JP3824375B2 - ディーゼルエンジンの制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はディーゼルエンジンの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車室内のウォームアップスイッチを運転者がONにしたとき排気絞りを行う(たとえば排気管の内部に設けた絞り弁を閉じる)ことにより、排気圧力を高めてエンジンでの仕事量を増やし、その分多く熱として放出させることによりエンジン冷却水温を上昇させて暖房性能を向上させるとともに、車両を発進させたときは排気絞りを解除するようにしたものが提案されている(特開平5−248301号公報参照)。
【0003】
この場合、排気絞りによりエンジン回転が不安定とならないように、排気絞りを行う条件ではアイドル目標回転数NSETを一定値アップさせるとともに、燃料増量を行っている(図14参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ある車両に上記の排気絞り装置を設け、排気絞りによる暖房効果を実験により確かめたところ、実験に用いた車両では、Nレンジでだけ排気絞りを行えば、十分な暖房効果が得られることがわかった。そこで、負荷、水温、回転数などから定まる排気絞りを行う条件(あるいは排気絞りを禁止する条件)に、Nレンジであることを加えて(排気絞りを禁止する条件としてはDレンジであることを加える)実験してみたところ、図15に示したように、走行と停止の繰り返しに応じて排気絞り弁の開閉が頻繁となり、その開閉のたびに負荷変動によるトルクショックが感じられることが判明した。
【0005】
この場合、Nレンジであることを知るための信号として、ニュートラルスイッチからの信号以外に、このニュートラルスイッチ信号に遅れをもたせた信号がある。というのも、自動変速機を備えるエンジンでは、NレンジにあるときのほうがDレンジにあるときよりアイドル目標回転数が高くなるようにギヤ位置補正を行っているが、このギヤ位置補正をニュートラルスイッチ信号に基づいて行ったのでは、ニュートラルスイッチのONからOFFへの切換時あるいはこの逆への切換時に負荷変動によるトルクショックが生じるので、このトルクショックを軽減するため、図16に示したようにニュートラルスイッチの遅れ信号(図16第2段目参照)に基づいてギヤ位置補正を行うことがあり(特開平5−99010号公報参照)、実験に用いた車両は、このアイドル回転数制御におけるギヤ位置補正を行うものであったのである。このため、排気絞りを行う条件の一つであるNレンジの検出にこのニュートラルスイッチの遅れ信号を用いて改めて実験してみたところ、車種によっては排気絞り弁の開閉によるトルクショックがそれほど軽減されないことが判明した(図15参照)。
【0006】
そこで本発明は、このギヤ位置補正に用いるニュートラルスイッチの遅れ信号を改めて第1の遅れ信号とし、この第1の遅れ信号とは別のニュートラルスイッチの遅れ信号を第2の遅れ信号として形成し、この第2の遅れ信号に基づいて排気絞り弁を開閉することにより、排気絞りの開閉によるトルクショックを低減することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、図17に示すように、自動変速機がNレンジにあるのかそれともDレンジにあるのかを検出する手段61と、この検出信号のNレンジからDレンジへの切換のタイミングよりも所定期間遅いタイミングでNレンジ認識値(ON、OFFといった電圧値あるいは“1”、“0”といったフラグ値)からDレンジ認識値に切換わり、かつこの検出信号のDレンジからNレンジへの切換のタイミングよりも所定期間遅いタイミングでDレンジ認識値からNレンジ認識値に切換わる第1の遅れ信号を形成する手段62と、この第1の遅れ信号に基づいてアイドル回転数制御におけるギヤ位置補正を行う手段63とを備えるディーゼルエンジンの制御装置において、排気絞り装置64と、前記検出信号のNレンジからDレンジへの切換のタイミングでNレンジ認識値からDレンジ認識値に切換わり、かつ前記第1の遅れ信号のDレンジ認識値からNレンジ認識値への切換のタイミングと同じかまたはそれよりも遅いタイミングでDレンジ認識値からNレンジ認識値に切換わる第2の遅れ信号を形成する手段65と、暖房を指示する手段(たとえばウォームアップスイッチ)66と、この暖房が指示された場合に前記第2の遅れ信号がNレンジ認識値であるとき前記排気絞り装置64を作動させ、また前記第2の遅れ信号がDレンジ認識値であるとき前記排気絞り装置64の作動を解除する手段67とを設けた。
【0008】
第2の発明は、図18に示すように、自動変速機がNレンジにあるのかそれともDレンジにあるのかを検出する手段61と、この検出信号のNレンジからDレンジへの切換のタイミングよりも所定期間遅いタイミングでNレンジ認識値(ON、OFFといった電圧値あるいは“1”、“0”といったフラグ値)からDレンジ認識値に切換わり、かつこの検出信号のDレンジからNレンジへの切換のタイミングよりも所定期間遅いタイミングでDレンジ認識値からNレンジ認識値に切換わる第1の遅れ信号を形成する手段62と、この第1の遅れ信号に基づいてアイドル回転数制御におけるギヤ位置補正を行う手段63とを備えるディーゼルエンジンの制御装置において、排気絞り装置64と、前記第1の遅れ信号のNレンジ認識値からDレンジ認識値への切換のタイミングと同じかまたはそれよりも遅いタイミングでNレンジ認識値からDレンジ認識値に切換わり、かつ前記検出信号のDレンジからNレンジへの切換のタイミングでDレンジ認識値からNレンジ認識値に切換わる第2の遅れ信号を形成する手段71と、暖房を指示する手段(たとえばウォームアップスイッチ)66と、この暖房が指示された場合に前記第2の遅れ信号がNレンジ認識値であるとき前記排気絞り装置64を作動させ、また前記第2の遅れ信号がDレンジ認識値であるとき前記排気絞り装置64の作動を解除する手段67とを設けた。
【0009】
第3の発明では、第1または第2の発明において前記排気絞り装置を作動させるとき所定の燃料増量を行う。
【0010】
第4の発明では、第1または第2の発明において前記排気絞り装置を作動させるときアイドル目標回転数を一定だけ上昇させる。
【0011】
第5の発明では、第1または第2の発明において前記排気絞り装置を作動させるとき所定の燃料増量を行うとともにアイドル目標回転数を一定だけ上昇させる。
【0012】
【発明の効果】
Dレンジはエンジンと自動変速機のもつ仕事量がもともと大きいので、Dレンジでの排気絞り装置の作動、作動解除による負荷変動があっても、この負荷変動分が埋もれてしまい、トルクショックとして感じられにくいのであるが、排気絞り装置の作動、作動解除による負荷変動が小さなものであっても、これがトランスミッションを経由することによって増幅され、車体に大きく伝わる車両がある。
【0013】
この場合に、アイドル回転数制御におけるギヤ位置補正に用いられる第1の遅れ信号に基づいて排気絞り装置を作動、作動解除したのでは、たとえば自動変速機のNレンジからDレンジへの切換時にDレンジになってからこの第1の遅れ信号がDレンジ認識値へと切換えられるので、排気絞り装置の作動解除による負荷変動が小さなものであっても、これがトランスミッションを経由することによって増幅され車体に大きく伝わってしまう。第1の発明では、このような車両に対してエンジンと自動変速機が切り離されるNレンジで排気絞り装置が作動、作動解除されることから、排気絞り装置の作動、作動解除によりエンジンに生じた負荷変動が直接に車体に伝わることがない。
【0014】
ただし、エンジン自体は排気絞り装置の作動、作動解除により生じる負荷変動で揺れるので、この揺れが車体に伝わって車体が揺れ、エンジン自体の揺れ量と車体の揺れ量を比較したとき、車体の揺れ量のほうが大きくなることがあるが、このときには、第1の発明を適用していない。したがって、排気絞り装置の作動、作動解除により生じる負荷変動でエンジン自体が揺れ、この揺れが車体に伝わって大きくなることもない。
【0015】
このように第1の発明では、Dレンジでの排気絞り装置の作動、作動解除排による負荷変動が小さなものであっても、これがトランスミッションを経由することによって増幅され車体に大きく伝わる車両に対して、エンジンと自動変速機の切り離されるNレンジで排気絞り装置の作動、作動解除を行うようにしたので、このような車両に排気絞りを導入する場合のトルクショックを和らげることができる。
【0016】
次に、Nレンジでは、排気絞り装置の作動、作動解除によりエンジンに生じた負荷変動が直接に車体に伝わることはない。ただし、エンジン自体は排気絞り装置の作動、作動解除により生じる負荷変動で揺れるので、この揺れが車体に伝わって車体が揺れ、この場合のエンジン自体の揺れ量と車体の揺れ量を比較したとき、車体の揺れ量のほうが大きくなる車両がある。
【0017】
この場合に、アイドル回転数制御におけるギヤ位置補正に用いられる第1の遅れ信号に基づいて排気絞り装置を作動、作動解除したのでは、たとえば自動変速機のDレンジからNレンジへの切換時にNレンジになってからこの第1の遅れ信号がNレンジ認識値へと切換えられるので、車体の揺れ量の方が大きくなってしまう。第2発明では、このような車両に対してエンジンと自動変速機が接続されるDレンジで排気絞り装置が作動、作動解除される。Dレンジではエンジンと自動変速機の全体の仕事量がもともと大きいので、Dレンジでの排気絞り装置の作動、作動解除による負荷変動があっても、この負荷変動分が埋もれてしまい、トルクショックとして感じられにくいのである。
【0018】
ただし、排気絞り装置の作動、作動解除による負荷変動が小さなものであっても、これがトランスミッションを経由することによって増幅され車体に大きく伝わることがあるが、このときには、第2の発明を適用していない。したがって、排気絞り装置の作動、作動解除による小さな負荷変動が増幅されて車体に伝わることもない。
【0019】
このように第2の発明では、排気絞り装置の作動、作動解除により生じる負荷変動でエンジン本体が揺れ、この揺れが車体に伝わって車体が揺れ、この場合のエンジン自体の揺れ量と車体の揺れ量を比較したとき車体の揺れ量のほうが大きくなる車両に対して、エンジンと自動変速機の全体の仕事量がもともと大きいDレンジで排気絞り装置の作動、作動解除を行うようにしたので、このような車両に排気絞りを導入する場合のトルクショックを和らげることができる。
【0020】
また、第1の発明において第1の遅れ信号のDレンジ認識値からNレンジ認識値への切換のタイミングと同じタイミングでDレンジ認識値からNレンジ認識値に切換わる第2の遅れ信号を、第2の発明において第1の遅れ信号のNレンジ認識値からDレンジ認識値への切換のタイミングと同じタイミングでNレンジ認識値からDレンジ認識値に切換わる第2の遅れ信号をそれぞれ形成するときは、排気絞り装置を作動、作動解除するタイミングとギヤ位置補正の切換タイミングとが一致することになり、小さなトルクショックの回数を減らすことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1において、10はディーゼルエンジンのエンジン本体、11は吸気通路、12は排気通路で、ターボチャージャ13により吸気が過給される。14は排気還流通路で、排気還流制御弁15により、吸気通路11に還流される排気還流量が制御される。なお、排気還流時には吸気通路11に介装したスロットルバルブ16を絞る。
【0022】
エンジン本体1の燃焼室17に燃料を噴射する燃料噴射弁18が設けられ、この燃料噴射弁18には電子制御の燃料噴射ポンプ19からの燃料が供給される。VE型燃料噴射ポンプ19はエンジン回転数に同期してプランジャ20が作動し、フィードポンプ21により予圧した燃料を高圧化し、各気筒の燃料噴射弁18に圧縮上死点近傍で燃料圧送する。燃料の噴射量は、コントロールスリーブ22の位置により変化し、制御装置25からの信号で作動するロータリソレノイド(エレクトロリックガバナ)23によりコントロールスリーブ22の位置を制御する。
【0023】
制御装置25にはアクセル開度を検出するアクセルセンサ26からの信号と、エンジン回転数信号が入り、アクセル開度と回転数に応じて基本的な燃料噴射量を演算し、これに基づいてロータリソレノイド23を制御する。
【0024】
制御装置25には、この基本噴射量を補正したり、前記した排気還流量を制御するため、運転状態を代表する信号として、アクセル開度や回転数のほか、エンジンの上死点位置を検出するセンサ(TDCセンサ)27からの上死点位置信号、さらには車両速度信号、トランスミッションスイッチからの信号が入力する。さらにまた、燃料噴射ポンプ19の実際の燃料噴射量を計測するためコントロールスリーブ位置を検出するセンサ29、燃料温度を検出するセンサ30からの信号、また、エンジン本体1の燃料噴射弁18のニードルリフト量を検出するセンサ31、エンジン冷却水温を検出するセンサ32からの信号も入力する。また、吸気通路11にはエンジン吸入空気の質量流量を検出するエアフローメータ33が取り付けられ、この吸入空気信号も入力する。
【0025】
制御装置25は燃料噴射時期を運転状態に応じて制御するため、タイミングコントロールバルブ35の開度を制御し、タイマピストン36にかかる圧力を変化させる。また、燃料漏れを防止するため燃料カットバルブ37をエンジン停止時に閉じる。
【0026】
さらに、排気還流制御弁15の駆動負圧をコントロールする負圧制御弁34をデューティ制御し、同時に図2に示すようにスロットルバルブ16の駆動用アクチュエータ56への駆動負圧をコントロールする第1ソレノイドバルブ38を制御し、これにより、NOxを低減するために運転状態に応じて最適な排気還流を行う。その一方で、エンジン停止時にはスロットルバルブ16のもう一つの駆動用アクチュエータ57への駆動負圧をコントロールする第2ソレノイドバルブ39を制御することによってスロットルバルブ16を全閉状態とする。
【0027】
ここで、各ソレノイドバルブ38、39がONとOFFだけの2位置弁であるときスロットルバルブ16が3位置をとることができる。各ソレノイドバルブ38、39へのON、OFF信号を図3のように定めたとき、スロットルバルブ16が全開、半開、全閉の3位置をとるように、各ダイアフラムアクチュエータ56、57のダイアフラム径やリターンスプリング(弁体を全開方向に付勢する)の強さを設定する。図3において、排気還流制御には▲1▼と▲2▼の場合を用い、エンジン停止時には▲3▼の場合を用いるわけである。
【0028】
一方、エンジンには自動変速機を備える(図示しない)。自動変速機を備えるエンジンでは、NレンジにあるときのほうがDレンジにあるときよりアイドル目標回転数が高くなるように、ニュートラルスイッチ信号に遅れをもたせた信号(以下、ニュートラルスイッチディレイ付き信号という)に基づいてギヤ位置補正を行っている。これは、ギヤ位置補正をニュートラルスイッチ信号に基づいて行ったのでは、ニュートラルスイッチのONからOFFへの切換時あるいはこの逆への切換時に負荷変動によるトルクショックが生じるので、このトルクショックを軽減するためである。なお、ギヤ位置補正はアイドル回転数制御に含まれ、制御装置25が実際のアイドル回転数がアイドル目標回転数と一致するように、いわゆるアイドル回転数制御を行っている。
【0029】
さて、車室内のウォームアップスイッチを運転者がONにしたとき排気絞りを行う(たとえば排気管の内部に設けた絞り弁を閉じる)ことにより、エンジン冷却水温を上昇させて暖房性能を向上させるとともに、車両を発進させたときは排気絞りを解除するようにしたものが公知である。
【0030】
ある車両にこの排気絞り装置を設け、排気絞りによる暖房効果を実験により確かめたところ、実験に用いた車両では、Nレンジでだけ排気絞りを行えば、十分な暖房効果が得られることがわかった。そこで、負荷、水温、回転数などから定まる排気絞りを行う条件(あるいは排気絞りを禁止する条件)に、Nレンジであることを加えて(排気絞りを禁止する条件としてはDレンジであることを加える)実験してみたところ、走行と停止の繰り返しに応じて排気絞り弁の開閉が頻繁となり、その開閉のたびに負荷変動によるトルクショックが感じられることが判明した(図15参照)。
【0031】
この場合、Nレンジであることを知るための信号として、ニュートラルスイッチ信号以外に、上記のギヤ位置補正に用いられるニュートラルスイッチディレイ付き信号があるので、排気絞りを行う条件の一つであるNレンジの検出にこのニュートラルスイッチディレイ付き信号を用いて改めて実験してみたところ、排気絞り弁の開閉によるトルクショックはそれほど軽減されなかった。
【0032】
これに対処するため本発明の実施形態では、上記のギヤ位置補正に用いるニュートラルスイッチディレイ付き信号を改めて第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号とし、この第1の信号とは別に、第2のニュートラルスイッチディレイ付き信号を形成し、この第2の信号に基づいて排気絞り弁を開閉する。
【0033】
このため、図1において図示しないが、排気通路12より排気還流通路14が分岐する点より下流でターボチャージャ13のタービン上流の排気通路に常開のバタフライ型排気絞り弁(図示しない)が設けられ、この排気絞り弁は、制御装置25からの駆動信号により、絞り弁駆動装置(排気絞り弁を駆動するダイアフラムアクチュエータとこのダイアフラムアクチュエータに大気圧と吸入負圧とを選択的に切換導入する三方電磁弁とからなる)を介して駆動されるようになっている。
【0034】
ここで、第2のニュートラルスイッチディレイ付き信号どのようにして作ったかを次に説明する。
【0035】
ニュートラルスイッチ信号と、第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号#NEUTDを図4において第1段目と第2段目に示すと、まず第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号の遅れ期間(図示のA−BとC−Dの期間)の途中で排気絞り弁を開閉してみるたとき、排気絞り弁の開閉に伴うトルクショックが生じる場合のあることが分かった。これは、第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号の遅れ期間内ではトルク変化が安定しないためであると思われる。たとえば、NレンジからDレンジへの切換時にトルクコンバータがエンジンに接続されると、エンジントルクが過渡的に落ち込むが、この落ち込みが大きいときに排気絞り弁が開かれたのでは、排気弁を開いたことによる負荷変動が大きくなり、これがトルクショックとして感じられることになるのである。したがって、第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号の遅れ期間は、排気絞り弁の開閉タイミングの候補からはずす。
【0036】
残るは2つの期間(▲1▼A点より前またはD点以降の期間と▲2▼B−C間)である。このうち、▲1▼の期間では排気絞り弁の開閉によりエンジンに生じた負荷変動がもともと車体に伝わりにくく(Nレンジであるため)、▲2▼の期間ではもともと負荷変動に強い(エンジンと自動変速機がつながれているため)。
【0037】
そこで、排気絞り弁による負荷変動が車体に伝わりにくいことを優先するとき(ケース1)は図4の第3段目に示したように、また、負荷変動に強いことを優先するとき(ケース2)は図4の第5段目のように排気絞り弁の開閉タイミングを定めればよい。したがって、排気絞り弁を開閉するために用いる信号は、図4の第4段目または第6段目の破線のようになる。つまり、ニュートラルスイッチ信号から図4の第4段目または第6段目の破線で示した信号を第2のニュートラルスイッチディレイ付き信号として形成し、この第2のニュートラルスイッチディレイ付き信号を排気絞り弁を開閉するために用いるのである。
【0038】
ただし、ケース1において、ニュートラルスイッチ信号がNレンジよりDレンジに切換わるA点より前に第2のニュートラルスイッチディレイ付き信号をDレンジ認識値である“0”へと切換えることは不可能なので、図4第4段目実線で示したように、ニュートラルスイッチ信号がNレンジよりDレンジに切換わるA点のタイミングで、第2のニュートラルスイッチディレイ付き信号を“0”へと切換える。また、ケース2において、ニュートラルスイッチ信号がDレンジよりNレンジに切換わるC点のタイミングより前に第2のニュートラルスイッチディレイ付き信号をNレンジ認識値である“1”へと切換えることも不可能なので、図4第6段目実線のように、ニュートラルスイッチ信号がDレンジよりNレンジに切換わるタイミングのC点で第2のニュートラルスイッチディレイ付き信号を“1”へと切換える。
【0039】
この結果、第2のニュートラルスイッチディレイ付き信号の切換タイミングは、ニュートラルスイッチ信号や第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号の切換タイミングとは別のタイミングとなっている。
【0040】
ここで、上記ケース1(Nレンジで排気絞り弁を開閉)とケース2(Dレンジで排気絞り弁を開閉)のいずれを採用するかは次のように車両により異なる。
【0041】
(1)ケース1を採用するのがよい場合
Nレンジでは、排気絞り弁の開閉によりエンジンに生じた負荷変動が直接に車体に伝わることはない。ただし、エンジン自体は排気絞り弁の開閉により生じる負荷変動で揺れるので、この揺れが車体に伝わって車体が揺れる。したがって、エンジン自体の揺れ量と車体の揺れ量を比較し、車体の揺れ量のほうが小さいときは、ケース1を採用する。車体の揺れ量の方が大きくなるときは、ケース2の採用を考える。
【0042】
(2)ケース2を採用するのがよい場合
Dレンジはエンジンと自動変速機のもつ仕事量がもともと大きいので、Dレ ンジでの排気絞り弁の開閉による負荷変動があっても、この負荷変動分が埋もれてしまい、トルクショックとして感じられにくい。ただし、排気絞り弁の開閉による負荷変動が小さなものであっても、これがトランスミッションを経由することによって増幅され、車体に大きく伝わることがある。したがって、排気絞り弁の開閉による負荷変動が車体に大きく伝わるようだとケース1の採用を考え、排気絞り弁の開閉による小さな負荷変動が車体に伝わらなければ、ケース2を採用する。
【0043】
いずれのケースを採用するかは、車種ごとにバランスで決めればよい。
【0044】
一方、上記のギヤ位置補正を第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号に基づいて行い、かつ排気絞り弁の開閉を第2のニュートラルスイッチディレイ付き信号に基づいて独立に行ったとき、各切換タイミング毎のわずかなトルクショックは残る。つまり、第2のニュートラルスイッチディレイ付き信号の切換タイミングと第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号の切換タイミングとが離れていると、トルクショックそのものは小さくても、その小さなトルクショックが生じる回数が増えることになる。したがって、ケース1の場合において、第2のニュートラルスイッチディレイ付き信号のDレンジ認識値からNレンジ認識値への切換タイミングであるE点は、第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号の切換タイミングであるD点に近いほうが(図4第4段目一点破線参照)、またケース2の場合において、第2のニュートラルスイッチディレイ付き信号のNレンジ認識値からDレンジ認識値への切換タイミングであるF点が、第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号のNレンジ認識値からDレンジ認識値への切換タイミングであるB点に近いほうが(図4第6段目一点破線参照)望ましい。
【0045】
排気絞り弁を開閉するタイミングをギヤ位置補正を切換えるタイミングと一致させる(ケース1の場合では排気絞り弁を閉じるタイミングを、ギヤ位置補正を加えるタイミングと一致させ、またケース2の場合では排気絞り弁を開くタイミングを、ギヤ位置補正を解除するタイミングと一致させる)ことにより、小さなトルクショックの回数を減らすことができるのである。
【0046】
制御装置25で行うこの制御の内容を以下のフローチャートにより詳細に説明する。
【0047】
まず図5のフローチャートは、従来と同じに、アイドル回転数制御におけるギヤ位置補正に用いる第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号#NEUTDを形成するためのもので、一定時間毎(たとえば10ms毎)に実行する。
【0048】
ステップ1では第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号の初期状態決定済みフラグ(イグニッションスイッチのOFF→ON時に“0”に初期設定)#NEUTDFSTをみる。
【0049】
始動後初めてステップ1に進んできたときは、フラグ#NEUTDFST=0であるので、ステップ2に進み、フラグ#NEUTDFSTを“1”に設定するとともに、ステップ3でニュートラルスイッチ信号のサンプリング値# NEUTをみる。
【0050】
ここで# NEUTはニュートラルスイッチ信号を2ms毎にサンプリングした値である(Nレンジにあるとき# NEUT=1、Dレンジにあるとき# NEUT=0)。サンプリング値# NEUT=0のときは、ステップ4で第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号#NEUTDに“0”を、またサンプリング値# NEUT=1のときはステップ7で信号#NEUTDに“1”を入れる。これは始動時にサンプリング値# NEUTと第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号#NEUTDの2つの信号値をそろえる操作である。
【0051】
また、ステップ5、7ではタイマ値NTDTMを0に初期設定する。このタイマは後述するように、サンプリング値# NEUTが“1”から“0”へあるいはその逆へと切換わったタイミングからの時間を計測するためのものである。
【0052】
上記フラグ#NEUTDFSTの“1”への設定により次からはステップ1よりステップ8に進み、冷却水温Twを読み込む。ステップ9、10、11ではサンプリング値# NEUT=1であるかどうか、信号#NEUTD=1であるかどうかみて、# NEUT=1かつ#NEUTD=0のとき(つまりニュートラルスイッチのDレンジからNレンジへの切換時)になると、ステップ12に進み、TwからDレンジよりNレンジへの切換ディレイテーブル(TTATDNテーブル)を検索してレンジ切換ディレイ時間TATDNを求める。ステップ13ではタイマ値NTDTMとこのディレイ時間TATDNを比較する。レンジ切換当初は、NTDTM<TATDNであることよりステップ14でタイマ値NTDTMをインクリメントする。
【0053】
このタイマ値のインクリメントを継続することによりやがてNTDTM≧TATDNになると、ステップ13よりステップ6、7に進んで、信号#NEUTDを“1”に切換えるとともに、タイマ値NTDTMを0に戻す。つまり、信号#NEUTDはサンプリング値# NEUTが“0”から“1”へと切換わったタイミングよりディレイ時間TATDNだけ遅れて“0”から“1”へと切換わるわけである(図7第3段目参照)。
【0054】
信号#NEUTDが“1”に切換わった後は、ステップ9、10よりステップ6、7へと進むことになり、ステップ6、7の操作を繰り返す。
【0055】
一方、サンプリング値# NEUT=0かつ信号#NEUTD=1(つまりニュートラルスイッチのNレンジからDレンジへの切換時)になると、ステップ15に進み、TwからNレンジよりDレンジへの切換ディレイテーブル(TTATNDテーブル)を検索してレンジ切換ディレイ時間TATNDを求める。ステップ16ではタイマ値NTDTMとこのレンジ切換ディレイ時間TATNDを比較する。レンジ切換当初は、NTDTM<TATNDであることよりステップ14に進んでタイマ値NTDTMをインクリメントする。
【0056】
このタイマ値のインクリメントを継続し、やがてNTDTM≧TATNDになったときステップ16よりステップ4、5に進んで、信号#NEUTDを“0”に切換えるとともに、タイマ値NTDTMを0に戻す。つまり、信号#NEUTDはサンプリング値# NEUTが“1”から“0”へと切換わったタイミングよりディレイ時間TATNDだけ遅れて“1”から“0”へと切換わる(図7第3段目参照)。
【0057】
なお、上記のディレイ時間TATDNは、DレンジよりNレンジへの切換時にエンジンよりトルクコンバータが切れる速さを考慮して、またディレイ時間TATNDはNレンジよりDレンジへの切換時にエンジンに対してトルクコンバータがつながる速さを考慮して定める。これらの速さはトルクコンバータの容量やトルクコンバータのタービン形状により異なる。
【0058】
このようにして求めた第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号を用いて、図示しないフローにおいて、アイドル回転数制御におけるギヤ位置補正が行われる。
【0059】
なお、制御上、上記のサンプリング値# NEUT、信号#NEUTDは、後述する第2のニュートラルスイッチディレイ付き信号#NEUTD2とともに、フラグで構成している。
【0060】
図6のフローチャートは、排気絞り制御に用いる第2のニュートラルスイッチディレイ付き信号#NEUTD2を形成するためのもので、一定時間毎(たとえば10ms毎)に実行する。
【0061】
図6を図5と比較すれば分かるように、図6では図5において、
フラグ#NEUTDFST→#NEUTDFST2、
信号#NEUTD→#NEUTD2、
タイマ値NTDTM→NTDTM2、
TTATDNテーブル→TTATDN2テーブル、
TATDN→TATDN2、
TTATNDテーブル→TTATND2テーブル、
ディレイ時間TATND→TATND2
の置き換えを行っただけのものであるので、詳しい説明は省略する。
【0062】
なお、図6のフローにより得られる第2のニュートラルスイッチディレイ付き信号#NEUTD2の波形図を上記のケース1とケース2に分けて図7に示す。図6のフローそのものは上記のケース1とケース2の両方に用いることができるようにしており、ケース1の場合にはレンジ切換ディレイ時間TATND2=0(図7第5段目参照)、ケース2の場合にはレンジ切換ディレイ時間TATDN2=0となる(図7第7段目参照)。
【0063】
図8のフローチャートは排気絞り制御を行うためのもので、図6の処理の後に、これもたとえば10ms毎に実行する。
【0064】
ステップ41ではフラグ#FEXHQより排気絞りの制御許可領域であるかどうかをみる。このフラグ#FEXHQは、アイドルおよびアイドル近辺の低負荷域(つまり、図9において制御領域判定値より下の領域)にあるとき“0”に、またそれ以外の領域にあるとき“1”になるフラグである。このフラグ#FEXHQの設定については図示しないが、エンジン回転数Nより図9を内容とするテーブルを検索して制御領域判定値を求め、これと目標燃料噴射量QSOLVとの比較により、QSOLV<QTEXHのとき#FEXHQ=0、QSOLV≧QTEXHのとき#FEXHQ=1とするものである。
【0065】
排気絞りの制御許可領域であるときは、ステップ42以降で排気絞りの禁止条件であるかどうかを判定する。この判定は、ステップ42〜49、52の内容を一つずつチェックすることにより行い、各項目の一つでも満たすときは排気絞りを禁止(排気絞り弁を開く)し、全ての条件を満たさないときに限り排気絞りを許可(排気絞り弁を閉じる)する。すなわち、
ステップ42:エンジン回転数Nが所定値NEXHH#以上である、
ステップ43:冷却水温Twが所定値TWEXHH#以上である、
ステップ44:車速VSPが所定値VEXHH#以上である、
ステップ45:ウォームアップスイッチがOFFである、
ステップ46:エンスト判定時である、
ステップ47:スタータスイッチのON時である、
ステップ48:スタータスイッチのON→OFF後の所定時間内である、
ステップ49:EGR制御中である
ステップ52:第2のニュートラルディレイ付き信号2#NEUTD2=0である
のいずれかを満たした場合にステップ53で排気絞りソレノイドONフラグ#EXHONを“0”に、そうでなければステップ54に移行して、排気絞りソレノイドONフラグ#EXHONを“1”に設定する。
【0066】
ここで、図示しないフローにおいて、排気絞りソレノイドONフラグ#EXHON=0のときは排気絞り弁を開状態とするため前記三方電磁弁にOFF信号が出力(このとき前記ダイアフラムアクチュエータに大気圧が導入)され、またフラグ#EXHON=1のときは排気絞り弁を閉状態とするため前記三方電磁弁にON信号が出力(このとき前記ダイアフラムアクチュエータに吸入負圧が導入)される。
【0067】
なお、
▲1▼排気絞りの制御許可領域でない、
▲2▼上記ステップ42よりステップ48までのいずれかの条件が成立する
ときのいずれかを満たした場合にステップ50で排気絞り禁止条件Aフラグ#EXH1を“0”に、そうでない場合にステップ51で排気絞り禁止条件Aフラグ#EXH1を“1”に設定している。これは、排気絞り禁止条件をニュートラルスイッチに関係するものとそれ以外とに分けたもので、暖房のための排気絞りを行わず、アイドル回転数制御における負荷補正(たとえばギヤ位置補正など)とアイドルアップ(アイドル目標回転数を所定値上昇させること)だけを行うエンジンに対しても、できるだけ制御仕様やフローチャートを共用できるようにするための工夫である。
【0068】
このようにして、本発明の実施形態では、アイドル回転数制御におけるギヤ位置補正に用いる第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号#NEUTDとは異なる第2のニュートラルスイッチディレイ付き信号2#NEUTD2の“1”から“0”への切換時に排気絞り弁が開かれ、#NEUTD2の“0”から“1”への切換時に排気絞り弁が閉じられることになった。
【0069】
次に、排気絞り制御に関連するアイドル回転数制御を説明する。これは、アイドル回転数制御における燃料増量補正とアイドル目標回転数を所定値上昇させる処理とである。いずれも第2のニュートラルスイッチディレイ付き信号2#NEUTD2に基づいて行う。なお、アイドル回転数制御における燃料増量補正とアイドル目標回転数の上昇処理をともに行う必要は必ずしもなく、いずれか片方の制御を行うだけでもかまわない。以下、項分け説明する。
【0070】
〈1〉燃料増量補正
図10のフローチャートは、排気絞り補正量(排気絞り時の燃料増量分)を算出するためのもので、図6の処理に続けて、図8の排気絞り制御と並行してたとえば10ms毎に実行する。
【0071】
ステップ61、62、63では、次の条件
条件1):ウォームアップスイッチがONである(ステップ61)、
条件2):排気絞り禁止条件Aが成立していない(ステップ62)、
条件3):第2のニュートラルスイッチディレイ付き信号2#NEUTD2=1である(ステップ63)
を一つずつチェックし、全ての条件を満たすときステップ64、65に進み、冷却水温TwからTISCWUテーブル(アイドル回転数制御におけるウォームアップ補正テーブル)を検索してウォームアップスイッチON時の補正量QISCWUを求める。これに対して、上記の条件1)〜3)を一つでも満たさないときはステップ66でQISCWUを0とする。つまり、図11に示したように、条件1)、2)の両方が成立し、かつ#NEUTD2=1のときに限り正の値の補正量QISCWUが与えられるのである。なお、ウォームアップスイッチON時の補正量QISCWUは簡単には一定値でかまわない。
【0072】
このようにして求めたウォームアップスイッチON時の補正量QISCWUは、ギヤ位置による補正量、パワーステアリングスイッチON時の補正量、ラジファンリレー出力に応じた補正量、グローリレーON時の補正量などと同じアイドル回転数制御における負荷補正量であり、これら各補正量は図示しないフローにおいて加算されたあと、エンジン回転数Nとアクセル開度TVOに基づいた基本燃料噴射量に加算され、その加算後の値がアイドル時の目標燃料噴射量として定まる。
【0073】
なお、上記ギヤ位置による補正量は、従来と同じに、第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号#NEUTDに基づいて算出されることはいうまでもない。
【0074】
〈2〉アイドル目標回転数の上昇処理
▲1▼排気絞り弁を閉じる条件になると閉じない場合よりもアイドル目標回転数NSETを一定値だけ上昇させる。
【0075】
なお、アイドル目標回転数は、従来と同様、冷却水温、第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号#NEUTD、バッテリ電圧、エアコンスイッチ、パワステスイッチなどからの信号に基づいて定まっており、こうして定まるアイドル目標回転数が排気絞りを行う車種では、さらに一定値アップされるのである。
【0076】
▲2▼排気絞りによるNSETに対する上下限値の設定
図12のフローチャートは、排気絞りによるNSETに対する上下限値を設定するためのもので、図6の処理に続けて、図8の排気絞り制御と並行してたとえば10ms毎に実行する。
【0077】
ステップ71、72、73は、図10のステップ61、62、63と同じであり、上記の条件1)、2)、3)を一つずつチェックし、全ての条件を満たすときステップ74、75に進み、ウォームアップスイッチON時のNSETの下限値NSET L5に所定値WUPMIN#(たとえば1150rpm)を、ウォームアップスイッチON時のNSETの上限値NSET H5に所定値WUPMAX#(たとえば1200rpm)をそれぞれ入れる。これに対して、上記の条件1)〜3)を一つでも満たさないときはステップ76、77に進み、下限値NSET L5に0を、上限値NSET H5に最大値のFFH(16進数2桁の最大値)をそれぞれ入れる。
【0078】
このようにして求められた下限値NSET L5、上限値NSET H5は、他の下限値、上限値(冷却水温Twから定まる下限値NSET L1、上限値NSET H1、第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号#NEUTD、エアコンスイッチ、パワステスイッチに基づいて定まる下限値NSET L3、上限値NSET L3など)との比較により下限値のうち最大のものをNSET L、上限値のうち最小のものをNSET Hとして設定し、上記〈2〉▲1▼のアイドル目標回転数NSETをこれら限界値NSET L、NSET Hの間に制限する。
【0079】
ここで、本発明の実施形態の作用を説明する。
【0080】
Dレンジはエンジンと自動変速機のもつ仕事量がもともと大きいので、Dレンジでの排気絞り弁の開閉による負荷変動があっても、この負荷変動分が埋もれてしまい、トルクショックとして感じられにくいのであるが、排気絞り弁の開閉による負荷変動が小さなものであっても、これがトランスミッションを経由することによって増幅され、車体に大きく伝わる車両がある。
【0081】
この場合に、アイドル回転数制御におけるギヤ位置補正に用いられる第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号に基づいて排気絞り弁を開閉したのでは、たとえば、NレンジからDレンジへの切換時にDレンジになってからこの第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号がDレンジ認識値である“0”へと切換えられるので、排気絞り弁の開閉による負荷変動が小さなものであっても、これがトランスミッションを経由することによって増幅され車体に大きく伝わってしまうのである。
【0082】
このような車両に対して本発明の実施形態(第1実施形態)は、上記ケース1を採用するものである。このとき、第1実施形態ではエンジンと自動変速機が切り離されるNレンジで排気絞り弁が開閉されるので、排気絞り弁の開閉によりエンジンに生じた負荷変動が直接に車体に伝わることがない。
【0083】
ただし、エンジン自体は排気絞り弁の開閉により生じる負荷変動で揺れるので、この揺れが車体に伝わって車体が揺れ、エンジン自体の揺れ量と車体の揺れ量を比較したとき、車体の揺れ量のほうが大きくなることがあるが、このときには、そもそもケース1を採用していない。したがって、排気絞り弁の開閉により生じる負荷変動でエンジン自体が揺れ、この揺れが車体に伝わって大きくなることもない。
【0084】
このように第1実施形態では、Dレンジでの排気絞り弁の開閉による負荷変動が小さなものであっても、これがトランスミッションを経由することによって増幅され車体に大きく伝わる車両に対して、エンジンと自動変速機の切り離されるNレンジで排気絞り弁の開閉を行うようにしたので、このような車両に排気絞りを導入する場合のトルクショックを和らげることができる。
【0085】
次に、Nレンジでは排気絞り弁の開閉によりエンジンに生じた負荷変動が直接に車体に伝わることはない。ただし、エンジン自体は排気絞り弁の開閉により生じる負荷変動で揺れるので、この揺れが車体に伝わって車体が揺れ、この場合のエンジン自体の揺れ量と車体の揺れ量を比較したとき、車体の揺れ量のほうが大きくなる車両がある。
【0086】
この場合に、アイドル回転数制御におけるギヤ位置補正に用いられる第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号に基づいて排気絞り弁を開閉したのでは、たとえばDレンジからNレンジへの切換時にNレンジになってからこの第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号がNレンジ認識値である“1”へと切換えられるので、車体の揺れ量の方が大きくなってしまう。
【0087】
このような車両に対して本発明の実施形態(第2実施形態)は上記ケース2を採用するものである。第2実施形態では、図13に示したように、エンジンと自動変速機が接続されるDレンジで排気絞り弁が開閉される。Dレンジではエンジンと自動変速機の全体の仕事量がもともと大きいので、Dレンジでの排気絞り弁の開閉による負荷変動があっても、この負荷変動分が埋もれてしまい、トルクショックとして感じられにくいのである。
【0088】
ただし、排気絞り弁の開閉による負荷変動が小さなものであっても、これがトランスミッションを経由することによって増幅され車体に大きく伝わることがあるが、このときには、ケース2を採用していない。したがって、排気絞り弁の開閉による小さな負荷変動が増幅されて車体に伝わることもない。
【0089】
このように第2実施形態では、排気絞り弁の開閉により生じる負荷変動でエンジン本体が揺れ、この揺れが車体に伝わって車体が揺れ、この場合のエンジン自体の揺れ量と車体の揺れ量を比較したとき車体の揺れ量のほうが大きくなる車両に対して、エンジンと自動変速機の全体の仕事量がもともと大きいDレンジで排気絞り弁の開閉を行うようにしたので、このような車両に排気絞りを導入する場合のトルクショックを和らげることができる。
【0090】
実施形態では、ニュートラルスイッチ信号に対して所定時間の遅れをもたせたが、時間に限られるものでなく、所定の回転数期間でもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態のディーゼルエンジンの制御システム図である。
【図2】スロットルバルブ駆動装置のシステム図である。
【図3】第1ソレノイドバルブ38、第2ソレノイドバルブ39、スロットルバルブ16の動作をまとめた表図である。
【図4】第2のニュートラルスイッチディレイ付き信号2#NEUTD2の形成を説明するための波形図である。
【図5】第1のニュートラルスイッチディレイ付き信号#NEUTDの形成を説明するためのフローチャートである。
【図6】第2のニュートラルスイッチディレイ付き信号2#NEUTD2の形成を説明するためのフローチャートである。
【図7】ニュートラルスイッチ信号のサンプリング値# NEUT、ニュートラルスイッチディレイ付き信号#NEUTD、#NEUTD2の各波形図である。
【図8】排気絞り制御を説明するためのフローチャートである。
【図9】排気絞りの制御領域図である。
【図10】排気絞り補正量QISCWUの算出を説明するためのフローチャートである。
【図11】排気絞り補正を説明するための波形図である。
【図12】アイドル目標回転数NSETに対する排気絞りによる上下限値の設定を説明するためのフローチャートである。
【図13】第2実施形態の作用を説明するための波形図である。
【図14】従来の排気絞りとこの排気絞りに関連するアイドル回転数制御を説明するための波形図である。
【図15】従来装置の作用を説明するための波形図である。
【図16】従来のアイドル回転数制御におけるギヤ位置補正を説明するための波形図である。
【図17】第1の発明のクレーム対応図である。
【図18】第2の発明のクレーム対応図である。
【符号の説明】
25 エンジン制御装置
Claims (5)
- 自動変速機がNレンジにあるのかそれともDレンジにあるのかを検出する手段と、
この検出信号のNレンジからDレンジへの切換のタイミングよりも所定期間遅いタイミングでNレンジ認識値からDレンジ認識値に切換わり、かつこの検出信号のDレンジからNレンジへの切換のタイミングよりも所定期間遅いタイミングでDレンジ認識値からNレンジ認識値に切換わる第1の遅れ信号を形成する手段と、
この第1の遅れ信号に基づいてアイドル回転数制御におけるギヤ位置補正を行う手段と
を備えるディーゼルエンジンの制御装置において、
排気絞り装置と、
前記検出信号のNレンジからDレンジへの切換のタイミングでNレンジ認識値からDレンジ認識値に切換わり、かつ前記第1の遅れ信号のDレンジ認識値からNレンジ認識値への切換のタイミングと同じかまたはそれよりも遅いタイミングでDレンジ認識値からNレンジ認識値に切換わる第2の遅れ信号を形成する手段と、
暖房を指示する手段と、
この暖房が指示された場合に前記第2の遅れ信号がNレンジ認識値であるとき前記排気絞り装置を作動させ、また前記第2の遅れ信号がDレンジ認識値であるとき前記排気絞り装置の作動を解除する手段と
を設けたことを特徴とするディーゼルエンジンの制御装置。 - 自動変速機がNレンジにあるのかそれともDレンジにあるのかを検出する手段と、
この検出信号のNレンジからDレンジへの切換のタイミングよりも所定期間遅いタイミングでNレンジ認識値からDレンジ認識値に切換わり、かつこの検出信号のDレンジからNレンジへの切換のタイミングよりも所定期間遅いタイミングでDレンジ認識値からNレンジ認識値に切換わる第1の遅れ信号を形成する手段と、
この第1の遅れ信号に基づいてアイドル回転数制御におけるギヤ位置補正を行う手段と
を備えるディーゼルエンジンの制御装置において、
排気絞り装置と、
前記第1の遅れ信号のNレンジ認識値からDレンジ認識値への切換のタイミングと同じかまたはそれよりも遅いタイミングでNレンジ認識値からDレンジ認識値に切換わり、かつ前記検出信号のDレンジからNレンジへの切換のタイミングでDレンジ認識値からNレンジ認識値に切換わる第2の遅れ信号を形成する手段と、
暖房を指示する手段と、
この暖房が指示された場合に前記第2の遅れ信号がNレンジ認識値であるとき前記排気絞り装置を作動させ、また前記第2の遅れ信号がDレンジ認識値であるとき前記排気絞り装置の作動を解除する手段と
を設けたことを特徴とするディーゼルエンジンの制御装置。 - 前記排気絞り装置を作動させるとき所定の燃料増量を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のディーゼルエンジンの制御装置。
- 前記排気絞り装置を作動させるときアイドル目標回転数を一定だけ上昇させることを特徴とする請求項1または2に記載のディーゼルエンジンの制御装置。
- 前記排気絞り装置を作動させるとき所定の燃料増量を行うとともにアイドル目標回転数を一定だけ上昇させることを特徴とする請求項1または2に記載のディーゼルエンジンの制御装置。
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