JP3824338B2 - カルバゾリルトリアジン化合物および光重合開始剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感光性組成物に用いられる光重合開始剤として有用な2−(N−置換カルバゾリル)−4,6−ビス(トリハロメチル)トリアジン化合物に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
感光性組成物は、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物に光重合開始剤を加えたものであり、この感光性組成物に光照射することによって重合硬化させることができるので、光硬化性インキ、感光性印刷版、各種フォトレジスト等に用いられている。
【0003】
この感光性組成物に用いられる光重合開始剤として、光照射により分解してハロゲン遊離基を発生するハロメチルトリアジン化合物を使用することが知られている。これらのハロメチルトリアジン化合物のなかでも、2−アリール−4,6−ビス(トリハロメチル)−s−トリアジンは感度が比較的良好なことが知られており、例えば、特開昭53−133428号公報には、2−位のアリール基として、2環もしくは多環の芳香族基または複素環式芳香族基を用いた化合物を用いることが提案されており、特に、アリール基としてナフチル基を用いた場合に良好な結果が得られることが記載されている。
【0004】
しかしながら、特開昭53−133428号公報に記載された化合物の感度は実用上は満足しえるものではなく、多量に用いるかあるいは長時間の光照射が必要となるばかりでなく、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物に対する溶解性が不十分であるため、感光性組成物の経時安定性に劣る欠点があった。
【0005】
また、特開昭63−70243号公報には、上記化合物における2位のナフチル基にアマイド結合またはエステル結合を有する置換基を導入することによって経時安定性を改善することが提案されているが、この場合にも光開始剤としての感度は満足しえるものではなかった。
【0006】
従って、本発明の目的は、感光性組成物とした場合に経時安定性に優れるばかりでなく、光重合開始剤としての感度の良好な化合物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のN−置換カルバゾリル基を有するハロメチルトリアジン化合物が、光重合開始剤としての効果が極めて大きく、短時間の光照射によってエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の重合を必要な程度までに進行させることができ、しかも、重合物に着色を与えないこと、さらに、該化合物を配合した感光性組成物は、優れた経時安定性を有しており、長期間保存した場合にも十分に使用できる利点をも有するものであることを知見した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、下記〔化2〕の式(I)〔前記〔化1〕の式(I)と同じ〕で表されるカルバゾリルトリアジン化合物および該化合物を有効成分とする光重合開始剤を提供するものである。
【0009】
【化2】
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、上記要旨をもってなる本発明についてさらに詳細に説明する。
【0011】
上記式(I)で表される本発明の化合物において、R1およびR2で示される炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチルがあげられ、R1、R2およびXで示されるハロゲン原子としては、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素があげられ、R3で示される炭素原子数1〜12のアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレン、1,4−ブチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン等があげられ、R4で示される炭素原子数1〜12のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等があげられ、またR4で示される炭素原子数1〜12のアルキル基あるいはハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基もしくはアラルキル基としては、前記のアルキル基またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル、ナフチル、ベンジル、フェニルエチル等があげられ、またR4で示される炭素原子数5〜12のシクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、4−メチルシクロヘキシル等があげられ、またR4で示される総炭素原子数3〜12のアルコキシアルキル基としては、例えば、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、2−ブトキシエチル、2−オクトキシエチル、2−メトキシ−1−メチルエチル、2−エトキシ−1−メチルエチル、2−ブトキシ−1−メチルエチル、2−メトキシ−1−エチルブチル、3−メトキシブチル、4−メトキシブチル、4−ブトキシブチル、4−オクトキシブチル、6−メトキシヘキシル等があげられる。
【0012】
上記式(I)で表される本発明の化合物のなかでも、特に、Xが塩素原子である化合物は特に感度が大きく、また、Zがエーテル結合手またはエステル結合手である化合物は感光性組成物としたときの経時安定性に優れており、さらに、R4がアリール基またはアラルキル基である化合物は感度が大きくなるので好ましい。また、R4がシクロヘキシル基または2−アルコキシアルキル基である化合物は感光性組成物を調製するための溶媒に対する溶解性が良好であり、経時安定性に優れているので好ましい。
【0013】
従って、上記式(I)で表される本発明の化合物のなかで、特に好ましい化合物としては、次に示すものがあげられる。
【0014】
化合物1:2−(N−n−ブチル−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン
【0015】
化合物2:2−(N−n−オクチル−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン
【0016】
化合物3:2−(N−(2”−メトキシエチル)−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン
【0017】
化合物4:2−(N−(2”−フェノキシエチル)−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン
【0018】
化合物5:2−(N−(2”−p−第三ブチルフェノキシエチル)−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン
【0019】
化合物6:2−(N−(2”−p−クロロフェノキシエチル)−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン
【0020】
化合物7:2−(N−エトキシカルボニルメチル−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン
【0021】
化合物8:2−(N−ブトキシカルボニルメチル−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン
【0022】
化合物9:2−(N−ベンジロキシカルボニルメチル−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン
【0023】
化合物10:2−(N−(2”−n−オクトキシカルボニルエチル)−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン
【0024】
化合物11:2−(N−(2”−アセトキシエチル)−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン
【0025】
化合物12:2−(N−(2”−ベンゾイルオキシエチル)−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン
【0026】
化合物13:2−(N−イソアミロキシカルボニルメチル−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン
【0027】
化合物14:2−(N−シクロヘキシロキシカルボニルメチル−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン
【0028】
化合物15:2−(N−(2”−メトキシエトキシカルボニルメチル)−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン
【0029】
化合物16:2−(N−(2”−エトキシエトキシカルボニルメチル)−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン
【0030】
化合物17:2−(N−(2”−メトキシ−1”−メチルエトキシカルボニルメチル)−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン
【0031】
化合物18:2−(N−(2”−エトキシ−1”−メチルエトキシカルボニルメチル)−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン
【0032】
上記式(I)で表される本発明の化合物は、ハロメチルトリアジン化合物を製造する周知の方法、例えば、3−シアノ−N−置換カルバゾール化合物とトリハロアセトニトリルとを、ハロゲン化アルミニウムの存在下に反応させることによって容易に製造することができる。
【0033】
また、本発明の化合物を製造するための原料として用いられる3−シアノ−N−置換カルバゾール化合物は、例えば、N−置換カルバゾール化合物とジメチルホルムアミドおよびオキシ塩化リンとを反応させて3−ホルミル−N−置換カルバゾールを調製し、次いで、アルデヒド基をシアノ基に変換する周知の手段を用いることによって製造される。
【0034】
本発明の化合物は、前述のように、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の光重合開始剤として有用であるが、このエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物としては、従来、感光性組成物に用いられているものを用いることができる。
【0035】
即ち、上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多価アルコールをα,β−不飽和カルボン酸でエステル化して得られる化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルアクリル酸付加物(1/3)、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(1/2)等のグリシジル基含有化合物に(メタ)アクリル酸を付加して得られる化合物;β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのフタル酸ジエステル、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのトルエンジイソシアネート付加物等の水酸基およびエチレン性不飽和結合を有する化合物と多価カルボン酸とのエステル化合物またはポリイソシアネートとの付加物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等があげられる。
【0036】
また、上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物とともに、熱可塑性有機重合体を用いることによって、硬化物の特性を改善することもできる。この熱可塑性有機重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物と(メタ)アクリル酸との共重合体、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸およびこれらと共重合しえる他のビニルモノマーとの共重合体があげられる。
【0037】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、第三ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等があげられ、また、他のビニルモノマーとしては、例えば、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン等があげられる。
【0038】
また、本発明の化合物は、必要に応じて他の光重合開始剤と組み合わせて使用することも可能であり、他の光重合開始剤と組み合わせて使用することによって著しい相乗効果を奏する場合もある。
【0039】
本発明の化合物と併用できる光重合開始剤としては、従来既知の化合物を用いることが可能であり、例えば、ベンゾフェノン、フェニルビフェニルケトン、1−ヒドロキシ−1−ベンゾイルシクロヘキサン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、1−ベンジル−1−ジメチルアミノ−1−(4’−モルホリノベンゾイル)プロパン、2−モルホリル−2−(4’−メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン、チオキサントン、1−クロル−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、エチルアントラキノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、ベンゾインブチルエーテル、2−ヒドロキシ−2−ベンゾイルプロパン、2−ヒドロキシ−2−(4’−イソプロピル)ベンゾイルプロパン、4−ブチルベンゾイルトリクロロメタン、4−フェノキシベンゾイルジクロロメタン、ベンゾイル蟻酸メチル、1,7−ビス(9’−アクリジニル)ヘプタン、9−n−ブチル−3,6−ビス(2’−モルホリノイソブチロイル)カルバゾール、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ナフチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等があげられる。
【0040】
また、本発明の化合物を含有する感光性組成物には、必要に応じて、p−アニソール、ハイドロキノン、ピロカテコール、第三ブチルカテコール、フェノチアジン等の熱重合抑制剤;可塑剤;接着促進剤;充填剤等の慣用の添加物を加えることができる。
【0041】
本発明の化合物を含有する感光性組成物は、通常、必要に応じて前記の各成分(本発明の化合物およびエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物)を溶解または分散しえる溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、クロロホルム、塩化メチレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノールを加えた溶液状組成物として用いられる。
【0042】
本発明の化合物を含有する感光性組成物は、ロールコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の手段で、金属、紙、プラスチック等の支持基体上に適用される。また、一旦フィルム等の支持基体上に施した後、他の支持基体上に転写することもでき、その適用方法に制限はない。
【0043】
本発明の化合物を含有する感光性組成物は、光硬化性塗料、光硬化性インキ、光硬化性接着剤、印刷版、印刷配線板用フォトレジスト等の各種の用途に使用することができ、その用途に特に制限はない。
【0044】
また、本発明の化合物を含有する感光性組成物を硬化させる際に用いられる活性光の光源としては、波長300〜450nmの光を発光するものを用いることができ、例えば、水銀蒸気アーク、カーボンアーク、キセノンアーク等を用いることができる。
【0045】
【実施例】
以下、具体的な実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0046】
実施例1〔化合物1:2−(N−n−ブチル−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(下記〔化3〕の化合物)の製造〕
【0047】
【化3】
【0048】
工程a(3−ホルミル−N−n−ブチルカルバゾールの製造)
カルバゾール16.7重量部、n−ブチルアイオダイド22.1重量部、トルエン30重量部、50%水酸化ナトリウム水溶液80重量部およびベンジルテトラエチルアンモニウムクロライド0.6重量部をとり、90℃で2時間攪拌した後、室温まで冷却した。次いで、有機層をとり、洗液が中性となるまで洗浄した後乾燥して、N−n−ブチルカルバゾールのトルエン溶液を得た。
ここに、オキシ塩化リン61.3重量部、ジメチルホルムアミド29.2重量部およびトルエン81.6重量部を加え、還流下4時間攪拌した。10%水酸化ナトリウム水溶液を水層がアルカリ性を示すまで滴下した後、有機層をとり、減圧下に溶媒を留去して3−ホルミル−N−n−ブチルカルバゾールを得た。
【0049】
工程b(3−シアノ−N−n−ブチルカルバゾールの製造)
工程aで得られた3−ホルミル−N−n−ブチルカルバゾール25.1重量部、塩酸ヒドロキシルアミン8.3重量部、酢酸ナトリウム10.7重量部および酢酸15重量部をとり、還流下12時間攪拌した。酢酸を留去した後、残留物をクロロホルムに溶解し、洗液が中性となるまで洗浄した後、クロロホルムを留去した。
得られた残留物をエタノールから再結晶して、3−シアノ−N−n−ブチルカルバゾールを得た。
【0050】
工程c(目的物の製造)
工程bで得られた3−シアノ−N−n−ブチルカルバゾール24.8重量部、トリクロロアセトニトリル72.2重量部および臭化アルミニウム2.7重量部をとり、20〜30℃で、塩化水素ガスを吸収が認められなくなるまで、3時間を要して吹き込みながら攪拌した。その後、内容物は徐々に固化するので、室温で15時間放置した。
クロロホルム300重量部を加え、水洗、乾燥後溶媒を留去し、得られた黄色固体をイソプロパノール/トルエン(200/35)混合溶媒から再結晶し、融点220〜221℃、λmax 385nmの淡黄色粉末の生成物45.6重量部を得た。
赤外線吸光分析の結果、1540、1390および770cm-1にトリアジン環に基づく吸収が認められることから目的物であることを確認した。
【0051】
実施例2〔化合物2:2−(N−n−オクチル−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(下記〔化4〕の化合物)の製造〕
【0052】
【化4】
【0053】
工程a(3−ホルミル−N−n−オクチルカルバゾールの製造)
n−ブチルアイオダイドに代えてn−オクチルブロマイド23.2重量部を用いる他は実施例1の工程aと同様にして3−ホルミル−N−n−オクチルカルバゾールを得た。
【0054】
工程b(3−シアノ−N−n−オクチルカルバゾールの製造)
3−ホルミル−N−n−ブチルカルバゾールに代えて工程aで得られた3−ホルミル−N−n−オクチルカルバゾール30.7重量部を用いる他は実施例1の工程bと同様にして3−シアノ−N−n−オクチルカルバゾールを得た。
【0055】
工程c(目的物の製造)
3−シアノ−N−n−ブチルカルバゾールに代えて工程bで得られた3−シアノ−N−n−オクチルカルバゾール30.4重量部を用い、再結晶溶媒としてイソプロパノール/トルエン(5/1)混合溶媒を用いる他は実施例1の工程cと同様にして、融点152〜153℃、λmax 391nmの淡黄色粉末の生成物49.0重量部を得た。
赤外線吸光分析の結果、1540、1390および770cm-1にトリアジン環に基づく吸収が認められることから目的物であることを確認した。
【0056】
実施例3〔化合物4:2−(N−2”−フェノキシエチル)−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(下記〔化5〕の化合物)の製造〕
【0057】
【化5】
【0058】
工程a(3−ホルミル−N−2’−フェノキシエチルカルバゾールの製造)
n−ブチルアイオダイドに代えて2−フェノキシエチルクロライド18.7重量部を用いる他は実施例1の工程aと同様にして3−ホルミル−N−2’−フェノキシエチルカ.バゾールを得た。
【0059】
工程b(3−シアノ−N−2’−フェノキシエチルカルバゾールの製造)
3−ホルミル−N−n−ブチルカルバゾールに代えて工程aで得られた3−ホルミル−N−2’−フェノキシエチルカルバゾール31.5重量部を用いる他は実施例1の工程bと同様にして3−シアノ−N−2’−フェノキシエチルカルバゾールを得た。
【0060】
工程c(目的物の製造)
3−シアノ−N−n−ブチルカルバゾールに代えて工程bで得られた3−シアノ−N−2’−フェノキシエチルカルバゾール31.2重量部を用い、再結晶溶媒としてイソプロパノール/トルエン(3/2)混合溶媒を用いる他は実施例1の工程cと同様にして、融点214〜215℃、λmax 386nmの淡黄色粉末の生成物52.6重量部を得た。
赤外線吸光分析の結果、1540、1390および770cm-1にトリアジン環に基づく吸収が認められることから目的物であることを確認した。
【0061】
実施例4〔化合物7:2−(N−エトキシカルボニルメチル−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(下記〔化6〕の化合物)の製造〕
【0062】
【化6】
【0063】
工程a(3−ホルミル−N−エトキシカルボニルメチルカルバゾールの製造)
n−ブチルアイオダイドに代えてモノクロル酢酸エチル14.7重量部を用いる他は実施例1の工程aと同様にして3−ホルミル−N−エトキシカルボニルメチルカルバゾールを得た。
【0064】
工程b(3−シアノ−N−エトキシカルボニルメチルカルバゾールの製造)
3−ホルミル−N−n−ブチルカルバゾールに代えて工程aで得られた3−ホルミル−N−エトキシカルボニルメチルカルバゾール28.2重量部を用いる他は実施例1の工程bと同様にして3−シアノ−N−エトキシカルボニルメチルカルバゾールを得た。
【0065】
工程c(目的物の製造)
3−シアノ−N−n−ブチルカルバゾールに代えて工程bで得られた3−シアノ−N−エトキシカルボニルメチルカルバゾール27.8重量部を用い、再結晶溶媒としてイソプロパノール/トルエン(320/55)混合溶媒を用いる他は実施例1の工程cと同様にして、融点222〜223℃、λmax 379nmの淡黄色粉末の生成物49.0重量部を得た。
赤外線吸光分析の結果、1740cm-1にエステル結合に基づく吸収が、また、1540、1390および770cm-1にトリアジン環に基づく吸収が認められることから目的物であることを確認した。
【0066】
実施例5〔化合物13:2−(N−イソアミロキシカルボニルメチル−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(下記〔化7〕の化合物)の製造〕
【0067】
【化7】
【0068】
工程a(3−ホルミル−N−イソアミロキシカルボニルメチルカルバゾールの製造)
n−ブチルアイオダイドに代えてモノクロル酢酸イソアミル20.2重量部を用いる他は実施例1の工程aと同様にして3−ホルミル−N−イソアミロキシカルボニルメチルカルバゾールを製造した。
【0069】
工程b(3−シアノ−N−イソアミロキシカルボニルメチルカルバゾールの製造)
3−ホルミル−N−n−ブチルカルバゾールに代えて工程aで得られた3−ホルミル−N−イソアミロキシカルボニルメチルカルバゾール32.3重量部を用いる他は実施例1の工程bと同様にして3−シアノ−N−イソアミロキシカルボニルメチルカルバゾールを得た。
【0070】
工程c(目的物の製造)
3−シアノ−N−n−ブチルカルバゾールに代えて工程bで得られた3−シアノ−N−イソアミロキシカルボニルメチルカルバゾール32.0重量部を用い、再結晶溶媒としてイソプロパノール/トルエン(320/55)混合溶媒を用いる他は実施例1の工程cと同様にして、融点151〜152℃、λmax 379nmの淡黄色粉末の生成物51.2重量部を得た。
赤外線吸光分析の結果、1740cm-1にエステル結合に基づく吸収が、また、1540、1390および770cm-1にトリアジン環に基づく吸収が認められることから目的物であることを確認した。
【0071】
実施例6〔化合物14:2−(N−シクロヘキシロキシカルボニルメチル−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(下記〔化8〕の化合物)の製造〕
【0072】
【化8】
【0073】
工程a(3−ホルミル−N−シクロヘキシロキシカルボニルメチルカルバゾールの製造)
カルバゾール16.7重量部、モノクロル酢酸シクロヘキシルエステル17.7重量部、ジエチレングリコールジメチルエーテル66.8重量部、ナトリウムメトキサイド10.2重量部をとり、150℃で3時間攪拌した後、室温まで冷却した。
ジエチレングリコールジメチルエーテルを減圧下に留去した後トルエン83.5重量部を加え、ここに、オキシ塩化リン61.3重量部、ジメチルホルムアミド29.2重量部を加え、還流下4時間攪拌した。10%水酸化ナトリウム水溶液を水層がアルカリ性を示すまで滴下した後、有機層をとり、減圧下に溶媒を留去して3−ホルミル−N−シクロヘキシロキシカルボニルメチルカルバゾールを得た。
【0074】
工程b(3−シアノ−N−シクロヘキシロキシカルボニルメチルカルバゾールの製造)
工程aで得られた3−ホルミル−N−シクロヘキシロキシカルボニルメチルカルバゾール33.5重量部、塩酸ヒドロキシルアミン8.3重量部、酢酸ナトリウム10.7重量部および酢酸15重量部をとり、還流下12時間攪拌した。酢酸を留去した後、残留物をクロロホルムに溶解し、洗液が中性となるまで洗浄した後、クロロホルムを留去した。
得られた残留物をイソプロパノールから再結晶して、3−シアノ−N−シクロヘキシロキシカルボニルメチルカルバゾールを得た。
【0075】
工程c(目的物の製造)
工程bで得られた3−シアノ−N−シクロヘキシロキシカルボニルメチルカルバゾール33.2重量部、トリクロロアセトニトリル72.2重量部および臭化アルミニウム2.7重量部をとり、20〜30℃で、塩化水素ガスを吸収が認められなくなるまで、3時間を要して吹き込みながら攪拌した。その後、内容物は徐々に固化するので、室温で15時間放置した。
クロロホルム200重量部を加え、水洗、乾燥後溶媒を留去し、得られた黄色固体をイソプロパノール/トルエン(300/130)混合溶媒から再結晶し、融点181〜182℃、λmax 379nmの淡黄色粉末の生成物50.4重量部を得た。
赤外線吸光分析の結果、1740cm-1にエステル結合に基づく吸収が、また、1540、1390および770cm-1にトリアジン環に基づく吸収が認められることから目的物であることを確認した。
【0076】
実施例7〔化合物17:2−(N−(2”−メトキシ−1”−メチルエトキシカルボニルメチル)−3’−カルバゾリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(下記〔化9〕の化合物)の製造〕
【0077】
【化9】
【0078】
工程a(3−ホルミル−N−(2’−メトキシ−1’−メチルエトキシカルボニルメチル)カルバゾールの製造)
モノクロル酢酸シクロヘキシルエステルに代えてモノクロル酢酸−2−メトキシ−1−メチルエチルエステル20.0重量部を用いる他は実施例1の工程aと同様にして3−ホルミル−N−(2’−メトキシ−1’−メチルエトキシカルボニルメチル)カルバゾールを得た。
【0079】
工程b(3−シアノ−N−(2’−メトキシ−1’−メチルエトキシカルボニルメチル)カルバゾールの製造)
3−ホルミル−N−シクロヘキシロキシカルボニルメチルカルバゾールに代えて工程aで得られた3−ホルミル−N−(2’−メトキシ−1’−メチルエトキシカルボニルメチル)カルバゾール32.5重量部を用いる他は実施例1の工程bと同様にして3−シアノ−N−(2’−メトキシ−1’−メチルエトキシカルボニルメチル)カルバゾールを得た。
【0080】
工程c(目的物の製造)
3−シアノ−N−シクロヘキシロキシカルボニルメチルカルバゾールに代えて工程bで得られた3−シアノ−N−(2’−メトキシ−1’−メチルエトキシカルボニルメチル)カルバゾール32.2重量部を用いる他は実施例1の工程cと同様にして、融点180〜181℃、λmax 379nmの淡黄色粉末の生成物50.8重量部を得た。
赤外線吸光分析の結果、1740cm-1にエステル結合に基づく吸収が、また、1540、1390および770cm-1にトリアジン環に基づく吸収が認められることから目的物であることを確認した。
【0081】
実施例8(本発明の化合物の光重合開始剤としての効果)
上記の配合物を調製し、ドクターナイフを用いてガラス板上に20μmの厚さに均一に塗布し、このガラス板を、高圧水銀灯を用いて50mJ/cm2 の光に露光した。この硬化物から、JIS K−7113に規定する2号ダンベル試験片を切り取って引張試験を行い、50%伸びの時点のヤング率を算出し、その硬化状態を調べた。その結果を下記〔表1〕に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
上記〔表1〕の結果から、本発明の化合物は、従来既知の2−アリール−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン化合物と比較して、光重合開始剤としての効果が大きいことが判る。
【0084】
実施例9(本発明の化合物の光重合開始剤としての効果)
上記の配合によって感光性組成物を調製し、この溶液をポリエチレンテレフタレートフィルム上に均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で5分間乾燥し、厚さ25μmの光重合性エレメントを得た。
【0085】
厚さ35μmの銅箔を両面に積層したガラスエポキシ材である銅張積層板を60℃に加温し、その銅面上にこの光重合性エレメントを120℃に加熱しながらラミネートした。次いで、この基板に高圧水銀灯で40mJ/cm2 で露光を行った。この際、光感度を測定できるように、光透過率が段階的に少なくなるように作られたネガフィルム(光学密度0.05を1段目とし、1段毎に光学密度が0.15ずつ増加するステップタブレット)を用いた。
【0086】
ポリエチレンテレフタレートフィルムを除去し、30℃で2%炭酸ナトリウム水溶液を50秒間スプレーして未露光部を除去し、銅箔上に形成された光硬化膜のステップタブレットの段数を測定することにより光感度を評価した。その結果を下記〔表2〕に示す。尚、ステップタブレットの段数が高いほど光感度が高いことを示す。
【0087】
【表2】
【0088】
上記〔表2〕の結果から、本発明の化合物は、従来既知の2−アリール−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン化合物と比較して、光重合開始剤としての効果が大きいことが判る。
【0089】
実施例10(本発明の化合物の光重合開始剤としての効果)
上記の配合によって感光性組成物を調製し、この溶液を表面処理アルミニウム板上に乾燥塗布量が2g/m2 となるように均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で2分間乾燥し、感光性平版印刷版を得た。
【0090】
この感光性平版印刷版を用い、作成当日(放置前)および60℃の室内に10日間放置した後に、それぞれ、ステップタブレットを密着させ、10アンペアの高圧水銀灯で70cmの距離から露光を行った。
【0091】
その後、亜硫酸ナトリウム3重量部、ベンジルアルコール30重量部、トリエタノールアミン20重量部、モノエタノールアミン5重量部、第三ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム30重量部および水1000重量部からなる現像液で処理し、未露光部を除去し、露光部に形成された硬化膜の、ステップタブレットの第3段が完全にベタとなる露光時間を比較した。その結果を下記〔表3〕に示す。
【0092】
【表3】
【0093】
上記〔表3〕の結果から、本発明の化合物は、従来既知の2−アリール−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン化合物と比較して、光重合開始剤としての効果が大きく、また、長時間保存した後においてもその効果が低下することがなく、本発明の化合物を用いた感光性組成物は保存安定性にも優れていることが判る。
【0094】
【発明の効果】
本発明の2−(N−置換カルバゾリル)−4,6−ビス(トリハロメチル)トリアジン化合物は、光重合開始剤としての効果が大きく、また、本発明の化合物を用いることにより、保存安定性に優れた感光性組成物を得ることができる。
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