JP3820602B2 - 潜在化二塩基酸化合物及び熱硬化性組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、新規な潜在化二塩基酸化合物及び熱硬化性組成物に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、良好な化学性能、物理性能及び耐候性を有すると共に、昨今自動車用塗料などに要求される耐擦傷性、工業用塗料に要求される加工性に優れた塗膜を与えることができ、さらに貯蔵安定性に優れる熱硬化性組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、カルボキシル基を有する化合物と、該カルボキシル基と加熱により化学結合を形成し得る反応性官能基、例えばエポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、アルコキシシラン基、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シクロカーボネート基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、アミノメチロール基、アルキル化アミノメチロール基、アセタール基、ケタール基などを有する化合物との組み合わせから成る熱硬化性組成物は公知である。そのような公知技術として、例えばカルボキシル基とエポキシ基との組み合わせから成る組成物としては、日本特許公開公報の特開昭51−114429号、欧州特許公開公報29,595号、米国特許4,371,667号公報、同4,650,718号公報、同4,681,811号公報、同4,703,101号公報、同4,764,430号公報に記載されている。また、カルボキシル基とオキサゾリン基との組合せから成る組成物としては、米国特許3,505,297号公報、日本特許公開公報の特開昭60−88038号公報、同特開平2−115238号公報に記載されている。
【0003】
これらの熱硬化性組成物は、得られる硬化物の化学性能、物理性能、さらには耐候性などが優れていることから、例えば塗料、インク、接着剤、あるいはプラスチック成形品などの分野において広く利用されている。
しかしながら、カルボキシル基と前記反応性官能基とは反応性が高いため、カルボキシル基含有化合物と該反応性官能基を含有する化合物とが共存する組成物においては、貯蔵中にゲル化を起こしたり、可使時間が短くなるなどの問題が生じる。また、従来の上記熱硬化性組成物に使用されるカルボキシル基含有化合物は、カルボキシル基の強い水素結合性の故に、汎用有機溶媒への溶解性が低い、あるいはカルボキシル基と反応する官能基を有する化合物との相溶性が悪いといった欠点がある。そして、この熱硬化性組成物を上塗り塗料として用いた場合には、有機溶剤の排出量の少ないいわゆるハイソリッド化が困難である、あるいは仕上がり外観性が劣るといった問題を有している。
【0004】
このような問題を解決する方法として、例えばカルボキシル基をt−ブチルエステルとしてブロック化し、加熱により該エステルが分解し、イソブテンの脱離により遊離のカルボキシル基が再生するといった方法が提案されている(特開平1−104646号公報)。
しかしながら、この方法は、t−ブチル基の熱分解に170〜200℃程度の高温を必要とし、昨今の省資源や省エネルギー化の観点から、必ずしも十分に満足し得る方法とは言えない。さらに、分解反応生成物であるイソブテンガスの発泡により、脱泡跡が硬化物表面に残るといった問題がある。
本発明者らは、既に上記の問題点を解決するために、カルボキシル基をビニルエーテル等でブロック化した官能基を有する化合物と、その官能基と反応する反応性官能基を有する化合物から成る熱硬化性組成物を提案している(欧州特許公開公報643,112号)が、用途によってはさらに耐擦傷性、加工性等の優れた塗膜性能を与える熱硬化性組成物が要求されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、比較的低い温度において、耐候性、化学性能、物理性能、特に耐擦傷性及び加工性などに優れる硬化物を与え、かつ良好な貯蔵安定性を有し、ハイブリッド一液型として利用可能な熱硬化性組成物、及びそれに使用できる潜在化二塩基酸化合物を提供することを目的としてなされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の好ましい性質を有する熱硬化性組成物を与え得る潜在化カルボキシル化合物を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の二塩基酸化合物を特殊なビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、あるいは酸素原子又はイオウ原子をヘテロ原子とするビニル型二重結合をもつ複素環式基と反応させて、該化合物におけるカルボキシル基をブロック化させることにより、その目的を達成いうることを見い出した。さらに前記の好ましい性質を有する熱硬化性組成物を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、(A)炭素数14〜30の二塩基酸化合物から誘導され、1分子中に、前記の特殊なビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、あるいは酸素原子又はイオウ原子をヘテロ原子とするビニル型二重結合をもつ複素環式基でブロック化されたカルボキシル基2個を有する潜在化二塩基酸化合物、及び(C)該ブロック化されたカルボキシル基と加熱により化学結合を形成し得る反応性官能基2個以上を有する化合物を必須成分とし、場合により用いられる(B)炭素数2〜13、又は31以上の二塩基酸化合物から誘導され、1分子中に、前記の特殊なビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、あるいは酸素原子又はイオウ原子をヘテロ原子とするビニル型二重結合をもつ複素環式基でブロック化されたカルボキシル基2個を有する二塩基酸化合物、あるいは前記官能基を3個以上有する化合物、及び/又は(D)成分として熱潜在性酸触媒を含有する熱硬化性組成物によりその目的を達成し得ることを見い出し、さらに、(A)成分及び(E)1分子中に前記ブロック化されたカルボキシル基1個以上と、このブロック化されたカルボキシル基と加熱により化学結合を形成し得る反応性官能基1個以上とを有する自己架橋型化合物を必須成分とし、場合により用いられる前記(B)成分、(C)成分及び/又は(D)成分を含有してなる熱硬化性組成物によりその目的を達成し得ることを見い出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
また、本発明者らは、本発明の熱硬化性組成物を上塗り塗料として用いた塗装仕上げ方法が、前記の好ましい性質を有する優れた仕上り外観性及び塗装物品を提供できることを見い出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、炭素数16〜24の脂肪族二塩基酸化合物から誘導され、1分子中に、一般式(1)
【0008】
【化5】
【0009】
(式中のR1、R2及びR3はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アルカリール基から選ばれる有機基、R4は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アルカリール基から選ばれる有機基であって、Y1は酸素原子又はイオウ原子である。)で表される官能基2個を有することを特徴とする潜在化二塩基酸化合物を提供するものである。また、本発明は、(A)前記潜在化二塩基酸化合物、及び(C)1分子中に、前記官能基と加熱により化学結合を形成し得る反応性官能基2個以上を有する化合物を必須成分とし、場合により用いられる(B)炭素数2〜13、又は31以上の二塩基酸化合物から誘導され、1分子中に、一般式(2)
【0010】
【化6】
【0011】
(式中のR5、R6及びR7はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アルカリール基から選ばれる有機基、R8は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アルカリール基から選ばれる有機基であって、Y2は酸素原子又はイオウ原子である。)で表される官能基2個を有する二塩基酸化合物、あるいは前記一般式(2)で表される官能基3個以上を有する化合物、及び/又は(D)加熱硬化時に活性を示す熱潜在性酸触媒を含有することを特徴とする熱硬化性組成物を提供するものである。また、本発明は、(A)前記潜在化二塩基酸化合物、及び(E)1分子中に、(イ)一般式(3)
【0012】
【化7】
【0013】
(式中のR9、R10及びR11はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アルカリール基から選ばれる有機基、R12は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アルカリール基から選ばれる有機基であって、Y3は酸素原子又はイオウ原子である。)で表される官能基1個以上、好ましくは1〜50個と、(ロ)該官能基と加熱により化学結合を形成し得る反応性官能基1個以上、好ましくは1〜50個とを有する自己架橋型化合物を必須成分とし、場合により用いられる(B)炭素数2〜13、又は31以上の二塩基酸化合物から誘導され、1分子中に、一般式(2)
【0014】
【化8】
【0015】
(式中のR5、R6及びR7はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アルカリール基から選ばれる有機基、R8は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アルカリール基から選ばれる有機基であって、Y2は酸素原子又はイオウ原子である。)で表される官能基2個を有する二塩基酸化合物、あるいは前記一般式(2)で表される官能基3個以上を有する化合物、及び/又は(D)加熱硬化時に活性を示す熱潜在性酸触媒を含有することを特徴とする熱硬化性組成物を提供するものである。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の熱硬化性組成物において、(A)成分として用いられる化合物は、炭素数14〜30の二塩基酸化合物から誘導され、1分子中に、一般式(1)
【0017】
【化9】
【0018】
(式中のR1、R2、R3及びY1は前記と同じ意味を持つ。)で表される官能基2個を有する潜在化二塩基酸化合物であって、前記一般式(1)で表される官能基は、炭素数14〜30の二塩基酸化合物のカルボキシル基と一般式(4)
【0019】
【化10】
【0020】
(式中のR1、R2、R3、R4及びY1は、前記と同じ意味を持つ。)で表されるビニルエーテル化合物、ビニルチオエーテル化合物あるいは酸素原子又はイオウ原子をヘテロ原子とするビニル型二重結合を持つ複素環式化合物との反応により、容易に形成させることができる。
【0021】
前記一般式(1)及び(4)におけるR1、R2及びR3は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アルカリール基などの有機基、R4は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アルカリール基などの有機基であって、これらの有機基は適当な置換基を有していてもよく、またR3とR4は、互いに結合してY1をヘテロ原子とする置換基を有しない又は有する複素環を形成していてもよい。
R1、R2及びR3の好ましいものとしては、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルカリール基であり、R4の好ましいものとしては、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルカリール基である。
【0022】
上記アルキル基の適当な具体例としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル、エチルブチル、n−ヘプチル、2−メチルヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、3−メチルヘプチル、n−ノニル、メチルオクチル、エチルヘプチル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル基などが挙げられ、またこのアルキル基にはシクロブチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基も含まれる。好ましいアルキル基は、炭素数1〜10のアルキル基であり、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル、エチルブチル、n−ヘプチル、2−メチルヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、3−メチルヘプチル、n−ノニル、メチルオクチル、エチルヘプチル、n−デシル及びシクロヘキシル基が挙げられる。
また、このアルキル基には、アラルキル基も含まれる。その適当な具体例としては、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、2−フェニルプロピル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル、6−フェニルヘキシル、1−(4−メチルフェニル)エチル、2−(4−メチルフェニル)エチル、2−メチルベンジル、などが挙げられる。
【0023】
上記アリール基及びアルカリール基の適当な具体例としては、例えばフェニル、トリル、キシリル、ナフチルなどのアリール基;4−メチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,4,5−トリメチルフェニル、2−エチルフェニル、n−ブチルフェニル、tert−ブチルフェニル、アミルフェニル、ヘキシルフェニル、ノニルフェニル、2−tert−ブチル−5−メチルフェニル、シクロヘキシルフェニル、クレジル、オキシエチルクレジル、2−メチル−4−tert−ブチルフェニル、ドデシルフェニルなどのアルカリール基などが挙げられ、好ましくは炭素数6〜10のフェニル、トリル、キシリル、4−メチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,4,5−トリメチルフェニル、2−エチルフェニル、n−ブチルフェニル、tert−ブチルフェニルなどのアリール基、アルカリール基が好ましい。
【0024】
前記一般式(4)で表される化合物の具体例としては、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどの脂肪族ビニルエーテル化合物及びこれらに対応する脂肪族ビニルチオエーテル化合物、さらには2,3−ジヒドロフラン、3,4−ジヒドロフラン、2,3−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−4,4−ジメチル−2H−ピラン−2−オン、3,4−ジヒドロ−2−エトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2−カルボン酸ナトリウムなどの環状ビニルエーテル化合物及びこれらに対応する環状ビニルチオエーテル化合物などが挙げられる。
【0025】
また、前記炭素数14〜30の二塩基酸化合物は、脂肪族二塩基酸化合物であってもよいし、脂環族二塩基酸化合物、あるいは芳香族二塩基酸化合物であってもよいが、好ましくは炭素数16〜24の脂肪族二塩基酸化合物である。
炭素数14〜30の二塩基酸化合物の具体例としては、例えば1,12−ドデカメチレンジカルボン酸、1,14−テトラデカメチレンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカメチレンジカルボン酸、1,18−オクタデカメチレンジカルボン酸、1,18−イソオクタデカメチレンジカルボン酸、1,20−エイコサメチレンジカルボン酸、1,21−ヘンエイコサメチレンジカルボン酸、1,22−ドコサメチレンジカルボン酸、1,24−テトラコサメチレンジカルボン酸、1,26−ヘキサコサメチレンジカルボン酸、1,28−オクタコサメチレンジカルボン酸、1,1−テトラデカメチレンジカルボン酸、7−エン−1,4−ジカルボキシテトラデカンなどが挙げられ、さらには市販されている高級二塩基酸化合物、例えばSLB−12、ULB−20、SL−20、SB−20、ST−2P、ML−6CM、IPS−22(いずれも商品名、岡村製油(株)製)などが挙げられる。
(A)成分の化合物は、1種用いてもよいし、2種以上組合せて用いてもよい。
また、必要に応じて用いられる(B)成分は、炭素数2〜13、又は31以上の二塩基酸化合物から誘導され、1分子中に、一般式(2)
【0026】
【化11】
【0027】
(式中のR5、R6、R7及びY2は前記と同じ意味を持つ。)で表される官能基2個を有する二塩基酸化合物、あるいは前記一般式(2)で表される官能基3個以上を有する化合物である。前記一般式(2)で表される官能基は、前記(A)成分における官能基、すなわち一般式(1)で表される官能基の説明において例示したものと同様な方法で形成させることができる。
【0028】
前記一般式(2)におけるR5、R6及びR7は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アルカリール基などの有機基、R8は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アルカリール基などの有機基であって、これらの有機基は適当な置換基を有していてもよく、またR7とR8は、互いに結合してY2をヘテロ原子とする置換基を有しない又は有する複素環を形成していてもよい。
R5、R6及びR7の好ましいものとしては、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルカリール基であり、R8の好ましいものとしては、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルカリール基である。
これらの各有機基の適当な具体例及び好ましいものは、前記一般式(1)において例示したものと同様である。
【0029】
また、(B)成分の化合物は、炭素数2〜13、又は31以上の二塩基酸化合物と前記一般式(4)で表される化合物との反応により、又は1分子中に3個以上、好ましくは3〜50個のカルボキシル基を有する化合物と前記一般式(4)で表される化合物との反応により得ることができる。炭素数2〜13、又は31以上の二塩基酸化合物、及び1分子中に3個以上、好ましくは3〜50個のカルボキシル基を有する化合物としては、例えばコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸などの炭素数2〜13の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族ポリカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸などの脂環式ポリカルボン酸、及びカルボキシル基2個を有する炭素数31以上のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、マレイン化ポリブタジエン樹脂、若しくは1分子中にカルボキシル基3個以上を有するポリエステル樹脂、アクリル樹脂、マレイン化ポリブタジエン樹脂などが挙げられる。
【0030】
また、前記炭素数2〜13、又は31以上の二塩基酸化合物、又は1分子中に3個以上のカルボキシル基を有する化合物は、例えば(1)1分子当たりヒドロキシル基2個以上、好ましくは2〜50個を有するポリオールと酸無水物とをハーフエステル化させる、(2)1分子当たりイソシアネート基2個以上、好ましくは2〜50個を有するポリイソシアネート化合物とヒドロキシカルボン酸又はアミノ酸とを付加させる、(3)カルボキシル基含有α,β−不飽和単量体を単独重合又は他のα,β−不飽和単量体と共重合させる、(4)カルボキシル基末端のポリエステル樹脂を合成するなどの方法により得られる。
【0031】
前記1分子当たりヒドロキシル基2個以上を有するポリオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、水添ビスフェノールA、グリセリン、ソルビトール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キニトール、マニトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ジペンタエリスリトールなどの多価アルコール類;これらの多価アルコール類とγ−ブチロラクトンやε−カプロラクトンなどのラクトン化合物との開環付加体;該多価アルコール類とトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのイソシアネート化合物とのアルコール過剰下での付加体;該多価アルコール類とエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ペンタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルなどのビニルエーテル化合物とのアルコール過剰下での付加体;及び該多価アルコール類とアルコキシシリコーン化合物、例えばKR−213、KR−217、KR−9218(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)などとのアルコール過剰下での縮合体などを挙げることができる。
【0032】
一方、これらのポリオールと反応させる酸無水物としては、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸、フタル酸、マレイン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸などの多価カルボン酸の酸無水物体を挙げることができる。
また、1分子当たりイソシアネート基2個以上を有するポリイソシアネート化合物としては、例えばp−フェニレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、メチレンビス(フェニルイソシアネート)、リジンメチルエステルジイソシアネート、ビス(イソシアネートエチル)フマレート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート及びこれらのビュレット体、イソシアヌレート体などを挙げることができる。
【0033】
また、ヒドロキシカルボン酸としては、例えば乳酸、クエン酸、ヒドロキシピバリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、リンゴ酸などを挙げることができ、アミノ酸としては、例えばDL−アラニン、L−グルタミン酸、グリシン、L−テアニン、グリシルグリシン、γ−アミノカプロン酸、L−アスパラギン酸、L−チトルリン、L−アルギニン、L−ロイシン、L−セリンなどを挙げることができる。
【0034】
さらに、カルボキシル基含有α,β−不飽和単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、マレイン酸、フマル酸などを挙げることができ、他のα,β−不飽和単量体としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、p−ビニルトルエン、アクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0035】
また、カルボキシル基末端のポリエステル樹脂は、多価アルコールに対して多塩基酸過剰下での通常のポリエステル樹脂の合成法に従い、容易に形成させることができる。
このようにして得られた1分子中にカルボキシル基2個以上を有する化合物と前記一般式(4)で表される化合物との反応は、通常酸触媒の存在下、室温〜100℃の範囲の温度において行われる。
また、該(B)成分の化合物は、カルボキシル基含有α,β−不飽和単量体と前記一般式(4)で表される化合物との反応生成物を単独重合させることによっても得ることができるし、該反応生成物を反応性官能基を持たない他のα,β−不飽和単量体と共重合させることによっても得ることができる。
【0036】
カルボキシル基含有α,β−不飽和単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、マレイン酸、フマル酸などを挙げることができ、反応性官能基を持たない他のα,β−不飽和単量体としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルへキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、p−ビニルトルエン、アクリロニトリルなどを挙げることができる。
本発明の熱硬化性組成物においては、この(B)成分の化合物は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の熱硬化性組成物においては、(B)成分の化合物は必要に応じて用いることができるが、含有させた方が好ましい。(A)成分の化合物/(B)成分の化合物の当量比は、1/99〜50/50の範囲が好ましく、特に5/95〜30/70の範囲が好ましい。
【0037】
本発明の熱硬化性組成物において、(C)成分として用いられる化合物としては、前記(A)成分の化合物、及び必要に応じて用いられる(B)成分の化合物における一般式(1)及び(2)で表されるブロック化官能基が加熱により遊離カルボキシル基を再生した際、これと反応して化学結合を形成し得る反応性官能基2個以上、好ましくは2〜50個を1分子中に有するものが使用される。該反応性官能基については前記性質を有するものであればよく、特に制限はないが、例えばエポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、アルコキシシラン基、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シクロカーボネート基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、アミノメチロール基、アルキル化アミノメチロール基、アセタール基、ケタール基などが好ましく挙げられる。これらの反応性官能基は1種含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0038】
このような(C)成分の化合物の具体例としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートなどの単独重合体又は共重合体、グリシジルアリルエーテルとフッ化ビニリデン及びビニルエーテルから成る共重合体、ポリカルボン酸あるいはポリオールとエピクロルヒドリンとの反応により得られるポリグリシジル化合物及びエポキシ基含有シリコーンオイル、例えばKF−101、KF−103、KF−105、X−22−169AS(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)などのエポキシ基含有化合物;1,2−ビス(2−オキサゾリニル−2)エタン、1,4−ビス(2−オキサゾリニル−2)ブタン、1,6−ビス(2−オキサゾリニル−2)ヘキサン、1,8−ビス(2−オキサゾリニル−2)オクタン、1,4−ビス(2−オキサゾリニル−2)シクロヘキサンなどのアルキル鎖にオキサゾリン環が結合したオキサゾリン化合物、1,2−ビス(2−オキサゾリニル−2)ベンゼン、1,3−ビス(2−オキサゾリニル−2)ベンゼン、1,4−ビス(2−オキサゾリニル−2)ベンゼン、5,5’−ジメチル−2,2’−ビス(2−オキサゾリニル−2)ベンゼン、4,4,4’,4’−テトラメチル−2,2’−ビス(2−オキサゾリニル−2)ベンゼン、1,2−ビス(5−メチル−2−オキサゾリニル−2)ベンゼン、1,3−ビス(5−メチル−2−オキサゾリニル−2)ベンゼン、1,4−ビス(5−メチル−2−オキサゾリニル−2)ベンゼンなどの芳香核に2個のオキサゾリン環が結合したオキサゾリン化合物、及び2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン)などのビス(2−オキサゾリン)化合物、ヒドロキシアルキル−2−オキサゾリンと前記ポリイソシアネート化合物との反応により得られる多価オキサゾリン化合物、さらには2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどの単独重合体、又は共重合体などのオキサゾリン基含有化合物、さらには市販されているオキサゾリン基含有化合物、例えば商品名CX−RS−1200、CX−RS−3200(いずれも(株)日本触媒製)、一般式(5)
【0039】
【化12】
(R13)mSi(OR14)4-m ・・・(5)
【0040】
(式中のR13及びR14は、それぞれ炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基、mは0、1又は2である。)で表される化合物の縮合体、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリ−n−ブトキシシランなどのα,β−不飽和シラン化合物の単独重合体又は共重合体、及びこれらの化合物の加水分解生成物などのシラノール基やアルコキシシラン基含有化合物;脂肪族ポリオール類、フェノール類、ポリアルキレンオキシグリコール類、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのα,β−不飽和化合物の単独重合体又は共重合体、及びこれらのポリオール類のε−カプロラクトン付加物などのヒドロキシル基含有化合物;脂肪族、芳香族のジアミノ化合物やポリアミノ化合物及び前記ポリオールのシアノエチル化反応生成物を還元して得られるポリアミノ化合物などのアミノ基含有化合物;脂肪族、芳香族ポリイミノ化合物などのイミノ基含有化合物;p−フェニレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、メチレンビス(フェニルイソシアネート)、リジンメチルエステルジイソシアネート、ビス(イソシアネートエチル)フマレート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート及びこれらのビュレット体やイソシアヌレート体、さらにはこれらのイソシアネート類と前記ポリオールとのアダクト化合物などのイソシアネート基含有化合物;前記イソシアネート基含有化合物のフェノール類、ラクタム類、活性メチレン類、アルコール類、酸アミド類、イミド類、アミン類、イミダゾール類、尿素類、イミン類、オキシム類によるブロック体などのブロック化イソシアネート基含有化合物;3−アクリロイルオキシプロピレンカーボネート、3−メタクリロイルオキシプロピレンカーボネートの単独重合体又は共重合体、前記エポキシ基含有化合物と二酸化炭素との反応により得られる多価シクロカーボネート基含有化合物などのシクロカーボネート基含有化合物;前記多価ヒドロキシル基含有化合物とハロゲン化アルキルビニルエーテル類との反応によって得られる多価ビニルエーテル化合物、ヒドロキシアルキルビニルエーテル類と多価カルボキシル基含有化合物や前記ポリイソシアネート化合物との反応により得られるポリビニルエーテル化合物、ビニルオキシアルキルアクリレート類やビニルオキシアルキルメタクリレート類とα,β−不飽和化合物との共重合体などのビニルエーテル化合物、及びこれらに対応するビニルチオエーテル化合物などのビニルエーテル基やビニルチオエーテル基含有化合物;メラミンホルムアルデヒド樹脂、グリコリルホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、アミノメチロール基やアルキル化アミノメチロール基含有α,β−不飽和化合物の単独重合体又は共重合体などのアミノメチロール基やアルキル化アミノメチロール基含有化合物;多価ケトン、多価アルデヒド化合物、前記多価ビニルエーテル化合物などとアルコール類やオルソ酸エステル類との反応によって得られる多価アセタール化合物、及びこれらとポリオール化合物との縮合体、さらには前記ビニルオキシアルキルアクリレートやビニルオキシアルキルメタクリレートとアルコール類やオルソ酸エステルとの付加物の単独重合体又は共重合体などのアセタール基やケタール基含有化合物などが挙げられる。
なお、一般式(5)中のR13及びR14の適当な具体例としては、例えば一般式(1)のR1において記載した具体例と同様のものが挙げられる。
【0041】
本発明の熱硬化性組成物においては、(C)成分の化合物として、1種の反応性官能基を有する前記化合物の他に、反応性官能基2種以上を有する化合物を用いてもよいし、また該(C)成分は2種以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、この際、それぞれの官能基が互いに活性である組み合わせは貯蔵安定性が損なわれ好ましくない。このような好ましくない組み合わせとしては、例えばエポキシ基、イソシアネート基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、シクロカーボネート基及びシラノール基の中から選ばれる官能基とアミノ基又はイミノ基との組み合わせ、イソシアネート基又はビニルエーテル基とヒドロキシル基との組み合わせなどが挙げられる。
【0042】
本発明の熱硬化性組成物は、前記(A)成分の化合物と(C)成分の化合物を必須成分とし、場合により用いられる(B)成分の化合物及び(D)成分の化合物とを含有するものであってもよいし、また前記(A)成分の化合物と(E)1分子中に、(イ)一般式(3)
【0040】
【化13】
【0044】
(式中のR9、R10、R11及びY3は前記と同じ意味を持つ)で表される官能基1個以上、好ましくは1〜50個と、(ロ)該官能基と加熱により化学結合を形成し得る反応性官能基1個以上、好ましくは1〜50個とを有する自己架橋型化合物を必須成分とし、場合により用いられる(B)成分、(C)成分及び/又は(D)成分を含有するものであってもよい。この場合、該(C)成分の反応性官能基は、前記一般式(3)で表される官能基及び/又は一般式(1)及び(2)で表される官能基と加熱により化学結合を形成する。
該(E)成分の化合物における(イ)一般式(3)で表される官能基としては、前記(A)成分及び(B)成分における官能基、すなわち一般式(1)及び(2)で表される官能基の説明において例示したものと同じものを挙げることができる。また、(ロ)反応性官能基としては、前記(C)成分の化合物における反応性官能基として例示したものと同じものを挙げることができる。
【0045】
この(E)成分の化合物は、1分子中にカルボキシル基1個以上、好ましくは1〜50個と該反応性官能基1個以上、好ましくは1〜50個とを有する化合物を出発原料とし、前記(A)成分の化合物の製法で説明したのと同様な方法で製造することができるし、あるいは前記一般式(3)で表される官能基を有する不飽和化合物と前記の反応性官能基を有する不飽和化合物とを共重合させることによっても製造することができる。該(E)成分の化合物は、前記一般式(3)で表される官能基と共に、該反応性官能基を2種以上含有するものであってもよいが、この場合、前記(C)成分の化合物と同様に、それぞれの官能基が互いに活性である組み合わせは貯蔵安定性が損なわれ、好ましくない。
【0046】
本発明の熱硬化性組成物においては、前記(C)成分及び/又は場合により用いられる(B)成分、あるいは(E)成分、場合により用いられる(B)成分及び/又は(C)成分の中から選ばれた少なくとも1つがα,β−不飽和化合物の重合体又はポリエステル樹脂であることが好ましく、また該組成物中の前記一般式(2)あるいは(3)で表される官能基と、これと加熱により化学結合を形成し得る反応性官能基とが当量比0.2:1.0乃至1.0:0.2の割合になるように各成分を含有させることが望ましい。
本発明における(A)成分及び/又は(E)成分の一般式(1)及び/又は(2)で表される官能基は、加熱下において、遊離カルボキシル基を再生し、(B)成分、(C)成分及び(E)成分の反応性官能基と化学結合を形成するものであるが、この反応の他に分子内分極構造に基づく、いわゆる活性エステルとして(B)成分、(C)成分あるいは(E)成分の反応性官能基に付加反応を起こし得る。この際には、架橋反応時に脱離反応を伴わないため、揮発性有機物質の排出低減にも貢献することができる。
【0047】
本発明の熱硬化性組成物においては、熱硬化性組成物に、場合により該組成物の長期にわたる貯蔵安定性を良好に保ち、かつ低温にて短時間で硬化する際、硬化反応を促進し、硬化物に良好な化学性能及び物理性能を付与する目的で、場合により(D)成分として加熱硬化時に活性を示す熱潜在性酸触媒を含有させることができる。この熱潜在性酸触媒は、60℃以上の温度において、酸触媒活性を示す化合物が好ましい。この熱潜在生産触媒が60℃未満の温度で酸触媒活性を示す場合、得られる組成物は貯蔵中に増粘したり、ゲル化するなど、好ましくない事態を招来するおそれがある。
(D)成分の熱潜在性酸触媒としては、プロトン酸あるいはルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、リン酸エステル類、オニウム化合物、及び(i)エポキシ基を含有する化合物、(ii)含イオウ化合物及び(iii)ルイス酸を必須成分とし、場合により(iv)カルボン酸化合物及び/又は無水カルボン酸化合物から成る化合物が好ましく挙げられる。
【0048】
該プロトン酸をルイス酸で中和した化合物としては、例えばハロゲノカルボン酸類、スルホン酸類、硫酸モノエステル類、リン酸モノ及びジエステル類、ポリリン酸エステル類、ホウ酸モノ及びジエステル類などを、アンモニア、モノエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの各種アミン若しくはトリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスファイト、トリアリールホスファイトで中和した化合物、さらには酸−塩基ブロック化触媒として市販されているネイキュア2500X、X−47−110、3525、5225(商品名、キングインダストリー社製)などが挙げられる。
また、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物としては、例えばBF3、FeCl3、SnCl4、AlCl3、ZnCl2などのルイス酸を前記のルイス塩基で中和した化合物が挙げられる。あるいは上記ルイス酸とトリアルキルホスフェートとの混合物も挙げられる。
該スルホン酸エステル類としては、例えば一般式(6)
【0049】
【化14】
【0050】
(式中のR15はフェニル基、置換フェニル基、ナフチル基、置換ナフチル基又はアルキル基、R16は一級炭素又は二級炭素を介してスルホニルオキシ基と結合している炭素数3〜18のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、アルカノール基、飽和若しくは不飽和のシクロアルキル又はヒドロキシシクロアルキル基である)で表される化合物、具体的にはメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類と、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノールなどの第一級アルコール類又はイソプロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノール、シクロヘキサノールなどの第二級アルコール類とのエステル化物、さらには前記スルホン酸類とオキシラン基含有化合物との反応により得られるβ−ヒドロキシアルキルスルホン酸エステル類などが挙げられる。
該リン酸エステル類としては、例えば一般式(7)
【0051】
【化15】
【0052】
(式中のR17は炭素数3〜10のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基、m2は1又は2である)で表される化合物が挙げられ、より具体的には、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノールといった第一級アルコール類、及びイソプロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノール、シクロヘキサノールといった第二級アルコール類のリン酸モノエステル類あるいはリン酸ジエステル類が挙げられる。
また該オニウム化合物としては、例えば一般式(8)〜(11)
【0053】
【化16】
(R18 3NR19)+X- (8)
(R18 3PR19)+X- (9)
(R18 2OR19)+X- (10)
(R18 2SR19)+X- (11)
【0054】
(式中のR18は炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、アルカノール基又はシクロアルキル基であって、2個のR18はたがいに結合してN、P、O又はSをヘテロ原子とする複素環を形成していてもよく、R19は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、X-はSbF - 6、AsF - 6、PF - 6又はBF - 4である)
で表される化合物などが挙げられる。。
【0055】
さらに、(i)エポキシ基を含有する化合物、(ii)含イオウ化合物及び(iii)ルイス酸を必須成分とし、場合によりカルボン酸化合物及び/又は無水カルボン酸化合物から成る熱潜在性酸触媒の(i)エポキシ基を含有する化合物の具体例としては、例えば、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルケンから誘導される脂肪族モノエポキシド化合物、シクロヘキセンオキシド、セロキサイド2000(商品名、ダイセル化学工業(株)製)、セロキサイド3000(商品名、ダイセル化学工業(株)製)、リカレジンE−8(商品名、新日本理化(株)製)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートなどのシクロアルケンから誘導される脂環式モノエポキシド化合物、スチレンオキシド、スチルベンオキシドなど芳香族環を有する芳香族モノエポキシド化合物、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ポリアルキレンオキシドモノグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類、グリシジルイソブチレート、カージュラE−10(商品名、シェル社製)、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのグリシジルエステル類、サンソサイザーE−4030(商品名、新日本理化(株)製)、サンソサイザーE−6000(商品名、新日本理化(株)製)、などのエポキシ系可塑剤、さらにグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートなどの単量体の単独重合体、又は他の単量体との共重合体、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸とエピクロルヒドリンあるいはポリオールとエピクロルヒドリンの反応によって得られるポリグリシジル化合物などのエポキシ基を有する高分子化合物などが挙げられる。この中で特に好ましいものとしては、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、サンソサイザーE−4030(商品名、新日本理化(株)製)、サンソサイザーE−6000(商品名、新日本理化(株)製)、リカレジンE−8(商品名、新日本理化(株)製)、シクロヘキセンオキシド、セロキサイド3000(商品名、ダイセル化学工業(株)製)、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、カージュラE−10(商品名、シェル社製)などが挙げられる。グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレーの単独重合体又は他の単量体との共重合体も特に好ましいものとして挙げられる。
【0056】
ここで、エポキシ基を含有する化合物が高分子化合物である場合、そのエポキシ含有量は0.1〜7モル/kgの範囲が好ましく、特に0.35〜5モル/kgの範囲が好ましい。
該(i)エポキシ基を含有する化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
該熱潜在性酸触媒に使用される(ii)含イオウ化合物の適当な具体例としては、例えばジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジ−n−プロピルスルフィド、ジ−n−ブチルスルフィド、ジ−n−ヘキシルスルフィド、ジイソプロピルスルフィド、ジ−sec−ブチルスルフィド、ジ−tert−ブチルスルフィド、ジ−n−オクチルスルフィド、ジ−2−エチルヘキシルスルフィドなどのアルキルスルフィド類、2−(エチルチオ)エタノール、2,2’−チオジエタノール、ビス(2−メトキシエチル)スルフィドなどのヒドロキシアルキルスルフィド及びその誘導体、ジフェニルスルフィド、チオアニソールなどの芳香族環を有する含イオウ化合物、メチルチオ酢酸メチル、メチルチオプロピオン酸エチル、チオジプロピオン酸ジメチルなどカルボン酸エステル部分を含む含イオウ化合物、チオジプロピオニトリルなどのニトリル基を含む含イオウ化合物、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチアピラン、1,2−オキサチオラン、1,3−オキサチオラン、1,3−オキサチアン、1,4−オキサチアンなどの環状の含イオウ化合物などが挙げられ、好ましくはn−プロピルスルフィド、n−ブチルスルフィド、n−ヘキシルスルフィド、イソプロピルスルフィド、sec−ブチルスルフィド、tert−ブチルスルフィド、n−オクチルスルフィド、2−エチルヘキシルスルフィドなどのアルキルスルフィド類及び2−(エチルチオ)エタノール、ビス(2−メトキシエチル)スルフィド、メチルチオ酢酸メチル、メチルチオプロピオン酸エチル、テトラヒドロチオフェン、1,4−オキサチアンが挙げられる。
該(ii)含イオウ化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
該熱潜在性酸触媒に使用される(iii)ルイス酸の適当な具体例としては、例えば三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、塩化第一チタン、塩化第二チタン、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化第一スズ、塩化第二スズ、臭化第一スズ、臭化第二スズなどの金属ハロゲン化物、トリアルキルホウ素、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルハロゲン化アルミニウム、モノアルキルハロゲン化アルミニウム、テトラアルキルスズなどの有機金属化合物、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノアセチルアセトナト・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(n−プロピルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(n−ブチルアセトアセテート)アルミニウム、モノエチルアセトアセテート・ビス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(プロピオニルアセトナト)アルミニウム、アセチルアセトナト・ビス(プロピオニルアセトナト)アルミニウム、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジクロロ・ビス(アセチルアセトナト)スズ、ジブチル・ビス(アセチルアセトナト)スズ、トリス(アセチルアセトナト)鉄、トリス(アセチルアセトナト)クロム、トリス(アセチルアセトナト)ロジウム、ビス(アセチルアセトナト)亜鉛、トリス(アセチルアセトナト)コバルトなどの金属キレート化合物、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズエステルマレート、ナフテン酸マグネシウム、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸鉄、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸鉛、オクチル酸カルシウム、オクチル酸マンガン、オクチル酸鉄、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸スズ、オクチル酸鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛などの金属石鹸が挙げられる。これらのうち好ましいものは、ホウ素、アルミニウム、スズ、チタン、亜鉛及びジルコニウムのキレート化合物、金属石鹸、ハロゲン化物が挙げられる。さらに、カルボン酸化合物及び/又は無水カルボン酸化合物を用いない場合は、有機溶媒に対する溶解性に関する観点から、ホウ素、アルミニウム、スズ、チタン、亜鉛及びジルコニウムのキレート化合物並びに金属石鹸が特に好ましいものとして挙げられる。
該(iii)ルイス酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
該熱潜在性酸触媒に用いられる(iv)カルボン酸化合物の適当な具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2−エチルヘキシル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アクリル酸、メタクリル酸,モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸などの一価のカルボン酸化合物、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸、フタル酸、マレイン酸、トリメット酸、ピロメット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸などの多価カルボン酸化合物、及びカルボキシル基含有アクリル樹脂、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂などが挙げられる。
この中でも比較的低分子量の一価又は多価のカルボン酸化合物が好ましく、特に分子量が3000以下の一価又は多価のカルボン酸化合物が好ましい。
【0060】
該熱潜在性酸触媒に用いられる(iv)無水カルボン酸化合物の適当な具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水ラウリン酸、無水オレイン酸、無水リノール酸、無水ステアリン酸、無水リノレン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水イソ吉草酸、無水n−カプロン酸、無水n−カプリル酸、無水n−カプリン酸、無水シトラコン酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、無水クロレンド酸、無水パルミチン酸、無水ミリスチン酸、無水テトラプロペニルコハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水へキサヒドロフタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、無水テトラクロロフタル酸、無水3−ニトロフタル酸、無水トリクロロ酢酸、無水ジクロロ酢酸、無水モノクロロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水ヘプタフルオロ酪酸などの低分子無水カルボン酸化合物、及び無水カルボキシル基含有アクリル樹脂、無水カルボキシル基含有ポリエステル樹脂などの高分子無水カルボン酸化合物などが挙げられる。
【0061】
この中で、特に好ましいものとしては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水ラウリン酸、無水オレイン酸、無水ステアリン酸、無水n−カプロン酸、無水n−カプリル酸、無水n−カプリン酸、無水パルミチン酸、無水ミリスチン酸、無水トリクロロ酢酸、無水ジクロロ酢酸、無水モノクロロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水ヘプタフルオロ酪酸などが挙げられる。
なお、該(iv)カルボン酸化合物及び無水カルボン酸化合物の効果である有機溶剤に対する溶解性向上は、ルイス酸が金属ハロゲン化物である場合に著しい。該(iv)カルボン酸化合物及び無水カルボン酸化合物は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
該熱潜在性酸触媒を製造する際の各成分の混合比は、特に限定されるものではないが、(iii)成分であるルイス酸の金属原子に対する(i)成分であるエポキシ基を含有する化合物のエポキシ基及び(ii)成分である含イオウ化合物のイオウ原子の当量比が、それぞれ0.2〜10の範囲にあることが好ましく、特に各々0.5〜5の範囲にあることが好ましい。この当量比が0.2未満であると、貯蔵時にルイス酸の活性を十分抑制できないことがある。また、この当量比が10を超えると、加熱時に酸触媒活性を示しにくくなることがある。
また、該熱潜在性酸触媒において、(iii)成分であるルイス酸の金属原子に対する(iv)成分であるカルボン酸化合物のカルボキシル基及び/又は無水カルボン酸化合物の酸無水物基の当量比は、特に限定されるものではないが、0.05〜10の範囲にあることが好ましく、特に0.1〜5の範囲にあることが好ましい。この当量比が0.05未満となる場合には、熱潜在性酸触媒の有機溶剤に対する溶解性が不充分になることがある。また、この当量比が10を超えると貯蔵時にルイス酸の活性を十分抑制できなくなることがある。
【0063】
該熱潜在性酸触媒は、溶媒の存在下或は不存在下で、(i)エポキシ基を含有する化合物、(ii)含イオウ化合物及び(iii)ルイス酸の各成分を任意の順序で混合することにより容易に製造することができる。この中でも、(i)エポキシ基を含有する化合物及び(ii)含イオウ化合物を予め混合した後、(iii)ルイス酸を混合するか、あるいは(ii)含イオウ化合物及び(iii)ルイス酸とを予め混合した後、(i)エポキシ基を含有する化合物を混合する製造方法が好ましい。また、(iv)カルボン酸化合物及び/無水カルボン酸化合物の混合順序は任意にとることができる。この中でも、(i)エポキシ基を含有する化合物、(ii)含イオウ化合物、(iii)ルイス酸の各成分を予め混合した後に、(iv)カルボン酸化合物及び/無水カルボン酸化合物を混合することが好ましい。さらに、該熱潜在性酸触媒の製造において、2成分、3成分、場合により4成分あるいは5成分を混合したのちに、室温〜100℃の範囲で10分〜10時間加熱を行うとルイス酸の熱潜在化反応がより促進されて好ましいことがある。
ここで用いる溶媒としては、例えば脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、及びこれらの混合溶剤などが挙げられる。また、溶媒の使用量は、適宜選定すれば良いが、通常熱潜在性酸触媒が1〜90重量%となるようにすることが好ましい。
【0064】
本発明の熱硬化性組成物においては、該(D)成分の熱潜在性酸触媒は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、またその配合量は、(A)成分、(C)成分、及び必要に応じて用いられる(B)成分、あるいは(A)成分と(E)成分、及び場合により用いられる(B)成分及び/又は(C)成分との総固形分量100重量部当たり、通常0.01〜20重量部の範囲、好ましくは0.02〜10重量部の範囲で配合されるように選ばれる。
熱潜在性酸触媒の量が0.01重量%未満では触媒量が少な過ぎて反応を促進させる効果が十分に発揮されない。また、熱潜在性酸触媒の量が20重量%を超えると、量のわりには反応を促進させる効果の向上が見られず、むしろ熱硬化性組成物中に触媒が多量に残存することにより塗膜の物性が低下する場合があり好ましくない。
【0065】
本発明の熱硬化性組成物の硬化に要する温度及び時間については、前記一般式(1)、(2)又は(3)で表されるブロック化官能基から、遊離カルボキシル基を再生する温度、反応性官能基の種類、熱潜在性酸触媒の種類などにより異なるが、通常50℃〜300℃の範囲の温度で、5秒〜24時間加熱することにより硬化が完了する。
本発明の熱硬化性組成物は、そのままで、あるいは必要に応じ、着色顔料、フィラー、溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、流動調整剤などの各種添加剤を配合して、塗料、インク、接着剤、成形品など硬化性を利用する種々の用途に使用することができる。
本発明の熱硬化性組成物は、上記した成分を混合し、場合により各種添加剤を配合することにより製造することができる。各成分の配合方法及び各種添加剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、種々の方法により行うことができ、混合順序及び添加順序も種々の順序で行うことができる。
【0066】
本発明の硬化性組成物は、単層上塗り塗料又は着色ベースコートとクリアートップコートとから成る複数層の塗膜を有する物品を調製する方法に使用する塗料などとして用いることができ、自動車塗料、鉄道・車両用塗料、プレコート・ポストコートの金属製品用塗料、電気機器用塗料、鉄鋼構造物用塗料、機械用塗料、建築材料用塗料、さらに電気電子部品の絶縁、防湿、防錆用塗料、その他の工業塗装分野において極めて有用である。
【0067】
これらの塗料の場合、熱硬化性組成物100重量部当たり、顔料を0〜300重量部配合させることが好ましく、特に0〜100重量部配合させることが好ましい。
顔料は、有機顔料、無機顔料などの種々の顔料が用いられるが、例えばそれぞれに表面処理を施したアルミニウム、銅、真鍮、青銅、ステンレススチール、あるいは雲母状酸化鉄、鱗片状メタリック粉体、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母片などの金属顔料が用いられる。また、その他、二酸化チタン、酸化鉄、黄色酸化鉄、カーボンブラックなどの無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン系赤色顔料などの有機顔料、沈降性硫酸バリウム、クレー、シリカ、タルクなどの体質顔料などが挙げられる。
【0068】
また、本発明の熱硬化性組成物を、着色ベースコートとクリアートップコートから成る複数層の塗膜を有する物品を調製する方法に適用すると、極めて優れた塗装仕上がり外観を得ることができる。
ベースコートのフイルム形成性組成物は、樹脂バインダーと顔料とを含有する。樹脂バインダーとしては、本発明の熱硬化性組成物の他、公知のアクリルポリマー、ポリエステル(アルキッド樹脂を含む)及びポリウレタン、メラミン樹脂などの種々のバインダーを挙げることができる。
なお、ベースコートのフイルム形成性組成物には、通常用いられる各種添加剤、例えば界面活性剤、レベリング剤、チクソトロピー剤、充填剤、抗発泡剤、有機溶剤、触媒などを添加することができる。
クリアートップコートのフイルム形成性組成物は、本発明の熱硬化性組成物であり、場合により、透明性を損なわない程度に上記顔料、各種添加剤や耐候性の良好な染料を添加することができる。
【0069】
塗料を塗布する基材としては、特に限定されるものではなく、種々の基材を用いることができ、例えば、木、ガラス、金属、布、プラスチック、発泡体、弾性体、紙、セラミック、コンクリート、石膏ボードなどの有機素材及び無機素材などが挙げられる。
【0070】
本発明の熱硬化性組成物を含む塗料組成物を使用する適当な塗装方法には、塗料組成物を、場合により加温したり、有機溶媒又は反応性希釈剤を添加することにより所望の粘度に調整した後、エアースプレー、静電エアースプレー、ロールコーター、フローコーター、デイッピング形式による塗装機などの通常使用される塗装機、又は刷毛、バーコーター、アプリケーターなどを用いて乾燥後の塗膜が0.5〜300μmになるように塗布し、通常50〜300℃の温度で5秒〜24時間加熱硬化させる方法、また2コート1ベーク方式の塗装を行う場合には、ベースコート塗料組成物を例えば有機溶剤などの適当な希釈剤にて所望の粘度に希釈した後、上記方法を用いて乾燥後の膜厚が通常5〜40μm、好ましくは7〜35μmになるように塗布し、室温〜100℃の温度で1〜20分間放置し、次いで本発明の熱硬化性組成物によるクリアートップコート塗料組成物を、上記方法を用いて乾燥後の膜厚が10〜100μm、好ましくは10〜60μmになるように塗布し、50〜300℃の温度で5秒〜24時間加熱硬化させる方法などが挙げられる。なお、塗装方法は、上記の方法のうち、スプレー塗装が好ましい。
【0071】
本発明の熱硬化性組成物を含む塗料組成物を塗布して得られる塗装物品としては、例えば構造物、木製品、金属製品、プラスチック製品、ゴム製品、加工紙、セラミック製品、ガラス製品などが挙げられる。より具体的には、自動車、鋼板などの金属板、二輪車、船舶、鉄道車両、航空機、家具、楽器、家電製品、建築材料、容器、事務用品、スポーツ用品、玩具などが挙げられる。以上本発明の熱硬化性組成物は、例えば、塗料、インク、接着剤、成形品に好適に用いることができる。
【0072】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
なお、塗膜性能は次のようにして求めた。
【0073】
(1)耐酸性
40重量%硫酸2mlを試験片上にスポット状に乗せ、60℃で30分間加熱後、塗膜の異常を目視にて判定した。
(2)耐衝撃性
衝撃変形試験器(JIS K−5400(1990)8.3.2 デュポン式)を用い、半径6.35mmの撃ち型に試験片を挟み、500gのおもりを40cmの高さから落下させた際の塗膜の損傷を目視にて判定した。
(3)耐候性
サンシャインカーボンアーク灯式耐候性試験機(JIS K−5400(1990)9.8.1)を用いて1000時間又は3000時間曝露後、塗膜の60度鏡面光沢度値(JIS K−5400(1990)7.6鏡面光沢度)を測定し、塗膜状態を目視にて判定又は未暴露時の光沢度値と比較した。
(4)ヌープ硬度
(株)島津製作所製のM型微小硬度計にて20℃で測定した。数値の大きい程硬いことを示す(ASTM D−1474)。
【0074】
(5)耐擦傷性
試験板を自動車の外部天井面に固定して洗車機によって洗車し、洗車用ブラシの擦過によって生じる擦傷を目視にて評価した。なお、洗車回数は20回とした。
【0075】
製造例1
(A)成分化合物A−1の製造
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコに下記成分を仕込み、50℃を保ちながら撹拌した。
SB−20(岡村製油(株)、商品名) 233.6重量部
イソブチルビニルエーテル 149.9重量部
キシレン 86.1重量部
35重量%塩酸 0.2重量部
約2時間反応させ、混合物の酸価(ピリジン/水重量比=9/1混合液で約50重量倍に希釈し、90℃で30分間熱処理した溶液を水酸化カリウム標準溶液で滴定)が4以下となったところで反応を終了し、放冷後分液ロートに生成物を移した。得られた生成物は、分液ロート中で10重量%炭酸水素ナトリウム水溶液100重量部でアルカリ洗浄後、洗浄液のpHが7以下になるまで200重量部の脱イオン水で水洗を繰り返した。その後、有機層中にモレキュラーシーブ4A1/16(和光純薬(株)製)を加え、室温で3日間乾燥することによって、表1記載の特性を有する化合物A−1を得た。
【0076】
【表1】
注
1)不揮発分:50℃、0.1mmHgで3時間乾燥
ガードナー粘度(25℃):JIS−K−5400(1990)4.5.1ガードナー型泡粘度計法による。
【0077】
製造例2
(A)成分化合物A−2の製造
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコに下記成分を仕込み、50℃を保ちながら撹拌した。
IPS−22(岡村製油(株)、商品名) 181.0重量部
イソブチルビニルエーテル 120.0重量部
キシレン 73.7重量部
35重量%塩酸 0.2重量部
約2時間反応させ、混合物の酸価(ピリジン/水重量比=9/1混合液で約50重量倍に希釈し、90℃で30分間熱処理した溶液を水酸化カリウム標準溶液で滴定)が4以下となったところで反応を終了し、放冷後分液ロートに生成物を移した。得られた生成物は、分液ロート中で10重量%炭酸水素ナトリウム水溶液100重量部でアルカリ洗浄後、洗浄液のpHが7以下になるまで200重量部の脱イオン水で水洗を繰り返した。その後、有機層中にモレキュラーシーブ4A1/16(和光純薬(株)製)を加え、室温で3日間乾燥することによって、表2記載の特性を有する化合物A−2を得た。
【0078】
【表2】
注
1)不揮発分:50℃、0.1mmHgで3時間乾燥
ガードナー粘度(25℃):JIS−K−5400(1990)4.5.1ガードナー型泡粘度計法による。
【0079】
製造例3
(A)成分化合物B−1の製造
(1)ポリカルボン酸の製造
温度計、還流冷却器、撹拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、下記成分を仕込み、撹拌下で加熱し120℃に昇温した。
ペンタエリスリトール 136.0重量部
メチルイソブチルケトン 538.7重量部
次いで、120℃を保ちながらメチルヘキサヒドロフタル酸無水物672.0重量部を2時間かけて滴下し、混合物の酸価(ピリジン/水(重量比)=9/1混合液で約50重量倍に希釈し、90℃で30分間加熱処理した溶液を水酸化カリウム標準溶液で滴定)が、170以下になるまで加熱撹拌を継続することによって、4官能ポリカルボン酸化合物溶液を得た。
【0080】
(2)化合物B−1の製造
前記の方法で得られたポリカルボン酸化合物溶液を用いて、前記と同様のフラスコ中に下記組成の混合物を仕込み、50℃を保ちながら撹拌した。
前記(1)のポリカルボン酸化合物溶液 336.7重量部
イソブチルビニルエーテル 120.2重量部
35wt%塩酸 0.2重量部
メチルイソブチルケトン 46.3重量部
混合物の酸価が12以下となったところで反応を終了し、放冷後分液ロートに生成物を移した。得られた生成物は、分液ロート中で10重量%炭酸水素ナトリウム水溶液100重量部でアルカリ洗浄後、洗浄液のpHが7以下になるまで300重量部の脱イオン水で水洗を繰り返した。その後、有機層中にモレキュラーシーブ4A1/16を加え、室温で3日間乾燥することによって、表3記載の特性を有する化合物B−1を得た。
【0081】
【表3】
注
1)不揮発分:50℃、0.1mmHgで3時間乾燥
ガードナー粘度(25℃):JIS−K−5400(1990)4.5.1ガードナー型泡粘度計法による。
【0082】
製造例4
(B)成分化合物B−2の製造
温度計、還流冷却器、撹拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、下記成分を仕込み、50℃を保ちながら撹拌した。
MMA−10R(岡村製油(株)、商品名) 126.2重量部
イソブチルビニルエーテル 120.0重量部
キシレン 75.4重量部
35重量%塩酸 0.2重量部
約2時間反応させ、混合物の酸価(ピリジン/水重量比=9/1混合液で約50重量倍に希釈し、90℃で30分間熱処理した溶液を水酸化カリウム標準溶液で滴定)が4以下となったところで反応を終了し、放冷後分液ロートに生成物を移した。得られた生成物は、分液ロート中で10重量%炭酸水素ナトリウム水溶液100重量部でアルカリ洗浄後、洗浄液のpHが7以下になるまで200重量部の脱イオン水で水洗を繰り返した。その後、有機層中にモレキュラーシーブ4A1/16(和光純薬(株)製)を加え、室温で3日間乾燥することによって、表4記載の特性を有する化合物B−2を得た。
【0083】
【表4】
注
1)不揮発分:50℃、0.1mmHgで3時間乾燥
ガードナー粘度(25℃):JIS−K−5400(1990)4.5.1ガードナー型泡粘度計法による。
【0084】
製造例5
(B)成分化合物B−3の製造
温度計、還流冷却器、撹拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、下記成分を仕込み、50℃を保ちながら撹拌した。
アジピン酸 73.0重量部
イソブチルビニルエーテル 120.0重量部
テトラヒドロフラン 37.7重量部
35重量%塩酸 0.2重量部
約2時間反応させ、混合物の酸価(ピリジン/水重量比=9/1混合液で約50重量倍に希釈し、90℃で30分間熱処理した溶液を水酸化カリウム標準溶液で滴定)が4以下となったところで反応を終了し、放冷後分液ロートに生成物を移した。得られた生成物は、分液ロート中で10重量%炭酸水素ナトリウム水溶液100重量部でアルカリ洗浄後、洗浄液のpHが7以下になるまで200重量部の脱イオン水で水洗を繰り返した。その後、有機層中にモレキュラーシーブ4A1/16(和光純薬(株)製)を加え、室温で3日間乾燥することによって、表5記載の特性を有する化合物B−3を得た。
【0085】
【表5】
注
1)不揮発分:50℃、0.1mmHgで3時間乾燥
ガードナー粘度(25℃):JIS−K−5400(1990)4.5.1ガードナー型泡粘度計法による。
【0086】
製造例6
(C)成分化合物の製造
温度計、還流冷却器、撹拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、初期仕込溶剤(キシレン)40.0重量部を仕込み、撹拌下で加熱し、100℃を保った。次に100℃の温度で、表6記載の組成の単量体及び重合開始剤混合物(滴下成分)を2時間かけて滴下ロートより等速滴下した。滴下終了後、100℃の温度を1時間保ち、表6記載の組成の重合開始剤溶液(追加触媒)を添加し、さらに100℃の温度を2時間保ったところで反応を終了し、表6記載の特性を有する化合物Cを得た。
【0087】
【表6】
注
1)不揮発分:50℃、0.1mmHgで3時間乾燥
ガードナー粘度(25℃):JIS−K−5400(1990)4.5.1ガードナー型泡粘度計法による。
【0088】
製造例7、8
(D)成分の熱潜在性酸触媒の製造
温度計、還流冷却器、撹拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、それぞれ表7に示す(i)成分であるエポキシ基を有する化合物と(iii)成分であるルイス酸溶液を入れ室温で撹拌した。次に表7に示す(ii)成分である含イオウ化合物を滴下し、その後70℃で2時間撹拌した。更に、放置冷却し、室温となったところで表7に示す(iv)成分であるカルボン酸化合物を入れ、室温で約1時間撹拌することによって、表7に記載の熱潜在性酸触媒D−1及びD−2溶液を得た。
【0089】
【表7】
【0090】
製造例9
(E)成分化合物の製造
(1)α,β−不飽和化合物の製造
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコに表8の組成の混合物を仕込み、50℃を保ちながら撹拌した。混合物の酸価が30以下となったところで反応を終了し、放冷後分液ロートに生成物を移した。得られた生成物は、分液ロート中で10重量%炭酸水素ナトリウム水溶液100重量部でアルカリ洗浄後、洗浄液のpHが7以下になるまで200重量部の脱イオン水で水洗を繰り返した。その後、有機層中にモレキュラーシーブ4A1/16(和光純薬(株)製)を加え、室温で3日間乾燥することによって、表8記載の有効分含有量を有するα,β−不飽和化合物を得た。
【0091】
【表8】
注
1)有効分含有量は、ガスクロマトグラフィーにより求めた。
【0092】
(2)(E)成分化合物の製造
温度計、還流冷却器、撹拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、表9記載の初期仕込み溶剤(キシレン)を仕込み、撹拌下で加熱し、80℃を保った。次に80℃の温度で、表9記載の組成の単量体及び重合開始剤混合物(滴下成分)を2時間かけて滴下ロートより等速滴下した。
滴下終了後、80℃の温度を1時間保ち、表9記載の組成の重合開始剤溶液(追加触媒)を添加し、さらに80℃の温度を4時間保ったところで反応を終了し、表9記載の特性を有する化合物Eを得た。
【0093】
【表9】
注
1)不揮発分:50℃、0.1mmHgで3時間乾燥
ガードナー粘度(25℃):JIS−K−5400(1990)4.5.1ガードナー型泡粘度計法による。
【0094】
実施例1〜9
2コート1ベークメタリックカラーへの応用
(1)クリヤー塗料の製造
表10の組成の原料を混合し、一液型クリアー塗料とした。
(2)試験片の作製及び塗膜性能の検討
リン酸亜鉛処理軟鋼板にカチオン電着塗料アクアNo.4200(登録商標、日本油脂(株)製)を乾燥膜厚20μmとなるよう電着塗装して175℃で25分間焼き付け、さらに中塗り塗料エピコNo.1500CPシーラー(登録商標、日本油脂(株)製)を乾燥膜厚40μmとなるようにエアスプレー塗装し、140℃で30分間焼き付けた。次いで、ベルコートNo.6000シルバーメタリックベースコート塗料(登録商標、日本油脂(株)製)をエアースプレーにてインターバル1分30秒、2ステージで乾燥塗膜厚15μmとなるように塗装し、20℃で3分間セットしたものを試験板とした。さらに、前記(1)の生塗料をそれぞれシンナー(キシレン)で塗装粘度(フォードカップNo.4、20℃で25秒)に希釈後、前記の方法で作成した試験板にエアスプレーにて塗装し、140℃で30分間の硬化条件で焼き付けて試験片を作製した。
塗膜性能を表10に示すが、いずれの場合も均一でツヤのある塗膜が得られ、140℃の焼付条件下では優れた耐酸性、耐衝撃性、耐候性、耐擦傷性及び硬度を示した。
【0095】
(3)貯蔵安定性の検討
前記(1)の生塗料を、シンナー(キシレン)で1ポイズ(ブルックフィールド型粘度計による20℃での測定値)に希釈した後、40℃で密封貯蔵した。40℃で30日間貯蔵後、再び粘度測定したところ、それぞれ表10に示すように、殆ど粘度増加が認められず、優れた貯蔵安定性を示した。
【0096】
【表10】
注
1)耐候性:サンシャインカーボンアーク灯式耐候性試験機(JIS K−5400(1990)9.8.1)を用いて1000時間暴露後、塗膜の60度鏡面光沢度値(JIS K−5400(1990)7.6鏡面光沢度)を測定し、未暴露の光沢値と比較した。
2)耐擦傷性:次の基準で評価した。
○:殆ど擦傷なし
△:少し擦傷あり
×:目立つ擦傷あり
【0097】
1コートソリッドカラーへの応用
実施例10
(1)塗料の製造
表11の組成の原料を混合し、サンドミルに仕込んだ。粒度が10μm以下になるまで分散し、一液型塗料とした。
【0098】
(2)試験片の作製及び塗膜性能の検討
リン酸亜鉛処理軟鋼板にカチオン電着塗料アクアNo.4200(登録商標、日本油脂(株)製)を乾燥膜厚20μmとなるよう電着塗装して175℃で25分間焼き付け、さらに中塗り塗料エピコNo.1500CPシーラー(登録商標、日本油脂(株)製)を乾燥膜厚40μmとなるようにエアスプレー塗装し、140℃で30分間焼き付けることにより試験板を作製した。次いで、前記(1)の生塗料を、シンナー(キシレン)で塗装粘度(フォードカップNo.4、20℃で25秒)に希釈後、前記の方法で作成した試験板に、エアースプレーにて塗装し、140℃で30分間の硬化条件で焼き付けて試験片を作製した。塗膜性能を表11に示すが、均一でツヤのある塗膜が得られ、140℃の焼付条件下では優れた耐酸性、耐衝撃性、耐候性、耐擦傷性及び硬度を示した。
【0099】
(3)貯蔵安定性の検討
前記(1)で得られた生塗料を、シンナー(キシレン)で1ポイズ(JIS K−5400(1990)4.5.3回転粘度計による20℃での測定値)に希釈した後、40℃で30日間密封貯蔵した。その後、再び粘度を測定したところ、表11に示す様に、ほとんど粘度増加は認められず、優れた貯蔵安定性を示した。
【0100】
【表11】
【0101】
注
1)二酸化チタンJR−602:商品名、帝国化工(株)製、ルチル型二酸化チタン
2)耐候性:サンシャインカーボンアーク灯式耐候性試験機(JIS K−5400(1990)9.8.1)を用いて1000時間暴露後、塗膜の60度鏡面光沢度値(JIS K−5400(1990)7.6鏡面光沢度)を測定し、未暴露の光沢値と比較した。
3)耐擦傷性:次の基準で評価した。
○:殆ど擦傷なし
△:少し擦傷あり
×:目立つ擦傷あり
【0102】
比較例1
表12の組成において、比較例1では本発明による潜在化二塩基酸化合物(A)を除いて、実施例1〜9と同様に塗料化した。
得られた塗料を用いて、実施例1〜9と同様にして試験片を作成したところ、表12に示すように耐酸性、耐衝撃性、耐候性及び硬度には優れたものの、耐擦傷性に劣った。
【0103】
【表12】
注
1)耐候性:表10と同様な方法で測定した。
2)耐擦傷性:表10と同様な方法で評価した。
【0104】
比較例2
表13の組成において、比較例2ではノンブロックの二塩基酸化合物及びポリカルボン酸化合物を用いて、クリヤー塗料を作成し、実施例1〜9と同様にして貯蔵安定性試験を行ったところ、比較例2では表13に示すように、カルボキシル基とエポキシ基の架橋反応において、両者の官能基とも何らブロックされていないため、10日後にゲル化した。
【0105】
【表13】
注
1)岡村製油(株)製、商品名
2)耐候性:表10と同様な方法で測定した。
3)耐擦傷性:表10と同様な方法で評価した。
【0106】
【発明の効果】
本発明の熱硬化性組成物は、化学性能、物理性能及び耐候性に優れる硬化物を与えると共に、貯蔵安定性に優れており、例えば、塗料、インク、接着剤、成形品などに好適に用いられる。特に、上塗り塗料として用いた場合には、有機溶剤の排出量が少なく、優れた仕上り外観性を有する塗装仕上げを行うことができ、自動車塗装などの工業塗装分野において極めて有用である。また、本発明の潜在化二塩基酸化合物は、熱硬化性組成物に用いられた場合、貯蔵安定性、熱硬化反応性、耐擦傷性及び加工性に優れており、極めて有用である。
Claims (11)
- (A)請求項1記載の潜在化二塩基酸化合物、及び(C)1分子中に、前記官能基と加熱により化学結合を形成し得る反応性官能基2個以上を有する化合物を必須成分とし、場合により用いられる(B)炭素数2〜13、又は31以上の二塩基酸化合物から誘導され、1分子中に、一般式(2)
- (C)成分の反応性官能基がエポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、アルコキシシラン基、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シクロカーボネート基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、アミノメチロール基、アルキル化アミノメチロール基、アセタール基及びケタール基の中から選ばれた少なくとも1種である請求項2記載の熱硬化性組成物。
- (D)成分の熱潜在性酸触媒が、プロトン酸あるいはルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、リン酸エステル類、オニウム化合物、及び(i)エポキシ基を含有する化合物、(ii)含イオウ化合物及び(iii)ルイス酸を必須成分とし、場合により(iv)カルボン酸化合物及び/又は無水カルボン酸化合物から成る化合物の群から選ばれた少なくとも1種である請求項2又は3記載の熱硬化性組成物。
- (B)成分及び/又は(C)成分がα,β−不飽和化合物の重合体である請求項2、3又は4記載の熱硬化性組成物。
- (B)成分及び/又は(C)成分がポリエステル樹脂である請求項2、3又は4記載の熱硬化性組成物。
- (A)請求項1記載の潜在化二塩基酸化合物、及び(E)1分子中に、(イ)一般式(3)
- (E)成分、及び場合により用いられる(C)成分の反応性官能基がエポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、アルコキシシラン基、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シクロカーボネート基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、アミノメチロール基、アルキル化アミノメチロール基、アセタール基及びケタール基の中から選ばれた少なくとも1種である請求項7記載の熱硬化性組成物。
- (D)成分の熱潜在性酸触媒が、プロトン酸あるいはルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、リン酸エステル類、オニウム化合物、及び(i)エポキシ基を含有する化合物、(ii)含イオウ化合物及び(iii)ルイス酸を必須成分とし、場合により(iv)カルボン酸化合物及び/又は無水カルボン酸化合物から成る化合物の群から選ばれた少なくとも1種である請求項7又は8記載の熱硬化性組成物。
- (E)成分、場合により用いられる(B)成分及び/又は(C)成分の中から選ばれた少なくとも1種がα、β−不飽和化合物の重合体である請求項7、8又は9記載の熱硬化性組成物。
- (E)成分、場合により用いられる(B)成分及び/又は(C)成分の中から選ばれた少なくとも1種がポリエステル樹脂である請求項7、8又は9記載の熱硬化性組成物。
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