JP3817765B2 - 反応染料組成物およびそれを用いる染色または捺染法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は保存安定性により優れた反応染料組成物およびそれを用いる染色または捺染する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
反応染料は工業的に生産されてから、通常数日から数ヶ月、場合によっては数年を経て、実際に使用される。この保存期間中に製品や空気中に含まれる水分により繊維反応基の加水分解が徐々に進み、時として染着性が低下するといった問題が起きている。この問題は、特に高い繊維反応性を有するジクロロトリアジン系反応染料およびそれを含む反応染料組成物に顕著である。
例えば、韓国公開特許第86−594号明細書および特開昭63−178170号公報に下記構造式(3)および(4)からなる黒色用反応染料組成物が例示されている。
【0003】
【0004】
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の黒色用反応染料組成物では、ジクロロトリアジン反応基の高反応性が大きな問題であり保存安定性が低い。このため染色に用いた場合の染色濃度が不十分であると言う問題が時として生じていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意検討した結果、ある種のpH緩衝剤とある種の還元防止剤を併用することにより、それぞれ単独の使用よりも染料組成物の保存安定性が飛躍的に向上することを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、遊離酸の形で下記一般式(1)
【0007】
【0008】
[式中、Y0、Y1は、それぞれ独立に基−SO2CH=CH2または−SO2CH2CH2Z0を表わす。ここでZ0はアルカリの作用で脱離する基を表わす。]
で示されるビスアゾ染料に対して、0.05〜0.8重量倍の遊離酸の形で下記一般式(2)
【0009】
【0010】
[式中、Aは置換されていてもよいフェニレンまたは置換されていてもよいナフチレン基を表わし、Y2は基−SO2CH=CH2または−SO2CH2CH2Z1を表わす。ここでZ1は前記Z0と同じ意味を表わす。Rは水素原子または置換されていてもよい低級アルキル基を表わす。]
で示されるモノアゾ染料を配合してなる反応染料組成物において、一種以上のpH緩衝剤を該染料組成物に対して0.1〜30重量%、一種以上の還元防止剤を該染料組成物に対して0.1〜30重量%含有することを特徴とする反応染料組成物、およびそれを用いるセルロース系繊維材料またはセルロース系繊維を含有する繊維材料を染色もしくは捺染する方法を提供する。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられる一般式(1)および(2)で示される反応染料において、Z0およびZ1で表わされるアルカリの作用によって脱離する基としては、例えば、硫酸エステル基、チオ硫酸エステル基、燐酸エステル基、酢酸エステル基、ハゲロン原子などが例示される。
【0012】
本発明において用いられる一般式(1)で示される反応染料において、好ましくはC.I.Reactive Black 5が挙げられる。
【0013】
本発明において用いられる一般式(2)で示される反応染料において、Rで表わされる基としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基またはブチル基などが例示される。好ましくは、水素原子またはメチル基であり、中でも特に好ましくは、水素原子である。
【0014】
本発明において用いられる一般式(2)で示される反応染料において、Aで表わされる基としては、好ましくはメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、塩素、臭素およびスルホ基の群からそれぞれ独立に選ばれる、1または2個の置換基により置換されていても良いフェニレン基、またはスルホ基1個により置換されていても良いナフチレン基であり、例えば、
【0015】
【0016】
[式中、*印で示した結合は、−N=N−基に連結する結合を意味する。]
などが例示できる。
【0017】
本発明に用いられる還元防止剤としては、好ましくはメタニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム、ニトロナフタレンスルホン酸ナトリウム、バナジン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウムおよび過炭酸ナトリウム等が挙げられる。特に好ましくはメタニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウムが挙げられる。これらの還元防止剤は単独で用いても、或は2種以上の混合物として用いてもよい。
【0018】
本発明の組成物は還元防止剤を染料組成物に対して、0.1〜30重量%、好ましくは1〜10重量%添加される。
【0019】
本発明に用いられるpH緩衝剤としては、好ましくは燐酸一ナトリウム、燐酸二ナトリウム、燐酸一カリウム、燐酸二カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、しゅう酸ナトリウム、しゅう酸カリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、ほう酸ナトリウム、ほう酸カリウム、フタル酸水素カリウム、N,N−ジエチルアニリンスルホン酸等が挙げられる。特に好ましくはクエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムが挙げられる。これらの緩衝剤は単独で用いても、或は2種以上の混合物として用いてもよい。
【0020】
本発明の組成物はpH緩衝剤を染料組成物に対して、0.1〜30重量%、好ましくは1〜10重量%添加される。
【0021】
本発明において上記一般式(1)および(2)で示される染料を配合してなる反応染料組成物に、加える第三および第四の染料成分としては、下記の染料群から選ばれる。
黄色反応染料としては、遊離酸の形で一般式(5)
【0022】
【0023】
[式中、Z2は基−SO2CH=CH2または−SO2CH2CH2Z3を表わし、ここにZ3はアルカリで脱離する基を表わす。]
およびC.I.Reactive Yellow 15、C.I.Reactive Yellow 17、C.I.Reactive Yellow23、C.I.Reactive Yellow76等が挙げられる。
上記一般式(5)で示される染料においては、C.I.Reactive Yellow 145が好ましい。またC.I.Reactive Yellow23、C.I.Reactive Yellow 76が好ましい。
【0024】
橙色反応染料としては、C.I.Reactive Orange15、C.I.Reactive Orange 57等が挙げられる。
【0025】
赤色反応染料としては、C.I.Reactive Red21、C.I.Reactive Red112、C.I.Reactive Red195、C.I.Reactive Red222等が挙げられる。
好ましくは、C.I.Reactive Red112、C.I.Reactive Red195、C.I.Reactive Red222が挙げられる。
【0026】
本発明に用いられる反応染料は、遊離酸または塩の形で存在し、好ましくはアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩であり、特に好ましくはナトリウム塩、カリウム塩である。
【0027】
本発明に用いられる一般式(2)で示される反応染料の含有量は特に限定されるものではないが、一般式(1)で示される反応染料に対して0.05〜0.8重量倍であり、好ましくは0.15〜0.7重量倍である。
【0028】
本発明に用いられる第三、四の染料成分である反応染料の含有量は特に限定されるものではないが、一般式(1)で示される反応染料に対して0.001〜0.7重量倍であり、好ましくは0.01〜0.6重量倍である。
【0029】
本発明の組成物は必要に応じて、ナフタレン誘導体またはアントラキノン誘導体などの溶解向上剤、無水ぼう硝などの無機塩、分散剤、粉塵飛散防止剤、ポリ燐酸塩などの硬水軟化剤、消泡剤、水、その他染色助剤などを含有することができる。
【0030】
本発明の組成物に用いられる反応染料は、公知の方法に従って製造することができ、その製造方法は特に制約されるものではない。
【0031】
本発明の組成物は、反応染料、pH緩衝剤および還元防止剤を公知の方法で混合することによって得ることができる。混合方法は特に限定されるものではない。
【0032】
本発明の組成物は、所望の色相を得るために、必要に応じて、他の染料と混合して使用することができる。また混合して使用する染料としては、特に制約はなく、公知の染料を用いることができる。
【0033】
本発明の染料組成物は、調製液を蒸発、例えば、噴霧乾燥等の通常の乾燥工程を経て粉末状または顆粒状として得られる。
【0034】
本発明方法におけるセルロース系繊維材料としては、特に限定されるものではないが、木綿、リネン、麻、ジュート、ラミー繊維、ビスコース人絹、レーヨンなどの天然あるいは再生セルロース繊維が例示される。また、セルロース系繊維を含有する繊維材料としては、木綿/ポリエステル混紡品、木綿/ナイロン混紡品、木綿/羊毛混紡品などが例示される。
【0035】
本発明方法における染色および捺染方法としては、公知の方法でよい。吸尽染色法では、無水ぼう硝や食塩などの公知の無機中性塩および、炭酸ソーダ、重炭酸ソーダ、苛性ソーダ、第三燐酸ソーダなど公知の酸結合剤を単独に、あるいは併用して染色する方法が例示されるが、染色助剤としてはこれらに限定されない。この際に用いる無機中性塩や酸結合剤の使用量についても制約はないが、少なくとも1g/l以上が好ましく、また、200g/l以上用いてもよいが、本発明の場合、例えば40g/l以下の使用でも十分染色が可能である。また、これらの無機中性塩や酸結合剤の染浴への投入は一度に行ってもよいし、また、常法により分割して投入してもよい。また、その他、均染剤、緩染剤、浴中柔軟剤などの染色助剤を公知の方法で併用してもよいが、染色助剤としては特にこれらのものに限定されない。また、染色温度は通常30〜95℃であるが、好ましくは40〜80℃である。
【0036】
コールドバッチアップ染色法では、無水ぼう硝や食塩などの公知の無機中性塩および、苛性ソーダ、硅酸ソーダなどの公知の酸結合剤を用いてパジング後、密閉包装材料中に一定温度で放置して染色する方法が例示されている。
【0037】
連続染色法では、炭酸ソーダ、重炭酸ソーダなどの公知の酸結合剤を染料パジング液に混合し、公知の方法でパジング後、乾熱または蒸熱により染色する一浴パジング法および、染料パジング後、無水ぼう硝や食塩などの公知の無機中性塩および、苛性ソーダ、硅酸ソーダなどの公知の酸結合剤をパジングし、公知の方法で乾熱または蒸熱により染色する二浴パジング法などが例示される。
【0038】
捺染では重炭酸ソーダなどの公知の酸結合剤を含む捺染ペーストを印捺後、乾熱または蒸熱により捺染する一相捺染法および、ペーストを印捺後、食塩などの公知の無機中性塩および、苛性ソーダ、硅酸ソーダなどの公知の酸結合剤を含む80℃以上の高温溶液中に投入して捺染する二相捺染法などが例示されるが、染色方法としてはこれらに限定されない。
【0039】
【発明の効果】
本発明方法によれば、保存安定性に優れた反応染料組成物が得られ、染色において均一な染色物を与える。
【0040】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中の部および%はそれぞれ重量部および重量%を意味する。
【0041】
実施例1
C.I.Reactive Black 5が25部と下記の式(6)で示される染料16部とC.I.Reactive Yellow 145が1部からなる染料組成物に、クエン酸ナトリウム3重量%(対染料組成物重量)およびメタニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム3重量%(対染料組成物重量)を添加し染料組成物を調製する。
この染料組成物を60℃で一ヶ月保存したものおよび保存前のもの(調製直後のもの)を以下の染色方法で従い染色し比較した。
【0042】
【0043】
(染色方法)
セルロース繊維からなる編物100部を回転式染色装置にセットし、浴比1:15、水温を50℃にした。予め溶解させた染料組成物10部および無水ぼう硝75部を公知の方法で浴中に投入した後、この温度で20分間編物を処理し、公知の方法で炭酸ソーダ30部を浴中に投入した。次いで、この温度で60分間編物を処理し、得られた染色物は常法で洗浄して仕上げた。
得られた染色物の比較において、60℃で一ヶ月保存前後でも色濃度差はほとんど見られなかった。
【0044】
実施例2
C.I.Reactive Black 5が25部と上記の式(6)で示される染料16部とC.I.Reactive Yellow 145が1部からなる染料組成物に、クエン酸ナトリウム3重量%(対染染料成物重量)および亜硝酸ナトリウム1重量%(対染料組成物重量)を添加し染料組成物を調製する。
この染料組成物を60℃で一ヶ月保存したものおよび保存前のもの(調製直後のもの)を実施例1の染色方法と同様に染色し比較した。
得られた染色物の比較において、60℃で一ヶ月の保存で色濃度差はほとんど見られなかった。
【0045】
実施例3
C.I.Reactive Black 5が25部と上記の式(6)で示される染料16部とC.I.Reactive Yellow 145が1部からなる染料組成物に、酒石酸ナトリウム5重量%(対染料組成物重量)およびメタニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム3重量%(対染料組成物重量)を添加し染料組成物を調製する。
この染料組成物を60℃で一ヶ月保存したものおよび保存前のもの(調製直後のもの)を実施例1の染色方法と同様に染色し比較した。
得られた染色物の比較において、60℃で一ヶ月の保存で色濃度差はほとんど見られなかった。
【0046】
比較例1
C.I.Reactive Black 5が25部と上記の式(6)で示される染料16部とC.I.Reactive Yellow 145が1部からなる染料組成物を調製する。
この染料組成物を60℃で一ヶ月保存したものおよび保存前のもの(調製直後のもの)を実施例1の染色方法と同様に染色し比較した。
得られた染色物の比較において、60℃で一ヶ月の保存すると、非常に大きな色濃度の低下が見られた。
【0047】
比較例2
C.I.Reactive Black 5が25部と上記の式(6)で示される染料16部とC.I.Reactive Yellow 145が1部からなる染料組成物に、クエン酸ナトリウム3重量%(対染料組成物重量)を添加し染料組成物を調製する。
この染料組成物を60℃で一ヶ月保存したものおよび保存前のもの(調製直後のもの)を実施例1の染色方法と同様に染色し比較した。
得られた染色物の比較において、60℃で一ヶ月保存すると、かなりの色濃度の低下が見られた。
【0048】
比較例3
C.I.Reactive Black 5が25部と上記の式(6)で示される染料16部とC.I.Reactive Yellow 145が1部からなる染料組成物に、メタニトロベンゼンスルホン酸ソーダ3重量%(対染料組成物重量)を添加し染色組成物を調製する。
この染料組成物を60℃で一ヶ月保存したものおよび保存前のもの(調製直後のもの)を実施例1の染色方法と同様に染色し比較した。
得られた染色物の比較において、60℃で一ヶ月の保存すると、非常に大きな色濃度の低下が見られた。
【0049】
実施例4〜12および比較例4〜12
実施例:染料、pH緩衝剤および還元防止剤を表1の通り使用し、表1の保存試験温度で実施例1と同様に実施した。その結果を表1に示す。
比較例:染料を表1の通り使用し、表1の保存試験温度で実施例1と同様に実施した。その結果を表1に示す。
得られた染色物の比較において、各実施例は対応する比較例に対し、明らかに保存安定性に優れている結果を表わす。
【0050】
【表1】
Claims (12)
- 遊離酸の形で下記一般式(1)
[式中、Y0、Y1は、それぞれ独立に基−SO2CH=CH2または−SO2CH2CH2Z0を表わす。ここでZ0はアルカリの作用で脱離する基を表わす。]
で示されるビスアゾ染料に対して、0.05〜0.8重量倍の遊離酸の形で下記一般式(2)
[式中、Aは置換されていてもよいフェニレンまたは置換されていてもよいナフチレン基を表わし、Y2は基−SO2CH=CH2または−SO2CH2CH2Z1を表わす。ここでZ1は前記Z0と同じ意味を表わす。Rは水素原子または置換されていてもよい低級アルキル基を表わす。]
で示されるモノアゾ染料を配合してなる反応染料組成物において、一種以上のpH緩衝剤を該染料組成物に対して0.1〜30重量%、一種以上の還元防止剤を該染料組成物に対して0.1〜30重量%含有することを特徴とする反応染料組成物。 - 還元防止剤が、メタニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム、ニトロナフタレンスルホン酸ナトリウム、バナジン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウムおよび過炭酸ナトリウムからなる群より選ばれる1種以上の化合物である請求項1記載の組成物。
- pH緩衝剤が、燐酸一ナトリウム、燐酸二ナトリウム、燐酸一カリウム、燐酸二カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、しゅう酸ナトリウム、しゅう酸カリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、ほう酸ナトリウム、ほう酸カリウム、フタル酸水素カリウムおよびN,N−ジエチルアニリンスルホン酸からなる群より選ばれる1種以上の化合物である請求項1及び2に記載の組成物。
- 一般式(2)においてRが水素原子である請求項1〜3に記載の組成物。
- 請求項1記載の一般式(1)および(2)で示される染料を配合してなる反応染料組成物に、第三の染料成分として黄色反応染料を配合した請求項1〜4に記載の組成物。
- 請求項1記載の一般式(1)および(2)で示される染料を配合してなる反応染料組成物に、第三の染料成分として橙色反応染料を配合した請求項1〜4に記載の組成物。
- 請求項1記載の一般式(1)および(2)で示される染料を配合してなる反応染料組成物に、第三の染料成分として赤色反応染料を配合した請求項1〜4に記載の組成物。
- 請求項1記載の一般式(1)および(2)で示される染料を配合してなる反応染料組成物に、第三の染料成分として黄色、橙色または赤色の反応染料成分を配合した反応染料組成物に、第四の染料成分として黄色、橙色または赤色反応染料を配合した請求項1〜4に記載の組成物。
- 第四の染料成分が黄色反応染料である請求項8に記載の組成物。
- 第四の染料成分が橙色反応染料である請求項8に記載の組成物。
- 第四の染料成分が赤色反応染料である請求項8に記載の組成物。
- 請求項1〜11に記載する組成物を用いてセルロース系繊維材料もしくはセルロース系繊維を含有する繊維材料を染色または捺染する方法。
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