JP3831426B2 - インクジェット記録シートおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、インクジェット記録シートおよびその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、塗工液のポットライフが良好で、インク受理層に塗工斑、亀裂などの欠陥がなく、インク吸収性に優れるインクジェット記録シートおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、ディフレクション方式、キャビティ方式、サーモジェット方式、バブルジェット方式、サーマルインクジェット方式、スリットジェット方式およびスパークジェット方式などに代表される種々の作動原理により、インクの微小液滴を飛翔させて紙などのインクジェット記録シートに付着させ、画像・文字などの記録を行なうものであるが、高速、低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が大きい、現像−定着が不要などの長所があり、漢字を含め各種図形およびカラー画像などの記録装置として種々の用途において急速に普及している。
【0003】
さらに、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックなどの色素を各々含有させた多色インクを用いるインクジェット方式により形成された画像は、製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画に比較して、遜色のない記録画像を得ることが可能であり、また、作成部数が少なくて済む用途においては、銀塩写真による現像よりも安価であることからフルカラー画像記録分野にまで広く応用されつつある。
【0004】
このようなインクジェット記録方式で使用されるインクジェット記録シートは、支持体上にインク受理層を塗設してなるものが専用紙として巾広く使用されている。ここで、支持体としては、通常の印刷や筆記に使われる上質紙、コーテッド紙などの一般紙以外にも、学会、会議などのプレゼンテーションに用いられるオーバーヘッドプロジェクター(OHP)用あるいはバックライト用としての透明、半透明フィルムや、各種出版物、包装・装飾用としての半透明、不透明フィルムやレジンコート紙などが挙げられる。
【0005】
これらの透明、半透明あるいは不透明なフィルムやレジンコート紙などはそれ自身にインク吸収性が全く無いことや、透明あるいは半透明フィルムでは透過材料用途にも使用されるため、上質紙やコーテッド紙上に設けるインク受理層よりもインク吸収性や透明性が考慮されたインク受理層が必要であった。例えば、合成非晶質シリカまたはその塩、あるいはこれらの混合物(特開昭57−157786号公報)を主体とするようなインク受理層では、インク吸収性に優れるものの、不透明性が高いために上記のような用途には適用できなかった。
【0006】
このような実状に鑑み、例えば、アルミニウム水和物(特開平1−97678号公報、同2−276670号公報、同3−215082号公報など)などの透明性に優れる無機ゾルを主体とするようなインク受理層が提案されてきた。
【0007】
ここで、無機ゾルとしては、例えば、球状、数珠状、カチオン変性などのコロイダルシリカ、不定形、ベーマイト、擬ベーマイトなどのアルミナ水和物、シリカ/アルミナハイブリッドゾル、スメクタイト粘土などの種々なものが知られているが、特にそれ自体がカチオン性でインク色素の定着性に優れ、かつインク吸収性も有する擬ベーマイトゾルが好ましく、該素材に対して色々な提案がなされてきた。
【0008】
しかしながら、これらの無機ゾルを主体とするインク受理層では、合成非晶質シリカまたはその塩、あるいはこれらの混合物を主体とするようなインク受理層と比較してインク吸収性が劣るため、十分なインク吸収性を確保するために非常に高塗工量を必要とした。ここで、無機ゾルの固形分濃度は高々数〜20重量%程度であり、また、バインダー樹脂として、適宜使用されるような水溶性樹脂(特開平4−309533号公報、同4−6786号公報、同4−320877号公報など)の固形分濃度も同様程度に低いことは、必要なWET塗工量を増大させることにつながっている。
【0009】
支持体上の塗工液を乾燥する方法としては、支持体上に塗工された塗工液表面に熱風を吹きあてて溶媒を揮発させ乾燥する、いわゆる熱風乾燥が一般的であるが、高塗工量の場合には、熱風の風圧プロファイル、支持体の巾方向におけるプロファイル、支持体表面の不均一な粗さ、支持体の斜走などの種々な要因により乾燥前の塗工液が流動して塗工斑を発生させた。塗工斑の発生したインクジェット記録シートでは、インクの吸収性が不均一となるため印字斑が発生した。
【0010】
さらに、例えば、特開平4−309533号公報、同4−6786号公報、同4−320877号公報などに記載されているようなポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂を含むインク受理層塗工液を加熱により溶剤を揮発させると、該水溶性樹脂の不均一なマイグレーションによりインク吸収性、インク吸収速度が低下し、印字斑を助長した。
【0011】
また、上記のような無機ゾルでも、特にアルミナ水和物などは凝集力が強いため、インク受理層塗工液の乾燥工程において、凝集応力の解放により微細なクラック、チェッキングといった亀裂が塗層表面に発生した。インク受理層の亀裂は、インク吸収性が不均一化することはもちろん、インク受理層の膜強度、耐水性が低下し、さらには粉落ちなどの問題が発生した。
【0012】
上記の問題を解決する手段として、バインダー樹脂の含有量が増加すると亀裂防止に有効であることから、例えば、特開平4−345883号公報ではアルミナ水和物などの無機質粉末、ポリビニルアルコールなどの有機質バインダーおよび溶剤を含むスラリーを基材に塗布し乾燥させた後、紫外線照射またはコロナ放電によりバインダーの一部を除去して亀裂を防止する方法が提案されている。
【0013】
しかしながら、バインダーを過剰に添加することは、不均一なバインダーのマイグレーションを助長することになり、紫外線照射やコロナ放電によりバインダーの一部を除去することができても、インク吸収性の不均一化は改善されなかった。
【0014】
また、特開平6−218324号公報では、解膠剤で安定化した親液ゾルからなる塗工液を基材に塗工し、溶媒を除去して塗工層を形成する方法において、溶媒の除去の前に親液ゾルの解膠剤を除去することにより塗工液をゲル化させる方法が提案されている。
【0015】
解膠剤を除去する具体的な方法として、解膠剤として酸が用いられている場合では、該塗工層の表面に爆発限界未満の濃度のアンモニアガスを均一に吹き付ける方法、アルカリ性の場合では、塩酸、酢酸、硝酸などのガスを均一に吹き付ける方法、あるいは、当該塗工層の下層に、解膠剤と反応しうる成分を含浸させておく方法などが提案されているが、しかしながら危険性の高いガスを用いたり、複数の塗工層を形成する手段は、煩雑で生産性の低下を招く。
【0016】
また、特開平7−76161号公報では、アルミナ水和物およびポリビニルアルコールを含有し、さらにホウ酸またはホウ酸塩を含有したアルミナゾル塗工液が提案されている。しかしながら、ホウ酸やホウ酸塩をポリビニルアルコール溶液中に含有せしめたような塗工液では、経時での増粘などポットライフの問題が発生し生産性を低下させた。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、塗工液のポットライフが良好で、インク受理層に塗工斑、亀裂などの欠陥がなく、インク吸収性に優れるインクジェット記録シートおよびその製造方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、インクジェット記録シートおよびその製造方法における上記のような問題について鋭意検討を重ねた結果、インク受理層中に少なくとも特定のポリビニルアルコールと、ホウ酸または低級アルコールのホウ酸トリエステルに、多価アルコールの1種もしくは2種以上を反応させて得たホウ酸エステル化反応物を特定量含有させると、印字斑および亀裂が抑制できることを見いだした。
【0019】
ポリビニルアルコールの架橋剤としてホウ素を用いることは公知であるが、特に特定の平均重合度を有するポリビニルアルコールとホウ酸エステル化合物を用いることにより、バンイダー樹脂のマイグレーションを抑制し、無機ゾルの乾燥凝集による応力解放に耐える皮膜を形成することができた。
【0021】
さらに、上記したようなインク受理層塗工液を支持体上に塗工した後、特定温度以下でセットさせることにより、塗工液の流動およびバインダーのマイグレーションが抑制されるため、より一層印字斑、亀裂が改良されることを見いだした。
【0022】
セット乾燥は、例えば、印画紙などで行われているようなゼラチン溶液のヘリックス構造を利用した形態や特開平7−76161号公報で提案されているような無機系ホウ素化合物を用いる形態でも行うことは可能であるが、ポットライフの問題を回避することは困難であり、生産安定性をも加味した形態として、本発明のインクジェット記録シートおよびその製造方法は非常に優れたものであった。
【0023】
すなわち、本発明のインクジェット記録シートは、インク受理層が、▲1▼無機ゾル、▲2▼平均重合度500以上のポリビニルアルコール、ならびに▲3▼ホウ酸または低級アルコールのホウ酸トリエステルに、多価アルコールの1種もしくは2種以上を反応させて得たホウ酸エステル化反応物を含有し、上記▲2▼と▲3▼の混合量が該無機ゾルに対して1〜50重量%であり、かつ▲2▼と▲3▼の重量比が99.95〜90:0.05〜10であることを特徴とする。
【0026】
好ましくは、上記ポリビニルアルコールが、鹸化度98mol%未満である。
【0027】
さらに、本発明のインクジェット記録シートの製造方法は、40℃以上に加温した▲1▼無機ゾル、▲2▼ポリビニルアルコール、▲3▼ホウ酸または低級アルコールのホウ酸トリエステルに、多価アルコールの1種もしくは2種以上を反応させて得たホウ酸エステル化反応物からなるインク受理層塗工液を支持体上に塗工して後、25℃以下に冷却してセットし、次いで熱風乾燥することを特徴とするものである。
【0028】
以下、本発明のインクジェット記録シートについて、詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録シートにおける無機ゾルとは、例えば、特開平1−97678号公報、同2−275510号公報、同3−281383号公報、同3−285814号公報、同3−285815号公報、同4−92183号公報、同4−267180号公報、同4−275917号公報などに提案されている擬ベーマイトゾル、特開昭60−219083号公報、同61−19389号公報、同61−188183号公報、同63−178074号公報、特開平5−51470号公報などに記載されているようなコロイダルシリカ、特公平4−19037号公報、特開昭62−286787号公報に記載されているようなシリカ/アルミナハイブリッドゾル、その他にもヘクタイト、モンモリナイトなどのスメクタイト粘土(特開平7−81210号公報)、ジルコニアゾル、クロミアゾル、イットリアゾル、セリアゾル、酸化鉄ゾル、ジルコンゾル、酸化アンチモンゾルなどを代表的なものとして挙げることができる。
【0029】
本発明のインクジェツト記録シートには、市販の無機ゾルを好適に用いることができる。以下にその一例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
例えば、アルミナ水和物としては、カタロイドAS−1、カタロイドAS−2、カタロイドAS−3(以上、触媒化学工業製)アルミナゾル100、アルミナゾル200、アルミナゾル520(以上、日産化学工業製)、M−200(以上、水澤化学工業製)、アルミゾル10、アルミゾル20、アルミゾル132、アルミゾル132S、アルミゾルSH5、アルミゾルCSA55、アルミゾルSV102、アルミゾルSB52(以上、川研ファインケミカル製)、また、コロイダルシリカとしては、スノーテックス20、スノーテックス30、スノーテックス40、スノーテックスS、スノーテックスO、スノーテックスC、スノーテックスN、スノーテックス20L、スノーテックスUP、スノーテックスOL、スノーテックスAK、スノーテックスPST−1、スノーテックスK、スノーテックスXS、スノーテックスSS、スノーテックスXL、スノーテックスYL、スノーテックスZL、スノーテックスPST−1、スノーテックスPST−3、スノーテックスPST−5、MA−ST、IPA−ST、NBA−ST、IBA−ST、EG−ST、XBA−ST、ETC−ST、DMAC−ST(以上、日産化学工業製)、カタロイドS−20L、カタロイドS−20H、カタロイドS−30L、カタロイドS−30H、カタロイドSI−30、カタロイドSI−40、カタロイドSI−50、カタロイドSI−350、カタロイドSI−45P、カタロイドSI−80P、カタロイドSN、カタロイドSA、カタロイドSB、USB−1、USB−2、USB−3、OSCAL1132、OSCAL1232、OSCAL1332、OSCAL1432、OSCAL1532、OSCAL1622、OSCAL1722(以上、触媒化成工業製)、シリカ/アルミナハイブリッゾゾルとしては、スノーテックスUP−AK1、スノーテックスUP−AK2、スノーテックスUP−AK3(以上、日産化学工業製)、酸化アンチモンゾルとしては、A−1530、A−1550、A−2550(以上、日産化学工業製)、チリウムシルケートとしては、チリウムシリケート35、チリウムシリケート45、チリウムシリケート75(以上、日産化学工業製)などを挙げることができる。
【0031】
これらの無機ゾルの中でも特に、擬ベーマイトゾルを好適に用いることができ、直径が10〜300オングストローム程度の細孔を有するような擬ベーマイトゾルがさらに好ましい。
【0032】
このような擬ベーマイトの生成法としては、Al2(SO43 (無水塩、6、10、16、18、 28塩)、 AlCl3(6水塩)、 Al(NO33(9水塩)、K2Al2(SO44・24H2O(カリウムミョウバン) などのアルミニウム塩とNH3水、Na2CO3 などのアルカリにより生成せしめるか、アルミン酸ナトリウムに塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸を反応せしめるか、アルミニウムアマルガムを加水分解するか、もしくはアルミニウムアルコキシドを加水分解せしめて得た無定形アルミナゲルをpH、生成温度などの条件を調整することにより熟成させて得る方法、バイヤー法により得られたアルミナ水和物を焼成する方法、バイヤー法により得られたジプサイトを瞬間焼成して得られるρ−、χ−アルミナを水中で加熱するか、または任意量の擬ベーマイトを用いて転化する方法などが知られている。
【0033】
基本的には、無定形アルミナゲルをエージングして生成させる方法が一般的であるが、エージングにおけるpH、生成温度、解膠剤の種類などの条件を変更させることにより、多孔性構造、単体粒子の大きさ、および繊維状、羽毛状、柱状、板状、球状などの種々な形態を取る複雑なゾルである。
【0034】
本発明のインクジェット記録シートでは、上記のような無機ゾル中に、ポリビニルアルコールと、ホウ酸または低級アルコールのホウ酸トリエステルに、多価アルコールの1種もしくは2種以上を反応させて得たホウ酸エステル化反応物とを必須成分として含有せしめる。
【0035】
ポリビニルアルコールとしては、平均重合度500以上、より好ましくは700以上である。ここで、平均重合度が500未満であると下記したようなホウ酸または低級アルコールのホウ酸トリエステルに、多価アルコールの1種もしくは2種以上を反応させて得たホウ酸エステル化反応物による架橋が弱く、インク受理層の膜強度が低下するため好ましくない。
【0036】
本発明のインクジェット記録シートに用いるポリビニルアルコールの絶対十分条件には平均重合度が挙げられるが、該ポリビニルアルコールのケン化度が98mol%未満のいわゆる低・中間ケン化物でさらに好ましい結果が得られる。
【0037】
これは、ポリビニルアルコールの溶解性、溶解状態とホウ酸または低級アルコールのホウ酸トリエステルに、多価アルコールの1種もしくは2種以上を反応させて得たホウ酸エステル化反応物との反応性、塗工液の固形分濃度、液温などの因子が複雑に関係し合ってなされる結果であり一該に結論づけることはできないが、ポリビニルアルコール中に適当な量のカルボキシメチル基が残存していることから、本発明のホウ酸または低級アルコールのホウ酸トリエステルに、多価アルコールの1種もしくは2種以上を反応させて得たホウ酸エステル化反応物との架橋性が調整されて、ポットライフとセット乾燥性に好都合なものになるためと推測される。
【0038】
本発明のインクジェット記録シートのポリビニルアルコールは市販のものを好適に用いることができ、以下に例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、PVA105、PVA110、PVA117、PVA117H、PVA120、PVA124、PVA124H、PVACS、PVACST、PVAHC、PVA202、PVA203、PVA204、PVA205、PVA210、PVA217、PVA220、PVA224、PVA228、PVA235、PVA217EE、PVA217E、PVA220E、PVA224E、PVA420、PVA613(以上、クラレ製)、C25、C20、C201、C17、A、C10、MA33、MA26、MA23、MA17、PA24、PA20、PA18、PA15、PA10(以上、信越化学製)などを挙げることができる。
【0039】
本発明のインクジェット記録シートに用いるホウ酸または低級アルコールのホウ酸トリエステルに、多価アルコールの1種もしくは2種以上を反応させて得たホウ酸エステル化反応物としては、例えば、特開昭48−8731号公報などで提案されているような界面活性有機ホウ素化合物の製造過程に得られる中間原料として知られるものである。
【0040】
ホウ酸または低級アルコールのホウ酸トリエステルに反応せしめる、多価アルコールとは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ソルビタン、ソルビトール、マンイトールなどを挙げることができる。
【0041】
一方、低級アルコールのホウ酸トリエステルとしては、トリメチルボーレート、トリエチルボーレート、トリイソプロピルボーレート、トリブチルボーレートなどが挙げられる。
【0042】
このようなホウ酸または低級アルコールのホウ酸トリエステルに、多価アルコールの1種もしくは2種以上を反応させて得るホウ酸エステル化反応物の一例として、以下にホウ酸と多価アルコールからなるホウ酸エステル化反応物の代表例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
【化1】
Figure 0003831426
【0044】
【化2】
Figure 0003831426
【0045】
【化3】
Figure 0003831426
【0046】
また、このようなホウ酸または低級アルコールのホウ酸トリエステルに、多価アルコールの1種もしくは2種以上を反応させて得たホウ酸エステル化反応物は、市販のものを好適に用いることができ、例えば、エマルボンGB(以上、東邦化学工業製)、ハイボロンDDGB90(以上、ボロンインターナショナル製)などを挙げることができる。
【0047】
ポリビニルアルコールの架橋剤の一例として、オルト、メタおよびジホウ酸、ホウ砂(Na247・10H2O)に代表されるホウ酸塩などの無機系ホウ素化合物が挙げられる。これらのホウ素化合物は、ポリビニルアルコールの水溶液中に添加せしめるとゲル化を起こすことができるため、本発明の塗工斑、亀裂など欠陥のないインク受理層を得る手段となり得るが、しかしながら、該ホウ素化合物の含有量や水溶液の温度に対する依存性が大きく、良好なポットライフを達成するのは非常に困難であり生産安定性に欠ける。
【0048】
一方、本発明の如く、ホウ酸または低級アルコールのホウ酸トリエステルに、多価アルコールの1種もしくは2種以上を反応させて得たホウ酸エステル化反応物は、ポリビニルアルコールとの相溶性が非常に良好であり、インクジェット記録シート用塗工液とした場合、無機系ホウ素化合物と比べて経時での増粘が抑制され、かつポリビニルアルコールのマイグレーションを制御することが容易であるなどの長所を有する。
【0049】
このような長所の原因は定かではないが、無機系ホウ素化合物と比べて、分子量が大きく嵩高い構造に由来して、ポリビニルアルコールとの反応性が適度に調整されるためであろうと推測できる。
【0050】
本発明のインクジェット記録シートに用いる、▲2▼平均重合度500以上のポリビニルアルコールと、▲3▼ホウ酸または低級アルコールのホウ酸トリエステルに、多価アルコールの1種もしくは2種以上を反応させて得たホウ酸エステル化反応物の混合比率としては、重量比で99.95〜90:0.05〜10であり、より好ましくは99.9〜97:0.1〜3である。ここで、該ホウ酸エステル化反応物の混合比率が0.05未満では架橋が弱くなりインク受理層の塗工斑、亀裂およびポリビニルアルコールのマイグレーションを抑制することができない。また、該ホウ酸エステル化反応物の混合比率が10を超えるようであると塗工液のゲル化が容易に起こり、良好なポットライフを得ることができなくなる。
【0051】
さらに、上記のような適切な混合比率で混合された、▲2▼平均重合度500以上のポリビニルアルコールと、▲3▼ホウ酸または低級アルコールのホウ酸トリエステルに、多価アルコールの1種もしくは2種以上を反応させて得たホウ酸エステル化反応物の含有量は、▲1▼無機ゾルに対して1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%である。ここで、含有量が1重量%未満ではインク受理層の架橋が弱くなりインク受理層の膜強度が低下するため好ましくない。また、含有量が50重量%を超えるようであるとインク受理層の細孔を埋めることになり、インク吸収性が劣るため好ましくない。
【0052】
本発明の無機ゾルと少なくとも▲2▼平均重合度500以上のポリビニルアルコールと、▲3▼ホウ酸または低級アルコールのホウ酸トリエステルに、多価アルコールの1種もしくは2種以上を反応させて得たホウ酸エステル化反応物からなるインク受理層は、従来公知の無機ゾルを主体としたインク受理層に比べて、塗工斑および亀裂などの欠陥が著しく改良され、かつインク吸収性に優れるものである。
【0058】
本発明のインクジェット記録シートでは、透明性や光沢感などを損ねない範囲において、インク受理層中に無機顔料を添加することもできる。ここで、無機顔料とは、BETによる比表面積が100m2/g以上であり、さらに好ましくは200m2/g以上、平均粒子径が0.1〜20μm程度の無機顔料であり、従来公知の白色顔料を1種以上を単独で、あるいは混合して用いることができ、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0059】
上記の無機顔料の中でも特に合成非晶質シリカを用いることが好ましく、印画濃度、インク吸収性、印字画像の鮮鋭性などに優れるインクジェット記録シートを得ることができる。このような合成非晶質シリカとは、例えば、特開昭57−157786号公報、同61−141584号公報、同61−230979号公報、同62−292476号公報などに記されているような、ケイ酸のゲル化により、SiO2の三次元構造を形成させた、微多孔性、不定形微粒子であり、ハンター白色度90以上、細孔径10〜2000オングストローム程度を有する。
【0060】
このような合成非晶質シリカは、市販のものを好適に用いることができ、例えば、ミズカシルP−526、ミズカシルP−801、ミズカシルNP−8、ミズカシルP−802、ミズカシルP−802Y、ミズカシルC−212、ミズカシルP−73、ミズカシルP−78A、ミズカシルP−78F、ミズカシルP−87、ミズカシルP−705、ミズカシルP−707、ミズカシルP−707D、ミズカシルP−709、ミズカシルC−402、ミズカシルC−484(以上水沢化学製)、トクシールU、トクシールUR、トクシールGU、トクシールAL−1、トクシールGU−N、トクシールN、トクシールNR、トクシールPR、ソーレックス、ファインシールE−50、ファインシールT−32、ファインシールX−37、ファインシールX−70、ファインシールRX−70ファインシールA、ファインシールB(以上、徳山ソーダ製)、カープレックスFPS−101、カープレックスCS−7、カープレックス80、カープレックスXR、カープレックス67(以上、塩野義製薬製)、サイロイド63、サイロイド65、サイロイド66、サイロイド77、サイロイド74、サイロイド79、サイロイド404、サイロイド620、サイロイド800、サイロイド150、サイロイド244、サイロイド266(以上、富士シリシア化学製)などが挙げられる。
【0061】
さらに、本発明のインクジェット記録シートでは、本発明の目的を阻害しない範囲で、無機ゾル同士およびインク受理層と支持体の接着性を向上させたりあるいは生産性を向上させる目的から、上記のようなポリビニルアルコール以外にも適切なバインダー樹脂を添加することができる。ここで、好適に用いることのできるバインダー樹脂としては、例えば、シラノール変性、カルボキシル変性、チオール変性などの各種変性ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、シリル変性ポリビニルアルコールなど;無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス;アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの重合体または共重合体、アクリル酸およびメタクリル酸の重合体または共重合体などのアクリル系重合体ラテックス;エチレン酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ラテックス;あるいはこれらの各種重合体のカルボキシル基などの官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス;メラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化合成樹脂系などの水性接着剤;ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂などの合成樹脂系接着剤を一種以上、単独であるいは混合して用いることができる。この他、公知の天然、あるいは合成樹脂バインダーを単独であるいは混合して用いることは特に限定されない。
【0062】
さらに、その他の添加剤として、カチオン系染料定着剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤および酸化防止剤などを適宜添加することもできる。
【0063】
本発明における支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ノルボルネン、ビニロン、ポリビニルアルコール、ナイロンなどの2軸延伸合成樹脂フィルムやこれら材料に顔料、発泡剤などを含有して透明度を低下させた半透明2軸延伸合成樹脂フィルムや、LBKP、NBKPなどの化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGPなどの機械パルプ、DIPなどの古紙パルプなどの木材パルプと従来公知の顔料を主成分として、バインダーおよびサイズ剤や定着剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤などの各種添加剤を1種以上用いて混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種装置で製造された原紙、さらに原紙に、澱粉、ポリビニルアルコールなどでのサイズプレスやアンカーコート層を設けた原紙や、それらの上にコート層を設けたアート紙、コート紙、キャストコート紙などの塗工紙、およびマシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダーなどのカレンダー装置を用いて平滑化処理を施したような原紙、塗工紙の両面または片面に溶融押し出し法などにて高密度、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどをコートしたレジンコート紙、あるいはこれら支持体の表面にコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、アンカー層塗工処理などの易接着性を改良したようなものを好適に用いることができる。これら支持体の坪量としては、通常50〜300g/m2程度のものが用いられる。
【0064】
本発明におけるインクジェット記録シートは、無機ゾル、ポリビニルアルコール、ホウ酸または低級アルコールのホウ酸トリエステルに、多価アルコールの1種もしくは2種以上を反応させて得たホウ酸エステル化反応物および必要によりその他の添加剤からなる塗工液を、例えば、従来公知のエアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、ロールコーター、ビルブレードコーター、ショートドエルブレードコーター、サイズプレスなどの各種装置により支持体上に塗工し乾燥せしめることで得られる。
【0065】
本発明のインクジェット記録シートの製造方法においては、上記塗工液を40℃以上、より好ましくは45℃以上に加温、攪拌して保持することで非常に良好なポットライフを達成することができる。
【0066】
さらに、インクジェット記録シート用塗工液を塗工した直後に、25℃以下、より好ましくは20℃以下に冷却することで該塗工液の架橋性が向上するため、上記のような各種塗工装置で塗工後、冷風装置や冷凍装置などの冷却装置により支持体上の未乾燥のインク受理層を冷却してから熱風乾燥機などの乾燥装置を用いて溶媒を乾燥することがさらに好ましい。このような形態をとることで、熱風乾燥によるインク受理層の流動や亀裂がさらに抑制され、非常に優れた高品質なインクジェット記録シートを得ることができる。
【0067】
インク受理層の塗工後には、マシンカレンダー、TGカレンダー、スーパカレンダー、ソフトカレンダーなどのカレンダー装置を用いてインクジェット記録シートの平滑化処理を行うこともできる。
【0068】
本発明のインクジェット記録シートにおけるインク受理層の塗工量は、単位面積当たりへのインクの打ち込み量と、インクジェット記録シートのカール特性、搬送性などの物性値を加味して決定される。ここで、インクジェット記録装置の単位面積当たりへのインクの打ち込み量は各機種間で異なるために一該には言えないが、通常、単色で5〜20g/m2程度、イエロー、マゼンタおよびシアンの3重色では15〜60g/m2程度である。
【0069】
上記のようなインク量を十分に吸収するために必要なインク受理層の塗工量は、無機ゾルのインク吸収性やインク受理層の配合などにより異なるため一該には言えないが、10〜40g/m2であり、通常30g/m2以上塗工されていれば良好な印字画像の得られる場合が多い。
【0070】
したがって、凝集力の強い無機ゾルを主体とするインク受理層を30〜40g/m2程度塗工した際でも、塗工斑や亀裂などの欠陥のないインクジェット記録シートが要望されていたが、このような高塗工量でも本発明によれば印字斑、亀裂などの欠陥を改良した高品質なインクジェット記録シートを得ることが可能となる。
【0071】
一方、カール特性、搬送性などの物性面から言えば、インク受理層の塗工量は50g/m2以下が好ましい。ここで、塗工量が50g/m2を超えると記録シートのカール性が悪化し搬送不良を引き起こす。
【0072】
本発明のインクジェット記録シートにおけるインク受理層は、ある一定の塗工量を数回に分けて塗設することもできる。ここで、数回に分割してインク受理層を塗工する方法としては、1層ごとに乾燥して塗工する場合と、複数層をウェット・オン・ウェットで同時に塗工する方法を挙げることができる。
【0073】
また、支持体を挟んだインク受理層の反対面には、カール適性を付与するために、バックコート層を塗設することも可能である。
【0074】
本発明で云うインクとは、下記の色素、溶媒、その他の添加剤からなる記録液体であり、色素としては、発色性、鮮明性、安定性などが良好な、例えば、C.I.Direct Yellow 12、C.I.Direct Yellow 24、C.I.Direct Yellow 26、C.I.Direct Yellow 44、C.I.Direct Yellow 86、C.I.Direct Yellow 98、C.I.Direct Yellow 100、C.I.Direct Yellow 142、C.I.Direct red 1、C.I.Direct red 4、C.I.Direct red 17、C.I.Direct red 28、C.I.Direct red 83、C.I.Direct Orenge 34、 C.I.Direct Orenge 39、C.I.Direct Orenge 44、C.I.Direct Orenge 46、C.I.Direct Orenge 60、C.I.Direct Violet 47、C.I.Direct Violet 48、C.I.Direct Blue 6、C.I.Direct Blue 22、C.I.Direct Blue 25、C.I.Direct Blue 71、C.I.Direct Blue 86、C.I.Direct Blue 90、C.I.Direct Blue 106、C.I.Direct Blue 199、C.I.Direct Black 17、 C.I.Direct Black 19、C.I.Direct Black 32、C.I.Direct Black 51、C.I.Direct Black 62、C.I.Direct Black 71、C.I.Direct Black 108、C.I.Direct Black 146、C.I.Direct Black 154などの直接染料、C.I.Acid Yellow 11、C.I.Acid Yellow 17、C.I.Acid Yellow 23、C.I.Acid Yellow 25、C.I.Acid Yellow 29、C.I.Acid Yellow 42、C.I.Acid Yellow 49、C.I.Acid Yellow 61、C.I.Acid Yellow 71、C.I.Acid red 1、C.I.Acid red 6、C.I.Acid red 8、C.I.Acid red 32、C.I.Acid red 37、C.I.Acid red 51、C.I.Acid red 52、C.I.Acid red 80、C.I.Acid red 85、C.I.Acid red 87、C.I.Acid red 92、C.I.Acid red 94、C.I.Acid red 115、C.I.Acid red 180、 C.I.Acid red 256、C.I.Acid red 317、C.I.Acid red 315、C.I.Acid Orenge 7、C.I.Acid Orenge 19、C.I.Acid Violet 49、C.I.Acid Blue 9、C.I.Acid Blue 22、C.I.Acid Blue 40、C.I.Acid Blue 59、C.I.Acid Blue 93、C.I.Acid Blue 102、C.I.Acid Blue 104、C.I.Acid Blue 113、C.I.Acid Blue 117、C.I.Acid Blue 120、C.I.Acid Blue 167、C.I.Acid Blue 229、C.I.Acid Blue 234、C.I.Acid Blue 254、C.I.Acid Black 2、C.I.Acid Black 7、C.I.Acid Black 24、C.I.Acid Black 26、C.I.Acid Black 31、C.I.Acid Black 52、C.I.Acid Black 63、C.I.Acid Black 112、C.I.Acid Black 118 などの酸性染料、その他にも塩基性染料、反応性染料あるいは食品用色素などの水溶性染料あるいは、カーボンブラックなどの顔料を用いることができる。
【0075】
インクの溶媒としては、水および水溶性の各種有機溶剤、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトンまたはケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、2、6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルキレン基が2〜6個のアルキレングリコール類;グリセリン、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類などが挙げられる。
【0076】
上記の水溶性有機溶剤の中でも、特にジエチレングリコールなどの多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルが好ましい。
【0077】
上記の水溶性の有機溶剤以外にも、高沸点脂肪族炭化水素に代表される引火性、毒性などの安全性に優れた非水溶性絶縁溶剤を用いる場合があり、各種無機顔料、有機顔料などが色素として用いられることが多い。
【0078】
インク中に添加されるその他の添加剤としては、例えば、pH調節剤、金属封鎖剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤、および防錆剤などが挙げられる。
【0079】
【作用】
無機ゾルを主体としたインク受理層は透明度の高さから、オーバーヘットプロジェクター、バックライトなどの透過材料用として、さらには無機顔料を主体とするようなインク受理層と比較して光沢感に優ることから、光沢反射材料用としても提案されてきた。しかしながら、十分なインク吸収性を得るためには高塗工量のインク受理層が必要となるため、塗工液の流動やバインダーのマイグレーションに起因する塗工斑の問題が生じた。また、該無機ゾルの凝集力が強いため、インク受理層に亀裂が発生するなどの問題も有していた。
【0080】
しかしながら、本発明のごとく▲1▼無機ゾル、▲2▼特定の平均重合度を有するポリビニルアルコール、ならびに▲3▼ホウ酸または低級アルコールのホウ酸トリエステルに、多価アルコールの1種もしくは2種以上を反応させて得たホウ酸エステル化反応物を、該無機ゾルに対して特定量含有せしめた塗工液であればポットライフが良好で、かつ塗工斑や亀裂などの欠陥が改良されたインク受理層を得ることが可能になる。
【0082】
また、本発明のインク受理層はセット乾燥することで印字斑や亀裂をさらに効率よく抑制することができる。セット乾燥は、例えば、印画紙などで行われているようなゼラチン溶液のヘリックス構造を利用した形態や特開平7−76161号公報で提案されているような無機系ホウ素化合物を用いても行うことができるが、これら公知の方法ではポットライフの問題を回避することが困難であり、生産安定性をも加味した形態として、本発明のインクジェット記録シートおよびその製造方法は非常に優れたものである。
【0083】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、実施例において示す「部」および「%」は、特に明示しない限り重量部および重量%を示す。
【0084】
(評価方法)
以下に挙げた実施例および比較例の各インクジェット記録シートは次の方法で評価を行った。
【0085】
(1)インク受理層塗工液のポットライフ
各インク受理層塗工液の経時による粘度変化を測定した。測定は、塗工液配合直後、1時間後および5日間放置後の粘度をB−L型粘度計(東京計器製、B型粘度計)を用いて行った。
【0086】
(2)印字斑
各インクジェット記録シートに、インクジェットプリンター(EPSON製、MJ−700V2C)でブラックインクのベタ印字を行い、ベタ印字部の印字斑を目視評価した。
◎:全く塗工斑は見られず良好である。
○:極微小な印字斑が部分的に見られる場合があったが、印字画像の品質に大きな影響は及ぼさなかった。
△:比較的大きな塗工斑が部分的に見られた。
×:塗工斑が全体に発生し、印字画像の品質が劣った。
【0087】
(3)インク受理層亀裂
各インクジェット記録シートのインク受理層表面を光学顕微鏡にて観察し、亀裂の有無を評価した。
◎:全く亀裂は見られず良好である。
○:極微小な亀裂が部分的に見られる場合があったが、印字画像の品質は低下しなかった。
△:微小な亀裂が全体的に見られる。
×:大きな亀裂が全体的に見られる。
【0088】
(4)インク吸収性(インク滲み)
各インクジェット記録シートに、インクジェットプリンター(EPSON製、MJ−700V2C)でブラックインクのベタ印字を行った。ベタ印字部のインク吸収性を目視評価した。
○:インク吸収性は良好で、ビージングは全く発生していなかった。
△:部分的なビージングが見られた。
×:インクの滲みが酷く、印字画像の品質が劣った。
【0089】
(4)インク吸収性(インク吸収速度)
各インクジェット記録シートに、インクジェットプリンター(EPSON製、MJ−700V2C)でブラックインクのベタ印字を行った。この時、印字直後から、インクが吸収してインク受理層表面が乾燥するまでの時間を測定した。乾燥までの時間が短いほどインク吸収性に優れることを示し、そのようなインクジェット記録シートであれば重色印字での滲み出しや境界滲みが発生しにくいものとなる。
【0090】
実施例1
下記配合のインク受理層塗工液を、25℃に保持しながら固形分濃度9%となるように調整し、100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(デュポン製、クローナー4)上に乾燥塗工量が30g/m2となるようにロッドバーを用いて塗工した。次いで、110℃で5分間熱風乾燥してインク受理層を形成せしめ、実施例1のインクジェット記録シートを得た。
【0091】
Figure 0003831426
【0092】
実施例2〜4
ポリビニルアルコールを表1のものに変更した以外は実施例1と同様にして作製し、実施例2〜4のインクジェット記録シートを得た。
【0093】
実施例5〜7
ポリビニルアルコールとホウ酸トリエステル化反応物の混合比率を表1とした以外は実施例1と同様にして作製し、実施例5〜7のインクジェット記録シートを得た。
【0094】
実施例8〜10
ポリビニルアルコールとホウ酸トリエステル化反応物の含有量を表1とした以外は実施例1と同様にして作製し、実施例8〜10のインクジェット記録シートを得た。
【0095】
実施例11
ホウ酸トリエステル化反応物をホウ酸ジエステル化反応物(ボロンインターナショナル製、ハイボロンDDGB90、ジ(グリセリン)ボラート)に変更した以外は実施例1と同様にして作製し、実施例11のインクジェット記録シートを得た。
【0096】
実施例12
無機ゾルを数珠状コロイダルシリカ(日産化学製、スノーテックスUP)とした以外は実施例1と同様にして作製し、実施例12のインクジェット記録シートを得た。
【0097】
実施例13
インク受理層の乾燥塗工量を40g/m2とした以外は実施例1と同様にして作製し、実施例13のインクジェット記録シートを得た。
【0098】
実施例14
無機ゾルをカチオン性コロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックスUP−AK)とし、かつインク受理層の乾燥塗工量を40g/m2とした以外は実施例1と同様にして作製し、実施例14のインクジェット記録シートを得た。
【0099】
実施例15
ポリビニルアルコールを鹸化度96mol%、平均重合度2600のもの(信越化学工業製、MA−26)とした以外は実施例1と同様にして作製し、実施例15のインクジェット記録シートを得た。
【0100】
実施例16
ポリビニルアルコールを鹸化度88mol%、平均重合度500のもの(クラレ製、PVA205)とした以外は実施例1と同様にして作製し、実施例16のインクジェット記録シートを得た。
【0101】
比較例1
ポリビニルアルコールを平均重合度400(鹸化度99.6mol%)のものとした以外は、実施例1と同様にして作製し、比較例1のインクジェット記録シートを得た。
【0102】
比較例2〜4
ポリビニルアルコールとホウ酸トリエステル化反応物の混合比率を表1とした以外は実施例1と同様にして作製し、比較例2〜4のインクジェット記録シートを得た。
【0103】
比較例5
インク受理層を無機ゾルのみで形成させた以外は実施例1と同様にして作製し、比較例5のインクジェット記録シートを得た。
【0104】
比較例6〜8
ポリビニルアルコールとホウ酸トリエステル化反応物の含有量を表1とした以外は実施例1と同様にして作製し、比較例6〜8のインクジェット記録シートを得た。
【0105】
比較例9
ホウ酸トリエステル化反応物を、ホウ酸(H3BO3)に変更した以外は実施例1と同様にして作製し、比較例9のインクジェット記録シートを得た。
【0106】
比較例10
ホウ酸トリエステル化反応物を、ホウ砂(Na247・10H2O)に変更した以外は実施例1と同様にして作製し、比較例10のインクジェット記録シートを得た。
【0107】
【表1】
Figure 0003831426
【0108】
以上、実施例1〜16および比較例1〜10の評価結果を併せて表2に示した。
【0109】
【表2】
Figure 0003831426
【0110】
(評価)
実施例1〜16のごとく、本発明のインク受理層塗工液は経時での粘度変化が小さく、良好なポットライフ性を示した。さらに、インク受理層表面の印字斑および亀裂が改良され、インク吸収性も良好であった。ただし、凝集力の著しく大きい板状擬ベーマイトやカチオン性コロイダルシリカを用い、かつインク受理層の乾燥塗工量を増加させた場合には、極小さな印字斑や亀裂が部分的に確認できる場合があった。
【0111】
しかしながら、比較例1ではポリビニルアルコールの平均重合度が低く、亀裂および印字斑が発生した。比較例2〜4ではポリビニルアルコールとホウ酸エステル化反応物の混合比率が適切でなかったために、亀裂、印字斑が発生しインク吸収性が劣ったり、塗工液が経時で増粘した。すなわち、ポリビニルアルコールに対するホウ酸エステル化反応物の混合比率が少なすぎる場合には、亀裂、印字斑、インク吸収性の低下が見られ、多すぎる場合にはポットライフに問題が生じる。比較例5、6では無機ゾルのみでインク受理層を形成したか、あるいはポリビニルアルコールおよびホウ酸エステル化反応物の含有量が少なすぎたため、亀裂および印字斑が酷かった。比較例7および8ではポリビニルアルコールおよびホウ酸エステル化反応物の含有量が多すぎたためにインク吸収性が劣った。比較例9および10では本発明のホウ酸または低級アルコールのホウ酸トリエステルに、多価アルコールの1種もしくは2種以上を反応させて得たホウ酸エステル化反応物を用いずに、ホウ酸またはホウ酸塩を用いたことから経時で増粘した。さらに印字斑の改良効果はほとんど見られなかった。
【0150】
実施例49
インク受理層塗工液を、40℃に保持しながら調整し(表7中、塗工液温度と記述)支持体上に塗工した。次いで、25℃の室内に2分間放置してセットした後(表7中、セット温度と記述)、さらに110℃で5分間の熱風乾燥を行いインク受理層を形成せしめた以外は実施例13と同様にして作製し、実施例49のインクジェット記録シートを得た。
【0151】
実施例50〜52
塗工液温およびセット温度を表7の温度とした以外は実施例49と同様にして作製し、実施例50〜52のインクジェット記録シートを得た。
【0152】
【表7】
Figure 0003831426
【0153】
以上、実施例49〜52の評価結果を表8に示した。
【0154】
【表8】
Figure 0003831426
【0155】
(評価)
実施例49〜52の如く、塗工前の液温を40℃以上に保持し、かつセット温度を25℃以下とした場合には、実施例13に比べて印字斑、亀裂などの欠陥が改良されたインクジェット記録シートが得られた。さらに40℃以上に保持した塗工液のポットライフは優れたものであり、経時での増粘はほとんど見られなかった。
【0156】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録シートでは、特定の平均重合度のポリビニルアルコールと特定のホウ酸エステル化反応物を用いることで、バインダーのマイグレーションに起因する印字斑、無機ゾルの凝集による亀裂を抑制した。
【0157】
さらに、これらの効果はインク受理層をセット乾燥することによりさらに有効になる。すなわち、塗工液温を一定以上の温度に保持してポットライフを良好なものとし、かつ塗工後は一定以下の温度に冷却してセット乾燥することで特に凝集力の強い板状、羽毛状のアルミナ水和物やカチオン性コロイダルシリカを主体とする高塗工量のインク受理層においても亀裂の発生を防止することができる。

Claims (4)

  1. 支持体の少なくとも片面にインク受理層を設けてなるインクジェット記録シートにおいて、該インク受理層が、▲1▼無機ゾル、▲2▼平均重合度500以上のポリビニルアルコール、ならびに▲3▼ホウ酸または低級アルコールのホウ酸トリエステルに、多価アルコールの1種もしくは2種以上を反応させて得たホウ酸エステル化反応物を含有し、上記▲2▼と▲3▼の混合量が該無機ゾルに対して1〜50重量%であり、かつ▲2▼と▲3▼の重量比が99.95〜90:0.05〜10であることを特徴とするインクジェット記録シート。
  2. 前記インク受理層の塗工量が10〜40g/m 2 である請求項1記載のインクジェット記録シート。
  3. 前記ポリビニルアルコールが、鹸化度98mol%未満であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録シート。
  4. 40℃以上に加温した▲1▼無機ゾル、▲2▼平均重合度500以上のポリビニルアルコール、▲3▼ホウ酸または低級アルコールのホウ酸トリエステルに、多価アルコールの1種もしくは2種以上を反応させて得たホウ酸エステル化反応物を含有するインク受理層塗工液を支持体上に塗工して後、25℃以下に冷却してセットし、次いで熱風乾燥することを特徴とするインクジェット記録シートの製造方法。
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