JP3301428B2 - 廃水処理試験方法 - Google Patents

廃水処理試験方法

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JP3301428B2 JP2000065799A JP2000065799A JP3301428B2 JP 3301428 B2 JP3301428 B2 JP 3301428B2 JP 2000065799 A JP2000065799 A JP 2000065799A JP 2000065799 A JP2000065799 A JP 2000065799A JP 3301428 B2 JP3301428 B2 JP 3301428B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は活性汚泥処理法およ
び生物学的脱窒素法の運転状態を管理する試験方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】廃水処理の方法として、好気性微生物を
利用した生物処理法は広く一般的に用いられる廃水処理
法である。その代表的なプロセスとして活性汚泥処理法
がある。その処理原理は、好気性微生物が廃水中の汚濁
物を捕捉し酸素の供給を得て分解することにより生物活
動するためのエネルギーを得たり、廃水中の汚濁物を分
解、合成して自己の生体を維持、増殖する自然界の生物
活動を高度に濃縮することにより廃水を浄化することで
ある。
【0003】活性汚泥処理装置は一般的には微生物に酸
素を供給して汚濁物を分解する曝気槽と処理された液と
微生物を分離する沈殿槽から構成される。実際の活性汚
泥処理装置を安定に操業するうえで、この沈殿槽での汚
泥の沈降不良により、汚泥が処理水とともに流出するト
ラブルが活性汚泥処理装置の運転に非常に大きな問題で
ある。汚泥の沈降性不良の原因は大別して以下の3つが
ある。 活性汚泥の生物種に糸状菌が優勢となり、汚泥の沈降
性が悪くなる。 処理水中の硝酸イオンや亜硝酸イオンが沈殿槽で脱窒
菌により窒素ガスに還元され、発生した窒素ガス等によ
り、汚泥が浮上する。 沈殿槽内で酸欠により、汚泥が腐敗して発生するメタ
ンガス等により汚泥が浮上する。 これらの発生原因は活性汚泥の運転状況により異
なるが、浮上の程度が大きくなると活性汚泥処理装置の
操業が不能になってしまう重大なトラブルである。
【0004】上記のうちは曝気空気量不足や沈殿槽内
の汚泥掻き寄せ機の不良等原因が単純なため対策は比較
的容易であるが、は曝気空気量等の運転条件にもよる
が、原水中の汚濁成分による要因が大きく、原因の除去
が難しいため根本的な対策は容易ではない。は発生の
メカニズムは後述のように解明されており、生物学的脱
窒素法ではこのメカニズムを利用して廃水中の窒素分を
除去しているが、活性汚泥処理や生物学的脱窒素法の運
転管理において、簡便に発生を予知する手法がなく、し
かもと異なりの現象は急速に発生するため活性汚泥
法においては対策が遅れ被害が甚大となる傾向がある。
活性汚泥処理法はいろいろな廃液に適用でき、処理能
力、処理性能、処理コスト等他の廃水処理法と比較し、
たいへん有用な方法であるが、汚泥の浮上防止管理が難
しいのが最大の難点といってよい。
【0005】の発生メカニズムは以下のとおりであ
る。微生物が活動していくうえには窒素やリンが必要で
ある。一般に廃水中の組成割合はBOD:N:P=100:
5:1がよいとされており、原水中にNが含まれていない
場合はN源を補給する。原水中のNは分子構造のなかで
さまざまな形態で含まれているが、単純に表現すれば微
生物はBODの分解過程でNをアンモニア性の窒素に変
える。さらにアンモニア性窒素は好気状態で硝化菌によ
り次式のように硝酸イオンや亜硝酸イオンに変える。 (1) (2)式は硝化反応とよばれる。硝酸イオンや亜硝酸
イオンはさらに嫌気状態で脱窒素菌により次式のように
窒素ガスに還元される。 (3) (4)式は脱窒素反応とよばれる。廃水中の窒素はBO
D:N:P=100:5:1程度であれば生体に取り込まれるた
め、(3)(4)式の反応は少ないが、余剰の窒素があり、
かつその他の条件が整えば(3)(4)式の反応が進む。(3)
(4)式は活性汚泥法では通常沈殿槽内で起こるため発生
する窒素ガスや炭酸ガスにより汚泥が浮上するトラブル
となる。
【0006】硝化反応が進む条件は、活性汚泥中に硝化
菌が存在し、廃水中の溶存酸素濃度がある状態であれ
ば、BODの処理とともに進行するが、特にBOD処理
の終盤において活発に進行する。これは硝化菌の増殖速
度が一般のBOD分解菌より小さいうえ、アンモニア性
窒素を硝酸性窒素にかえるには、まず廃液中の窒素をB
OD処理でアンモニア性窒素にかえる必要があるためで
ある。
【0007】脱窒素反応は活性汚泥中に脱窒素菌が存在
し、嫌気状態で硝酸を還元するため分解容易な有機物と
pHを適切に保つための酸が必要である。(3)(4)式では
有機物としてメタノールを使用した場合の反応式であ
る。また反応速度は溶存酸素濃度や温度やpHの条件の
他、有機物の種類や有機物と窒素の割合、脱窒素菌の活
性、濃度等により変化する。
【0008】硝化脱窒素による汚泥の浮上トラブルは廃
水中に窒素分を多量に含む廃水を処理する場合には、普
通に起こりうる現象で、上記の条件さえ整えばいつでも
発生する危険性がある。典型的な発生ケースは、窒素分
の高い廃水が流入し、曝気槽内が十分に高い溶存酸素濃
度に保たれBODの処理は良好に維持されて廃水中の窒
素分が硝酸イオンに酸化されて曝気槽および沈殿槽内に
蓄積されたあと、曝気槽に高いBOD濃度の廃水が流入
して曝気槽で処理しきれずに沈殿槽がBOD物質で汚染
された状態になると、脱窒素反応が急激に進行し、発生
したガスで汚泥が浮上する。激しい場合、沈殿槽のオー
バフロー堰から汚泥が流出するとともに沈殿槽の表面は
浮上した汚泥で厚く一面覆われ、まったく操業不可とな
る。廃水中に窒素を含む廃水は、アミノ酸を含む食品廃
水をはじめ多くの廃水がある。
【0009】また生物学的脱窒素法は(1)〜(4)式を積極
的にとりいれて廃水中の窒素分を除去する方法であり、
活性汚泥法がBOD処理をおこなう曝気槽と固液分離を
おこなう沈殿槽から構成されるのに対し、基本的には曝
気を十分おこなってBODの処理と硝化反応を進行させ
る硝化槽と嫌気状態にして脱窒素反応を進行させる脱窒
素槽と汚泥と処理水を沈降分離する沈殿槽から構成され
る。装置構成は嫌気槽→硝化槽→嫌気槽→再曝気槽→沈
殿槽が一般的であるが、主として脱窒素反応に必要な有
機物の供給法やpHのコントロール法の違いでいろいろ
なバリエーションがある。生物学的脱窒素法では沈殿槽
にいく前に嫌気槽で窒素を除去し、再曝気槽で気泡を除
去して汚泥浮上をさせないようにしている。
【0010】硝化脱窒素反応は活性汚泥においてはトラ
ブルとなり、生物学的脱窒素法では反応をおこさせるこ
とが目的であるが、両者とも硝化脱窒素反応の反応の起
こりやすさを管理する必要がある。しかしながら活性汚
泥法においては通常はシリンダーでの汚泥の沈降性を測
定するSV30を測定するくらいなものであり、汚泥浮上
トラブルの危険性大の廃水でも時々原水中の窒素分の分
析、沈殿槽に流入する処理水の硝酸イオン、沈殿槽流出
処理水の硝酸イオンを測定する程度である。生物学的脱
窒素法でも同程度である。これは廃水中の窒素分やアン
モニア態窒素、硝酸イオンの分析が自動測定器は大変高
価で維持に手間がかかったり、簡易測定では精度に問題
があるなど、加えて廃水中の濃度はいろいろな要素で変
化するため、測定頻度を多くしないと実効のあるデータ
がとれないため、とても管理できないためである。この
ようにニーズはあるものの硝化脱窒素反応は十分に管理
されているとはとてもいえない状況である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本特許は活性汚泥にお
いては硝化脱窒素による汚泥浮上トラブルの危険性を予
知し、生物学的脱窒素法においては窒素除去が正常にお
こなわれているか否かを判断する手段として、混合液中
の硝酸イオンや亜硝酸イオン濃度を計量するか脱窒素反
応の反応量を評価する廃水処理試験方法を提供するもの
である。
【0012】
【課題を解決するための手段】好気性微生物を利用する
廃水処理での処理試験方法において、活性汚泥と廃液を
含む混合液を曝気装置で曝気したときに、該混合液に酸
素が溶解する速度は該混合液の飽和溶存酸素濃度とその
時点の該混合液の溶存酸素濃度の差を推進力とするとし
たときの総括物質移動係数をKabsの記号で表したとき、
該混合液を十分長く曝気し、溶存酸素濃度がほぼ一定に
なった時点の値highfinalDOを取得し、該混合液中に分
解容易なBOD物質を設定量添加して該曝気装置で曝気
開始時点の溶存酸素濃度DO1からhighfinalDOになるまで
曝気したときに得られる曝気経過時間tによる溶存酸素
濃度DOの変化曲線と曝気開始同時刻で同初期値DO1から
曝気をスタートしたとしたとき DO=highfinalDO-(highfinalDO-DO1)exp(-Kabs・t) の計算式で計算される仮想の溶存酸素濃度変化曲線で囲
まれる面積S1にKabsを掛けた値BOD1と、分解容易な
BOD物質を設定量添加したあと一定時間外部からの酸
素の供給を断って混合液を嫌気状態にしたあと曝気開始
時点の溶存酸素濃度DO2から曝気を開始して得られる溶
存酸素の変化曲線と曝気開始同時刻で同初期値DO2から
曝気をスタートしたとしたとき DO=highfinalDO-(highfinalDO-DO2)exp(-Kabs・t) の計算式で計算される仮想の溶存酸素濃度変化曲線で囲
まれる面積S2にKabsを掛けた値BOD2を求め、BOD
1とBOD2の差から混合液中の硝酸イオンや亜硝酸イオ
ン濃度を計量、または脱窒素反応の反応量を計量する。
【0013】
【発明の実施の形態】
【実施例】はじめに本方法の原理について簡単にのべ
る。曝気槽内の混合液をサンプリングして本方法の曝気
装置で曝気していくと廃水中の溶存酸素濃度DOは曝気経
過時間tとともに上昇していくが、その変化は(5)式で
表される。 ここにDOsatは飽和酸素濃度[mg/l]、DOは曝気槽内酸素
濃度[mg/l]、Kabsは総括物質移動係数[1/min]、ASactは
活性汚泥が呼吸で使う酸素消費速度[mg/l/min]、BODac
tは活性汚泥がBOD成分の分解で使う酸素消費速度[mg
/l/min]である。(5)式右辺第1項は曝気装置から酸素供
給速度であり、第2項は活性汚泥が呼吸およびBODの
分解で使う酸素消費速度である。
【0014】ASactは汚泥の基礎呼吸による酸素の消費
速度である。基礎呼吸なのでBOD成分とは直接無関係
で短時間内ではほとんど一定である。ASactは概ねDO値
が0.5mg/l以上あれば、ASactはDO値に無関係に一定であ
ることが知られており、またこのことはBOD成分がほ
とんど0mg/lの混合液を酸素の供給を断った状態で溶存
酸素濃度が高い状態からDOの変化を測定すると直線状に
減少していくことで容易に実証できる。
【0015】BODactは汚泥がBOD成分を分解している
ときに使う酸素の消費速度である。BODactは汚泥がその
物質に馴化しているかどうか、汚泥の状態、水温、p
H、塩濃度等の棲息環境などで変化する。微生物がBO
D成分を分解する場合、反応はBOD成分に対応した酵
素等によりおこなわれ、その成分ごとに固有の反応速度
を示す。一般に有機物が微生物により最終的に水と炭酸
ガスに分解される過程では、いくつかの中間生成物を経
由し、それぞれの中間生成物の分解にはそれぞれの反応
速度がある。このため廃水処理における原水のように多
様なBOD成分を含む場合には反応過程が複雑に重複す
るため、BOD成分と1対1に特定できにくいが、廃液
の組成が少ない場合は、各成分毎の分解速度に対応した
階段状の分解曲線となり、容易にBOD成分と1対1に
特定できる。
【0016】曝気過程でBODactが変化する場合には(5)
式は簡単には積分できないが、BOD成分が殆ど0mg/l
の混合液の場合、(5)式のBODactは殆ど0となり(5)式は
以下のようになる ASactは前述のごとく概ねDO>0.5mg/lではDOに無関係に
一定であるから概ねDO>0.5mg/lの範囲で(6)式は容易に
積分でき(7)式で表される。 DO=α−(α−DO0)exp(−Kabs・t) (7)式 但しα=DOsat−ASact/Kabs DO0は曝気を開始したときの初期値である。また(7)式
は曝気経過時間tが十分な大きさになれば右辺第2項は
無視できるから DO=α=DOsat−ASact/Kabs (8)式 の値で一定となり、この値をhighfinalDOで表せば、hig
hfinalDOはBOD成分が殆ど0mg/lの混合液を曝気した
場合、最終的に到達するDO値と定義でき、(8)式は DO=highfinalDO−(highfinalDO−DO0)exp(−Kabs・t) (9)式 と書き直せる。(9)式によるDOの変化は図1の1の点線
に示すような曲線となる。
【0017】一方混合液中にBOD成分が存在する場
合、BODactは無視できない値をもち、さらにBODactの値
は主として分解対象のBOD成分が変わるため、曝気経
過時間tとともに大きな値から小さな値へ変化し、最終
的に分解できるBOD成分がなくなればBODactはほとん
ど0になる変化をする。このため(5)式は単純に(9)式の
ように積分できないが、DOの変化は図1の2の実線の曲
線で示すような曲線となる。この曲線はメタノールや酢
酸のような単純なBOD成分の場合には、分解中はDOは
酸素供給速度とASact+BODactの酸素消費速度でバラン
スする低いレベルで一定となり、分解が終了すると、速
やかにhighfinalDOで一定となる図1の2の実線のよう
な典型的な2段曲線となる。
【0018】今、曝気を開始したときのDOの初期値DO0
を同じとし、混合液中のBOD成分が殆ど0mg/lの混合
液を曝気したときの(9)式で表されるDO変化曲線を図1
の1の点線で表し、混合液中のBOD成分が存在する場
合の混合液を曝気した場合のDO変化曲線を図1の2の実
線で表した場合、各曝気経過時間における、点線と実線
の値の差はその時点における、BODを分解するに使用
される酸素消費速度による差を表し、この差を曝気経過
時間tで積分した値は両曲線で囲まれた面積Sに相当
し、この値にKabsを掛けた値は微生物がBOD成分を分
解するために使用する酸素量に相当する。この値はJI
S法で定められたBODの測定法とは異なるが、微生物
が分解するに要する酸素量を測定するという測定原理そ
のものは同じである。JIS法のBOD測定法は5日間
という長時間を要するが、本測定法はすでに十分馴養さ
れた汚泥を使用し、且つ数千mg/lという高濃度の汚泥を
使用するため数10分程度の短時間でJIS法のBODと
きわめて相関性の高い値が測定可能である。本測定原理
そのものは特願平9-342261や特願平10-119919や特願200
0-48412のなかですでに詳しく記述されているが、本発
明は上記の原理を別の角度から活用した方法である。
【0019】以下に具体的な操作法を述べる。曝気槽の
中からサンプリングした混合液のBODが殆ど0mg/lの
混合液、またはサンプリングした当初はBOD成分が残
っていても測定装置内で十分曝気をしてBODが殆ど0m
g/lになった混合液に、分解容易な有機物を規定濃度含
む液(以下BOD基準液と称す)を設定量該混合液に添
加混合したのち、設定時間だけ外部からの酸素の供給を
断って混合液を嫌気状態に保ち、その後該混合液を測定
装置の曝気装置で曝気し、その間のDOの変化曲線を測定
する。混合液中に硝酸イオンが存在し、活性汚泥中に脱
窒素菌が活動できる環境があれば、嫌気期間中に脱窒素
菌は(3)(4)式で表されるように硝酸イオンや亜硝酸イオ
ンをBOD基準液中の有機物を使って窒素に還元する。
このため嫌気期間後曝気して上昇するDO変化曲線から前
述の原理に基づく計算でBOD量を測定した値をBOD
2とし、嫌気期間をおかずにBOD基準液を添加後すぐ
に曝気を開始したDO変化曲線から計算したBOD量をB
OD1とすると、BOD2はBOD1より小さな値とな
る。BOD1−BOD2は硝酸イオン、亜硝酸イオンの還
元で使用される分と脱窒素菌の増殖に使用される分に相
当する。またその有機物の消費量はBOD基準液の成分
や濃度を一定とすれば硝酸イオン量や脱窒素菌の活力や
濃度による。したがってBOD1とBOD2を比較するこ
とにより、混合液中の硝酸イオンや亜硝酸イオン濃度を
計量でき、脱窒素反応の反応量を評価できる。
【0020】ここにBOD が殆ど0の混合液とは、BODa
ctが小さな値で測定時間内ではほとんど変化しない廃液
という意味であり、JIS法のBODのように長時間で
測定した場合、長時間かけてゆっくりと分解するごく小
さな分解速度をもつBOD成分があってもBOD1とB
OD2の両者に等しく影響するため計算上誤差は小さく
殆ど的に支障ない。
【0021】BOD基準液の有機物はテストに使用する
活性汚泥が十分馴化している原水中に含まれる最も分解
しやすい有機物が適用できるが、一般的には(3)(4)式に
示すメタノールやエタノールや酢酸等が使用できる。
【0022】次に上記の測定原理の基づく具体的な測定
法の一例を示す。この測定法は運転中の活性汚泥装置ま
たは生物学的脱窒素装置に設置する運転管理装置として
使用することを想定したものであり以下測定法1と称
す。図2はこの様子を示した図である。測定方法はStep
1とStep3の2つの工程からなり、Step3はさらにStep3-
1、Step3-2、Step3-3の3つのサブ工程からなる。Step1
とStep3を1サイクルとし、このサイクルを繰り返す。St
ep1はサンプリングポンプで曝気槽内の混合液を装置内
にくみ上げ、装置内を新たなサンプル液で十分置換する
工程である。Step3ではStep3-1工程としてまずサンプリ
ングした混合液を曝気装置で曝気し、混合液中のBOD
成分を分解して溶存酸素濃度がhighfinalDOになるまで
曝気を続ける。溶存酸素濃度がhighfinalDOになった時
点でStep3-2工程に移行する。図2の3の実線はこのと
きの溶存酸素濃度変化曲線を示す。Step3-2ではまず先
頭で混合液にBOD基準液を設定量添加して曝気する。
溶存酸素濃度はhighfinalDOからスタートしBOD基準
液中のBOD成分を分解するためhighfinalDO−BODact/
Kabsに相当する値に向かって低下し、BOD基準液中の
BOD成分を分解し終わるとhighfinalDOに向かって上
昇し、highfinalDOで一定となった時点でStep3-3工程に
移行する。図2の5の実線はこのときの溶存酸素濃度変
化曲線を示す。Step3-3ではまず先頭で混合液にBOD
基準液をStep3-2工程と同量添加して曝気を停止する。
分解容易なBOD成分が添加され外部からの酸素の供給
がないため溶存酸素濃度は急激に低下し殆ど0mg/lとな
り嫌気状態になる。この状態で一定時間経過後再び曝気
を開始し、混合液中の残りのBOD成分が分解され溶存
酸素濃度がhighfinalDOになったらStep3-3を終了し、St
ep3全体が終了する。図2の7の実線はこのときの溶存
酸素濃度変化曲線を示す。Step3-1は曝気により予め混
合液中のBOD成分を分解しておく工程であり、図2の
3の実線とBODが殆ど0mg/lの仮想溶存酸素濃度曲線
4で囲まれた面積Sから混合液のBODが計算できる。
Step3-2工程のBOD基準液を添加して曝気する溶存酸
素濃度変化曲線5とBODが殆ど0mg/lの仮想溶存酸素
濃度曲線6で囲まれた面積S1からBOD1の値が求ま
り、Step3-3工程のBOD基準液を添加して嫌気状態を
作った後曝気する溶存酸素変化曲線7とBODが殆ど0m
g/lの仮想溶存酸素濃度曲線8で囲まれた面積S2からB
OD2の値が求まる。より正確にはBOD2の値にはStep
3-3工程スタート時のhighfinalDOから嫌気状態になるま
での溶存酸素濃度差もBODの好気性微生物の酸素によ
る分解量として曝気後の溶存酸素変化曲線から求めた値
に若干の補正量として加算する。BOD1-BOD2の差
が大きければ、(3)(4)式の反応が活発におこなわれたこ
とになり、差が小さければ反応は鈍かったことになる。
【0023】上記例ではサンプリングした混合液のBO
D成分を分解し、溶存酸素濃度がhighfinalDOになった
時点で引き続き、BOD1を求める測定に移行している
ため、DO1はhighfinalDOと等しい値になるため、仮想溶
存酸素濃度曲線6はhighfinalDOで一定の直線となる。
またBOD2を求める工程では曝気は嫌気状態からスタ
ートするため、通常DO2は0mg/lとなる。このため仮想溶
存酸素濃度曲線8を計算する(9)式は、厳密には成り
立たないが、BODが殆ど0mg/lの廃液の場合はきわめ
て短時間でASactが一定となる概ね0.5mg/l以上にDOは上
昇するため、BODが殆ど0mg/lの仮想廃液に初めから
(9)式を適用しても誤差は小さく、実用上支障ない。
【0024】Step3-1工程は混合液中のBODを予め殆
ど0mg/lにする操作であるが、混合液中のBODが既に
殆ど0mg/lに近い場合や別の方法でBOD値が判明して
おり、測定期間中の変化の程度がわかっているのであれ
ば、上記測定値から引き算で求めることができ省略が可
能である。またStep3-2工程とStep3-3工程を逆にしても
目的は同様に達成できる。
【0025】測定法1では毎サイクル添加BOD基準液
のBODを測定するStep3-2工程をいれているが、活性
汚泥の活性が安定している場合は毎回同じ値を示すた
め、全体の測定時間を短縮する目的で毎サイクルでなく
2〜3サイクルに一度に省略することが可能である。しか
し活性汚泥はいつ汚泥の活性が変化するか予想しがたい
ため、連続して何サイクルもStep3-2工程を省略するこ
とは好ましくない。
【0026】次に上記の測定法1を具体化する装置例を
示す。図3には本発明による装置を活性汚泥処理装置に
設置する場合の具体例を示す。9は曝気槽、10は沈殿
槽である。11は本発明による装置の制御部である。該
制御部の主装置はパソコンである。12は本発明による
装置の測定部である。13は該検査装置部の一部である
サンプリングポンプである。本発明による装置は制御部
からの指令でサンプリングポンプで曝気槽から混合液を
くみ上げ、測定部で実施例のStep1からStep3までの検査
を行い、そのDOの変化データを制御部に伝送して制御部
で解析する。サンプリングポンプは標準活性汚泥の場
合、通常曝気槽出口付近に設置する。曝気槽出口付近で
は廃液中のBODはすでに処理されているためStep3-1
工程が短時間ですむため測定時間の短縮ができるためで
ある。また硝化反応はBOD処理の終盤において活発に
進行するため曝気槽出口付近が適当である。また生物学
的脱窒素法においては、同様の理由により硝化槽の出口
付近が適当である。次に上記の測定法1を具体化する装
置例を示す。
【0027】図4は本発明を具体化する装置例を示すフ
ローシートである。14は溶存酸素計である。15は測
定容器であり該容器の混合液に溶存酸素計のセンサーを
浸析する。該容器の形状は液面から酸素が溶解して測定
誤差が生じないよう液の入口出口の配置や空気溜まりが
生じないようにする。13はサンプリングポンプであ
る。16は攪拌ポンプ、17は曝気容器である。18は
曝気電磁弁、19はアスピレータ、20は空気流量調節
バルブ、21はオーバーフロー管である。Step1では1
3のサンプリングポンプが作動し、17、15を経由し
て21のオーバーフロー管から排出される。17から2
0はStep3で再曝気する際使用する系統で18の曝気電
磁弁が開くことによる水流で19のアスピレータから空
気を吸引撹拌し酸素を溶解し、曝気容器内で気泡分離を
する。22はBOD基準液タンク、23はBOD基準液
添加ポンプである。22から23はStep3で設定量のB
OD物質を添加する際使用する。16の攪拌ポンプは、
溶存酸素計のセンサー付近の流速を常時確保するため
と、Step3で曝気電磁弁が開のときアスピレータへの循
環水流を得るために使用する。24は温度計で測定値は
コントローラを介して11の制御部と結ばれ、測定時間
中はサンプリングしたときの混合液の温度で装置内が一
定になるよう25のヒーターと26の冷却管で制御され
る。本発明の検査操作の動作、測定データの解析、運転
条件の指令、警報等はすべて11の制御部のコンピュー
タが一元管理する。本発明で使用するコンピュータは通
常のパーソナルコンピュータが使用でき、本実施例にお
いてはIBM(株)製Aptivaを使用し、拡張I/
Oスロットにアナログ→デジタル、デジタル→アナログ
変換ボードとして(株)インターフェース製IBX-3133、
IBX-3325を使用し、ポンプ等の駆動指令用のデジタル出
力ボードとして(株)インターフェース製IBX-2727を使
用した。27と28は制御部および測定部端子盤であ
る。ポンプ、電磁弁の駆動はコンピュータからデジタル
出力ボードを経由しての信号でリレーを作動させ、Step
1からStep3まで必要なタイミングで機器類をON−OF
Fさせる。ちなみにStep1工程は3分程度、Step3-1工程
は混合液中のBOD量により可変であるが曝気槽出口付
近の混合液であるので通常10分から60分程度である。St
ep3-2工程は通常20分程度、Step3-3工程は嫌気状態が10
分から20分程度、曝気時間は15分で合計25分から35分程
度が適当である。29は溶存酸素計の変換器である。1
4の溶存酸素計の信号は28の変換器で4mA〜20mAのア
ナログ電流信号に変換され11のコンピュータのアナロ
グ→デジタル変換ボードで変換されてコンピュータに取
り込まれる。コンピュータは演算の結果、BOD1とB
OD2の比較結果を硝酸イオン濃度または脱窒素反応の
反応量としてコンピュータ画面に表示出力する。本発明
を実現するハードは特願平8-205359「廃水処理制御方法
及び装置」、特願平10-119919「廃水処理制御方法」で
示したものと基本的には同じである。本発明は該ハード
を制御する測定法と得られた溶存酸素濃度の変化データ
を前述した方法での計算解析表示をコンピュータソフト
で実現する。
【0028】上記装置例で測定した結果の一例を以下に
示す。装置内の混合液の容量2300ccに対し4.5cc/lのメ
タノールを成分とするBOD基準液をStep3-2の先頭とS
tep3-3の先頭で各14cc添加して、Step3-2の曝気時間は2
2分間、Step3-3は嫌気時間15分、再曝気時間15分の条件
で、Kabs=0.6[1/min]、highfinalDO=6.0[mg/l]で計算
した結果、BOD1=20mg/lに対し、BOD2=5mg/lと
なり、脱窒素反応で分解されたBOD量は15mg/lとなっ
た。このBOD量はメタノールに換算すると16.4mg/lと
なり、この反応が全て(4)式の反応でおこなわれたとす
ると、15分間で38mg/lの硝酸イオンが脱窒素反応で窒素
ガスに還元されたことになる。この結果は活性汚泥処理
装置においては汚泥浮上の危険性大で要注意警報発令レ
ベルであり、生物学的脱窒素法においては正常と判断さ
れる。
【0029】操作や計算に使用するhighfinalDOとASact
とKabsの値は予めコンピュータの記憶装置に格納してお
くが、これらの値は活性汚泥の性状や温度等の条件によ
り若干変化するものであり、時々測定しなおす必要があ
り、通常以下のようにして求める。図5はこの様子を示
す図である。Step1でサンプリングし、Step3で何も添加
せずに曝気をおこない曝気時間を十分長くとるとやがて
溶存酸素濃度が高位で一定となる。その時の値がhighfi
nalDOである。図5のStep3曝気期間はこの様子を示す。
その時点で曝気を停止し、外からの酸素の供給を断って
溶存酸素濃度の減少速度を測定すればその値はASactに
なる。図5のStep3曝気停止期間はこの様子を示す。さ
らに時間が経過し、減少速度が直線的に減少する範囲で
highfinalDOより十分溶存酸素濃度が低くなった時点か
ら曝気を再開し、溶存酸素濃度の上昇曲線を測定する。
図5の30がその結果である。曝気を再開したときの溶
存酸素濃度を初期値DO0として(9)式でKabsを変化させ
て、30の測定曲線と最も近似できた値がKabsとなる。
図5のStep3再曝気期間はこの様子を示す。
【0030】上記装置例では運転中の活性汚泥装置また
は生物学的脱窒素装置に設置する運転管理装置として示
してきたが、Step1工程を単純にサンプリング容器に混
合液をいれる操作に置き換えることで実験室の分析解析
機器としても使えることはいうまでもない。
【0031】本発明の方法を上記装置例や実験室の分析
解析機器として脱窒素の反応量を評価する装置として十
分効果を発揮できるが、さらに本発明の方法を本発明を
特願平8-205359、特願平10-119919で示した3StepDO制御
法に本機能を組み込めば活性汚泥法や生物学的脱窒素法
の処理水のBOD、汚泥の活性度も短時間で同時にコン
ピュータ画面に表現でき強力な運転管理機器となる。3S
tepDO制御法はStep1で曝気槽から混合液をサンプリング
し、Step2でサンプリングを停止し外部からの酸素の供
給を断って溶存酸素濃度の減少速度βを測定し、βが予
め設定した値より大きい場合Step3で何も添加せずに曝
気をおこない上昇する溶存酸素濃度の変化曲線から本発
明と同様の原理で混合液のBODを計算する。またβが
予め設定した値より小さい場合には、本来容易に分解で
きるBOD成分を含むBOD基準液を設定量添加して曝
気をおこない上昇する溶存酸素濃度の変化曲線から汚泥
活性度を測定する。
【0032】図6は3StepDO制御法の1パターンであるSt
ep3(BOD添加)工程となる場合に本発明を組み込ん
だときのDO変化を示す図である。3StepDO制御法のStep1
は本発明の測定法1のStep1と同様の操作である。また3
StepDO制御法で使用するBOD基準液は容易に分解でき
るBOD成分からできているので、本発明の測定法1の
BOD基準液にも使える。3StepDO制御法はStep2で図6
の31のDO変化曲線から傾きの大きさβを測定し、その
大小でStep3の測定法を選択している。すなわちβが設
定値より小さい場合はBOD基準液を添加して曝気をお
こなうStep3(BOD添加)工程となる。この操作は本発
明の測定法1のStep3-2工程と同じであり、図6の32
の測定曲線と33の仮想溶存酸素濃度曲線で囲まれた面
積S1からBOD1が計算できる。したがって3StepDO制
御法のStep3(BOD添加)工程で汚泥の活性度が正常と
判断された場合、引き続き本発明の測定法1のStep3-3
工程をおこなうと測定時間に無駄がなく汚泥活性度と硝
化脱窒素反応性が同時に測定でき好都合である。βは曝
気停止期間のDOの減少速度であるから(5)式からβ=A
Sact+BODactであり、BOD添加をおこなう設定値にはB
ODactが若干ある状態なので上記のBOD1には若干量の
廃液のBODが上乗せされるが、BODactは小さな値であ
るため測定時間内の変化量は小さいため引き続き本発明
の測定法1のStep3-3工程で測定されるBOD2にも同様
に上乗せされ、BOD1とBOD2の引き算においては相
殺されるので誤差は小さく実用上支障ないレベルとな
る。
【0033】3StepDO制御法でβが大きい場合、混合液
中の未分解のBOD成分が多い証拠であるので、何も添
加せず曝気をおこない混合液中のBODを測定する。こ
の操作は本発明の測定法1のStep3-1工程に相当するの
で、溶存酸素濃度がhighfinalDOになったのち本発明の
測定法1のStep3-2工程、Step3-3工程をおこなえば、β
の大きい場合でも硝化脱窒素反応性を評価できる。ただ
し、βがおおきい場合、溶存酸素濃度がhighfinalDOに
なるまで長時間を要する場合があり、毎回この操作をお
こなうとBOD処理状態の変化の把握に支障をきたす恐
れがでる。βが小さい時の測定で脱窒素反応で汚泥が浮
上する危険性の高いときのみβが大きい場合でも本発明
の測定法1を実施するとか、コンピュータ上のオプショ
ンボタンで選択可能にするほうが実際的である。生物学
的脱窒素法においては、BODの処理と窒素の同時除去
を目的とし、窒素の除去率を左右する重要因子のひとつ
は廃液中の窒素分をアンモニア性窒素を経由して硝酸性
窒素にかえる硝化工程であり、この反応ではまず十分B
OD成分を分解する必要がある。したがってβが大きい
場合はBODの処理が不十分である証拠で当然窒素分の
除去率も低下するので、βが大きい場合は前述のように
BOD処理状態の変化の把握に重点をおき、βが小さい
場合に重点的に本発明の方法を実施するほうが、全体の
測定の効率化となる。
【0034】
【発明の効果】本発明は活性汚泥処理装置や生物学的脱
窒素法に適用でき、活性汚泥法にあっては沈殿槽での脱
窒素のよる汚泥浮上というトラブルの危険性の予知を定
量的に表現でき、生物学的脱窒素法にあっては正常に脱
窒素反応がおこなわれているか否かの判定が定量的に表
現でき、それぞれの運転管理に役にたつ。また本発明を
特願平8-205359、特願平10-119919で示した3StepDO制御
法に本機能を組み込めば、活性汚泥法や物学的脱窒素法
の処理水のBOD、汚泥の健康状態も短時間で同時にコ
ンピュータ画面に表現でき運転管理に一層の効果とな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本方式の原理を説明する図である。
【図2】本発明の測定方法を説明する図である。
【図3】本発明による装置と活性汚泥処理装置の関係を
示す図である。
【図4】本発明の装置例を説明するフローシートであ
る。
【図5】KabsとhighfinalDOの測定法を説明する図であ
る。
【図6】3StepDO制御法に本発明による方法を組み込ん
だ例を説明する図である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】好気性微生物を利用する廃水処理での処理
    試験方法において、活性汚泥と廃液を含む混合液を曝気
    装置で曝気したときに、該混合液に酸素が溶解する速度
    は該混合液の飽和溶存酸素濃度とその時点の該混合液の
    溶存酸素濃度の差を推進力とするとしたときの総括物質
    移動係数をKabsの記号で表したとき、該混合液を十分長
    く曝気し、溶存酸素濃度がほぼ一定になった時点の値
    (以下highfinalDOと称す)を取得し、該混合液中に分
    解容易なBOD物質を設定量添加して該曝気装置で曝気
    開始時点の溶存酸素濃度(以下DO1と略す)からhighfin
    alDOになるまで曝気したときに得られる曝気経過時間
    (以下tの記号で表す)による溶存酸素濃度(以下DOの
    記号で表す)の変化曲線と曝気開始同時刻で同初期値DO
    1から曝気をスタートしたとしたとき DO=highfinalDO-(highfinalDO-DO1)exp(-Kabs・t) の計算式で計算される仮想の溶存酸素濃度変化曲線で囲
    まれる面積S1にKabsを掛けた値(以下BOD1と称す)
    と、分解容易なBOD物質を設定量添加したあと一定時
    間外部からの酸素の供給を断って混合液を嫌気状態にし
    たあと曝気開始時点の溶存酸素濃度(以下DO2と略す)
    から曝気を開始して得られる溶存酸素の変化曲線と曝気
    開始同時刻で同初期値DO2から曝気をスタートしたとし
    たとき DO=highfinalDO-(highfinalDO-DO2)exp(-Kabs・t) の計算式で計算される仮想の溶存酸素濃度変化曲線で囲
    まれる面積S2にKabsを掛けた値(以下BOD2と称す)
    を求め、BOD1とBOD2の差から混合液中の硝酸イオ
    ンや亜硝酸イオン濃度を計量、または脱窒素反応の反応
    量を計量する試験方法。
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