JP3831170B2 - 棒状ワークの研削装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒形若しくは円柱形をした棒状ワークを研削加工する研削装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上述した棒状ワーク(以下、単に「ワーク」という)の一例を図4に示す。このワークWは自動車エンジンに使用されるノズルニードルと呼ばれる部品であって、段付形状をしており、2つの小径部Wa,Wcと、その中間の大径部Wbと、小径部Wcの右端に形成されたテーパ部Wtとを有してなる。このワークWは、エンジンのシリンダ内に燃焼ガスを導入するためのノズルを構成する部品であり、したがって、小径部Wc及び大径部Wbの外周を基準とした前記テーパ部Wtの同軸度や面粗度に関して厳しい加工精度が要求される。
【0003】
従来、このようなワークWを加工するに当たり、まず、小径部Wc及び大径部Wbの外周を研削加工した後、図5に示すように、円筒研削盤100の主軸101に装着したチャック102によってワークWの大径部Wbを把持し、これを主軸101の軸中心に回転させ、砥石台(図示せず)に装着された回転砥石103によって前記テーパ部Wtを加工するようにしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記チャック102を用いた研削加工においては、経時変化などにより主軸101とチャック102の把持部とが心ずれを起こし易く、また、チャック102によってワークWを把持する際に、把持部とワークWとの間に塵埃を噛み込み易いなど、加工誤差を生じる種々の要因が存在しており、主軸101の回転中心とワークWの軸中心とが心ずれした状態でワークWが回転せしめられ、加工が行われるという問題があった。したがって、上記のような、小径部Wc及び大径部Wbの外周を基準としたテーパ部Wtの同軸度を高精度に仕上げることができなかった。
【0005】
また、図5に示すように、チャック102からのワークWの突き出しが長く、その先端部を加工するような場合には、研削抵抗によってワークWが大きく撓むため、このような状態で加工した場合にも、上記同軸度を高精度に仕上げるのは甚だ困難であった。
【0006】
本発明は以上の実情に鑑み成されたものであって、円筒形若しくは円柱形をした棒状ワークの外周部を基準とした同軸度を高精度に仕上げることができる研削装置の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及びその効果】
上記課題を解決するための本発明は、円筒形若しくは円柱形をした棒状ワークを研削加工する装置であって、ワーク支持孔を備え、前記棒状ワークを該ワーク支持孔に嵌挿した状態で支持するとともに、圧力流体が供給される凹形状の静圧作用部を前記ワーク支持孔の内周面に備えたワーク支持体と、前記ワーク支持体に支持された前記棒状ワークの一方端部に係合して、前記棒状ワークを軸中心に回転させる回転駆動手段と、研削砥石を備え、該研削砥石を回転させて前記棒状ワークの非支持部を研削加工する砥石台と、前記ワーク支持体の静圧作用部に圧力流体を供給する圧力流体供給手段とを備えた棒状ワークの研削装置に係る。
【0008】
また、前記回転駆動手段は、軸中心に回転する回転駆動部と、該回転駆動部に連結されて該回転駆動部とともに回転する一方、前記ワーク支持体に支持された棒状ワークの一方端部を吸着する吸着部とを備えて構成される。
【0009】
この研削装置によれば、棒状ワークは、ワーク支持体のワーク支持孔に嵌挿され、静圧作用部に供給された圧力流体の静圧作用によって外周部が支持された状態で、回転駆動手段により回転駆動される。
【0010】
したがって、棒状ワークはその外周部を基準として回転し、その非支持部が当該外周部を基準として研削される。
【0011】
斯くして、このように研削された棒状ワークの加工部位は、前記外周部を基準とした同軸度について、極めて高精度に仕上げられたものとなる。
【0012】
また、棒状ワークの一方端部を回転駆動手段の吸着部によって吸着し、この吸着部に吸着した状態で棒状ワークを回転させるようにしているので、チャックなどによって棒状ワークを把持する場合に比べて、棒状ワークをその径方向に拘束する力が弱いので、回転駆動部の回転中心と棒状ワークの軸中心との間に多少の心ずれが存在したとしても、両者の滑り接触により当該心ずれが解消され、棒状ワークをその外周部を基準として軸中心に回転させることができる。
【0013】
かかる吸着部は、具体的には電磁チャックから構成することができ、また、この他に、真空吸引する手段などから構成することができる。
【0014】
また、前記棒状ワークが大径部及び小径部を少なくとも有する段付状の棒状ワークである場合には、前記研削加工装置は、前記棒状ワークの大径部側の端部が前記回転駆動手段と係合し得る状態で前記棒状ワークを支持するように、前記ワーク支持体が構成されるとともに、前記ワーク支持孔に嵌挿された前記棒状ワークの段部が位置する部分の前記ワーク支持体に、前記圧力流体供給手段から圧力流体が供給される圧力室を形成し、前記圧力室に供給された圧力流体によって前記棒状ワークの段部端面が押圧され、前記棒状ワークが前記回転駆動手段側に付勢されるように構成されるのが好ましい。
【0015】
この研削装置によれば、被研削加工物が上記段付状の棒状ワークである場合に、前記圧力室に供給された圧力流体により棒状ワークの段部端面が押圧されて、当該棒状ワークが回転駆動手段側に付勢され、これに圧接した状態で回転駆動される。したがって、回転駆動手段の回転駆動力を効率よく棒状ワークに伝達することができ、より大きい研削負荷を掛けた加工を行うことができる。また、逆に、軽い研削負荷で加工する場合には、回転駆動手段からの回転駆動力の伝達を、上述した吸着などによらず、例えば摩擦抵抗の高い弾性部材など比較的簡易な手段によって行うことができ、装置コストの低減を図ることができる。尚、圧力流体供給手段から前記静圧作用部及び圧力室にそれぞれ供給される圧力流体は、これが同じものであっても、或いは別のものであっても、いずれでも良い。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施形態について添付図面に基づき説明する。図1は、本実施形態に係る研削装置の概略構成を一部断面で示す正面図である。尚、本例における被加工物たるワークは、図4に示した段付状の棒状ワーク(以下、単に「ワーク」という)Wとした。
【0017】
上記図1に示すように、本例の研削装置1は、主軸3を回転自在に支持する主軸台2と、加工領域側の主軸3端部(前端部)に装着された電磁チャック4と、前記ワークWを回転自在に支持するワーク支持体10と、研削砥石20を回転自在に支持し、これを適宜回転せしめる砥石台(図示せず)などを備えてなり、前記主軸台2は、図示しないベッド上に固設され、ワーク支持体10は同じく前記ベッド(図示せず)上に矢示C−D方向に移動可能に載置されている。
【0018】
前記電磁チャック4は、主軸3前端部の周囲に配設され、適宜電源から電力が供給されるコイル5と、主軸3の前端面に装着された吸着体6とを備えてなり、コイル5に電力が供給されると、吸着体6を含む領域に磁界が生じ、吸着体6の端面6aに前記ワークWを吸着,保持することができるようになっている。
【0019】
前記ワーク支持体10は、前記ワークWの小径部Wcが嵌挿されるワーク支持孔12、及び大径部Wbが嵌挿されるワーク支持孔11を備えている。そして、図2に示すように、ワーク支持孔11の内周面には凹形状をした4つの静圧作用部13が周方向等間隔に形成されている。尚、図2は、図1における矢視A−A方向の断面図である。また、特に断面形状については図示しないが、ワーク支持孔12の内周面にも同様に4つの静圧作用部14が周方向等間隔に形成されている。
【0020】
また、ワーク支持体10には、前記静圧作用部13,14のそれぞれに連通する供給路15が形成されており、適宜油圧供給手段(図示せず)からこの供給路15を介して前記静圧作用部13,14に圧力流体たる圧油が供給されるようになっている。尚、前記静圧作用部13,14の各部に接続する部分の前記供給路15には、それぞれ絞り弁16が設けられており、各静圧作用部13,14に供給される圧油量がこの絞り弁16によって適宜調整されるようになっている。
【0021】
また、前記ワーク支持体10には、前記ワーク支持孔11とワーク支持孔12との間に、これらより大径の内周面を有する圧力室17が形成され、ワークWがワーク支持孔11,12内に嵌挿された際、大径部Wbと小径部Wcとの段部がこの圧力室17内に位置するようになっている。そして、図3は、図1における矢視B−B方向の断面図であるが、これら図1及び図3に示すように、ワーク支持体10には、前記圧力室17に連通する供給路18が形成され、適宜圧縮空気供給手段(図示せず)からこの供給路18を介して前記圧力室17に圧力流体たる圧縮空気が供給されるようになっている。尚、この圧縮空気供給手段(図示せず)及び前記油圧供給手段(図示せず)から本発明における圧力流体供給手段が構成される。
【0022】
また、特に図示しないが、本例の研削装置1には、加工材料たるワークWを加工領域に供給して、当該ワークWを前記ワーク支持体10のワーク支持孔11,12に嵌挿せしめる一方、加工後のワークWを前記ワーク支持体10から抜き取って加工領域外に排出するローディング装置が付設されている。また、前記ワーク支持体10は、そのワーク支持孔11,12の中心軸が前記主軸3の中心軸と同軸となるように、その配設位置が調節されている。
【0023】
斯くして、以上の構成を備えた本例の研削装置1によれば、以下のようにして前記ワークWのテーパ部Wtが研削加工される。尚、ワーク支持体10にはワークWが装着されておらず、静圧作用部13,14には圧油が供給されておらず、圧力室17には圧縮空気が供給されておらず、更に、電磁チャック4には電力が供給されていないものとする。また、ワーク支持体10はD方向の移動端に移動し、ワーク支持体10と前記電磁チャック4との間に十分な空間が形成されているものとする。
【0024】
まず、前記ローディング装置(図示せず)によって、ワークWが加工領域内に供給され、ワーク支持体10のワーク支持孔11,12に嵌挿される。この後、ローディング装置(図示せず)が加工領域外に退避し、退避後、ワークWの小径部Waの端面が吸着体6の端面6aと僅かな間隙をもって対峙する位置まで、ワーク支持体10が矢示C方向に移動する。
【0025】
次に、前記油圧供給手段(図示せず)から前記静圧作用部13,14に圧油が供給され、前記圧縮空気供給手段(図示せず)から前記圧力室17に圧縮空気が供給されるとともに、前記電磁チャック4のコイル5に電力が供給される。これにより、前記静圧作用部13,14に供給される圧油がワークWの外周部に作用して、ワークWがその静圧作用によって支持されるとともに、その大径部Wbと小径部Wcとの段部端面に圧縮空気圧が作用し、これによってワークWが前記吸着体6側に付勢され、当該吸着体6に圧接した状態となり、更に、吸着体6の吸着作用によってこれに吸着,保持された状態となる。
【0026】
ついで、主軸3により吸着体6を介してワークWが軸中心に回転せしめられ、そのテーパ部Wtが研削砥石20によって研削加工される。そして、このようにして加工を終えた後、前記静圧作用部13,14への圧油の供給が停止され、前記圧力室17への圧縮空気の供給が停止されるとともに、前記コイル5への電力の供給が遮断され、しかる後、ワーク支持体10が矢示D方向に移動せしめられ、ローディング装置(図示せず)によってワークWが加工領域外に排出される。
【0027】
このように、本例の研削装置1によれば、ワークWがその外周に作用する静圧により支持された状態で回転駆動されるので、ワークWはその外周部を基準として回転せしめられ、前記テーパ部Wtが研削加工される。したがって、ワークWの外周部を基準とした前記テーパ部Wtの同軸度を極めて高精度に仕上げることができる。また、本例では、電磁チャック4によりワークWを吸着,保持するようにしているので、チャックなどよってワークWを把持する場合に比べて、ワークWをその径方向に拘束する力が弱く、このため、主軸3の回転中心とワーク支持体10に支持されたワークWの軸中心との間に多少の心ずれが存在したとしても、両者の滑り接触によって当該心ずれが解消され、ワークWを正確に、その外周部を基準として軸中心に回転させることができ、上記のように、外周部を基準としたテーパ部Wtの同軸度を極めて高精度に仕上げることができる。
【0028】
また、ワークWを圧力室17に供給される圧縮空気によって電磁チャック4側に付勢し、その吸着体6に圧接させるようにしているので、吸着体6によるワークWの吸着,保持をより確実且つ強固なものとすることができ、このため、主軸3の回転駆動力を効率よくワークWに伝達することができ、より大きい研削負荷を掛けた加工を行うことができる。
【0029】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、言うまでもなく、本発明の採り得る具体的な態様はこれに限られるものでない。例えば、上例ではワークWを吸着する手段として電磁チャック4を採用したが、真空吸引する手段を用いてこれを吸着するようにしても良い。
【0030】
また、上例では、圧力室17に供給される圧縮空気によってワークWを電磁チャック4側に付勢し、その吸着体6に圧接させるようにしている。したがって、軽い研削負荷で加工する場合には、前記電磁チャック4に代えて、前記主軸3の端面に摩擦抵抗の高い、例えばゴムなどからなる弾性体プレートを装着し、この弾性体プレートとワークWとの間の摩擦力によって当該ワークWを回転させるようにすることもできる。このようにすれば、電磁チャックが不要となり、装置のコスト低減を図ることができる。尚、この場合、ワークWの主軸3に対する接圧力を高めることができる点で、前記圧力室17には圧縮空気に代えて圧油を供給する方が好ましい。そして、このようにする場合には、静圧作用部13,14に圧油を供給する前記油圧供給手段(図示せず)を用いて圧力室17にも圧油を供給することができる。
【0031】
また、上例では、段付形状のワークWを加工対象としたが、加工対象となるワークはこれに限られるものではなく、例えば、段のない、即ち同一径からなるワークなど、棒形状をした全てのものが含まれる。尚、同一径からなるワークの場合には、言うまでもなく、前記圧力室17,供給路18及び圧縮空気供給手段(図示せず)はこれを設けるには及ばない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る研削装置の概略構成を一部断面で示す正面図である。
【図2】 図1における矢視A−A方向の断面図である。
【図3】 図1における矢視B−B方向の断面図である。
【図4】 研削加工の対象物たるワークの一例を示す平面図である。
【図5】 従来の研削装置の概略構成を示す正面図である。
【符号の説明】
1 研削装置
2 主軸台
3 主軸
4 電磁チャック
5 コイル
6 吸着体
10 ワーク支持体
11,12 ワーク支持孔
13,14 静圧作用部
15 供給路
16 絞り弁
17 圧力室
18 供給路
Claims (3)
- 円筒形若しくは円柱形をした棒状ワークを研削加工する装置であって、
ワーク支持孔を備え、前記棒状ワークを該ワーク支持孔に嵌挿した状態で支持するとともに、圧力流体が供給される凹形状の静圧作用部を前記ワーク支持孔の内周面に備えたワーク支持体と、
前記ワーク支持体に支持された前記棒状ワークの一方端部に係合して、前記棒状ワークを軸中心に回転させる回転駆動手段と、
研削砥石を備え、該研削砥石を回転させて前記棒状ワークの非支持部を研削加工する砥石台と、
前記ワーク支持体の静圧作用部に圧力流体を供給する圧力流体供給手段とを備えてなり、
前記回転駆動手段は、軸中心に回転する回転駆動部と、該回転駆動部に連結されて該回転駆動部とともに回転する一方、前記ワーク支持体に支持された棒状ワークの一方端部を吸着する吸着部とを備えて構成され、
前記ワーク支持体のワーク支持孔に嵌挿された棒状ワークの外周部に圧力流体を作用させ、該圧力流体の静圧作用により前記棒状ワークを回転自在に支持するとともに、該棒状ワークが、その一方端部が前記吸着部に吸着された状態で前記回転駆動部によって回転駆動されるように構成されてなることを特徴とする棒状ワークの研削装置。 - 前記吸着部が電磁チャックからなる請求項1記載の棒状ワークの研削装置。
- 大径部及び小径部を少なくとも有する段付状の前記棒状ワークを研削加工する装置であって、
前記棒状ワークの大径部側の端部が前記回転駆動手段と係合し得る状態で前記棒状ワークを支持するように、前記ワーク支持体を構成するとともに、
前記ワーク支持孔に嵌挿された前記棒状ワークの段部が位置する部分の前記ワーク支持体に、前記圧力流体供給手段から圧力流体が供給される圧力室を形成し、前記圧力室に供給された圧力流体によって前記棒状ワークの段部端面が押圧され、前記棒状ワークが前記回転駆動手段側に付勢されるように構成したことを特徴する請求項1又は2記載の棒状ワークの研削装置。
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