環配位子A、A’間を任意の位置で架橋する結合性基(架橋性基)を表す。結合性基Qは、良く知られており、架橋性を有する基であれば、特に制限はないが、その好ましい具体例は以下の通りである。
(イ)メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、フェニルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキシレン基等の炭素数1〜20のアルキレン基、(ロ)シリレン基、ジメチルシリレン基、フェニルメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、ジシリレン基、テトラメチルジシリレン基等のシリレン基、(ハ)ゲルマニウム、リン、窒素、ホウ素あるいはアルミニウムを含む炭化水素基、具体的には(CH3)2Ge基、(C6H5)2Ge基、(CH3)P基、(C6H5)P基、(C4H9)N基、(C6H5)N基、(CH3)B基、(C4H9)B基、(C6H5)B基、(C6H5)Al基、(CH3O)Al基等が挙げられる。これらのうち特に好ましいものは、アルキレン基、特にはエチレン基、イソプロピレン基、およびシリレン基、特にはジメチルシリレン基である。
【0012】
XおよびYは、各々水素、ハロゲン原子、炭素数1〜20、好ましくは1〜10の炭化水素基、炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜20、好ましくは1〜12のリン含有炭化水素基(具体的には、例えばジフェニルホスフィン基)、あるいは炭素数1〜20、好ましくは1〜12のケイ素含有炭化水素基(具体的には、例えばトリメチルシリル基、ビス(トリメチルシリル)メチル基)である。XとYとは同一であっても異なってもよい。これらのうちハロゲン原子、特に塩素原子、炭化水素基(特に炭素数1〜8のもので、特にはメチル基)およびアミノ基、特にジエチルアミノ基が好ましい。
【0013】
従って、本発明によるオレフィン重合用触媒において、一般式[1]または[2]もしくは[20]で、A、A’として、特に好ましいものは、シクロペンタジエニル、n−ブチル−シクロペンタジエニル、ジメチル−シクロペンタジエニル、ジエチル−シクロペンタジエニル、エチル−n−ブチル−シクロペンタジエニル、エチル−メチル−シクロペンタジエニル、n−ブチル−メチル−シクロペンタジエニル、インデニル、2−メチル−インデニル、2−メチル−4−フェニルインデニル、テトラヒドロインデニル、2−メチル−テトラヒドロインデニル、2−メチル−ベンゾインデニル、4−ヒドロアズレニル、2,4−ジメチルヘキサヒドロアズレニル、2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル、2−メチル−4−フェニル−ヘキサヒドロアズレニルであり、これらにおいて、置換基の位置としては、1位及び又は3位が好ましい。また、X、Yとしては、塩素原子、メチル、ジエチルアミノが特に好ましい。
【0014】
また、一般式[2]もしくは[20]におけるQとして、特に好ましくは、エチレン、ジメチルシリレン、イソプロピレンが特に好ましい。A、A’、X、Y、Qとして列挙したこれら具体的基からの全ての組み合わせが好ましい成分[A1]となる。さらには、特に好ましい[A1]は、一般式[1]において、A、A’が炭素数1〜20のアルキル基で2置換又は1置換されたもので、ここで2置換の場合は、シクロペンタジエニル基の1位と3位にそれぞれ置換基を有する化合物か、二つの置換基が互いに縮合してインデニル環を形成していてもよいシクロペンタジエニル基である化合物か、或いは一般式[2] もしくは[20]において、Qがエチレン基であり、A、A’が炭素数1〜20のアルキル基で2置換又は1置換され、ここで2置換の場合は互いに縮合してインデニル環を形成していてもよいシクロペンタジエニル基である。
【0015】
本発明において、成分[A1]は、同一の一般式で表される化合物群内において、および(または)異なる一般式で表される化合物間において二種以上の化合物の混合物として用いることができる。以下、MがHf原子の場合として具体的に好ましい化合物例を示す。
【0016】
(I)一般式[1]で表される化合物:
(1)ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、
(2)ビス(メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、
(3)ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、
【0017】
(4)ビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、
(5)ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、
(6)ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、
【0018】
(7)ビス(i−プロピルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、
(8)ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、
(9)ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル、
【0019】
(10)ビス(n−ブチル−メチル−シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、
(11)(シクロペンタジエニル)(エチル−メチル−シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、
(12)ビス(インデニル)ハフニウムジクロリド、
【0020】
(13)ビス(テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド、
(14)ビス(2−メチルテトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド、
(15)ビス(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、
(16)ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル、
(17)(シクロペンタジエニル)(アズレニル)ハフニウムジクロリド等、
【0021】
(II)一般式[2]で表される化合物:
(1)メチレンビス(インデニル)ハフニウムジクロリド、
(2)エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド、
(3)エチレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,5’−ジメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、
【0022】
(4)イソプロピリデンビス(インデニル)ハフニウムジクロリド、
(5)イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、
(6)エチレン(2,5−ジエチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、
【0023】
(7)ジクロロ{1,1’−ジメチルメチレンビス[2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ハフニウム、
(8)ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド、
(9)ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド、
【0024】
(10)ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ハフニウムジクロリド、
(11)ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ハフニウムジクロリド、
(12)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、
【0025】
(13)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、
(14)ジメチルシリレン(3−tert−ブチル−シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、
(15)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
【0026】
(16)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
(17)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)]ハフニウムジクロリド、
(18)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス[2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル]}ハフニウム、
【0027】
(19)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス[2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−5,6,7,8−テトラヒドロアズレニル]}ハフニウム、等、
【0031】
また、上記(I)〜(II)の化合物の塩素を臭素、ヨウ素、ヒドリド、メチル、フェニル、ジエチルアミド基等に置き換えたものも使用可能である。なお、上記例示において、シクロペンタジエニル環の二置換体は1,2−および1,3−置換体を含み、三置換体は1,2,3−および1,2,4−置換体を含む。
【0032】
なお、これらのメタロセン系遷移金属化合物に不斉炭素が生じる場合には、特に記載が無い場合、立体異性体の1つまたはその混合物(ラセミ体を含む)を示す。また成分[A1]は2種類以上を使用してもよい。
【0033】
<共役五員環配位子を少なくとも1個有する非架橋型のジルコニウム化合物[A2]>
本発明で用いられる[A2]は、下記一般式[5]で表される化合物である。
【化8】
[式中、A及びA’は同一又は異なる共役五員環構造を有する配位子を、XおよびYは同一又は異なるZrと結合した水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を、それぞれ示す。]
【0034】
一般式[5]の化合物は、前述の成分[A1]を表す前記一般式[ 1 ]の化合物の中心遷移金属元素のハフニウムをジルコニウムに変えただけのものである。従って、一般式[5]の説明は一般式 [1]での説明が全てここでも参照される。
【0035】
このうち非架橋型のジルコニム化合物成分 [ A2 ]として、好ましい化合物は、A、A’が、シクロペンタジエニル、n−ブチル−シクロペンタジエニル、ジメチル−シクロペンタジエニル、ジエチル−シクロペンタジエニル、エチル−n−ブチル−シクロペンタジエニル、エチル−メチル−シクロペンタジエニル、n−ブチル−メチル−シクロペンタジエニル、インデニル、2−メチル−インデニル、2−メチル−4−フェニルインデニル、テトラヒドロインデニル、2−メチル−テトラヒドロインデニル、2−メチル−ベンゾインデニル、4−ヒドロアズレニル、2,4−ジメチルヘキサヒドロアズレニル、2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル、2−メチル−4−フェニル−ヘキサヒドロアズレニルである化合物であり、これらにおいて、置換基の位置としては、1位及び/又は3位が好ましい。また、X、Yとしては、塩素原子、メチル、ジエチルアミノが特に好ましい。
【0036】
さらには、特に好ましいジルコニウム化合物[A2]は、一般式[5]において、A、A’が炭素数1〜20のアルキル基で3〜1置換されたものか無置換のもので、ここで3置換又は2置換の場合は、シクロペンタジエニル基の少なくとも1位と3位にそれぞれ置換基を有する化合物か、二つの置換基が互いに縮合してインデニル環を形成していてもよいシクロペンタジエニル基である化合物である。最も好ましくは、[A2]は、一般式[5]において、A、A’が炭素数1〜20のアルキル基で2置換されたものである。
【0037】
かかる好ましいジルコニウム化合物を例示すると下記の通りである。
(1)ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(2)ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(3)ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(4)ビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(5)ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(6)ビス(エチル−n−ブチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
【0038】
(7)ビス(n−ブチル−メチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(8)(シクロペンタジエニル)(n−ブチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(9)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
(10)ビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
(11)ビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
(12)ビス(2−メチルテトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
【0039】
(13)ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、
(14)ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジフェニル、
(15)ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、
(16)ビス(1−n−ブチル−3−メチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、
(17)(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
(18)(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
(19)(シクロペンタジエニル)(アズレニル)ジルコニウムジクロリド等、
【0040】
<成分[A1]と成分[A2]の組合せ>
本発明において、[A1]と[A2]の特に好ましい組合せの具体例は、以下の[A1]と[A2]の組み合わせである。
[A1]:
(1)ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、
(2)ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル、
(3)ビス(i−プロピルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、
(4)ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、
(5)ビス(1−n−ブチル−3−メチル−シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、
(6)ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド、
(7)ビス(2−メチル−(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル))ハフニウムジクロリド、
(8)1,2−エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
(9)1,2−エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド
[A2]:
(1)ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(2)ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(3)ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、
(4)ビス(1−n−ブチル−3−メチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(5)ビス(1−n−ブチル−3−メチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、
(6)ビス(1,2,3−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(7)ビス(1,3,4−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(8)ビス(2−メチル−(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル))ジルコニウムジクロリド
【0041】
<層状珪酸塩[B]>
本発明に用いられる[B]は、粘土鉱物の大部分を占めるものである。好ましくはイオン交換性層状珪酸塩である。層状珪酸塩とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物でる。大部分の層状珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出するが、これら、層状珪酸塩は特に天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
【0042】
層状珪酸塩の具体例としては、例えば、白水晴雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)等に記載される公知の層状珪酸塩であって、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、テニオライト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、ソーコナイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。
【0043】
これらの中では、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライト等のスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族が好ましい。
スメクタイト族の代表的なものとしては、一般にはモンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ノントロライト、ヘクトライト、ソーコナイト等である。「ベンクレイSL」(水澤化学工業社製)、「クニピア」、「スメクトン」(いずれもクニミネ工業社製)、「モンモリロナイトK10」(アルドリッチ社製、ジュートヘミー社製)、「K−Catalystsシリーズ」(ジュートヘミー社製)等の市販品を利用することもできる。雲母族の代表的なものとしては、白雲母、パラゴナイト、金雲母、黒雲母、レピドライト等がある。市販品の「合成雲母ソマシフ」(コープケミカル社製)、「フッ素金雲母」、「フッ素四ケイ素雲母」、「テニオライト」(いずれもトピー工業社製)等の市販品を利用することもできる。特に好ましいのは、スメクタイト族である。
【0044】
一般に、天然品は、非イオン交換性(非膨潤性)であることが多く、その場合は好ましいイオン交換性(ないし膨潤性)を有するものとするために、イオン交換性(ないし膨潤性)を付与するための処理を行うことが好ましい。そのような処理のうちで特に好ましいものとしては次のような化学処理があげられる。
すなわち、これらの層状珪酸塩は化学処理を施したものであることが好ましい。ここで化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と層状珪酸塩の結晶構造、化学組成に影響を与える処理のいずれをも用いることができる。具体的には、(イ)酸処理、(ロ)アルカリ処理、(ハ)塩類処理、(ニ)有機物処理等が挙げられる。
【0045】
これらの処理は、表面の不純物を取り除く、層間の陽イオンを交換する、結晶構造中のAl、Fe、Mg等の陽イオンを溶出させる等の作用をし、その結果、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体等を形成し、表面積や層間距離、固体酸性度等を変えることができる。これらの処理は単独で行ってもよいし、2つ以上の処理を組み合わせてもよい。
化学処理に用いられる(イ)酸としては、合目的的な無機酸あるいは有機酸、好ましくは例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸等があげられ、(ロ)アルカリとしては、NaOH、KOH、NH3等があげられる。(ハ)塩類としては、2族から14族原子からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子を含む陽イオンと、ハロゲン原子または無機酸もしくは有機酸由来の陰イオンからなる群より選ばれた少なくとも1種の陰イオン、とからなる化合物が好ましい。
【0046】
更に好ましいものは、Li、Mg、Ca、Al、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mn、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、GeまたはSn由来のイオンを陽イオンとするもの、Cl、SO4、NO3、OH、C2H4およびPO4由来のイオンを陰イオンとするもの、である。
(ニ)有機物としては、アルコール(炭素数1〜4の脂肪族アルコール、好ましくは例えばメタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、炭素数6〜8の芳香族アルコール、好ましくは例えばフェノール)、高級炭化水素(炭素数5〜10、好ましくは5〜8、のもの、好ましくは例えばヘキサン、ヘプタン等)があげられる。 また、ホルムアミド、ヒドラジン、ジメチルスルホキシド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアニリン等が好ましくあげられる。塩類及び酸は、2種以上であってもよい。
【0047】
塩類処理と酸処理を組み合わせる場合においては、塩類処理を行った後、酸処理を行う方法、酸処理を行った後、塩類処理を行う方法、及び塩類処理と酸処理を同時に行う方法がある。塩類及び酸による処理条件は、特には制限されないが、通常、塩類および酸濃度は、0.1〜50重量%、処理温度は室温〜沸点、処理時間は、5分〜24時間の条件を選択して、層状珪酸塩を構成している物質の少なくとも一部を溶出する条件で行うことが好ましい。また、塩類及び酸は、トルエン、n−ヘプタン、エタノール等の有機溶媒中、または塩類、酸が処理温度において液体状であれば、無溶媒で用いることもできるが、好ましくは水溶液として用いられる。
【0048】
本発明の成分[B]は、全ての工程の前、間、後のいずれの時点においても、粉砕、造粒、分粒、分別等によって粒子性状を制御することができる。その方法は合目的的な任意のものであり得る。特に造粒法について示せば、例えば噴霧造粒法、転動造粒法、圧縮造粒法、撹拌造粒法、ブリケッティング法、コンパクティング法、押出造粒法、流動層造粒法、乳化造粒法および液中造粒法等が挙げられる。特に好ましい造粒法は、上記の内、噴霧造粒法、転動造粒法および圧縮造粒法である。
【0049】
成分[A1]、成分[A2]、成分[B]の接触は特に限定されないが、以下のような接触順序で接触させることができる。
a.成分[A1]と成分[A2]を接触させた後に成分[B]と接触する。
b.成分[A1]と成分[B]を接触させた後に成分[A2]と接触する。
c.成分[A2]と成分[B]を接触させた後に成分[A1]と接触する。
その他、三成分を同時に接触してもよい。
【0050】
成分[A1]および成分[A2]の使用量は、成分[B]1g当たり、各々通常0.001〜10000mmol、好ましくは0.001〜1mmol、更に好ましくは0.005〜0.5mmolである。また、成分[A1]と成分[A2]の使用比は、両者の和に対するmol比で、一般的には、
[A1]/([A1]+[A2])=0.05〜0.95、好ましくは、0.15〜0.85、更に好ましくは、0.25〜0.75 である。ただし、この使用比率は、成分[A1]、成分[A2]各々の化合物と成分[B]から形成される活性点の重合活性が大きく異なる場合は、成分[A1]、成分[A2]、成分[B]、必要に応じて有機アルミニウム化合物[C]を接触させてなる触媒が合目的的なものとなっておれば、上に述べた使用比率の範囲によって、本発明が限定されることにはならないことは当然である。
【0051】
<有機アルミニウム化合物[C]>
本発明において[C]は、必要に応じて使用される、次の一般式で示される化合物である。
AlR8 jX3-j
(式中、R8 はC1〜C20の炭化水素基、Xは水素、ハロゲン、アルコキシ基、jは0<j≦3の数)で示されるトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウムまたはジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムメトキシド等のハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。またこの他、メチルアルミノキサン等のアルミノキサン等も使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
成分[C]の使用は、触媒を被毒化合物との接触による失活から保護したり、活性点の形成を促進するので、好ましい。成分[C]を使用する場合の、成分[A1]、成分[A2]、成分[B]、成分[C]の接触順序は合目的的であれば特に限定されないが、好ましい接触順序としては、最初に成分[B]と成分[C]を接触させ、次いで該接触生成物に成分[A1]および成分[A2]を接触させる方法を例示することができる。この際、成分[A1]および成分[A2]が成分[B]に効率良く担持されるように、少なくとも10分以上、好ましくは30分以上の十分に長い接触時間を取ることが好ましいが、高温における接触は成分[A1]および成分[A2]の変質反応や不均一な担持状態の形成を促進することで不均一な重合反応活性点を生成し、重合活性の分布や、生成重合体の分子量分布、共重合組成分布、立体規則性分布を誘発することとなるので、本発明の効果を減ずることがある。これらを防止するためには、モノマーの不在下における接触温度は100℃以下、好ましくは80℃以下、更に好ましくは50℃以下とし、併せて、不均一な重合活性点を除去することを目的とした溶媒等による触媒洗浄を、該接触後に実施することが好ましい。洗浄に使用する溶媒としては、触媒を失活させる官能基を有さないものであれば任意に選択できるが、例としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の脂肪族アルカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン等の芳香族化合物、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン等の液状α−オレフィンを例示することができる。これらの溶媒を使用した洗浄によって、実質的に強固な担持状態を形成した成分[A1]および成分[A2]由来の活性点のみから形成された触媒が最も好ましい。
【0052】
触媒成分として更にホウ素化合物、例えばトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素に代表されるルイス酸、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートに代表されるアニオン性化合物等を使用することもできる。
【0053】
成分[C]の使用量は、成分[B]1g当たり、0.01〜10000mmol、好ましくは0.1〜100mmol、更に好ましくは0.2〜10mmolである。また、成分[A1]、成分[A2]を合わせた遷移金属と成分[C]中のアルミニウムの原子比が1:0.01〜1000000、好ましくは0.1〜100000、更に好ましくは0.5〜100である。
【0054】
成分[A]、成分[B]などを含む触媒をオレフィン重合用(本重合)の触媒として使用する前に、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレン、非共役ジエン等のオレフィンを予備的に少量重合する(予備重合)することができる。好ましいオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンであり、更に好ましくは、エチレンである。予備重合した触媒は、本重合の際に安定であるので、粒子破砕による微粉ポリマーの生成を防ぎ、流動性に優れた重合体粒子を製造できる。重合反応が安定運転できるので好ましい。また、予備重合工程には、活性点の形成を促進するという利点が存在する。すなわち、予備重合を実施することによって、成分[B]が予備重合触媒粒子内で微分散化されることにより、その表面積が増加し、新たな重合活性前駆点が形成されること、または、予備重合ポリマーが重合活性点を包含することによって、当該活性点と被毒物との接触が制限されて、失活が防止できること、などの工業的な取り扱い上の利点が挙げられる。
【0055】
このエチレン等による予備的な重合は、その効果が失われない限りにおいて、触媒製造の全工程の、前、間、後、いずれにおいても実施可能であり、不活性溶媒中または無溶媒中(あるいは液状α−オレフィンを予備重合に使用する場合は該α−オレフィン中でもよい)、上記各成分の接触下、必要に応じて新たに前記成分[C]のような有機アルミニウムを追加して、エチレン等を供し、触媒中の成分[B]1g当たり0.01〜1000g、好ましくは0.1〜100gの重合体が生成するように行うことが望ましい。予備重合温度は通常−100〜100℃、好ましくは−60〜100℃、であり、予備重合時間は通常0.1〜100時間、好ましくは0.1〜20時間である。
均一な重合活性点形成および予備重合触媒粒子形成のためには、予備重合工程の初期においては50℃以下の比較的低温かつ低モノマー供給速度といった穏やかな予備重合反応条件を採用して、過激な重合反応を抑えることも好ましい。この場合、低モノマー供給速度とは予備重合ポリマーの生成速度が1時間当たり、成分[B]1g当たり、0.01g以上10.0g以下、好ましくは6.0g以下、更に好ましくは3.0g以下を可能とする速度を指し、具体的な供給速度としても同じく1時間当たり、成分[B]1g当たり、0.01g以上10.0g以下、好ましくは6.0g以下、更に好ましくは3.0g以下を指す。併せて、成分[A1]、成分[A2]、成分[B]、成分[C]の好ましい接触順序で記述した方法と同様の、不均一な重合活性点を除去することを目的とした溶媒等による触媒洗浄を、該予備重合工程後に実施することも効果的である。この触媒洗浄は、予備重合工程で触媒粒子の破砕から微粉が生成した場合、該微粉の除去にも効果的であるので実施が望ましい。
【0056】
オレフィンの重合反応は、上記で得られた触媒成分を用いて行われるが、必要に応じて有機アルミニウム化合物を用いる。この際、用いられる有機アルミニウム化合物としては、前記成分[C]と同様な化合物が挙げられる。この際に用いられる有機アルミニウム化合物の量は、触媒成分[A]中の遷移金属対有機アルミニウム化合物中のアルミニウムのモル比が1:0〜10000になるように選ぶのが好ましい。
上記のようなオレフィン重合用触媒により重合できるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ビニルシクロアルカン、スチレンあるいはこれらの誘導体等が挙げられる。更には1,5−ヘキサジエン、ブタジエン等のジオレフィン等も挙げられる。また、オレフィン重合体を製造するための重合は単独重合の他、ランダム共重合やブロック共重合にも好適に適用でき、1,5−ヘキサジエン、ブタジエン等のジオレフィン等を上記オレフィンと共重合しても良い。
共重合を実施する場合、重合できるオレフィンとしては、エチレンを含み、かつ炭素数3〜20のα−オレフィンの少なくともいずれか1種類を含むことが好ましい。また、オレフィンが炭素数6〜20のα−オレフィンの少なくともいずれか1種類を含むことも好ましく、オレフィンが1−ヘキセンを含むことが更に好ましい。
製造するに特に好適な低融点オレフィン重合体としては、上述した重合できるモノマーを本発明の触媒の存在下で重合して製造可能な、例えば、密度が0.890〜0.930g/cm3、好ましくは0.895〜0.925g/cm3、更に好ましくは0.900〜0.920g/cm3、特に好ましくは0.900〜0.910g/cm3であり、MIが0.1〜100g/10分、好ましくは0.1〜20g/10分、更に好ましくは0.1〜10g/10分、特に好ましくは3〜5g/10分であるエチレンとα−オレフィンとの共重合体、好ましくはエチレンとヘキセン−1との共重合体等を挙げることができる。
【0057】
重合反応は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサン等の不活性炭化水素や液化α−オレフィン等の溶媒存在下、あるいは実質的に溶媒や単量体の液相が存在しない状態で気相重合により行うのが好ましい。気相重合は、例えば流動床、撹拌床、撹拌・混合機を備えた撹拌流動床等の反応装置を用いて行うことができる。重合温度、重合圧力等の条件は特に限定されないが、重合温度は、一般に−50〜250℃、好ましくは0〜100℃、更に好ましくは60〜95℃であり、また、重合圧力は通常、常圧〜約2000kgf/cm2、好ましくは常圧〜200kgf/cm2、更に好ましくは常圧〜50kgf/cm2の範囲である。また、重合系内に分子量調節剤として水素を存在させてもよい。
【0058】
本発明に用いられるオレフィン重合用触媒は、高い重合活性と適度に高い初期活性を有し、反応器中で速やかに粒子径が増大して、凝集・付着といった微粉トラブルを低減でき、流動性に優れたオレフィン重合体粒子が製造可能となる。
一般に、重合反応器の中に投入された直後の触媒粒子は、その粒子径が他の重合粒子に比べて小さいため、反応器壁面への粒子付着、粒子同士の凝集、反応器からの飛散等が起こりやすく、重合の安定運転の障害となりやすい。これらを防止するためには、反応器に投入された触媒は速やかに重合反応が進行し、粒子径が増加する必要がある。
本発明では、成分[A1]、成分[A2]を同一触媒上に共存させることによって、各々の成分単独では為し得なかった活性効率の向上が、二成分の相乗効果によって初めて実現したのである。反応器内壁面や循環ガスライン配管へのポリマー付着は、触媒粒子もしくは未成長粒子による凝集や付着が原因と考えられ、重合活性が向上すると触媒供給量を減らすことができるため、運転安定性が向上する。
本発明によれば工業的なスケールでの連続運転を長期間に渡り、製品ポリマーの排出ラインが閉塞することなく、また、反応器内壁への製品ポリマーの付着による温度制御のトラブル等が発生することなく、安定に行うことができる。本願発明によれば、特に気相重合法プロセスにおいて融解温度が低いことで従来製造が困難であったエチレンをはじめ複数のオレフィンの共重合体や低立体規則性のα−オレフィン重合体といった低融点オレフィン重合体の製造が可能となる。
特に、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が0.895〜0.925g/cm3、更には0.900〜0.920g/cm3であり、MI(Melt Index)が0.1〜10g/10分、更に好ましくは3〜5g/10分であるエチレンとα−オレフィンとの共重合体、好ましくはエチレンと1−ヘキセンとの共重合体等を、特に気相重合によって製造するのに極めて好適である。
【0059】
【実施例】
実施例により本発明を具体的に示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、触媒の重合活性は、成分[B]1g当たりの重合体生成量(グラム数)で表す。
<MI、FR測定>
MIは、JIS K6760に準拠し、190℃、2.16kg荷重で測定した。FRは、190℃、10kg荷重の条件で同様に測定したメルトインデックスであるI10kgとMIの比(=I10kg/MI)から算出する。
<密度測定>
密度の測定はJIS−K7112に準拠し、メルトインデックス測定時に得られるストランドを100℃で1時間熱処理し、さらに室温で1時間放置した後に密度勾配管法で測定する。
【0060】
[実施例1]
(1)粘土鉱物の酸処理
市販の膨潤性モンモリロナイトの造粒分級品(「ベンクレイSL」、水澤化学社製、平均粒径27μm)37kgを25%硫酸148kgの中に分散させ、90℃で2時間撹拌した。これを脱塩水にて濾過・洗浄した。
(2)粘土鉱物のチタン塩処理および乾燥
市販の硫酸チタニル水溶液(堺化学工業(株)製、TiO2として7.5%含有、SO4として25.6%含有)236kgの中に上記(1)で得られた硫酸処理モンモリロナイトのケーキを全量分散させ、30℃で3時間撹拌した。これを脱塩水にてpH3.5まで濾過・洗浄した後、得られた含水固体ケーキを110℃で10時間予備的に乾燥してチタニウム塩処理モンモリロナイトを得た。この予備乾燥モンモリロナイトのうち、目開き150メッシュの篩を通過した粒子を更に、ロータリー・キルンを用いて、温度200℃、向流窒素気流下(窒素流量49Nm3/hr)で、3kg/hrの速さ(滞留時間10分)で連続乾燥し、乾燥窒素下で回収した。
【0061】
(3)触媒調製および予備重合
窒素雰囲気下、容量1Lの誘導攪拌装置付き反応器にn−ヘプタン164mlと、(2)で得た乾燥モンモリロナイト粒子10g(成分[B])をn−ヘプタン250mlでスラリー化して反応器へ導入した。系を30℃に保ち、トリエチルアルミニウム9.6mmol(1.096g)を添加して10分間攪拌した。引き続き温度を保持したまま、成分[A2]としてビス(1−n−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(1.20mmolすなわち0.5191gをn−ヘプタン173.0mlに分散した溶液)と、成分[A1]としてビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド(1.20mmolすなわち0.5902gをn−ヘプタン196.7mlに分散した溶液)を連続的に添加した後、系の温度を78℃に昇温した。78℃で10分間反応を行った後、エチレンガスを1.0NL/分の速度で57分間導入して予備重合を行った。エチレンの供給を停止し、反応器内のエチレンガスを窒素で置換した。
(4)予備重合触媒の洗浄および乾燥
上記(3)で得られた予備重合触媒スラリーをフラスコに移送して、60℃でn−ヘプタンによる洗浄を洗浄率1/15まで行った。次いで70℃に加温して減圧乾燥によって溶媒を留去して、予備重合触媒粉末81.7gを回収した。
【0062】
(5)エチレン・1−ヘキセン共重合
上記(4)の予備重合触媒粉末を使用してエチレン・1−ヘキセン気相共重合を行った。すなわち、エチレンと1−ヘキセンと水素の混合ガス(1−ヘキセン/エチレン=2.2モル%、水素/エチレン=0.041モル%)が流通する連続式気相重合反応器に、予備重合触媒を成分[B]として51mg/hr、トリイソブチルアルミニウムとジエチルアルミニウムエトキシドを各々100mg/hr、68mg/hrを、間欠的に供給した。重合反応の条件は90℃、エチレン分圧18kg/cm2、平均滞留時間4.1時間であった。予備重合触媒の供給を開始して12時間経過後以降の生成ポリエチレンの平均重合レートは294g/hrであった。重合結果を表1に、18時間経過後の1時間で製造された製品を回収して測定された製品物性を表2に示した。
【0063】
[実施例2]
成分[A2]としてビス(1−n−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(0.48mmolすなわち0.2076gをn−ヘプタン69.2mlに分散した溶液)と、成分[A1]としてビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド(1.92mmolすなわち0.9442gをn−ヘプタン314.7mlに分散した溶液)を使用した以外は、実施例1(3)(4)と同様にして予備重合触媒を製造し、予備重合触媒粉末79.2gを回収した。この予備重合触媒粉末を使用して、実施例1(5)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。重合結果を表1、製品物性を表2に示した。
【0064】
[比較例1]
成分[A2]としてビス(1−n−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(2.40mmolすなわち1.0382gをn−ヘプタン346.1mlに分散した溶液)を使用し、成分[A1]を使用しなかった以外は、実施例1(3)(4)と同様にして予備重合触媒を製造し、予備重合触媒粉末79.9gを回収した。この予備重合触媒粉末を使用して、実施例1(5)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。重合結果を表1、製品物性を表2に示した。
【0065】
[比較例2]
成分[A2]を使用せず、成分[A1]としてビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド(2.40mmolすなわち1.1803gをn−ヘプタン393.4mlに分散した溶液)を使用した以外は、実施例1(3)(4)と同様にして予備重合触媒を製造し、予備重合触媒粉末86.8gを回収した。この予備重合触媒粉末を使用して、実施例1(5)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。予備重合触媒の供給を開始して11時間後に、製品ポリマー排出ラインにポリマー塊が閉塞したため運転継続が不可能となった。運転停止前1時間で製造された製品を回収して求めた重合結果を表1、製品物性を表2に示した。
【0066】
[実施例3]
成分[A2]としてビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(1.20mmolすなわち0.4181gをn−ヘプタン139.4mlに分散した溶液)と、成分[A1]としてビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド(1.20mmolすなわち0.5902gをn−ヘプタン196.7mlに分散した溶液)を使用した以外は、実施例1(3)(4)と同様にして予備重合触媒を製造し、予備重合触媒粉末75.8gを回収した。この予備重合触媒粉末を使用して、実施例1(5)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。重合結果を表1、製品物性を表2に示した。
【0067】
[実施例4]
成分[A2]としてビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(0.48mmolすなわち0.1672gをn−ヘプタン55.7mlに分散した溶液)と、成分[A1]としてビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド(1.92mmolすなわち0.9442gをn−ヘプタン314.7mlに分散した溶液)を使用した以外は、実施例1(3)(4)と同様にして予備重合触媒を製造し、予備重合触媒粉末78.3gを回収した。この予備重合触媒粉末を使用して、実施例1(5)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。重合結果を表1、製品物性を表2に示した。
【0068】
[比較例3]
成分[A2]としてビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(2.40mmolすなわち0.8362gをn−ヘプタン278.8mlに分散した溶液)を使用し、成分[A1]を使用しなかった以外は、実施例1(3)(4)と同様にして予備重合触媒を製造し、予備重合触媒粉末82.1gを回収した。この予備重合触媒粉末を使用して、実施例1(5)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。予備重合触媒の供給を開始して13時間後に、製品ポリマー排出ラインにポリマー塊が閉塞したため運転継続が不可能となった。運転停止前1時間で製造された製品を回収して求めた重合結果を表1、製品物性を表2に示した。
【0069】
[実施例5]
(1)粘土鉱物の酸処理
市販の膨潤性モンモリロナイトの造粒分級品(「ベンクレイSL」、水澤化学社製、平均粒径38μm)40kgを25%硫酸160kgの中に分散させ、90℃で2時間撹拌した。これを脱塩水にてpH3.5まで濾過・洗浄した後、得られた含水固体ケーキを110℃で10時間予備的に乾燥して酸処理モンモリロナイトを得た。この予備乾燥モンモリロナイトのうち、目開き150メッシュの篩を通過した粒子を更に、ロータリー・キルンを用いて、温度200℃、向流窒素気流下(窒素流量49Nm3/hr)で、3kg/hrの速さ(滞留時間10分)で連続乾燥し、乾燥窒素下で回収した。
【0070】
(2)触媒調製および予備重合
窒素雰囲気下、容量10Lの誘導攪拌装置付き反応器にn−ヘプタン2.47Lと、(1)で得た乾燥モンモリロナイト粒子100g(成分[B])をn−ヘプタン1.00Lでスラリー化して反応器へ導入した。系を20℃に保ち、トリエチルアルミニウム96.0mmol(10.96g)を添加して10分間攪拌した。引き続き温度を保持したまま、成分[A2]としてビス(1−n−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(12.00mmolすなわち5.191gをn−ヘプタン0.45Lに分散した溶液)と、成分[A1]としてビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド(12.00mmolすなわち5.900gをn−ヘプタン0.45Lに分散した溶液)を連続的に添加した後、系の温度を78℃に昇温した。78℃で10分間反応を行った後、エチレンガスを10.0NL/分の速度で61分間導入して予備重合を行った。エチレンの供給を停止し、反応器内のエチレンガスを窒素で置換した。
【0071】
(3)予備重合触媒の洗浄
上記(2)で得られた予備重合触媒スラリーを冷却して60℃とし、n−ヘプタン5.0Lを追加した。この時の予備重合触媒スラリー液の全容積は10.4Lであった。60℃で5分間撹拌した後、撹拌を止めて15分間靜置沈降を行い、上澄み液7.0Lを抜き出した。再びn−ヘプタン6.5Lを追加して60℃で5分間撹拌を行い、15分間靜置沈降して上澄みを6.5L抜き出す工程を3回繰り返した。最後に全量が5.0Lとなるようにn−ヘプタンを追加した。
(4)予備重合触媒の乾燥
(3)で洗浄を行った予備重合触媒スラリー全量を窒素雰囲気下において、伝導受熱のためのスチームジャケットを装備した15L槽型振動式減圧乾燥機に抜き出した。ヘプタン4Lを反応器に追加して反応器内に残存した内容物を全て乾燥機に抜き出した。乾燥機に移送した予備重合触媒スラリーを静置して上澄み液約5Lを除去した後、70℃に加熱しながら減圧乾燥を行って溶媒を留去した。温度を保持したまま、目視にて溶媒がほぼ留去されたことを確認してから2時間減圧乾燥を行い、この結果、予備重合触媒粉末791gを回収した。
(5)重合評価
上記(4)で得られた予備重合触媒粉末を使用して、実施例1(5)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。重合結果を表1、製品物性を表2に示した。
【0072】
(6)添加剤配合
得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体に添加剤として、以下の酸化防止
剤及び中和剤を配合し、これを口径20mmの単軸押出機を用いて、混練・造粒した。
酸化防止剤:
▲1▼オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガノックス1076)
1000ppm
▲2▼テトラキス−(2,4−ジ−ブチルフェニル)−4,4−ビフェニレン−ジフォスファイト(クラリアント社製PEPQ)700ppm
中和剤:カルシウムステアレート(日東化成工業社製Ca−St(B.K))
300ppm
【0073】
(7)フィルム成形と評価
口径30mmの単軸押出機を用いて、以下の運転条件においてインフレーション成形を行った。
スクリュ:口径30mm、L/D=25、フルフライトタイプ
スクリュ回転数:約27rpm
ダイ:スパイラルマンドレルダイ、口径25mm、Lip幅2.0mm
樹脂温度:180℃
フィルムサイズ:折り径78mm、厚み20μm
得られたフィルムを目視にて観察し、長径0.1mm以上の大きさのフィッシュアイの、フィルム1g当たりの個数を求めたところ、16.2個/gであった。
【0074】
[比較例4]
成分[A2]としてビス(1−n−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(24.00mmolすなわち10.382gをn−ヘプタン0.90Lに分散した溶液)を使用し、成分[A1]を使用しなかった以外は、実施例5(2)(3)(4)と同様にして予備重合触媒を製造し、予備重合触媒粉末775gを回収した。この予備重合触媒粉末を使用して、実施例5(5)(6)(7)と同様にして重合評価、添加剤配合、フィルム成形と評価を行った。重合結果を表1、製品物性を表2に示した。
【0075】
[比較例5]
成分[A2]を使用せず、成分[A1]としてビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド(24.00mmolすなわち11.80gをn−ヘプタン0.90Lに分散した溶液)を使用した以外は、実施例5(2)(3)(4)と同様にして予備重合触媒を製造し、予備重合触媒粉末650gを回収した。この予備重合触媒粉末を使用して、実施例5(5)と同様にして重合評価を行った。予備重合触媒の供給を開始して10時間後に、製品ポリマー排出ラインにポリマー塊が閉塞したため運転継続が不可能となった。運転停止前1時間で製造された製品を回収して求めた重合結果を表1、製品物性を表2に示した。
【0076】
[実施例6]
(1)粘土鉱物の酸処理
市販のモンモリロナイト(「クニピアF」、クニミネ工業社製)8kgを振動ボールミルによって粉砕し、塩化マグネシウム10kgを溶解させた脱塩水50L中に分散させて80℃で1時間撹拌した。得られた固体成分を水洗した後、8.2%の塩酸水溶液56L中に分散させて、90℃で2時間撹拌し、脱塩水で水洗した。このようにして得られたモンモリロナイト4.6kgの水スラリー液を固形分濃度15.2%に調製し、スプレードライヤーにより噴霧造粒を行った。造粒により得られた粒子の形状は球状であった。
【0077】
(2)粘土鉱物のクロム塩処理および乾燥
次いで、上記(1)で得られた造粒モンモリロナイトを1Lのフラスコに分取し、その後、硝酸クロム九水和物(Cr(NO3)3・9H2O)48gを溶解させた脱塩水400ml中に分散させ、90℃で3時間撹拌した。処理後、この固体成分を脱塩水で洗浄し、予備乾燥を行って処理モンモリロナイトを得た。この予備乾燥クロム処理モンモリロナイトを200mlフラスコに入れて1mmHgの減圧下、200℃で2時間の加熱脱水処理を行った。
【0078】
(3)触媒調製および予備重合
窒素雰囲気下、容量1Lの誘導攪拌装置付き反応器にn−ヘプタン374mlと、(2)で得た乾燥モンモリロナイト粒子10g(成分[B])をn−ヘプタン250mlでスラリー化して反応器へ導入した。系を30℃に保ち、トリエチルアルミニウム9.6mmol(1.096g)を添加して10分間攪拌した。引き続き温度を保持したまま、成分[A2]としてビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド(0.40mmolすなわち0.1170gをトルエン40mlに分散した溶液)と、成分[A1]として1,2−エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド0.40mmolすなわち0.1714gをトルエン40mlに分散した溶液)を連続的に添加した後、系の温度を78℃に昇温した。78℃で10分間反応を行った後、エチレンガスを1.0NL/分の速度で57分間導入して予備重合を行った。エチレンの供給を停止し、反応器内のエチレンガスを窒素で置換した。
【0079】
(4)予備重合触媒の乾燥
上記(3)で得られた予備重合触媒スラリーをフラスコに移送して、70℃に加温して減圧乾燥によって溶媒を留去して、予備重合触媒粉末80.5gを回収した。
(5)エチレン・1−ブテン共重合
上記(4)の予備重合触媒粉末を使用してエチレン・1−ブテンスラリー共重合を行った。すなわち、3Lオートクレーブにn−ヘプタン1.5L、トリエチルアルミニウム2.5mmol、および1−ブテン100mlを加え、65℃に昇温した。ついで(4)で得られた予備重合触媒を、成分[B]として100mgをエチレンとともに導入し、エチレン消費量見合いでエチレンと1−ブテンの混合ガス(1−ブテン/エチレン=7.0重量%)を供給しながら全圧を22kg/cm2−Gに保って、65℃で2時間重合を行った。2時間後、エタノールを加えて重合を停止した。得られたエチレン−1−ブテン共重合体は218gであった。重合結果を表3、製品物性を表4に示した。
【0080】
[比較例6]
成分[A1]として1,2−エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド(0.80mmolすなわち0.3428gをトルエン80mlに分散した溶液)を使用し、成分[A2]を使用しなかった以外は、実施例6(3)(4)と同様にして予備重合触媒を製造し、予備重合触媒粉末82.5gを回収した。この予備重合触媒粉末を使用して、実施例6(5)と同様にして重合評価を行った。重合結果を表3、製品物性を表4に示した。
【0081】
[比較例7]
成分[A2]としてビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド(0.80mmolすなわち0.2339gをトルエン80mlに分散した溶液)を使用し、成分[A1]を使用しなかった以外は、実施例6(3)(4)と同様にして予備重合触媒を製造し、予備重合触媒粉末79.0gを回収した。この予備重合触媒粉末を使用して、実施例6(5)と同様にして重合評価を行った。重合結果を表3、製品物性を表4に示した。
【0082】
[実施例7]
実施例5(5)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。ただし、エチレンと1−ヘキセンと水素の混合ガスを1−ヘキセン/エチレン=3.3モル%、水素/エチレン=0.017モル%とした。また、実施例5(6)(7)と同様に添加剤の配合、フィルム成形と評価を行った。重合結果を表5、製品物性を表6に示した。
【0083】
[比較例8]
比較例4と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。ただし、エチレンと1−ヘキセンと水素の混合ガスを1−ヘキセン/エチレン=3.8モル%、水素/エチレン=0.025モル%とした。予備重合触媒の供給を開始して10時間後に、製品ポリマー排出ラインにポリマー塊が閉塞したため運転継続が不可能となった。運転停止前1時間で製造された製品を回収して求めた重合結果を表5、製品物性を表6に示した。
【0084】
[実施例8]
(1)粘土鉱物の有機アルミニウム処理
窒素雰囲気下、攪拌装置付き2Lフラスコにn−ヘプタン0.3441Lと、実施例5(1)で得た乾燥モンモリロナイト粒子100g(成分[B])を導入した。系を30℃に保ち、トリエチルアルミニウムのn−ヘプタン溶液(濃度0.613mol/L)0.489Lを添加した。温度を保持したまま1時間反応を行った後、洗浄率が1/70となるまでn−ヘプタンによる洗浄を行った後、総量を0.20Lに調製した。
【0085】
(2)触媒調製
(1)に引き続き、トルエン0.80Lを加えて総量を1.0Lとした後、温度30℃で、成分[A2]としてビス(1−n−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(12.00mmolすなわち5.191gをトルエン0.45Lに分散した溶液)と、成分[A1]としてビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド(12.00mmolすなわち5.900gをトルエン0.45Lに分散した溶液)を連続的に添加した後、温度を保持したまま1時間反応を継続した。撹拌を止めて30分間静置沈降して上澄み1.80Lを抜き出した後、抜き出し量と同量のトルエンを加えて接触反応物である触媒スラリーの洗浄を行う操作を4回繰り返し、最後に総量が2.00Lとなるまでトルエンを追加した。
【0086】
(3)予備重合
窒素雰囲気下、容量10Lの誘導攪拌装置付き反応器にn−ヘプタン2.37Lと、上記(2)で得た触媒スラリーを全量導入した。系を20℃に保ち、トリエチルアルミニウム96.0mmol(10.96g)を添加して10分間攪拌した。系の温度を40℃に昇温して10分間反応を行った。引き続きエチレン予備重合を実施した。即ち、第1工程として温度40℃で3.3NL/分の速度でエチレンガスを60分間導入した後、第2工程として系の温度を平均0.8℃/分で昇温しながらエチレンガスの導入速度を6.6NL/分に増加して20分間反応し、続いて、第3段階として10NL/分となるまで平均0.14NL/分2の割合でエチレン導入速度を増加させて、合計120分の予備重合を行った。エチレンの供給を停止し、反応器内のエチレンガスを窒素で置換した。得られた予備重合触媒スラリーを冷却して、実施例5(4)と同様にして予備重合触媒の乾燥を実施した。この結果、予備重合触媒粉末863gを回収した。
(4)重合評価
上記(3)で得られた予備重合触媒粉末を使用して、実施例1(5)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。ただし、エチレンと1−ヘキセンと水素の混合ガスを1−ヘキセン/エチレン=3.4モル%、水素/エチレン=0.037モル%とした。また、実施例5(6)(7)と同様に添加剤の配合、フィルム成形と評価を行った。重合結果を表5、製品物性を表6に示した。
【0087】
[実施例9]
(1)粘土鉱物の亜鉛塩処理および乾燥
2Lフラスコに硫酸亜鉛七水和物(ZnSO4・7H2O)115gと硫酸10gと脱塩水675gを溶解させ、次いで実施例5(1)で得られた酸処理モンモリロナイト200gを分散させて30℃で2時間撹拌した。処理後、この固体成分を脱塩水で洗浄し、予備乾燥を行って処理モンモリロナイトを得た。この予備乾燥亜鉛処理モンモリロナイトを1Lフラスコに入れて1mmHgの減圧下、200℃で2時間の加熱脱水処理を行った。
(2)粘土鉱物の有機アルミニウム処理と触媒調製
実施例5(1)で得た乾燥モンモリロナイトのかわりに上記(1)で得た乾燥亜鉛処理モンモリロナイトを同量使用した以外は実施例8(1)(2)と同様にして行った。
【0088】
(3)予備重合
窒素雰囲気下、容量10Lの誘導攪拌装置付き反応器にn−ヘプタン2.37Lを加え、系を20℃に保ち、トリエチルアルミニウム48.0mmol(5.50g)を添加した。次いで温度を保ったまま、上記(2)で得た触媒スラリーを全量導入して10分間攪拌した。系の温度を40℃に昇温して10分間反応を行った。引き続きエチレン予備重合を実施した。即ち、第1工程として温度40℃で3.0NL/分の速度でエチレンガスを89分間導入した後、第2工程として温度を保持したままエチレンガスの導入速度を7.5NL/分に増加して13分間反応し、続いて、第3段階としてエチレン導入速度を保持したまま80℃まで33分かけて昇温し、合計173分間の予備重合を行った。エチレンの供給を停止し、反応器内のエチレンガスを窒素で置換した。
【0089】
(4)予備重合触媒の洗浄と乾燥
得られた予備重合触媒スラリーを冷却して、実施例5(3)(4)と同様にして予備重合触媒の洗浄と乾燥を実施した。ただし、洗浄は30℃で実施し、n−ヘプタンのかわりにトルエンを使用した。この結果、予備重合触媒粉末1123gを回収した。
(5)重合評価
上記(4)で得られた予備重合触媒粉末を使用して、実施例1(5)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。ただし、エチレンと1−ヘキセンと水素の混合ガスを1−ヘキセン/エチレン=6.0モル%、水素/エチレン=0.033モル%、重合反応は75℃とした。重合結果を表5、製品物性を表6に示した。
【0090】
[実施例10]
(1)重合評価
実施例9(4)で得られた予備重合触媒粉末を使用して、実施例9(5)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン共重合を行った。ただし、エチレンと1−ヘキセンと水素の混合ガスを1−ヘキセン/エチレン=6.0モル%、水素/エチレン=0.065モル%とした。重合結果を表5、製品物性を表6に示した。
【0091】
[実施例11]
(1)予備重合触媒粉末の製造
実施例6(3)(4)と同様にして予備重合触媒粉末を得た。ただし、成分[A2]としてビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリドの代わりにビス(2−メチル−(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル))ジルコニウムジクロリドを等モル量と、成分[A1]として1,2−エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの代わりにビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリドを等モル量を使用した。
(2)エチレン・1−ヘキセン共重合
上記(1)の予備重合触媒粉末を使用してエチレン・1−ヘキセン気相共重合を行った。すなわち、1Lオートクレーブに90℃で6時間減圧乾燥した塩化ナトリウム100gを窒素雰囲気下室温にて加え、更にトリイソブチルアルミニウム0.29mmol(ヘプタン希釈溶液として0.80ml)とジエチルアルミニウムエトキシド0.60mmol(ヘプタン希釈溶液として0.57ml)をそれぞれ添加した。内温を90℃に昇温した後、エチレンと1−ヘキセンの混合ガス(1−ヘキセン/エチレン=3.3モル%)を分圧で18kgf/cm2となるまで導入し、次いで(1)で得られた予備重合触媒粉末(成分[B]として20mg)をヘプタン2mlとともにアルゴンによって圧入して重合を開始した。消費量見合いで上記組成の混合ガスを供給しながら全圧を維持して、90℃で1時間重合を行った。1時間後、内部のガスを除去して重合を停止した。塩化ナトリウムを水洗で除去し、エチレン・1−ヘキセン共重合体18.5gを得た。重合結果を表7、製品物性を表8に示した。
【0092】
[比較例9]
成分[A1]としてビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド0.80mmolを使用し、成分[A2]を使用しなかった以外は、実施例11(1)(2)と同様にして予備重合触媒の製造と重合評価を行った。重合結果を表7、製品物性を表8に示した。
【0093】
[比較例10]
成分[A2]としてビス(2−メチル−(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル))ジルコニウムジクロリド0.80mmolを使用し、成分[A1]を使用しなかった以外は、実施例11(1)(2)と同様にして予備重合触媒の製造と重合評価を行った。重合結果を表7、製品物性を表8に示した。
【0094】
[実施例12]
成分[A1]としてビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリドの代わりにビス(1−n−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリドを等モル量を使用した以外は、実施例11(1)(2)と同様にして予備重合触媒の製造と重合評価を行った。重合結果を表7、製品物性を表8に示した。
【0095】
[比較例11]
成分[A1]としてビス(1−n−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド0.80mmolを使用し、成分[A2]を使用しなかった以外は、実施例11(1)(2)と同様にして予備重合触媒の製造と重合評価を行った。重合結果を表7、製品物性を表8に示した。
【0096】
[実施例13]
成分[A1]としてビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリドの代わりに1,2−エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリドを等モル量を使用した以外は、実施例11(1)(2)と同様にして予備重合触媒の製造と重合評価を行った。重合結果を表7、製品物性を表8に示した。
【0097】
[比較例12]
成分[A1]として1,2−エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド0.80mmolを使用し、成分[A2]を使用しなかった以外は、実施例11(1)(2)と同様にして予備重合触媒の製造と重合評価を行った。重合結果を表7、製品物性を表8に示した。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
表1、表2の説明
(1)実施例1、実施例2、比較例1、比較例2は、同一の成分[A1]と成分[A2]を使用し、成分[A1]と成分[A2]の比率を1/0、0.8/0.2、0.5/0.5、0/1 と変化させた一連の実験である。成分[A1]、成分[A2]をそれぞれ単独で使用するよりも、両者を同時に使用した方が、気相重合において、高活性であり、製品嵩密度が高く、重合反応器の排出ラインに閉塞トラブルを起こすことなく安定運転が実現されている。
(2)実施例3、実施例4、比較例3、比較例2は、成分[A2]の化合物を変えて上記(1)と同様の実験を行ったものである。ここでも、成分[A1]、成分[A2]をそれぞれ単独で使用した場合よりも、両者を同時に使用した場合の方が高活性であり、製品嵩密度が高く、重合反応器の排出ラインに閉塞トラブルを起こすことなく安定運転が実現されている。
【0101】
(3)実施例5、比較例4、比較例5は、上記(1)と同様にして得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体の外観を比較することによって、重合系内の安定状態を比較した実験である。成分[A1]と成分[A2]を同時に使用して得られたフィルムは、成分[A2]単独で得られたフィルムに比べてフィッシュ・アイが少なく外観に優れていた。これは、前者の方が、低活性粒子が少なく、低融点粒子の生成が無いために、粒子毎の融点の分布が狭くなる等、組成の均一性に優れる成形体が安定に製造されたからである。また、成分[A1]単独の場合、安定生産が不可能であり、フィルム成形に必要なサンプル量を確保できなかった。
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【0104】
表3、表4の説明
実施例6、比較例6、比較例7は、やはり、同一の成分[A1]と成分[A2]を使用し、成分[A1]と成分[A2]の比率を1/0、0.5/0.5、0/1 と変化させた一連の実験である。ただし、成分[A1]、成分[A2]は、以前の実施例、比較例とは異なる化合物を使用した。成分[A1]、成分[A2]をそれぞれ単独で使用するよりも、両者を同時に使用した方が、スラリー重合において、高活性であり、製品嵩密度が高く、安定運転が実現されている。
【0105】
【表5】
【0106】
【表6】
【0107】
表5、表6の説明
(1)実施例7、比較例8は、実施例5と比較例4と同一の成分[A1]と成分[A2]を使用して、MIと密度がほぼ同一のエチレン・1−ヘキセン共重合体を気相重合によって製造する場合の重合の安定性を比較することを意図した実験である。成分[A2]を単独で使用するよりも、成分[A1]と同時に使用した方が、高活性であり、製品嵩密度が高く、重合反応器の排出ラインに閉塞トラブルを起こすことなく安定運転が実現されている。
(2)実施例8、実施例9、実施例10は、成分[A1]、成分[A2]、成分[B]の代表的な組み合わせである実施例5の例を採用して製造した触媒でもって、安定運転がより困難と考えられるより低密度の共重合体を製造する条件の重合評価を行うことによって、安定運転性能の範囲を見極めることを意図した実験である。その結果、成分[A1]、成分[A2]を単独で使用した場合はその製造が困難であった低密度領域の共重合体が、本発明にあるように、成分[A1]、成分[A2]を同時に使用する方法によって、極めて安定に製造可能となったことがわかる。
【0108】
【表7】
【0109】
【表8】
【0110】
表7、表8の説明
実施例11、比較例9、比較例10の一連の実験、実施例12、比較例11、比較例10の一連の実験、実施例13、比較例12、比較例10の一連の実験は、成分[A2]は同一の化合物を使用し、成分[A1]を異なる化合物を使用して、成分[A1]、成分[A2]の単独使用時と同時使用時の重合性能の比較を意図したものである。いずれも単独使用時よりも同時使用時の方が、高活性であり、安定運転が実現されている。
【0111】
【発明の効果】
本発明の触媒は、高いオレフィン重合活性を有するため、反応器中で速やかに粒子径が増大して、凝集・付着といった微粉トラブルを低減でき、更には粒子破砕を起こさないために、工業的な長期安定運転が実現できる。また、低活性粒子が少なく、低融点粒子の生成が無いために、粒子毎の融点の分布が狭くなる。この結果として組成の均一性に優れる成形体が製造可能となり、凝集・付着といった微粉トラブルを低減でき、工業的な長期安定運転が実現できる。さらには、得られたオレフィン重合体をフィルム成形、ブロー成形、射出成形などした際に、ゲル、フィッシュ・アイ等の少ない、外観に優れる成型品を製造できる。
Claims (12)
- 共役五員環配位子を少なくとも1個有するハフニウム化合物または下記一般式[20]
- 前記[A1]がハフニウム化合物である請求項1に記載のオレフィンの重合方法。
- 前記[A1]が、下記一般式[1]
- 前記[A1]が、下記一般式[2]
- 請求項3または請求項4の一般式[1]または[2]におけるA及びA’が、1位及び/又は3位に置換基を有するシクロペンタジエニル基である請求項3または4に記載のオレフィンの重合方法。
- 前記一般式[5]のA及びA’が、1位及び/又は3位に置換基を有するシクロペンタジエニル基である請求項1〜5のいずれか1項に記載のオレフィンの重合方法。
- 前記[B]層状珪酸塩が、スメクタイト族である請求項1に記載のオレフィンの重合方法。
- 前記オレフィン重合用触媒を予めオレフィンと接触させて、[B]層状珪酸塩1g当たり0.01〜1000gのオレフィンを予備重合する請求項1〜7のいずれか1項に記載のオレフィンの重合方法。
- 前記(b)α−オレフィンが少なくとも1−ヘキセンを含む請求項1〜8のいずれか1項に記載のオレフィンの重合方法。
- オレフィンを気相にて重合する請求項1〜9のいずれか1項に記載のオレフィンの重合方法。
- 得られるオレフィン共重合体が、密度0.890〜0.930g/cm3、MI0.1〜20g/10分を満たすエチレン・α−オレフィン共重合体である請求項1〜10のいずれか1項に記載のオレフィンの重合方法。
- 共役五員環配位子を少なくとも1個有するハフニウム化合物または下記一般式[20]
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