JP3834000B2 - 金属製薄板ドラムの切断装置 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、金属製の薄板により円筒状に形成されたドラムを輪切り状に切断する金属製薄板ドラムの切断装置に関する。
背景技術
例えば、無段変速機に採用される動力伝達用のベルトにおいては、環状に積層配列された複数のエレメントを一体に結束するために、複数の金属製リング部材を積層してなる積層リングが用いられる。この種の積層リングを構成するリング部材は、矩形状の金属製薄板の両端縁を溶接接合して形成された円筒状のドラムを、輪切り状に所定幅毎に切断することによって形成される。
従来、円筒状のドラムを所定幅毎に切断して前記リング部材を形成する際には、ドラムの一端部をクランプして支持し、回転する砥石等を前記ドラムの他端部の外側から押し当て、該砥石等を該ドラムの周方向に移動させることによって切断することが知られている。
しかし、前記ドラムをその一端部でのみ支持した状態で該ドラムの切断作業を行なうと、前記ドラムが金属製薄板によって形成されているために、砥石等の押し当て部分に歪みが生じ、また、装置の振動がドラムに伝達されてドラムに振れが生じやすく、切断精度が低くなる不都合がある。
かかる不都合を解消するために、本発明は、比較的撓み易い金属製薄板ドラムを高精度に輪切り状に切断することができ、また、金属製薄板ドラムの切断作業を効率よく行なうことができる金属製薄板ドラムの切断装置を提供することを目的とする。
発明の開示
かかる目的を達成するために、本発明は、金属製の薄板により円筒状に形成されたドラムを輪切り状に切断して無端帯状の金属リングを形成する金属製薄板ドラムの切断装置であって、回転駆動される支持軸と、該支持軸に支持され、前記ドラムの全長にわたって該ドラムの内周面に圧接して該ドラムを保持する円筒状のドラム保持部材と、該ドラム保持部材を介して前記支持軸によって回転されるドラムの所定位置に当接して切り込む切刃が設けられた切断手段とを備えてなり、前記ドラムは、その両端縁部の一部に形成された切欠と、該切欠が形成された両端部全周が切除される切除部と、両切除部の間に位置して金属リングが形成されるリング形成部とを備え、前記ドラム保持部材は、ドラムを保持したとき前記切欠に係止してドラムの切除部を回転不能に規制する係止部材を備えることを特徴とする。
本発明によれば、前記ドラムを前記ドラム保持部材に保持し、前記支持軸の回転によって該ドラム保持部材を介してドラムを回転させる。そして、回転するドラムの外側面の所定位置に前記切断手段の切刃を当接させることによって、ドラムの周方向に切刃が切り込んで該ドラムが輪切り状に切断される。
このとき、前記ドラムは、その全長にわたって前記ドラム保持部材に内周面が圧接された状態で保持されているので、ドラムが金属製薄板によって形成されていても、ドラムに歪みや振れを発生させることなく前記切刃の当接による切断を行なうことができる。これにより、切断精度の高いドラムの切断を行なうことができ、高精度な金属リングを形成することができる。
更に、本発明の装置によれば、前記金属リングがその切欠を介して前記係止部材に係止されてドラム保持手段に保持される。そして、前記切刃によって前記ドラムの切除部が切除されるとき、該切除部が切欠を介して係止部材に係止されて、回転不能に規制されている。これによって、ドラムの両端縁の切除部の幅寸法が比較的小さくドラム保持手段との摩擦係合状態が不十分であっても、切断された切除部がドラム保持手段の外周を滑って波打つように回転することを確実に防止することができ、切断された切除部が切刃に当たって切刃を損傷させるといったことを防止することができる。
本発明において、前記ドラム保持部材は、前記支持軸の一端から取外し自在に設けられていることを特徴とする。これにより、ドラム保持部材を支持軸から取外した状態で、該ドラム保持部材へのドラムの取付け作業や取外し作業を行なうことができ、作業性を向上させることができる。
また、本発明における前記支持軸は、駆動手段によって回転駆動される主軸と、該主軸に装着され、軸線方向に延びる複数の割溝により拡径自在に形成された円筒状のコレットと、該コレットの各割溝の間隔を拡張させて該コレット外径を拡径させる拡径手段とを備え、前記ドラム保持部材は、軸線方向に延びる複数の割溝により拡径自在に形成されて前記コレットに装着され、前記拡径手段による該コレット外径の拡径に追従して拡径することによりドラムの内周面に圧接して該ドラムを保持することを特徴とする。
本発明によれば、前記コレットは前記拡径手段によって拡径され、前記ドラム保持部材はコレットの拡径に伴って拡径される。即ち、拡径手段によってコレットが拡径されたとき、該コレットがドラム保持部材を内方から径方向に拡張させる。そして、ドラム保持手段の拡径により該ドラム保持手段の外側面がドラムの内周面に圧接する。これによって、ドラム保持手段はドラムの内周面にその全長にわたって略均一に圧接し、比較的撓みやすいドラムを確実に高精度に保持することができる。更に、コレットを縮径させるだけで前記ドラム保持部材をコレットから容易に抜き取ることができ、前記ドラム保持部材の支持軸からの取外しを容易に行なうことができる。
また、本発明における前記拡径手段は、前記コレットの一端部に対応する前記主軸の基端部外周に設けられて該主軸の先端に向かって次第に縮径するテーパ部と、前記コレットの他端部に対応する該主軸の先端部外周に該主軸の軸線に沿って移動自在に設けられて該主軸の基端部に向かって次第に縮径するテーパ部材と、該主軸の先端に装着されて該テーパ部材に当接する押圧部材とを備え、該押圧部材により前記テーパ部材を前記テーパ部に接近する方向に押圧移動させて、前記コレットの両端部を介して該コレットを拡径させることを特徴とする。
本発明によれば、前記主軸の先端に装着された前記押圧部材により、前記テーパ部材を前記主軸のテーパ部に向かって移動させる。前記コレットはテーパ部材のテーパ部への接近によって両端側が共にテーパ部材とテーパ部との拡径側に摺動する。これによって前記コレットは、その全長にわたって均等に拡径される。そして、該コレットの全長にわたる均等な拡径によって、該コレットに装着された前記ドラム保持部材がその全長にわたって均等に拡径され、ドラムを高精度に保持することができる。また、前記押圧部材による前記テーパ部材の押圧を解除して該テーパ部材を前記主軸のテーパ部から離間する方向に移動させることにより、前記コレットを、その全長にわたって均等に縮径させることができ、前記ドラム保持部材のコレットからの抜き取り作業を円滑且つ迅速に行なうことができる。
また、前記ドラムは、矩形状の金属製平板の両端縁を互いに溶接接合することにより円筒状に形成され、前記切欠は、該溶接時の位置決め用に形成されたものであることを特徴とする。矩形状の金属製平板からドラムを形成する場合には、該平板の両端縁を互いに突き合わせて円筒状に形成した後、突き合わせ部分を溶接接合することが行なわれる。この溶接作業は高い溶接精度が要求されるため、金属製平板の溶接される両端縁の近傍に予め複数の切欠を設けておき、該切欠を介して治具等によって端縁の突き合わせ部分の位置決めが行なわれる。本発明においては、溶接時の位置決め用に形成された切欠を利用して前記切除部の係止を行なうことにより、切除部を係止するための切欠を新たに設ける必要がなく、ドラム切断のための準備作業を軽減することができ、作業効率を向上することができる。
また、本発明において、前記切刃は前記ドラム保持部材の軸線方向に沿って所定間隔を存して複数配設されていることを特徴とする。これによって、複数の切刃が所定間隔を存してドラムに切り込み、複数の所定幅の金属リングを一挙動で形成することができるので、ドラムからの金属リングの形成を極めて効率良く行なうことができる。
また、本発明において、前記ドラム保持部材の外周には、前記切刃の切り込み位置に対応する環状溝が形成されていることを特徴とする。これによって、前記切刃がドラムを切断する際に、ドラムを介してドラム保持手段に切り込まれた切刃と該ドラム保持手段との干渉を防止して切断精度を向上させることができる。
また、本発明において、前記切刃はドラムの所定位置に切り込む砥粒切刃が周縁に形成された円盤状の砥石であって、前記環状溝には、前記ドラムに切り込んだ前記砥粒切刃に摺接して該砥粒切刃をドレッシングするドレッシング材が埋設されていることを特徴とする。
前記砥石の砥粒切刃は、ドラム保持部材に支持されたドラムを切断したとき、更にドラム保持部材の環状溝に入り込む。該環状溝には前記ドレッシング材が設けられているので、砥粒切刃がドレッシング材に摺接される。これによって、ドラムを切断した際に砥粒切刃に目詰まりが生じても前記ドレッシング材によって即座にドレッシングされる。このように、本発明を採用すれば、砥粒切刃に目詰まりが生じたとき切断手段から砥石を取り外して砥粒切刃のドレッシングを行うといった煩わしい作業が不要となり、砥石のドレッシングを極めて効率よく行うことができると共に、作業効率を低下させることなく砥粒切刃の切断能力を良好に維持することができる。
また、本発明において、前記ドラム保持部材は縮径自在に形成されており、前記ドラムが切断された金属リングを保持した状態で前記支持軸から取り外された該ドラム保持部材を縮径させて金属リングの内周面への圧接を解除する保持解除手段を設けたことを特徴とする。前記支持軸から取り外されたドラム保持部材は、保持解除手段により縮径されることにより金属リングの内面から離反し、該金属リングの保持状態が解除される。これにより、ドラム保持部材に密着保持されている金属リングをドラム保持部材から抜き取る際にドラム保持部材の周壁と金属リングの内面との摺接によって生じる金属リングの損傷を防止することができ、ドラム保持部材からの金属リングの抜き取りを容易に行なうことができる。従って、金属リングを損傷のない高精度な形状を維持してドラム保持部材から取外すことができる。
ここで、本発明におけるドラム保持部材の好ましい態様として、前記ドラム保持部材は、その両端縁部に軸線方向の外方に向かって次第に縮径する一対のテーパ部を備えることが挙げられる。そして、前記保持解除手段の好ましい態様として、該保持解除手段は、前記支持軸から取り外された前記ドラム保持部材を軸線方向を上下方向に向けて保持すると共に該ドラム保持部材を縮径させる縮径手段と、該縮径手段に保持されたドラム保持部材の下方位置に設けられ、該ドラム保持部材の縮径によって該ドラム保持部材による支持が解除されて落下する金属リングを受けるリング受け部とを備えることが挙げられる。このとき、前記縮径手段は、前記ドラム保持部材の下縁部に当接して該ドラム保持部材を載置する載置部と、該載置部に対向して昇降自在に設けられ、該ドラム保持部材の上端縁部を下方に押圧する押圧部材と、該押圧部材を昇降させる昇降手段とを備える。そして、前記載置部は、前記ドラム保持部材の下縁部のテーパ部に対応して該テーパ部を介してドラム保持部材を縮径方向に摺接案内する第1案内傾斜部を備え、前記押圧部材は、前記ドラム保持部材の上縁部のテーパ部に対応して該テーパ部を介してドラム保持部材を縮径方向に摺接案内する第2案内傾斜部を備える。
ドラム保持部材及び保持解除手段をこのように構成することにより、先ず、ドラムの切断によって得られた金属リングを支持した状態で、ドラム保持部材を軸線方向を上下方向に向けて前記載置部に載置し、ドラム保持部材の上端縁部に前記押圧部材を当接する。次いで、前記昇降手段によって押圧部材を下降させることによって該押圧部材によりドラム保持部材を軸線方向に押圧する。このとき、前記載置部に設けられた前記第1案内傾斜部に沿ってドラム保持部材の下端縁部のテーパ部が摺接案内され、同時に、前記押圧部材に設けられた前記第2案内傾斜部に沿ってドラム保持部材の上端縁部のテーパ部が摺接案内される。第1案内傾斜部及び第2案内傾斜部は両テーパ部を介してドラム保持部材を縮径する方向に案内する。これにより、ドラム保持部材が縮径してその外側面に支持された金属リングから離反し、ドラム保持部材による支持が解除された金属リングは、自重によって前記ワーク受け部に落下する。
このように、本発明によれば、前記ドラム保持部材を前記載置部と押圧部材によって押圧挟持するだけで、金属リングやドラム保持部材の損傷を防止して円滑且つ迅速に該ドラム保持部材から金属リングを取外すことができる。
そして、本発明の構成によれば、ドラムを高精度に切断することができるので、前記ドラムを輪切り状に切断することにより得られる金属リングを、無段変速機用ベルトの複数のエレメントを無端状に結束するために高い精度が要求されるリング部材として好適に採用することができる。
発明を実施するための最良の形態
図1に示す本実施形態の切断装置1は、金属製のドラムWを所定幅毎に輪切り状に切断し、図示しない無段変速機用ベルトのリング部材として採用する金属リングを製造するものである。前記ドラムW1は、図2(a)に示すマルエージング鋼の矩形状の平板Yを、図2(b)及び図2(c)に示すように円筒状に成形した後、両端縁Z,Zを互いに突き合わせて溶接接合することによって形成される。
本実施形態の切断装置1は、図1に示すように、ドラムW1を保持するドラム保持手段2と、ドラムW1を切断する切断手段3とによって構成されている。
前記ドラム保持手段2は、図示しない回転駆動手段によって回転される支持軸4と、該支持軸4に着脱自在に装着されてその外周に前記ドラムW1を保持するドラム保持部材5とを備えている。
前記ドラム保持部材5は、図1及び図3に示すように、合成樹脂により略円筒状に形成されており、一端部外周には、ドラムW1の一端縁に当接する凸部6が形成されている。該ドラム保持部材5の外周には、ドラムW1の切断位置(後述する砥石7の切り込み位置)に沿って複数の環状溝8が所定間隔を存して形成されている。更に、該ドラム保持部材5は、その長手方向に沿って複数の割溝9が形成されている。該割溝9は、ドラム保持部材5の一端縁で開放されるものと、他端縁で開放されるものとが交互に配設されており、各割溝9の間隔の拡張によって該ドラム保持部材5の外径が拡径自在となっている。また、前記凸部6の一部には、ドラムW1の端縁に形成された切欠Xに係合する第1係止部材10が設けられている。なお、該ドラムW1の切欠Xは、図2(a)に示すように、平板Yの四隅の両端縁Z,Z近傍に形成され、図2(c)に示すように、ドラムW1の溶接作業時に両端縁Z,Zの突き合わせを正確に維持する位置決め治具Vを係合させるために設けられたものである。
前記支持軸4は、図1に示すように、図示しない回転駆動手段に連結された主軸11と、該主軸11の基端部に装着固定された当接ブロック12とを備えている。更に、支持軸4には、拡径自在のコレット13と、該コレット13を拡径するための拡径手段14とが設けられている。前記当接ブロック12は、ドラム保持部材5とドラムW1の他端縁を突き当てることによってドラムW1の外挿位置決めを行なうものであり、該当接ブロック12の一部には、ドラムW1の端縁に形成された前述の切欠Xに係合する第2係合部材15が設けられている。
前記拡径手段14は、主軸11の基端部に一体に形成されたテーパ部16と、該主軸11の先端部に移動自在に装着された環状のテーパ部材17とを備えている。更に、該主軸11の先端部にはネジ部18が形成されており、該ネジ部18には押圧ナット19(押圧部材)が螺着されている。該押圧ナット19はネジ部18に沿って回転させることによって、テーパ部材17を主軸11の基端側に向かって移動させるものである。更に、テーパ部材17は、主軸11の外周に設けられたバネ20によって該主軸11の先端方向に向かって付勢されている。
前記コレット13は、図1及び図4に示すように、略円筒状に形成されており、その長手方向に沿って複数の割溝21が形成されている。該割溝21は、該コレット13の一端縁で開放されるものと、他端縁で開放されるものとが交互に配設されており、各割溝21の間隔の拡張によって該コレット13の外径が拡径自在となっている。また、図1に示すように、該コレット13の両端部の内周側には、前記テーパ部16に対応して摺接するテーパ状の第1摺接部22と、前記テーパ部材17に対応して摺接するテーパ状の第2摺接部23とが形成されている。該コレット13は、前記押圧ナット19の回転によって前記テーパ部材17がテーパ部16に接近する方向に移動したとき、第1摺接部22と第2摺接部23とが共にテーパ部材17とテーパ部16との拡径方向に摺動案内され、これによって該コレット13の外径が拡径する。
前記切断手段3は、図1に示すように、回転軸24と、該回転軸24に一体的に支持された複数の円盤状の砥石7(切刃)とを備えている。各砥石7は、互いに所定間隔を存して配設されており、該砥石7と前記ドラム保持部材5の各環状溝8とは互いに対応している。更に、該切断手段3は、図示しないが、前記回転軸24に連結された回転駆動手段と、砥石7をドラムW1に向かって進退させると共に、切断時には砥石7をドラムW1に圧接させる進退手段とを備えている。
次に、以上の構成による本実施形態の切断装置1の作動を説明する。まず、図1を参照すれば、拡径手段14によるコレット13の拡径を解除することによって、コレット13によるドラム保持部材5の圧接保持を解除し、該ドラム保持部材5を支持軸4から取り外す。次いで、図3に示すように、ドラム保持部材5にドラムW1を装着する。このとき、ドラムW1の一端部に形成されている前記切欠Xを、前記凸部6の第1係合部材10に係合させる。
続いて、図1に示すように、ドラムW1が装着されたドラム保持部材5を支持軸4に装着する。このとき、ドラムW1の他端部に形成されている前記切欠Xを、当接ブロック12の第2係合部材15に係合させるようにして、該当接ブロック12にドラム保持部材5及びドラムW1を当接させる。
そして、拡径手段14の押圧ナット19を回転させて、テーパ部材17をテーパ部16に接近させる。これによって、コレット13が拡径され、それに追従してドラム保持部材5が拡径され、ドラムW1が固定保持される。
この状態で、前記支持軸4を回転させることにより、ドラム保持部材5及びドラムW1を回転させる。一方、切断手段3の砥石7を回転させ、ドラムW1に圧接させる。これにより、ドラムW1は周方向に切断され、一挙に複数の金属リングが形成される。
なお、ドラムW1は、その両端部の前記切欠Xが形成されている部分の金属リングについては、前記無段変速機用ベルトのリング部材として使用されないので、両端縁部の所定幅が両端位置の砥石7によって同時に切除される。このとき切除するドラムの両端部は、ドラムW1材料をリング部材として有効に利用するためにリング部材の所定幅よりも小とされている。しかし、ドラムW1の両端の切除する部分の幅寸法が小さいために、リング状に切断された瞬間にドラム保持部材5への保持状態が不十分となって滑りが生じる。このとき更に、切除部分に延びや歪みが生じると、回転する砥石7と共に浪打ち回転して砥石7を傷めるおそれがある。そこで、本実施形態においては、ドラムW1の両端部の切除する部分を、該ドラムW1の切欠Xを介して前記第1係合部材10及び第2係合部材15により係止しておくことにより、ドラム保持部材5と切除部分との滑りを防止し、これによって、砥石7の損傷を防止している。
また、図5に示すように、各環状溝8の底部にはドレッシング材25を設けておくことが好ましい。該ドレッシング材25は、金属製のベース板26と、該ベース板26に電着されたダイヤモンド粒27とによって構成されている。該ドレッシング材25を設けた場合には、ドラムW1が輪切り状に切断されるとき、ドラムW1を切断した砥石7が環状溝8に進入し、該砥石7の先端の砥粒切刃28がドレッシング材25に摺接する。これによって、ドラムW1の切断乃至砥粒切刃28のドレッシングが一挙動で行なわれ、砥粒切刃28の目詰まりが除去されると共に、各砥石7が均等に研磨され、各砥石7の外径を均一にすることができる。これによって、各砥石7を第2の回転軸24から取り外すことなく各環状溝8のドレッシング材25により砥粒切刃28のドレッシングを行なうことができ、しかも、ドラムW1の切断直後にドレッシングが行なわれるので、作業効率を飛躍的に向上させることができる。また、各環状溝8のドレッシング材25により各砥石7が均一に研磨されて各砥石7に外径のバラツキが生じないので、切断不良が生じることなく確実にドラムW1を切断することができる。
なお、ドラムW1から複数の金属リングを切断形成する場合には、本実施形態のように複数の砥石7を設ける以外に、図示しないが、単一の砥石によりドラムW1の一端部から他端部に向かって順次輪切り状に切断することが考えられる。この場合にも、図1示と同様に構成されたドラム保持部材6、即ち、複数の環状溝8を設け、該環状溝8にドレッシング材9を設けておくことで単一の砥石であってもその砥粒切刃のドレッシングを効率よく行なえることは言うまでもない。
また、本実施形態においては、前記切断手段3の切刃として円盤状の砥石7を採用したが、これ以外に、図示しないが、複数のバイト等を切刃として採用してもよい。
以上のようにしてドラムW1を切断して得られた金属リングW2(図7参照)は、ドラム保持部材5から取り外される。ここで、ドラム保持部材5からの金属リングW2の取外しについて説明する。本実施形態におけるドラム保持部材5からの金属リングW2の取外しは、図6に示す保持解除装置29によって行なわれる。先ず、本実施形態において採用する保持解除装置29の構成を説明する。
本実施形態における保持解除装置1は、図6に示すように、前記ドラム保持部材5を載置する載置部30と、該載置部30に対向する昇降自在の押圧部材31と、該押圧部材31を昇降させると共に該押圧部材31を介してドラム保持部材5を下方に押圧する押圧手段32(昇降手段)とを備えている。
前記載置部30は、台座33に設けられたリング受け部34の上部に固設されている。該載置部30の上部には、前記ドラム保持部材5の下端縁部に形成された第1テーパ部35に対応して該第1テーパ部35を介してドラム保持部材5を縮径方向に摺接案内する第1案内傾斜部36が形成されている。また、該載置部30の中央部には、ドラム保持部材5を載置部30上に案内する案内ロッド37が立設されている。
前記押圧部材31は、前記押圧手段32にボルト38を介して吊設されている。該押圧部材31の下部には、前記ドラム保持部材5の上端縁部に形成された第2テーパ部39に対応して該第2テーパ部39を介してドラム保持部材5を縮径方向に摺接案内する第2案内傾斜部40が形成されている。即ち、前記載置部30の第1案内傾斜部36と該押圧部材31の第2案内傾斜部40とは、本発明の縮径手段を構成している。
前記押圧手段32は、台座33に立設された支柱41と、該支柱41の頂部に枢軸42を介して揺動自在に設けられた揺動レバー43とによって構成されており、該揺動レバー43には、押圧部材31がリンク部材44を介して前記ボルト38により連結されている。該ボルト38は押圧部材31を貫通して保持板45を介して押圧部材31とリンク部材44とを連結している。
次に、保持解除装置29の作動を説明する。先ず、前記ドラム保持部材5は、前述した図1示の支持軸4から取り外され、図7に示すように外周に複数の金属リングW2を支持した状態で軸線を上下方向にむけて図6に示す保持解除装置29にセットされる。即ち、図6に示すように、ドラム保持部材5を載置部30に載置し、揺動レバー43を操作して前記押圧部材31をドラム保持部材5の上部に当接させる。これによって、図8(a)に示すように、ドラム保持部材5の第1テーパ部35が載置部30の第1案内傾斜部36に当接され、ドラム保持部材5の第2テーパ部39が押圧部材31の第2案内傾斜部40に当接される。
次いで、揺動レバー43を枢軸42を支点として更に下方に揺動させる。これにより、図8(b)に示すように、ドラム保持部材5の第1テーパ部35が載置部30の第1案内傾斜部36に沿って案内されると同時に、ドラム保持部材5の第2テーパ部39が押圧部材31の第2案内傾斜部40に沿って案内され、割溝9(図7参照)が狭縮して該ドラム保持部材5が縮径される。また、図8(b)に示すように、ドラム保持部材5は、前述した環状溝8が形成されていることにより、押圧部材31と載置部30との挟持押圧に伴って、各環状溝8が狭縮し、ドラム保持部材5の上下方向の中央部分が僅かに湾曲変形する。
これにより、ドラム保持部材5の外周面が各金属リングW2から離反し、各金属リングW2は自重により落下してドラム保持部材5から脱出される。そして、ドラム保持部材5から脱出した各金属リングW2は図1中仮想線示するようにリング受け部34に沿って落下し台座33上に移載される。
なお、本実施形態の保持解除装置29においては、前記揺動レバー43を操作して前記押圧部材31を押し下げる構成の押圧手段32を設けたが、これに限るものではなく、前記押圧部材31を押し下げる押圧手段として、図示しないが、シリンダやモータによる駆動機構を採用してもよい。
産業上の利用可能性
以上のように、本発明は、金属製ドラムを輪切り状に切断して高精度な金属リングを効率良く製造することができるので、無段変速機の動力伝達用ベルトを構成するリング部材として用いる金属リングの製造に好適に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の一実施形態である切断装置の構成を示す説明図、図2はドラムの形成手順を示す説明図、図3はドラム及びドラム保持部材を示す説明的斜視図、図4はコレットの説明的斜視図、図5はドレッシング部材を示すドラム保持部材の部分的拡大断面図、図6は保持解除装置を一部破断して示す説明図、図7は金属リングを支持したドラム保持部材の説明的斜視図、図8は保持解除装置の要部の作動を示す断面説明図である。

Claims (11)

  1. 金属製の薄板により円筒状に形成されたドラムを輪切り状に切断して無端帯状の金属リングを形成する金属製薄板ドラムの切断装置であって、回転駆動される支持軸と、該支持軸に支持され、前記ドラムの全長にわたって該ドラムの内周面に圧接して該ドラムを保持する円筒状のドラム保持部材と、該ドラム保持部材を介して前記支持軸によって回転されるドラムの所定位置に当接して切り込む切刃が設けられた切断手段とを備えてなり、前記ドラムは、その両端縁部の一部に形成された切欠と、該切欠が形成された両端部全周が切除される切除部と、両切除部の間に位置して金属リングが形成されるリング形成部とを備え、前記ドラム保持部材は、ドラムを保持したとき前記切欠に係止してドラムの切除部を回転不能に規制する係止部材を備えることを特徴とする金属製薄板ドラムの切断装置。
  2. 前記ドラム保持部材は、前記支持軸の一端から取外し自在に設けられていることを特徴とする請求の範囲第1項記載の金属製薄板ドラムの切断装置。
  3. 前記支持軸は、駆動手段によって回転駆動される主軸と、該主軸に外挿され、軸線方向に延びる複数の割溝により拡径自在に形成された円筒状のコレットと、該コレットの各割溝の間隔を拡張させて該コレット外径を拡径させる拡径手段とを備え、前記ドラム保持部材は、軸線方向に延びる複数の割溝により拡径自在に形成されて前記コレットに装着され、前記拡径手段による該コレット外径の拡径に追従して拡径することによりドラムの内周面に圧接して該ドラムを保持することを特徴とする請求の範囲第2項記載の金属製薄板ドラムの切断装置。
  4. 前記拡径手段は、前記コレットの一端部に対応する前記主軸の基端部外周に設けられて該主軸の先端に向かって次第に縮径するテーパ部と、前記コレットの他端部に対応する該主軸の先端部外周に該主軸の軸線に沿って移動自在に設けられて該主軸の基端部に向かって次第に縮径するテーパ部材と、該主軸の先端に装着されて該テーパ部材に当接する押圧部材とを備え、該押圧部材により前記テーパ部材を前記テーパ部に接近する方向に押圧移動させて、前記コレットの両端部を介して該コレットを拡径させることを特徴とする請求の範囲第3項記載の金属製薄板ドラムの切断装置の切断装置。
  5. 前記ドラムは、矩形状の金属製平板の両端縁を互いに溶接接合することにより円筒状に形成され、前記切欠は、該溶接時の位置決め用に形成されたものであることを特徴とする請求の範囲第1項記載の金属製薄板ドラムの切断装置。
  6. 前記切刃は前記ドラム保持部材の軸線方向に沿って所定間隔を存して複数配設されていることを特徴とする請求の範囲第1項記載の金属製薄板ドラムの切断装置。
  7. 前記ドラム保持部材の外周には、前記切刃の切り込み位置に対応する環状溝が形成されていることを特徴とする請求の範囲第1項記載の金属製薄板ドラムの切断装置。
  8. 前記切刃はドラムの所定位置に切り込む砥粒切刃が周縁に形成された円盤状の砥石であって、前記環状溝には、前記ドラムに切り込んだ前記砥粒切刃に摺接して該砥粒切刃をドレッシングするドレッシング材が埋設されていることを特徴とする請求の範囲第8項記載の金属製薄板ドラムの切断装置。
  9. 前記ドラム保持部材は縮径自在に形成されており、前記ドラムが切断された金属リングを保持した状態で前記支持軸から取り外された該ドラム保持部材を縮径させて金属リングの内周面への圧接を解除する保持解除手段を設けたことを特徴とする請求の範囲第2項記載の金属製薄板ドラムの切断装置。
  10. 前記ドラム保持部材は、その両端縁部に軸線方向の外方に向かって次第に縮径する一対のテーパ部を備えて縮径自在に形成されており、前記保持解除手段は、前記支持軸から取り外された前記ドラム保持部材を、軸線方向を上下方向に向けて保持すると共に該ドラム保持部材を縮径させる縮径手段と、該縮径手段に保持されたドラム保持部材の下方位置に設けられ、該ドラム保持部材の縮径によって該ドラム保持部材による支持が解除されて落下する金属リングを受けるリング受け部とを備え、前記縮径手段は、前記ドラム保持部材の下縁部に当接して該ドラム保持部材を載置する載置部と、該載置部に対向して昇降自在に設けられ、該ドラム保持部材の上端縁部を下方に押圧する押圧部材と、該押圧部材を昇降させる昇降手段とを備え、前記載置部は、前記ドラム保持部材の下縁部のテーパ部に対応して該テーパ部を介してドラム保持部材を縮径方向に摺接案内する第1案内傾斜部を備え、前記押圧部材は、前記ドラム保持部材の上縁部のテーパ部に対応して該テーパ部を介してドラム保持部材を縮径方向に摺接案内する第2案内傾斜部を備えることを特徴とする請求の範囲第10項記載の金属製薄板ドラムの切断装置。
  11. 前記ドラムを切断することにより得られる金属リングは、無段変速機用ベルトの複数のエレメントを無端状に結束するリング部材であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の金属製薄板ドラムの切断装置。
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