JP3787882B2 - アンチロックブレーキ制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、制動シリンダのブレーキ流体圧を制御して制動時における車輪のロック状態の発生を防止する車両のアンチロックブレーキ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アクチュエータの自己診断を行うアンチロックブレーキ制御装置としては、例えば「自動車用ABSの研究」(平成5年6月30日株式会社山海堂発行)の第119頁〜第126頁に記載されたものがある。
【0003】
この従来例では、アクチュエータのリザーバタンク内に蓄積されたブレーキ流体を排出するポンプを駆動する電動モータの自己診断を行って、自己診断で異常が検出されると、アンチロックブレーキ制御装置を遮断して、通常ブレーキモードに戻すようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例ではポンプを駆動する電動モータの異常を検出したときに、直ちにアンチロックブレーキ制御を中止して、通常ブレーキシステムに戻すので、例えば電動モータの異常がアンチロックブレーキ制御中に検出されたときには、その時点から通常ブレーキシステムに戻されてしまいアンチロックブレーキ制御効果を発揮することができなくなるという未解決の課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、ポンプを駆動する電動モータの異常を検出したときに、減圧時間の積算値が所定時間に達するまではアンチロックブレーキ制御を継続して、アンチロックブレーキ制御効果を少しでも長く発揮することができるアンチロックブレーキ制御装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に係るアンチロックブレーキ制御装置は、制御対象車輪に配設された制動用シリンダと、該制動用シリンダに対するブレーキ流体の給排を制御するバルブを有し、且つ少なくともブレーキ流体排出系にリザーバタンク及び当該リザーバタンクに蓄積されたブレーキ流体を排出する電動モータで駆動されるポンプを有するアクチュエータと、車輪の回転速度に応じた出力信号を出力する車輪速検出手段と、該車輪速検出手段の出力信号に基づいて前記アクチュエータの作動を制御する制御手段とを備えるアンチロックブレーキ制御装置において、前記電動モータの異常を診断するモータ異常診断手段と、該モータ異常診断手段で電動モータが異常と診断されたときに、前記リザーバタンクの蓄積量検出を開始するリザーバ蓄積量検出手段と、該リザーバ蓄積量検出手段の蓄積量が所定値に達するまで前記制御手段による前記バルブの制御を継続させ、所定値に達したとき前記制御手段による前記バルブの制御を中止させる制御中止手段とを備えたことを特徴としている。
【0007】
また、請求項2に係るアンチロックブレーキ制御装置は、請求項1の発明において、前記リザーバ蓄積量検出手段が、前記モータ異常診断手段で電動モータが異常と診断されたときに、減圧制御時間を積算してリザーバタンクの蓄積量を算出するように構成されていること特徴としている。
【0008】
さらに、請求項3に係るアンチロックブレーキ制御装置は、請求項1の発明において、前記リザーバ蓄積量検出手段が、前記モータ異常診断手段で電動モータが異常と診断されたときに、リザーバタンクの蓄積量を直接検出するように構成されていることを特徴としている。
【0009】
【発明の効果】
請求項1に係る発明によれば、モータ異常診断手段で、電動モータの異常を検出したときに、リザーバ蓄積量検出手段でリザーバタンクの蓄積量検出を開始し、制御中止手段で、蓄積量が所定値即ち満杯近傍の値に達するまで制御手段によるバルブの制御を継続し、所定値に達したときに制御手段によるバルブの制御を中止するので、電動モータの異常を検出しても、リザーバタンクの容量が満杯となるまでの間は制御手段によるバルブ制御を継続することができ、有効なアンチロックブレーキ制御を比較的長く継続して操縦安定性を確保することができるという効果が得られる。
【0010】
また、請求項2に係る発明によれば、リザーバ蓄積量検出手段で、減圧制御時間を積算してリザーバタンクの蓄積量を推定することができ、蓄積量を検出するために特別なセンサを必要とすることがないという効果が得られる。
【0011】
さらに、請求項3に係る発明によれば、リザーバ蓄積量検出手段でリザーバタンクの蓄積量を直接検出するので、蓄積量を正確に検出することができ、リザーバタンクが満杯となるまで、アンチロックブレーキ制御を継続することができるという効果が得られる。
【0012】
【実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係るアンチロックブレーキ制御装置を後輪駆動車に適用した場合の概略構成図である。図中、1FL,1FRは左右前輪、1RL,1RRは左右後輪であり、後輪1RL,1RRには、エンジン2の回転駆動力が変速機3、プロペラシャフト4及び終減速装置5を介して伝達されるよう構成される。
【0013】
車輪1FL〜1RRには、それぞれ制動用シリンダとしてのホイールシリンダ6FL〜6RRが取付けられている。また、各前輪1FL,1FRには、これらの車輪の回転速度に応じた周波数の正弦波でなる車輪速信号を出力する車輪速検出手段としての車輪速センサ7FL,7FRが各々取付けられ、各後輪1RL,1RRにも、これらの回転速度に応じた周波数の正弦波でなる車輪速信号を出力する同じく車輪速検出手段としての車輪速センサ7RL,7RRが取付けられている。
【0014】
そして、前輪側のホイールシリンダ6FL,6FRには、ブレーキペダル8の踏み込みに応じて2系統のブレーキ流体圧としてのマスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダ9からの一方のマスタシリンダ圧が、前輪側アクチュエータ10Fを介して供給され、後輪側のホイールシリンダ6RL,6RRには、マスタシリンダ9からの他方のマスタシリンダ圧が後輪側アクチュエータ10Rを介して個別に供給される。
【0015】
前輪側アクチュエータ10Fは、図2に示すように、マスタシリンダ9に接続される油圧配管11Fに夫々入力ポート12iが接続された左右輪のホイールシリンダ6FL及び6FRに対してマスタシリンダ圧の給排を行う3ポート3位置構成のソレノイドバルブ12FL及び12FRを有する。
【0016】
これらソレノイドバルブ12FL及び12FRは、供給ポート12sがホイールシリンダ6FL及び6FRに接続され、排出ポート12rが絞り13FL及び13FRを介して互いに接続されてインレットバルブ14Fを介して後述するコントローラ21により駆動制御される共通の電動モータ15によって往復駆動されるピストンポンプで構成される前輪側ポンプ部16Fの吸込側に接続され、絞り13FL及び13FRの接続点とインレットバルブ14Fとの間に前輪側リザーバタンク17Fが接続されている。
【0017】
ここで、リザーバタンク17Fは、コイルスプリング17aによって付勢されたピストン45を有し、マスタシリンダ圧が低下したときに、リザーバタンク17F内に残留するブレーキ流体をコイルスプリング17aの弾性によって押し出し、非制動時にブレーキ流体が残留することがないように構成されている。
【0018】
また、ソレノイドバルブ12FL及び12FRは、ソレノイドSLに通電される励磁電流が零であるときに、入力ポート12i及び供給ポート12sを接続し、且つ排出ポート12rを遮断する増圧位置となり、ソレノイドSLに通電される励磁電流が中電流値であるときに、入力ポート12i、供給ポート12s及び排出ポート12rを全て遮断する保持位置となり、ソレノイドSLに通電される励磁電流が高電流値であるときに、入力ポート12iを遮断し、且つ供給ポート12s及び排出ポート12rを連通する減圧位置となる。
【0019】
さらに、前輪側ポンプ部16Fの吐出側は、アウトレットバルブ18F及びポンプ部16Fで発生する吐出圧を吸収してマスタシリンダ9側へ伝達されることを防止するダンパ室19 Fを介して前記油圧配管11Fに接続されている。
【0020】
また、各ソレノイドバルブ12FL及び12FRには、その供給ポート12sから入力ポート12iへのブレーキ流体の通過を許容するバイパス用チェックバルブ20FL及び20FRが接続されている。
【0021】
同様に、後輪側アクチュエータ10Rも前輪側アクチュエータと同様の構成を有し、対応部分には前輪側を表す符号Fを後輪側を表す符号Rに置換した符号を付して詳細説明はこれを省略する。
【0022】
さらに、ブレーキペダル8には、図1に示すように、その踏み込みに応動するストップランプスイッチ8aが取付けられ、このスイッチ8aから、ブレーキペダル8を開放しているときにはローレベルのスイッチ信号、ブレーキペダル8を踏み込んでいるときにはハイレベルのスイッチ信号が出力される。
【0023】
そして、車輪速センサ7FL〜7R及びストップランプスイッチ8aの各検出信号はコントローラ21に入力される。
コントローラ21は、図3に示すように、車輪速センサ7FL〜7RRの交流電圧信号VFL〜VRRを増幅し、且つ波形整形して矩形波に変換する波形整形回路22と、波形整形回路22から出力された矩形波信号、ストップランプスイッチ8aのスイッチ信号、及び後述するモータリレーモニタ回路27からのモータ電圧検出値VM を入力する入力インタフェース回路23a、アクチュエータ10F及び10Rの電動モータの異常診断の処理を行うと共に、車輪回転速度・推定車体速度を演算し車輪のスリップ状態に応じて増圧・保持・減圧の処理を行う演算処理装置23b、処理手順を記憶する記憶装置23c、及び処理結果に応じて制御信号を出力する出力インタフェース回路23dを有するマイクロコンピュータ23と、出力インタフェース回路23dから出力されたモータ駆動信号SM がベースに供給されるモータリレー駆動用トランジスタ24と、出力インタフェース回路23dから出力されたアクチュエータリレー駆動信号SA がベースに供給されるアクチュエータリレー駆動用トランジスタ25と、同じく出力インタフェース回路23dから出力されたソレノイド駆動信号SFLI 〜SROが供給されるソレノイド駆動回路26FL〜26RRと、電動モータ15の端子電圧であるモータ検出電圧VMRが入力され、モータ電圧検出値VM を入力インタフェース回路23aに供給する電圧検出回路27とを備えている。
【0024】
モータリレー駆動用トランジスタ24は、コレクタがバッテリー30と電動モータ15との間に介挿されたモータリレー28の一端がイグニッションスイッチ29を介してバッテリ30に接続されたリレーコイル28aの他端に接続され、エミッタが接地され、入力されるモータ駆動信号SM が低レベルであるときに、リレーコイル28aの通電を遮断して、モータリレー28をオフ状態とし、モータ駆動信号SM が高レベルであるときにリレーコイル28aの通電を許容して、モータリレー28をオン状態とする。
【0025】
そして、モータリレー28のリレー接点28bと電動モータ15との接続点のモータ端子電圧が電圧検出回路27に供給されている。
アクチュエータリレー駆動用トランジスタ25は、コレクタがバッテリ30とアクチュエータ10F及び10Rのソレノイドバルブ12FL〜12RRのソレノイドSLとの間に介挿したアクチュエータリレー31の一端がイグニッションスイッチ29に接続されたリレーコイル31aの他端に接続され、エミッタが接地され、入力されるアクチュエータ駆動信号SA が低レベルであるときにリレーコイル31aの通電を遮断して、アクチュエータリレー31をオフ状態とし、アクチュエータ駆動信号SA が高レベルであるときにリレーコイル31aの通電を許容してアクチュエータリレー31をオン状態に制御する。
【0026】
ソレノイド駆動回路26FL〜26RRの夫々は、出力インタフェース回路23dから出力される減圧信号DSFL〜DSRR及び保持信号HSFL〜HSRRが入力され、減圧信号DSi 及び保持信号HSi (i=FL〜RR)が共に低レベルであるときに各ソレノイドバルブ12FL〜12RRに対する通電を遮断し、保持信号HSi のみが高レベルであるときには中電流値の励磁電流をソレノイドバルブ12iのソレノイドSLに通電し、減圧信号DSi のみが高レベルであるときには高電流値の励磁電流をソレノイドバルブ12iのソレノイドSLに通電する。
【0027】
電圧検出回路27は、図4に示すように、電動モータ17及びモータリレー28間にアノードを接続したダイオード27aを有し、このダイオード27aのカソード側が抵抗R1 を介して正の電源VCCに接続されると共に、分圧抵抗R2 及びR3 を介して接地され、分圧抵抗R2 及びR3 の接続点がシュミットトリガ回路27bに入力され、このシュミットトリガ回路27bから入力電圧が設定値未満であるときに低レベル、設定値以上であるときに高レベルとなる電圧検出信号VM が出力され、これが入力インタフェース回路23aに供給される。
【0028】
したがって、モータリレー28がオン状態であって、電動モータ15が正常であるときには、電動モータ15のコイル抵抗が小さいので、電源VCCからの電流はダイオード27a及びモータコイルを通じて接地に流れ、分圧抵抗R2 及びR3 の分圧電圧は略零となるので、シュミットトリガ回路27bから出力される電圧検出信号VM は高レベルとなるが、電動モータ15のモータコイル或いはその近傍の通電路に断線を生じたときには、電源VCCからの電流は分圧抵抗R2 及びR3 を通じて接地に流れることになり、シュミットトリガ回路27bから出力される電圧検出信号VM は低レベルを維持することになる。
【0029】
また、出力インタフェース23dからは警告信号SD が警告表示回路32に供給され、通常はローレベルの警告信号SD が出力されており、例えばソレノイドFLI〜RO又は電動モータ17に断線、短絡等の異常が検出されたときには、ハイレベルの警告信号SD が出力され、警告表示回路32により例えばインストルメントパネルに設けられた警告灯を点灯し又は警告音を発して、異常が発生したことを運転者に報知する。
【0030】
次に、上記実施形態の動作をマイクロコンピュータ23の演算処理装置23bで実行する制御処理を示す図5のフローチャートを伴って説明する。
図5の制御処理は、所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ずステップS1で、各車輪速センサ7FL〜7RRの車輪速検出値VFL〜VRRを読込み、これらとタイヤ径とから車輪の周速度即ち車輪速VwFL〜VwRRを算出し、次いでステップS2に移行して、車輪速VwFL〜VwRRのうち最も高い車輪速をセレクトハイ車輪速VwH として抽出し、これに基づいて所定のフィルタ処理を行うことによって推定車体速度VC を算出する。
【0031】
次いで、ステップS3に移行して、車輪速VwFL〜VwRRを微分して車輪加減速度VwFL′〜VwRR′を算出し、次いでステップS4に移行して、推定車体速度VC と各車輪速Vwi (i=FL,FR,RL,RR)とに基づいて下記(1)式の演算を行って車輪スリップ率Si を算出してからステップS4に移行する。
【0032】
i ={(VC −Vwi )/VC }×100 …………(1)
ステップS4では、アンチロックブレーキ制御処理を実行する。このアンチロックブレーキ制御処理は、非制動状態でアンチロックブレーキ制御処理の処理状態を表す処理中フラグが“0”にリセットされているときには、各アクチュエータ10F,10Rのソレノイドバルブ12FL〜12RRを通常ブレーキに相当する急増圧モードを制御し、この状態から制動状態として何れかの車輪スリップ率Si が目標スリップ率S0 (例えば15%)より大きくなり且つ車輪加減速度Vwi ′が予め設定された加速度閾値βより小さい値となったときに該当するアクチュエータ10F又は10Rを減圧モードに制御し、且つ処理中フラグFSを“1”にセットすると共に、高レベルのモータ制御信号SM をモータリレー用トランジスタ24に出力し、その後車輪加減速度Vwi ′及び車輪スリップ率Si に基づいて図6の制御マップを参照して、アクチュエータ10F,10Rを緩増圧モード、保持モード及び減圧モードの何れかに制御し、例えばブレーキペダル8が解放された等の所定の終了条件を満足したときに各アクチュエータ10F,10Rを急増圧モードに制御すると共に処理中フラグFSを“0”にリセットする。
【0033】
なお、アンチロックブレーキ制御処理では、各アクチュエータ10F,10Rを減圧モードに制御したときには、このことを表す減圧モードフラグFDi を“1”にセットし、他のモードに移行したときに“0”にリセットする。
【0034】
ここで、アクチュエータ10F,10Rのソレノイドバルブ12iの制御は、緩増圧モードでは、減圧信号DSi を論理値“0”に維持したまま保持信号HSi を所定時間間隔で論理値“0”及び論理値“1”を交互に繰り返すことにより、ソレノイド駆動回路26iで中電流値の励磁電流をIi を断続させて、ソレノイドバルブ12iを増圧位置及び保持位置に交互に切換えることにより、ホイールシリンダ6iのブレーキ流体圧をステップ状に増加させる。
【0035】
また、保持モードでは、減圧信号DSi を論理値“0”に維持したまま保持信号HSi を論理値“1”に維持して、ソレノイド駆動回路26iで中電流値の励磁電流Ii を出力し、これによってソレノイドバルブ12iを保持位置に維持し、ホイールシリンダ6iのブレーキ流体圧を保持する。
【0036】
さらに、減圧モードでは、保持信号HSi を論理値“0”に維持したまま減圧信号DSi を論理値“1”に維持して、ソレノイド駆動回路26iで高電流値の励磁電流Ii を出力し、これによってソレノイドバルブ12iを減圧位置に維持し、ホイールシリンダ6iのブレーキ流体をリザーバタンク17F,17Rに流出させて、ブレーキ流体圧を減圧する。
【0037】
次いで、ステップS6に移行して、アンチロックブレーキ制御処理中を表す処理中フラグFSが“1”にセットされているか否かを判定し、処理中フラグFSが“0”にリセットされているときにはそのままタイマ割込処理を終了し、“1”にセットされているときには、ステップS7に移行する。
【0038】
このステップS7では、電動モータが正常であるか否かを判定する。この判定は、電圧検出回路27の電圧検出信号VM を読込み、これが高レベルであるか否かを判定することにより行い、電圧検出信号VM が高レベルであるときには、前述したように電動モータ15に断線を生じておらず正常状態であると判断してそのままタイマ割込処理を終了するが、電圧検出信号VM が低レベルであるときには、電動モータ15に断線が生じたものと判断してステップS8に移行する。
【0039】
このステップS8では、減圧モードフラグFDi がセットされているか否かを判定し、これがセットされていないときにはそのままタイマ割込処理を終了するが、セットされているときには、ステップS9に移行して減圧タイマのカウント値ti を“1”だけインクリメントした値を新たな減圧タイマ値ti として更新する。
【0040】
次いで、ステップS10に移行して、前輪側の減圧タイマ値tFL及びtFRを加算して前輪側減圧タイマ値tF を算出すると共に、後輪側の減圧タイマ値tRL及びtRRを加算して後輪側減圧タイマ値tR を算出してからステップS11に移行する。
【0041】
このステップS11では、前輪側減圧タイマ値tF がホイールシリンダ6FL及び6FRから排出されるブレーキ流体でリザーバタンク17Fが満杯となる設定時間tAFに達したか否かを判定し、tF <tAFであるときには、リザーバタンク17Fにブレーキ流体をまだ蓄積可能と判断して後述するステップS15に移行し、tF =tAFとなったときには、ステップS12に移行する。
【0042】
このステップS12では、減圧信号DSFL〜DSRR及び保持信号HSFL〜HSRRを論理値“0”として、ソレノイドバルブ12FL,12FRを増圧位置に切換え、次いでステップS13に移行して、モータ制御信号SM 及びアクチュエータ制御信号SA を共に低レベルとして、トランジスタ24,25をオフ状態とすることにより、モータリレー28及びアクチュエータリレー31をオフ状態として、電動モータ15及びソレノイドバルブ12FL〜12RRへの電力の供給を遮断し、次いでステップS14に移行して、論理値“1”の警告信号SD を警告表示回路32に出力してから処理を終了する。
【0043】
ステップS15では、後輪側減圧タイマ値tR がホイールシリンダ6RL及び6RRから排出されるブレーキ流体でリザーバタンク17Rが満杯となる設定時間tARに達したか否かを判定し、tR <tARであるときには、リザーバタンク17Rにブレーキ流体をまだ蓄積可能と判断してそのままタイマ割込を終了し、tR =tARとなったときには、前記ステップS12に移行する。
【0044】
この図5の制御処理において、ステップS1〜S5,S6,S8〜S15の処理が制御手段に対応し、ステップS7の処理及び電圧検出回路27でモータ異常診断手段に対応し、ステップS11〜S15の処理が制御中止手段に対応している。
【0045】
したがって、通常、後輪駆動車では、前輪側が非駆動輪であることにより、駆動輪となる後輪側より早くアンチロックブレーキ制御が開始されることから、前輪側の動作について、説明を簡易化するために左右輪が同期して加減速するものとして図7を参照して説明する。
【0046】
車両がブレーキペダル8を解放して非制動状態で定速走行しているものとすると、この状態では、図5の処理におけるステップS5のアンチロックブレーキ制御処理では、処理中フラグFSが“0”にリセットされた状態を維持すると共に、減圧信号DSFL〜DSRR及び保持信号HSFL〜HSRRを共に論理値“0”として、アクチュエータ10F,10Rのソレノイドバルブ12FL〜12RRを共に増圧位置に維持している。
【0047】
このように、ソレノイドバルブ12FL〜12RRが増圧位置にあって、マスターシリンダ9とホイールシリンダ6FL〜6RRとが連通状態となっていても、ブレーキペダル8が解放されているので、マスタシリンダ9のマスタシリンダ圧も略零であり、ホイールシリンダ6FL〜6RRのブレーキ流体圧も略零となって、非制動状態を継続している。
【0048】
この走行状態から、ブレーキペダル8を踏込んで、図7における時点t1 で制動状態に移行すると、ブレーキペダル8の踏込みによってマスタシリンダ9の出力圧が急激に増加し、ソレノイドバルブ12FL〜12RRが増圧位置を維持していることから、前輪側のホイールシリンダ6FL,6FRのブレーキ流体圧が図7(c)に示すように急増する。
【0049】
このように、ホイールシリンダ6FL,6FRのブレーキ流体圧の増加によって、前輪側の車輪速VwFL,VwFRが減少を開始し、時点t2 で図6のb点に示すように車輪加減速度VwFL′,VwFR′が減速度閾値α以下となると、保持モードが設定されて、論理値“1”の保持信号HSFL,HSFRがソレノイド駆動回路26FL,26FRに出力されることにより、これらソレノイド駆動回路26FL,26FRから図7(b)に示すように中電流値の励磁電流IFL, FRがソレノイドバルブ12FL,12FRのソレノイドSLに通電され、ソレノイドバルブ12FL,12FRが保持位置に切換えられ、これによってホイールシリンダ6FL,6FRのブレーキ流体圧が図7(c)に示すように高圧側で一定値に保持される。
【0050】
その後、時点t3 で図6のc点で示すように車輪スリップ率SFL,SFRが目標スリップ率S0 を越える状態となると、減圧モードが設定され、保持信号HSFL, HSFRに代えて減圧信号DSFL,DSFRを論理値“1”とし、ソレノイド駆動回路26FL,26FRから図7(b)に示すように高電流値の励磁電流IFL,IFRがソレノイドバルブ12FL,12FRのソレノイドSLに通電されて、これらが減圧位置に切換えられる。
【0051】
このため、ホイールシリンダ6FL,6FRがソレノイドバルブ12FL,12FRを介してリザーバタンク17Fに連通されることにより、ホイールシリンダ6FL,6FR内のブレーキ流体がリレーバタンク17Fに流出する。このとき、リザーバタンク17Fはスプリングによる予圧が付与されていることにより、ブレーキ流体は緩やかに排出される。
【0052】
このように最初に減圧モードが設定されると、処理中フラグFSが“1”にセットされると共に、減圧モードフラグFDが“1”にセットされ、これと同時に電動モータ15を回転駆動する高レベルのモータ制御信号SM がモータリレー用トランジスタ24に出力され、これがオン状態となって、モータリレー28がオン状態となり、電動モータ15にバッテリ電圧が印加されて回転駆動状態となる。
【0053】
このため、図5の制御処理において、ステップS6からステップS7に移行して、電動モータ15が正常であるか否かを診断する。
このとき、電動モータ15の端子電圧が低レベルであるときには、電圧検出回路27の検出電圧VM が図7(e)で破線図示のように高レベルとなることにより、電動モータ15に断線を生じておらず正常状態であると判断して、そのままタイマ割込処理を終了する。
【0054】
ところが、電動モータ15の端子電圧が高レベルであるときには、電圧検出回路27の検出電圧VM が図7(e)で実線図示のように低レベルを維持することになり、電動モータ15に断線を生じたものと判断してステップS8に移行する。
【0055】
このとき、前輪左右のホイールシリンダ6FL,6FRが共に減圧モードとなり、減圧モードフラグFDFL,FSFRが共に“1”にセットされているので、ステップS9に移行して、減圧タイマ値tFL,tFRをインクリメントし、次いで、ステップS10で左右の減圧タイマ値tFL,tFRを加算して前輪側減圧タイマ値tF を算出するので、この前輪側減圧タイマ値tF が図7(f)に示すように増加する。
【0056】
そして、電動モータ15が駆動されていないので、リザーバタンク17F内のブレーキ流体は図7(d)に示すように排出されることなく増加する。
この減圧モードによってホイールシリンダ6FL,6FRのブレーキ流体圧が減少することにより、車輪速VwFL,VwFRが減少傾向が解消されて時点t4 で図6のd点で示すように車輪加減速度VwFL,VwFRが加速度閾値βを越える状態となると、図5のステップS5のアンチロックブレーキ制御処理で保持モードが設定されてソレノイドバルブ12FL,12FRが保持位置に切換えられる。
【0057】
この保持モードが設定されると、減圧モードフラグFDFL,FDFRが“0”にリセットされることにより、ステップS8からステップS9に移行することなくそのままタイマ割込処理を終了するので、前輪側減圧タイマ値tF はインクリメトされることなく前回値を保持し、リザーバタンク17F内のブレーキ流体量もホイールシリンダ6FL,6FRからの流入が遮断されるので前回値を保持することになる。
【0058】
この保持モードでもホイールシリンダ6FL,6FRのブレーキシリンダ圧は図7(c)低い状態に維持されるので、これによって車輪速VwFL,VwFRが回復し、推定車体速度VC に近づくことにより、時点t5 で図6のe点で示すように車輪加減速度VwFL′,VwFR′が加速度閾値β未満となると、緩増圧モードが設定され、これに応じてソレノイドバルブ12FL,12FRが保持位置及び増圧位置を交互に繰り返すことにより、ホイールシリンダ6FL,6FRのブレーキ流体圧が図7(c)に示すようにステップ状に増加し、これに応じて車輪速VwFL,VwFRが図7(a)に示すように減少する。
【0059】
その後、時点t6 で車輪加減速度VwFL′,VwFR′が減速度閾値α以下となることにより、保持モードが設定され、次いで時点t7 で車輪スリップ率SFL,SFRが目標スリップ率S0 を越えると、減圧モードが設定されることにより、前述した時点t3 と同様に、前輪側減圧タイマ値tF が増加し、リザーバタンク17F内のブレーキ流体量も増加するが、前輪側減圧タイマ値tF が設定値tAFに達していないので、そのままタイマ割込処理を終了する。
【0060】
その後、時点t8 で保持モードが設定され、時点t9 で緩増圧モードが設定され、時点t10で保持モードが設定され、時点t11で減圧モードが設定される。
この時点t11で減圧モードが設定されると、時点t3 及びt7 と同様に前輪側減圧タイマ値tF が図7(f)に示すように増加し、時点t12で前輪側減圧タイマ値tF が設定値tAFに達すると、図5の処理において、ステップS11からステップS12に移行することにより、各減圧信号DSFL〜DSRR及び保持信号HSFL〜HSRRを論理値“0”として、ソレノイド駆動回路26から出力される励磁電流IFL〜IRRの電流値を図7(b)に示すように“0”とし、次いでステップS13に移行して、アクチュエータリレー制御信号SA を低レベルとして、アクチュエータリレー用トランジスタ25をオフ状態とする。
【0061】
このため、アクチュエータリレー31が図7(g)に示すようにオフ状態となって、各ソレノイドバルブ12FL〜12RRに対する通電が遮断され、アンチロックブレーキ制御処理を終了すると共に、警告表示回路32で所定の警告表示が行われるか又は警告音が発せられて運転者に異常状態の発生が報知される。
【0062】
後輪側についても上記と同様の処理が実行されるが、後輪1RL,1RRは駆動輪であるため前輪1FL,1FRに比較して、車輪速VwRL, VwRRの減少が緩やかとなることに起因して、後輪側減圧タイマ値tR が設定値tARに達するタイミングは前輪側より遅くなり、その前にアクチュエータリレー31がオフ状態となるので、後輪側のアンチロックブレーキ制御も終了される。なお、何らかの原因で後輪側減圧タイマ値tR が前輪側よりも早く設定値tARに達したときには、ステップS15からステップS12に移行するので、上記と同様にアクチュエータリレー31をオフ状態とするとともに警告表示回路32で警告表示又は警告音を発してから処理を終了する。
【0063】
このように、上記実施形態によれば、制動状態となって、アンチロックブレーキ制御が開始されたときに、電動モータ15の回転駆動開始時に電動モータ15の異常診断を行って、断線異常を検出したときに、前輪減圧タイマ値tF が設定値tAFに達してリザーバタンク17Fが満杯となるまでの間は、アンチロックブレーキ制御を有効に継続して操縦安定性を確保することができる。
【0064】
因みに、従来例では、制動状態となった後に減圧モードとなってアンチロックブレーキ制御が開始されたときに、アクチュエータリレー31をオフ状態とするか、図8に示すように、アンチロックブレーキ制御が開始された時点t1 でタイマtのインクリメントを開始し、これが所定値tS (例えば0.1sec )に達した時点t2 でアクチュエータリレー31をオフ状態として、アンチロックブレーキ制御を中止することになり、有効なアンチロックブレーキ制御を発揮する時間が極短時間となり、操縦安定性を確保可能な時間が極端に短くなるという問題点がある。
【0065】
なお、上記実施形態においては、後輪駆動車に本発明を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、前輪駆動車に本発明を適用することもできる。
【0066】
また、図5におけるステップS5のアンチロックブレーキ制御処理は上記実施形態に限らず、他の任意の制御態様を適用することができ、さらに、推定車体速度VC の算出についても、セレクトハイ車輪速をそのまま推定車体速度VC としたり、前後加速度センサの加速度検出値を積分するようにしてもよい。
【0067】
さらに、上記実施形態においては、後輪側アクチュエータ10Rに左右輪で個別にソレノイドバルブ12RL,12RRを設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、左右輪に共通のソレノイドバルブを設けるようにしてもよく、さらにはソレノイドバルブ12FL〜12RRとして3ポート3位置の電磁方向切換弁を適用した場合について説明したが、これに代えて図9に示すようにマスタシリンダ9及びホイールシリンダ6FL〜6RR間に2ポート2位置の流入側電磁開閉弁41を介挿し、これと並列に流出側電磁開閉弁42、ポンプ43及びチェック弁44の直列回路を接続し、この直列回路の流出側電磁開閉弁42及びポンプ43間にリザーバタンク45を接続するように構成してもよい。
【0068】
さらにまた、上記実施形態では、電動モータの断線を検出する場合について説明したが、短絡を検出するようにしてもよく、さらには、イグニッションスイッチをオン状態としたときに、自己診断処理によって電動モータの異常診断を行い、その診断結果が電動モータの異常であるときには、最初にアンチロックブレーキ制御を開始したときに上記と同様の処理を行うようにしてもよい。
【0069】
なおさらに、上記実施形態では、前輪側及び後輪側リザーバタンク17F及び17Rで左右輪のホイールシリンダ6FL,6FR及び6RL,6RRから排出されるブレーキ流体を一時蓄積する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、前左のホイールシリンダ6FL及び後左のホイールシリンダ6RLと前右のホイールシリンダ6FR及び後右のホイールシリンダ6RRとを個別のリザーバタンクに接続したり、あるいは対角線上のホイールシリンダ同志を個別のリザーバタンクに接続するようにしてもよく、この場合には、各リザーバタンクに接続されているホイールシリンダ毎に減圧モード時間を積算するようにしてもよい。
【0070】
また、上記実施形態においては、リザーバタンク17F,17Rの蓄積量を減圧モードの継続時間を積算することにより検出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、リザーバタンク17F,17Rの入側に夫々流量計を設け、これらの検出流量を積算するようにしてもよく、さらにはリザーバタンク17F,17Rの昇降板部17bの移動量を検出することにより、直接リザーバタンク17F,17Rの蓄積量を検出するようにしてもよく、この場合には、リザーバタンク17F,17Rの蓄積量を正確に検出することができるので、リザーバタンク17F,17Rが満杯となるまでアンチロックブレーキ制御を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアンチロックブレーキ制御装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1の実施形態に適用し得るアクチュエータの一例を示す構成図である。
【図3】図1の実施形態に適用し得る制御回路のブロック図である。
【図4】図3の制御回路に適用し得る電圧検出回路の一例を示すブロック図である。
【図5】マイクロコンピュータの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】アンチロックブレーキ制御の制御マップを示す説明図である。
【図7】本実施形態の動作の説明に供するタイムチャートである。
【図8】従来例の動作の説明に供するタイムチャートである。
【図9】アクチュエータの変形例を示す構成図である。
【符号の説明】
1FL,1FR 前輪
1RL,1RR 後輪
6FL〜6RR ホイールシリンダ
7FL〜6RR 車輪速センサ
10F 前輪側アクチュエータ
10R 後輪側アクチュエータ
12FL〜12RR ソレノイドバルブ
15 電動モータ
16 流体圧ポンプ
17F 前輪側リザーバタンク
17R 後輪側リザーバタンク
21 コントローラ
26FL〜26RR ソレノイド駆動回路
27 電圧検出回路
28 モータリレー
31 アクチュエータリレー
41 流入側電磁開閉弁
42 流出側電磁開閉弁
45 リザーバタンク

Claims (3)

  1. 制御対象車輪に配設された制動用シリンダと、該制動用シリンダに対するブレーキ流体の給排を制御するバルブを有し、且つ少なくともブレーキ流体排出系にリザーバタンク及び当該リザーバタンクに蓄積されたブレーキ流体を排出する電動モータで駆動されるポンプを有するアクチュエータと、車輪の回転速度に応じた出力信号を出力する車輪速検出手段と、該車輪速検出手段の出力信号に基づいて前記アクチュエータの作動を制御する制御手段とを備えるアンチロックブレーキ制御装置において、前記電動モータの異常を診断するモータ異常診断手段と、該モータ異常診断手段で電動モータが異常と診断されたときに、前記リザーバタンクの蓄積量検出を開始するリザーバ蓄積量検出手段と、該リザーバ蓄積量検出手段の蓄積量が所定値に達するまで前記制御手段による前記バルブの制御を継続させ、所定値に達したとき前記制御手段による前記バルブの制御を中止させる制御中止手段とを備えたことを特徴とするアンチロックブレーキ制御装置。
  2. 前記リザーバ蓄積量検出手段は、前記モータ異常診断手段で電動モータが異常と診断されたときに、減圧制御時間を積算してリザーバタンクの蓄積量を算出するように構成されていること特徴とする請求項1記載のアンチロックブレーキ制御装置。
  3. 前記リザーバ蓄積量検出手段は、前記モータ異常診断手段で電動モータが異常と診断されたときに、リザーバタンクの蓄積量を直接検出するように構成されていることを特徴とする請求項1記載のアンチロックブレーキ制御装置。
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