JP3826408B2 - 車輪速センサの異常検出装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、例えばアンチスキッド制御装置その他に使用する車輪速センサの異常を検出する車輪速センサの異常検出装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の車輪速センサの異常検出装置としては、従来、例えばアンチスキッド制御装置のフェイルセーフ機能として備えられたものがある。すなわち、当該異常検出装置は、車両に搭載した車輪速センサ(例えば通常のフロントエンジン・リアドライブ車の場合は、左右前輪と後輪側のプロペラシャフトとに配設される)が車両の各車輪の回転速度に比例したパルス信号を車輪速検出回路に供給し、この車輪速検出回路にて検出された車輪速に基づいてさらに疑似車体速を検出し、この疑似車体速と車輪速との差値が設定値を越えた状態が設定時間以上継続しているか否かを判断することにより、少なくともいずれかの車輪速センサが異常状態であることを検出するようにしている。
【0003】
例えば、疑似車体速が50km/hと検出され、左右前輪及び後輪のうちのある車輪速が0km/hと検出された場合、設定値が30km/hであれば、疑似車体速と車輪速との差値50km/hは前記設定値を越えている。そして、このように差値50km/hの状態が例えば1sec 以上継続していれば、前記車輪速が0km/hとなった車輪に配設されている車輪速センサを異常と判定するのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の車輪速センサの異常検出装置にあっては、車輪速センサから送出されたパルス信号に基づいて車輪速を検出した後、この車輪速に基づいて疑似車体速を検出し、これら車輪速データ及び疑似車体速データの値から異常を検出するものであったため、実際に車輪速センサに異常が発生してからこの異常が検出されるまでに比較的長い時間が必要となってしまう。そして、このように車輪速センサの異常検出に時間がかかると、前記異常が発生した車輪速センサが配設されている車輪は、実際には良好に回転しているにもかかわらずロック状態になっていると誤判断されてしまうといった問題があった。
【0005】
なお、例えば車輪速センサを、外周面に歯を形成したロータと、このロータに対応する永久磁石及び検出コイルを設けた磁気センサ部とで構成したときには、車輪速センサの異常検出を電気的な導通の如何により検出して短時間での異常検出を可能にすることが考えられるが、これでは実際に車輪速センサに異常が生じていても電気的には導通している場合や、短絡故障の場合には正確に異常を検出できない。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決し得るものであって、その目的は、車輪速センサの異常を短時間でしかも的確に検出することができる車輪速センサの異常検出装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の車輪速センサの異常検出装置のうち、請求項1に記載のものは、車両に搭載され車輪回転速度に比例したパルスを出力する複数の車輪速センサの異常を検出する車輪速センサの異常検出装置において、単位時間に得られた前記パルスの個数に基づき前記各車輪速センサごとに車輪速を検出する車輪速検出手段と、前記車輪速検出手段の検出結果のうちの一つを車体速として選択する車体速選択手段と、前記車輪速,前記車体速及び前記パルスに基づいて前記車輪速センサの異常を判定する判定手段と、を備え、前記判定手段は、前記車輪速のそれぞれが所定車輪速以上であるか否かを判定する車輪速判定部と、前記車体速が所定車体速以上であるか否かを判定する車体速判定部と、前記車輪速センサのそれぞれについて前記パルスのオン・オフ状態を監視して当該パルスが所定時間連続してオフ状態であるか否かを判定するパルス監視判定部と、一の前記車輪速センサについて検出された最新の前記車輪速が所定車輪速以上で且つ前記車体速が所定車体速以上であってしかも当該一の車輪速センサについて前記パルス監視判定部が所定時間内で連続してパルスのオフ状態を確認したとき当該一の車輪速センサを異常と判定する車輪速センサ異常判定部と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載のものは、請求項1に記載の発明を、制動時のブレーキ圧を制御して車両のロック状態発生を防止するアンチスキッド制御装置に具備された車輪速センサに適用したことを特徴としている。
【0010】
【作用】
本発明の車輪速センサの異常検出装置の作用について説明する。
先ず、車両が走行を開始する(すなわち車輪が回転し始める)と、車輪速センサからは車輪回転速度に比例したパルスが出力され、このパルスに基づいて車輪速検出手段が車輪速を検出する。ここで、一般にこのようなパルスに基づく車輪速は、単位時間(例えば10ms等)に得られた前記パルスの個数によって検出され、しかも任意の時点における車輪速は、その時点に対して前回の単位時間に得られたパルスの個数に基づき検出されるので、当該車輪速は、パルスの出力に対して遅れて検出されることになる。
【0012】
そこで、本発明によれば、車両に搭載された複数の車輪速センサから車輪回転速度に比例したパルスがそれぞれ出力されると、これらパルスごとに車輪速検出手段が車輪速を検出する。そして、車輪速検出手段によるこれらの検出結果のうちの一つは、車体速選択手段において車体速として選択される。
そして、車輪速判定部で車輪速が所定車輪速(例えば30km/h)以上であるか否かが判定される一方、車体速判定部で車体速が所定車体速(例えば30km/h)以上であるか否かが判定され、さらにパルス監視判定部でパルスのオン・オフ状態を監視して当該パルスが所定時間連続してオフ状態であるか否かが判定される。ここで、例えば車両が減速した場合は、車輪の回転数が低下することによってパルス出力が徐々に減少し(すなわち車輪速及び車体速が徐々に減少し)、車輪ロックが発生した場合は、車両の走行中に回転している車輪の慣性の影響でパルス出力が突然零にはならず徐々に低下していく(すなわち車輪速は、車輪の慣性の影響から突然零にはならず徐々に低下していく)。したがって、ある時点から突然パルスが停止し、しかもその時間が連続して経過している一方、上記時間遅れの影響から所定の車輪速を維持し続けていることは考えられず、かような場合は明らかに車輪速センサに異常が発生しているといえる。
したがって、一の前記車輪速センサについて検出された最新の前記車輪速が所定車輪速以上で且つ前記車体速が所定車体速以上であってしかも当該一の車輪速センサについてパルス監視判定部が所定時間(例えば50ms)内で連続してパルスのオフ状態を確認したときには、車輪速センサ異常判定部が当該一の車輪速センサを異常と判定する。より具体的には、上述した理由から、任意の時点における車輪速は、その時点に対して前回の単位時間に得られたパルスの個数に基づくために、当該パルスの出力に対して遅れて検出される。したがって、従来の異常検出装置では、実際に異常異常が発生してから少なくとも前記単位時間が経過した後、車輪速が所定速度から突然零に低下した時点で初めて異常が検出されていたのが、本発明の異常検出装置では、パルスのオフ状態が連続して所定時間内経過した時点で異常が検出されるのである。
このように異常検出装置を構成した場合は、車体速を検出するための特別な装置(例えば加速度センサ等)を設ける必要がない。また、このような異常検出装置を、車両の制動時に作動するアンチスキッド制御装置に適用した場合には、前記車体速選択手段を複数のデータ値のうち最も高いものを選択する所謂セレクト・ハイとして構成し、車両の加速時に作動するトラクッション制御装置に適用した場合には、前記車体速選択手段を複数のデータ値のうち最も低いものを選択する所謂セレクト・ローとして構成するとよい。
【0013】
前記請求項1に記載の車輪速センサの異常検出装置をアンチスキッド制御装置に適用したのが請求項2に記載のものである。すなわち、上述したように、車両に搭載された車輪速センサから車輪回転速度に比例したパルスが出力されると、このパルスに基づいて車輪速検出手段が車輪速を検出する一方、車体速検出手段においては車両の車体速が検出され、前記車輪速及び前記車体速のデータ値と前記パルスの状態とに基づいて、判定手段が車輪速センサを異常と判定する。これによって、車輪速センサの異常判定までの時間が短縮されるから、この異常判定までの時間内において車輪がロック状態であると誤って判断されることがなく、アンチスキッド制御装置の誤作動の可能性が低減する。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例を示すブロック図である。この図において、符号1FL,1FRは前輪、1RL,1RRは後輪であり、後輪1RL,1RRには、エンジン2の回転駆動力が変速機3,プロペラシャフト4及び終減速装置5を介して伝達され、フロントエンジン・リアドライブ(単にFRとも記す)車の構成を有する。
【0017】
各車輪1FL〜1RRには、それぞれ制動用シリンダとしてのホイールシリンダ6FL〜6RRが取り付けられているとともに、各前輪1FL,1FRには、これらの車輪回転速度に応じた周波数の車輪速検出信号を出力する車輪速センサ7FL,7FRが取り付けられ、プロペラシャフト4には、後輪1RL,1RRの車輪回転速度に応じた周波数の車輪速検出信号を出力する車輪速センサ7Rが取り付けられている。
【0018】
そして、前輪側ホイールシリンダ6FL,6FRには、ブレーキペダル8の踏み込みに応じて二系統のマスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダ9からのマスタシリンダ圧が前輪側アクチュエータ10FL,10FRを介して個別に供給されるとともに、後輪側ホイールシリンダ6RL,6RRには、マスタシリンダ9からのマスタシリンダ圧が共通の後輪側アクチュエータ10Rを介して供給される。
【0019】
アクチュエータ10FL〜10Rのそれぞれは、図2に示すように、マスタシリンダ9に接続される油圧配管11とホイールシリンダ6FL〜6RRとの間に介装された電磁流入弁12と、この電磁流入弁12と並列に接続された電磁流入弁13,油圧ポンプ14及び逆止弁15の直列回路と、電磁流入弁13及び油圧ポンプ14間の油圧配管に接続されたアキュムレータ16とを備えている。そして、電磁流入弁12は、後述するアンチスキッド制御装置21から入力される制御信号EVが論理値“0”であるときに開状態,論理値“1”であるときに閉状態となり、電磁流出弁13は逆に制御信号AVが論理値“0”であるときに閉状態,論理値“1”であるときに開状態となり、さらに油圧ポンプ14は直流モータ17によって回転駆動され且つ制御信号MRが所定電圧であるときに回転駆動状態となる。
【0020】
また、各車輪速センサ7FL〜7Rのそれぞれは、図3に示すように、前輪1FL,1RRのドライブシャフト及びプロペラシャフト4の所定位置に個別に装備され且つ外周面に所定歯数Z(例えばZ=20)のセレーションが形成されたロータ7aと、これに対向する磁石7bが内蔵され且つその発生磁束による誘導起電力を検出するコイル7cとから構成される。つまり、車輪速センサ7FL〜7Rのコイル7cにはロータ7aのセレーションの回転に応じた周波数の起電力が誘導されるようになっていて、その誘導起電力が車輪速センサ7FL〜7Rの出力となる。
【0021】
また、車両には、その前後方向の加速度を検出する前後加速度センサ19が配設されている。この前後加速度センサ19は、車両に加減速度が生じていないときに零電圧,加速度が生じているときにその加速度の大きさに応じた正の電圧及び減速度が生じているときにその減速度の大きさに応じた負の電圧でなる加速度検出値XG を出力するようになっている。
【0022】
そして、各車輪速センサ7FL〜7Rから出力される誘導起電力がシュミット回路等の波形整形回路20FL〜20Rに供給され、これら波形整形回路20FL〜20Rでパルス信号に変換された車輪速検出値と、前後加速度センサ19の加速度検出値XG とが、アンチスキッド制御装置21に供給されるようになっている。このアンチスキッド制御装置21は、波形整形回路20FL〜20Rの出力と各車輪1FL〜1RRの回転半径とから車輪の周速度である実車輪速(車両の走行状況)VwFLIN〜VwRIN を演算し、特に、アンチスキッド制御装置21においては、不要な高周波を取り除くため、これら実車輪速VwFLIN〜VwRIN にローパスフィルタをかけて車輪速VwFL〜VwR を演算する。そして、これら車輪速VwFL〜VwR のうち最も高い車輪速(セレクトハイ車輪速)と前後加速度検出値XG (車両の走行状況)とに基づいて実際の車体速度に対応する疑似車速Vi を算出するとともに、この疑似車速Vi ,各車輪速VwFL〜VwR 及びこれらの加減速度に基づいて制動時の車輪ロックを防止する各車輪毎の制御信号EV,AV及びMRを生成し、これらを各アクチュエータ10FL〜10Rに出力するようになっている。
【0023】
また、波形整形回路20FL〜20Rが異常検出装置31に入力される。この異常検出装置31は、波形整形回路20FL〜20Rの出力を入力してパルス周期をカウントするカウンタ32FL〜32Rと、これらカウンタ32FL〜32Rのカウント値がディジタル値で入力されるとともに、アンチスキッド制御装置21から実車輪速VwFLIN〜VwRIN 及び疑似車速Vi が入力され、これらの入力に基づいて図4に示すフローチャートにしたがい各車輪速センサ7FL〜7Rの異常を判定する判定回路33とから構成される。
【0024】
判定回路33は、各車輪速センサ7FL〜7Rのそれぞれに対して判定処理を行うものであるが、図4では特に車輪速センサ7Rについてのフローチャートを示しており、これと全く同様な判定処理が車輪速センサ7FL,7FRについても行われる。すなわち、先ずステップS1でアンチスキッド制御装置21において演算された実車輪速VwRIN を読み込み、ステップS2で同様にアンチスキッド制御装置21において演算された疑似車速Vi を読み込む。次いで、ステップS3に移行して、前記実車輪速VwRIN が30km/h以上であるか否かを判断し、VwRIN ≧30km/hであればステップS4へと移行する。ステップS4では、前記疑似車速Vi が30km/h以上であるか否かを判断し、Vi ≧30km/hであればステップS5へと移行し、ステップS5では、前記波形整形回路20Rの出力に基づき、この出力(つまりパルス振幅)が連続して出力されているか否かを監視するとともに、当該出力が連続して50msec中断された場合にステップS6へと移行して車輪速センサ7Rを異常と判定する。一方、ステップS3〜S5においてNOと判断された場合は、そのまま処理を終えて初期状態に戻る。
【0025】
次に、本実施例の動作を説明する。ここでは、前記車輪速センサ7FL〜7Rのうち、特に車輪速センサ7Rに異常が発生したと仮定して説明を進める。
今、車両が図示しないイグニッションスイッチをオフ状態として停車しているものとすると、この状態では、各制御回路に電源が供給されておらず、アンチスキッド制御装置21の指令信号EV及びAVが論理値“0”となっており、指令信号MRが零となっている一方、図4に示すフローチャートが作動しないので、アクチュエータ10FL〜10Rは、電磁流入弁12が開状態、電磁流出弁13が閉状態及び油圧ポンプ14が停止状態となっており、マスタシリンダ9で発生されるマスタシリンダ圧が直接ホイールシリンダ6FL〜6RRに供給される。したがって、ブレーキペダル8を解放しているときには、マスタシリンダ9のマスタシリンダ圧が零であるので、ホイールシリンダ6FL〜6RRのブレーキ液圧も零となって非制動状態となり、逆にブレーキペダル8を踏み込んでいるときには、その踏み込み量に応じたマスタシリンダ圧がマスタシリンダ9から発生されるので、これがホイールシリンダ6FL〜6RRに供給されて車両は制動状態となる。
【0026】
この状態から前記イグニッションスイッチをオン状態とすると、各制御回路に電源が投入され、アンチスキッド制御装置21が作動状態となるとともに、波形整形回路20Rからパルスが出力され、異常検出装置31のカウンタ32Rに供給される。このとき、車輪速センサ7FL〜7Rから出力される誘導起電力及び前後加速度センサ19の加速度検出値XG は零となっており、加速度検出値XG と実車輪速VwFLIN〜VwRIN のセレクトハイ車輪速とによって算出される疑似車速Vi が零であるから、前記フローチャートにおけるステップS1ではVwRIN =0が読み込まれるとともに、ステップS2ではVi =0が読み込まれ、次いでステップS3においてNOと判断された後、初期状態へと移行する。
【0027】
この停止状態からブレーキペダル8の踏み込みを解放し、車両を発進させて加速状態とすると、車輪速センサ7FL〜7Rから車輪の回転速度に応じた周波数の誘導起電力が出力され、これらが波形整形回路20FL〜20Rでパルス信号に変換されてアンチスキッド制御装置21に供給されるとともに、前後加速度センサ19からアンチスキッド制御装置21に供給される加速度検出信号XG も正方向に増加する。この場合、ステップS1では徐々に加速状態にある実車輪速VwRIN が読み込まれるとともに、ステップS2では疑似車速Vi が読み込まれるが、VwRIN 及びVi が30km/h 以上となるまではステップS3においてNOと判断されて初期状態へと移行する。
【0028】
そして、加速状態又は定速走行状態が続いてVwRIN 及びVi が30km/h 以上となった場合には、ステップS3及びS4においてYESと判断され、ステップS5へと移行する。そして、ステップS5へと至ったとき、各車輪速センサ7FL〜7Rに異常がなければ、波形整形回路20Rからは連続してパルスが供給されるから、このステップS5でNOと判断されて初期状態へと移行する。
【0029】
一方、前記ステップS3及びS4においてYESと判断され、ステップS5へと移行したとき、実際に各車輪速センサ7FL〜7Rに異常が発生していた場合には、このステップS5では以下のように処理される。すなわち、この際のタイムチャートを図5に示すが、各車輪速センサ7FL〜7Rが正常であった時間t1 以前までは、波形整形回路20Rからそのときの速度(車輪回転数)に応じたパルスが発生している。そして、単位時間(例えば10ms)における前記パルスの個数に基づき実車輪速VwRIN が演算されるのだが、現時点における実車輪速VwRIN は、その時点に対して前回の単位時間内に得られたパルス数に基づき演算されるから、実際に各車輪速センサ7FL〜7Rに異常が発生した時間t1 を経過しても、前記前回の単位時間に得られたパルス数に基づく実車輪速VwRIN が30km/h)を維持し続ける。これが、図5において時間t1 〜t3 の間における実車輪速VwRIN である。
【0030】
このとき、アンチスキッド制御装置21においては、電磁流入弁12のみを開状態に制御していることにより、マスタシリンダ9のブレーキペダル8の踏み込み量に応じたマスタシリンダ圧が各ホイールシリンダ6FL〜6RRに供給され、増圧モードとなる。このような増圧モードとなると、各車輪1FL〜1RRの車輪速が低下し、これに伴って車輪減速度も大きくなる。そして、車輪減速度が予め設定された減速度しきい値αを超えると、指令信号EVが論理値“1”に反転され、これによってアクチュエータ10j(j=FL,FR,R)の電磁流入弁12が閉状態とされて、マスタシリンダ9とホイールシリンダ6jとの間が遮断されて圧力保持モードとなる。その後、車輪速Vwj が疑似車速Vi の85%に一致すると、指令信号AV及びMRをともにオン状態とすることにより、電磁流出弁13を開状態とするとともに油圧ポンプ14を回転駆動してホイールシリンダ6j内の作動油をマスタシリンダ9側に排出し、ホイールシリンダ6jを減圧する減圧モードとしてアンチスキッド制御を開始する。
【0031】
この減圧モードによって車輪速が回復し、車輪加速度が予め設定された加速度しきい値βを超えると前記保持モードとし、その後車輪加速度が加速度しきい値β以下となると、指令信号EVを断続的にオン・オフさせて緩増圧モードとし、その後車輪減速度が再度減速度しきい値αを超えると保持モードに移行し、その後上記制御サイクルを繰り返してアンチスキッド制御を制動状態が解除されるまで断続する。
【0032】
ここで、時間t1 から50msec経過した時間t2 までの間に再びパルスが発生しなければ、ステップS3,S4及びS5ではYESと判断され、ステップS6に至って車輪速センサ7Rの異常が検出される。そして、車輪速センサ7Rの異常が検出されると、アンチスキッド制御装置21及び警報回路22へと信号が送られる。このため、アンチスキッド制御装置21から出力される制御信号EV,AVが論理値“0”になるとともに、制御信号MRも零となり、アンチスキッド制御が停止され、且つ警報回路22から音又は光等である警報が発せられ、運転者の車輪速センサ7FL〜7Rが異常であることを報知させる。
【0033】
このように、従来の異常検出装置にあっては、疑似車速Vi と実車輪速VwRIN との比較のみによって異常を検出していたため、実車輪速VwRIN が30km/h 以上のある速度から突然零へと低下した時点(図5の時間t3 )で初めて車輪速センサ7Rの異常が検出されていたのが、本実施例の構成であれば、車輪速センサ7Rに異常が発生してから50msec経過した時点(図5の時間t2 )で当該車輪速センサ7Rの異常を検出することができる。これによって、異常検出までの時間が短縮され、この異常判定までの時間内において車輪のロック状態を誤判断してしまう可能性が低下し、アンチスキッド制御装置21の誤作動を略確実に防止することができる。
【0034】
また、本発明の異常検出装置31では、実車輪速VwRIN を異常検出の条件としたことで、仮に車輪1RRにロック状態が発生したとしても、車両の走行中に回転している当該車輪1RRの慣性の影響で、パルス出力は突然零になることはなく前記単位時間内に再び発生する。つまり、実車輪速VwRIN は、車両の走行に伴って回転していた車輪1RRの慣性の影響から突然零にはならず徐々に低下していく。したがって、VwRIN ≧30km/h まではステップS3,ステップS4においてYESと判断されるが、ステップS5においてNOと判断される一方、VwRIN ≦30km/h となった後はステップS3においてNOと判断され、このいずれの場合も初期状態へと移行する。したがって、上記のように実車輪速VwRIN が突然零となる車輪速センサの異常の場合と、実車輪速VwRIN が徐々に低下する車輪ロックの場合とを明確に区別することができる。
【0035】
さらに、例えば車両が低速走行している場合や停車している場合には、ステップS3あるいはステップS4のいずれかにおいて必ずNOと判断され、初期状態へと移行する。したがって、ノイズ等の影響によって異常検出装置31が誤って作動することがなく、実際に車輪速センサ7FL〜7Rの異常検出を必要とする車両の30km/h以上の走行時にのみ検出することができる。
【0036】
加えて、パルスの状態を監視することで、車輪速センサ7FL〜7Rが短絡故障を来した等の不具合をも検出することができる。
なお、上記実施例では、実際の車体速度に対応する疑似車速Vi は、車輪速VwFL〜VwR のうち最も高い車輪速(セレクトハイ車輪速)と前後加速度検出値XG (車両の走行状況)とに基づいて算出するとしたが、前記車輪速VwFL〜VwR のうち最も高い車輪速を選択する車輪速選択回路をアンチスキッド制御装置21に設け、この車輪速選択回路において選択された車輪速を前記疑似車速Vi として採用することもできる。このように構成した場合には、前後加速度センサ19を設ける必要がなくなるといった利点がある。
【0037】
ところで、上記図4に示したフローチャートにおいて、ステップS3及びステップS4でそれぞれ実車輪速VwRIN ,疑似車速Vi を30km/h 以上としたのは、以下に述べる考察に基づいている。
1)先ず、車輪に発生する減速度を求める。
I・(dω/dt)=μ・W・R−TB より、
dω/dt=(μ・W・R−TB )/I.
ここに、
I;車輪の慣性力 (kgf・ms2 )
dω/dt;車輪の角加速度 (rad/s2 )
μ;路面─タイヤ摩擦係数
W;輪荷重 (kgf)
R;タイヤ動半径 (m)
TB ;ブレーキトルク (kgf・m)
である。
【0038】
したがって、車輪に発生する減速度dVw /dtは、
2)次いで、アンチスキッド制御システムの要件により、車輪速信号パルスが発生していなくとも、とりうる車輪速を求める。
【0039】
すなわち、とりうる車輪速をVw0(単位m/s),パルス周期をT(単位s),車速換算周波数をF0 (単位HZ ・s/m)とすると、
Vw0=(1/T)・(1/F0 ).
3)最後に、車輪速センサの異常検知車速を算出する。
異常検知車速をVw1(単位m/s),パルス監視周期の間に変化し得る車輪速をΔVW (単位m/s)とすると、
Vw1+ΔVW =Vw0であるから、Vw1=ΔVW −Vw0.
ΔVW =(dVw /dt)・Tより、
この(1)式に、一般的な数値を代入すると、
このように、検知車速Vw1=27.25(km/h)が得られたため、疑似車速Vi =30km/h 以上とすれば、異常検出装置31の誤検出の可能性を低下させることができ、したがってアンチスキッド制御装置21の誤作動を略確実に防止することができると考える。
【0040】
なお、本実施例においては、ホイールシリンダを油圧で制御する場合について説明したが、これに限らず他の液体又は空気等の気体を適用し得ることは言うまでもない。また、異常検出装置31をアンチスキッド制御装置21に適用した場合について説明したが、これに限定されず、例えばトラクッションコントロール装置等に適用したとしても同様の効果を得ることができる。このようにトラクッションコントロール装置に適用した場合には、疑似車速Vi をセレクトローで選択させるとよい。
【0041】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の車輪速センサの異常検出装置によれば、以下の効果を得ることができる。
請求項1に記載のものによれば、パルスの状態を監視しつつ車輪速センサの異常を検出するため、車輪速の検出における時間遅れの影響がなくなり、当該車輪速センサの異常判定までの時間を短縮することができ、また、車体速のデータ値を含んでいることにより、例えば車両が低速走行している場合や停車している場合に、ノイズ等の影響によって異常検出装置が誤作動すること防止でき、さらに、判定条件の一つとして車輪速のデータ値を含んでいることにより、車輪速センサの異常と車輪のロック状態とを明確に区別することができる。
【0042】
しかも、車体速を検出するための特別な装置(例えば加速度センサ等)を設ける必要がなくなり、車輪速センサを備えた装置の構成を簡素化することができるとともに、当該装置の製造コストが低下し、保守・点検作業を容易にすることができる。
請求項2に記載のものによれば、車輪速センサの異常判定までの時間を短縮することができ、これによって車輪速センサの異常判定までの時間内において車輪がロック状態であると誤判断されることがなく、アンチスキッド制御装置の誤作動の可能性を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施例として示したアクチュエータの構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施例として示した車輪速センサの構成を示す図である。
【図4】本発明の異常検出装置の処理フローチャートである。
【図5】車輪速センサの異常検出過程を説明するタイムチャートである。
【符号の説明】
1FL,1FR 前輪(非駆動輪)
1RL,1RR 後輪(駆動輪)
6FL〜6RR ホイールシリンダ(制動用シリンダ)
7FL〜7R 車輪速センサ
8 ブレーキペダル
9 マスタシリンダ
10FL〜10R アクチュエータ
12 電磁流入弁
13 電磁流出弁
14 油圧ポンプ
17 直流モータ
19 前後加速度センサ
21 アンチスキッド制御装置
31 異常検出装置
33 判定回路(判定手段)
Claims (2)
- 車両に搭載され車輪回転速度に比例したパルスを出力する複数の車輪速センサの異常を検出する車輪速センサの異常検出装置において、
単位時間に得られた前記パルスの個数に基づき前記各車輪速センサごとに車輪速を検出する車輪速検出手段と、前記車輪速検出手段の検出結果のうちの一つを車体速として選択する車体速選択手段と、前記車輪速,前記車体速及び前記パルスに基づいて前記車輪速センサの異常を判定する判定手段と、を備え、
前記判定手段は、前記車輪速のそれぞれが所定車輪速以上であるか否かを判定する車輪速判定部と、前記車体速が所定車体速以上であるか否かを判定する車体速判定部と、前記車輪速センサのそれぞれについて前記パルスのオン・オフ状態を監視して当該パルスが所定時間連続してオフ状態であるか否かを判定するパルス監視判定部と、一の前記車輪速センサについて検出された最新の前記車輪速が所定車輪速以上で且つ前記車体速が所定車体速以上であってしかも当該一の車輪速センサについて前記パルス監視判定部が所定時間内で連続してパルスのオフ状態を確認したとき当該一の車輪速センサを異常と判定する車輪速センサ異常判定部と、を備えたことを特徴とする車輪速センサの異常検出装置。 - 前記車輪速センサは、制動時のブレーキ圧を制御して車両のロック状態発生を防止するアンチスキッド制御装置に具備された車輪速センサであることを特徴とする請求項1に記載の車輪速センサの異常検出装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP04915394A JP3826408B2 (ja) | 1994-03-18 | 1994-03-18 | 車輪速センサの異常検出装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP04915394A JP3826408B2 (ja) | 1994-03-18 | 1994-03-18 | 車輪速センサの異常検出装置 |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH07257354A JPH07257354A (ja) | 1995-10-09 |
JP3826408B2 true JP3826408B2 (ja) | 2006-09-27 |
Family
ID=12823160
Family Applications (1)
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JP04915394A Expired - Lifetime JP3826408B2 (ja) | 1994-03-18 | 1994-03-18 | 車輪速センサの異常検出装置 |
Country Status (1)
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-
1994
- 1994-03-18 JP JP04915394A patent/JP3826408B2/ja not_active Expired - Lifetime
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