JP3821684B2 - 耐熱性架橋ポリエステル樹脂成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面実装コネクター等の高度な耐熱ハンダ性(耐リフロー性)が要求される電子部品に主として用いられる耐熱性樹脂成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子機器の小型化、薄肉化、高機能化に伴い、LSIやIC等の半導体素子、抵抗、コンデンサ、インダクター、コネクター等の電子部品の小型化、薄肉化が進むとともに、プリント配線板への表面実装化率が高まっている。
プリント配線板への電子部品の実装は、従来はスズ−鉛系の半田が使用されてきたが、環境問題への対応の必要性から、鉛フリー半田の実用化が鋭意進められている。
ここで、鉛フリー半田は従来のスズ−鉛系の半田に比べて融点が20〜40℃高いため、半田実装時のリフロー温度も高くなり、電子部品の耐熱性の向上が要求されるようになった。すなわち、鉛フリー半田を使用する場合、電子部品は260℃×60秒の耐熱性が必要であるとされている。
この結果、表面実装コネクターを例にとると、従来は6−ナイロンやPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の汎用エンプラがハウジング材として適用されてきたが、コネクターの小型化により、薄肉化も進行していることから、汎用エンプラでは耐熱性が不足し、LCP(液晶ポリマー)やPPS(ポリフェニレンサルファイド)等のスーパーエンプラが適用されるケースが増加している。
【0003】
しかし、上記のスーパーエンプラでは、不満足であるとされている。
例えばLCPでは、溶融流動性に優れるので薄肉成形性に優れるというメリットがある半面、成形品の強度に異方性が生じやすいこと、靱性に劣るため、薄肉部での強度が劣ること等の欠点がある。
また、PPSは、射出成形時にバリが生じやすい等の点で加工しにくいという問題を抱えている。
更に、スーパーエンプラでは、ナイロンやPBTなどの汎用エンプラと比べて値段がかなり高いという問題もある。
【0004】
以上のような事情から、汎用エンプラであるPBTを架橋して耐熱性を向上させることが注目されている。
PBTを架橋させる方法としては、分子内に炭素−炭素不飽和結合を導入したポリブチレンテレフタレート系のポリエステル樹脂を射出成形法等により溶融成形し、これに電子線やガンマ線等の電離放射線を照射して架橋する方法が考えられる。
ところで、分子内に炭素−炭素不飽和結合を導入したポリブチレンテレフタレート系のポリエステル樹脂は、特開昭51−115594号公報、特開平6−9863号公報、特開平8−134337号公報に開示されている。
【0005】
まず、特開昭51−115594号公報では、オレフィン性二重結合を有する脂肪族ジオールおよび(または)オレフィン性二重結合を有する脂肪族ジカルボン酸を共重合して得られるポリエステルが開示されており、250℃における溶融粘度が600Pa・s以上の高粘度ポリエステルの製造を目的とするものである。なお、上記のオレフィン性二重結合を有するモノマーにおいては、具体例としては2−ブテン−1,4−ジオールが例示されているが、成形品に対する電離放射線の照射による架橋等については示唆されていない。
【0006】
次に、特開平6−9863号公報には、オレフィン二重結合を有する高分子ポリエステルの成形品に対する電離放射線の照射が開示されており、オレフィンモノマーとしては、主鎖中に少なくとも1個のオレフィン系二重結合を含有するジオールが挙げられ、オレフィン二重結合はカルボニル官能基に対してα、β位に存在しないものが良いことが記載されている。
同公報には、オレフィン系不飽和ジカルボン酸についても記載があり、炭素数16〜36個の炭素原子を有する化合物が特に有利であるとあり、10−エイコセン−1,20−ジカルボン酸、10−エイコセン−1,20−ジカルボン酸ジメチルエステルを用いるのが特に有利である旨が記載されている。
しかしながら、当該オレフィン二重結合を有する高分子ポリエステルの成形品の照射後の特性については、ビカット軟化点、荷重たわみ温度、ゲル分率等に関しての記載されているに過ぎず、260℃でのリフローに関しては示唆がない。
【0007】
一方、特開平8−134337号公報にも、オレフィン二重結合を有する高分子ポリエステルの成形品に対する電離放射線の照射が開示されており、オレフィンモノマーとしては、2−ブテン−1,4−ジオールが特に有利なモノマーとして開示されている。
また、当該ポリエステルの成形品の照射処理後の耐熱性に関しても、260℃の溶融半田に10秒間浸漬する試験法での評価結果が記載されている。しかしながら、80×10×4mmという厚肉の形状の試料での試験結果であり、表面実装コネクター等の電子部品の分野で必要とされる厚み0.2〜1.0mmの薄肉成形品での耐熱性については窺い知ることができず、また、電離放射線の照射量に関しても、耐溶融半田性を満足するには、ポリエステル中への2−ブテン−1,4−ジオールの導入比率に依らず、250kGy乃至は1000kGyという多量の照射を必要とすることからコスト的に不利であり、工業的利用という見地から必ずしも十分とは言えない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
更に言えば、前記の公知文献に記載されているオレフィン二重結合を有する高分子ポリエステルには、成形加工上の重要な欠点がある。
それは溶融粘度の経時変化が大きいことである。
本願発明者等の検討によれば、キャピラリーレオメーターで260℃での溶融粘度の経時変化を測定すると、開始時には剪断速度1000(1/s)における粘度が80Pa・sであったものが、260℃×60分後には粘度が20Pa・sと25%に低下し、熱安定性は不十分であった。
【0009】
ところで、ポリエステル樹脂を射出成形するに際しては、射出成形機中での樹脂の滞留による粘度変化についても十分考慮する必要がある。すなわち、成形機内での樹脂の部分的な滞留は、どのような構造の溶融成形機においても避けることのできない現象であり、滞留により溶融粘度が上昇する場合は、高粘度化した樹脂分が成形品の表面に異物、スコーチした微細な塊として析出して外観異常を頻発させる問題があり、逆に、成形機中での樹脂滞留により溶融粘度が著しく低下する場合には成形品の強度を低下させる。
高粘度化、低粘度化、何れの場合も、殊に薄肉成形品の製造に於いては致命的な欠陥となるおそれがあり、成形機内の樹脂滞留による溶融粘度の変化は、出来る限り少ないことが必要である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは上記の課題について、鋭意検討した結果、(1)芳香族ジカルボン酸、(2)飽和脂肪族ジオール、(3)オレフィン二重結合がカルボニル官能基に対してα、β位に存在するジカルボン酸を繰り返し単位とするポリエステルであって、(3)の共重合比率が1〜10モル%であり、250℃での溶融粘度が30〜300Pa・sの範囲であるポリエステル樹脂であれば、溶融粘度の経時変化が極めて少なく、安定性に優れるという性能が得られ、これを射出成形し、電離放射線の照射により架橋すれば、0.2〜1.0mmといった薄肉形状の成形品でも260℃×60秒の耐リフロー性を有し、かつ低線量の電離放射線の照射で十分な耐リフロー性が得られることを見出した。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に於いて、(1)芳香族ジカルボン酸には、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸やこれらの低級アルキルエステルや酸無水物等の誘導体が使用できる。
生成するポリエステル樹脂の融点を高くできる点から、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸ジメチルが好ましく、その中でもテレフタル酸、テレフタル酸ジメタルは、生成するポリエステル樹脂の射出成形性が良好であるという点から特に好ましい。
【0012】
(2)の飽和脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等が使用でき、生成するポリエステル樹脂の射出成形性が良いという点から1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好適である。
(3)のオレフィン二重結合がカルボニル官能基に対してα、β位に存在するジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸やそれらの低級アルキルエステル、酸無水物等の誘導体が使用できる。
(3)のオレフィン二重結合がカルボニル官能基に対してα、β位に存在するジカルボン酸の共重合比率は1〜10モル%が好ましい。
1モル%未満では成形品の照射後の耐リフロー性が低下し、10モル%を越えると、電離放射線の照射による架橋効率は向上するが、ポリエステル樹脂の結晶融点が200℃を下回るようになり、結果としてリフロー時に変形し易くなり、好ましくない。
【0013】
なお、オレフィン性二重結合を有するジカルボン酸について、前記の特開平6−9863号公報に開示されているような、炭素数16〜36個の炭素原子を有する長鎖のオレフィン系不飽和ジカルボン酸化合物はポリエステル樹脂の結晶融点を著しく低下させてしまい、これらは共重合比率が低い場合でも融点が200℃を下回るようになるため、リフロー時に変形し易くなり、好ましくない。
【0014】
上記のリフロー時の熱変形については、照射処理した成形品について、リフロー時の変形と、リフロー温度である260℃での貯蔵弾性率の関係を検討した結果、肉厚が0.2〜1.0mmの薄肉形状の射出成形品に於いて、リフロー時の形状変化を極力低減するためには、ポリエステル樹脂の結晶融点が200℃以上で、かつ260℃での貯蔵弾性率が2×106Pa以上であることが必要なことがわかった。そして、この条件は、モノマー(3)の共重合比を10モル%以下に制限することにより達成できることがわかった。
【0015】
上記ポリエステルは、(1)の芳香族ジカルボン酸成分、(2)の飽和脂肪族ジオール成分、(3)のオレフィン二重結合がカルボニル官能基に対してα、β位に存在するジカルボン酸成分を用いて、チタン酸i−プロピル、チタン酸n−ブチル等の有機チタン化合物等の触媒による公知の手段により製造できる。
ポリエステル樹脂の溶融粘度は、0.2〜1.0mm厚の薄肉の射出成形性や成形品の強度等の点から、250℃での溶融粘度が30〜300Pa・sの範囲になるように設定し、50〜200Pa・sの範囲になるように設定することが好ましい。
【0016】
なお、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、滑剤、可塑剤、着色剤、補強剤、充填剤、難燃剤、酸化防止剤等の既知の配合薬品を適宜添加でき、これら添加剤の混合は単軸押出機や二軸押出機等の既知の混合装置を適用できる。
また、上記の樹脂組成物にトリメチロールプロパントリメタクリレートやトリアリルイソシアヌレート等の多官能性モノマーを配合すると、より低線量の照射で耐熱性の良い成形体が得られる。
【0017】
【実施例】
表1に、以下で述べる実施例、比較例に於けるポリエステル樹脂を重合するためのモノマーの仕込み量のモル比を示す。
【0018】
【表1】
【0019】
(実施例1)
第1表の実施例1の欄に記載のモル比にて重合装置にモノマーを仕込み、チタン酸n−ブチル(触媒)を1000ppm添加して160〜240℃でエステル交換を行い、理論量の98%のメタノールを留去し、その後さらにチタン酸i−プロピルを150ppm添加して240〜260℃、0.1Torrの減圧下にて重縮合を3時間行った後、チタン酸の失活剤として、リン化合物(イルガノックス1222、チバスペッシャルティケミカルズ社製、商品名)を600ppm添加した後、払い出しを行い、融点218℃(DSC測定)、溶融粘度200Pa・s(250℃)の熱可塑性ポリエステル樹脂を得た。
このポリエステル樹脂をペレット化し、80℃にて24時間乾燥させた後、この二軸混合機(45mmφ、L/D=32)を用いて、ポリエステル樹脂100重量部に対し、イルガノックス1010(チバスペッシャルティケミカルズ社製、商品名)を0.5重量部の比率で、バレル温度260℃にて溶融混合し、溶融ストランドを水冷ペタイズしてポリエステル樹脂組成物のペレットを得た。
当該ポリエステル樹脂組成物の溶融粘度の経時変化をキャピラリーレオメーター(ロザンド製 RH−7)で測定した結果、剪断速度1000(1/s)における260℃での溶融粘度は、開始時には130Pa・sであったものが、260℃×60分後にも粘度が90Pa・sと約30%程度の粘度低下に留まり、溶融粘度の経時変化が極めて少なく、優れた熱安定性を有することがわかった。
射出成形機(型締力100トン、スクリュー径45mmφ)を用いて、バレル温度260℃、射出圧100kg/cm2、保圧時間10秒、金型温度60℃の条件にて長さ10×幅10×厚み0.4mm及び長さ30×幅5×厚み2mmの2種類のプレートを製造し、加速電圧3MeVの電子線を100kGy照射して試験試料を得た。
長さ10×幅10×厚み0.4mmの試料を260℃設定ゾーンを60秒間で通過する条件にて、リフロー炉内を移動させ、形状変化率を調べたところ、長さ方向、幅方向ともに1%以内であり、優れた耐リフロー性を有することがわかった。
また、長さ40×幅5×厚み1mmを用い、動的粘弾性測定装置(アイティー計測製、DVA220)を用いて、260℃での貯蔵弾性率を測定した結果、6×106Paであった。
【0020】
(実施例2)
第1表の実施例2の欄に記載のモル比のモノマーを用いた熱可塑性ポリステル樹脂を実施例1と同様の方法で製造した。このポリエステル樹脂の融点は221℃、溶融粘度は130Pa・s(250℃)であった。このポリエステル樹脂をペレット化した。このポリエステル樹脂をペレット化し、80℃にて24時間乾燥させた後、実施例1と同様に、ポリエステル樹脂100重量部に対し、イルガノックス1010(チバスペッシャルティケミカルズ社製、商品名)を0.5重量部の比率で混合したポリエステル樹脂組成物のペレットを得た。
当該ポリエステル樹脂組成物を実施例1と同じ方法で測定した結果、剪断速度1000(1/s)における260℃での溶融粘度は、開始時には80Pa・sであったものが、260℃×60分後にも粘度が60Pa・sと約25%程度の粘度低下に留まり、溶融粘度の経時変化が極めて少なく、優れた熱安定性を有することがわかった。
この樹脂ペレットを射出成形機(型締力100トン、スクリュー径45mmφ)を用いて、実施例1と同じ条件にて、長さ10×幅10×厚み0.4mm及び長さ30×幅5×厚み2mmの2種類のプレートを製造し、加速電圧3MeVの電子線を150kGy照射して試験試料を得た。
実施例1と同様の方法で耐リフロー性を評価した結果、長さ方向、幅方向の変化率はともに1%以内であり、優れた耐リフロー性を有することがわかった。
また、長さ40×幅5×厚み1mmを用い、動的粘弾性測定装置(アイティー計測製、DVA220)を用いて、260℃での貯蔵弾性率を測定した結果、4×106Paであった。
【0021】
(実施例3)
実施例2で製造したポリエステル樹脂ペレット100重量部に対し、イルガノックス1010(チバスペッシャルティケミカルズ社製、商品名)0.5重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート3重量部の比率で実施例1と同様の方法で溶融混合し、ポリエステル樹脂組成物のペレットを得た。
この樹脂ペレットを射出成形機(型締力100トン、スクリュー径45mmφ)を用いて、バレル温度260℃、射出圧100kg/cm2、保圧時間10秒、金型温度60℃の条件にて、長さ10×幅10×厚み0.4mm及び長さ30×幅5×厚み2mmのプレートを製造し、加速電圧3MeVの電子線を100kGy照射して試験試料を得た。
長さ10×幅10×厚み0.4mmの試料を260℃設定ゾーンを60秒間で通過する条件にて、リフロー炉内を移動させ、形状変化率を調べたところ、長さ方向、幅方向ともに1%以内であり、優れた耐リフロー性を有することがわかった。
また、長さ40×幅5×厚み1mmを用い、動的粘弾性測定装置(アイティー計測製、DVA220)を用いて、260℃での貯蔵弾性率を測定した結果、8×106Paであった。
【0022】
(比較例1)
第1表の比較例1の欄に記載のモル比にて、2−ブテン−1,4−ジオールをオレフィン性モノマーとして適用したポリステル樹脂を実施例1と同様の方法で製造した。このポリエステル樹脂の融点は222℃、溶融粘度は180Pa・s(250℃)であった。このポリエステル樹脂をペレット化し、80℃にて24時間乾燥させた後、実施例1と同様の方法で、ポリエステル樹脂100重量部に対し、イルガノックス1010(チバスペッシャルティケミカルズ社製、商品名)を0.5重量部の比率で溶融混合し、ポリエステル樹脂組成物のペレットを得た。
当該ポリエステル樹脂組成物を実施例1と同じ方法で測定した結果、剪断速度1000(1/s)における260℃での溶融粘度は、開始時には100Pa・sであったものが、260℃×60分後にも粘度が30Pa・sと約70%以上の粘度低下があり、溶融粘度の経時変化が大きく、熱安定性が良くないことがわかった。
このポリエステル樹脂を用いて、実施例1と同様に長さ10×幅10×厚み0.4mmのプレートを製造し、このプレート対して、加速電圧3MeVの電子線を100kGy及び250kGyの2条件で照射して試験試料を得た。
このプレート試料を260℃設定ゾーンを60秒間で通過する条件にて、リフロー炉内を移動させ、形状変化率を調べたところ、何れの照射条件の試料も大きく収縮し、100kGy照射品では大きくカールし、250kGy照射品も長さ方向の収縮率が8%、幅方向の収縮率が7%と、耐リフロー性が不十分であることがわかった。
また、長さ40×幅5×厚み1mmを用い、動的粘弾性測定装置(アイティー計測製、DVA220)を用いて、260℃での貯蔵弾性率を測定した結果、1×106Paであった。
【0023】
(比較例2)
第1表の比較例2の欄に記載のモル比、すなわち、二重結合がカルボニル基に対してα、β位にないモノマーであるテトラヒドロフタル酸無水物をオレフィン性モノマーとして適用したポリステル樹脂を実施例1と同様の方法で製造した。このポリエステル樹脂の融点は222℃、溶融粘度は150Pa・s(250℃)であった。このポリエステル樹脂をペレット化し、80℃にて24時間乾燥させた後、実施例1と同様の方法で、ポリエステル樹脂100重量部に対し、イルガノックス1010(チバスペッシャルティケミカルズ社製、商品名)を0.5重量部の比率で溶融混合し、ポリエステル樹脂組成物のペレットを得た。
溶融粘度の経時変化を実施例1と同じ方法で測定した結果、剪断速度1000(1/s)における260℃での溶融粘度は、開始時には110Pa・sであったものが、260℃×60分後にも粘度が20Pa・sと約80%以上の粘度低下があり、溶融粘度の経時変化が大きく、熱安定性が良くないことがわかった。このポリエステル樹脂を用いて、実施例1と同様に長さ10×幅10×厚み0.4mmのプレートを製造し、このプレート対して、加速電圧3MeVの電子線を100kGy及び250kGyの2条件で照射して試験試料を得た。
このプレート試料を260℃設定ゾーンを60秒間で通過する条件にて、リフロー炉内を移動させ、形状変化率を調べたところ、何れの照射条件の試料もカールしていることが目視で確認でき、耐リフロー性は不十分であることがわかった。
【0024】
(比較例3)
第1表の比較例3の欄に記載のモル比率、すなわち、フマル酸ジメチルのモル比が10モル%を越える比率で共重合したポリエステル樹脂を実施例1と同様の方法で製造した。このポリエステル樹脂の融点は182℃、溶融粘度は110Pa・s(250℃)であった。このポリエステル樹脂をペレット化し、80℃にて24時間乾燥させた後、実施例1と同様の方法で、ポリエステル樹脂100重量部に対し、イルガノックス1010(チバスペッシャルティケミカルズ社製、商品名)を0.5重量部の比率で溶融混合し、ポリエステル樹脂組成物のペレットを得た。
このポリエステル樹脂を用いて、実施例1と同様に長さ10×幅5×厚み0.4mmのプレートを製造し、このプレート対して、加速電圧3MeVの電子線を100kGy及び250kGyの2条件で照射して試験試料を得た。
このプレート試料を260℃設定ゾーンを60秒間で通過する条件にて、リフロー炉内を移動させ、形状変化率を調べたところ、100kGy品は幅方向に5%収縮、長さの変化率は7%収縮し、また、250kGy照射品でも幅方向の収縮率は1%以内であったが、長さ方向の収縮率は4%であり、耐リフロー性は不十分であることがわかった。
【0025】
【発明の効果】
以上に述べた通り、(1)芳香族ジカルボン酸、(2)飽和脂肪族ジオール、(3)オレフィン二重結合がカルボニル官能基に対してα、β位に存在するジカルボン酸を繰り返し単位とするポリエステルであって、(3)の共重合比率が1〜20モル%であるポリエステル樹脂は、加工安定性に優れ、薄肉形状の精密成形ができ、しかも低線量の照射で高度な耐熱性を確保できるので、基板実装コネクター等の電子部品の製造分野での利用価値は大変大きいものがある。
Claims (3)
- (1)芳香族ジカルボン酸、(2)飽和脂肪族ジオール、(3)炭素−炭素二重結合がカルボニル官能基に対してα、β位に存在するジカルボン酸を主たる繰り返し単位とし、前記(3)の炭素−炭素二重結合がカルボニル官能基に対してα、β位に存在するジカルボン酸の共重合比率が1〜10モル%であり、250℃での溶融粘度が30〜300Pa・sの範囲である熱可塑性ポリエステル樹脂を主体とする樹脂組成物を射出成形し、電離放射線の照射により架橋してなることを特徴とする耐熱性架橋ポリエステル樹脂成形品。
- 前記(3)の炭素−炭素二重結合がカルボニル官能基に対してα、β位に存在するジカルボン酸が、フマル酸または、マレイン酸であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性架橋ポリエステル樹脂成形品。
- 融点が200℃以上で、260℃での貯蔵弾性率が2×106Pa以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐熱性架橋ポリエステル樹脂成形品。
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