JP3817035B2 - トンネルの支保構造及びその組立方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、土木技術を用いたトンネルの構築において、トンネルボーリングマシン(以下、TBMという)により掘削したトンネルの地山を支え、安定に保つトンネルの支保構造及びその組立方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のトンネルの支保構造として、例えば、リブ&ラグ的支保と呼ばれるものを挙げることができ、これは、図6(図6(a):概略C−C断面図、図6(b):概略側断面図)に示すように、繋ぎ材101にて相互に連結される鋼製支保工102と、隣接する鋼製支保工102同士の間であってその外側面に架設され、かつ、キャンバー(図示外)にて背面が地山に押圧される木矢板103とを一体に構成してなるものである。
【0003】
このリブ&ラグ的支保には、木矢板103の背面が地山から受けた力が直ちに鋼製支保工102に伝達されることから、構造部材たる木矢板103及び鋼製支保工102の双方の特性が生かされ、これにより、充分な支保能力が発揮されることに加え、比較的安価に実施できる、などの利点がある。
【0004】
ところが、このリブ&ラグ的支保には、背面を地山に押圧して木矢板103を鋼製支保工102に固止する必要があることから、TBM104の後端部が通過後、当該支保構造を構築して支保機能を有効に発揮するまでの間、地山崩落等が発生した場合、何らの対策も講ずることができない、という欠点がある。
【0005】
また、他のトンネルの支保構造として、例えばNATM的支保と呼ばれるものを挙げることができ、これは、図7(図7(a):概略D−D断面図、図7(b):概略側断面図)に示すように、繋ぎ材111にて相互に連結される鋼製支保工112と、隣接する鋼製支保工112の間の地山部分に所定の厚さ寸法で吹き付られる吹付コンクリート113と、隣接する鋼製支保工の間の中間部分から外側方向に打設されるロックボルト114とを一体に構成してなるものである。
【0006】
このNATM的支保には、支保部材として吹付コンクリート113を採用するので、地山に対する密着性がきわめて高く、また、ロックボルト114が地山と一体となってその効果を発揮するので、地山の挙動に応じた支保機能の発揮ができ、更に、ロックボルト114及び吹付コンクリート113が地山から受けた力が直ちに鋼製支保工112に伝達されるので、支保部材たるロックボルト114、吹付コンクリート113、及び鋼製支保工112の夫々の特性が生かされ、これにより、充分な支保能力が発揮される、という利点がある。
【0007】
ところが、このNATM的支保にも、前記リブ&ラグ的支保と同様、地山に対して吹付コンクリート113を吹き付ける必要があることから、TBM115の後端部が通過後、当該支保構造を構築して支保機能を有効に発揮するまでの間、地山崩落等が発生した場合、何らの対策も講ずることができない、という欠点があり、また、吹き付け施工後、吹付コンクリート113の強度が発現するまで相当の時間を要することから、迅速な施工も困難である。
【0008】
そこで、上記欠点を解消する技術的手段として、通常、シールド工法によるトンネルの支保構造として採用されているライナー(セグメント)による支保と呼ばれるものがあるが、これは、例えば図8(図8(a):概略E−E断面図、図8(b):概略側断面図)に示すように、ライナー(セグメント)と呼ばれる円弧形をした鋼製又は鉄筋コンクリート製のブロック片のいくつかを集めて組み立て、これにより、円筒形の支保部材121を形成すると共に、当該支保部材121と地山との間の空隙部分に充填材122を充填して地山を支えるというものである。
【0009】
従って、このライナー(セグメント)による支保によれば、TBM123の後端部分の通過に先行してTBM123の内部で地山を受ける支保部材121を組み立てるので、TBM123の後端部分の通過と同時に地山を受けることができ、それゆえ、地山崩落等が発生するおそれをなくすことができる。
【0010】
しかしながら、このライナー(セグメント)による支保は、支保部材たるライナー(セグメント)がそもそもかなり高価であるという欠点があることに加え、トンネルの上部等、部分的な支保を施せば足りる場合でも、必ずトンネルの周囲の全体に亘って一様に組み立てる必要があるゆえ、過大な支保になり易く、また、地山の変化に柔軟に対応できない、という欠点もある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、TBMの後端部分の通過後において地山崩落等が発生するおそれがなく、また、地山に応じて部分的な支保を施すことができ、それゆえ、安全かつ経済的に施工し得るトンネルの支保構造及びその組立方法を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明に係るトンネルの支保構造は、繋ぎ材にて前後が他の鋼製支保工に連結される一の鋼製支保工と、当該鋼製支保工の外側曲面に中央部分が接合され、かつ、当該鋼製支保工の前後に係る地山を支える帯板と、当該帯板と地山との間の空隙部分に充填される充填材とからなることを特徴とするものである。
【0013】
このような技術的手段において、前記帯板としては、中央部分が一の鋼製支保工(主桁)のみによって支持される場合において当該鋼製支保工の前後に係る地山を支えるのに充分な剛性を有するものであれば、その材質、形状等は適宜選定して差し支えなく、例えば、キーストンプレート、デッキプレート、鉄板を鋼製支保工の外側曲面に沿って加工したものなどを用いることができるが、前後に隣接した対向する端辺同士の隙間からの充填材の漏れを防止する観点からすれば、前後に隣接した対向する端辺に係る部分同士が互いに重合していることが好ましい。
【0014】
一方、本発明に係るトンネルの支保構造の組立方法は、鋼製支保工の外側曲面に当該鋼製支保工の前後に係る地山を支える帯板を接合する帯板接合工程と、トンネルボーリングマシンの内部で当該帯板が接合された鋼製支保工を既設鋼製支保工に繋ぎ材にて連結して立設する連結立設工程と、この連結立設工程の後に、少なくとも当該帯板の一部がトンネルボーリングマシンの内部にある範囲内で当該トンネルボーリングマシンを前進させるマシン前進工程と、このマシン前進工程の後に、当該帯板と地山との間の空隙部分に充填材を充填する充填工程とを有することを特徴とするものである。
【0015】
この場合において、帯板接合工程と連結立設工程との前後関係は現場の状況に応じて適宜選定して差し支えなく、あらかじめ工場で帯板が接合された鋼製支保工を既設鋼製支保工に繋ぎ材にて連結して立設してもよいし、鋼製支保工を既設鋼製支保工に繋ぎ材にて連結して立設してから、帯板を接合してもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は本発明のトンネルの支保構造の一実施の形態を示す概略側断面図である。
【0017】
同図において、符号1は図示矢印A方向に前進しながら地山を掘削する円筒形のTBMであって、先端に回転カッター(図示外)を備える前部円筒体1aと、トンネルの両側部を押圧して推進反力を得るグリッパー1bを備える後部円筒体1cとの前後に分割された構成になっていると共に、この前部円筒体1aと後部円筒体1cとが重合部分1dによって伸縮自在に接続されている。
【0018】
また、符号2はトンネルの上半部分に配設すべき上半分割片2cとトンネルの下半部分に配設すべき下半分割片2dとに分割構成されると共に、繋ぎ材2aにて相互に連結されることにより立設される鋼製支保工であって、後部円筒体1cの後部に位置する鋼製支保工2は台木2bの上に載置されており、一方、後部円筒体1cの内部に位置する鋼製支保工2は繋ぎ材2aにて連結され、宙に浮いた状態になっている。
【0019】
更に、符号3は鋼製支保工2の前後に係る地山を支える帯板たるキーストンプレートであって、前後に隣接した対向する端辺に係る部分3a同士が互いに重合している。尚、帯板としては、鋼製支保工2の前後に係る地山を支えるのに充分な剛性を有するものであれば、キーストンプレート3に限られるものでなく、デッキプレート、鉄板を鋼製支保工2の外側曲面に沿って加工したものなどでもよい。
【0020】
更にまた、符号4は当該帯板と地山との間の空隙部分に充填される充填材たる豆砂利を示している。
【0021】
即ち、本実施の形態に係るトンネルの支保構造は、図1及び図2(B−B断面図)に示すように、繋ぎ材2aにて前後が他の鋼製支保工2に連結され、かつ、台木2bの上に載置される一の鋼製支保工2と、当該鋼製支保工2の外側曲面に中央部分が溶接部分12でもって溶接接合され(図3)、かつ、当該鋼製支保工2の前後に係る地山を支えるキーストンプレート3と、当該キーストンプレート3と地山との間の空隙部分に充填される豆砂利4とからなるものである。
【0022】
また、本実施の形態において、キーストンプレート3及び豆砂利4による支保構造は、トンネルの上部に位置する施工範囲Xにしか適用されておらず、トンネルの側部及び下部には適用されていないのだが、これは、以下の理由によるものである。
【0023】
即ち、本実施の形態に係る地山は、TBM1による掘進に適している岩盤であって比較的安定していることから、トンネルの側部及び下部について鋼製支保工2のみによる支保構造を構築すれば足りるが、反面、亀裂性を有するために地山崩落等が発生するおそれがあり、また、初期的な地山の弛みを防止する必要もあることから、トンネルの上部について鋼製支保工2による支保構造のみならず、キーストンプレート3及び豆砂利4による支保構造をも併せて構築することとし、トンネル内にて作業を行う作業者の安全を確保したのである。
【0024】
更に、本実施の形態において、前記キーストンプレート3の前後に隣接した対向する端辺に係る部分3aには、図3に示すように、前後に隣接した対向する端辺同士の隙間からの豆砂利4の漏れを防止するフラットバー11があらかじめ溶接されており、前部キーストンプレート3bには前部フラットバー11aが、後部キーストンプレート3cには後部フラットバー11bが、それぞれ溶接されており、当該端辺に係る部分3a同士が互いに重合している。
【0025】
尚、端辺に係る部分3a同士が互いに重合する構成であって、前後に隣接した対向する端辺同士の隙間からの豆砂利4の漏れを防止できれば、フラットバー11の如く別個の部材を取り付けなくてもよく、例えば、キーストンプレート3の端辺に係る部分3aを折り曲げるなどして互いに重合させるようにしてもよい。
【0026】
次に、本実施の形態に係るトンネルの支保構造の組立プロセスについて図4及び図5を用いて説明する。但し、後部円筒体1cの内部では、新たな鋼製支保工2がまだ連結されていないものとして説明を開始する(図4の最上図の状態)。
【0027】
(a)帯板接合工程
先ず、あらかじめ工場において鋼製支保工2の上半分割片2c(図1、図2)の外側曲面に、当該鋼製支保工2の前後に係る地山を支えるキーストンプレート3を、適宜箇所を溶接することによって接合する。このとき、キーストンプレート3が波付けされた形状を有している(図2)ことから、適当に曲げて分割片2cの外側曲面に容易に沿わせて溶接加工をすることができる。
【0028】
(b)連結立設工程(図4(b)参照)
次に、作業者が、後部円筒体1cの内部において、エレクター(図示外)を用いて、キーストンプレート3が接合された当該上半分割片2c、及びキーストンプレート3が接合されていない下半分割片2d(図1、図2)を組み立てると共に、これを所定の高さ及び位置に持ち上げた状態としながら、当該新たに組み立てた鋼製支保工2を既設の鋼製支保工2に繋ぎ材2aをボルト止めすることによって連結すると、当該鋼製支保工2は、後部円筒体1cの内部で宙に浮いた状態となって立設される。
【0029】
このとき、当該上半分割片2cと下半分割片2dとを組み立てることによって、キーストンプレート3の端辺に係る部分3aに溶接されたフラットバー11aが互いに重合するようになっている。
【0030】
(c)マシン前進工程(図5(c)参照)
次に、少なくとも当該キーストンプレート3の一部がトンネルボーリングマシンの内部に残る範囲内であって、当該鋼製支保工2が後部円筒体1cの内部から外部に位置するようになるまで、掘削を行いTBM1を前進させ、直ちに、後部円筒体1cの外部に位置することとなった当該鋼製支保工2の下端部と地山との間に台木2bを介設して沈下を防止する。
【0031】
このとき、キーストンプレート3が、後部円筒体1cの内壁と当該キーストンプレート3との間に少なくとも余裕幅21を有するように接合されていることから、キーストンプレート3が接合された当該鋼製支保工2がTBM1の前進に支障をきたすことはない。
【0032】
(d)充填工程(図5(d)参照)
そして、後部円筒体1cの後端部が所定の位置まで前進した時点において掘削を停止させ、その後、直ちに当該キーストンプレート3と地山との間の空隙部分に豆砂利4を圧送して充填すると、この豆砂利4を介して当該鋼製支保工2の前後に係る地山をキーストンプレート3によって受けることになり、地山崩落等の発生や初期的な地山の弛みなどが、未然に防止される。尚、このとき、最前部分には豆砂利4を充填しないようにして当該部分から豆砂利4が漏れないようにする。
【0033】
従って、本実施の形態に係るトンネルの支保構造の組立プロセスによれば、TBM1の後部円筒体1cの内部において、キーストンプレート3が接合された鋼製支保工2の上半分割片2cと、キーストンプレート3が接合されていない鋼製支保工2の下半分割片2dとを組み立てて新たな鋼製支保工2を形成し、更に当該鋼製支保工2を既設の鋼製支保工2に連結して立設すると共に、TBM1を前進させると直ちに当該キーストンプレート3と地山との間に豆砂利4を充填するので、TBM1の後端部分の通過後において地山崩落等が発生するおそれがなく、作業者の安全を確保することができる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るトンネルの支保構造によれば、繋ぎ材にて前後が他の鋼製支保工に連結される一の鋼製支保工と、当該鋼製支保工の外側曲面に中央部分が接合され、かつ、当該鋼製支保工の前後に係る地山を支える帯板と、当該帯板と地山との間の空隙部分に充填される充填材とからなることとしたので、TBMの後端部分の通過後において地山崩落等が発生するおそれがなく、また、地山に応じて部分的な支保を施すことができ、それゆえ、安全かつ経済的な組立方法の実現が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のトンネルの支保構造の一実施の形態を示す概略側断面図である。
【図2】本発明のトンネルの支保構造の一実施の形態を示す概略横断面図である。
【図3】本発明のトンネルの支保構造の一実施の形態における帯板の重合部分を示す概略側断面図である。
【図4】本発明のトンネルの支保構造の一実施の形態の組立プロセスを示す説明図である。
【図5】本発明のトンネルの支保構造の一実施の形態の組立プロセスを示す説明図である。
【図6】従来のトンネルの支保構造の一実施の形態を示す概略C−C断面図及び概略側断面図である。
【図7】従来のトンネルの支保構造の一実施の形態を示す概略D−D断面図及び概略側断面図である。
【図8】従来のトンネルの支保構造の一実施の形態を示す概略E−E断面図及び概略側断面図である。
【符号の説明】
1…TBM(トンネルボーリングマシン)
1a…前部円筒体
1b…グリッパー
1c…後部円筒体
1d…重合部分
2…鋼製支保工
2a…繋ぎ材
2b…台木
2c…上半分割片
2d…下半分割片
3…キーストンプレート
3a…端辺に係る部分
3b…前部キーストンプレート
3c…後部キーストンプレート
4…豆砂利
11…フラットバー
11a…前部フラットバー
11b…後部フラットバー
12…溶接部分
21…余裕幅
A…矢印
X…施工範囲
Claims (3)
- 繋ぎ材にて前後が他の鋼製支保工に連結される一の鋼製支保工と、
当該鋼製支保工の外側曲面に中央部分が接合され、当該鋼製支保工の前後に係る地山を支える帯板と、
当該帯板と地山との間の空隙部分に充填される充填材とからなることを特徴とする、
トンネルの支保構造。 - 前記帯板は、前後に隣接した対向する端辺に係る部分同士が互いに重合していることを特徴とする、
請求項1に記載のトンネルの支保構造。 - 鋼製支保工の外側曲面に当該鋼製支保工の前後に係る地山を支える帯板を接合する帯板接合工程と、
トンネルボーリングマシンの内部で当該帯板が接合された鋼製支保工を既設鋼製支保工に繋ぎ材にて連結して立設する連結立設工程と、
この連結立設工程の後に、少なくとも当該帯板の一部がトンネルボーリングマシンの内部にある範囲内で当該トンネルボーリングマシンを前進させるマシン前進工程と、
このマシン前進工程の後に、当該帯板と地山との間の空隙部分に充填材を充填する充填工程とを有することを特徴とする、
トンネルの支保構造の組立方法。
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- 1997-07-30 JP JP20431797A patent/JP3817035B2/ja not_active Expired - Lifetime
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