JP3832101B2 - 距離測定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、距離測定装置に関し、特にレーザ光を掃引照射して反射物体による反射光を検出し、レーザ光を照射したタイミングと反射光を検出したタイミングとの時間差に基づいて、反射物体までの距離または距離を表す物理量を算出する距離測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車などに取り付けられ、車両周囲の所定角度に渡り、レーザ光を断続的に照射して反射物体により反射された反射光を検出し、そのレーザ光を照射したタイミングと、反射光を検出したタイミングとの時間差を測定して、その時間差に基づいて反射物体までの距離を算出する距離測定装置が知られている。このような距離測定装置においては、広い検知エリアを確保するために、掃引照射範囲(スキャンエリア)を広げることが基本的には望ましい。
【0003】
但し、スキャンエリアを広げると、反射光を検出する部分における受光素子部の面積を大きくする必要があり、例えば対向車線を走行している自動車に搭載された距離測定装置から照射されたレーザ光を受光してしまったり、あるいは隣接レーンを走行している自動車に搭載された距離測定装置から照射されたレーザ光の反射物体による反射光を受光してしまったりして、適切な距離測定が妨害されてしまうおそれがある。
【0004】
そのため、例えば特開平7−98381号公報においては、外乱光ノイズの影響を極力小さくする目的で次のような構成を採用している。つまり、受光する部分には複数の受光素子が配列されており、レーザ光の照射方向に応じて、複数の受光素子の内の一部のみを機能させることによって、実質的に受光する面積を小さくするのである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、距離測定対象の2次元的な位置情報を得るために、受光素子をマトリックス状に配置することはもちろん、レーザ光の照射についても、2次元的に照射方向を変えていく必要があった。つまり、レーザ光を車幅方向の所定角度に渡って照射するための機構と、レーザ光を車高方向の所定角度に渡って照射するための機構の両方が必要となり、複雑な構成となってしまう。例えば、レーザ光を照射用ミラーにて反射させて照射するのであれば、そのミラーを車幅方向及び車高方向の2方向に回動させる機構が必要であり、また、その回動させるための制御も複雑となる。
【0006】
そこで、本発明は、スキャン方式は1次元のままでありながら、2次元の位置情報を得ることのできる距離測定装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達するためになされた請求項1記載の距離測定装置によれば、掃引照射したレーザ光が反射物から反射されて来た反射光を検出する。そして、レーザ光を照射してから反射光を検出するまでの時間差を計測し、その計測した時間差に基づいて反射物までの距離または距離を表す物理量を算出する。ここで、掃引照射されるレーザ光は、その光ビームの断面が掃引方向に対して垂直方向に長く設定されている。また、少なくとも掃引方向に垂直な方向に複数の受光素子が配置された受光素子部を備えていると共に、その掃引方向に垂直な方向に配置された受光素子群については、受光素子の機能の発揮の有無を個別に制御可能に構成されている。そして、掃引方向に垂直な方向での検出対象位置に応じ、機能を発揮させる受光素子を切替選択する。
【0008】
掃引照射されるレーザ光については、その光ビームの断面が掃引方向に対して垂直方向に長く設定されており、一方、受光素子群については、レーザ光の掃引方向に垂直な方向には複数の受光素子が配置されているため、レーザ光断面の長手方向に複数の受光素子が対応するよう配置される。そして、レーザ光の掃引方向に垂直な方向、すなわちレーザ光断面の長手方向に対応するよう配置された受光素子群については、受光素子の機能の発揮の有無を個別に制御可能に構成されており、掃引方向に垂直な方向での検出対象位置に応じて、機能を発揮させる受光素子を切替選択する。そのため、レーザ光の掃引操作は1次元的でありながら、その方向に垂直な方向についての位置情報も得ることができる。したがって、掃引方向に基づき、掃引方向についての位置情報も得れば、測定対象物の2次元的な位置情報を得ることができるのである。
また、外乱光ノイズの影響除去の観点からすれば、必要な受光素子のみ機能発揮させるのはもちろん、その必要な受光素子の領域が極力小さい方がよい。しかし、集光レンズの焦点位置が受光素子部の中央に設定されていると、どうしても受光素子部の周辺部分でのスポットサイズが大きくなってしまう。そこで、本願発明においては、次のような工夫を施している。すなわち、反射光検出手段が受光素子部に対して反射光を集光するための集光レンズを備えており、その集光レンズと受光素子部の中央部分との距離である第1の距離が集光レンズの焦点距離よりも短くなるよう配置している。このようにすれば、受光素子部の中央部分でのスポットサイズは相対的に大きくなるが、逆に受光素子部の周辺部分でのスポットサイズは相対的に小さくなる。なお、この場合、受光素子部の中央部分でのスポットサイズが周辺部分でのスポットサイズよりも大きくなってしまうのは好ましくないので、そこまでは焦点位置をずらさないこととする。
但し、実際には、受光素子部の周辺部分よりも中央部分にて検知される情報の頻度や重要度の方が高いことが多いと考えられるので、「中央部分でのスポットサイズ<周辺部分でのスポットサイズ」に設定することが多いと考えられる。つまり、ここでの技術思想を要約して言えば、受光素子部の中央部分に焦点位置があると周辺部分でのスポットサイズが大きくなりすぎるので、それを緩和するために焦点位置をずらすということである。
【0009】
また、請求項2に示すように、レーザ光の照射方向にも応じて、機能を発揮させる受光素子を切替選択するようにすれば、外乱光ノイズの影響を極力小さくできるという利点も併せ持つことができる。例えば上述した対向車線を走行している自動車に搭載された距離測定装置から照射されたレーザ光や隣接レーンを走行している自動車に搭載された距離測定装置から照射されたレーザ光の反射物体による反射光、あるいは太陽光などの影響を極力小さくすることができ、その結果、適切な距離測定を実現できる。
【0010】
ところで、上述したように、受光素子群については、レーザ光の掃引方向に垂直な方向には少なくとも複数の受光素子が配置されていることが必要であるが、レーザ光の掃引方向自体には、複数の受光素子が配置されていることが必須要件ではない。但し、掃引方向及び当該方向に垂直な方向に複数の受光素子が行列状に配置された受光素子部を備えるようにすれば、2次元座標位置として処理できるため、便利である。
【0011】
その場合には、例えば請求項3に示すような反射光検出手段とすることができる。すなわち、行列状に配置された受光素子部の行単位及び列単位で受光素子の機能の発揮の有無を切り替える選択スイッチとを備え、それら行単位及び列単位の選択スイッチが両方とも機能発揮側になっている場合にのみ、該当する受光素子の機能が発揮されるよう構成するのである。また、請求項4に示すように、行列状に配置された受光素子毎に機能の発揮の有無を切り替える受光素子選択スイッチを備え、受光素子を個別に制御可能に構成してもよい。
【0012】
なお、請求項3のように行列単位の選択スイッチの場合には、選択スイッチの数が行数(m)+列数(n)で済むが、請求項4のように受光素子選択スイッチの場合には、選択スイッチの数が受光素子数、すなわち行数(m)×列数(n)だけ必要である。しかし、請求項3のように行列単位の選択スイッチの場合には、機能を発揮させる領域を矩形形状でしか選択することができないが、請求項4の場合には、どのような形状の領域も選択できるため、真に必要な受光素子のみを機能発揮させる点ではより好ましい。これは、外乱光ノイズの影響除去の点でも好ましい。
【0013】
このように、受光素子の必要な受光素子のみ機能発揮させるという観点からすれば、次に示す集光レンズによる影響を考慮することが好ましい。この集光レンズは、受光素子部に対して反射光を集光するためのレンズであり、受光素子部に対して1つだけ設けられている。したがって、集光レンズの焦点位置が受光素子部の中央に設定されている場合には、反射光のスポットのサイズが、受光素子部の中央部分では小さいが、周辺部分に行くほど大きくなってしまう。そこで、請求項5に示すように、切替選択手段が、受光素子の機能を発揮させる領域に関し、受光素子部の中央部分よりも周辺部分の方が大きくなるよう切替選択することによって、外乱光ノイズの影響を極力防止できると共に、常に良好な感度を保つことができる。
【0014】
そして、受光素子の機能を発揮させる領域を、受光素子部の中央部分よりも周辺部分の方が大きくなるようにする際には、例えば請求項6に示すように、受光素子部の中央部分よりも周辺部分の方の受光素子を大きなサイズに形成することが考えられる。つまり、予めスポットサイズに併せた受光素子サイズとしておくことで、上述した行列単位の選択スイッチ(請求項3参照)あるいは受光素子選択スイッチ(請求項4参照)の数を減らすことができる。その結果、切替制御に係るロジック部の簡素化や、IC化した場合のピン数や配線数の削減という利点が得られる。
【0015】
また、請求項7に示すように、切替選択手段が、選択する受光素子数に関し、受光素子部の中央部分よりも周辺部分の方が多くなるよう切替選択するようにしてもよい。この場合には、受光素子サイズが等しいタイプの受光素子部であれば当然適用できるし、さらには、請求項6に示したように、受光素子サイズが等しくないタイプの受光素子部であっても適用できる。
【0016】
ところで、外乱光ノイズの影響除去の観点からすれば、必要な受光素子のみ機能発揮させるのはもちろん、その必要な受光素子の領域が極力小さい方がよい。しかし、集光レンズの焦点位置が受光素子部の中央に設定されていると、どうしても受光素子部の周辺部分でのスポットサイズが大きくなってしまう。そこで、次のような工夫をすることも好ましい。すなわち、請求項8に示すように、集光レンズと前記受光素子部の中央部分との距離である第1の距離が集光レンズの焦点距離よりも短くなるよう配置することによって、集光レンズと受光素子部の最外周部分との距離である第2の距離を、焦点距離に相対的に近づけるのである。このようにすれば、受光素子部の中央部分でのスポットサイズは相対的に大きくなるが、逆に受光素子部の周辺部分でのスポットサイズは相対的に小さくなる。なお、この場合、受光素子部の中央部分でのスポットサイズが周辺部分でのスポットサイズよりも大きくなってしまうのは好ましくないので、そこまでは焦点位置をずらさないこととする。したがって、請求項9に示すように、焦点距離に対する第1の距離のずれ量の絶対値が、焦点距離に対する前記第2の距離のずれ量の絶対値と等しくなるよう配置した状態が限界である。
【0017】
但し、実際には、受光素子部の周辺部分よりも中央部分にて検知される情報の頻度や重要度の方が高いことが多いと考えられるので、「中央部分でのスポットサイズ<周辺部分でのスポットサイズ」に設定することが多いと考えられる。つまり、ここでの技術思想を要約して言えば、受光素子部の中央部分に焦点位置があると周辺部分でのスポットサイズが大きくなりすぎるので、それを緩和するために焦点位置をずらすということである。
【0018】
なお、この距離測定装置は、例えば請求項に示すように車両に搭載されて用いられることを前提とし、前記レーザ光の掃引方向が車幅方向あるいは車高方向であることが考えられる。このように設定すると、距離測定に際して、測定対象物の位置が、車幅方向及び車高方向の2次元位置として得られるため、処理が容易となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、実施の形態の距離測定装置1を表す概略構成図である。なお、本実施の形態の距離測定装置1は、自動車に搭載されて前方の車両や障害物等の反射物体を検出するためのものである。
【0020】
本距離測定装置1は、送受信部31と演算部33とを主要部として次のように構成されている。図1に示すように、送受信部31は、パルス状のレーザ光Hを、スキャン機構部35を介して放射する半導体レーザダイオード(以下、単にレーザダイオードと称する。)39と、図示しない反射物体としての障害物に反射されたレーザ光Hを受光レンズ41を介して受光し、そのパルス状の強度変化に対応する電圧変化を出力する受光素子部43とを備えている。
【0021】
レーザダイオード39はLD駆動部40を介して演算部33に接続され、演算部33からのトリガー信号としての駆動信号によりレーザ光Hを放射(発光)する。また、スキャン機構部35は、絞り45、投光レンズ46、ミラー47及びスキャナ49を備えており、レーザダイオード39から放射されたレーザ光Hは絞り45によって断面が略長方形状の光ビームとされ、投光レンズ46によって光ビームの断面がさらに細長くされる。そして、そのレーザ光Hは、スキャナ49によって揺動されるミラー47を介して掃引照射される。本実施形態においては、このレーザ光Hは、車両の前方において、車幅方向の水平面内の所定角度に渡り掃引照射される。
【0022】
なお、本実施形態のスキャン機構部35によるスキャンエリアは、縦方向(車高方向)が4deg、横方向(車幅方向)が16degの矩形領域であり、スキャナ49は、横方向(車幅方向)の16deg分が確保できるようにミラー47を揺動してレーザ光Hを掃引照射する。一方、縦方向(車高方向)にはスキャンしない。その代わりに、絞り45及び投光レンズ46によって光ビームの断面が略長方形状とされたレーザ光Hは、その光ビームの断面形状自体が、縦方向(車高方向)の4deg分を確保できるような縦長形状に形成されている。
【0023】
一方、受光素子部43は、受光レンズ41を介して受光したレーザ光Hのパルス状の強度変化に対応する電圧変化を出力するフォトダイオード(PD)のセルが行列状に配置されている。本実施形態においては、上述したスキャンエリア(縦方向(車高方向)4deg、横方向(車幅方向)16deg)が確保できるように縦方向(車高方向)及び横方向(車幅方向)に所定数ずつ配置されたPDマトリックスとして構成されている。
【0024】
そして、図2に示すように、そのPDマトリックスの行単位で各PDセルの機能の発揮の有無を切り替える垂直方向選択スイッチ51と、列単位で各PDセルの機能の発揮の有無を切り替える水平方向選択スイッチ52とを備えている。そして、これら垂直方向選択スイッチ51及び水平方向選択スイッチ52が両方とも機能発揮側になっている場合にのみ、該当するPDセルの機能が発揮されるよう構成されている。したがって、これら垂直方向選択スイッチ51及び水平方向選択スイッチ52がセル選択部50を構成する。なお、図2においては、垂直方向選択スイッチ51の場合はスイッチが開いている状態が機能発揮側であり、逆に水平方向選択スイッチ52の場合はスイッチが閉じている状態が機能発揮側である。
【0025】
受光素子部43の出力電圧は、アンプ53を介して時間計測回路61へ入力される。なお、アンプ53に入力させる前に、例えばSTC(Sensitivity Time Control)回路を介して所定レベルに増幅されてもよい。受信信号強度は目標物までの距離の4乗に反比例するため、近距離にリフレクタ等の反射率の高いものがあり受光強度がきわめて強くなった場合を補償する点でこのSTC回路は好ましい。
【0026】
時間計測回路61には、演算部33からLD駆動部40へ出力される駆動信号も入力され、上記駆動信号をスタートパルスPA、上記受光信号をストップパルスPBとし、2つのパルスPA,PB間の位相差(すなわち入力時間差)を2進デジタル信号に符号化して、その値を演算部33へ入力する。この時間計測回路61は、微小時間を数値化することができ、放射されたレーザ光H1発に対して複数の受光信号があってもそれぞれの信号についての時間差を検出することができるものである。なお、このことを「マルチラップが可能である」と表現し、またこのようにして得たデータをマルチラップデータと表現している。
【0027】
演算部33は、時間計測回路61からの時間差データと、そのときのミラー47の揺動角に基づき、障害物までの距離および方向を算出する。なお、演算部33には図示しない車速センサからの車速信号も入力している。
次に、このように構成された距離測定装置1の作動について説明する。
【0028】
まず、距離測定の概略について説明する。演算部33がLD駆動部40に対して、レーザダイオード39を発光させるために発光トリガーとしての駆動信号を出力し、レーザダイオード39を発光させる。この発光に対応し、図示しない障害物に反射されたレーザ光Hを受光レンズ41を介して受光する。そしてこの受光したレーザ光Hは、受光素子部43でその強度に対応する電圧に変換され、アンプ53を介して時間計測回路61へ入力する。そして、時間計測回路61は、放射されたレーザ光H1発に対して複数の反射信号があってもそれぞれの信号についての時間差を検出して、マルチラップ距離データとして演算部33に入力する。この時間計測回路61から入力された距離データは、演算部33の図示しないRAMに記憶される。演算部33により時間差から求められた距離データは、受光素子部43における検出の遅延時間やアンプ53における検出の遅延時間を考慮して、距離に対応した正確な時間差に変換した後、その時間差と光速とから、正確な距離データとして求められている。なお、直接、距離のデータでなくても、距離を表す物理量ならば良く、例えば前記正確な時間差そのものでも良い。遅延時間が考慮された時間差は距離に比例しているので、距離そのものの代りに用いることができる。このような、正確な距離データあるいは正確な時間差は、時間計測回路61から演算部33が受け取った際に算出しておけば良い。
【0029】
これが距離測定の概略であるが、本実施形態においては、演算部33がスキャナ49を介してミラー47を揺動させて上述した所定のスキャンエリアをスキャンする手法を採用している。これによって、レーザ光Hは車両の前方において水平面内の所定角度(16deg)に渡り掃引照射される。
【0030】
この際、本実施形態においては、同一のスキャン角度において複数回レーザ光Hを照射し、照射毎に機能発揮させるPDセルを切り替えながら、受光及び測距を行う。この点を、例えば図3(b)に示したPDマトリックスのイメージ図を参照して説明すれば、縦方向に4つのセルがあるが、最初は図3(c)に示すように最上部のセルだけを機能発揮させ、2回目は2番目のセル、3回目は3番目のセル、そして最後は図3(d)に示すように最下部のセルだけ、というように順番に機能発揮させるセルを切り替えていく。
【0031】
上述した縦方向(車高方向)4deg、横方向(車幅方向)16degのスキャンエリア中における上側に近いほど、受光素子部43のPDマトリックス中では下側に近いセルに受光することとなり、逆にスキャンエリア中における下側に近いほど、受光素子部43のPDマトリックス中では上側に近いセルに受光することとなる。したがって、同一のスキャン角度においてレーザ光Hを照射したとしても、例えば図3(c)に示すように最上部のセルだけを機能発揮させれば、スキャンエリア中の下部に存在する対象物を測距することができ、図3(d)に示すように最下部のセルだけ機能発揮させれば、スキャンエリア中の上部に存在する対象物を測距することができる。
【0032】
つまり、横方向(車幅方向)にスキャンしているが、そのスキャン方向に垂直な方向(車高方向)での検出対象位置に基づいて、機能を発揮させる受光素子を切替選択できるようにしたため、レーザ光Hは1次元的にスキャンしていながら、その方向に垂直な方向についての位置情報も得ることができる。したがって、スキャン操作に基づき、横方向(車幅方向)についての位置情報も得れば、測定対象物の2次元的な位置情報を得ることができるのである。これにより、スキャン方式は1次元のままでありながら、2次元の位置情報を得られる距離測定装置1を実現することができる。
【0033】
また、図3(b)に示したPDマトリックスのイメージ図では横方向に8つのセルがある。この横方向についても全てのセルを機能発揮状態にするのではなく、この場合にはレーザ光Hの照射方向に応じて、その照射方向であれば、PDマトリックス中のこの部分に受光するであろうと予測されるセルだけを機能発揮させる。例えば、図4に示す車両Aを測距対象としている場合には、その車両Aからの反射光は受光レンズ41を介して受光素子部43中の相対的に右部側に受光すると予測される。したがって、その受光が予測されるセルを特定し、垂直方向選択スイッチ51及び水平方向選択スイッチ52を制御して、該当するPDセルのみが機能発揮されるようにする。このようにレーザ光Hの照射方向に応じて機能を発揮させる受光素子を切替選択するようにすれば、外乱光ノイズの影響を極力小さくできる。
【0034】
例えば図4中の車両Bが対向車線を走行している自動車であったとすると、その車両Bに搭載された距離測定装置から照射されたレーザ光Hは、受光レンズ41を介して受光素子部43中の相対的に左部側に受光すると予測されるが、その部分のPDセルは機能発揮されない状態とされている。そのため、その車両Bからのレーザ光Hによる悪影響は生じない。
【0035】
このように、スキャンエリア中における検出対象の縦方向(車高方向)位置に応じると共に、レーザ光Hの照射方向に応じて機能発揮させるPDセルを切り替えていくことにより、「必要なPDセルのみ機能発揮させる」ことができるのであるが、受光レンズ41による集光機能を鑑みると、次の点を考慮して「必要なPDセル」を決定することが好ましい。つまり、受光レンズ41は、受光素子部43に対して反射光を集光する機能を持っており、本実施形態の場合には受光素子部43に対して1つだけ設けられている。そして、図5(a)に示すように、この受光レンズ41の焦点位置が受光素子部43の中央に設定されている場合には、次のような状況が生じる。すなわち、図5(b)に示すように、反射光のスポットサイズが、受光素子部43の中央部分では小さいが、周辺部分に行くほど略楕円状に大きくなってしまう。このような状況による影響を鑑みて、次のようないくつかの工夫が考えられる。
【0036】
(1)まず、このようなスポットサイズの違いに応じ、機能発揮させるPDセルの領域を、受光素子部43の中央部分よりも周辺部分の方が大きくなるよう切替選択することが考えられる。
例えば図6に示すように、縦方向に6個、横方向に18個のセルが行列状に配置されたPDマトリックスを考える。この場合、受光レンズ41に対する水平方向(車幅方向)の入射角度が0degの場合には、4セルの矩形エリアを同時に選択する。具体的には、セル位置を(m,n)で示すと次のような4セルが1グループとなる。
【0037】
(9,1)+(10,1)+(9,2)+(10,2)
(9,2)+(10,2)+(9,3)+(10,3)
(9,3)+(10,3)+(9,4)+(10,4)
(9,4)+(10,4)+(9,5)+(10,5)
(9,5)+(10,5)+(9,6)+(10,6)
一方、受光レンズ41に対する水平方向(車幅方向)の入射角度が−10degの場合には、8セルの矩形エリアを同時に選択する。具体的には、次のような8セルが1グループとなる。
【0038】
(1,1)+(2,1)+(3,1)+(4,1)+(1,2)+(2,2)+(3,2)+(4,2)
(1,2)+(2,2)+(3,2)+(4,2)+(1,3)+(2,3)+(3,3)+(4,3)
(1,3)+(2,3)+(3,3)+(4,3)+(1,4)+(2,4)+(3,4)+(4,4)
(1,4)+(2,4)+(3,4)+(4,4)+(1,5)+(2,5)+(3,5)+(4,5)
(1,5)+(2,5)+(3,5)+(4,5)+(1,6)+(2,6)+(3,6)+(4,6)
なお、複数のPDセルを同時に機能発揮させる場合には、そのPDセル領域に対応する垂直方向選択スイッチ51及び水平方向選択スイッチ52(図2参照)を同時に切り替えればよい。
【0039】
こうすることによって、スポットサイズの違いに応じて「必要なPDセルのみ機能発揮させる」ことができるため、外乱光ノイズの影響を極力防止できると共に、常に良好な感度を保つことができる。
(2)また、図6に示した例では、受光素子部43のPDマトリックスを構成する各PDセルの大きさは等しいことを前提としたが、「機能を発揮させる領域を受光素子部43の中央部分よりも周辺部分の方を大きくする」ための手法としては、次のような工夫も考えられる。つまり、図7に示すように、PDマトリックスを構成するPDセルのサイズ自体を、受光素子部の中央部分よりも周辺部分の方が大きくなるように形成するのである。
【0040】
予めスポットサイズに併せたPDセルサイズとしておくことで、受光レンズ41に対して垂直方向から±10deg傾いて入射した場合であっても、4セルの矩形エリアを同時に選択するだけでよくなる。その結果、垂直方向選択スイッチ51及び水平方向選択スイッチ52(図2参照)の数を減らすことができ、切替制御に係るロジック部の簡素化や、IC化した場合のピン数や配線数の削減という利点が得られる。なお、図7の例では横方向(車幅方向に対応する方向)のみサイズを大きくしているが、縦方向(車高方向に対応する方向)のサイズを大きくしてもよい。
【0041】
また、図7に示す例では、0deg,±5deg,±8deg,±10degのいずれの場合にも4つのPDセルのみを機能発揮させればよいようにしたが、これには限られず、例えば±10degにおいては、6つのPDセルで対応するように、セルサイズを設定してもよい。
【0042】
(3)さらに、外乱光ノイズの影響除去の観点からすれば、上述した「必要なPDセルのみ機能発揮させる」ことはもちろん、その「必要なPDセル」の領域が極力小さい方がよい。したがって、図8(a)に示すように、受光レンズ41の焦点位置が受光素子部43の中央に設定されていると、どうしても受光素子部43の周辺部分でのスポットサイズが大きくなってしまう(図5等参照)。そこで、図8(b)に示すように、受光レンズ41と受光素子部43の中央部分との距離である第1の距離が受光レンズ41の焦点距離よりも短くなるよう配置することによって、受光レンズ41と受光素子部43の最外周部分との距離である第2の距離を、焦点距離に相対的に近づける。
【0043】
このようにすれば、例えば、図9に示した受光ビームのスポットサイズ角度特性からも判るように、受光素子部43の中央部分でのスポットサイズは相対的に大きくなるが、逆に受光素子部43の周辺部分でのスポットサイズは相対的に小さくなる。なお、この場合、受光素子部43の中央部分でのスポットサイズが周辺部分でのスポットサイズよりも大きくなってしまうのは好ましくないので、そこまでは焦点位置をずらさないこととする。したがって、焦点距離に対する第1の距離のずれ量の絶対値が、焦点距離に対する第2の距離のずれ量の絶対値と等しくなるよう配置した状態が限界である。
【0044】
但し、実際には、受光素子部43の周辺部分よりも中央部分にて検知される情報の頻度や重要度の方が高い場合が多いと考えられるので、「中央部分でのスポットサイズ<周辺部分でのスポットサイズ」に設定することが多い。図9に示す例では、入射角度が5deg付近でスポットサイズが最も小さくなるようにしているが、10degでのスポットサイズは0degでのスポットサイズの2倍程度はある。
【0045】
なお、本実施の形態において、レーザダイオード39、LD駆動部40及びスキャン機構部35が掃引照射手段に該当し、受光レンズ41、受光素子部43が反射光検出手段に該当し、時間計測回路61が時間差計測手段に該当し、演算部33が距離算出手段に該当し、演算部33及びセル選択部50が切替選択手段に該当する。
【0046】
[その他]
本発明の距離測定装置1は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の態様で構成することができる。
例えば、上記実施形態においては、図2に示すように、PDセルが行列状に配置された受光素子部43のPDマトリックスに対して、行単位及び列単位で受光素子の機能の発揮の有無を切り替える垂直方向選択スイッチ51及び水平方向選択スイッチ52を備え、それら両選択スイッチ51,52が両方とも機能発揮側になっている場合にのみ、該当するPDセルの機能が発揮されるよう構成したが、図10に示すように、PDマトリックスのPDセル毎に、機能の発揮の有無を切り替える選択スイッチを備え、PDセルを個別に制御可能に構成してもよい。
【0047】
なお、上記実施形態の用に行列単位の選択スイッチ51,52(図2参照)の場合には、選択スイッチ51,52の数が行数(m)+列数(n)で済むが、図10に示すようにPDセル毎に選択スイッチを設ける場合には、選択スイッチの数が受光素子数、すなわち行数(m)×列数(n)だけ必要である。しかし、行列単位の選択スイッチ51,52の場合には、機能を発揮させる領域を矩形形状でしか選択することができないが、図10に示すPDセル毎の選択スイッチであれば、どのような形状の領域も選択できるため、真に必要な受光素子のみを機能発揮させる点ではより好ましい。これは、外乱光ノイズの影響除去の点でも好ましい。
【0048】
また、上記実施形態ではスキャン機構部35のミラー47としてガルバノミラーを用いていたが、図11に示すように、ポリゴンミラー147を用いてもよい。この場合には、ポリゴンミラー147の各面の倒れ角に応じて2次元的にもスキャンすることとなるが、上述した本発明の効果はこのような態様でも有効である。つまり、図3(a)に示すようなレーザ光Hの照射がポリゴンミラー147の各面の倒れ角に応じて上下方向に位置を変えて同様に実施されることとなるが、ポリゴンミラー147のある1面について考えた場合には、レーザ光Hを1次元的に照射しながら、図3(b)にて説明したように2次元的な位置の区別ができる点は同様であり、これまでに説明した効果は得られる。つまり、従来方式で同様のことを実現しようとした場合には、やはりポリゴンミラー147自体を2次元的に駆動させる機構が必要であるため、本発明の優位性は明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一実施の形態の距離測定装置を表す概略構成図である。
【図2】 前記距離測定装置における送受信部の構成説明図である。
【図3】 レーザ光の光ビーム断面のイメージや受光素子部のPDマトリックスのイメージを示す説明図である。
【図4】 前記距離測定装置の作用効果を示すための説明図である。
【図5】 ビームの入射角度に対するスポットサイズの説明図である。
【図6】 ビームの入射角度に対するスポットサイズの違いによる影響を解消するための1手法(選択セル数可変)を示す説明図である。
【図7】 ビームの入射角度に対するスポットサイズの違いによる影響を解消するための1手法(不等セルサイズ)を示す説明図である。
【図8】 ビームの入射角度に対するスポットサイズの違いによる影響を解消するための1手法(焦点位置移動)を示す説明図である。
【図9】 受光ビームのスポットサイズ角度特性を示すグラフである。
【図10】 選択スイッチ部分の別実施形態の説明図である。
【図11】 ミラー部分の別実施形態の説明図である。
【符号の説明】
1…距離測定装置 31…送受信部
33…演算部 35…スキャン機構部
39…レーザダイオード 40…LD駆動部
41…受光レンズ 43…受光素子部
45…絞り 46…投光レンズ
47…ミラー 49…スキャナ
50…セル選択部 51…垂直方向選択スイッチ
52…水平方向選択スイッチ 53…アンプ
61…時間計測回路 147…ポリゴンミラー
A,B…車両 H…レーザ光

Claims (8)

  1. レーザ光を掃引照射する掃引照射手段と、
    前記掃引照射手段にて掃引照射されたレーザ光が反射物から反射されて来た反射光を検出する反射光検出手段と、
    前記掃引照射手段がレーザ光を照射してから前記反射光検出手段が反射光を検出するまでの時間差を計測する時間差計測手段と、前記時間差計測手段にて計測された時間差に基づいて前記反射物までの距離または距離を表す物理量を算出する距離算出手段と、
    を備えた距離測定装置において、
    前記掃引照射されるレーザ光は、その光ビームの断面が、掃引方向に対して垂直方向に長く設定されており、
    前記反射光検出手段は、少なくとも掃引方向に垂直な方向に複数の受光素子が配置された受光素子部を備えていると共に、前記掃引方向に垂直な方向に配置された受光素子群については、受光素子の機能の発揮の有無を個別に制御可能に構成されており、さらに、前記掃引方向に垂直な方向での検出対象位置に応じて、機能を発揮させる受光素子を切替選択する切替選択手段を備えており、
    前記反射光検出手段は、前記受光素子部に対して前記反射光を集光するための集光レンズを備えており、前記集光レンズと前記受光素子部の中央部分との距離である第1の距離が前記集光レンズの焦点距離よりも短くなるよう配置されていること、
    を特徴とする距離測定装置。
  2. 請求項1記載の距離測定装置において、
    前記切替選択手段は、前記レーザ光の照射方向にも応じて、機能を発揮させる受光素子を切替選択すること、
    を特徴とする距離測定装置。
  3. 請求項1又は2記載の距離測定装置において、
    前記反射光検出手段は、
    掃引方向及び当該方向に垂直な方向に複数の受光素子が行列状に配置された受光素子部と、
    その行列状に配置された受光素子部に対し、行単位及び列単位で前記受光素子の機能の発揮の有無を切り替える選択スイッチとを備えており、
    それら行単位及び列単位の選択スイッチが両方とも機能発揮側になっている場合にのみ、該当する受光素子の機能が発揮されるよう構成されていること、
    を特徴とする距離測定装置。
  4. 請求項1又は2記載の距離測定装置において、
    前記反射光検出手段は、
    掃引方向及び当該方向に垂直な方向に複数の受光素子が行列状に配置された受光素子部と、
    前記受光素子毎に機能の発揮有無を切り替える受光素子選択スイッチとを備えていること、
    を特徴とする距離測定装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか記載の距離測定装置において、
    記切替選択手段は、前記受光素子の機能を発揮させる領域に関し、前記受光素子部の中央部分よりも周辺部分の方が大きくなるよう切替選択すること、
    を特徴とする距離測定装置。
  6. 請求項5記載の距離測定装置において、
    前記受光素子は、前記受光素子部の中央部分よりも周辺部分の方が大きなサイズに形成されていること、
    を特徴とする距離測定装置。
  7. 請求項5又は6記載の距離測定装置において、
    前記切替選択手段は、選択する受光素子数に関し、前記受光素子部の中央部分よりも周辺部分の方が多くなるよう切替選択すること、
    を特徴とする距離測定装置。
  8. 請求項1〜のいずれか記載の距離測定装置において、
    車両に搭載されて用いられることを前提とし、
    前記レーザ光の掃引方向は車幅方向あるいは車高方向であること、
    を特徴とする距離測定装置。
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