JP3820300B2 - 磁気検出装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気検出装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
被検出物の回転位置などを磁気的に検出するセンサユニットの例としてMR素子がある。MR素子は、一般にガラス基板とこのガラス基板上に形成され強磁性膜からなる感磁部と電極部とを含む導体パターンとを有してなる。また、MR素子は、一般に回路基板にフリップチップ接続される。そして、感磁部上はSiO2保護膜で覆われており、さらに、電極部以外の部分を除いてエポキシ系ハードコート材で覆われている。図7は従来型のMR素子の例を示す平面図であり、図8はそのA−A断面図を示したものである。符号1はガラス基板、4は感磁部、5は電極部、6はSiO2保護膜、7はハードコート層、8は半田材をそれぞれ示している。ガラス基板をウエハの状態からダイシングカットする際に、上記ハードコート材がガラス基板から剥離し易く、また、図8のBの部分はガラス基板上に直接ハードコートが塗布されているため、密着性不足により水分が浸入し易いという問題があった。さらに、ハードコート材の塗布はスクリーン印刷により行うため、印刷時のマスクのズレやペーストのダレにより電極部周辺がハードコートから露出してしまうといった問題があった。このように、ハードコート材が剥離したり電極部周辺が露出したりすると、完成品の磁気検出装置の耐湿負荷試験を行ったとき、電極部周辺にMR素子端面から早期に水分が浸入し、電極部周辺が腐食するという問題が生じていた。
【0003】
上記のような水分の浸入による電極周辺あるいは感磁性薄膜の腐食の問題を解決するためになされた従来技術としては、実開平2−86157号公報記載のものが知られている。これは、絶縁性を有する基板上に感磁性薄膜を設け、この感磁性薄膜の少なくとも引き出し電極形成部を除き、他の部分を覆うようにして基板上に窒化シリコン膜及びポリイミド樹脂を含んだ複合保護膜を設け、感磁性膜の引き出し電極形成部を覆うようにして、ボンディングパッド部を有する引き出し電極を設けて構成したことを特徴とする磁気抵抗素子に関するものである。
【0004】
しかし、上記従来例においては、基板と感磁性薄膜との密着強度はある程度向上するものの、まだ十分とは言えず、また、基板をダイシングによりカットするときに基板と感磁性薄膜が剥離されてしまうといった問題点が残っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に 鑑みてなされたもので、ガラス基板と保護被膜との密着性を向上させ、耐水性効果を向上させた磁気検出装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために請求項1記載の磁気検出装置の製造方法は、強磁性膜からなり、感磁部と電極部とを含む所定形状の導体パターンをガラス基板上に形成する第1の工程と、第1の工程で得たガラス基板の導体パターン形成側の少なくとも感磁部全面と電極部の周辺にSiO2を主成分とする保護膜を被着する第2の工程と、前記導体パターンの電極部上に形成された上記保護膜を除去して電極部を露出させる第3の工程と、第3の工程で露出させた電極部を除いた部分にハードコート層を施す第4の工程と、第4の工程を経た電極部に半田材を塗布して磁気検出素子を得る第5の工程と、回路基板上に形成された端子部と前記磁気検出素子の電極部とを対向させて接合すると共に配線基板と磁気検出素子との間に防湿剤を充填する第6の工程とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の製造方法の第3の工程において、保護膜を除去する部分は、導体パターンの電極部の面積よりも狭い範囲であることを特徴とする。
【0008】
前記課題を解決するために請求項3記載の発明は、請求項1記載の製造方法において、第3の工程又は第4の工程の後に、電極部に補強電極部材を塗布し、第5の工程においてこの補強電極部材上に半田材を塗布して磁気検出素子を得ることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明にかかる磁気検出装置の製造方法の実施の形態について説明する。図1は、本願発明にかかる磁気検出装置のウエハ製造工程を示す工程図であり、本願発明にかかる磁気検出装置の製造方法の第1工程から第5工程までを示したものである。
【0012】
図5は本発明にかかる磁気検出装置に用いられる磁気検出素子の例を示しており、ガラス基板1と、このガラス基板1の上に形成されたパーマロイなどの強磁性膜からなる感磁部4と、同じく強磁性膜からなる電極部5とを有してなる。図5の例では感磁部4が4つの領域に分けて形成され、四角形のガラス基板1の四隅にそれぞれ電極部5が形成されている。そして、これらの電極部5の上には半田8が塗布されている。互いに隣接する感磁部4相互が接続され、それぞれの接続点が電極部5に接続されている。4つの領域に形成された感磁部4はブリッジ接続されていて、4つの電極部5を介して外部の電源に接続され、また、検出信号が出力されるようになっている。図6は、図5に示すMR素子のA−A断面図である。本願発明では、Cの部分はガラス基板上にSiO2保護膜を塗布した後にハードコートが塗布されているため密着性が向上し、水分が浸入し難いという特徴がある。図3は、磁気検出装置の第1工程から第6工程までの経過を、図5におけるA−A断面で示したものである。
【0013】
図2は、磁気検出装置の第1工程の経過を示したものである。図1、図2において、まずガラス基板1の全面に強磁性材料としてのパーマロイを蒸着させパーマロイ層2を形成する。このパーマロイ層2の上に例えば図5に示すような磁気検出素子のパターンに対しネガの関係になるパターンで孔が形成されたフォトマスク3を重ね、ドライエッチングにより磁性膜パターン4及び電極部5を含む導体パターンを形成する。このドライエッチングは、アルゴンガス等の不活性ガスを噴射し、フォトマスクの孔部分に位置するパーマロイ2を削り取ることにより行われる。このようにしてガラス基板1上に感磁部4と電極部5とを含む所定の導体パターンに形成されたものの例を図3(a)、図5に示す。
【0014】
次に、第2工程として、ガラス基板1上にSiO2を全面スパッタリングすることにより、図3(b)に示すようにガラス基板1上にSiO2保護膜6を形成する。ガラス基板1の全面をガラス基板との密着性が高いSiO2保護膜6で覆うことにより、ガラス基板1と保護膜6との密着性が向上し、水分が浸入しにくい構造とすることができる。
【0015】
第3工程として、電極部5の位置に孔が設けられたマスクで導体パターンの上からマスキングをし、ドライエッチングにより電極部周辺を覆っているSiO2保護膜6を除去し、電極部5を露出させる。第3工程を経たものの例を図3(c)に示す。この第3の工程において、SiO2保護膜6を除去する部分であるマスクの孔を電極部5の面積よりも狭い範囲としておくと、マスクがずれてドライエッチング領域がズレた場合でも、ガラス基板上の電極部5以外の部分の保護膜6が剥離されるという不具合を防止することができる。
【0016】
第4工程として、SiO2保護膜6に重ねてハードコート層7を形成する。ハードコート材として例えばエポキシ樹脂を用いる。このハードコート形成工程は、電極部5をマスキングした状態で、スクリーン印刷などの手法により行う。図3(d)は第4工程でハードコートが形成されたものの例を示している。ハードコート層7はSiO2保護膜6に重ねて形成され、電極部5の周辺には形成されていない。
【0017】
第5工程として、電極部に半田材8を塗布する。半田材として例えばペースト状半田を用い、これを印刷等の手法で塗布する。図2、図3には、一つの磁気検出素子チップとして示されているが、これまでの工程はウェハの状態で進められ、一つのウェハに多数の磁気検出素子チップが形成されている。そこで次に、ウェハをダイシング工程に付し、磁気検出素子チップごとに切り出す。このようにして磁気検出素子11を得ることができる。第5工程で形成された磁気検出素子11の例を図3(e)に示す。
【0018】
図4は、第6工程として本願発明にかかる磁気検出装置の基板組工程の例を示す。基板組工程としての第6工程では、回路基板10上に形成された端子部と前記磁気検出素子11の電極部5とを対向させて炉の中に入れる。これにより前記半田材8が溶融し、炉から取り出すことによって、磁気検出素子11が回路基板10に半田材8により接合される。配線基板10と磁気検出素子11のハードコート層7との間には空隙が存在するので、図3(f)に示すように、上記空隙に防湿剤としてエポキシ材9を注射器のような射出装置により射出し充填する。このように、第6工程を経ることによって磁気検出装置が完成する。
【0019】
上記のように、耐湿性の良好なエポキシ材9を磁気検出素子11と基板10との間に充填することで、エポキシ材9はシール材としての役目を果たし、上記空隙および磁気検出素子11内への水分の浸入を防止することができる。
また、ガラス基板1と回路基板10は熱膨張係数が異なるため、磁気検出素子11が回路基板10に半田材8のみによって接合されているものとすれば、温度変化による応力が半田材8のみに集中することになるが、上記の工程を経て完成した磁気検出装置によれば、エポキシ材9が磁気検出素子11と基板10との間に充填されていて、エポキシ材9に応力が分散するため、熱膨張による応力集中が緩和される利点がある。
【0020】
以上の工程を経て製造される磁気検出装置は、ガラス基板1と、このガラス基板1上に形成され強磁性膜からなる感磁部4と電極部5とを含む導体パターンと、ガラス基板1の導体パターン形成側に電極部5を除いて形成されたSiO2を主成分とする保護膜6と、電極部5を除いて保護膜6の上に形成されたハードコート層7と、電極部5に塗布された半田材8とを有してなる磁気検出素子11を用いたものであって、この磁気検出素子11は、上記電極部5が回路基板10上に形成された端子部と対向して半田8により回路基板10に接合されると共に、回路基板10と磁気検出素子11との間に防湿剤としてのエポキシ材9が充填されていることを構成上の特徴とする。
【0021】
以上説明した実施の形態によれば、ガラス基板1との密着性が良好であるSiO2保護膜6をガラス基板1に塗布し、その後にハードコート層7を形成するので、電極部5を除きSiO2保護膜6とハードコート層7の積層構造に形成することができる。その結果、ガラス基板1とSiO2保護膜6とは密着性が高いので、ガラス基板1に直接ハードコートした場合に比べて耐水効果が向上し、ガラス基板1とコート層との間に浸水することによる電極部周辺その他の導体パターンの腐食が生じにくくなっている。また、フリップチップ接続したMR素子と回路基板10との間にエポキシ材9を充填させるアンダーフィルコートを行いMR素子全体を覆うことにより、さらに防水効果を向上させている。
【0022】
なお、第3の工程又は第4工程の後に、電極部に補強電極部材を塗布し、第5の工程においてこの補強電極部材上に半田材を塗布して電極部を積層構造にするとよい。こうすれば、ハードコート印刷によるハードコートの塗布がズレた場合でも、電極部が露出しないようにすることができる。
【0023】
また、前記実施の形態では、第4工程としてハードコート印刷によりハードコート層7を形成するものとしていたが、フォトレジスト法によってハードコート層7を形成してもよい。この方法によれば、ハードコート印刷のズレによる電極の露出をなくすことができるという利点がある。
【0024】
さらに別の応用例として、第4工程でハードコート印刷をし、第5工程で電極部5に半田材8を塗布後、電極部周辺にハードコート材7を再塗布してもよい。これにより、ガラス基板1と保護膜6およびハードコート材7との密着性が増し、ダイシング時の保護膜の剥離をより確実に防止することができる。
【0025】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、強磁性膜からなり、感磁部と電極部とを含む所定形状の導体パターンをガラス基板上に形成する第1の工程と、第1の工程で得たガラス基板の導体パターン形成側の少なくとも感磁部全面と電極部の周辺にSiO2を主成分とする保護膜を被着する第2の工程と、前記導体パターンの電極部上に形成された上記保護膜を除去して電極部を露出させる第3の工程と、第3の工程で露出させた電極部を除いた部分にハードコート層を施す第4の工程と、第4の工程を経た電極部に半田材を塗布して磁気検出素子を得る第5の工程と、回路基板上に形成された端子部と前記磁気検出素子の電極部とを対向させて接合すると共に配線基板と磁気検出素子との間に防湿剤を充填する第6の工程とを備えたため、かかる工程を経て製造される磁気検出装置は、ガラス基板とSiO2を主成分とする保護膜との密着性が向上し、耐水性を向上させることができる。加えて、耐湿性が良好でシール材としての役目を果たすエポキシ材を磁気検出素子と回路基板との間に充填したため、磁気検出素子と回路基板との間に水分が浸入することをより確実に防止することができる。
また、ガラス基板と回路基板との熱膨張係数の相違による応力が磁気検出素子と基板との間に充填されているエポキシ材によって応力が分散するため、熱膨張による応力集中が緩和される利点がある。
【0026】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の製造方法の第3の工程において、保護膜を除去する部分は、導体パターンの電極部の面積よりも狭い範囲としたため、ドライエッチング等による保護膜の除去位置がズレたとしても、ガラス基板上の電極部以外の部分の保護膜が剥離されるという不具合を生じることはなくなる。
【0027】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の製造方法において、第3の工程又は第4の工程の後に、電極部に補強電極部材を塗布し、第5の工程においてこの補強電極部材上に半田材を塗布するようにしたため、ドライエッチング等による保護膜の除去位置がズレ又は印刷等によるハードコート形成位置がズレた場合でも、電極部が露出しない磁気検出装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明にかかる磁気検出装置のウエハ製造工程の例を示す工程図である。
【図2】本願発明にかかる磁気検出装置の第1工程の例を示す断面図である。
【図3】本願発明にかかる磁気検出装置の製造工程ごとの断面図である。
【図4】本願発明にかかる磁気検出装置の基板組工程の例を示す工程図である。
【図5】本願発明にかかる磁気検出装置の一例を示す平面図である。
【図6】本願発明にかかる磁気検出装置の一例を示す断面図である。
【図7】従来の磁気検出装置の一例を示す平面図である。
【図8】従来の磁気検出装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ガラス基板
4 感磁部
5 電極部
6 SiO2保護膜
7 ハードコート層
8 半田材
9 防湿剤
Claims (3)
- 強磁性膜からなり、感磁部と電極部とを含む所定形状の導体パターンをガラス基板上に形成する第1の工程と、第1の工程で得たガラス基板の導体パターン形成側の少なくとも感磁部全面と電極部の周辺にSiO 2 を主成分とする保護膜を被着する第2の工程と、前記導体パターンの電極部上に形成された上記保護膜を除去して電極部を露出させる第3の工程と、第3の工程で露出させた電極部を除いた部分にハードコート層を施す第4の工程と、第4の工程を経た電極部に半田材を塗布して磁気検出素子を得る第5の工程と、回路基板上に形成された端子部と前記磁気検出素子の電極部とを対向させて接合すると共に配線基板と磁気検出素子との間に防湿剤を充填する第6の工程とを備えたことを特徴とする磁気検出装置の製造方法。
- 第3の工程において、保護膜を除去する部分は、導体パターンの電極部の面積よりも狭い範囲であることを特徴とする請求項1記載の磁気検出装置の製造方法。
- 第3の工程又は第4の工程の後に、電極部に補強電極部材塗布し、第5の工程においてこの補強電極部材上に半田材を塗布して磁気検出素子を得ることを特徴とする請求項1記載の磁気検出装置の製造方法。
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