JP3826707B2 - 車体前部の骨格構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フロントサイドメンバやストラットハウジング形成体およびサイドメンバレインフォースなどから構成されるフードレッジメンバを、車体前部の車幅方向両側にそれぞれ配置した車体前部の骨格構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の中には、車体前部に位置するエンジンルームの車幅方向両側に、フロントサイドメンバやストラットハウジング形成体およびサイドメンバレインフォースなどから構成されるフードレッジメンバを車体骨格の1つとして備えたものが知られている。
【0003】
フロントサイドメンバは、車体前部からの入力荷重で潰れ変形してエネルギーを吸収する機能を備え、かつ、ストラットハウジング形成体は、このフロントサイドメンバの後端部に配置されて、フロントサスペンションのストラットを収納保持するとともに、パワーユニットを支持するエンジンマウント部が設けられる。
【0004】
また、サイドメンバレインフォースは、ストラットハウジング形成体の下側に配置されて、フロントサスペンションを支持するようになっている。
【0005】
フードレッジメンバは、所定形状にプレス成形された複数枚の鋼板を組み合わせて接合することにより、所定の形状やボックス断面を構成することにより形成される。
【0006】
例えば、2枚の長尺鋼板をボックス断面を形成するように接合して、フロントサイドメンバとサイドメンバレインフォースとを連続して形成し、そのフロントサイドメンバの後方端部上側に、ストラットハウジング形成体を接合するとともに、その前側部にエンジンマウントブラケットを接合することによりフードレッジメンバの主体部分が構成される。
【0007】
そして、前記ストラットハウジング形成体の上端部にサスペンションスプリングサポートを接合し、また、前記エンジンマウントブラケットに、重量物であるパワーユニットを支持するためにレインフォースで補強し、更に、前記サイドメンバレインフォースにインナー、アウターに分割されたフロントサスペンションマウントブラケットを接合するようになっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、前記フードレッジメンバを鋼板の接合により形成する場合は、部品点数が大幅に増加するため、その組み付けに多くの工数が必要となって生産性が悪化するとともに、重量増やコスト高を余儀なくされる。
【0009】
また、各鋼板の接合には溶接が用いられるが、部品点数の増加によりその溶接箇所が多くなって、その分、溶接時の発生熱などにより鋼板に発生する変形量が大きくなり、精度良い組み付けが困難になってしまうという課題があった。
【0010】
そこで、本発明はフードレッジメンバを構成する各構成部材を、それぞれに付加される部材とともに押出し材および鋳造品で一体成形して、全体的な部品点数の削減を図りつつ、各構成部材自体の剛性および構成部材同士の取付け剛性をそれぞれ高めて、生産性の向上および精度良い組み付けを可能とする車体前部の骨格構造を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、車体前部からの入力荷重で潰れ変形してエネルギーを吸収するフロントサイドメンバと、このフロントサイドメンバの後端部に配置され、フロントサスペンションのストラットを収納保持するストラットハウジング形成体と、このストラットハウジング形成体の下側に配置され、フロントサスペンションを支持するサイドメンバレインフォースと、を備えてフードレッジメンバが構成され、このフードレッジメンバが車体前部の車幅方向両側にそれぞれ配置される車体前部の骨格構造において、前記フロントサイドメンバを、四角形以上の多角形断面となる筒型形状の押出し成形品で一体成形し、前記ストラットハウジング形成体を、これの前方端部上側に配置されるエンジンマウント部とともに鋳物品で一体成形し、前記サイドメンバレインフォースを、前記サイドメンバの取付け部を設けて鋳物品で一体成形し、前記ストラットハウジング形成体と前記サイドメンバレインフォースとの結合部間に、前記フロントサイドメンバの後方端部を嵌合する閉断面部分を形成し、このストラットハウジング形成体の閉断面部分に、フロントサイドメンバの対向する2面以上に接合可能な複数のリブを設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の車体前部の骨格構造にあって、前記複数のリブ間に、フロントサイドメンバの頂面に当接する補助リブを形成したことを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1および2の車体前部の骨格構造にあって、前記ストラットハウジング形成体に一体成形されたエンジンマウント部に複数の取付けボスが設けられ、これら複数のボス間を補強リブで連結したことを特徴とする。
【0014】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、フロントサイドメンバが押出し成形品で一体成形されるとともに、ストラットハウジング形成体がエンジンマウント部とともに鋳物品で一体成形され、かつ、サイドメンバレインフォースがサイドメンバの取付け部を設けて鋳物品で一体成形されることにより、これら3つの構成部材の結合によりフードレッジメンバを構成することができる。
【0015】
従って、このフードレッジメンバを構成する部品点数を削減して、生産性の向上を達成することができるとともに、各構成部材が一体成形品であるため高い剛性を得ることができることに加えて、フードレッジメンバは、各構成部材自体の剛性および構成部材同士の取付け剛性をそれぞれ高めて、精度良い組み付けが可能となる。
【0016】
また、前記各構成部材の組付けは、ストラットハウジング形成体とサイドメンバレインフォースとの結合部間に形成した閉断面部分に、フロントサイドメンバの後方端部を嵌合して組み付けられるが、ストラットハウジング形成体の閉断面部分にフロントサイドメンバの対向する2面以上に接合可能な複数のリブを設けたので、フロントサイドメンバの少なくとも対向する2面がリブに接合されて固定されるため、フロントサイドメンバと、ストラットハウジング形成体との結合剛性を更に高めることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、前記複数のリブ間に、フロントサイドメンバの頂面に当接する補助リブを形成したので、フロントサイドメンバをストラットハウジング形成体に組み付ける際に、フロントサイドメンバの頂面を前記補助リブに安定的に当接することができるため、フロントサイドメンバのセット作業性を向上することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1および2の発明の効果に加えて、ストラットハウジング形成体に一体成形されたエンジンマウント部に設けられる複数の取付けボス間が補強リブで連結されることにより、パワーユニットの大荷重を支持する前記エンジンマウント部の面剛性を高めることができるため、エンジンマウント部の面揺れが低減できるとともに、音振性能や部品の耐久性能を向上することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明する。図1〜図3は本発明の車体前部の骨格構造の一実施形態を示し、図1はフードレッジメンバの分解斜視図、図2はフロントサイドメンバとストラットハウジング形成体との結合部分を蛙観する分解斜視図、図3はフロントサイドメンバとストラットハウジング形成体との結合部分を蛙観する斜視図である。
【0020】
本実施形態の車体前部の骨格構造は、車幅方向両側に配置されてパワーユニットやフロントサスペンションを支持するフードレッジメンバを備え、このフードレッジメンバ1は図1に示すように、車体前部からの入力荷重で潰れ変形してエネルギーを吸収するフロントサイドメンバ10と、このフロントサイドメンバ10の後端部に配置され、フロントサスペンションの図示省略したストラットを収納保持するストラットハウジング形成体20と、このストラットハウジング形成体20の下側に配置され、フロントサスペンションを支持するサイドメンバレインフォース30と、を備えて構成される。
【0021】
前記フロントサイドメンバ10は、アルミ合金の押出し成形品として断面が六角形となる筒型形状に一体成形され、これの後方端部(図1中右端部)が前記ストラットハウジング形成体20への結合部11となる。
【0022】
一方、前記ストラットハウジング形成体20および前記サイドメンバレインフォース30は、それぞれアルミ合金の鋳物品として一体成形され、これらストラットハウジング形成体20およびサイドメンバレインフォース30を上下方向に接合した前方端部間に、前記フロントサイドメンバ10を嵌合して結合するようになっている。
【0023】
前記ストラットハウジング形成体20は、断面逆U字状の主メンバ21の後半部外側に、上方に滑らかに湾曲して立上がるストラットハウジング22が一体成形されるとともに、主メンバ21の前半部上側にエンジンマウント部23が一体成形されている。
【0024】
このエンジンマウント部23は、全体としてほぼ直方体状を成して、前記主メンバ21の上方かつ内側に突出し、その上面23aに図示省略したパワーユニットの取付けボルトを挿通する複数の取付穴24が形成されている。これら取付穴24は、図2に示すように、上面23aの裏側に突設された取付けボス24aの中心部に形成される。
【0025】
前記サイドメンバレインフォース30は、図1に示すように後方端部が図示省略したダッシュパネルのトーボード面に合わせて下方に傾斜して形成してあって、その全体に亘って断面U字状に形成される。
【0026】
このサイドメンバレインフォース30の下側には、前記フロントサスペンションを取付ける取付け部としてのねじ穴31,32,33などが形成される。
【0027】
サイドメンバレインフォース30の前半上端部の水平縁部34は、前記主メンバ21の両側壁25内側間にインロー構造をもって嵌合される。
【0028】
そして、この嵌合によりストラットハウジング形成体20とサイドメンバレインフォース30との前端部間に、前記フロントサイドメンバ10の後方端部を嵌合する閉断面形状が構成され、この閉断面部分にフロントサイドメンバ10を接合した後、ストラットハウジング形成体20とサイドメンバレインフォース30とが接合される。
【0029】
即ち、フードレッジメンバ1の組み付けは、まず、フロントサイドメンバ10をストラットハウジング形成体20の閉断面部分の内側に接合した後、このフロントサイドメンバ10を挟み込むようにして、サイドメンバレインフォース30をストラットハウジング形成体20の下側に配置し、その後に、これらストラットハウジング形成体20とサイドメンバレインフォース30とが接合される。
【0030】
ところで、フロントサイドメンバ10を接合する前記ストラットハウジング形成体20の閉断面部分には、図2に示すように、主メンバ21の両側壁25が存在し、この両側壁25をリブとして、その両側壁25にフロントサイドメンバ10の1組の対向面10a,10bを接合するようになっている。
【0031】
また、前記両側壁25間には、図2に示すように、前記エンジンマウント部23の内方に位置して、これら両側壁25の一方から他方に向かって傾斜する2条の補助リブ26が形成される。
【0032】
これら補助リブ26は、前記両側壁25に比較して高さが低く形成され、これら補助リブ26の先端に前記両側壁25間に嵌め込んだフロントサイドメンバ10の頂面10cが当接するようになっている。
【0033】
そして、フロントサイドメンバ10をストラットハウジング形成体20の主メンバ21内側に嵌め込んだ際に、図3に示すように、フロントサイドメンバ10の対向面10a,10bが前記両側壁25に当接されるとともに、頂面10cが補助リブ26に当接して位置決めされ、この状態で対向面10a,10bと両側壁25との当接箇所が溶接Mされる。
【0034】
また、前記主メンバ21の前端部分の内周辺部27(図2参照)が、フロントサイドメンバ10の対向面10a,10bおよび頂面10cに当接され、それらの当接部分も溶接Mされる。
【0035】
また、前記エンジンマウント部23の上面23aの裏側に形成された複数の取付けボス24aは、補強リブ28によって相互に連結される。
【0036】
以上の構成により本実施形態の車体前部の骨格構造にあっては、アルミ合金の押出し成形品で一体成形されたフロントサイドメンバ10と、エンジンマウント部23とともにアルミ合金の鋳物品で一体成形されたストラットハウジング形成体20と、アルミ合金の鋳物品で一体成形されたサイドメンバレインフォース30と、の3つの構成部材の結合によりフードレッジメンバ1が構成される。
【0037】
従って、このフードレッジメンバ1の全体部品点数は、フロントサイドメンバ10、ストラットハウジング形成体20およびサイドメンバレインフォース30の3部材となり、従来の鋼板で形成する場合に比較して大幅に削減することができる。
【0038】
また、フードレッジメンバ1の各構成部材が、押出し成形や鋳物などにより高い剛性を得ることができるため、このフードレッジメンバ1は、全体の剛性を高めつつ、部品点数の減少に伴う組み付け工数の削減を達成でき、これによってフードレッジメンバ1の軽量化を図ることができるとともに、生産性を高めてコスト低減を達成することができる。
【0039】
また、フロントサイドメンバ10をストラットハウジング形成体20に結合する際に、フロントサイドメンバ10の対向する対向面10a,10bが、主メンバ21の両側壁25に溶接Mされることにより、これらフロントサイドメンバ10とストラットハウジング形成体20との結合剛性を更に高めることができる。
【0040】
従って、前面衝突時などにあって車両前方から荷重が入力された場合にも、フロントサイドメンバ10に反力を効率良く作用させて、このフロントサイドメンバ10の潰れ変形による衝突エネルギーの吸収効果を向上することができる。
【0041】
更に、前記フロントサイドメンバ10の対向面10a,10bを、主メンバ21の両側壁25に当接するように位置決めする際に、このフロントサイドメンバ10の頂面10cが2条の補助リブ26に安定的に当接するので、フロントサイドメンバ10のセット作業性を向上することができる。
【0042】
更にまた、本実施形態のフードレッジメンバ1は、ストラットハウジング形成体20に一体成形されたエンジンマウント部23の上面23aに、パワーユニット取付け用の複数の取付穴24が形成されるが、これら取付穴24の取付けボス24aが、上面23aの裏側で補強リブ28によって相互に連結されるため、パワーユニットの大荷重を支持する前記上面23aの面剛性を高めることができる。
【0043】
このため、エンジンマウント部23の面揺れが低減できるとともに、音振性能や部品の耐久性能を向上することができる。
【0044】
ところで、本実施形態のフードレッジメンバ1は、フロントサイドメンバ10の断面形状を六角形としたが、これに限ることなくストラットハウジング形成体20の主メンバ21の両側壁25に当接するように、少なくとも四角形以上の断面形状を成しておればよい。
【0045】
また、主メンバ21の両側壁25をリブとして、これら両側壁25にフロントサイドメンバ10の対向面10a,10bを接合したが、これら対向面10a,10bを接合するリブを前記両側壁25以外に設けてもよく、また、それら対向面10a,10b以外の外側面にも接合するリブを更に設けることもできる。
【0046】
更に、フロントサイドメンバ10の頂面10cに当接する補助リブ26は傾斜させたが、別に傾斜させることなく両側壁(リブ)25に対して直角配置してもよく、また、その数もフロントサイドメンバ10を安定的にセットできるように2条としたが、これに限ることなく3条以上としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる車体前部の骨格構造の一実施形態を示すフードレッジメンバの分解斜視図である。
【図2】本発明にかかる車体前部の骨格構造の一実施形態を示すフロントサイドメンバとストラットハウジング形成体との結合部分を蛙観する分解斜視図である。
【図3】本発明にかかる車体前部の骨格構造の一実施形態を示すフロントサイドメンバとストラットハウジング形成体との結合部分を蛙観する斜視図である。
【符号の説明】
1 フードレッジメンバ
10 フロントサイドメンバ
10a,10b 対向面
10c 頂面
20 ストラットハウジング形成体20
22 ストラットハウジング
23 エンジンマウント部
24a 取付けボス
25 両側壁(リブ)
26 補助リブ
28 補強リブ
30 サイドメンバレインフォース
31,32,33 ねじ穴(取付け部)
Claims (3)
- 車体前部からの入力荷重で潰れ変形してエネルギーを吸収するフロントサイドメンバと、
このフロントサイドメンバの後端部に配置され、フロントサスペンションのストラットを収納保持するストラットハウジング形成体と、
このストラットハウジング形成体の下側に配置され、フロントサスペンションを支持するサイドメンバレインフォースと、を備えてフードレッジメンバが構成され、このフードレッジメンバが車体前部の車幅方向両側にそれぞれ配置される車体前部の骨格構造において、
前記フロントサイドメンバを、四角形以上の多角形断面となる筒型形状の押出し成形品で一体成形し、
前記ストラットハウジング形成体を、これの前方端部上側に配置されるエンジンマウント部とともに鋳物品で一体成形し、
前記サイドメンバレインフォースを、前記サイドメンバの取付け部を設けて鋳物品で一体成形し、
前記ストラットハウジング形成体と前記サイドメンバレインフォースとの結合部間に、前記フロントサイドメンバの後方端部を嵌合する閉断面部分を形成し、このストラットハウジング形成体の閉断面部分に、フロントサイドメンバの対向する2面以上に接合可能な複数のリブを設けたことを特徴とする車体前部の骨格構造。 - 前記複数のリブ間に、フロントサイドメンバの頂面に当接する補助リブを形成したことを特徴とする請求項1に記載の車体前部の骨格構造。
- 前記ストラットハウジング形成体に一体成形されたエンジンマウント部に複数の取付けボスが設けられ、これら複数のボス間を補強リブで連結したことを特徴とする請求項1,2のいずれかに記載の車体前部の骨格構造。
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