JP5801506B1 - 生物的脱窒装置の運転方法 - Google Patents
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Abstract
Description
NOx-Nの還元反応は(1)、(2)、(3)式などで表される。
1/3NO2 −+H++e−→1/3H2O+1/6N2+1/3OH− ・・・(1)式
1/5NO3 −+H++e−→2/5H2O+1/10N2+1/5OH− ・・・(2)式
1/4O2+H++e−→1/2 H2O ・・・(3)式
還元剤としてメタノールを用いてNO3 −の還元を行う場合の反応式は、(4)式で表される。
6NO3 −+5CH3OH→3N2↑+5CO2+7H2O+6OH− ・・・(4)式
また、廃水中のBOD成分など、組成の不明な有機物を還元剤として用いる場合は、(2)式、(3)式より、1molのNO3 −と1.25molのO2が当量関係にあるため、1mg/lのNO3 −-Nを還元するために必要なBOD成分は、完全酸化された場合の理論BODとして2.86mg/lとなる。
脱窒工程での還元剤の量は、脱窒槽に流入するNOx-N量に対し、少な過ぎればNOx-N量の除去率が低下し、多すぎれば、過剰の有機炭素源が流出し処理水が悪化する。また有機炭素源としてメタノールなどの薬液を使用する場合には、薬液の費用が嵩むことになる。
還元剤としてメタノールなどの特定の薬液を使用する場合には、(3)式などから理論量が判るため、脱窒槽に流入するNOx-N量に対応する量を添加することで適正量を維持できるが、薬液費用が嵩むという問題点がある。このため、薬剤量を必要最小限に抑えるべく、脱窒反応終点を酸化還元電位計(以下、ORP計)による時間変化率で判定して、過剰な薬剤添加をなくす方法(例えば文献1)、モニター槽にてORP計で脱窒反応の終点を先行検知するとともに、薬液を不足気味に添加し、あとは内生呼吸による自己消化を利用して薬液量を削減する方法(例えば文献2)、などが提示されている。
文献3には、オキシデーションディッチでの脱窒法で、脱窒工程におけるBOD-SS負荷と脱窒速度との相関式を求め、NOx-N量を還元するための必要脱窒速度を求め、両者から脱窒槽のT-BOD/T-N比が3になるように、脱窒工程に添加する流入水を制御する方法が提示されている。また文献4には、オキシデーションディッチでの脱窒法で、ORP計による酸化還元電位の変化計測し、電位変化に屈曲点を検知して嫌気撹拌と好気撹拌を制御することで、特別な薬品を添加することなく流入水の有機炭素源だけで脱窒を行う方法が提示されている。
文献5には、硝化液循環方式の生物的脱窒方法において、脱窒工程に流入する流入水のCODと脱窒工程前後のNOx-Nを測定し、数値モデルによるシミュレーションを行って硝化液の循環量制御を行い、適正な脱窒を行う方法が提示されている。
しかしながらこれらの方法によっても、流入水や廃液の成分や濃度が変動する場合には、BODやCODと有効な有機炭素源の関係が一定とはならないこと、また酸化還元電位は脱窒工程内のさまざまな酸化還元反応を一括して測定してしまい、必ずしも明確な指標にはならないこと、などのため適切な制御が難しい。
(1)廃水を硝化工程で酸化処理して、廃水中の窒素成分を硝酸性窒素又は亜硝酸性窒素(以下、NOx-N)に変換し、脱窒工程において酸素の供給を断って、水素供与体として有機炭素源(以下、還元剤)を添加して、液中のNOx-Nを活性汚泥により窒素に還元して除去する生物的脱窒装置において、
嫌気状態における脱窒反応速度が、好気状態における活性汚泥の酸素消費速度と比例関係にあると見做して、
脱窒工程の活性汚泥混合液をサンプリングして求めた、活性汚泥混合液又は還元剤の酸素消費指標であるASact、BODts、BODactに基づいて、必要とする還元剤添加量Sを求め、
該還元剤添加量Sに従い、脱窒工程における還元剤添加量制御を行う、
ことを特徴とする生物的脱窒処理装置の運転方法。
但し、ASactは、活性汚泥混合液の内生呼吸状態における酸素消費速度、
BODtsは、活性汚泥混合液中又は還元剤液中の溶解性易分解性有機物の分解に要する酸素消費量の指標であって、
サンプリング活性汚泥混合液を曝気して内生呼吸状態になるまでの全酸素消費量から内生呼吸による酸素消費量を控除した値(BODts1)、又は、
サンプリング活性汚泥混合液を曝気して内生呼吸状態にしたのち、還元剤液を一定量添加し、還元剤液添加後の酸素消費速度が、還元剤液添加前の内生呼吸による酸素消費速度と等しくなるまでの測定時間内に、還元剤液添加後の活性汚泥混合液が消費した全酸素量から、内生呼吸による酸素消費量を控除した酸素消費量を求め、
活性汚泥混合液量と添加還元剤量の関係に基づいて、還元剤の酸素消費量に換算した値(標準還元剤の場合:BODts0、流入水または廃液を還元剤とする場合:BODts2)、
BODactは、活性汚泥混合液中および還元剤液中の溶解性易分解性有機物の分解の際の酸素消費速度の指標であって、BODts値を測定時間で除した値。
また、「流入水」とはいわゆる「原水」と同義であり、硝化槽においてBOD処理対象となる廃水をいう。
また、「廃液」とは、硝化槽におけるBOD処理対象の廃水ではなく、専ら嫌気工程において添加還元剤として用いる廃水をいう。例えば、メタノール廃液を還元剤として用いる場合の、当該メタノール廃液がこれに該当する。メタノール廃液の成分濃度は時間経過とともに変動する場合があり、本発明が有効な還元剤添加量制御手段となる。
S=a・NOx-N負荷量/BODts2・・・・・(A)
ここに、
NOx-N負荷量=脱窒工程に流入するNOx-N濃度×流入量、
aはNOx-Nを還元するための当量関係にある酸素量の比をベースに実験的に求める係数。
(3-1)予め、装置内でサンプリングした活性汚泥混合液のASact値(ASact0とする)と、前記標準還元剤のBODact値(BODact0とする)と、内生呼吸状態の該活性汚泥混合液を嫌気状態にして測定した脱窒反応速度(R0とする)と、標準還元剤を添加したときの脱窒反応速度からR0を控除した脱窒反応速度(R1とする)と、を測定しておき、
(3-2)制御中の脱窒工程に流入前または流出後の活性汚泥混合液をサンプリングして、該活性汚泥混合液のASact値(ASact1とする)と、還元剤である流入水または廃液のBODts値(BODts2)及びBODact値(BODact2とする)と、を測定し、
(3-3)内生呼吸による脱窒反応速度R2を、
R2=R0×ASact1/ASact0
の関係から求め、
(3-4)還元剤による脱窒反応速度R3を、
R3=R1×BODact2/BODact0
の関係から求め、
(3-5)脱窒工程の平均滞留時間をHとし、還元剤による可能脱窒反応量Wr0を、
BODts2≦k・R3×Hのときは、
Wr0=BODts2/k
BODts2>k・R3×Hのときは、
Wr0=R3×H
の関係から求め、
(3-6)脱窒工程の処理量をFとし、脱窒工程で除去すべきNOx-N量をWとするとき、還元剤による必要脱窒反応量Wrを、
W<(R2×H+Wr0)のときは、
Wr=(W−R2×H)
W≧((R2×H+Wr0)のときは、
Wr=Wr0
の関係から求め、
(3-7)還元剤の添加量Sを、
S=k・F×Wr/BODts2
の関係から求める。
但し、kは、NOx-Nを還元するための当量関係にある酸素量の理論的または実験的に求めた換算係数。
(4-1)予め、生物的脱窒装置からサンプリングした活性汚泥混合液によるASact値(ASact0とする)と、前記標準還元剤のBODact値(BODact0とする)と、内生呼吸状態の該活性汚泥混合液を嫌気状態にして測定した脱窒反応速度(R0)と、該還元剤を添加したときの脱窒反応速度からR0を控除した脱窒反応速度(R1)と、を測定しておき、
(4-2)制御中の脱窒工程に流入する前の活性汚泥混合液をサンプリングして、該活性汚泥混合液のASact値(ASact1とする)と、BODts値(BODts1)と、BODact(BODact1)と、還元剤である流入水または廃液のBODts値(BODts2)及びBODact値(BODact2)と、を測定し、
(4-3)内生呼吸による脱窒反応速度R2を、
R2=R0×ASact1/ASact0
の関係から求め、
(4-4)内生呼吸以外の酸素消費速度による脱窒反応速度R2actを、
R2act=R1×BODact1/BODact0
の関係から求め、
(4-5)還元剤による脱窒反応速度R3を、
R3=R1×BODact2/BODact0
の関係から求め、
(4-6)脱窒工程の平均滞留時間をHとし、脱窒工程の処理量をFとするとき、kをNOx-Nを還元するための当量関係にある酸素量の理論的または実験的に求めた換算係数として、内生呼吸以外の酸素消費速度による脱窒反応量W0を、
BODts1≦k・R2act×Hのときは、
W0=BODts1/k
BODts1>k・R2act×Hのときは、
W0=R2act×H
の関係から求め、
(4-7)還元剤による可能脱窒反応量Wr0を、
BODts2≦k・R3×Hのときは、
Wr0=BODts2/k
BODts2>k・R3×Hのときは、
Wr0=R3×H
の関係から求め、
(4-8)脱窒工程で除去すべきNOx-N量をWとするとき、
還元剤による必要脱窒反応量Wrを、
W<(R2×H+W0+Wr0)のときは、
Wr=W−(R2×H+W0)
W≧(R2×H+W0+Wr0)のときは、
Wr=Wr0
の関係から求め、
(4-9)脱窒反応量から還元剤の添加量Sを、
S=k・F×Wr/BODts2
の関係から求める。
脱窒反応に用いる還元剤添加量については、NOx-N負荷量に見合う量と、脱窒槽滞留時間内に反応を遂行するに必要な反応速度の考慮が必要である。脱窒反応速度は、主として汚泥の脱窒菌活性と還元剤の生分解性のしやすさで決まる。還元剤として通常よく使用されるメタノールは、非常に生分解し易い物質であるため問題ないが、流入水や廃液を還元剤として使用する場合には、含まれる成分の脱窒反応速度を考慮する必要がある。
同モデルでは、流入水中の生分解できる有機汚濁物を、溶解性易分解性有機物(以下、Ss)や遅分解性有機物(以下、Xs)に分類している。Xsは加水分解でSsに変換される。微生物はSsやXsを摂取して、細胞内蓄積可能物質(以下、Xsto)を合成するとしている。
好気状態における活性汚泥混合液の酸素消費速度については、流入水のSsがないときはXstoを消費して、代謝により酸素を消費する速度(内生呼吸時の酸素消費速度)である。また、Ssがあるときには、この値にSs→XSTOの変換に必要なエネルギーを得るための酸素消費速度が上乗せされる。
脱窒反応は、酸素を溶存酸素から得るかわりに、上述(1)式から(3)式で表現されるように硝酸イオンの酸素から得る作用であるから、脱窒反応速度は好気状態における酸素消費速度と比例関係にあると推定される。
サンプリング活性汚泥混合液を曝気して、内生呼吸状態までもっていき、酸素の供給を断って、DOの減少速度を測定した値をASact0、ASact1とする。ASact0、ASact1のように区別したのは、標準還元剤を測定するときと、制御中に測定するときの活性汚泥混合液は異なるためである。
制御中のサンプリング活性汚泥混合液を曝気して、内生呼吸状態に至るまでの酸素消費量から内生呼吸による酸素消費量を控除した値をBODts1とする。
BODts1を、曝気開始から内生呼吸状態に至るまでの時間で除した値をBODact1として求める。
内生呼吸状態にした後、還元剤液を一定量添加し、還元剤液添加後の酸素消費速度が、還元剤液添加前の内生呼吸による酸素消費速度と等しくなるまでの時間に、サンプリング活性汚泥混合液が消費した全酸素量から、内生呼吸による酸素消費量を控除した酸素量をBODts2*として求める。ここにBODts2*は、(活性汚泥混合液+添加還元剤液)についての酸素消費量であるから、還元剤自体の酸素消費量(BODts2)については、活性汚泥混合液の量をM、還元剤の添加量をTとすると、
BODts2=BODts2*×(M+T)/T
の計算で求めることになる。
さらに、BODts2を測定時間で除した量をBODact2として求める。
以上のような活性汚泥酸素消費指標の特性から見て、各指標とASM3による有機汚濁物分解メカニズムとは、それぞれ以下の対応関係にあると解釈できる。
ASact0、ASact1は、Xstoを消費する際の内生呼吸による酸素消費速度、
BODts1、BODact1は、活性汚泥混合液中のSs→Xstoの変換のために消費する酸素消費量と酸素消費速度、
BODts2、BODact2は、還元剤のSs成分を摂取し、Ss→Xstoの変換のために消費する酸素消費量と酸素消費速度。
さらにこれに限らず、例えば以下の方法によることもできる。内生呼吸状態の活性汚泥混合液を、予めDOを飽和溶存酸素濃度近くにした後、外部からの酸素の供給を断った状態で流入水を添加する。その後、DOの減少速度が内生呼吸状態の活性汚泥混合液の減少速度になるまでのDO減少量を求める。さらに、求めたDO値から内生呼吸による酸素消費量を控除することによりBODts1、BODts2が求まる。また、BODact1、BODact2は、取得したBODts1、BODts2をその間の時間で除することにより求めることができる。
本発明は、分解速度の大きいSs成分を多く含有する流入水を、還元剤として使用する場合に適した方法である。具体的には還元剤である流入水の添加量Sを
S=a・NOx-N負荷量/BODts2 (A)式
により求められるS値を用いて制御するものである。
なお、(A)式には直接ASactは表れないが、後述のようにBODts2を求めるに際してASact値が必要となる。
BODact2が内生呼吸による酸素消費速度BODact1に比べて非常に大きく、脱窒工程の反応時間が比較的短い場合には、脱窒工程において還元剤として消費される有機物量は、内生呼吸による酸素消費分の寄与は相対的に小さく、ほとんどBODts負荷量として表される量の寄与となる。従って、還元剤の添加量Sは(A)式のように、NOx-N負荷量/BODts2に比例すると見做すことができる。
BODact2がBODact1より非常に大きい活性汚泥は、化学廃水の活性汚泥などに多くみられる。この場合には、後述の(3)のようなやや複雑な制御を行わずとも、(A)式により脱窒工程に必要な還元剤を適切に制御できる。
本発明は、脱窒反応速度を加味する分、(A)式より汎用性があり精度の高い還元剤量制御といえる。特に、脱窒工程に流入する活性汚泥混合液のBOD処理がほとんど終了している場合に有効である。
予め、生物的脱窒装置からサンプリングした活性汚泥混合液を内生呼吸状態にして、そのときの酸素消費速度(ASact0)を測定する。また内生呼吸状態の活性汚泥混合液を用いて、標準還元剤の平均酸素消費速度(BODact0)を測定する。
同時に、内生呼吸状態の活性汚泥混合液を嫌気状態にして、還元剤を添加しない場合の時間当たりのNOx-N減少量から、脱窒反応速度R0を測定する。さらに、還元剤を添加して脱窒反応速度R1'を測定し、R1'からR0を控除した還元剤による実質脱窒反応速度R1(=R1'-R0)を求める。
求めたBODact0、ASact0、R1の値はコンピュータなどに保存しておく。
R2=R0×ASact1/ASact0
により求める。
さらに、還元剤による脱窒反応速度R3とし、還元剤による脱窒反応速度が還元剤の酸素消費速度と比例関係にあると見做して、
R3=R1×BODact2/BODact0
により求める。
W≦(R2×H+Wr0)のときは、Wr0はWrの制限とはならないので
Wr=W−R2×H
W>(R2×H+Wr0)のときは、Wr0がWrの上限となるので
Wr=Wr0
になる。
BOD量=k・Wr
の関係から求める。ここで求めたBOD量は、内生呼吸による酸素消費量が除かれているから、還元剤の添加量Sを、
S=F×BOD量/BODts2
の関係から求める。
以上より、脱窒工程に還元剤として添加する流入水または廃液の量を求めたSに制御することにより、脱窒工程で必要とするBOD量を、過不足なく制御できる。
本発明は、負荷変動などにより、脱窒工程に流入する活性汚泥混合液のBODが未処理の状態で残っている場合であっても、添加還元剤量を適切に制御できる発明に係る。
(3)の発明と同様に、まず成分組成が一定の還元剤のBODact0と、該還元剤による脱窒反応速度R1の関係を求める。また、該還元剤のBODact0を測定し、さらに還元剤による脱窒反応速度R1を求める。BODact0、ASact0、R1の値はコンピュータなどに保存しておく。
R2=R0×ASact1/ASact0 ・・・・(4・1)
の関係から求める。
次いで、内生呼吸以外の酸素消費速度による脱窒反応速度R2actを、
R2act=R1×BODact1/BODact0 ・・・・(4・2)
の関係から求める。
R3=R1×BODact2/BODact0
の関係から求める。
kを、NOx-Nを還元するための当量関係にある酸素量の換算係数として、
BODts1≦k・R2act×Hのときは、
W0=BODts1/k
BODts1>k・R2act×Hのときは、
W0=R2act×H
となる。
還元剤による可能脱窒反応量Wr0は、BODts2≦k・R3×Hのときは、BODts2の量が律速となるので、Wr0=BODts2/kとなり、BODts2>k・R3×Hのときは、反応速度が律速となるので、Wr0=R3×Hとなる。
脱窒工程で除去すべきNOx-N量をWとするとき、還元剤による必要脱窒反応量Wrは、
W≦(R2×H+W0+Wr0)のときは、Wr0はWrの制限とはならないので
Wr=W−(R2×H+W0)
W>(R2×H+W0+Wr0)のときは、Wr0がWrの上限となるので
Wr=Wr0
となる。
BOD量=k・Wr
S=F×BOD量/BODts2
の関係から求める。
脱窒工程に還元剤として添加する流入水または廃液の量を、上式で求めたSに制御することで、脱窒工程で必要とするBOD量を、過不足なく制御できる。
また、流入水がいろいろな成分で構成され、酸素消費速度の遅い成分を多く含む廃水の場合には、標準還元剤としてメタノールなどの分解性のよい薬液を選択すると、BODact1やBODact2の値が酸素消費速度の遅い成分に大きく影響され、BODact0との相関性に誤差が生じる。従って、このような流入水を還元剤とする場合には、標準還元剤として流入水と成分が略同一の模擬廃水を用いるのが適当である。
図1を参照して、本実施形態に係る生物的脱窒装置1は、流入水のBODを除去し窒素分をNOx-Nに酸化する好気性処理を行う硝化槽2と、NOx-Nを嫌気状態で窒素に還元する脱窒槽3と、脱窒槽の処理水中の残BODを好気性処理する再曝気槽4と、活性汚泥混合液を固液分離する沈殿槽5と、沈殿槽5で沈殿した活性汚泥を硝化槽2に戻す返送汚泥ライン5aと、を備えて構成される。
図2を参照して、本実施形態に係る測定装置10は、測定用活性汚泥混合液(以下、適宜、混合液と略記)を貯留する汚泥タンク13と、汚泥タンク13内の混合液を一定レベルに維持するオーバーフロー管14と、汚泥タンク13内に浸漬設置される曝気容器15と、曝気容器15内に汚泥混合液を導入・排出するための細管16と、大気開放弁17及び加圧コンプレッサー18と、汚泥タンク13外には混合液の溶存酸素濃度(DO)を測定するためのDO計電極19、DO測定容器20、循環ポンプ21、ラインミキサー22、曝気コンプレッサー23及びこれらを結ぶ接続配管と、還元剤を添加する添加ポンプ25、を主要構成として備えている。
曝気容器15には、汚泥タンク13内の活性汚泥混合液を曝気容器15内に導入・排出可能にする螺旋形状の細管16が付設されている。これにより、曝気容器15内の混合液を排出する際には、大気開放弁17を閉じ、加圧コンプレッサー18を稼働して容器内を加圧して、曝気容器15内から細管16を経由して汚泥タンク13に混合液を排出することができる。
また曝気容器15には、還元剤を一定量注入できるように添加ポンプ25と、が付設されている。
なお、曝気容器15の計測操作、DO計19によるデータ計測を含め、測定装置10における測定制御はコンピュータ(図示せず)により全て管理されている。
次に、測定装置10を用いたDO値計測は、以下の手順に従い行われる。脱窒槽3入口または脱窒槽3出口(図1参照)から曝気槽内の活性汚泥混合液を汲み上げ、汚泥タンク13内にオーバーフロー管14で一定レベルまで充満する。同時に、汚泥タンク13内に常時新鮮な活性汚泥混合液を循環させておく。また、新鮮な還元剤を曝気容器15に添加できるようにしておく。
曝気された活性汚泥混合液は曝気容器15に戻り、ここで気泡分離されてDO測定容器20に送られ、DO計電極19により活性汚泥混合液のDO値が測定される。
測定装置10を用いたDO値測定に基づくBODts演算の理論的根拠は、以下の通りである。なお、以下の内容は、本願発明者によって特開2001−235462等に開示されている。
活性汚泥混合液を曝気していくときの、混合液のDO値変化は(7)式で表される。なお本項では、煩雑さ回避のため、ASact、BODts、BODactについて、ASact1等の添え字1を省略して表記している。
DO:曝気槽内溶存酸素濃度[mg/l]
KLa:総括物質移動係数[1/hr]
ASact:活性汚泥が内生呼吸状態で使う酸素消費速度[mg/l/hr]
BODact:活性汚泥がBOD成分の分解で使う酸素消費速度 [mg/l/hr]
内生呼吸状態ではBODact=0、ASact=一定であるから、(7)式は積分でき、(8)式となる。
DO=α
の値で一定となる。この値をDOhfと表せば、DOhfはBOD成分が殆ど0mg/lの混合液を曝気した場合の、最終的に到達するDO値(hf:high final)と定義できる。以上より、(8)式は、
内生呼吸後の混合液に還元剤を添加すると、還元剤のBOD成分が分解していく過程で酸素を消費するため、混合液のDO値(DO2)は、BODの消費とともに(7)式を書き換えた(11)式に従い変化する。
とおくと、(13)式は、
BODact=BODts/t (18)式
上述の理論に基づく、測定装置10を用いた活性汚泥酸素消費指標の具体的取得方法について、以下に説明する。図3は、本実施形態に係る測定操作フローとDO値推移の関係を示す図である。
測定開始後、まず曝気容器15に導入した混合液を循環するとともに、曝気コンプレッサー23とラインミキサー22で混合液を曝気し、内生呼吸状態までもっていく(S101)。このときのDO変化(inDO曲線とする)は初期値DO0の値から、活性汚泥混合液中の未処理のBODを分解しながら最終的に内生呼吸による酸素消費速度と曝気による酸素供給速度がバランスするDOhfに向かって上昇していく変化となる。一方、内生呼吸状態の活性汚泥混合液を、初期値DO0から曝気したときのDO変化は(10)式で表される。この曲線とinDO曲線で囲まれた面積S0をコンピュータで計算し、(17)式により求めたKLa×S0がBODts1となる。またBODts1をDOhfになるまでの曝気時間で除した値がBODact1となる。
内生呼吸状態に至ったか否かは、測定容器20のDO計電極19の測定値をコンピュータに取り込み、酸素消費速度が一定になることなどで判定する。
ASact1を取得後、混合液を再度曝気コンプレッサー23とラインミキサー22で曝気すると、混合液のDO値は(9)式にしたがって上昇していくので(S103)、実測のDO変化値と(9)式のDO変化値とが合致するようなKLaを、反復法により求める。
KLa値取得後は、混合液は内生呼吸による酸素消費速度と曝気コンプレッサー23とラインミキサー22による酸素供給速度でバランスするDOhfに戻るので、還元剤を添加ポンプ25で所定量添加する(S104)。
一方、還元剤を添加しない場合のDO変化は(12)式で表されるDO1の変化となる(S107)。この場合、初期値DOhfからスタートするので、DO1=DOhfの直線となる。DO1とDO2で囲まれる面積Sをコンピュータで計算し、(17)式によりKLa×Sが還元剤が添加されたあとの活性汚泥混合液のBODts値(BODts2*)が求まる。
さらに還元剤自体のBODts値(BODts2)を求めるためには、以下の換算が必要である。すなわち、サンプリング活性汚泥混合液量をMとし、還元剤添加量をTとして、
BODts2=BODts2*×(M+T)/T
の計算で求められる。
さらに、(18)式によりBODact2が求められる。
<実施例1>
本実施例は、いろいろな基質を処理する活性汚泥混合液を使って測定したBODts値の測定例を、既存の諸水質指標と比較した例である。
メタノール、グルコースはSs成分、ペプトンはSs成分とXs成分の混合物、また溶性デンプンは大部分がXs成分であり、さらにSs成分であっても成分毎にXSTOへの変換率が異なる。
表1に示すように、COD等、他の指標では識別できない基質の違いが、BODts値では顕著に表れていることが分かる。
本実施例は、(2)、(3)、(4)の発明の妥当性評価に関する。脱窒工程の平均滞留時間が短く、還元剤の分解速度が大きい場合、還元剤のBODts値と脱窒量が概略比例することを示す例である。
表2は、メタノールを主成分とする流入水を処理する活性汚泥混合液(内生呼吸による酸素消費速度 10.8[mg/l/hr])100ccを嫌気状態にして、還元剤として流入水を添加したときの、1時間に脱窒されるNO3-N量を測定した結果を示したものである。
同表(5)より、添加BODts量が少ない場合には、内生呼吸による脱窒NO3-N量の寄与により、(添加BODts量/脱窒NO3-N量)の値はやや小さくなるが(No.1)、脱窒NO3-N量が多い場合にはほぼ一定値であり(No.2, No.3)、添加BODts量と脱窒NO3-N量が比例関係にあることがわかる。
脱窒が必要なNO3-N濃度は、一般的には30mg/l程度以上であり、本実施例による脱窒NO3-N量は2.0[mg]以上であるから、実用上、(A)式によりSを求めることが適当であることが示された。
本実施例は、(3)、(4)の発明の妥当性評価に関する。
表3は、活性汚泥混合液の内生呼吸時における酸素消費速度ASact値(ASact0、ASact1)と、脱窒反応速度の関係を調べたものである。ASact値を変化させ、還元剤を添加しないで一定時間嫌気状態にして、脱窒量から脱窒反応速度を測定した。同表(3)より、ASact値と脱窒反応速度とが比例関係にあることが分かる。
ASact値はMLSSと強い関連性があり、本実施例ではMLSSを変えることにより、ASact値を変化させている。
本実施例は、(2)の発明の具体的な適用事例に関する。
表6は、表5のメタノールとグルコースを成分とする流入水を処理する生物的脱窒装置において、脱窒工程流入前の活性汚泥混合液をサンプリングして、還元剤である流入水のBODts値(BODts2)とBODact値(BODact2)を測定し、換算計数aを2.86として、(A)式による計算を行って、還元剤添加量を計算したものである。ここに、脱窒工程入口のNOx-N濃度は38[mg/l]、脱窒工程の処理量Fは0.37[l/hr]、脱窒反応時時間は3.0[hr]である。
なお、本実施例では、脱窒工程に流入する前の活性汚泥混合液は、BOD処理がほとんど終了している状態である。
本実施例は、(3)の発明の具体的な適用事例に関する。
表9は、図1に示す生物的脱窒装置を用い、標準還元剤としてメタノール液を使用した脱窒工程において、(3-1)〜(3-4)に従い、酸素消費速度指数ASact値(ASact0)、BODact値(BODact0)及び脱窒反応速度R0 、R1を求めた結果を示したものである。
なお、脱窒工程に流入する前の活性汚泥混合液のBODts値(BODts1)はほとんど0であり、該活性汚泥混合液はBOD処理がほとんど終了している状態である。
本実施例は、(4)の発明の具体的な適用事例に関する。
実施例5と同じ活性汚泥混合液を使い、標準還元剤としてメタノール液を使用した場合の測定結果である。還元剤を添加しない場合の脱窒反応速度R0、還元剤を添加した脱窒反応速度R1は、表9と同じである。
なお、硝化槽の滞留時間を短くして、脱窒工程に流入する前の活性汚泥混合液のBODts値(BODts1)は35[mg/l]で未処理のBODが多い状態であることが実施例5と異なる。
2・・・・硝化槽
3・・・・脱窒槽
4・・・・再曝気槽
5・・・・沈殿槽
5a・・・・返送汚泥ライン
6・・・・還元剤流量調節装置
7・・・・活性汚泥混合液サンプリング装置
8・・・・活性汚泥混合液サンプリング装置
9・・・・還元剤サンプリング装置
10・・・活性汚泥酸素消費指標測定装置
11・・・・活性汚泥混合液サンプリングポンプ
13・・・・汚泥タンク
14・・・・オーバーフロー管
15・・・・曝気容器
16・・・・細管
17・・・・大気開放弁
18・・・・加圧コンプレッサー
19・・・・DO計電極
20・・・・DO測定容器
21・・・・循環ポンプ
22・・・ラインミキサー
23・・・曝気コンプレッサー
24・・・混合液循環部
25・・・還元剤添加ポンプ
Claims (3)
- 廃水を硝化工程で酸化処理して、廃水中の窒素成分を硝酸性窒素又は亜硝酸性窒素(以下、NOx-N)に変換し、脱窒工程において酸素の供給を断って、水素供与体として有機炭素源(以下、還元剤)を添加して、液中のNOx-Nを活性汚泥により窒素に還元して除去する生物的脱窒装置において、
嫌気状態における脱窒反応速度が、好気状態における活性汚泥の酸素消費速度と比例関係にあると見做して、
装置内の活性汚泥混合液をサンプリングして求めた、活性汚泥混合液又は還元剤の酸素消費指標であるASact、BODts、BODactに基づいて、必要とする還元剤添加量Sを求め、
該還元剤添加量Sに従い、脱窒工程における還元剤添加量制御を行うものであり、かつ、
流入水または廃液を還元剤とするときのBODts値(BODts2)を測定し、
還元剤添加量Sを、次式(A)により求めることを特徴とする生物的脱窒処理装置の運転方法。
S=a・NO x -N負荷量/BODts2・・・・・(A)
ここに、
NO x -N負荷量=脱窒工程に流入するNO x -N濃度×流入量、
aはNO x -Nを還元するための当量関係にある酸素量の比をベースに実験的に求める係数。
但し、ASactは、活性汚泥混合液の内生呼吸状態における酸素消費速度、
BODtsは、活性汚泥混合液中又は還元剤液中の溶解性易分解性有機物の分解に要する酸素消費量の指標であり、内生呼吸状態の酸素消費速度が変化しない短時間で測定され、かつ、内生呼吸状態からの変化量であって、
サンプリング活性汚泥混合液を曝気して内生呼吸状態になるまでの全酸素消費量から内生呼吸による酸素消費量を控除した値(BODts1)、又は、
サンプリング活性汚泥混合液を曝気して内生呼吸状態にしたのち、還元剤液を一定量添加し、還元剤液添加後の酸素消費速度が、還元剤液添加前の内生呼吸による酸素消費速度と等しくなるまでの測定時間内に、還元剤液添加後の活性汚泥混合液が消費した全酸素量から、内生呼吸による酸素消費量を控除した酸素消費量を求め、
活性汚泥混合液量と添加還元剤量の関係に基づいて、還元剤の酸素消費量に換算した値(所定の標準還元剤の場合:BODts0、流入水または廃液を還元剤とする場合:BODts2)、
BODactは、活性汚泥混合液中および還元剤液中の溶解性易分解性有機物の分解の際の酸素消費速度の指標であって、BODts値を測定時間で除した値。 - 請求項1において、
「流入水または廃液を還元剤とするときのBODts値(BODts2)を測定し、
還元剤添加量Sを、次式(A)により求めることを特徴とする生物的脱窒処理装置の運転方法。
S=a・NO x -N負荷量/BODts2・・・・・(A)
ここに、
NO x -N負荷量=脱窒工程に流入するNO x -N濃度×流入量、
aはNO x -Nを還元するための当量関係にある酸素量の比をベースに実験的に求める係数。」に替えて、
「流入水または廃液を還元剤として用いる場合の還元剤添加量Sを、以下により求めることを特徴とする生物学的窒素除去装置の運転方法。
(3-1)予め、装置内でサンプリングした活性汚泥混合液のASact値(ASact0とする)と、前記標準還元剤のBODact値(BODact0とする)と、内生呼吸状態の該活性汚泥混合液を嫌気状態にして測定した脱窒反応速度(R0とする)と、標準還元剤を添加したときの脱窒反応速度からR0を控除した脱窒反応速度(R1とする)と、を測定しておき、
(3-2)制御中の脱窒工程に流入前または流出後の活性汚泥混合液をサンプリングして、該活性汚泥混合液のASact値(ASact1とする)と、還元剤である流入水または廃液のBODts値(BODts2)及びBODact値(BODact2とする)と、を測定し、
(3-3)内生呼吸による脱窒反応速度R2を、
R2=R0×ASact1/ASact0
の関係から求め、
(3-4)還元剤による脱窒反応速度R3を、
R3=R1×BODact2/BODact0
の関係から求め、
(3-5)脱窒工程の平均滞留時間をHとし、還元剤による可能脱窒反応量Wr0を、
BODts2≦k・R3×Hのときは、
Wr0=BODts2/k
BODts2>k・R3×Hのときは、
Wr0=R3×H
の関係から求め、
(3-6)脱窒工程の処理量をFとし、脱窒工程で除去すべきNOx-N量をWとするとき、還元剤による必要脱窒反応量Wrを、
W<(R2×H+Wr0)のときは、
Wr=(W−R2×H)
W≧((R2×H+Wr0)のときは、
Wr=Wr0
の関係から求め、
(3-7)還元剤の添加量Sを、
S=k・F×Wr/BODts2
の関係から求める。
但し、kは、NOx-Nを還元するための当量関係にある酸素量の理論的または実験的に求めた換算係数。」であることを特徴とする生物学的窒素除去装置の運転方法。 - 請求項1において、
「流入水または廃液を還元剤とするときのBODts値(BODts2)を測定し、
還元剤添加量Sを、次式(A)により求めることを特徴とする生物的脱窒処理装置の運転方法。
S=a・NO x -N負荷量/BODts2・・・・・(A)
ここに、
NO x -N負荷量=脱窒工程に流入するNO x -N濃度×流入量、
aはNO x -Nを還元するための当量関係にある酸素量の比をベースに実験的に求める係数。」に替えて、
「流入水または廃液を還元剤として用いる場合の還元剤添加量Sを、以下により求めることを特徴とする生物学的窒素除去装置の運転方法。
(4-1)予め、生物的脱窒装置からサンプリングした活性汚泥混合液によるASact値(ASact0とする)と、前記標準還元剤のBODact値(BODact0とする)と、内生呼吸状態の該活性汚泥混合液を嫌気状態にして測定した脱窒反応速度(R0)と、該還元剤を添加したときの脱窒反応速度からR0を控除した脱窒反応速度(R1)と、を測定しておき、
(4-2)制御中の脱窒工程に流入する前の活性汚泥混合液をサンプリングして、該活性汚泥混合液のASact値(ASact1とする)と、BODts値(BODts1)と、BODact(BODact1)と、還元剤である流入水または廃液のBODts値(BODts2)及びBODact値(BODact2)と、を測定し、
(4-3)内生呼吸による脱窒反応速度R2を、
R2=R0×ASact1/ASact0
の関係から求め、
(4-4)内生呼吸以外の酸素消費速度による脱窒反応速度R2actを、
R2act=R1×BODact1/BODact0
の関係から求め、
(4-5)還元剤による脱窒反応速度R3を、
R3=R1×BODact2/BODact0
の関係から求め、
(4-6)脱窒工程の平均滞留時間をHとし、脱窒工程の処理量をFとするとき、kをNOx-Nを還元するための当量関係にある酸素量の理論的または実験的に求めた換算係数として、内生呼吸以外の酸素消費速度による脱窒反応量W0を、
BODts1≦k・R2act×Hのときは、
W0=BODts1/k
BODts1>k・R2act×Hのときは、
W0=R2act×H
の関係から求め、
(4-7)還元剤による可能脱窒反応量Wr0を、
BODts2≦k・R3×Hのときは、
Wr0=BODts2/k
BODts2>k・R3×Hのときは、
Wr0=R3×H
の関係から求め、
(4-8)脱窒工程で除去すべきNOx-N量をWとするとき、
還元剤による必要脱窒反応量Wrを、
W<(R2×H+W0+Wr0)のときは、
Wr=W−(R2×H+W0)
W≧(R2×H+W0+Wr0)のときは、
Wr=Wr0
の関係から求め、
(4-9)脱窒反応量から還元剤の添加量Sを、
S=k・F×Wr/BODts2
の関係から求める。」であることを特徴とする生物学的窒素除去装置の運転方法。
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