JP3585905B2 - 活性汚泥の活性および廃水の分解性の試験方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は活性汚泥処理や好気性微生物を利用する廃水処理での微生物の活性や廃水の分解性をテストする廃水処理試験方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
活性汚泥処理は最も汎用的な有機物汚濁廃水の処理法である。活性汚泥を代表とする好気性微生物を利用した廃水処理の基本プロセスは好気性微生物を高濃度に含む活性汚泥に廃水を入れた混合液を曝気することにより混合液中に溶解した溶存酸素を利用して微生物が廃水中の汚濁物を分解するプロセスである。一般に廃水中には種々の汚濁物があり、その汚濁物を分解するには多様な微生物が関与している。好気性微生物処理の最大の特徴は種々の汚濁物に対応した多様な微生物を馴化という自然界の生物活動を高度に濃縮することで、効率よく様々な廃水に対応できることであるが、反面複雑な生物活動のため原因→結果の因果関係の定量的把握は極めて難しい。このため、活性汚泥処理は沈殿槽からの処理水は確かに浄化されるが、今現在曝気槽内でどのような状態で処理がおこなわれ、それが正常なものであるかどうか、定量的にはほとんどわからない状態で運転されているのが現状である。活性汚泥処理をブラックボックス状態にしている最大の原因は運転中の原廃水や曝気槽内や処理水のBOD(生物化学的酸素消費量)が迅速に測定できないこと、および活性汚泥の廃水を分解する能力(以降活性と称す)を定量的に把握する手段がないことである。
【0003】
現在一般的に行われている運転管理法は原廃水や処理水のBODはTOD(全酸素消費量)やCOD(化学的酸素消費量)で代替し、活性汚泥の活性は直接的に評価する簡便な手段がないため、曝気槽の溶存酸素濃度や処理水の結果や微生物の顕微鏡観察などから間接的に判断している。しかしながらTODやCODは原水の基質が変動する場合にはBODとの相関関係が悪くなり、曝気槽の溶存酸素濃度や処理水の結果や微生物の観察から微生物の活性を判断するのは極めて専門的な知識をもってしても定性的なものにしかならない。
【0004】
BODを迅速に測定する方法として微生物電極を使う方法が実用化されているが、電極に使用する微生物は特定の微生物であり、その微生物で分解できるBOD成分の廃水は測定できるが、それ以外の廃水では正確に測定できず、汎用的な方法とはなっていない。また微生物の活性を評価する方法としては微生物の核酸を計測する方法や、ATP(アデノシン三リン酸)を計測する方法等が提唱されているが、活性汚泥のような種々雑多な微生物群の活性評価法としては汎用的な方法とはなっていない。
【0005】
このため本発明者は溶存酸素濃度計を使って、微生物の酸素消費速度の挙動を測定しコンピュータで解析することにより、短時間で活性汚泥処理に必要なBODを測定するとともに、微生物が廃水中のBOD成分を分解する分解速度を測定、解析する方法を特許3301427号に記載している。特許3301427号の方法を使えば、活性汚泥処理の運転管理に必要なBODや微生物の活性を定量的に把握でき、活性汚泥処理を適切に運転管理することができる。しかしながら特許3301427号の方法は溶存酸素濃度計を使うため、応答の速い精度の高い測定ができるものの、溶存酸素濃度計自体高価なものであり、また溶存酸素濃度計の機能を維持するための付帯装置が必要なことから、測定装置が高価になる難点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は溶存酸素濃度計を用いずに、間接的に酸素消費量の変化を測定し、短時間で活性汚泥処理に必要なBODを測定するとともに、微生物が廃水中のBOD成分を分解する分解速度を測定する安価で簡便な方法を示す。
【0007】
【課題を解決するための手段】
活性汚泥と廃液を含む混合液と空気をいれる密閉容器と該混合液と該空気を気液接触させる手段と、該容器内の該空気から炭酸ガスを除去する手段と、該容器内の圧力を検知する手段と、圧力変化による信号で酸素を該容器内に供給する手段と、酸素の供給タイミングをコンピュータに取り込む手段を具備し、該混合液を該密閉容器に入れ、該混合液の呼吸による酸素消費速度が溶存酸素濃度に無関係に一定となる値をASactCとし、酸素溶解速度が少なくともASactC以上になるように該気液接触手段で気液接触させ、該密閉容器内の圧力変化による信号で該密閉容器内に酸素を供給する操作を繰り返し、コンピュータが予め設定した値と酸素の供給タイミングから酸素供給速度を計算し、その酸素供給速度の経時変化が予めコンピュータに設定してある値より小さくなるか、または酸素供給速度が予めコンピュータに設定してある値より小さくなったときを測定終了時点とし、その時の酸素供給速度をASactSとし、測定時間をtとし、測定時間中に供給した全酸素量からASactS×tを差し引いた量を混合液のBODMとし、測定時間中の酸素供給速度の最大値からASactCを差し引いた量を最大分解速度とし、測定時間中の任意の時間txまでに供給した全酸素量からASactS×txを差し引いた量をBODxとし、100×BODx/BODMをxとしたとき、BODx/txの量をx%分解までの平均分解速度とし、BODMと最大分解速度とx%分解までの平均分解速度の全てまたは一部をコンピュータに出力する。この方法により原水等をいれた混合液のBODMから もとの原水等のBODが計算でき、最大分解速度とx%分解までの平均分解速度を基準となる廃液の最大分解速度とx%分解までの平均分解速度と比較することにより活性汚泥の活性が定量的に評価できる。
【0008】
【従来の技術】
本発明は活性汚泥処理の曝気槽の混合液という廃液のBOD成分に馴養された高濃度の微生物を使って短時間でBOD量や分解反応速度を測定することを特徴とし、高濃度の微生物を使って測定するための方法を示すものである。本発明で使用している密閉容器内で微生物活動による酸素の消費による圧力変化を検知して酸素を供給する方法は既知の方法であり、微生物と廃液をいれた培養瓶内の圧力減少分だけ電気分解で発生した酸素ガスを供給し、電気分解に要した電気量を計測してBODを測定する装置が実用化されている。しかしながら実用化されている装置は培養瓶内の微生物量はたかだか数mg/l程度の微量な濃度で操作することを前提としているため本発明の活性汚泥処理の混合液のような数千mg/lという高濃度の微生物を使用するための考慮がなされていない。高濃度の微生物を使用すると微量な微生物濃度では問題にならなかった以下のような現象が顕著になるため、新たな測定方法が必要となる。その方法のひとつは酸素溶解速度に関するものであり、もうひとつは測定の終了を判定する方法に関するものである。
【0009】
酸素溶解速度が重要な要素であることは以下の理由による。
BODがほとんど0mg/lの混合液を、溶存酸素濃度が十分高い状態からあらたな酸素の供給を断つと、混合液中の活性汚泥が呼吸により酸素を消費するため溶存酸素濃度が図1の1の実線ように概ね0.7mg/lまでは直線状に減少し、0.7mg/l以下になると0mg/lにむかって指数曲線で減少していく。直線状に減少していくことは呼吸による酸素消費速度が溶存酸素濃度に無関係に一定であることを示しており、指数曲線状に減少していくことは呼吸による酸素消費速度が溶存酸素濃度の関数であることを示しており、酸素消費速度は図1の2の点線に示すようになる。
活性汚泥は種々の好気性微生物や通性嫌気性微生物等の集合体であり、溶存酸素濃度が低下すると、一部の微生物は休眠状態になったり、脱窒菌のように硝酸イオンから酸素をとったりして、溶存酸素濃度が十分ある状態とは異なる挙動をとり、酸素消費速度は活性汚泥の微生物構成やそのときの状態や混合液の質により変化し、一律な関数を定義できない。
ここに概ね0.7mg/lとは活性汚泥の混合液の状態により若干変化するものであり、混合液中の微生物濃度(以降MLSSと称す)が大きく且つ活性が大きい混合液では0.7mg/l より大きな値となり、MLSSが小さく且つ活性が小さい混合液では0.7mg/l より小さな値となる。0.7mg/lは通常使用されているMLSSが3000 mg/l程度の活性汚泥を想定した値である。また活性汚泥は多様な微生物の集合体であるから図1のように多少の遷移幅をもった変化である。以降この活性汚泥が呼吸による酸素消費速度が一定になる境界の溶存酸素濃度をDOtであらわす。
またBODが殆ど0mg/lの混合液とは、混合液中のBOD成分の分解速度が小さな値で30分から数時間の測定時間内ではほとんど変化しない廃液という意味であり、JIS法によるBOD測定(以降BOD5と称す)のように長時間かけてゆっくりと分解するごく小さな分解速度をもつBOD成分があっても計算上誤差は小さく支障ない。
【0010】
溶存酸素濃度がDOt以上でBODが殆ど0mg/lの混合液の呼吸による酸素消費速度は溶存酸素濃度には無関係な一定値になり、その値をASactCで表わす。
本発明では活性汚泥というきわめて高濃度の微生物を測定に使用し、通常健全な活性汚泥であればASactCは0.2mg/l/minから0.5mg/l/minであるため、酸素溶解速度がそれ以上ないと溶存酸素濃度がDOt以下となって呼吸による酸素消費速度が一定しなくなる。
測定時間中に消費した全酸素量は既知の方法でも本発明の手段でも測定計算できるが、測定中に消費した酸素量がBOD成分を分解するに要した酸素量か呼吸による酸素量かは区別できない。BODを計算するためには全酸素消費量から呼吸による酸素消費量を差し引く必要があり、既知の方法では呼吸による酸素消費量はブランクの測定による酸素消費量としているが、溶存酸素濃度をDOt以上に保つ操作を行えば、呼吸による酸素消費量をASactC×測定時間で計算できる。逆に本発明のような高濃度の微生物を使用する場合には溶存酸素濃度をDOt以上に保つ操作をしないと、たとえブランク測定をおこなっても、ブランク測定と試料測定の呼吸における酸素消費量が同じである保証は全くなく、呼吸による酸素消費量の全酸素消費量に占める割合が大きいため、BODの計算誤差が非常に大きくなってしまう。
【0011】
酸素溶解速度に関して実用化されている既知の方法では特に留意されていない。それは既知の方法では使用する微生物量はせいぜい数mg/l程度以下のため、ほとんど気液界面からの酸素の溶解速度で液中の溶存酸素濃度がDOt以下になることはなく、またDOt以下になったとしても微生物量が少ないためさしたる誤差とならないため、とくに酸素の溶解速度には留意していない。既知の方法では測定中培養瓶をマグネチックスターラーで軽く攪拌することがあるが、これは酸素溶解速度を大きくするというよりは試料廃液中の浮遊物質の沈殿を防止し、局部的な酸欠状態を防ぐためのものである。
【0012】
次ぎに測定の終了を判定する方法に関する点について述べる。
高濃度の微生物を使用して測定をおこなう場合、測定の終了をどう判定するかはたいへん重要なことである。
実用化されている既知の方法の測定終了判断は5日間という時間制限を原則としている。5日間という長時間は微生物濃度が薄い場合に適用できるもので、活性汚泥のような高濃度の混合液の場合、5日間という長時間を空気にさらした場合、酸素溶解速度が小さすぎる場合は、活性汚泥の腐敗がおこり何を測定しているのか全くわからなくなり、逆に酸素溶解速度が大きくて常に溶存酸素濃度が高い状態の場合、長時間の曝気により、BODの分解以外に廃液中の窒素成分の硝化や、微生物の自己消化などが起こって生物相が変化し、廃液のBOD成分の分解に要した酸素消費量とそれ以外の酸素消費量と区別がつかなくなり事実上測定できない。
本発明の測定時間は30分から数時間程度を想定している。それは活性汚泥の混合液という高濃度の微生物を使用し、被測定廃液は、該活性汚泥の原廃水等であるので既に微生物は十分廃液の基質に馴養しており、長くても数時間程度あれば活性汚泥処理に必要なBODや分解速度データは十分な精度で測定できるからである。しかしながらBOD成分の分解が終了する時間は被測定廃液の基質や濃度や添加量により測定ごとに異なる。
【0013】
このため本発明では溶存酸素濃度をDOt以上に保つ操作を行えば、呼吸による酸素消費速度はASactCで一定になることを利用する。あらかじめ測定に使用する混合液を溶存酸素濃度をDOt以上にして曝気していくと、やがて混合液中のBODがなくなり、酸素消費速度は活性汚泥の呼吸による酸素消費速度のASactCでほぼ一定になる。このASactCおよびASactCの状態付近でのASactCの経時による変化量(以降ΔASactCと称す)を測定し、コンピュータにASactCとΔASactCの値を記憶する。被測定廃液を含む混合液で測定をおこなったとき、酸素溶解速度がASactC以上になるように該気液接触手段で気液接触させ、コンピュータが予め設定した数値と酸素の供給タイミングから酸素供給速度を計算し、その酸素供給速度の経時変化が予めコンピュータに設定してあるΔASactCより小さくなるか、または酸素供給速度が予めコンピュータに設定してあるASactCと同等以下になったときを測定終了時点とする。
ASactCとΔASactCの2つの判断を行う意味は、あらかじめASactCとΔASactCを測定したときの混合液と被測定廃液を含む混合液とは完全に同じものではないのでASactCがまったく同じ値とは限らないため、もうひとつの判断材料としてΔASactCで判断するものである。活性汚泥は混合液中のBODがなくなってから曝気を継続すると厳密には自己消化等の作用によりASactCの値は少しずつ減少していく。その減少する速度ΔASactCは通常0.001mg/l/min/min程度以下であり、BOD成分の分解は5mg/l/minから0.01mg/l/min程度の酸素消費速度を計測すれば活性汚泥の運転管理で使用するのに支障ない誤差範囲で測定できるため、0.01mg/l/min/min程度以上の変化をBOD成分の分解による変化とし、ASactCの変化とは区別できる。またΔASactCはBOD成分の分解速度変化に対し1/10から1/1000であるので実用上一定値として扱える。ASactCはMLSSが変化すると変化するが、ΔASactCはその変化量が小さいため、多少混合液が変わってもBODの分解程度による酸素消費速度の変化による変化と区別できる。例えば毎日活性汚泥処理装置の曝気槽の混合液を採取して測定を行う場合、MLSSは若干変動するものであり、毎回測定前にあらかじめASactCを測定するのでは時間のロスになるので、ΔASactCによる判定法のほうが便利である。
コンピュータにASactCとΔASactCの値を記憶する際には、混合液の変動を加味して同数値に若干の補正をおこなっても本発明の趣旨を逸脱しない。
【0014】
ASactCの減少する速度ΔASactCは通常0.001mg/l/min/min程度以下であるが、具体的には以下の意味がある。
活性汚泥は混合液中のBODがなくなってから曝気を継続すると自己消化等の作用によりASactCの値は少しずつ減少していく。このとき活性汚泥の活性を測定すると活性も少しずつ低下していくことがわかる。厳密に酸素消費速度が一定になるくらいまで測定を続けると、活性汚泥自体が変化してしまうので測定に誤差が生じる。ΔASactCが具体的にいくつの数値であれば混合液中のBODがなくなって呼吸による酸素消費速度のみに移行するかは活性汚泥を構成する微生物群により異なるが、同じ活性汚泥であれば、ほぼ同じ値となる。 仮にASactCやΔASactCの値を大きく取りすぎると、まだ未分解の分解速度の遅いBOD成分が残っている段階で測定を終了することになり、測定結果は真の値より小さくなる。また逆にASactCやΔASactCの値を小さく取りすぎると、本来微生物の生体を維持していくための栄養素までもBODとして計測するため測定結果は真の値より大きくなる。活性汚泥処理は曝気槽で原廃水のBODを10時間程度の平均滞留時間の曝気時間で処理し、沈殿槽で活性汚泥を分離し、返送汚泥で活性汚泥を曝気槽に戻す操作で系全体のバランスがとれており、その過程で95%程度のBODを処理しているものであるから、平均滞留時間程度以内でのASactCの変化の推移からΔASactCの値を見極めるのが適当であり、通常ΔASactCは0.001mg/l/min/min程度以下であり、BOD測定に必要な最低酸素消費速度は0.01mg/l/min程度以上であるため、区別できるものである。
【0015】
本発明によるBOD測定値は多くの廃液でBOD5と良く一致するが、BOD5とは測定時間がまったく異なるため以下の場合にはBOD5とは差が生じる。
▲1▼測定に使用する活性汚泥の活性が悪い場合は、本発明のBOD値は短時間で結果をだすため活性が悪いと測定時間内で十分な分解ができずBOD5より小さくなる。▲2▼廃水のBOD成分が高分子やSSに基因する場合は溶解性のBODにするのに時間を要するため本発明のBOD値はBOD5より小さくなる。▲3▼廃水の成分が活性汚泥に毒性がある場合は毒性の影響で活性が回復しないうちに測定が終了するため本発明のBOD値はBOD5より小さくなる。▲4▼難分解性の廃水の場合は本発明の活性汚泥は馴養された微生物が多いため分解が早く進むが、測定時間が短い影響が優勢となる場合もあり、どちらが大きくなるかは不定となる。本発明でもBOD5でも正確な測定には微生物の活性が健全であることが必要であるが、本発明の場合、測定時間が短いため測定に使用している微生物が健全であることが特に重要である。
微生物の活性が健全であるかどうかは廃液の分解速度でみるのが適当であり、本発明では分解速度を最大分解速度やx%分解までの平均分解速度という指標で計算出力する。廃液のBODを本発明の方法で測定し、そのときのBOD値がBOD5と一致または良い相関が得られたときの混合液を使って、組成が一定である廃液(以後基準液と称す)の最大分解速度やx%分解までの平均分解速度(以降基準分解速度と称す)を測定しておき、任意のときの混合液を使って基準液の最大分解速度やx%分解までの平均分解速度を測定し、その値を基準分解速度を比較することにより微生物の活性が健全であることが保証できる。
【0016】
【実施例】
次に具体的な装置を使っての実施例について述べる。図2は装置例のフローシートである。
3は活性汚泥の混合液を入れ曝気する密閉容器である。密閉容器は直接外気に触れないような構造とする。4は気液接触装置である。本実施例ではアスピレータ方式を採用している。5は密閉容器から混合液を揚液し、アスピレータに水流を送るポンプである。6は温度計である。7は密閉容器内の圧力でオン−オフする圧力スイッチである。8は酸素発生容器であり過マンガン酸カリと硫酸溶液が入っている。9は炭酸ガス吸収容器であり苛性ソーダ溶液が入っている。10は過酸化水素溶液を酸素発生容器に添加する添加ポンプである。11は過酸化水素溶液のポットである。12は混合液や被測定廃液を密閉容器にいれるためのバルブである。13は圧抜きバルブである。14は排水バルブである。15はアスピレータに吸引されるガスの流量を調節するバルブである。16はガスの流量計である。17はヒーターである。18はヒーターの電源である。19は温度コントローラである。20は温度コントローラの信号でヒーターをオン−オフするリレーである。21は装置全体を制御するとともに得られたデータを解析する本装置の頭脳であるパソコンである。パソコンには圧力スイッチからの信号を取り込んだり添加ポンプを制御するデジタル入出力ボードがパソコンに組み込んである。22はパソコンからの信号で10のポンプを駆動するリレーである。
4のアスピレータの構造は5のポンプが作動した場合、ASactCより十分大きな酸素溶解速度をもち、曝気槽内の溶存酸素濃度をDOt以上の値に保つことができるものである。
【0017】
まず基本的な運転条件を決める手順を示す。バルブ12と13をあけ、3の密閉容器に予めBODが殆ど0mg/lであることがわかっている混合液を既定量密閉容器にいれる。密閉容器にいれる混合液量は密閉容器の概ね80%程度が適当である。密閉容器の容量は任意であるが、取り扱いのしやすさから密閉容器の容積は1000cc程度が都合がよく、この場合、混合液は800ccいれ、空気の容積を200ccにする。空気容積が大きすぎると圧力変化が小さくなり感度が低下する。空気容積が小さすぎると圧力変化が大きくなり感度がよくなるが、混合液が発泡したり、飛沫同伴がひどくなると酸素発生容器や炭酸ガス吸収容器に液を巻き込んで測定不能となる危険性が大きくなる。
既定量いれたら、バルブ12と13を閉め、15のガス流量調節バルブを全開にして5のポンプを動かす。密閉容器内の混合液は5のポンプで揚水され、4のアスピレーターで密閉容器内の空気を吸引混合し酸素を溶解し、密閉容器内に戻り混合液を攪拌する。混合液は微生物の活動により酸素を消費し、主として水と炭酸ガスを発生する。炭酸ガスの一部は混合液に吸収されるが一部は空気に揮散する。アスピレータで吸引される途中で9の炭酸ガス吸収容器で炭酸ガスを除去すると、酸素溶解速度にしたがって空気中の酸素を吸収消費するため、空気の圧力が低下する。7の圧力スイッチの作動圧力まで低下すると圧力スイッチが作動し、信号が21のコンピュータに取り込まれ、10の過酸化水素添加ポンプが作動し、8の酸素発生容器内に過酸化水素溶液を滴下する。10の過酸化水素添加ポンプは定量ポンプを使用し、1回の圧力信号で設定したポンプ流量でコンピュータの設定作動時間作動する。酸素発生容器内に滴下された過酸化水素は発生容器内の過マンガン酸カリと硫酸溶液と(1)式のように反応し、すみやかに酸素を発生し、空気の流れとともにアスピレーターで吸引される。
(1)式の反応は速やかに進行するため、密閉容器内の圧力は圧力スイッチの作動圧力以上に上昇するが、1回の作動で発生した酸素量が再び、微生物活動で消費されていくと、圧力が減少し、7の圧力スイッチが作動し10の添加ポンプが作動し、酸素が発生する。この繰り返しで微生物活動で消費される速度にしたがって、10の添加ポンプが作動する。混合液のBODが殆ど0mg/lなので、温度等の条件が安定すれば、酸素の消費速度は微生物の呼吸による酸素消費速度のみとなるため、ポンプの作動タイミングも頻度小の状態で作動頻度が一定になる。図3は密閉容器内の圧力変化を示す図である。図4はこの圧力変化に対応して10の添加ポンプの作動状態を表す図である。図3の23は経過時間による圧力変化の曲線である。圧力が7の圧力スイッチの作動点PLを下回ると、コンピュータの指令で10の添加ポンプが図4の設定時間ts作動し、コンピュータは1回の作動による酸素発生量Oxと作動タイミングの間隔tpと添加液量からその時刻での酸素供給速度を計算し、そのときの酸素供給速度を15のガス流量調節バルブの開度と16のガス流量計の値とともに記録する。
次に15のガス流量調節バルブを適当量絞って運転を継続し、酸素供給速度が一定になったらそのときの酸素供給速度を15のガス流量調節バルブの開度と16のガス流量計の値とともに記録する。次に15のガス流量調節バルブをさらに適当量絞って同様の操作をおこなう。このようにして15のガス流量調節バルブを完全に閉めて同様な操作を行う。
このようにして得られた結果を酸素供給速度とガス流量計の値またはガス流量調節バルブの開度の関係をグラフ化すると図5のようになるので、酸素供給速度が小さい値から増加し、大きい値で一定になるときの境目のガス流量計の値(以後G0と称す)とガス流量調節バルブの開度(以後V0と称す)を記録する。アスピレータへのガス流量を大→小に絞ることは、後述(2)式のKabsを大→小にすることに相当し、平衡に達する溶存酸素濃度(highfinalDO)は(5)式から高い値→低い値になり、その境目は微生物の呼吸による酸素消費速度が溶存酸素濃度に無関係になるDOtに相当する点であり、一定になった酸素供給速度はASactCに相当する。以後本番の測定を行うときは酸素溶解速度が最低でもASactC以上になるように気液接触させることが必要なので、少なくともV0の開度以上で操作を行うことが必要で、好ましくは曝気槽内で発泡等の支障がおきない範囲でできるだけガス流量調節バルブの開度をあけた状態で運転操作するのがよい。曝気を強くすると自己消化が起こりやすくなるが、本発明では測定時間は数時間程度以内なので自己消化はあまり考慮する必要はない。
【0018】
まずASactCとΔASactCを測定する場合の手順を示す。バルブ12と13をあけ、3の密閉容器にあらかじめBOD が殆ど0mg/lであることがわかっている混合液を既定量密閉容器にいれる。既定量いれたら、バルブ12と13を閉め、5のポンプを動かす。15のガス流量調節バルブの開度はV0の開度以上とする。密閉容器内の混合液は5のポンプで揚水され、4のアスピレーターで密閉容器内の空気を吸引混合し酸素を溶解し、密閉容器内に戻り混合液を攪拌する。前述と同様に微生物活動により密閉容器内の圧力が低下し、過酸化水素添加ポンプが作動し、酸素を補充する繰り返しとなる。混合液中のBODが殆ど0mg/lなので、温度等の条件が安定すれば、酸素の消費速度は微生物の呼吸による消費速度のみとなり、酸素の消費速度の変化はきわめて小さくなり、ほぼ一定となるのでその時点で測定終了とし、コンピュータは10の添加ポンプの1回の作動による酸素発生量と作動タイミングの間隔tpと添加液量から酸素供給速度を計算し、そのときの酸素供給速度をASactCとし、酸素供給速度の変化量をΔASactCとして、コンピュータに出力し、記憶する。
【0019】
次ぎに混合液を使って、原水等の特定の廃液のBODや分解速度を測定する場合の手順を示す。バルブ12と13をあけ、3の密閉容器に測定したい活性汚泥の混合液を既定量密閉容器にいれる。
既定量いれたら、バルブ12と13を閉め、5のポンプを動かす。15のガス流量調節バルブの開度はV0の開度以上とする。前述と同様に微生物活動により密閉容器内の圧力が低下し、過酸化水素添加ポンプが作動し、酸素を補充する繰り返しとなる。やがて混合液中のBOD成分が分解され、コンピュータは添加ポンプの作動タイミングから酸素供給速度を計算し、その酸素供給速度の経時変化が予めコンピュータに設定してある値ΔASactCより小さくなるか、または酸素供給速度が予めコンピュータに設定してある値ASactCより小さくなった場合、その時の酸素供給速度をASactSとし、ASactSの経時による変化量をΔASactSとして記憶し、コンピュータ画面に測定準備OKの表示を出力する。準備OKが表示されたら、バルブ12と13を開き、被測定廃液を適当量密閉容器に添加し、バルブ12と13を閉め、コンピュータに測定開始を入力する。被測定廃液が混合液に添加されるため、混合液のBODが高くなり、BOD成分を分解する微生物の活動が活発となり、酸素を消費する速度が急増し、7の圧力スイッチの作動が頻繁になる。BOD成分を分解するにしたがって酸素供給速度が小さくなり、やがてASactSと同じ値にまで低下する。コンピュータは酸素供給速度がASactSと同じになった時点または酸素供給速度の変化量がΔASactS以下になった時点を測定終了と判断し、測定時間をtとし、測定時間中に供給した全酸素量からASactS×tを差し引いた量を混合液のBODMとし、測定時間中の酸素供給速度の最大値からASactCを差し引いた量を最大分解速度とし、測定時間中の任意の時間txまでに供給した全酸素量からASactS×txを差し引いた量をBODxとし、100×BODx/BODMをxとしたとき、BODx/txの量をx%分解までの平均分解速度として出力する。図6は測定開始以降の密閉容器内の圧力変化を示す図であり、26は経過時間による圧力変化の曲線である。図7はこの圧力変化に対応して10の添加ポンプの作動状態を表す図であり、27は10の添加ポンプの作動状況を表す。図8の28は計算による酸素供給速度の変化を表す図であり、29は積算の酸素供給量の変化を表す図であり、30は呼吸による積算の酸素消費量の変化を表す図であり、teは測定の終了を表す。
BODMと被測定廃液の添加量と密閉容器内の混合液量から被測定廃液のBODは
BOD=BODM×(密閉容器内の混合液量+被測定廃液の添加量)/被測定廃液の添加量
で逆算できる。
本発明では酸素供給速度と酸素消費速度は等しいものとして取り扱っているが、特に混合液中の溶存酸素濃度が変化すると応答遅れによる誤差が生じる。特許3301427号の方法は直接溶存酸素濃度の変化を測定するため応答の早い精密な測定ができ、本発明の方法は特許3301427号の方法より応答性において劣るが、簡便な方法という利点がある。測定終了を判断するASactCまたはΔASactCの値は測定する混合液とは同じではないため、準備OKとするときは混合液の残BODは0mg/lとは限らず、混合液の溶存酸素濃度はそのときの条件次第で不定であるが、終了判断とする値を準備OK時のASactSまたはΔASactSに置き換え、同じ混合液を継続して使用し、同じ値で測定終了するため、混合液の残BODの状態や溶存酸素濃度等の状態は測定前後でほぼ同じになるのでBODMの測定の誤差は相殺される。
【0020】
混合液の性状がほとんど同じで終了判定のΔASactCやASactCが予め適正に設定できている場合は、前述の準備OKまでの操作を省略し、混合液をいれた時を測定開始とし、酸素供給速度がASactSと同じになった時点または酸素供給速度の変化量がΔASactS以下になった時点を測定終了としてBODMや最大分解速度や平均分解速度を計算でき、混合液自身のBODや予め装置外で被測定廃液を添加した混合液のBODを測定できる。但し、この場合には混合液の初期の溶存酸素濃度と終了時点の溶存酸素濃度が一致していないと測定誤差になる。
【0021】
図9はコンピュータでの処理を示すフローチャートである。
コンピュータの動きと具体的な設定例を示す。上記実施例で11のポットに0.3%過酸化水素溶液をいれ、10の添加ポンプの吐出量を1cc/minに設定した場合、圧力信号を取り込むタイミングは1秒毎とし、1回のポンプの作動時間は5秒とすると1回のポンプ作動で酸素供給量は0.235mgとなり、さらに0.3%過酸化水素溶液が0.0833cc添加されるため、空気層の容積が圧縮されその添加量体積分に相当する酸素ガスが混合液中に溶解するので、その酸素量は温度が30℃のとき0.107mgになるため、合計0.342mgとなる。連続作動で最大4.104mg/minの酸素を供給する。混合液量が800ccなので5.13 mg/l/minの酸素消費速度に対応する。BOD成分の分解がほぼ終了し、呼吸のみの消費速度を0.427 mg/l/minと仮定し、呼吸のみの消費速度の変化を0.0010 mg/l/min/minとすると、圧力センサーの作動間隔の変化は測定終了判定付近では60秒→60秒→60秒→60秒→60秒→60秒→61秒となる。コンピュータはこの時点で測定終了を表示し、結果を出力する。
測定開始から終了までに60分とし全酸素供給量が41.62mgとすると、呼吸に要した酸素量は0.427×60=25.62mgなので、BOD成分の分解に要した酸素量は16mgとなり、混合液のBODは16mg/800cc=20mg/lとなる。BOD成分の分解過程で窒素ガスが発生する場合は測定誤差となるが、一般に窒素ガスの発生量はBOD分解による酸素消費量に較べて少ないため許容できる。また測定中に大気圧が変動すると誤差になるが、その大きさは実施例の条件のとき100Pa変動すると0.28mgの酸素量が誤差になる。また測定中に曝気槽内の温度が変動すると誤差になるが、その大きさは実施例の条件のとき0.5℃変動すると0.5mgの酸素量が誤差になる。
【0022】
被測定廃液を濃度や組成を一定にした廃液(基準液)をつかった場合、最大分解速度や平均分解速度は混合液中の活性汚泥の活性により変化する。たとえば活性汚泥の状態が良好はときの最大分解速度や平均分解速度の大きさを基準とし、任意のときの測定時の最大分解速度や平均分解速度をそのときの値と比較することにより、その混合液中の活性汚泥の活性を定量評価することができる。基準液は理想的にはその活性汚泥の原水が最良であるが、原水基質が変動する場合は原水の分解性と相関のある人工廃液も使用できる。本発明では基準に対する相対値を汚泥活性度と称する。
これらの検討から求められる、汚泥活性度は活性汚泥処理法における微生物の管理を行ううえで大変重要な定量的指標となる。具体的には活性は(微生物量)×(単位微生物量あたりの分解能力)であるので、どの程度健全な微生物がいるかを表す指標となる。従来から使用されているMLSSやMLVSSは単に微生物量に対応する指標であり、MLSSは十分あっても毒物流入時等には分解活性が著しく低下しているケースは産業廃水処理においては、よくみられる現象であり、汚泥活性度のほうが活性汚泥処理運転管理上はるかに有効な管理指標となる。
【0023】
なお測定中は混合液の温度が変動すると誤差になるので、ヒータや冷却装置と温度制御装置を具備して一定に保つのが好ましい。図2では一般に活性汚泥の温度は室温より高いのでヒータのみで制御している。また16のガス流量計は流量調節バルブにニードルバルブのような精密なバルブを使用すれば開度で流量管理できるので必ずしも必要でない。
酸素を発生させる手段は、本実施例のように過酸化水素と過マンガン酸カリの化学反応を使う手段の他、水の電気分解で陽極で発生する酸素ガスを使う手段も利用できる。BODの反応速度を測定するには、広い酸素発生範囲を速い応答性が重要なため、化学反応のほうが使いやすい。実施例の8の酸素発生容器にいれる過マンガン酸カリの効力は低下すると濃い紫色からピンク色に変色することで判る。9は炭酸ガス吸収容器にいれる苛性ソーダ溶液の効力も発色指示薬をいれておくことで色で効力を判定できる。
【0024】
次に酸素溶解速度がASact以上になるような該気液接触手段について具体的に述べる。
本発明の方法は溶存酸素濃度計を用いないが、装置を設計する過程においては該接触手段の性能を確認するため、図10のように実施例の装置の圧力センサーのかわりに31の溶存酸素濃度計を設置し、密閉容器を13の圧抜きバルブを開放し、アスピレータには直接大気から空気を取り込む装置を使う。32は溶存酸素濃度計の変換器であり、溶存酸素濃度の変化は32の変換器経由21のコンピュータに取り込まれる。
活性汚泥と廃液を含む混合液を曝気装置で曝気していくと廃水中の溶存酸素濃度は曝気時間とともに変化していくが、その変化は(2)式で表される。
ここにDOsatは飽和溶存酸素濃度[mg/l]、DOは曝気槽内溶存酸素濃度[mg/l]、Kabsは総括物質移動係数[1/min]、ASactは活性汚泥が呼吸でつかう酸素消費速度[mg/l/min]、BODactは活性汚泥がBOD成分の分解でつかう酸素消費速度[mg/l/min]である。(2)式右辺第1項は曝気装置から酸素溶解速度であり、第2項は活性汚泥が呼吸およびBODの分解でつかう酸素消費速度である。
ASactは汚泥の基礎呼吸による酸素の消費速度である。基礎呼吸なのでBOD成分とは直接無関係で短時間内ではほとんど一定である。ASactはDO値がDOt以上あれば、ASactはDO値に無関係に一定であることは前述のとおりである。
BODactは汚泥がBOD成分を分解しているときに使う酸素の消費速度である。BODactは汚泥がその物質に馴化しているかどうか、汚泥の状態、水温、pH、塩濃度等で変化する。さらに廃水処理における原水のように多様なBOD成分を含む場合にはBOD成分の分解の進行程度にしたがって変化していく。
【0025】
曝気過程でBODactが変化する場合には(2)式は簡単には積分できないが、BOD成分が殆ど0mg/lの混合液の場合、(2)式のBODactは殆ど0となり(2)式は(3)式のようになる
ASactは前述のごとくDOt以上ではDOに無関係に一定であるからDOt以上の範囲で(3)式は容易に積分でき(4)式で表される。
DO=α−(α−DO0)exp(−Kabs・t) (4)式
但しα=DOsat−ASact/Kabs
DO0は曝気を開始したときの初期値である。
また(4)式は曝気経過時間tが十分な大きさになれば右辺第2項は無視できるから
DO=α=DOsat−ASact/Kabs (5)式
の値で一定となり、この値をhighfinalDOで表せば、highfinalDOはBOD成分が殆ど0mg/lの混合液を曝気した場合、最終的に到達するDO値と定義でき、(4)式は
DO=highfinalDO−(highfinalDO−DO0)exp(−Kabs・t) (6)式
と書き直せる。(6)式によるDOの変化は図11の33に示すような曲線となる。BOD=0の混合液をDOt以上の初期値DO0から曝気スタートとし、十分長い曝気時間経過で一定になったDO値をhighfinalDO値として、上昇するDOの実測値と(6)式のKabsの値を変化させた理論計算値と比較し、実測値と一致するKabsを特定する。この解析手法は特許3301427号に詳細に記載されている。
【0026】
またASactは気液接触をおこなわないときは(2)式右辺第1項は0になるから(3)式は
となる。アスピレータの図10の15のバルブを閉めて液の循環のみおこなってDOの変化を測定すると図1の1のようになり、直線的に減少する範囲で傾きを計算すればその値がASactCとなる。
実施例の装置では密閉容器内で厳密には空気との接触面が存在し、気液界面から酸素が溶解するが、溶存酸素濃度計を気液界面からはなれたところに設置すれば、気液界面からの酸素溶解速度は小さいうえ、気液界面付近の混合液中の活性汚泥により溶解した酸素は消費され、溶存酸素濃度計付近の混合液には酸素は届かないため、測定には支障ない。
【0027】
酸素溶解速度がASactC以上になるような気液接触手段とは
Kabs(DOsat−DOt)>ASactC (8)式
となることであり、Kabs=ASactC/(DOsat−DOt)で求められるKabsより大きいKabsをもつ気液接触装置である。
Kabsは気液接触装置の物理的構造と操作条件できまるもので、例えば実施例のようなアスピレータ方式であれば物理的構造はアスピレータノズルの形状やテールパイプの形状等であり、操作条件はアスピレータのノズルを通過する流体の流量や圧力等と吸引気体の流量である。また散気管方式であれば、物理的構造はディフューザーの構造であり、操作条件は空気の流量や圧力である。
溶存酸素濃度計を具備した装置で、気液接触装置の物理的構造のアスピレータと操作条件みたす能力をもつポンプ等の装置を具備しておけば、溶存酸素濃度計がついていなくとも酸素溶解速度がASactC以上の接触手段であることは保証される。BOD成分を分解中にも溶存酸素濃度はDOt以上であることが必要であるが、BODactは測定する廃液の濃度や基質によりことなるものであり、濃度の薄い場合や分解速度の遅いBOD成分の場合は(BODact+ASact)をASactより少しおおきな値ですむが、分解速度の大きな廃液を測定する場合にはもっと大きな値が必要である。(2)式から
Kabs(DOsat−DOt)>BODact+ASactC (9)式
となり、BODactは0.01mg/l/minから5mg/l/min であり、ASactC は0.2mg/l/minから0.5mg/l/minであり、BODact/ASactCは概ね最大10倍程度であるが、高分解速度のBOD成分は短時間で分解終了するため、汎用性のある測定装置とするには酸素溶解速度の装置能力はASactCの概ね6倍程度にしておくことが好ましい。
【0028】
【発明の効果】
本発明による測定は活性汚泥を使用することにより短時間で測定できるものであるが、活性汚泥は被測定廃液のBOD成分に馴養した活性汚泥を使う必要がある。馴養が不十分な活性汚泥の場合は一部分解未了が発生する可能性があり測定精度が低下する。このため全ての廃液のBODを測定できるものではないが、例えば、下水のBODを測定する場合は下水処理場の活性汚泥の混合液を使用するとか、廃液の種類に応じて活性汚泥をかえれば、いろいろな廃液のBODを短時間で測定可能となる。本発明が最も有用な機能を発揮するのは活性汚泥処理を運転管理する場合である。原水のBODや処理水のBODを短時間で測定でき活性汚泥の曝気空気量や原水負荷量等の運転条件を適正に管理できる。また予め基準液を選定しておけば、基準液を添加したときの最大分解速度や平均分解速度を測定することにより、微生物の分解活性を容易に定量化でき、活性汚泥処理の運転管理を定量化でき、適正な処理ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】混合液の呼吸による溶存酸素濃度変化と酸素消費速度を示す図である。
【図2】本発明の実施例を示すフローシートである。
【図3】実施例の運転条件を決める段階での密閉容器内の圧力変化を示す図である。
【図4】実施例の運転条件を決める段階での添加ポンプの作動状態を示す図である。
【図5】実施例の運転条件を決める段階でのアスピレータの吸引ガス量と呼吸による酸素消費速度の関係を示す図である。
【図6】実施例の測定時での密閉容器内の圧力変化を示す図である。
【図7】実施例の測定時での添加ポンプの作動状態を示す図である。
【図8】実施例の測定時での酸素供給量等の変化を示す図である。
【図9】コンピュータでの処理を示すフローチャートである。
【図10】気液接触装置の性能を確認する装置のフローシートである。
【図11】(6)式によるDOの変化を示す図である。
【発明が属する技術分野】
本発明は活性汚泥処理や好気性微生物を利用する廃水処理での微生物の活性や廃水の分解性をテストする廃水処理試験方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
活性汚泥処理は最も汎用的な有機物汚濁廃水の処理法である。活性汚泥を代表とする好気性微生物を利用した廃水処理の基本プロセスは好気性微生物を高濃度に含む活性汚泥に廃水を入れた混合液を曝気することにより混合液中に溶解した溶存酸素を利用して微生物が廃水中の汚濁物を分解するプロセスである。一般に廃水中には種々の汚濁物があり、その汚濁物を分解するには多様な微生物が関与している。好気性微生物処理の最大の特徴は種々の汚濁物に対応した多様な微生物を馴化という自然界の生物活動を高度に濃縮することで、効率よく様々な廃水に対応できることであるが、反面複雑な生物活動のため原因→結果の因果関係の定量的把握は極めて難しい。このため、活性汚泥処理は沈殿槽からの処理水は確かに浄化されるが、今現在曝気槽内でどのような状態で処理がおこなわれ、それが正常なものであるかどうか、定量的にはほとんどわからない状態で運転されているのが現状である。活性汚泥処理をブラックボックス状態にしている最大の原因は運転中の原廃水や曝気槽内や処理水のBOD(生物化学的酸素消費量)が迅速に測定できないこと、および活性汚泥の廃水を分解する能力(以降活性と称す)を定量的に把握する手段がないことである。
【0003】
現在一般的に行われている運転管理法は原廃水や処理水のBODはTOD(全酸素消費量)やCOD(化学的酸素消費量)で代替し、活性汚泥の活性は直接的に評価する簡便な手段がないため、曝気槽の溶存酸素濃度や処理水の結果や微生物の顕微鏡観察などから間接的に判断している。しかしながらTODやCODは原水の基質が変動する場合にはBODとの相関関係が悪くなり、曝気槽の溶存酸素濃度や処理水の結果や微生物の観察から微生物の活性を判断するのは極めて専門的な知識をもってしても定性的なものにしかならない。
【0004】
BODを迅速に測定する方法として微生物電極を使う方法が実用化されているが、電極に使用する微生物は特定の微生物であり、その微生物で分解できるBOD成分の廃水は測定できるが、それ以外の廃水では正確に測定できず、汎用的な方法とはなっていない。また微生物の活性を評価する方法としては微生物の核酸を計測する方法や、ATP(アデノシン三リン酸)を計測する方法等が提唱されているが、活性汚泥のような種々雑多な微生物群の活性評価法としては汎用的な方法とはなっていない。
【0005】
このため本発明者は溶存酸素濃度計を使って、微生物の酸素消費速度の挙動を測定しコンピュータで解析することにより、短時間で活性汚泥処理に必要なBODを測定するとともに、微生物が廃水中のBOD成分を分解する分解速度を測定、解析する方法を特許3301427号に記載している。特許3301427号の方法を使えば、活性汚泥処理の運転管理に必要なBODや微生物の活性を定量的に把握でき、活性汚泥処理を適切に運転管理することができる。しかしながら特許3301427号の方法は溶存酸素濃度計を使うため、応答の速い精度の高い測定ができるものの、溶存酸素濃度計自体高価なものであり、また溶存酸素濃度計の機能を維持するための付帯装置が必要なことから、測定装置が高価になる難点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は溶存酸素濃度計を用いずに、間接的に酸素消費量の変化を測定し、短時間で活性汚泥処理に必要なBODを測定するとともに、微生物が廃水中のBOD成分を分解する分解速度を測定する安価で簡便な方法を示す。
【0007】
【課題を解決するための手段】
活性汚泥と廃液を含む混合液と空気をいれる密閉容器と該混合液と該空気を気液接触させる手段と、該容器内の該空気から炭酸ガスを除去する手段と、該容器内の圧力を検知する手段と、圧力変化による信号で酸素を該容器内に供給する手段と、酸素の供給タイミングをコンピュータに取り込む手段を具備し、該混合液を該密閉容器に入れ、該混合液の呼吸による酸素消費速度が溶存酸素濃度に無関係に一定となる値をASactCとし、酸素溶解速度が少なくともASactC以上になるように該気液接触手段で気液接触させ、該密閉容器内の圧力変化による信号で該密閉容器内に酸素を供給する操作を繰り返し、コンピュータが予め設定した値と酸素の供給タイミングから酸素供給速度を計算し、その酸素供給速度の経時変化が予めコンピュータに設定してある値より小さくなるか、または酸素供給速度が予めコンピュータに設定してある値より小さくなったときを測定終了時点とし、その時の酸素供給速度をASactSとし、測定時間をtとし、測定時間中に供給した全酸素量からASactS×tを差し引いた量を混合液のBODMとし、測定時間中の酸素供給速度の最大値からASactCを差し引いた量を最大分解速度とし、測定時間中の任意の時間txまでに供給した全酸素量からASactS×txを差し引いた量をBODxとし、100×BODx/BODMをxとしたとき、BODx/txの量をx%分解までの平均分解速度とし、BODMと最大分解速度とx%分解までの平均分解速度の全てまたは一部をコンピュータに出力する。この方法により原水等をいれた混合液のBODMから もとの原水等のBODが計算でき、最大分解速度とx%分解までの平均分解速度を基準となる廃液の最大分解速度とx%分解までの平均分解速度と比較することにより活性汚泥の活性が定量的に評価できる。
【0008】
【従来の技術】
本発明は活性汚泥処理の曝気槽の混合液という廃液のBOD成分に馴養された高濃度の微生物を使って短時間でBOD量や分解反応速度を測定することを特徴とし、高濃度の微生物を使って測定するための方法を示すものである。本発明で使用している密閉容器内で微生物活動による酸素の消費による圧力変化を検知して酸素を供給する方法は既知の方法であり、微生物と廃液をいれた培養瓶内の圧力減少分だけ電気分解で発生した酸素ガスを供給し、電気分解に要した電気量を計測してBODを測定する装置が実用化されている。しかしながら実用化されている装置は培養瓶内の微生物量はたかだか数mg/l程度の微量な濃度で操作することを前提としているため本発明の活性汚泥処理の混合液のような数千mg/lという高濃度の微生物を使用するための考慮がなされていない。高濃度の微生物を使用すると微量な微生物濃度では問題にならなかった以下のような現象が顕著になるため、新たな測定方法が必要となる。その方法のひとつは酸素溶解速度に関するものであり、もうひとつは測定の終了を判定する方法に関するものである。
【0009】
酸素溶解速度が重要な要素であることは以下の理由による。
BODがほとんど0mg/lの混合液を、溶存酸素濃度が十分高い状態からあらたな酸素の供給を断つと、混合液中の活性汚泥が呼吸により酸素を消費するため溶存酸素濃度が図1の1の実線ように概ね0.7mg/lまでは直線状に減少し、0.7mg/l以下になると0mg/lにむかって指数曲線で減少していく。直線状に減少していくことは呼吸による酸素消費速度が溶存酸素濃度に無関係に一定であることを示しており、指数曲線状に減少していくことは呼吸による酸素消費速度が溶存酸素濃度の関数であることを示しており、酸素消費速度は図1の2の点線に示すようになる。
活性汚泥は種々の好気性微生物や通性嫌気性微生物等の集合体であり、溶存酸素濃度が低下すると、一部の微生物は休眠状態になったり、脱窒菌のように硝酸イオンから酸素をとったりして、溶存酸素濃度が十分ある状態とは異なる挙動をとり、酸素消費速度は活性汚泥の微生物構成やそのときの状態や混合液の質により変化し、一律な関数を定義できない。
ここに概ね0.7mg/lとは活性汚泥の混合液の状態により若干変化するものであり、混合液中の微生物濃度(以降MLSSと称す)が大きく且つ活性が大きい混合液では0.7mg/l より大きな値となり、MLSSが小さく且つ活性が小さい混合液では0.7mg/l より小さな値となる。0.7mg/lは通常使用されているMLSSが3000 mg/l程度の活性汚泥を想定した値である。また活性汚泥は多様な微生物の集合体であるから図1のように多少の遷移幅をもった変化である。以降この活性汚泥が呼吸による酸素消費速度が一定になる境界の溶存酸素濃度をDOtであらわす。
またBODが殆ど0mg/lの混合液とは、混合液中のBOD成分の分解速度が小さな値で30分から数時間の測定時間内ではほとんど変化しない廃液という意味であり、JIS法によるBOD測定(以降BOD5と称す)のように長時間かけてゆっくりと分解するごく小さな分解速度をもつBOD成分があっても計算上誤差は小さく支障ない。
【0010】
溶存酸素濃度がDOt以上でBODが殆ど0mg/lの混合液の呼吸による酸素消費速度は溶存酸素濃度には無関係な一定値になり、その値をASactCで表わす。
本発明では活性汚泥というきわめて高濃度の微生物を測定に使用し、通常健全な活性汚泥であればASactCは0.2mg/l/minから0.5mg/l/minであるため、酸素溶解速度がそれ以上ないと溶存酸素濃度がDOt以下となって呼吸による酸素消費速度が一定しなくなる。
測定時間中に消費した全酸素量は既知の方法でも本発明の手段でも測定計算できるが、測定中に消費した酸素量がBOD成分を分解するに要した酸素量か呼吸による酸素量かは区別できない。BODを計算するためには全酸素消費量から呼吸による酸素消費量を差し引く必要があり、既知の方法では呼吸による酸素消費量はブランクの測定による酸素消費量としているが、溶存酸素濃度をDOt以上に保つ操作を行えば、呼吸による酸素消費量をASactC×測定時間で計算できる。逆に本発明のような高濃度の微生物を使用する場合には溶存酸素濃度をDOt以上に保つ操作をしないと、たとえブランク測定をおこなっても、ブランク測定と試料測定の呼吸における酸素消費量が同じである保証は全くなく、呼吸による酸素消費量の全酸素消費量に占める割合が大きいため、BODの計算誤差が非常に大きくなってしまう。
【0011】
酸素溶解速度に関して実用化されている既知の方法では特に留意されていない。それは既知の方法では使用する微生物量はせいぜい数mg/l程度以下のため、ほとんど気液界面からの酸素の溶解速度で液中の溶存酸素濃度がDOt以下になることはなく、またDOt以下になったとしても微生物量が少ないためさしたる誤差とならないため、とくに酸素の溶解速度には留意していない。既知の方法では測定中培養瓶をマグネチックスターラーで軽く攪拌することがあるが、これは酸素溶解速度を大きくするというよりは試料廃液中の浮遊物質の沈殿を防止し、局部的な酸欠状態を防ぐためのものである。
【0012】
次ぎに測定の終了を判定する方法に関する点について述べる。
高濃度の微生物を使用して測定をおこなう場合、測定の終了をどう判定するかはたいへん重要なことである。
実用化されている既知の方法の測定終了判断は5日間という時間制限を原則としている。5日間という長時間は微生物濃度が薄い場合に適用できるもので、活性汚泥のような高濃度の混合液の場合、5日間という長時間を空気にさらした場合、酸素溶解速度が小さすぎる場合は、活性汚泥の腐敗がおこり何を測定しているのか全くわからなくなり、逆に酸素溶解速度が大きくて常に溶存酸素濃度が高い状態の場合、長時間の曝気により、BODの分解以外に廃液中の窒素成分の硝化や、微生物の自己消化などが起こって生物相が変化し、廃液のBOD成分の分解に要した酸素消費量とそれ以外の酸素消費量と区別がつかなくなり事実上測定できない。
本発明の測定時間は30分から数時間程度を想定している。それは活性汚泥の混合液という高濃度の微生物を使用し、被測定廃液は、該活性汚泥の原廃水等であるので既に微生物は十分廃液の基質に馴養しており、長くても数時間程度あれば活性汚泥処理に必要なBODや分解速度データは十分な精度で測定できるからである。しかしながらBOD成分の分解が終了する時間は被測定廃液の基質や濃度や添加量により測定ごとに異なる。
【0013】
このため本発明では溶存酸素濃度をDOt以上に保つ操作を行えば、呼吸による酸素消費速度はASactCで一定になることを利用する。あらかじめ測定に使用する混合液を溶存酸素濃度をDOt以上にして曝気していくと、やがて混合液中のBODがなくなり、酸素消費速度は活性汚泥の呼吸による酸素消費速度のASactCでほぼ一定になる。このASactCおよびASactCの状態付近でのASactCの経時による変化量(以降ΔASactCと称す)を測定し、コンピュータにASactCとΔASactCの値を記憶する。被測定廃液を含む混合液で測定をおこなったとき、酸素溶解速度がASactC以上になるように該気液接触手段で気液接触させ、コンピュータが予め設定した数値と酸素の供給タイミングから酸素供給速度を計算し、その酸素供給速度の経時変化が予めコンピュータに設定してあるΔASactCより小さくなるか、または酸素供給速度が予めコンピュータに設定してあるASactCと同等以下になったときを測定終了時点とする。
ASactCとΔASactCの2つの判断を行う意味は、あらかじめASactCとΔASactCを測定したときの混合液と被測定廃液を含む混合液とは完全に同じものではないのでASactCがまったく同じ値とは限らないため、もうひとつの判断材料としてΔASactCで判断するものである。活性汚泥は混合液中のBODがなくなってから曝気を継続すると厳密には自己消化等の作用によりASactCの値は少しずつ減少していく。その減少する速度ΔASactCは通常0.001mg/l/min/min程度以下であり、BOD成分の分解は5mg/l/minから0.01mg/l/min程度の酸素消費速度を計測すれば活性汚泥の運転管理で使用するのに支障ない誤差範囲で測定できるため、0.01mg/l/min/min程度以上の変化をBOD成分の分解による変化とし、ASactCの変化とは区別できる。またΔASactCはBOD成分の分解速度変化に対し1/10から1/1000であるので実用上一定値として扱える。ASactCはMLSSが変化すると変化するが、ΔASactCはその変化量が小さいため、多少混合液が変わってもBODの分解程度による酸素消費速度の変化による変化と区別できる。例えば毎日活性汚泥処理装置の曝気槽の混合液を採取して測定を行う場合、MLSSは若干変動するものであり、毎回測定前にあらかじめASactCを測定するのでは時間のロスになるので、ΔASactCによる判定法のほうが便利である。
コンピュータにASactCとΔASactCの値を記憶する際には、混合液の変動を加味して同数値に若干の補正をおこなっても本発明の趣旨を逸脱しない。
【0014】
ASactCの減少する速度ΔASactCは通常0.001mg/l/min/min程度以下であるが、具体的には以下の意味がある。
活性汚泥は混合液中のBODがなくなってから曝気を継続すると自己消化等の作用によりASactCの値は少しずつ減少していく。このとき活性汚泥の活性を測定すると活性も少しずつ低下していくことがわかる。厳密に酸素消費速度が一定になるくらいまで測定を続けると、活性汚泥自体が変化してしまうので測定に誤差が生じる。ΔASactCが具体的にいくつの数値であれば混合液中のBODがなくなって呼吸による酸素消費速度のみに移行するかは活性汚泥を構成する微生物群により異なるが、同じ活性汚泥であれば、ほぼ同じ値となる。 仮にASactCやΔASactCの値を大きく取りすぎると、まだ未分解の分解速度の遅いBOD成分が残っている段階で測定を終了することになり、測定結果は真の値より小さくなる。また逆にASactCやΔASactCの値を小さく取りすぎると、本来微生物の生体を維持していくための栄養素までもBODとして計測するため測定結果は真の値より大きくなる。活性汚泥処理は曝気槽で原廃水のBODを10時間程度の平均滞留時間の曝気時間で処理し、沈殿槽で活性汚泥を分離し、返送汚泥で活性汚泥を曝気槽に戻す操作で系全体のバランスがとれており、その過程で95%程度のBODを処理しているものであるから、平均滞留時間程度以内でのASactCの変化の推移からΔASactCの値を見極めるのが適当であり、通常ΔASactCは0.001mg/l/min/min程度以下であり、BOD測定に必要な最低酸素消費速度は0.01mg/l/min程度以上であるため、区別できるものである。
【0015】
本発明によるBOD測定値は多くの廃液でBOD5と良く一致するが、BOD5とは測定時間がまったく異なるため以下の場合にはBOD5とは差が生じる。
▲1▼測定に使用する活性汚泥の活性が悪い場合は、本発明のBOD値は短時間で結果をだすため活性が悪いと測定時間内で十分な分解ができずBOD5より小さくなる。▲2▼廃水のBOD成分が高分子やSSに基因する場合は溶解性のBODにするのに時間を要するため本発明のBOD値はBOD5より小さくなる。▲3▼廃水の成分が活性汚泥に毒性がある場合は毒性の影響で活性が回復しないうちに測定が終了するため本発明のBOD値はBOD5より小さくなる。▲4▼難分解性の廃水の場合は本発明の活性汚泥は馴養された微生物が多いため分解が早く進むが、測定時間が短い影響が優勢となる場合もあり、どちらが大きくなるかは不定となる。本発明でもBOD5でも正確な測定には微生物の活性が健全であることが必要であるが、本発明の場合、測定時間が短いため測定に使用している微生物が健全であることが特に重要である。
微生物の活性が健全であるかどうかは廃液の分解速度でみるのが適当であり、本発明では分解速度を最大分解速度やx%分解までの平均分解速度という指標で計算出力する。廃液のBODを本発明の方法で測定し、そのときのBOD値がBOD5と一致または良い相関が得られたときの混合液を使って、組成が一定である廃液(以後基準液と称す)の最大分解速度やx%分解までの平均分解速度(以降基準分解速度と称す)を測定しておき、任意のときの混合液を使って基準液の最大分解速度やx%分解までの平均分解速度を測定し、その値を基準分解速度を比較することにより微生物の活性が健全であることが保証できる。
【0016】
【実施例】
次に具体的な装置を使っての実施例について述べる。図2は装置例のフローシートである。
3は活性汚泥の混合液を入れ曝気する密閉容器である。密閉容器は直接外気に触れないような構造とする。4は気液接触装置である。本実施例ではアスピレータ方式を採用している。5は密閉容器から混合液を揚液し、アスピレータに水流を送るポンプである。6は温度計である。7は密閉容器内の圧力でオン−オフする圧力スイッチである。8は酸素発生容器であり過マンガン酸カリと硫酸溶液が入っている。9は炭酸ガス吸収容器であり苛性ソーダ溶液が入っている。10は過酸化水素溶液を酸素発生容器に添加する添加ポンプである。11は過酸化水素溶液のポットである。12は混合液や被測定廃液を密閉容器にいれるためのバルブである。13は圧抜きバルブである。14は排水バルブである。15はアスピレータに吸引されるガスの流量を調節するバルブである。16はガスの流量計である。17はヒーターである。18はヒーターの電源である。19は温度コントローラである。20は温度コントローラの信号でヒーターをオン−オフするリレーである。21は装置全体を制御するとともに得られたデータを解析する本装置の頭脳であるパソコンである。パソコンには圧力スイッチからの信号を取り込んだり添加ポンプを制御するデジタル入出力ボードがパソコンに組み込んである。22はパソコンからの信号で10のポンプを駆動するリレーである。
4のアスピレータの構造は5のポンプが作動した場合、ASactCより十分大きな酸素溶解速度をもち、曝気槽内の溶存酸素濃度をDOt以上の値に保つことができるものである。
【0017】
まず基本的な運転条件を決める手順を示す。バルブ12と13をあけ、3の密閉容器に予めBODが殆ど0mg/lであることがわかっている混合液を既定量密閉容器にいれる。密閉容器にいれる混合液量は密閉容器の概ね80%程度が適当である。密閉容器の容量は任意であるが、取り扱いのしやすさから密閉容器の容積は1000cc程度が都合がよく、この場合、混合液は800ccいれ、空気の容積を200ccにする。空気容積が大きすぎると圧力変化が小さくなり感度が低下する。空気容積が小さすぎると圧力変化が大きくなり感度がよくなるが、混合液が発泡したり、飛沫同伴がひどくなると酸素発生容器や炭酸ガス吸収容器に液を巻き込んで測定不能となる危険性が大きくなる。
既定量いれたら、バルブ12と13を閉め、15のガス流量調節バルブを全開にして5のポンプを動かす。密閉容器内の混合液は5のポンプで揚水され、4のアスピレーターで密閉容器内の空気を吸引混合し酸素を溶解し、密閉容器内に戻り混合液を攪拌する。混合液は微生物の活動により酸素を消費し、主として水と炭酸ガスを発生する。炭酸ガスの一部は混合液に吸収されるが一部は空気に揮散する。アスピレータで吸引される途中で9の炭酸ガス吸収容器で炭酸ガスを除去すると、酸素溶解速度にしたがって空気中の酸素を吸収消費するため、空気の圧力が低下する。7の圧力スイッチの作動圧力まで低下すると圧力スイッチが作動し、信号が21のコンピュータに取り込まれ、10の過酸化水素添加ポンプが作動し、8の酸素発生容器内に過酸化水素溶液を滴下する。10の過酸化水素添加ポンプは定量ポンプを使用し、1回の圧力信号で設定したポンプ流量でコンピュータの設定作動時間作動する。酸素発生容器内に滴下された過酸化水素は発生容器内の過マンガン酸カリと硫酸溶液と(1)式のように反応し、すみやかに酸素を発生し、空気の流れとともにアスピレーターで吸引される。
(1)式の反応は速やかに進行するため、密閉容器内の圧力は圧力スイッチの作動圧力以上に上昇するが、1回の作動で発生した酸素量が再び、微生物活動で消費されていくと、圧力が減少し、7の圧力スイッチが作動し10の添加ポンプが作動し、酸素が発生する。この繰り返しで微生物活動で消費される速度にしたがって、10の添加ポンプが作動する。混合液のBODが殆ど0mg/lなので、温度等の条件が安定すれば、酸素の消費速度は微生物の呼吸による酸素消費速度のみとなるため、ポンプの作動タイミングも頻度小の状態で作動頻度が一定になる。図3は密閉容器内の圧力変化を示す図である。図4はこの圧力変化に対応して10の添加ポンプの作動状態を表す図である。図3の23は経過時間による圧力変化の曲線である。圧力が7の圧力スイッチの作動点PLを下回ると、コンピュータの指令で10の添加ポンプが図4の設定時間ts作動し、コンピュータは1回の作動による酸素発生量Oxと作動タイミングの間隔tpと添加液量からその時刻での酸素供給速度を計算し、そのときの酸素供給速度を15のガス流量調節バルブの開度と16のガス流量計の値とともに記録する。
次に15のガス流量調節バルブを適当量絞って運転を継続し、酸素供給速度が一定になったらそのときの酸素供給速度を15のガス流量調節バルブの開度と16のガス流量計の値とともに記録する。次に15のガス流量調節バルブをさらに適当量絞って同様の操作をおこなう。このようにして15のガス流量調節バルブを完全に閉めて同様な操作を行う。
このようにして得られた結果を酸素供給速度とガス流量計の値またはガス流量調節バルブの開度の関係をグラフ化すると図5のようになるので、酸素供給速度が小さい値から増加し、大きい値で一定になるときの境目のガス流量計の値(以後G0と称す)とガス流量調節バルブの開度(以後V0と称す)を記録する。アスピレータへのガス流量を大→小に絞ることは、後述(2)式のKabsを大→小にすることに相当し、平衡に達する溶存酸素濃度(highfinalDO)は(5)式から高い値→低い値になり、その境目は微生物の呼吸による酸素消費速度が溶存酸素濃度に無関係になるDOtに相当する点であり、一定になった酸素供給速度はASactCに相当する。以後本番の測定を行うときは酸素溶解速度が最低でもASactC以上になるように気液接触させることが必要なので、少なくともV0の開度以上で操作を行うことが必要で、好ましくは曝気槽内で発泡等の支障がおきない範囲でできるだけガス流量調節バルブの開度をあけた状態で運転操作するのがよい。曝気を強くすると自己消化が起こりやすくなるが、本発明では測定時間は数時間程度以内なので自己消化はあまり考慮する必要はない。
【0018】
まずASactCとΔASactCを測定する場合の手順を示す。バルブ12と13をあけ、3の密閉容器にあらかじめBOD が殆ど0mg/lであることがわかっている混合液を既定量密閉容器にいれる。既定量いれたら、バルブ12と13を閉め、5のポンプを動かす。15のガス流量調節バルブの開度はV0の開度以上とする。密閉容器内の混合液は5のポンプで揚水され、4のアスピレーターで密閉容器内の空気を吸引混合し酸素を溶解し、密閉容器内に戻り混合液を攪拌する。前述と同様に微生物活動により密閉容器内の圧力が低下し、過酸化水素添加ポンプが作動し、酸素を補充する繰り返しとなる。混合液中のBODが殆ど0mg/lなので、温度等の条件が安定すれば、酸素の消費速度は微生物の呼吸による消費速度のみとなり、酸素の消費速度の変化はきわめて小さくなり、ほぼ一定となるのでその時点で測定終了とし、コンピュータは10の添加ポンプの1回の作動による酸素発生量と作動タイミングの間隔tpと添加液量から酸素供給速度を計算し、そのときの酸素供給速度をASactCとし、酸素供給速度の変化量をΔASactCとして、コンピュータに出力し、記憶する。
【0019】
次ぎに混合液を使って、原水等の特定の廃液のBODや分解速度を測定する場合の手順を示す。バルブ12と13をあけ、3の密閉容器に測定したい活性汚泥の混合液を既定量密閉容器にいれる。
既定量いれたら、バルブ12と13を閉め、5のポンプを動かす。15のガス流量調節バルブの開度はV0の開度以上とする。前述と同様に微生物活動により密閉容器内の圧力が低下し、過酸化水素添加ポンプが作動し、酸素を補充する繰り返しとなる。やがて混合液中のBOD成分が分解され、コンピュータは添加ポンプの作動タイミングから酸素供給速度を計算し、その酸素供給速度の経時変化が予めコンピュータに設定してある値ΔASactCより小さくなるか、または酸素供給速度が予めコンピュータに設定してある値ASactCより小さくなった場合、その時の酸素供給速度をASactSとし、ASactSの経時による変化量をΔASactSとして記憶し、コンピュータ画面に測定準備OKの表示を出力する。準備OKが表示されたら、バルブ12と13を開き、被測定廃液を適当量密閉容器に添加し、バルブ12と13を閉め、コンピュータに測定開始を入力する。被測定廃液が混合液に添加されるため、混合液のBODが高くなり、BOD成分を分解する微生物の活動が活発となり、酸素を消費する速度が急増し、7の圧力スイッチの作動が頻繁になる。BOD成分を分解するにしたがって酸素供給速度が小さくなり、やがてASactSと同じ値にまで低下する。コンピュータは酸素供給速度がASactSと同じになった時点または酸素供給速度の変化量がΔASactS以下になった時点を測定終了と判断し、測定時間をtとし、測定時間中に供給した全酸素量からASactS×tを差し引いた量を混合液のBODMとし、測定時間中の酸素供給速度の最大値からASactCを差し引いた量を最大分解速度とし、測定時間中の任意の時間txまでに供給した全酸素量からASactS×txを差し引いた量をBODxとし、100×BODx/BODMをxとしたとき、BODx/txの量をx%分解までの平均分解速度として出力する。図6は測定開始以降の密閉容器内の圧力変化を示す図であり、26は経過時間による圧力変化の曲線である。図7はこの圧力変化に対応して10の添加ポンプの作動状態を表す図であり、27は10の添加ポンプの作動状況を表す。図8の28は計算による酸素供給速度の変化を表す図であり、29は積算の酸素供給量の変化を表す図であり、30は呼吸による積算の酸素消費量の変化を表す図であり、teは測定の終了を表す。
BODMと被測定廃液の添加量と密閉容器内の混合液量から被測定廃液のBODは
BOD=BODM×(密閉容器内の混合液量+被測定廃液の添加量)/被測定廃液の添加量
で逆算できる。
本発明では酸素供給速度と酸素消費速度は等しいものとして取り扱っているが、特に混合液中の溶存酸素濃度が変化すると応答遅れによる誤差が生じる。特許3301427号の方法は直接溶存酸素濃度の変化を測定するため応答の早い精密な測定ができ、本発明の方法は特許3301427号の方法より応答性において劣るが、簡便な方法という利点がある。測定終了を判断するASactCまたはΔASactCの値は測定する混合液とは同じではないため、準備OKとするときは混合液の残BODは0mg/lとは限らず、混合液の溶存酸素濃度はそのときの条件次第で不定であるが、終了判断とする値を準備OK時のASactSまたはΔASactSに置き換え、同じ混合液を継続して使用し、同じ値で測定終了するため、混合液の残BODの状態や溶存酸素濃度等の状態は測定前後でほぼ同じになるのでBODMの測定の誤差は相殺される。
【0020】
混合液の性状がほとんど同じで終了判定のΔASactCやASactCが予め適正に設定できている場合は、前述の準備OKまでの操作を省略し、混合液をいれた時を測定開始とし、酸素供給速度がASactSと同じになった時点または酸素供給速度の変化量がΔASactS以下になった時点を測定終了としてBODMや最大分解速度や平均分解速度を計算でき、混合液自身のBODや予め装置外で被測定廃液を添加した混合液のBODを測定できる。但し、この場合には混合液の初期の溶存酸素濃度と終了時点の溶存酸素濃度が一致していないと測定誤差になる。
【0021】
図9はコンピュータでの処理を示すフローチャートである。
コンピュータの動きと具体的な設定例を示す。上記実施例で11のポットに0.3%過酸化水素溶液をいれ、10の添加ポンプの吐出量を1cc/minに設定した場合、圧力信号を取り込むタイミングは1秒毎とし、1回のポンプの作動時間は5秒とすると1回のポンプ作動で酸素供給量は0.235mgとなり、さらに0.3%過酸化水素溶液が0.0833cc添加されるため、空気層の容積が圧縮されその添加量体積分に相当する酸素ガスが混合液中に溶解するので、その酸素量は温度が30℃のとき0.107mgになるため、合計0.342mgとなる。連続作動で最大4.104mg/minの酸素を供給する。混合液量が800ccなので5.13 mg/l/minの酸素消費速度に対応する。BOD成分の分解がほぼ終了し、呼吸のみの消費速度を0.427 mg/l/minと仮定し、呼吸のみの消費速度の変化を0.0010 mg/l/min/minとすると、圧力センサーの作動間隔の変化は測定終了判定付近では60秒→60秒→60秒→60秒→60秒→60秒→61秒となる。コンピュータはこの時点で測定終了を表示し、結果を出力する。
測定開始から終了までに60分とし全酸素供給量が41.62mgとすると、呼吸に要した酸素量は0.427×60=25.62mgなので、BOD成分の分解に要した酸素量は16mgとなり、混合液のBODは16mg/800cc=20mg/lとなる。BOD成分の分解過程で窒素ガスが発生する場合は測定誤差となるが、一般に窒素ガスの発生量はBOD分解による酸素消費量に較べて少ないため許容できる。また測定中に大気圧が変動すると誤差になるが、その大きさは実施例の条件のとき100Pa変動すると0.28mgの酸素量が誤差になる。また測定中に曝気槽内の温度が変動すると誤差になるが、その大きさは実施例の条件のとき0.5℃変動すると0.5mgの酸素量が誤差になる。
【0022】
被測定廃液を濃度や組成を一定にした廃液(基準液)をつかった場合、最大分解速度や平均分解速度は混合液中の活性汚泥の活性により変化する。たとえば活性汚泥の状態が良好はときの最大分解速度や平均分解速度の大きさを基準とし、任意のときの測定時の最大分解速度や平均分解速度をそのときの値と比較することにより、その混合液中の活性汚泥の活性を定量評価することができる。基準液は理想的にはその活性汚泥の原水が最良であるが、原水基質が変動する場合は原水の分解性と相関のある人工廃液も使用できる。本発明では基準に対する相対値を汚泥活性度と称する。
これらの検討から求められる、汚泥活性度は活性汚泥処理法における微生物の管理を行ううえで大変重要な定量的指標となる。具体的には活性は(微生物量)×(単位微生物量あたりの分解能力)であるので、どの程度健全な微生物がいるかを表す指標となる。従来から使用されているMLSSやMLVSSは単に微生物量に対応する指標であり、MLSSは十分あっても毒物流入時等には分解活性が著しく低下しているケースは産業廃水処理においては、よくみられる現象であり、汚泥活性度のほうが活性汚泥処理運転管理上はるかに有効な管理指標となる。
【0023】
なお測定中は混合液の温度が変動すると誤差になるので、ヒータや冷却装置と温度制御装置を具備して一定に保つのが好ましい。図2では一般に活性汚泥の温度は室温より高いのでヒータのみで制御している。また16のガス流量計は流量調節バルブにニードルバルブのような精密なバルブを使用すれば開度で流量管理できるので必ずしも必要でない。
酸素を発生させる手段は、本実施例のように過酸化水素と過マンガン酸カリの化学反応を使う手段の他、水の電気分解で陽極で発生する酸素ガスを使う手段も利用できる。BODの反応速度を測定するには、広い酸素発生範囲を速い応答性が重要なため、化学反応のほうが使いやすい。実施例の8の酸素発生容器にいれる過マンガン酸カリの効力は低下すると濃い紫色からピンク色に変色することで判る。9は炭酸ガス吸収容器にいれる苛性ソーダ溶液の効力も発色指示薬をいれておくことで色で効力を判定できる。
【0024】
次に酸素溶解速度がASact以上になるような該気液接触手段について具体的に述べる。
本発明の方法は溶存酸素濃度計を用いないが、装置を設計する過程においては該接触手段の性能を確認するため、図10のように実施例の装置の圧力センサーのかわりに31の溶存酸素濃度計を設置し、密閉容器を13の圧抜きバルブを開放し、アスピレータには直接大気から空気を取り込む装置を使う。32は溶存酸素濃度計の変換器であり、溶存酸素濃度の変化は32の変換器経由21のコンピュータに取り込まれる。
活性汚泥と廃液を含む混合液を曝気装置で曝気していくと廃水中の溶存酸素濃度は曝気時間とともに変化していくが、その変化は(2)式で表される。
ここにDOsatは飽和溶存酸素濃度[mg/l]、DOは曝気槽内溶存酸素濃度[mg/l]、Kabsは総括物質移動係数[1/min]、ASactは活性汚泥が呼吸でつかう酸素消費速度[mg/l/min]、BODactは活性汚泥がBOD成分の分解でつかう酸素消費速度[mg/l/min]である。(2)式右辺第1項は曝気装置から酸素溶解速度であり、第2項は活性汚泥が呼吸およびBODの分解でつかう酸素消費速度である。
ASactは汚泥の基礎呼吸による酸素の消費速度である。基礎呼吸なのでBOD成分とは直接無関係で短時間内ではほとんど一定である。ASactはDO値がDOt以上あれば、ASactはDO値に無関係に一定であることは前述のとおりである。
BODactは汚泥がBOD成分を分解しているときに使う酸素の消費速度である。BODactは汚泥がその物質に馴化しているかどうか、汚泥の状態、水温、pH、塩濃度等で変化する。さらに廃水処理における原水のように多様なBOD成分を含む場合にはBOD成分の分解の進行程度にしたがって変化していく。
【0025】
曝気過程でBODactが変化する場合には(2)式は簡単には積分できないが、BOD成分が殆ど0mg/lの混合液の場合、(2)式のBODactは殆ど0となり(2)式は(3)式のようになる
ASactは前述のごとくDOt以上ではDOに無関係に一定であるからDOt以上の範囲で(3)式は容易に積分でき(4)式で表される。
DO=α−(α−DO0)exp(−Kabs・t) (4)式
但しα=DOsat−ASact/Kabs
DO0は曝気を開始したときの初期値である。
また(4)式は曝気経過時間tが十分な大きさになれば右辺第2項は無視できるから
DO=α=DOsat−ASact/Kabs (5)式
の値で一定となり、この値をhighfinalDOで表せば、highfinalDOはBOD成分が殆ど0mg/lの混合液を曝気した場合、最終的に到達するDO値と定義でき、(4)式は
DO=highfinalDO−(highfinalDO−DO0)exp(−Kabs・t) (6)式
と書き直せる。(6)式によるDOの変化は図11の33に示すような曲線となる。BOD=0の混合液をDOt以上の初期値DO0から曝気スタートとし、十分長い曝気時間経過で一定になったDO値をhighfinalDO値として、上昇するDOの実測値と(6)式のKabsの値を変化させた理論計算値と比較し、実測値と一致するKabsを特定する。この解析手法は特許3301427号に詳細に記載されている。
【0026】
またASactは気液接触をおこなわないときは(2)式右辺第1項は0になるから(3)式は
となる。アスピレータの図10の15のバルブを閉めて液の循環のみおこなってDOの変化を測定すると図1の1のようになり、直線的に減少する範囲で傾きを計算すればその値がASactCとなる。
実施例の装置では密閉容器内で厳密には空気との接触面が存在し、気液界面から酸素が溶解するが、溶存酸素濃度計を気液界面からはなれたところに設置すれば、気液界面からの酸素溶解速度は小さいうえ、気液界面付近の混合液中の活性汚泥により溶解した酸素は消費され、溶存酸素濃度計付近の混合液には酸素は届かないため、測定には支障ない。
【0027】
酸素溶解速度がASactC以上になるような気液接触手段とは
Kabs(DOsat−DOt)>ASactC (8)式
となることであり、Kabs=ASactC/(DOsat−DOt)で求められるKabsより大きいKabsをもつ気液接触装置である。
Kabsは気液接触装置の物理的構造と操作条件できまるもので、例えば実施例のようなアスピレータ方式であれば物理的構造はアスピレータノズルの形状やテールパイプの形状等であり、操作条件はアスピレータのノズルを通過する流体の流量や圧力等と吸引気体の流量である。また散気管方式であれば、物理的構造はディフューザーの構造であり、操作条件は空気の流量や圧力である。
溶存酸素濃度計を具備した装置で、気液接触装置の物理的構造のアスピレータと操作条件みたす能力をもつポンプ等の装置を具備しておけば、溶存酸素濃度計がついていなくとも酸素溶解速度がASactC以上の接触手段であることは保証される。BOD成分を分解中にも溶存酸素濃度はDOt以上であることが必要であるが、BODactは測定する廃液の濃度や基質によりことなるものであり、濃度の薄い場合や分解速度の遅いBOD成分の場合は(BODact+ASact)をASactより少しおおきな値ですむが、分解速度の大きな廃液を測定する場合にはもっと大きな値が必要である。(2)式から
Kabs(DOsat−DOt)>BODact+ASactC (9)式
となり、BODactは0.01mg/l/minから5mg/l/min であり、ASactC は0.2mg/l/minから0.5mg/l/minであり、BODact/ASactCは概ね最大10倍程度であるが、高分解速度のBOD成分は短時間で分解終了するため、汎用性のある測定装置とするには酸素溶解速度の装置能力はASactCの概ね6倍程度にしておくことが好ましい。
【0028】
【発明の効果】
本発明による測定は活性汚泥を使用することにより短時間で測定できるものであるが、活性汚泥は被測定廃液のBOD成分に馴養した活性汚泥を使う必要がある。馴養が不十分な活性汚泥の場合は一部分解未了が発生する可能性があり測定精度が低下する。このため全ての廃液のBODを測定できるものではないが、例えば、下水のBODを測定する場合は下水処理場の活性汚泥の混合液を使用するとか、廃液の種類に応じて活性汚泥をかえれば、いろいろな廃液のBODを短時間で測定可能となる。本発明が最も有用な機能を発揮するのは活性汚泥処理を運転管理する場合である。原水のBODや処理水のBODを短時間で測定でき活性汚泥の曝気空気量や原水負荷量等の運転条件を適正に管理できる。また予め基準液を選定しておけば、基準液を添加したときの最大分解速度や平均分解速度を測定することにより、微生物の分解活性を容易に定量化でき、活性汚泥処理の運転管理を定量化でき、適正な処理ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】混合液の呼吸による溶存酸素濃度変化と酸素消費速度を示す図である。
【図2】本発明の実施例を示すフローシートである。
【図3】実施例の運転条件を決める段階での密閉容器内の圧力変化を示す図である。
【図4】実施例の運転条件を決める段階での添加ポンプの作動状態を示す図である。
【図5】実施例の運転条件を決める段階でのアスピレータの吸引ガス量と呼吸による酸素消費速度の関係を示す図である。
【図6】実施例の測定時での密閉容器内の圧力変化を示す図である。
【図7】実施例の測定時での添加ポンプの作動状態を示す図である。
【図8】実施例の測定時での酸素供給量等の変化を示す図である。
【図9】コンピュータでの処理を示すフローチャートである。
【図10】気液接触装置の性能を確認する装置のフローシートである。
【図11】(6)式によるDOの変化を示す図である。
Claims (1)
- 活性汚泥と廃液を含む混合液と空気をいれる密閉容器と該混合液と該空気を気液接触させる手段と、該容器内の該空気から炭酸ガスを除去する手段と、該容器内の圧力を検知する手段と、圧力変化による信号で酸素を該容器内に供給する手段と、酸素の供給タイミングをコンピュータに取り込む手段を具備し、該混合液を該密閉容器に入れ、該混合液の呼吸による酸素消費速度が溶存酸素濃度に無関係に一定となる値をASactCとし、酸素溶解速度が少なくともASactC以上になるように該気液接触手段で気液接触させ、該密閉容器内の圧力変化による信号で該密閉容器内に酸素を供給する操作を繰り返し、コンピュータが予め設定した値と酸素の供給タイミングから酸素供給速度を計算し、その酸素供給速度の経時変化が予めコンピュータに設定してある値より小さくなるか、または酸素供給速度が予めコンピュータに設定してある値より小さくなったときを測定終了時点とし、その時の酸素供給速度をASactSとし、測定時間をtとし、測定時間中に供給した全酸素量からASactS×tを差し引いた量を混合液のBODMとし、測定時間中の酸素供給速度の最大値からASactCを差し引いた量を最大分解速度とし、測定時間中の任意の時間txまでに供給した全酸素量からASactS×txを差し引いた量をBODxとし、100×BODx/BODMをxとしたとき、BODx/txの量をx%分解までの平均分解速度とし、BODMと最大分解速度とx%分解までの平均分解速度の全てまたは一部をコンピュータに出力することを特徴とする活性汚泥の活性および廃水の分解性の試験方法
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CN103645224A (zh) * | 2013-12-02 | 2014-03-19 | 中山欧麦克仪器设备有限公司 | 一种bod在线测定仪 |
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