JP3823357B2 - 硝化活性測定装置および硝化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は生物硝化における亜硝酸化活性および硝酸化活性を測定するための硝化活性測定装置、ならびにこれを用いた硝化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
各種排水中の窒素を生物的に除去する反応は、アンモニアを硝酸に変える硝化反応と、硝酸を窒素ガスに変える脱窒反応とから成り立っている。そして、硝化反応はアンモニアを亜硝酸に酸化する亜硝酸化反応と、亜硝酸を硝酸に酸化する硝酸化反応に分けられ、それぞれの反応は亜硝酸化菌と硝酸化菌という異なる細菌によって行われる。通常の硝化反応槽では、アンモニアは硝酸にまで酸化されてしまい、処理水中に亜硝酸が検出されることはない。
【0003】
しかし、pH、DO、共存物質等の条件によっては、亜硝酸を硝酸に酸化する速度がアンモニアを亜硝酸に酸化する速度よりも小さくなり、液中の亜硝酸濃度が高くなる場合がある。液中の亜硝酸濃度が高くなると処理水のCOD(Mn)が高くなったり、あるいは亜硝酸化菌や硝酸化菌の活性を阻害する場合がある。特に装置を立ち上げる際には、硝酸化菌は亜硝酸化菌よりも増殖速度が遅く、アンモニアから亜硝酸までの反応はスムーズにいっても、亜硝酸から硝酸への反応が律速なって、液中に亜硝酸が蓄積しやすい。
【0004】
一度、亜硝酸が蓄積してしまうと、その亜硝酸によって硝酸化菌の活性が阻害され、亜硝酸で反応が止まってしまう状態を改善することは難しい。そこで立ち上げの際には急激に負荷を上げることをせず、硝酸まで反応が進行していることを確認しながら、徐々に負荷を上げていくことになり、立ち上げが完全に終了するまで長時間を有する。立ち上げ時間を少しでも短縮するためには、正確な亜硝酸化速度と硝酸化速度をリアルタイムで測定する技術が必要である。
【0005】
硝化反応槽内の亜硝酸化活性と硝酸化活性を測定するには、装置の入口と出口の各アンモニア、亜硝酸および硝酸の濃度を測定し、計算で求めればよいが、これらの濃度を定期的に液をサンプリングし、比色法、イオンメーターまたはイオンクロマトグラフィー等で測定しなければならず、時間もかかる。これらの濃度を自動分析する手法も開発されつつあるが、SS、その他の有機物および無機物等が邪魔になり、正確な値を求めることは難しい。
【0006】
硝化活性をpHで測定することは公知であり(例えば特開昭61−100658号)、また硝化活性を酸素吸収速度で測定することも公知である(例えば特開平5−253596号)。
しかし、いずれの方法も亜硝酸化活性と硝酸化活性の総合的な硝化活性を測定しており、亜硝酸化活性と硝酸化活性の両方を区別して測定し、これにより生物酸化を制御することは知られていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の問題点を解決するため、簡単な装置と操作により、効率よく短時間で正確に亜硝酸化活性および硝酸化活性を測定できる硝酸化活性測定装置を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、上記の硝酸化活性測定装置を用いて効率よく生物硝化を行うことができ、また短時間で処理装置を立ち上げることが可能な硝化方法を提案することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は次の硝化活性測定装置および硝化方法である。
(1) 試料汚泥およびアンモニア性窒素を導入する密閉状の測定槽と、
測定槽内のpHを一定に維持するようにアルカリを添加するpH滴定装置と、
測定槽内の酸素分圧を一定に保つように酸素を供給しながら、酸素消費量を測定する酸素消費量測定装置と、
アルカリ消費量および酸素消費量から亜硝酸化速度および硝酸化速度を演算する演算装置と
を備えていることを特徴とする硝化活性測定装置。
(2) アンモニア性窒素を含有する被処理液を、亜硝酸化菌および硝酸化菌の存在下に生物硝化する方法において、
上記(1)記載の硝化活性測定装置により測定した亜硝酸化速度および硝酸化速度を指標として、負荷量を制御して硝化を行うことを特徴とする硝化方法。
【0010】
本発明の硝化活性測定装置における測定槽は、試料として生物処理装置の硝化槽内の硝化汚泥と、基質としてアンモニア性窒素を導入して生物硝化反応を行わせるように構成する。ここで言う硝化汚泥とは、生物処理装置が浮遊法の場合は硝化反応槽内の混合液であり、固定床方式の場合は充填材を含む汚泥である。これらは手動で導入するか、あるいは可能な場合はポンプによる自動導入でもよい。
【0011】
活性測定用の反応槽には、pH滴定装置と酸素消費量測定装置が取付けられる。pH滴定装置は測定槽内のpHを一定に維持するようにアルカリを添加する装置であって、槽内のpHを一定に維持するようにアルカリを添加するとともに、添加したアルカリの量を記録できる機能を持つものが好ましく、市販されているものが使用できる。
【0012】
酸素消費量測定装置は測定槽内の酸素分圧を一定に保つように酸素を供給しながら酸素消費量を連続的に測定する装置であり、呼吸による酸素の消費を密閉槽内の圧力の減少から検知し(この場合発生する二酸化炭素はソーダライム等で吸収する)、圧力の減少分だけ硫酸銅溶液の電気分解によって酸素を発生させる機能を持ち、電気分解の際に流した電流値より酸素消費量を計算するのが好ましく、既に市販されているものが使用できる。
【0013】
演算装置はpH滴定装置により測定されたアルカリ消費量と、酸素消費量測定装置により測定された酸素消費量から、亜硝酸化速度および硝酸化速度を演算するように構成される。アンモニアが亜硝酸に酸化されるときは、アルカリを消費するとともに酸素も消費するのに対し、亜硝酸が硝酸に酸化されるときは、酸素を消費するが、アルカリは消費しない。従ってアルカリと酸素の消費量から亜硝酸化速度と硝酸化速度が演算可能である。
【0014】
上記の硝化活性測定装置は、測定槽に試料汚泥とアンモニア性窒素を導入し、pH滴定装置によりpHを一定に保つようにアルカリを添加しながら、酸素消費量測定装置により酸素分圧を一定に保つように酸素を供給してアルカリ消費量および酸素消費量を測定し、これらの値から演算装置において亜硝酸化速度および硝酸化速度を演算する。こうして得られた亜硝酸化速度および硝酸化速度は生物硝化における指標として用いられる。
【0015】
上記の測定は100〜600ml程度の少量の試料を用い、数分ないし数十分間程度の短時間で測定でき、簡単な装置と操作により、リアルタイムで正確な測定が可能である。
【0016】
本発明の硝化方法は、アンモニア性窒素を含有する被処理液を亜硝酸化菌および硝酸化菌の存在下に生物硝化する方法であって、基本的な構成、操作は通常の生物硝化法と同様である。本発明では上記の生物硝化において、前記硝化活性測定装置で測定された亜硝酸化速度および硝化速度を指標として、負荷量を制御して硝化を行う。
【0017】
前述のように、通常の生物硝化では、アンモニアの亜硝酸化と、亜硝酸の硝酸化は並行して行われるが、処理条件によって亜硝酸濃度が高くなりすぎると、処理水質が悪化したり、硝酸化が阻害されるので、本発明では亜硝化速度が硝酸化速度より大きくなりすぎないように、制御を行う。この場合、亜硝酸化速度と硝酸化速度が一定の比率となるように負荷量を制御する。
【0018】
例えば硝酸化速度の亜硝酸化速度に対する比率が一定以上になったときは負荷(アンモニア性窒素)の量を増加し、一定以下になったときは負荷の量を減少する。これにより亜硝酸化と硝酸化が並行して行われ、効率のよい処理が行われる。
【0019】
特に装置の立ち上げの際には硝酸化菌の増殖が遅いため、徐々にしか負荷が増大できなかったが、亜硝酸化速度および硝酸化速度をリアルタイムで測定しながら負荷の制御を行うことにより、従来よりも短時間で装置の立ち上げが可能になる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は実施形態の硝化活性測定装置を示す系統図である。
【0021】
図1において、1は密閉状の測定槽であって、汚泥導入路2から試料汚泥を導入し、アンモニア導入路3からアンモニアを導入して測定を行うように構成されている。4はpH滴定装置であって、pH計5によって測定槽1のpHを測定し、その測定値を一定(例えばpH7.0)に保つようにポンプP1を駆動してアルカリ貯槽6からアルカリ(例えば水酸化ナトリウム)を添加し、その添加量をアルカリ消費量として記録するように構成されている。
【0022】
7は酸素消費量測定装置であり、測定槽1内で発生する二酸化炭素をソーダライムで吸収して槽内の圧力を測定し、圧力の減少分だけ硫酸銅溶液の電気分解によって酸素を発生させ、電気分解時の電流値より酸素消費量を計算し、この値を記録するように構成されている。
【0023】
8は演算装置であり、pH滴定装置4で測定されたアルカリ消費量および酸素消費量測定装置7で測定された酸素消費量を入力し、これらの値から亜硝酸化速度および硝酸化速度を演算するように構成されている。9は測定後槽内液を排出する排液路である。
【0024】
図2は実施形態の硝化方法を示す系統図である。
図2において、11は硝化槽であって、被処理液路12からポンプP2により被処理液を導入し、返送汚泥路13からポンプP3により返送汚泥を導入し、散気装置14により曝気を行って生物硝化反応を行うように構成されている。15は固液分離槽であって、硝化槽11の混合液を固液分離するように構成されている。16は処理液排出路、17は余剰汚泥排出路である。
【0025】
硝化槽11は図1に示す硝化活性測定装置18により亜硝酸化速度および硝酸化速度を測定してその値を制御装置19に入力し、それらの値を指標としてポンプP2によって送られる負荷量を制御するように構成されている。
【0026】
図1の硝化活性測定装置においては、測定槽1に汚泥導入路2から試料汚泥およびアンモニア導入路3からアンモニアを導入し、pH滴定装置4によりpH計5でpHを測定し、pHを一定に保つようにポンプP1を制御してアルカリ貯槽6からアルカリを添加する。そして酸素消費量測定装置7により測定槽1の酸素分圧を一定に保つように酸素を供給して硝化反応を行わせる。
【0027】
こうしてpH滴定装置4によりアルカリ消費量を測定し、また酸素消費量測定装置7により酸素消費量を測定し、これらの値から演算装置8において亜硝酸化速度および硝酸化速度を演算する。
【0028】
この場合、測定槽内液当たりのアルカリ消費速度〔mN/l・day〕をa、測定槽内液当たりの酸素消費速度〔mg−O/l・day〕をbとすると、以下の計算によって亜硝酸化速度X〔mg−N/l・day〕と硝酸化速度Y〔mg−N/1・day〕が求まる。まずアンモニア1mmol(14mg−N)が亜硝酸に酸化されるとき2mNのアルカリを消費し、亜硝酸が硝酸に酸化させるときはアルカリを消費しない。したがって、次式が成立する。
X=7a ・・・・(1)
【0029】
次にアンモニア1mg−Nが亜硝酸に酸化されるとき、3.43mgの酸素を消費し、亜硝酸が硝酸に酸化されるとき1.14mgの酸素を消費する。従って、次式が成立する。
b=3.43X+1.14Y ・・・・(2)
(1)式を(2)式に代入すると、
Y=0.88b−21.1a ・・・・(3)
【0030】
ここでは、コントロールとして、アンモニアを添加しない状態でのアルカリ消費速度と酸素消費速度を測定し、活性値を計算する場合はこのコントロールの値を差し引く。またアルカリの添加がもたらす密閉容器のヘッドスペースの圧力増加が酸素消費速度の測定に影響を与える場合は、その分の補正が必要である。
【0031】
上記の亜硝酸化速度および硝酸化速度の計算は、pH滴定装置4と酸素消費量測定装置7から信号が演算装置8に送られ、リアルタイムで行われる。これにより試料汚泥の時間当たりのアルカリ消費量と酸素消費量を同時に測定することができる。
【0032】
こうして得られた亜硝酸化速度および硝酸化速度は生物硝化における指標として用いられる。
上記の測定は100〜600mlの少量の試料を用い、数分ないし数十分間程度の短時間で測定でき、簡単な装置と操作によりリアルタイムで正確な測定が可能である。
【0033】
図2の硝化方法は、アンモニア性窒素を含有する被処理液を、亜硝酸化菌および硝酸化菌を含む活性汚泥の存在下に生物硝化する方法であって、基本的な構成は通常の生物硝化法と同様であり、処理操作も同様に行われる。
【0034】
すなわち硝化槽11に被処理液路12からポンプP2により被処理液を導入し、返送汚泥路13からポンプP3により返送汚泥を導入して槽内の活性汚泥と混合し、散気装置14から空気を散気することにより生物硝化反応を行う。反応液は固液分離槽15において固液分離し、分離液は処理液として処理液排出路16から排出し、汚泥は一部を余剰汚泥として余剰汚泥排出路17から排出し、他は返送汚泥として返送する。
【0035】
上記図2の硝化方法では、上記の生物硝化において、図1の硝化活性測定装置18で測定された亜硝酸化速度および硝酸化速度を指標として、制御装置19からの信号によりポンプP2の開度を調整することにより負荷量を制御して硝化を行う。ここでは処理条件によって亜硝酸化速度が硝酸化速度より大きくなりすぎると、処理水質が悪化したり、硝酸化が阻害されるので、亜硝酸化速度が硝酸化速度より大きくなりすぎないように制御が行われる。
【0036】
この場合、硝酸化速度の亜硝酸化速度に対する比率が一定以上になったときは負荷(アンモニア性窒素)の量を増加し、一定以下になったときは負荷の量を減少する。具体的には硝化活性測定装置18によって求めた亜硝酸化活性Xと硝酸化活性Yを基準に、以下の条件で負荷をコントロールする。すなわち0.6X<Y<0.8Xのときは負荷は変更しないが、Y≧0.8Xのときは負荷を10〜30%増加し、Y≦0.6Xのときは負荷を10〜30%減少させる。
【0037】
上記の制御は硝化反応の全期間にわたって行うことができるが、特に装置の立ち上げ時に行うことにより立ち上げ期間を短縮することができる。すなわち図2の構成により硝化槽11内の液中の亜硝酸化活性と硝酸化活性を自動分析によって同時に短時間で測定することが可能であり、その結果に基づいて最適な条件で立ち上げ時の負荷をコントロールすることができ、立ち上げ時間の短縮が可能になる。
【0038】
【実施例】
図2において、硝化槽11として容積1m3の実験装置を用いて、表1に示す水質(NH4 +濃度は50mg−N/lになるように人為的に制御したが、他は表の値の範囲内で変動)の工場廃水の硝化を行った。立ち上げ時には、他の廃水処理場の硝化反応槽内の汚泥(2000mg/l)を実験装置反応槽容積の1%添加した。同じ装置を使って立ち上げ実験を2回行い、RUN−1では、一定の条件で負荷を上げて行ったのに対して、RUN−2では亜硝酸化活性と硝酸化活性をリアルタイムで表2の条件で測定し、その結果に基づいて表3の条件で負荷を増加させた。負荷のコントロール以外は、両RUNとも全く同じ条件で試験を行った。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
上記試験において、負荷の変化とそのときの装置の硝酸化速度を図3に示す。図3の結果から明らかなように、リアルタイムで負荷を制御することによって、装置の最終硝酸化速度が目標値に達するまでの日数を19日短縮することができた。
【0043】
【発明の効果】
本発明の硝化活性測定装置は、アルカリ消費量と酸素消費量から亜硝酸化速度と硝酸化速度を演算するようにしたので、簡単な装置と操作により効率よく短時間で亜硝酸化活性および硝酸化活性を測定することができる。
【0044】
本発明の硝化方法は、上記の硝化活性測定装置により得られた亜硝酸化速度および硝酸化速度を指標として制御を行うため、処理水質の悪化や硝酸化の阻害を生じることなく、効率よく生物硝化を行うことができ、また短時間で処理装置を立ち上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の硝化活性測定装置の系統図である。
【図2】実施形態の硝化方法を示す系統図である。
【図3】実施例の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 測定槽
2 汚泥導入路
3 アンモニア導入路
4 pH滴定装置
5 pH計
6 アルカリ貯槽
7 酸素消費量測定装置
8 演算装置
11 硝化槽
12 被処理液路
13 返送汚泥路
14 散気装置
15 固液分離槽
16 処理液排出路
17 余剰汚泥排出路
18 硝化活性測定装置
19 制御装置
Claims (2)
- 試料汚泥およびアンモニア性窒素を導入する密閉状の測定槽と、
測定槽内のpHを一定に維持するようにアルカリを添加するpH滴定装置と、
測定槽内の酸素分圧を一定に保つように酸素を供給しながら、酸素消費量を測定する酸素消費量測定装置と、
アルカリ消費量および酸素消費量から亜硝酸化速度および硝酸化速度を演算する演算装置と
を備えていることを特徴とする硝化活性測定装置。 - アンモニア性窒素を含有する被処理液を、亜硝酸化菌および硝酸化菌の存在下に生物硝化する方法において、
請求項1記載の硝化活性測定装置により測定した亜硝酸化速度および硝酸化速度を指標として、負荷量を制御して硝化を行うことを特徴とする硝化方法。
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