JP3822974B2 - エンドトキシン特異的ライセートの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、エンドトキシン特異的なカブトガニ・アメボサイト・ライセートの製造方法、該方法によって製造されるエンドトキシン特異的なカブトガニ・アメボサイト・ライセートおよび該ライセートを含有するエンドトキシン特異的測定剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
カブトガニ・アメボサイト・ライセート(以下、単に「ライセート」ともいう)を使用して、エンドトキシン(以下、「Et」ともいう)を測定する、一般的に「リムルステスト」と呼ばれる方法が知られており、検出感度が非常に高いため、医薬品、水などの汚染試験、臨床検査など多方面に汎用されている。なお、この測定に関与するライセートの反応は「リムルス反応」と呼ばれている。この方法は、微量のEtによりライセートが凝固することに基づいているが、その後の生化学的解明により、該反応はいくつかの凝固因子の段階的活性化より成ることが明らかにされている(J. Protein Chem., 5, 255-268(1986)) 。
【0003】
この反応を、例えば日本産カブトガニ(Tachypleus tridentatus)から得られるライセートにより、図1を用いて説明すると、ライセートにEtが加わると、ライセート中に存在するC因子が活性化され、生成した活性型C因子がB因子の特定箇所を限定水解して活性型B因子を生成し、活性型B因子はプロクロッティングエンザイムを活性化してクロッティングエンザイムに変換し、クロッティングエンザイムはコアギュローゲンのジスルフィド結合で架橋されたループ内の特定箇所(…Arg18−Thr19…の間および…Arg46−Gly47…の間)を限定水解してH−Thr19…Arg46−OHで表されるペプチドCを遊離しつつ残余の部分がコアギュリンゲルに変換される、という一連の反応(カスケード反応とも呼ばれる)である。以下Etによる活性化に起因するカスケード反応をC因子系反応と言い、そしてそのC因子系反応に関与するEt以外のライセート由来の成分をC因子系反応関与成分と言う。
【0004】
一方、ライセートはEtだけでなく(1→3)−β−D−グルカン類(以下β−グルカンともいう)が加わっても凝固することが明らかになった。すなわち、β−グルカンによって、図1におけるG因子が活性化され、生成する活性型G因子がプロクロッティングエンザイムをクロッティングエンザイムに活性化し、コアギュリンゲルを生成するというカスケード反応が起こる。以下β−グルカンによる活性化に起因するカスケード反応をG因子系反応と言う。
【0005】
また、上記の各カスケード反応により生成するクロッティングエンザイムは、反応系に別に添加される合成基質、例えばt−ブトキシカルボニル−ロイシル−グリシル−アルギニン−パラニトロアニリド(Boc−Leu−Gly−Arg−pNA)のアミド結合を水解してパラニトロアニリンを遊離する。したがって、生成した発色物質(パラニトロアニリン)の吸光度を測定することによりEtまたはβ−グルカンを定量できる。
【0006】
このように通常のライセート中にはC因子系反応とG因子系反応の両方の反応に関与する成分が含まれているため、これを用いて検体中のEtを測定する際には検体に含まれる可能性のあるβ−グルカンによってG因子系反応が進行して正しい結果が得られない場合がある。このように、いわゆるリムルステストはEtに特異的な測定法ではないことが明らかにされている。
【0007】
ライセートを調製する方法としては、カブトガニ・アメボサイトに蒸留水を加えて4℃で振とうテーブル上で一晩ゆっくりと旋回することによってアメボサイトを破裂させ、その上澄液を用いる方法、アメボサイトに0.02Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)を加えてホモジナイザーにて均一に破砕および抽出して、その上澄液を用いる方法等が知られている。もちろん、これらの方法で調製されたライセート中にはC因子系反応関与成分ならびにG因子が特に不活化されることもなく十分に含有されていることは言うまでもない。
【0008】
また、Et特異的なライセートを得る方法が種々検討されている。例えば、ライセートに、(1)カードラン、パキマン、スクレロタン、レンチナン、シゾフィラン、コリオラン、ラミナラン、パラミロン、カルボキシメチル化カードランからなる群から選ばれた水溶性多糖(米国特許第5,179,006号公報)、(2)特定構造を有するポリ(1→3)-β-D-グルコシド(WO90/02951号公報)、(3)G因子に対する抗体(特開平4−102064号公報)、(4)アプロチニン(特開平6−258326号公報)、(5)アルキルグルコシド(特開平7−103982号公報)、(6)β−グルカン結合性タンパク質(WO96/06858号公報)または(7)β−グルカン類のポリカルボン酸誘導体またはグリセリル誘導体(特開平8−122334号公報)等を共存させることによって、Et特異的なライセートを得る方法が知られている。
【0009】
また特開平4−134265号公報には、ライセートを特定構造を有するポリ(1→3)-β-D-グルコシドを不溶性担体に固定化して得られる不溶性固定化物に接触させることによって、Et特異的なライセートを得る方法が記載されている。しかしながら、カブトガニ・アメボサイトを特定条件で抽出することによって、Et特異的なライセートを製造する方法、当該方法により得られるライセート及び当該ライセートからなるEt特異的測定剤は知られていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前記公知の方法は、G因子の活性化を阻害する物質や、G因子を吸着除去するための不溶性担体を準備する必要があり、かつこれら物質や不溶性担体をEtフリーとする操作がさらに必要である。このような物質や不溶性担体を用いず、又は用いるとしてもごく少量で足りれば、極めて効率よく、簡便かつ安価にEt特異的ライセートを製造することができる。
【0011】
本発明の目的は、カブトガニ・アメボサイトから簡便かつ安価にEt特異的ライセートを製造する方法、当該方法により得られるライセート及び当該ライセートからなるEt特異的測定剤を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ね、カブトガニ・アメボサイトの破砕・抽出方法を詳細に検討した結果、驚くべきことに、カブトガニ・アメボサイトを特定の条件下で機械的処理することによって、C因子系反応関与成分が実質的に不活化されておらず、かつ実質的にG因子のみが不活化されたEt特異的ライセートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明は、以下により構成される。
(1)カブトガニ・アメボサイト、カブトガニ・アメボサイト懸濁液またはC因子及びG因子を少なくとも含む溶液を、G因子を特異的に不活化させる機械的処理に付す工程を含むことを特徴とするエンドトキシン特異的なカブトガニ・アメボサイト・ライセートの製造方法。
(2)前記機械的処理は、ホモジナイザーを高速回転させることであることを特徴とする上記(1)に記載のエンドトキシン特異的なカブトガニ・アメボサイト・ライセートの製造方法。
(3)前記高速回転の回転速度が12000〜30000rpmであることを特徴とする上記(2)に記載のエンドトキシン特異的なカブトガニ・アメボサイト・ライセートの製造方法。
(4)ホモジナイザーを高速回転させることが、4℃〜50℃の条件下で1〜20分間行われることを特徴とする上記(2)または(3)に記載のエンドトキシン特異的なカブトガニ・アメボサイト・ライセートの製造方法。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のエンドトキシン特異的なカブトガニ・アメボサイト・ライセートの製造方法によって製造されることを特徴とするエンドトキシン特異的なカブトガニ・アメボサイト・ライセート。
(6)上記(5)に記載のエンドトキシン特異的なカブトガニ・アメボサイト・ライセートを含有することを特徴とするエンドトキシン特異的測定剤。
【0014】
以下、上記(1)〜(4)を「本発明製造方法」、上記(5)を「本発明ライセート」、上記(6)を「本発明測定剤」という。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
<1>本発明製造方法
本発明製造方法で用いることができるカブトガニ・アメボサイトとしては、リムルス・ポリフェムス(Limulus polyphemus)、タキプレウス・トリデンタツス(Tachypleus tridentatus)、タキプレウス・ギガス(Tachypleus gigas)、タキプレウス(カルシノスコルピウス)・ロツンディカウダ(Tachypleus(Carcinoscorpius) rotundicauda)等のカブトガニから通常の方法で血リンパ液を採血して調製したアメボサイトを挙げることができる。
【0016】
本発明に使用するカブトガニ・アメボサイト懸濁液は、このようにして得られたカブトガニ・アメボサイトに、C因子系反応を阻害する物質を実質的に含まない抽出溶媒を加えることにより調製することができる。抽出溶媒は、C因子系反応を実質的に阻害しない限りにおいて特に限定されないが、例えば水や弱酸性〜弱アルカリ性緩衝液(例えばpH6〜9程度の緩衝液)等が挙げられる。抽出溶媒の添加量は、当業者が適宜決定することができる。
【0017】
本発明は、このように調製されたカブトガニ・アメボサイトまたはその懸濁液に対してG因子を特異的に不活化させるように機械的に処理する。この機械的処理において、カブトガニ・アメボサイトは破砕され、細胞内内容物が液中に排出され、G因子が機械的な力により不活化し、C因子系反応関与成分は、その活性を保持する。このような特異的不活化の詳細は、明確ではないが、両因子の立体構造が機械的に変形されるものと推察されると共にC因子系反応関与成分とG因子との間に機械的な作用に対する感受性の差異が存在すると考えられる。
【0018】
本発明は、上述のような特異的不活化が達成できるならば、特に機械的処理における処理方法は限定されることはない。具体的な処理方法としては、上記諸因子と溶媒分子とが激しく衝突するように該液を振盪したり回転する方法、あるいはこれら方法においてガラスや金属等の小球等の補助手段を用いて処理する方法等が挙げられるが、中でもホモジナイザーを高速回転させる処理方法が好ましい。
【0019】
このような処理に用いられるホモジナイザーとしては、周知の装置が挙げられる。ホモジナイザーの中でも、例えば、モーターによって高速回転させることが可能な部材、例えば、筒体、棒体、刃等を有するホモジナイザーが好ましく、中でも刃を有したものが特に好ましい。これら部材の素材、サイズ、形状等は、出発物質がアメボサイト細胞かその内容物かの違い、処理量等により適宜選定され得る。
【0020】
部材の回転速度は、前記G因子が実質的に不活化し、またC因子系反応関与成分が実質的に不活化しない限りにおいて特に限定されるものではないが、通常、刃の場合、12000rpmよりも回転速度が低いとG因子が十分に不活化しない傾向があり、また30000rpmよりも回転速度が高いとC因子系反応関与成分も不活化する傾向が高まることから、高速回転の回転速度は12000〜30000rpm(回転/分)であることが好ましい。
【0021】
ホモジナイザーによる処理温度は、カブトガニ・アメボサイトと前記抽出溶媒を含有する溶液が氷結せず、またC因子系反応関与成分が実質的に不活化しない限りにおいて特に限定されないが、50℃以上だとC因子系反応関与成分が不活化する傾向があることから、50℃以下が好ましく、4℃〜50℃がより好ましい。
【0022】
ホモジナイザーによる処理時間は、C因子系反応関与成分が実質的に不活化しない限りにおいて特に限定されないが、20分以上だとC因子系反応関与成分が不活化する傾向があることから、20分以下が好ましく、1〜20分がより好ましい。
このような特定条件下で、ホモジナイザーを用いてカブトガニ・アメボサイトまたはその懸濁液を機械的に処理することによって、カブトガニ・アメボサイト・ライセートのEtへの特異性を非常に高めることができる。
【0023】
本発明において、上述のカブトガニ・アメボサイトまたはその懸濁液の代わりに、C因子及びG因子を少なくとも含む溶液を用いた場合も上記と同様な機械的処理を行うことができる。このようなC因子及びG因子を少なくとも含む溶液としては、カブトガニ・アメボサイトから通常の方法(例えば、J. Biochem., 80, 1011-1021(1976)、特公昭56−86197号公報等)により調製したカブトガニ・アメボサイト・ライセートや、カブトガニ・アメボサイト・ライセートを用いて調製された市販のリムルステスト試薬(いずれもC因子系反応関与成分及びG因子が含有されており、Et及びβ−グルカンのいずれにも反応するもの)が包含される。この場合のホモジナイザー等による処理条件はアメボサイト細胞を破砕する必要がない点を除けば、基本的には前記と同様である。これによっても、カブトガニ・アメボサイト・ライセートやリムルステスト試薬のEt特異性を非常に高めることができる。
<2>本発明ライセート
本発明ライセートは上記<1>に記載の製造方法によって製造されるものであり、以下の特性を有する。
(1)Etに特異的に反応し、β−グルカンには実質的に反応しない。
(2)G因子は不活化しており、特に除去する必要がないので、通常、G因子分子自体は不活化した状態でライセート中に含有されている。
(3)C因子系反応関与成分は実質的に不活化されていない状態でライセート中に含有されている。
(4)ライセート中に、所望によりG因子系反応を抑制する物質(以下、「G因子系反応抑制剤」という)を添加してもよい。
【0024】
なお、前記<1>で用いる抽出溶媒や、本発明ライセートに、G因子系反応抑制剤を共存させても良い。これによって、仮に前記<1>で説明した好ましい処理条件(回転数、温度、時間)とわずかに異なる条件で処理を行ったり、また何らかの原因により前記した処理だけでは十分にG因子が不活化していなかったとしても、Et特異性を十分に保証することができる。なおこのような場合においても、カブトガニ・アメボサイト・ライセート中のG因子の大部分は不活化しているので、共存させるG因子系反応抑制剤の量は、従来よりも少量で良い。
【0025】
カブトガニ・アメボサイト・ライセート中のG因子が不活化していることは、例えば、次のようにして確認することができる。
氷冷下、一定量のカブトガニ・アメボサイト・ライセートに、通常の測定条件下においてカブトガニ・アメボサイト・ライセートを充分に活性化する一定量のβ−グルカン(Etを含有しないもの)を加えて、通常の条件下で反応させ、カブトガニ・アメボサイト・ライセートの活性化が起こらない、又は当該活性化の程度が減少していることを確認する。
【0026】
本発明で用いることができるG因子系反応抑制剤は、カブトガニ・アメボサイト・ライセートのG因子系反応を阻害する又は(1→3)-β-D-グルカンを不活化するが、C因子系反応には実質的に影響を及ぼさない物質ならば特に限定されない。
本発明で用いることができる公知のG因子系反応抑制剤としては、例えば以下の物質が例示できるが、これらに限定されるものではない。
(1)特定構造を有するポリ(1→3)-β-D-グルコシド(WO90/02951号公報)。
(2)G因子に対する抗体(特開平4−102064号公報)。
(3)アプロチニン(特開平6−258326号公報)。
(4)アルキルグルコシド(特開平7−103982号公報)。
(5)β−グルカン結合性タンパク質(WO96/06858号公報)。
(6)β−グルカン類のポリカルボン酸誘導体またはグリセリル誘導体(特開平8−122334号公報)。
【0027】
カブトガニ・アメボサイト・ライセートに共存させるG因子系反応抑制剤の量は、例えば、次のようにして決定することができる。
氷冷下、一定量のカブトガニ・アメボサイト・ライセートに、G因子系反応抑制剤(Etを含有しないもの)の量を変えて加え、それらに通常の測定条件下においてカブトガニ・アメボサイト・ライセートを充分に活性化する一定量のβ−グルカン(Etを含有しないもの)を加えて、通常の条件下で反応させる。この条件下でβ−グルカンによるカブトガニ・アメボサイト・ライセートの活性化を完全に抑制するG因子系反応抑制剤の量を求める。
【0028】
また、本発明製造方法により製造されたカブトガニ・アメボサイト・ライセートを、以下のG因子系反応抑制剤を固定化した不溶性担体に接触させ、カブトガニ・アメボサイト・ライセート中のG因子を吸着除去しても良い。これによっても、Et特異性を十分に保証することができる。
(1)特定構造を有するポリ(1→3)-β-D-グルコシド(WO90/02951号公報)。
(2)G因子に対する抗体(特開平4−102064号公報)。
(3)アプロチニン(特開平6−258326号公報)。
(4)アルキルグルコシド(特開平7−103982号公報)。
(5)β−グルカン類のポリカルボン酸誘導体またはグリセリル誘導体(特開平8−122334号公報)。
【0029】
G因子系反応抑制剤を固定化する不溶性担体としては、水酸基やカルバモイル基などの親水性の基を有する不溶性担体であれば特に限定されない。例えば、セルロース(例えば、セルロースパウダー(アドバンテック東洋販売)、セルロファイン(生化学工業(株)販売)、アビセル(フナコシ薬品販売)、セレックス(バイオラッド販売)など)、アガロース(例えば、セファロース(ファルマシア販売)、バイオゲルA(バイオラッド販売)、クロマゲルA(同仁化学販売)、サガバック(セラバックラボラトリーズ販売)、ゲラロース(リテックス販売)、P−Lアガロース(P−Lバイオケミカルズ販売)など)、架橋デキストラン(例えば、セファデックスG、セファクリル(ファルマシア販売)、P−Lデックス(P−Lバイオケミカルズ販売)など)、ポリアクリルアミド(例えば、バイオゲルP(バイオラッド販売)、クロマゲルP(同仁化学販売)など)、多孔質ガラス(例えば、バイオグラス(バイオラッド販売)など)、親水性ポリビニル系合成ポリマー(例えば、トヨパール(東ソー販売)など)等が例示される。
【0030】
本発明ライセートは、そのままEt特異的測定のために使用することもできるし、本発明ライセートの組成成分の全部またはその一部を本発明測定剤の成分として用いることもできる。本発明ライセートを用いるEtの測定方法は、本発明測定剤を用いるEtの測定方法(後述の<3>で説明する)と同様である。
<3>本発明測定剤
本発明測定剤は、本発明ライセートを含有するエンドトキシン特異的測定剤である。ここで、本発明ライセートを含有するとは、本発明ライセートの組成成分の全てを含有することのみならず、本発明ライセートの組成成分のうち少なくともC因子系反応関与成分を含みEtを特異的に測定するために必要な成分を少なくとも含有することも意味するが、本発明ライセートの組成成分の全てを含有することが好ましい。少なくともC因子系反応関与成分を含みEtを特異的に測定するために必要な成分としては、図1に示したように、C因子、B因子、凝固酵素前駆体及びコアギュローゲンからなるものまたはそれらからコアギュローゲンを除いたものが挙げられる。本発明測定剤には、本発明ライセート以外に、C因子系反応の活性を阻害しない限りにおいて賦形剤等を含有させても良い。
【0031】
本発明測定剤を使用する際には、リムルス反応に際し、前記カスケード反応系の活性化に有効な2価金属塩を共存させる必要がある。このような2価金属塩としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属のハロゲン化水素酸塩(塩化物等)、硫酸塩等が例示される。
本発明測定剤においては、上記金属塩をリムルス反応時に別に添加してもよいが、本発明測定剤に上記2価金属塩を共存させた状態で、非加熱条件下での乾燥処理(例えば、凍結乾燥)を行って固体状態にしたものが望ましい。さらに、上記アミダーゼ活性を測定するための測定剤は、2価金属塩のほかに前記ペプチド合成基質を共存させたものであることが好ましく、これを乾燥処理したものであってもよい。
【0032】
本発明測定剤を用いてEtを測定するには、図1のカスケード反応によって生成するクロッティングエンザイムの活性を公知の方法で測定すればよい。
クロッティングエンザイムのアミダーゼ活性の測定には、基質として、例えば前記のp−ニトロアニリンのような発色性残基を有するペプチド合成基質もしくは発色性残基を有するこれと類似の配列のペプチド合成基質、またはこれと同一もしくは類似の配列のペプチドであって、C末端のアミノ酸のカルボキシル基に前記発色性残基の代わりに公知の発蛍光性残基、発光性残基、アンモニアなどがアミド結合により置換したペプチド合成基質を使用することができる。クロッティングエンザイムがこれらの合成基質に作用して生成する反応生成物を測定することによって、アミダーゼ活性の測定を行うことができる。具体的には、本発明測定剤とEtを含む反応系に上記ペプチド合成基質を共存させ、反応(カスケード反応および必要に応じて生成物の他色素等への変換反応)によって生成する色素、蛍光物質またはアンモニアをそれぞれ分光光度計、蛍光光度計、化学発光測定装置、アンモニア検出用電極(特開昭62−148860)等によって測定する方法を例示することができる。
【0033】
クロッティングエンザイムのプロテアーゼ活性の測定には、本発明測定剤中に含まれる(もしくは別途添加した)コアギュローゲン(基質)にクロッティングエンザイムが作用してコアギュリンゲルが生成する際のゲル形成反応を、例えば適当な機器(例えば、濁度測定装置、粘度測定装置等)で測定するか、または肉眼で判定する方法を採用することができる。
【0034】
本発明測定剤によりEtが測定される検体としては、基本的には特に制限なく、Et定量の必要があるものあるいはその存否を確認する必要があるものであればよい。例えば、生体試料、医薬品、医療分野で使用する水等を挙げることができる。
【0035】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:
カブトガニ(Limulus polyphemus)のアメボサイト約2gに0.02Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)20mLを加え、ホモジナイザー(ポリトロンR(商品名)、Kinematica社製造)にて回転数、処理温度、処理時間を種々変化させて均一に破砕および抽出し、10,000×Gで30分間冷却遠心し、種々の条件で調製した上澄液(ライセート)を得た。
【0036】
この各種ライセート各々0.04mLに2Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)0.01mL、0.4M塩化マグネシウム0.03mL、3.0mM合成基質(Boc−Leu−Gly−Arg−pNA)0.02mLを加え、さらに検体として蒸留水(ブランク)、Et(大腸菌O111:B4株由来、シグマ社販売のWestphal type;20pg/mL)またはβ−グルカン(以下の方法により調製;20pg/mL)を別々に0.1mL加えた。
【0037】
それらを37℃、30分間加温して反応させ、0.6M酢酸0.4mLを加えて反応を停止させ、405nmの吸光度を測定して、生じたパラニトロアニリンを定量し、反応性を比較検討した。ブランクとの差(ΔA405nm値)を反応性として、その結果を表1に示した。この結果から、カブトガニ・アメボサイトからライセートを抽出する際にホモジナイザーを用いて回転数12000〜30000rpm、処理温度4〜50℃、処理時間1〜20分の機械的処理を行えば、(1)Etに特異的に反応するがβ−グルカンには実質的に反応せず、(2)G因子のみが不活化しており、C因子系反応関与成分は実質的に不活化しておらず、(3)C因子系反応関与成分及びG因子分子自体は一切除去されておらず、(4)G因子系反応抑制剤が含有されていない本発明ライセート及び本発明測定剤が得られることが示された。
【0038】
【表1】
(β−グルカンの調製法)
PCT国際公開W090/02951に記載の方法に準じ、カードラン(和光純薬工業(株)販売)の1gを約100mLの5mM NaOH水溶液に懸濁し、氷冷下で音波発生機、ソニケーターTM(大岳製作所、形式5202PZT、東京)により20kHZ、80Wで12分間音波処理による低分子化を行った。処理液を5M NaOH水溶液を用い、最終0.3M水溶液とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPCカラム:TSK gel G3000PWXL2本、G2500PWXL 1本、移動相:0.3M NaOH水溶液、流速0.5mL/min)により分画採取し、再クロマトグラフィーにより分子量216,000画分を分画採取し、GPC分画精製標品(β−グルカン標品)を得た。
【0039】
実施例2:
実施例1の表1において、24,000rpm、4℃、10分の条件で抽出したライセート0.04mLに、2Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)0.01mL、0.4M塩化マグネシウム0.03mL、3.0mM Boc-Leu-Gly-Arg-pNA 0.02mLを加えて本発明測定剤を得た。この測定剤に蒸留水(ブランク)、種々の濃度のEtまたはβ−グルカンを別々に0.1mL加え、37℃、30分間加温して反応させ、0.6M酢酸0.4mLを加えて反応を停止させ、405nmの吸光度を測定した。ブランクとの差(ΔA405nm値)を縦軸に、Etおよびβ−グルカン濃度を横軸にプロットしてそれぞれの検量線を作成した。その結果を図2に示した。Et濃度と吸光度の間には良好な直線性が得られた。一方、β−グルカンについてはどの濃度においてもブランク値と同一で全く反応しなかった。以上の結果により、本発明測定剤を用いればβ−グルカンに影響されることなく検体中のEtが正確に測定できることがわかる。
【0040】
【発明の効果】
本発明製造方法は、カブトガニ・アメボサイトを特定条件下でホモジナイズするだけでEtに特異的なカブトガニ・アメボサイト・ライセートを得ることができる方法であり、これによってEtに特異的なカブトガニ・アメボサイト・ライセートを極めて簡便かつ安価に製造することができる。また本発明ライセートや本発明測定剤は、本発明製造方法により製造されるものであることから、極めて簡便に製造することができ、安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】リムルス反応の機構を説明する図面である。
【図2】本発明測定剤と種々濃度のエンドトキシン(●)又はβ−グルカン(○)とを反応させたときの吸光度を示す図面である。
Claims (6)
- カブトガニ・アメボサイト、カブトガニ・アメボサイト懸濁液またはC因子及びG因子を少なくとも含む溶液を、G因子を特異的に不活化させる機械的処理に付す工程を含むことを特徴とするエンドトキシン特異的なカブトガニ・アメボサイト・ライセートの製造方法。
- 前記機械的処理は、ホモジナイザーを高速回転させることであることを特徴とする請求項1に記載のエンドトキシン特異的なカブトガニ・アメボサイト・ライセートの製造方法。
- 前記高速回転の回転速度が12000〜30000rpmであることを特徴とする請求項2に記載のエンドトキシン特異的なカブトガニ・アメボサイト・ライセートの製造方法。
- ホモジナイザーを高速回転させることが、4℃〜50℃の条件下で1〜20分間行われることを特徴とする請求項2または3に記載のエンドトキシン特異的なカブトガニ・アメボサイト・ライセートの製造方法。
- 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のエンドトキシン特異的なカブトガニ・アメボサイト・ライセートの製造方法によって製造されることを特徴とするエンドトキシン特異的なカブトガニ・アメボサイト・ライセート。
- 請求項5に記載のエンドトキシン特異的なカブトガニ・アメボサイト・ライセートを含有することを特徴とするエンドトキシン特異的測定剤。
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