JP2018177856A - ワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物、およびこれから得られるワイヤーハーネスコネクタ - Google Patents

ワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物、およびこれから得られるワイヤーハーネスコネクタ Download PDF

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馨 皆川
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信宏 滝沢
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Abstract

【課題】成形性が良好であり、寸法安定性や耐湿熱性に優れ、さらに十分に剛性が高いワイヤーハーネスコネクタを作製可能なワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)と、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)と、オレフィン由来の構造単位、α,β−不飽和カルボン酸エステル由来の構造単位、および環状オキシ炭化水素構造を有する構造単位を有する共重合体(C)と、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)と、エチレン系オレフィン重合体(E)と、を含む。ポリアミド樹脂(A)は、テレフタル酸成分単位を含み、エチレン系オレフィン重合体(E)の密度は0.87〜0.95g/cmであり、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の含有量の比は1.5以上15以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物、およびこれから得られるワイヤーハーネスコネクタに関する。
ポリアミド樹脂は、優れた耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性および難燃性を有することから、電気部品、電子部品、自動車部品などの幅広い分野に利用されている。中でも、自動車分野の部品の軽量化の傾向に応じて、金属部品をポリアミド樹脂組成物の成形品で代替することが検討されている。ポリアミド樹脂を含む成形品の適用が期待される部材の一つに、ワイヤーハーネスコネクタがある。ワイヤーハーネスコネクタは、複数の電線の束を各種機器の端子に固定すると共に、各電線と各種機器の回路とを電気的に接続するための部材である。ワイヤーハーネスコネクタは通常、各種機器の端子に嵌合可能な形状を有し、各種機器の端子と着脱可能に形成される。
ここで、ポリアミド樹脂は耐熱性等の優れた特性を有する一方で、高い吸水性を有し、寸法が変化しやすいとの性質も有する。そのため、電気・電子部品や自動車部品のような精密な寸法精度を求められる分野にポリアミド樹脂を含む成形品を適用し難く、上述のワイヤーハーネスコネクタにも適用し難い、との課題があった。
このような課題に対し、ポリアミド樹脂にポリエステル樹脂を加え、成形品の吸水性を低減し、寸法安定性を高めることが検討されている。ただし、ポリアミド樹脂とポリエステル樹脂とを複合させるためには相溶化剤が必要であり、例えば、ポリアミド樹脂と、ポリエステル樹脂とを含む組成物に、エチルアクリレートとグリシジルアクリレートとの共重合体をさらに添加すること等が提案されている(例えば、特許文献1)。
米国特許第5296550号明細書
特許文献1の樹脂組成物によれば、得られる成形品の吸水性が低くなり、寸法安定性は高まる。しかしながら、当該樹脂組成物の成形品は、剛性が低い。またさらに、自動車分野に使用される部材(成形品)には、耐湿熱性も求められるが、上述の特許文献1の樹脂組成物から得られる成形品では、耐湿熱性が十分でなく、さらなる改良が望まれている。また、樹脂組成物の組成によっては、射出流動性が低くなることがあり、樹脂組成物には、成形性(射出流動性等)が高いことも望まれている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、成形性が良好であり、寸法安定性、剛性、および耐湿熱性に優れるワイヤーハーネスコネクタを作製可能な樹脂組成物、およびこれから得られるワイヤーハーネスコネクタを提供することを目的とする。
本発明の第一は、以下のワイヤーコネクタ用樹脂組成物に関する。
[1]示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)が300〜340℃であるポリアミド樹脂(A)60〜80質量%と、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)5〜20質量%と、オレフィン由来の構造単位、α,β−不飽和カルボン酸エステル由来の構造単位、および環状オキシ炭化水素構造を有する構造単位を有する共重合体(C)1〜20質量%と、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)0〜20質量%と、エチレン系オレフィン重合体(E)0〜20質量%と、を含有し(但し、前記ポリアミド樹脂(A)、前記熱可塑性ポリエステル樹脂(B)、前記共重合体(C)、前記エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)、および前記エチレン系オレフィン重合体(E)の合計を100質量%とする)、前記ポリアミド樹脂(A)は、テレフタル酸成分単位を少なくとも含むジカルボン酸成分単位(a1)と、炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位を少なくとも含むジアミン成分単位(a2)と、を含み、かつ、前記ジカルボン酸成分単位(a1)の総量に対して、テレフタル酸成分単位を20〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位を0〜80モル%、および炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位を0〜60モル%含み、前記エチレン系オレフィン重合体(E)の密度が、0.87〜0.95g/cmであり、前記共重合体(C)の含有量に対する、前記熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の含有量の比が、1.5以上15以下である、ワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
[2]前記熱可塑性ポリエステル樹脂(B)は、融点(Tm)が210℃〜280℃である、[1]に記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
[3]前記熱可塑性ポリエステル樹脂(B)が、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリブチレンテレフタレートである、[1]または[2]に記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
[4]前記共重合体(C)が、エチレン・メチルアクリレート・グリシジルメタクリレート共重合体である、[1]〜[3]のいずれかに記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
[5]前記ポリアミド樹脂(A)は、前記ジカルボン酸成分単位(a1)の総量に対して、テレフタル酸成分単位を30〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位を0〜70モル%、および炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位を0〜60モル%含み、前記ジアミン成分単位(a2)の総量に対して、炭素原子数4〜15の脂肪族ジアミン成分単位を30〜100モル%含む、[1]〜[4]のいずれかに記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
[6]前記ポリアミド樹脂(A)は、前記ジカルボン酸成分単位(a1)の総量に対して、テレフタル酸成分単位を40〜80モル%、およびアジピン酸成分単位を20〜60モル%含み、前記ジアミン酸成分単位(a2)の総量に対して、ヘキサメチレンジアミン成分単位を80〜100モル%含む、[1]〜[5]のいずれかに記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
[7]前記ポリアミド樹脂(A)の前記ジアミン成分単位(a2)が、2−メチル−1,8−オクタンジアミン成分単位、および2−メチル−1,5−ペンタンジアミン成分単位のうち、少なくとも一方を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
[8]前記ポリアミド樹脂(A)の前記ジアミン成分単位(a2)が、1,6−ヘキサンジアミン成分単位、および2−メチル−1,5−ペンタンジアミン成分単位を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
[9]前記ポリアミド樹脂(A)の前記ジアミン成分単位(a2)が、1,9−ノナンジアミン成分単位、および2−メチル−1,8−オクタンジアミン成分単位を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
[10]前記ポリアミド樹脂(A)の前記ジカルボン酸成分単位(a1)が、テレフタル酸成分単位およびイソフタル酸成分単位を含み、前記ポリアミド樹脂(A)の前記ジアミン成分単位(a2)が、炭素原子数が4〜15のアルキレンジアミン成分を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
[11]前記エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)は、エチレン・ブチルアクリレート共重合体である、[1]〜[10]のいずれかに記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
[12]前記エチレン系オレフィン重合体(E)は、直鎖状低密度ポリエチレンである、[1]〜[11]のいずれかに記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
本発明の第二は、以下のワイヤーハーネスコネクタに関する。
[13]上記[1]〜[12]のいずれかに記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物の成形品を含む、ワイヤーハーネスコネクタ。
本発明のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物によれば、成形性が良好であり、寸法安定性や耐湿熱性に優れ、さらに十分に剛性が高いワイヤーハーネスコネクタが得られる。
1.ワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物
本発明のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」とも称する)は、ワイヤーハーネスコネクタの材料として用いられる。具体的には、ワイヤーハーネスコネクタの絶縁部や筐体、ハウジング、リテーナー等を形成するための樹脂組成物である。
ワイヤーハーネスコネクタには、各種機器の端子に着脱するとの観点から靱性や寸法安定性が求められる。また特に、車両に用いられるワイヤーハーネスコネクタには、耐熱性や剛性、耐湿熱性等も求められる。しかしながら、前述のように、ポリアミド樹脂は、靱性が高いものの、吸水性が高く、寸法変化しやすいとの課題があった。一方で、寸法安定性を高めるため、ポリアミド樹脂にポリエステル樹脂等を添加すると、耐湿熱性が低下しやすい。また、ポリアミド樹脂に酸変性ポリオレフィン樹脂等を添加することも考えられるが、この場合、成形品の剛性が低下する。つまり、従来の樹脂組成物では、靱性、寸法安定性、耐湿熱性、および剛性を兼ね備えた成形品を得ることが難しかった。
これに対し、本発明の樹脂組成物は、少なくとも、テレフタル酸由来の構造単位および脂肪族ジアミン由来の構造単位を含むポリアミド樹脂(A)と、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)と、オレフィン由来の構造単位、α,β−不飽和カルボン酸エステル由来の構造単位、および環状オキシ炭化水素構造を有する構造単位を有する共重合体(C)とを、所定の比率で含む。これにより、得られる成形品が、ポリアミド樹脂(A)由来の靱性や耐熱性、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)由来の剛性や寸法安定性を兼ね備えることができる。なお、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)は、加水分解されたり、成形時の熱で分解されて低分子量化しやすい。そのため、樹脂組成物が熱可塑性ポリエステル樹脂(B)を多量に含むと、得られる成形品の耐湿熱性が低下しやすい。これに対し、本発明の樹脂組成物では、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の量が樹脂成分(ポリアミド樹脂(A)、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)、共重合体(C)、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)、およびエチレン系オレフィン重合体(E)の総量)の20質量%以下であり、さらに熱可塑性ポリエステル樹脂(B)と共に、上述の構造単位を含む共重合体(C)を含む。そのため、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)由来の耐湿熱性低下が生じ難く、さらには熱可塑性ポリエステル樹脂(B)と共重合体(C)とが反応することで、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の分解が抑制される。したがって、得られる樹脂組成物から得られる成形品の耐湿熱性が低下し難い。さらに、共重合体(C)の含有量に対する、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の含有量(熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の含有量/共重合体(C)の含有量)が1.5〜15であるため、樹脂組成物の流動性が高まり、成形性が高まる。さらに、得られる成形品の耐湿熱性も高まる。
以下、本発明のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物が含む各成分について説明する。
1−1.ポリアミド樹脂(A)
本発明の樹脂組成物が含むポリアミド樹脂(A)は、テレフタル酸成分単位を少なくとも含むジカルボン酸成分単位(a1)と、炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位を少なくとも含むジアミン成分単位(a2)と、を含む樹脂である。本発明の樹脂組成物は、当該ポリアミド樹脂(A)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
ポリアミド樹脂(A)の示差走査熱量測定(DSC)で測定される融点(Tm)は300〜340℃であり、好ましくは305〜335℃であり、さらに好ましくは310〜335℃である。ポリアミド樹脂(A)の融点が上記範囲内であると、樹脂組成物の成形性と、樹脂組成物から得られる成形品の耐熱性とを両立させることができる。例えば、樹脂組成物に、融点(Tm)が過度に高いポリアミド樹脂(A)が含まれると、樹脂組成物の成形温度を高く設定する必要がある。その結果、成形時に後述の熱可塑性ポリエステル樹脂(B)が多量に熱分解して、所望の剛性が得られなくなったり、金型汚れが生じて、連続成形が困難となることがある。これに対し、ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)が上記範囲であれば、適度な温度で樹脂組成物を成形することができ、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の熱分解を抑制することができる。
ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)は、ポリアミド樹脂(A)を構成するジカルボン酸成分単位(a1)や、ジアミン成分単位(a2)の種類、ポリアミド樹脂(A)の分子量等で調整される。なお、樹脂組成物が2種以上のポリアミド樹脂(A)を含む場合、これらの混合物のDSCで測定される融点(Tm)が、上記範囲にあればよい。
また、ポリアミド樹脂(A)の、示差走査熱量測定(DSC)で測定されるガラス転移温度(Tg)は70〜160℃であることが好ましく、80〜150℃であることがより好ましい。ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が当該範囲であると、樹脂組成物から得られる成形品の耐熱性が高くなる。
ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(例えば、DSC220C型、セイコーインスツル(株)製)にて測定される。具体的には、ポリアミド樹脂(A)約5mgを測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minの昇温速度で340℃まで加熱する。ポリアミド樹脂(A)を完全融解させるために、340℃で5分間保持し、次いで、10℃/minの降温速度で30℃まで冷却する。そして、30℃で5分間置いた後、10℃/minで340℃まで2度目の加熱を行なう。この2度目の加熱でのピーク温度(℃)をポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)とし、ガラス転移に相当する変位点をガラス転移温度(Tg)とする。
また、ポリアミド樹脂(A)の温度25℃、96.5%硫酸中で測定される極限粘度[η]は0.7〜1.6dl/gであることが好ましく、0.8〜1.2dl/gであることがより好ましい。ポリアミド樹脂(A)の極限粘度[η]が上記範囲であると、樹脂組成物から得られる成形品の機械的強度が十分に高まりやすい。一方で、極限粘度が上記範囲であれば、樹脂組成物の成形時の流動性が高まりやすく、所望の形状に成形しやすくなる。なお、上記極限粘度[η]は、ポリアミド樹脂(A)の分子量によって調整される。
上記極限粘度は、以下のように特定する。まず、約0.5gのポリアミド樹脂(A)を96.5%濃硫酸50mlに溶解させる。そして、得られた溶液の、25℃±0.05℃の条件下での流下秒数を、ウベローデ粘度計を使用して測定する。その後、以下の式に基づいて、極限粘度を算出する。
[η]=ηSP/(C(1+0.205ηSP))
上記式において、各代数または変数は以下を表す。
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
上記ηSPは以下の式によって求められる。
ηSP=(t−t0)/t0
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:ブランク硫酸の流下秒数(秒)
ここで、ポリアミド樹脂(A)は、前述のように、ジカルボン酸成分単位(a1)と、ジアミン成分単位(a2)と、から主に構成される。
上記ジカルボン酸成分単位(a1)は、テレフタル酸成分単位を少なくとも含む。テレフタル酸成分単位の量は、ジカルボン酸成分単位(a1)の総量100モル%に対して20〜100モル%であり、好ましくは30〜100モル%であり、さらに好ましくは35〜100モル%である。ジカルボン酸成分単位(a1)が、テレフタル酸成分単位を20モル%以上含むと、ポリアミド樹脂(A)の結晶性が高まりやすく、得られる成形品の耐熱性や剛性が高まりやすくなる。
また、ジカルボン酸成分単位(a1)は、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位、および炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位のうち、いずれか一方、もしくは両方を含んでいてもよい。テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位の量は、ジカルボン酸成分単位(a1)の総量100モル%に対して0〜80モル%であり、好ましくは0〜75モル%であり、さらに好ましくは0〜70モル%である。ジカルボン酸成分単位(a1)がテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位を含むと、耐衝撃性が良好となる。一方、炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位の量は、ジカルボン酸成分単位(a1)の総量100モル%に対して0〜60モル%であり、好ましくは0〜58モル%であり、さらに好ましくは0〜55モル%である。ジカルボン酸成分単位(a1)が脂肪族ジカルボン酸成分単位を含むと、樹脂組成物の流動性が良好になる。
テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位は、芳香環と、2つのカルボキシル基とを有する芳香族ジカルボン酸化合物由来の成分単位とすることができる。芳香族ジカルボン酸化合物の例には、イソフタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が含まれる。ジカルボン酸成分単位(a1)は、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位は、好ましくはイソフタル酸成分単位である。
一方、炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位は、炭素原子数4〜20の脂肪族鎖と、2つのカルボキシル基とを有する脂肪族ジカルボン酸化合物由来の成分単位とすることができる。脂肪族ジカルボン酸化合物の例には、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸や、炭素原子数11以上の脂肪族ジカルボン酸が含まれる。ジカルボン酸成分単位(a1)は、脂肪族ジカルボン酸成分単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。脂肪族ジカルボン酸成分単位は、好ましくはアジピン酸成分単位である。
また、ジカルボン酸成分単位(a1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、脂環族ジカルボン酸化合物由来の脂環族ジカルボン酸成分単位を含んでいてもよい。脂環族ジカルボン酸化合物の例には、2,5−フランジカルボン酸などのフランジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸などのシクロヘキサンジカルボン酸等が含まれる。
ここで、ジカルボン酸成分単位(a1)は、テレフタル酸成分単位およびイソフタル酸成分単位を含むことが好ましい。この場合、テレフタル酸成分単位とイソフタル酸成分単位とのモル比は、60/40〜99.9/0.1であることが好ましく、60/40〜90/10であることがより好ましく、60/40〜85/15であることがさらに好ましい。テレフタル酸成分単位の量が上記範囲であると、樹脂組成物から得られる成形品の耐熱性や剛性が高まりやすくなる。一方で、イソフタル酸成分単位の量が上記範囲であると、得られる成形品の剛性を維持したまま、樹脂組成物の成形時の流動性を高めることができる。
また、ジカルボン酸成分単位(a1)は、テレフタル酸成分単位とアジピン酸成分単位とを含むことも好ましい。この場合、ジカルボン酸成分単位(a1)の総量100モル%に対して、テレフタル酸成分単位を40〜80モル%、アジピン酸成分単位を20〜60モル%含むことが好ましい。
一方、ジアミン成分単位(a2)は、炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位を少なくとも含む。脂肪族ジアミン成分単位の量は、ジアミン成分単位(a2)の総量100モル%に対して、30〜100モル%であることが好ましく、35〜100モル%であることがより好ましく、40〜100モル%であることがさらに好ましい。脂肪族ジアミン成分単位の量が上記範囲であると、樹脂組成物の流動性が高まりやすくなり、また、成形品の耐衝撃性が高まりやすくなる。
ここで、脂肪族ジアミン成分単位中の炭素原子数は、好ましくは4〜15であり、さらに好ましくは4〜13であり、特に好ましくは6〜12である。脂肪族ジアミン成分単位の炭素原子数が4以上であると、得られる成形品の吸湿性や吸水性が低くなり、寸法安定性が高くなる。
脂肪族ジアミン成分単位は、直鎖状のアルキレンジアミン化合物由来の成分単位(以下、「直鎖アルキレンジアミン成分単位」とも称する)、または側鎖を有するアルキレンジアミン化合物由来の成分単位(以下、「側鎖アルキレンジアミン成分単位」とも称する)の少なくとも一方、もしくは両方を含むことが好ましい。なお、側鎖アルキレンジアミンの炭素原子数は、側鎖に含まれる炭素原子の数も含めた数である。
ここで、ジアミン成分単位(a2)は、その総量100モル%に対して、直鎖アルキレンジアミン成分単位を40モル%以上含むことが好ましい。直鎖アルキレンジアミン成分単位を一定以上含むと、樹脂組成物の耐水性が高まりやすくなる。一方、脂肪族ジアミン成分単位は、その総量100モル%に対して、側鎖アルキレンジアミン成分単位を3〜60モル%含むことが好ましい。脂肪族ジアミン成分単位が側鎖アルキレンジアミン成分単位を一定量含むと、得られる成形品の高温剛性が高まりやすくなる。
直鎖状のアルキレンジアミン化合物の例には、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等が含まれる。ジアミン成分単位(a2)は、直鎖アルキレンジアミン成分単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。これらの中でも、1,6−ヘキサンジアミンおよび1,9−ノナンジアミンが好ましく、直鎖アルキレンジアミンの総量100モル%に対して、これらの総量が50〜100モル%であることが好ましく、80〜100モル%であることがより好ましい。
側鎖を有するアルキレンジアミン化合物の例には、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,7−ヘプタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2−メチル−1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,10−デカンジアミン、2−メチル−1,11−ウンデカンジアミン等が含まれる。ジアミン成分単位(a2)は、側鎖アルキレンジアミン成分単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。これらの中でも、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、および2−メチル−1,8−オクタンジアミンが好ましい。
ジアミン成分単位(a2)が、直鎖アルキレンジアミン成分単位および側鎖アルキレンジアミン成分単位の両方を含む場合、これらの好ましい組み合わせの一例として、1,6ージアミノヘキサン成分単位と、2−メチル−1,5−ペンタジアミン成分単位との組み合わせが挙げられる。このときジアミン成分単位(a2)の総量100モル%に対して、1,6ージアミノヘキサン成分単位が45モル%超55モル%未満であり、かつ2−メチル−1,5−ペンタジアミンが45モル%超55モル%未満であることが好ましい。また、好ましい組み合わせの他の例として、1,9−ノナンジアミン成分単位と、2−メチル−1,8−オクタンジアミン成分単位との組み合わせも挙げられる。このときジアミン成分単位(a2)の総量100モル%に対して、1,9−ノナンジアミン成分単位が45モル%超85モル%未満であり、かつ2−メチル−1,8−オクタンジアミン成分単位が15モル%超55モル%未満であることが好ましい。
なお、ジアミン成分単位(a2)は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記脂肪族ジアミン成分単位(炭素原子数4〜20)より、炭素原子数が多い脂肪族ジアミン成分単位を含んでいてもよい。また、ジアミン成分単位(a2)は、脂環族ジアミン成分単位や、芳香族ジアミン成分単位を含んでいてもよい。脂環族ジアミン成分単位の例には、炭素原子数が4〜15である脂環族ジアミン化合物由来の成分単位が含まれる。脂環族ジアミン化合物の例には、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルプロパン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−5,5’−ジメチルジシクロヘキシルメタン等が含まれる。なかでも脂環族ジアミン成分単位は、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタンから誘導される成分単位が好ましく、特に、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、1,3−ビス(アミノシクロヘキシル)メタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導される成分単位であることが好ましい。炭素原子数が多い脂肪族ジアミン成分単位や、芳香族ジアミン成分単位、脂環族ジアミン成分単位の総量は、ジアミン成分単位(a2)の総量100モル%に対して、5モル%以下であることが特に好ましい。
上記ポリアミド樹脂(A)として特に好ましい樹脂の例として、ジカルボン酸成分単位(a1)が、テレフタル酸成分単位であり、ジアミン成分単位(a2)が、1,6−ヘキサンジアミン成分単位および2−メチル−1,5−ペンタンジアミン成分単位である樹脂;ジカルボン酸成分単位(a1)が、テレフタル酸成分単位であり、ジアミン成分単位(a2)が、1,9−ノナンジアミン成分単位および2−メチル−1,8−オクタンジアミン成分単位である樹脂;ジカルボン酸成分単位(a1)が、テレフタル酸成分単位およびイソフタル酸成分単位であり、ジアミン成分単位(a2)が、1,6−ヘキサンジアミン成分単位である樹脂;ジカルボン酸成分単位(a1)が、テレフタル酸成分単位およびアジピン酸成分単位であり、ジアミン成分単位(a2)が、1,6−ヘキサンジアミン成分単位である樹脂等が挙げられる。本発明の樹脂組成物は、これらを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
ここで、上記ポリアミド樹脂(A)は、末端封止剤により封止されていてもよい。末端封止剤とは、例えばモノカルボン酸およびモノアミンでありうる。末端封止剤により、ポリアミド樹脂(A)の末端のカルボキシル基およびまたはアミノ基を封止することで、ポリアミド樹脂(A)が有するカルボキシル基量やアミノ基量が調整される。
ポリアミド樹脂(A)の分子鎖の末端アミノ基量は、好ましくは0.1〜200mmol/kgであり、より好ましくは0.1〜175mmol/kgであり、特に好ましくは0.1〜150mmol/kgである。ポリアミド樹脂(A)の末端に0.1mmol/kg以上のアミノ基が存在すると、ポリアミド樹脂(A)と熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の官能基とが相互作用しやすくなり、これらの分散性が高まりやすくなる。その結果、得られる成形品の耐熱性や剛性、耐衝撃性が高まりやすくなる。
一方、末端アミノ基量が多過ぎると、成形品の吸湿性や吸水性が高まりやすくなり、寸法安定性が低下することがあるが、末端アミノ基量が200mmol/kg以下であれば、ポリアミド樹脂(A)の吸水率が低く抑えられる。
ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基量は、ポリアミド樹脂(A)調製時に使用するジアミンとジカルボン酸との比率や、上記末端封止剤量より調整される。例えば、ポリアミド樹脂(A)調製時にジアミンとジカルボン酸を含む系に、モノカルボン酸等からなる末端封止剤を添加し、一部の末端を封止することで、末端アミノ基量が調整される。
上記末端アミノ基量は以下の方法にて測定される。ポリアミド樹脂(A)1gをフェノール35mLに溶解させ、メタノールを2mL混合し、試料溶液とする。そして、チモールブルーを指示薬として、当該試料溶液に対して0.01規定のHCl水溶液を使用した滴定を実施し、末端アミノ基量([NH]、単位:mmol/kg)を特定する。
上記ポリアミド樹脂(A)は、公知のポリアミドと同様に製造することができ、例えば、ジカルボン酸とジアミンとを均一溶液中で重縮合させて製造することができる。より具体的には、ジカルボン酸とジアミンとを、国際公開第03/085029号に記載されているように触媒の存在下で加熱することにより低次縮合物を得て、次いでこの低次縮合物の溶融物にせん断応力を付与することにより重縮合させて製造することができる。
また、ポリアミド樹脂(A)の極限粘度を調整する場合には、反応系に上述の末端封止剤等、分子量を調整するための化合物(以下、「分子量調整剤」とも称する)を配合することが好ましい。分子量調整剤は、例えばモノカルボン酸およびモノアミンでありうる。分子量調整剤でありうるモノカルボン酸の例には、炭素原子数2〜30の脂肪族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸が含まれる。これらの分子量調整剤によれば、ポリアミド樹脂(A)の分子量を調整すると共に、ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基の量を調整することができる。なお、芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸は、環状構造部分に置換基を有していてもよい。
上記脂肪族モノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノ−ル酸等が含まれる。上記芳香族モノカルボン酸の例には、安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸およびフェニル酢酸等が含まれ、脂環族モノカルボン酸の例には、シクロヘキサンカルボン酸等が含まれる。
分子量調整剤は、ジカルボン酸とジアミンとの反応系に添加する。添加量はジカルボン酸の総量1モルに対して、0.07モル以下であることが好ましく、0.05モル以下であることがより好ましい。このような量で分子量調整剤を使用することにより、少なくともその一部がポリアミド中に取り込まれ、これによりポリアミド樹脂(A)の分子量、すなわち極限粘度[η]が所望の範囲内に調整される。
本発明の樹脂組成物におけるポリアミド樹脂(A)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)、共重合体(C)、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)、およびエチレン系オレフィン重合体(E)の合計を100質量%としたとき、60〜80質量%である。ポリアミド樹脂(A)の含有量は、65〜80質量%であることがより好ましく、68〜80質量%であることがさらに好ましい。上記ポリアミド樹脂(A)の含有量が上記範囲であると、得られる成形品の耐熱性や剛性、耐衝撃性等が高まりやすい。
1−2.熱可塑性ポリエステル樹脂(B)
本発明の樹脂組成物が含む熱可塑性ポリエステル樹脂(B)は、分子内にエステル基を有する樹脂であれば特に制限されない。熱可塑性ポリエステル樹脂(B)は、分子内に、(i)ジカルボン酸化合物またはその誘導体由来の成分単位、(ii)ジオール化合物またはその誘導体由来の成分単位、(iii)ヒドロキシカルボン酸化合物またはその誘導体由来の成分単位;(iv)ラクトン由来の成分単位を有する樹脂とすることができる。
(i)上記ジカルボン酸化合物は、一分子内に2つのカルボキシル基を有する化合物であればよく、その例には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;が含まれる。また、ジカルボン酸化合物の誘導体は、エステル結合を形成可能な構造、例えばカルボキシル基やヒドロキシ基を有していればよく、例えば上記ジカルボン酸化合物に各種置換基が結合した化合物とすることができる。
(ii)上記ジオール化合物は、一分子内に2つのヒドロキシ基を有する化合物であればよく、その例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオール等の炭素数2〜20の脂肪族グリコール;ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の分子量200〜100000の長鎖グリコール;4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF等の芳香族ジオキシ化合物;が含まれる。また、ジオール化合物の誘導体は、エステル結合を形成可能な構造、例えばカルボキシル基やヒドロキシ基を有していればよく、例えば上記ジオール化合物に各種置換基が結合した化合物とすることができる。
(iii)上記ヒドロキシカルボン酸化合物は、一分子内にヒドロキシ基とカルボキシル基とを有する化合物であればよく、その例には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリプロピレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンイソフタレート、ポリへキシレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル;ポリエチレンオキサレート、ポリプロピレンオキサレート、ポリブチレンオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリネオペンチルグリコールアジペート、ポリエチレンセバケート、ポリプロピレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリエチレンサクシネート/アジペート、ポリプロピレンサクシネート/アジペート、ポリブチレンサクシネート/アジペート等の脂肪族ポリエステル;が含まれる。また、上記ヒドロキシカルボン酸化合物の例には、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸や、これらの重合体もしくは共重合体も含まれる。これらの重合体もしくは共重合体の例には、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸/乳酸、ポリヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ吉草酸等が含まれる。また、これらの誘導体は、エステル結合を形成可能な構造、例えばカルボキシル基やヒドロキシ基を有していればよく、例えば上記ヒドロキシカルボン酸化合物に各種置換基が結合した化合物とすることができる。
(iv)上記ラクトンの例には、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンが含まれ、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)には、これらの重合体または共重合体由来の成分単位が含まれてもよい。上記ラクトンの重合体または共重合体の例には、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリカプロラクトン/バレロラクトン等が含まれる。
熱可塑性ポリエステル樹脂(B)は、(i)ジカルボン酸化合物またはその誘導体と、(ii)ジオール化合物またはその誘導体との重合体または共重合体であることが好ましい。また特に、テレフタル酸またはその誘導体と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールから選ばれる脂肪族ジオールまたはその誘導体との重合体または共重合体(芳香族ポリエステル樹脂)であることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートであることが特に好ましい。
なお、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)は、溶融時に異方性を示す液晶性ポリエステル樹脂であってもよい。液晶性ポリエステル樹脂は、その成分単位として、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位、芳香族イミノオキシ単位を含む樹脂とすることができる。
ここで、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)は210℃〜280℃であることが好ましく、215〜280℃であることがより好ましく、230〜275℃であることがさらに好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の融点(Tm)が、ポリアミド樹脂(A)の融点より低いと、樹脂組成物の成形時に、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)が僅かに分解し、樹脂組成物の流動性が高まる。その結果、樹脂組成物から得られる成形品を軽量化や小型化することが可能となる。一方で、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の融点(Tm)が過度に低いと、成形時に熱可塑性ポリエステル樹脂(B)が過度に分解してしまい、樹脂組成物の剛性が低下しやすくなるが、融点(Tm)が上記範囲であれば、剛性の高い成形品が得られやすくなる。
また、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の好ましい固有粘度(極限粘度)[η]は、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の種類等により適宜選択されるが、例えば熱可塑性ポリエステル樹脂(B)が、ポリアルキレンテレフタレートやそのコポリエステルである場合、その固有粘度(極限粘度)[η]は、0.5〜1.5であることが好ましく、0.6〜1.3であることがより好ましい。極限粘度が上記範囲にある場合、樹脂組成物の成形時の流動性が高まりやすい。
また特に、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)がポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートである場合、その固有粘度(極限粘度)[η]は、0.6〜1.5であることが好ましく、0.6〜1.0であることがより好ましい。これらの樹脂の固有粘度(極限粘度)が0.6以上であると、得られる成形品の機械的強度が高まる傾向にある。また、固有粘度(極限粘度)が1.5以下であると、溶融成形時に流動性が過度に低下せず、成形品の表面特性が向上し、成形品表面の輝度が高まり、外観が優れる傾向にある。
熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の固有粘度(極限粘度)は、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の分子量等により調整することができる。熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の分子量は、例えば重縮合反応の進行度合いを調整したり、反応系内に単官能のカルボン酸または単官能のアルコールを適量加えたりすることで、調整することができる。
上記固有粘度(極限粘度)[η]は、以下の手順で特定することができる。熱可塑性ポリエステル樹脂(B)をフェノールとテトラクロロエタンの50/50質量%の混合溶媒に溶解させて試料溶液とする。得られた試料溶液の流下秒数を、ウベローデ粘度計を用いて25℃±0.05℃の条件下で測定する。そして、得られた数値を、下記式に当てはめて極限粘度[η]を算出する。
[η]=ηSP/[C(1+kηSP)]
上記式において、各代数または変数は以下を表す。
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
k:定数(溶液濃度の異なるサンプル(3点以上)の比粘度を測定し、横軸に溶液濃度、縦軸にηsp/Cをプロットして求めた傾き)
上記ηSPは以下の式によって求められる。
ηSP=(t−t0)/t0
上記式において、各変数は以下を表す。
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:溶媒の流下秒数(秒)
熱可塑性ポリエステル樹脂(B)は、公知の方法で製造してもよく、市販のものを購入してもよい。熱可塑性ポリエステル樹脂(B)を製造する場合、反応系内に分子量調整剤等を配合して、ジカルボン酸成分単位とジアルコール成分単位とを反応させて製造することができる。上述のように、反応系内に分子量調整剤を配合することで、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の極限粘度を調整することができる。
本発明の樹脂組成物における熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)、共重合体(C)、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)、およびエチレン系オレフィン重合体(E)の合計を100質量%としたとき、5〜20質量%である。熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の含有量は、10〜20質量%であることが好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の含有量が20質量%を超えると、樹脂組成物から得られる成形品の耐湿熱性が低下する傾向にあり、5質量%未満であると成形品の剛性が低下する傾向にある。これに対し、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の含有量が上記範囲であると、成形品の剛性および耐湿熱性が良好になりやすい。また、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の量が上記範囲であると、樹脂組成物の金型転写性が優れるため、表面光沢が優れた成形品が得られやすくなる。
1−3.共重合体(C)
本発明の樹脂組成物が含む共重合体(C)は、オレフィン由来の構造単位と、α,β-不飽和カルボン酸エステル由来の構造単位と、環状オキシ炭化水素構造を有する構造単位と、を有する。前述のように、上述の熱可塑性ポリエステル樹脂(B)は、分子末端のカルボキシル基が酸触媒として作用し、加水分解することがある。これに対し、樹脂組成物が共重合体(C)を含むと、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の加水分解が抑制され、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の分子量低下が抑制される。具体的には、共重合体(C)の環状オキシ炭化水素構造が、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の末端のヒドロキシ基やカルボキシル基と反応する。これにより、カルボキシル基が酸触媒として作用し難く、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の分子量の低下が抑制される。その結果、樹脂組成物から得られる成形品の耐湿熱性が良好になる。
ここで、共重合体(C)を構成するオレフィン由来の構造単位のオレフィンの例には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が含まれ、なかでもエチレンが好ましい。
また、α,β−不飽和カルボン酸エステル由来の構造単位のα,β−不飽和カルボン酸エステルの例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステルや、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸エステル等が含まれ、なかでもアクリル酸メチルが好ましい。
環状オキシ炭化水素構造を有する構造単位は、例えばα,β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル由来の構造単位が挙げられる。α,β−不飽和カルボン酸グリシジルエステルとしては、例えばアクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル等が挙げられ、なかでもメタクリル酸グリシジルエステルが好ましい。
なお、α,β−不飽和カルボン鎖エステル由来の構造単位が、グリシジルエステル基等の環状オキシ炭化水素構造を有していてもよく、共重合体(C)は、例えばオレフィン由来の構造単位と、α,β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル由来の構造単位とを含む共重合体等であってもよい。
共重合体(C)は、例えば以下の構造式で表されるエチレン・メチルアクリレート・グリシジルメタクリレート共重合体とすることができる。
Figure 2018177856
上記式で表される共重合体(C)では、エチレン単位、アクリル酸メチル単位、グリシジルメタクリレート単位の総量(100質量%)に対して、エチレン単位を30〜99質量%の割合で含むことが好ましく、50〜95質量%で含むことがさらに好ましい。
また、上記式で表される共重合体(C)では、エチレン単位、アクリル酸メチル単位、グリシジルメタクリレート単位の総量(100質量%)に対して、アクリル酸メチル単位を0〜60質量%の割合で含むことが好ましく、0〜40質量%含むことがさらに好ましい。
さらに、上記式で表される共重合体(C)では、エチレン単位、アクリル酸メチル単位、グリシジルメタクリレート単位の総量(100質量%)に対して、グリシジルメタクリレート単位を1〜30質量%の割合で含むことが好ましい。
共重合体(C)は、上述の熱可塑性ポリエステル樹脂(B)との反応性を阻害しない範囲であれば、上述の共重合成分の他に、他の共重合成分を含んでいてもよい。他の共重合成分の具体例には、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテルのようなα,β−不飽和グリシジルエーテル;スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、クロロスチレン、2,4−ジメチルスチレンのような芳香族ビニル化合物;ならびに酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニルのような不飽和ビニルエステル等が含まれる。
また、共重合体(C)の、示差走査熱量測定(DSC)で測定される融点は、40〜120℃であることが好ましく、50〜110℃であることがより好ましい。共重合体(C)の融点が当該範囲であると、樹脂組成物の成形時の流動性が高まる。
共重合体(C)の製造方法としては、オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸エステル、環状オキシ炭化水素構造を有する単量体とを、高圧ラジカル重合法、溶液重合法および乳化重合法のような重合方法によって共重合させる方法や、ポリエチレンのようなエチレン単位を含有する重合体に、グリシジル基を有する単量体やα,β−不飽和カルボン酸エステルをグラフト重合させる方法を例示することができる。
本発明の樹脂組成物における共重合体(C)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)、共重合体(C)、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)、およびエチレン系オレフィン重合体(E)の合計を100質量%としたとき、1〜20質量%である。共重合体(C)の含有量は、1〜8質量%であることがより好ましく、1〜7質量%であることがさらに好ましい。共重合体(C)の含有量が1質量%以上であれば、耐湿熱環境下での熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の分子量低下が抑制されやすくなり、成形品の耐湿熱性が低減し難くなる。また、高温で加熱成形した際の熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の分子量の低下抑制効果も得られやすい。また、共重合体(C)の含有量が20質量%以下であれば、樹脂組成物の溶融粘度が過度に高くなり難い。
ここで、共重合体(C)の含有量に対する、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の含有量の比、つまり(熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の含有量/共重合体(C)の含有量)は、1.5〜15であり、2〜8であることがより好ましく、2〜5であることがさらに好ましい。共重合体(C)の含有量が上記範囲であると、樹脂組成物の流動性と、得られる成形品の耐湿熱性が高まりやすい。
さらに、樹脂組成物中に含まれる共重合体(C)が含むエポキシ基の量(モル数)に対する、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)が含む末端カルボキシル基の量(モル数)は、0.03〜0.5であることが好ましく、0.03〜0.2であることがより好ましく、さらに0.03〜0.15がより好ましい。共重合体(C)由来のエポキシ基の量と熱可塑性ポリエステル樹脂(B)由来の末端カルボキシル基の量の比が当該範囲であると、特に熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の加水分解や高温成形時の分解が抑制されやすい。なお、共重合体(C)が含むエポキシ基の量(モル数)、および熱可塑性ポリエステル樹脂(B)が含む末端カルボキシル基の量(モル数)は、それぞれ滴定法や、H−NMRにより特定することができる。
1−4.エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)
本発明の樹脂組成物が含むエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)は、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体でありうる(ただし、共重合体(C)に相当するものは除く)。樹脂組成物がエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)を含むと、樹脂組成物から得られる成形品の靱性等、機械特性が高まる。
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)における、不飽和カルボン酸エステル由来の構造単位の割合は、酸含有量が後述する範囲となればよく、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)総量に対して2〜50質量%であることが好ましく、2〜45質量%であることがより好ましく、15〜45質量%であることがさらに好ましく、20〜40質量%であることが特に好ましい。エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)における不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位の含有量が一定以上であると、共重合体(C)との相溶性が高まりやすく、成形品の衝撃強度が高まりやすい。一方、不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位の量が一定以下であると、ポリアミド樹脂組成物中から得られる成形品の剛性(曲げ弾性率)が維持されやすい。エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)における不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位の量は、FT−IR測定により測定することができる。
エチレンと共重合される不飽和カルボン酸エステルの例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチルなどが含まれる。これらの中でも成形品の靱性等が高まり易いとの観点からアクリル酸n−ブチルであることが特に好ましい。
なお、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)は、本発明の目的を損なわない範囲で、エチレンおよび不飽和カルボン酸エステル以外の重合成分を含んでいてもよい。つまり、エチレンと不飽和カルボン酸エステルと他の単量体との多元共重合体であってもよい。他の単量体の例には、ビニルモノマー等が含まれる。ビニルモノマーの例には、酢酸ビニルのようなビニルエステルが含まれる。ただし、これらの他の単量体の量が多くなると、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)の融点が低くなり、成形品の耐熱性が低くなることがある。そのため、他の単量体由来の構造単位の含有割合は、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)の全量に対して20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)の融点は、60〜120℃であることが好ましく、60〜110℃であることがより好ましい。融点が60℃以上であると、樹脂組成物の耐熱性が損なわれにくい。一方、融点が120℃以下であると、ポリアミド樹脂組成物の溶融時の粘度が過剰に高くなりにくく、成形加工性が損なわれ難い。エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)の融点は、JIS K 7121:1987に準拠して測定される。
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)の、JIS K 7210:1999に準拠し、190℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)は、成形性が損なわれない限り、特に限定されないが、0.5〜1000g/10分(dl/g)であることが好ましく、1〜500g/10分(dl/g)であることがより好ましい。
さらに、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)の密度は、0.90〜0.97g/cmであることが好ましく、0.93〜0.96g/cmであることがより好ましい。エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)の密度が当該範囲であると、衝撃強度と剛性のバランスを図りやすい。密度は、共重合成分の比率により調整することができる。
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)の製造方法としては、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとを、高圧ラジカル重合法、溶液重合法および乳化重合法のような重合方法によって共重合させる方法を例示することができる。
樹脂組成物における、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)、共重合体(C)、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)、およびエチレン系オレフィン重合体(E)の合計を100質量%としたとき、0〜20質量%であり、5〜20質量%であることが好ましい。エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)の量が5質量%以上であると、樹脂組成物の成形品の靱性が高まりやすくなる。一方、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)の含有量が20質量%以下であると、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)に起因する弾性率の低下が生じ難くなる。
なお、上記エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)の含有量に対する、前述の共重合体(C)の含有量の比、つまり(エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)の含有量/共重合体(C)の含有量)は、0.05〜10であることが好ましく、0.1〜10であることがより好ましい。エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)と共重合体(C)との含有比が当該範囲であると、樹脂組成物の成形時の流動性と衝撃強度が高まりやすくなる。
1−5.エチレン系オレフィン重合体(E)
本発明の樹脂組成物が含むエチレン系オレフィン重合体は、エチレン成分単位を少なくとも含むオレフィン重合体であればよく、例えばエチレンの単独重合体、またはエチレンとα−オレフィンとの共重合体とすることができる。樹脂組成物がエチレン系オレフィン重合体(E)を含むと、成形品の耐熱性や強度を損なうことなく、低温での衝撃強度を高めることができる。
エチレン系オレフィン重合体が、エチレン・α−オレフィン共重合体である場合のα−オレフィンの例には、炭素数が3〜10のオレフィンが含まれる。当該α−オレフィンの具体例には、1−ブテン、1−ヘキセン、4メチル−1−ペンテン、1−オクテン等が含まれる。なお、エチレン系オレフィン重合体(E)は、特に好ましくはエチレンの単独重合体(ポリエチレン)であり、直鎖状低密度ポリエチレンであることがさらに好ましい。
ここで、エチレン系オレフィン重合体(E)はシングルサイト、マルチサイト何れの触媒を用いて得られたものであってもよい。また、エチレン系オレフィン重合体(E)の密度は0.87〜0.95g/cmであり、0.87〜0.93g/cmであることが好ましい。エチレン系オレフィン重合体(E)の密度が当該範囲であると、低温での衝撃強度を損ないにくい。
また、JIS K 7210:1999に準拠し、190℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)は0.5〜100g/10分であることが好ましく、10〜80g/10分であることがより好ましい。エチレン系オレフィン重合体(E)のメルトフローレートが当該範囲であると、樹脂組成物の成形時の流動性が高まりやすくなる。
樹脂組成物における、エチレン系オレフィン重合体(E)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)、共重合体(C)、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)、およびエチレン系オレフィン重合体(E)の合計を100質量%としたとき、0〜20質量%であり、5〜18質量%であることがより好ましい。エチレン系オレフィン重合体(E)の量が5質量%以上であると、樹脂組成物の成形品の低温での衝撃強度が十分に高まりやすい。一方、エチレン系オレフィン重合体(E)の含有量が20質量%以下であると、エチレン系オレフィン重合体(E)に起因する剛性の低下が生じ難い。
1−6.任意の添加剤
本発明の樹脂組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、任意の添加剤を含んでいてもよい。添加剤の例には、酸化防止剤(フェノール類、アミン類、イオウ類、リン類等)、充填材(クレー、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、石英、マイカ、グラファイト等)、耐熱安定剤(ラクトン化合物、ビタミンE類、ハイドロキノン類、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、光安定剤(ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾフェノン類、ベンゾエート類、ヒンダードアミン類、オギザニリド類等)、難燃剤(臭素系、塩素系、リン系、アンチモン系、無機系等)、滑剤、蛍光増白剤、可塑剤、増粘剤、帯電防止剤、離型剤、顔料、結晶核剤、種々公知の添加剤が含まれる。
また、樹脂組成物は、前述のポリアミド樹脂(A)、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)、共重合体(C)、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)、およびエチレン系オレフィン重合体(E)以外の重合体(例えば、ポリスチレン;ポリカーボネート樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリサルフォン樹脂;ポリフェニレンオキシド樹脂;フッ素樹脂;シリコーン樹脂;液晶ポリマー(LCP)等)を含んでいてもよい。
2.ワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物の製造方法
本発明のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物は、前述のポリアミド樹脂(A)、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)共重合体(C)、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)、およびエチレン系オレフィン重合体(E)、ならびに必要に応じてその他の成分を、公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダーなどで混合する方法で得られる。また各成分の混合後、さらに一軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練し、造粒あるいは粉砕を行ってもよい。
3.ワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物の用途
本発明のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物によれば、前述のように、靱性、寸法安定性、耐湿性、耐熱性、および剛性に優れた成形品、つまり各種形状のワイヤーハーネスコネクタが得られる。ワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物から得られる成形品の例には、ワイヤーハーネスコネクタや充電コネクタ、光コネクタの絶縁部や、ワイヤーハーネスコネクタの筐体、ハウジング、リテーナー等が含まれる。
ワイヤーハーネスコネクタは、例えば、射出成形、押出成形等、公知の成形方法により、上述のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物を成形することで作製することができる。
以下、実施例を参照して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例の記載に限定されない。
A.各種分析方法
以下の実施例および比較例等において、各種成分の分析は、以下の方法で行った。
[曲げ試験(曲げ強度および曲げ弾性率)]
下記の射出成形機を用い、実施例および比較例の樹脂組成物について、下記の成形条件で作製した厚さ1.6mmの試験片を、温度23℃、窒素雰囲気下で24時間放置した。次いで、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で曲げ試験機(INTESCO社製 AB5)にて、スパン26mm、曲げ速度1.0mm/分で曲げ試験を行い、曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。
成形機:日精樹脂社製 日精PS−40E
成形機シリンダー温度:ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)+15℃
金型温度:50℃
[IZOD衝撃強度]
下記の射出成形機を用い、実施例および比較例の樹脂組成物について、下記の成形条件で作製したノッチ付き、厚さ3.2mmの試験片を作成して、ASTMD256に準拠して、温度−40℃、相対湿度50%の雰囲気でのIZOD衝撃強度で測定した。
成形機:住友重機械工業社製、SE50DU
成形機シリンダー温度:ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)+15℃
金型温度:50℃
[射出流動長]
実施例および比較例の樹脂組成物を、幅10mm、厚み0.5mmのバーフロー金型を使用して以下の条件で射出し、金型内のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物の流動長(mm)を測定した。なお、流動長が長いほど射出流動性が良好であることを示す。
成形機:ソディック社製 プラスティック、ツパールTR40S3A
射出設定圧力:2000kg/cm
成形機シリンダー温度:ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)+15℃
金型温度:50℃
[吸水率]
実施例および比較例の樹脂組成物について、下記の射出成形機を用い、下記の成形条件で幅6mm、長さ64mm、厚み0.8mmの短冊片を作製した後に、質量を測定し、これを初期質量とした。その後、当該短冊片を条件40℃×95%RHの恒温槽に96時間放置し、質量を測定して、これを試験後質量とした。吸水率は、下記式に従い算出した。
成形機:(株)ソディック プラスティック、ツパールTR40S3A
成形機シリンダー温度:ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)+15℃
金型温度:50℃
吸水率:{(試験後質量−初期質量)/初期質量}×100
[耐湿熱性(PCT保持率)]
実施例および比較例で得られた樹脂組成物のペレットを80℃で12時間減圧乾燥させた。その後、射出成形機(ソディック社製 プラスティック、ツパールTR40S3A)を用いて、シリンダー温度をポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)+15℃、金型温度を50℃の条件で射出成形することにより、厚さ1.6mmの試験片を作製した。この試験片について、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で曲げ試験機:INTESCO社製 AB5により、スパン26mm、曲げ速度1.0mm/分で曲げ試験を行い、曲げたわみを測定した。5回測定を行い、その平均値をPCT(プレッシャークッカー試験)処理前の曲げたわみとして算出した。ついで、厚さ1.6mm試験片を、エスペック社製のPCT試験機に仕込み、処理条件121℃×100%RH×60hにて、PCT処理した。乾燥後の試験片について同様の曲げ試験を行い、5回の測定値の平均値をPCT処理後の曲げたわみとして算出した。PCT処理前の曲げたわみに対するPCT処理後の曲げたわみの比(百分率)を、PCT保持率として算出した。PCT保持率が大きいほど、耐湿熱性に優れている。
B.ワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物の調製
1.ポリアミド樹脂(A)の調製
1−1.ポリアミド樹脂(A−1)の調製
テレフタル酸2176g(13.1モル)、1,6−ヘキサンジアミン2800g(24.1モル)、アジピン酸1578g(10.8モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物5.7g、および蒸留水554gを、内容量13.6Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、3時間かけて内部温度を250℃まで昇温させた。このとき、オートクレーブの内圧を3.01MPaまで昇圧させた。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから反応物を大気放出させて低縮合物を抜き出した。その後、低縮合物を室温まで冷却し、粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕した。そして、粉砕物を110℃で24時間乾燥させた。乾燥後の低縮合物の水分量は3600ppm、極限粘度[η]は0.14dl/gであった。
次に、この低縮合物を棚段式固相重合装置にいれ、窒素置換後、約1時間30分かけて220℃まで昇温させた。その後、低縮合物を1時間反応させて、室温まで降温させた。得られたポリアミド(高縮合物)の極限粘度[η]は0.48dl/gであった。その後、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機にて、バレル設定温度330℃、スクリュー回転数200rpm、6Kg/hの樹脂供給速度でさらにポリアミド(高縮合物)を溶融重合させて、ポリアミド樹脂(A−1)を調製した。得られたポリアミド樹脂(A−1)の極限粘度[η]は1.0dl/g、融点Tmは310℃、ガラス転移温度は85℃であった。
1−2.ポリアミド樹脂(A−2)の調製
1,6−ヘキサンジアミン2800g(24.3モル)、テレフタル酸2774g(16.7モル)、イソフタル酸1196g(7.2モル)、安息香酸36.6g(0.3モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物5.7gおよび蒸留水545gを内容量13.6Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、3時間かけて内部温度を250℃まで昇温させた。このとき、オートクレーブの内圧を3.03MPaまで昇圧させた。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して低縮合物を抜き出した。その後、室温まで冷却後、低縮合物を粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥させた。得られた低縮合物の水分量は4100ppm、極限粘度[η]は0.15dl/gであった。
次に、この低縮合物を棚段式固相重合装置にいれ、窒素置換後、約1時間30分かけて180℃まで昇温した。その後、1時間30分反応し、室温まで降温させた。得られた化合物の極限粘度[η]は0.20dl/gであった。その後、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機にて、バレル設定温度を330℃、スクリュー回転数200rpm、6Kg/hの樹脂供給速度で溶融重合して、ポリアミド樹脂(A−2)を調製した。得られたポリアミド樹脂(A−2)の極限粘度[η]は1.0dl/g、融点Tmは330℃、ガラス転移温度は125℃であった。
1−3.ポリアミド樹脂(A−3)の調製
テレフタル酸4537.7g(27.3モル)、1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンとの混合物(1,9−ノナンジアミン/2−メチル−1,8−オクタンジアミン=80/20(モル比))4385g(27.7モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物9.12g(原料の総質量に対して0.1質量%)および蒸留水2.5リットルを内容積20リットルのオートクレーブに入れ、窒素置換した。100℃で30分間攪拌し、2時間かけてオートクレーブ内部の温度を220℃に昇温させた。この時、オートクレーブ内部の圧力は2MPaまで昇圧させた。そのまま2時間反応を続けた後230℃に昇温し、その後2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を2MPaに保ちながら反応させた。次に、30分かけて圧力を1MPaまで下げ、さらに1時間反応させて、極限粘度[η]が0.15dl/gのプレポリマーを得た。これを、100℃、減圧下で12時間乾燥し、2mm以下の粒径まで粉砕した。これを230℃、13Pa(0.1mmHg)にて10時間固相重合し、ポリアミド樹脂(A−3)を調製した。得られたポリアミド樹脂(A−3)の極限粘度[η]は1.2dl/g、融点Tmは300℃、ガラス転移温度は120℃であった。
1−4.ポリアミド樹脂(A−4)の調製
1,6−ヘキサンジアミン1312g(11.3モル)、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン1312g(11.3モル)、テレフタル酸3655g(22.0モル)、触媒として次亜リン酸ナトリウム5.5g(5.2×10−2モル)、およびイオン交換水640ml、を1リットルの反応器に仕込み、窒素置換後、250℃、35kg/cmの条件で1時間反応させた。1,6−ヘキサンジアミンと2−メチル−1,5−ペンタンジアミンとのモル比は50:50とした。1時間経過後、この反応器内に生成した反応生成物を、この反応器と連結され、かつ圧力を約10kg/cm低く設定した受器に抜き出し、極限粘度[η]が0.15dl/gであるポリアミド前駆体を得た。
次いで、このポリアミド前駆体を乾燥し、二軸押出機を用いてシリンダー設定温度330℃で溶融重合させて、ポリアミド樹脂(A−4)を得た。この芳香族ポリアミド樹脂(A−4)の組成は次の通りであった。ジアミン成分単位中の1,6−ヘキサンジアミン成分単位含有率は50モル%、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン成分単位含有率は、50モル%であった。得られたポリアミド樹脂の極限粘度[η]は1.0dl/g、融点Tmは300℃、ガラス転移温度は140℃であった。
2.熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の準備
2−1.熱可塑性ポリエステル樹脂(B−1)の準備
熱可塑性ポリエステル樹脂(B−1)として、ポリエチレンテレフタラート(三井化学社製 PETJ125)を使用した。当該ポリエチレンテレフタラートの融点Tmは260℃であった。
2−2.熱可塑性ポリエステル樹脂(B−2)の準備
熱可塑性ポリエステル樹脂(B−2)として、ポリブチレンテレフタラート(東レ社製 トレコン1401X06(「トレコン」は同社の登録商標))を用いた。当該ポリブチレンテレフタラートの融点Tmは224℃であった。
3.共重合体(C)の準備
共重合体(C)としてエポキシ基含有エチレンメタクリレート共重合体(エチレン・メチルアクリレート・グリシジルメタクリレート、アルケマ社製 LOTADER GMA AX8900(「LOTADER」は同社の登録商標)を用いた。当該エポキシ基含有エチレンメタクリレート共重合体の密度は、0.95g/cmであり、融点は60℃であり、MFR(190℃/2.16kg荷重)は6g/10minであり、グリシジルメタクリレート比率は8質量%である。
4.エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)の準備
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)として、エチレン・ブチルアクリレート共重合体(アルケマ社製 LOTRYL EBA 35BA40(「LOTRYL」は同社の登録商標)を用いた。当該エチレン・ブチルアクリレート共重合体の密度は0.93g/cmであり、融点は67℃であり、MFR(190℃/2.16kg荷重)は40g/10分であり、ブチルアクリレート含有率は40質量%である。
5.エチレン系オレフィン重合体(E)の準備
エチレン系オレフィン重合体(E)として、直鎖状低密度ポリエチレンを用いた。当該直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、0.92g/cmであり、MFR(190℃/2.16kg荷重)は2g/10minである。
6.酸変性ポリオレフィン(F)の調製
直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.92g/cm、MFR(190℃/2.16kg荷重)4g/10min)100質量部、無水マレイン酸1.0質量部、および有機過酸化物(日本油脂社製 パーヘキシン−25B)0.07質量部、をヘンシェルミキサーで混合した。そして、得られた混合物を230℃に設定した65mmφの一軸押出機で溶融グラフト変性することにより、グラフト変性ポリエチレンを得た。このグラフト変性ポリエチレンの無水マレイン酸グラフト量は0.9質量%であった。
7.ワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物の調製
表1および表2に示す組成比で、ポリアミド樹脂(A)、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)、共重合体(C)、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)、エチレン系オレフィン重合体(E)、および/または酸変性ポリオレフィン(F)をタンブラーブレンダーにて混合し、二軸押出機(日本製鋼所社製TEX30α)にて、シリンダー温度(ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)+15)℃で溶融混錬した。その後、ストランド状に押出し、水槽で冷却した。その後、ペレタイザーでストランドを引き取り、カットすることでペレット状のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物を得た。当該樹脂組成物について、それぞれ前述の方法により、曲げ強度、曲げ弾性率、IZOD衝撃強度、射出流動性、吸水率、およびPCT保持率を測定した。結果を表1および表2に示す。表1および表2における熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の末端COOHの量と共重合体(C)のエポキシ基量との比は、各成分の添加量から求めた。
Figure 2018177856
Figure 2018177856
上記表1および表2に示されるように、ポリアミド樹脂(A)60〜80質量%、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)5〜20質量%、および共重合体(C)1〜20質量%を少なくとも含み、かつ前記共重合体(C)の含有量に対する、前記熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の含有量の比が、1.5以上15以下である樹脂組成物を用いた場合(実施例1〜12)、樹脂組成物の射出流動性が良好であり、さらにいずれも曲げ弾性率が高く、PCT保持率も高かった。つまり、樹脂組成物の成形性が良好であり、成形品の剛性が高く、さらに耐湿熱性も高かった。また、いずれの実施例においても、吸水率が低く、成形品の寸法安定性が高いといえる。
これに対し、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)および共重合体(C)を含まない比較例1では、曲げ弾性率が低かった。一方で、熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の量が過剰になると、PCT保持率が低下する傾向にあった(比較例2)。また、共重合体(C)を含まない場合には、PCT保持率が低かった(比較例3)。さらに、前記熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の含有量の比が、1.5未満である場合には、射出流動性が低く、得られる成形品の耐湿熱性も低下しやすかった(比較例4)。
本発明のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物によれば、寸法安定性や耐湿熱性、および剛性を兼ね備えたワイヤーハーネスコネクタが得られる。

Claims (13)

  1. 示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)が300〜340℃であるポリアミド樹脂(A)60〜80質量%と、
    熱可塑性ポリエステル樹脂(B)5〜20質量%と、
    オレフィン由来の構造単位、α,β−不飽和カルボン酸エステル由来の構造単位、および環状オキシ炭化水素構造を有する構造単位を有する共重合体(C)1〜20質量%と、
    エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)0〜20質量%と、
    エチレン系オレフィン重合体(E)0〜20質量%と、
    を含有し(但し、前記ポリアミド樹脂(A)、前記熱可塑性ポリエステル樹脂(B)、前記共重合体(C)、前記エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)、および前記エチレン系オレフィン重合体(E)の合計を100質量%とする)、
    前記ポリアミド樹脂(A)は、テレフタル酸成分単位を少なくとも含むジカルボン酸成分単位(a1)と、炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位を少なくとも含むジアミン成分単位(a2)と、を含み、かつ、前記ジカルボン酸成分単位(a1)の総量に対して、テレフタル酸成分単位を20〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位を0〜80モル%、および炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位を0〜60モル%含み、
    前記エチレン系オレフィン重合体(E)の密度が、0.87〜0.95g/cmであり、
    前記共重合体(C)の含有量に対する、前記熱可塑性ポリエステル樹脂(B)の含有量の比が、1.5以上15以下である、
    ワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
  2. 前記熱可塑性ポリエステル樹脂(B)は、融点(Tm)が210℃〜280℃である、
    請求項1に記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
  3. 前記熱可塑性ポリエステル樹脂(B)が、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリブチレンテレフタレートである、
    請求項1または請求項2に記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
  4. 前記共重合体(C)が、エチレン・メチルアクリレート・グリシジルメタクリレート共重合体である、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
  5. 前記ポリアミド樹脂(A)は、
    前記ジカルボン酸成分単位(a1)の総量に対して、テレフタル酸成分単位を30〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位を0〜70モル%、および炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位を0〜60モル%含み、
    前記ジアミン成分単位(a2)の総量に対して、炭素原子数4〜15の脂肪族ジアミン成分単位を30〜100モル%含む、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
  6. 前記ポリアミド樹脂(A)は、
    前記ジカルボン酸成分単位(a1)の総量に対して、テレフタル酸成分単位を40〜80モル%、およびアジピン酸成分単位を20〜60モル%含み、
    前記ジアミン酸成分単位(a2)の総量に対して、ヘキサメチレンジアミン成分単位を80〜100モル%含む、
    請求項1〜5のいずれか一項に記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
  7. 前記ポリアミド樹脂(A)の前記ジアミン成分単位(a2)が、2−メチル−1,8−オクタンジアミン成分単位、および2−メチル−1,5−ペンタンジアミン成分単位のうち、少なくとも一方を含む、
    請求項1〜5のいずれか一項に記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
  8. 前記ポリアミド樹脂(A)の前記ジアミン成分単位(a2)が、1,6−ヘキサンジアミン成分単位、および2−メチル−1,5−ペンタンジアミン成分単位を含む、
    請求項1〜5のいずれか一項に記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
  9. 前記ポリアミド樹脂(A)の前記ジアミン成分単位(a2)が、1,9−ノナンジアミン成分単位、および2−メチル−1,8−オクタンジアミン成分単位を含む、
    請求項1〜5のいずれか一項に記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
  10. 前記ポリアミド樹脂(A)の前記ジカルボン酸成分単位(a1)が、テレフタル酸成分単位およびイソフタル酸成分単位を含み、
    前記ポリアミド樹脂(A)の前記ジアミン成分単位(a2)が、炭素原子数が4〜15のアルキレンジアミン成分を含む、
    請求項1〜5のいずれか一項に記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
  11. 前記エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(D)は、エチレン・ブチルアクリレート共重合体である、
    請求項1〜10のいずれか一項に記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
  12. 前記エチレン系オレフィン重合体(E)は、直鎖状低密度ポリエチレンである、
    請求項1〜11のいずれか一項に記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項に記載のワイヤーハーネスコネクタ用樹脂組成物の成形品を含む、ワイヤーハーネスコネクタ。
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