JP3947363B2 - トンネル支保工及びトンネル支保工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、トンネル支保工及びトンネル支保工法に関し、さらに詳細には、シールドタイプのトンネルボーリングマシン(以下、TBMという)を用いたTBM工法において適用される支保工及び支保工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
TBM工法は、本来、硬い岩盤を対象として開発されたものであり、複雑な地質の日本の地山条件の下では適さないとされてきた。しかしながら、TBMをシールドタイプとし、その他各種の改良を加えることにより、近年は軟弱な岩盤にも対応できる技術が急速に確立されつつある。
【0003】
TBM工法は、上記のように日本の地山条件に対応できるように各種改良が加えられたが、日本の地山特有の破砕帯に対する対策は依然として最大の技術的な課題である。この破砕帯での地山崩落の形態は、カッターヘッドによる掘削時点でずるずると崩れる場合と、カッターヘッドの通過後に時間の経過とともに崩落する場合とがある。
【0004】
いずれの場合も、崩落土によるTBMに対する締め付けを避けるためには、多くの対応メニューと、機敏な判断力が要求される。具体的には、前者の場合は空洞ができるのはやむなしとして、TBMを制御できる限界まで掘削を継続するか、あるいはTBMが締め付けを受ける前に掘削を止めて地盤改良等の補助工法を検討するかの二者択一とならざるを得ない。
【0005】
後者の場合はカッターヘッドが通過した時点では自立していた地山が、掘削による応力の開放や地下水の供給などで時間の経過とともに崩落する場合で、崩落した土砂はTBMの鋼殻(シールド本体)の上に載って支えられている状態になる。この場合はTBMの推進に伴って鋼殻が抜ける箇所で崩落土砂(岩塊)が落下し、支保工の施工作業は極めて危険な状態になる。
【0006】
このことを図8に示す従来工法を参照して説明する。図8は、トンネル軸方向の断面図である。図において鎖線Aは設計掘削線であり、TBMは崩落区間に入って土砂(岩塊)51の崩落が生じている。この場合、従来は次のような施工順序で支保工法を実施していた。
【0007】
(1) テールフード50の後方において鋼製支保工 52-1を建て込む。
(2) 崩落岩塊51を人力により鎖線Bで示す人力掘削線まで掘削処理する。
(3) 崩落岩塊の掘削に併せて木矢板 53-1を順次打ち込む。
(4) 楔54により矢板 53-1を崩落岩塊51群に押し付ける。このとき、矢板 53-1は片持ち状態になる。
(5) TBM後胴すなわちテールフード50を支保工間の間隔( 0.5m )だけ前進させる。
(6) 新たな支保工 52-2を建て込み、木矢板 53-2を打ち込む。以下、この手順を繰り返す。
【0008】
このように、従来の施工法では、崩落性の高い不良地山での施工の際にTBMの機体上に崩落した土砂は、支保工組立時にテールフードから多量に落下せざるを得ない。落下した土砂の片付け作業には多大の労力と時間を要するばかりか、土砂が落下する際は作業員の危険性が増し、さらにはベルトコンベア等のTBMの後続機械設備が破損する事例も多く、作業効率と安全性が大きく低下する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、特にシールドタイプのTBMを用いてトンネルを掘削するにあたり、崩落性の高い地山において安全に支保工の設置作業を行うことができるトンネル支保工及びトンネル支保工法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、シールドタイプのトンネルボーリングマシンを用いたトンネル掘削に適用される支保工であって、
所定角度範囲に亘る上部支保工部分と、互いに剛接合される両側部及び下部を含む他の支保工部分とからなり、
上部支保工部分は他の支保工部分及びシールド本体のテールフードの内周よりも曲率半径が小さく、他の支保工部分の内周側に入り込んで両端が他の支保工部分の両端に継手を介してそれぞれ剛接合され、
他の支保工部分の外周が設計掘削線とほぼ一致していることを特徴とするトンネル支保工にある。
【0011】
また、この発明はシールドタイプのトンネルボーリングマシンを用いたトンネル掘削に適用される支保工法であって、
所定角度範囲に亘る上部支保工部分と、互いに剛接合される両側部及び下部を含む他の支保工部分とからなり、上部支保工部分は他の支保工部分及びシールド本体のテールフードの内周よりも曲率半径が小さく、他の支保工部分の内周側に入り込んで両端が他の支保工部分の両端に継手を介してそれぞれ剛接合され、他の支保工部分の外周が設計掘削線とほぼ一致している支保工を使用し、
シールド本体のテールフード内で、前記支保工を組み立て、
支保工組立後、その上部支保工部分と既設支保工の上部支保工部分との間に矢板を設置して閉塞し、
その後、テールフードを前進させることを特徴とする。
【0012】
前記支保工はH形鋼からなり、トンネル軸方向に隣接する前記矢板どうしを前記支保工の外周フランジ上で接続する。あるいは、前記矢板の両端部をトンネル軸方向に隣接する支保工の各内外周フランジ間に挿入配置し、前記矢板と内周フランジとの間に楔を打ち込んで矢板を支保工に締結するようにしてもよい。
【0013】
この発明によれば、上部支保工部分が他の支保工部分よりも曲率半径が小さくなっている支保工を用いるので、支保工をテールフード内で組み立てることができて、崩落性の高い地山において土砂をトンネル坑内に落下させることなく安全に支保工の設置作業を行うことができる。そして、他の支保工部分の曲率半径は小さくすることがないので、設計掘削線にほぼ一致させることができ、崩落性地山での施工誤差を最小限に抑えることができる。
【0014】
矢板としては、木矢板や鉄矢木等種々のものを使用することができる。したがって、この発明でいう「矢板」とは、これら木矢板及び鉄矢木はもちろん、トンネル軸方向に隣接する支保工間を閉塞する部材一般を含む概念である。
【0015】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、この発明による支保工を示す正面図である。図2は図1の鎖線Cで囲む部分の拡大図、図3は図2のD−D線断面図、図4は図3のE−E線断面図である。
【0016】
支保工1は上部支保工部分2と、両側部支保工部分3,3及び下部支保工部分4を含む他の支保工部分5とからなっている。この支保工1がH形鋼で作られている点は従来と同様である。この発明によれば、所定の角度範囲(この実施形態では 125度)に亘って配置される上部支保工部分2は、他の支保工部分5よりも曲率半径が小さく、他の支保工部分5の内周側に入り込んでいる(以下、この発明による支保工1を異形支保工と称することもある)。具体的には、上部支保工部分2は、その外周の曲率半径が鎖線で示すTBMのテールフード10の内周の曲率半径よりも小さくなっていて、この結果、後述するようにテールフード10内で異形支保工1の組立てができるようになっている。また、他の支保工部分5の外周は設計掘削線Aとほぼ一致している。
【0017】
上部支保工部分2と他の支保工部分5すなわち両側部支保工部分3,3とは、図2,図3及び図4に示すように、大きさが異なる2つの継手板6,7を介して接合される。一方の継手板6はH形鋼のフランジ間の寸法にほぼ等しい幅寸法(支保工の径方向の長さ寸法)を有し、上部支保工部分2の両端面に固着されている。他方の継手板7はH形鋼のフランジ間の寸法のほぼ2倍に等しい幅寸法を有し、両側部の支保工部分3の端面に固着されている。
【0018】
これらの継手板6,7にはボルト挿入孔9が形成され、また他方の継手板7には内周側にリブ8が設けられている。上部支保工部分2と両側部支保工部分3とは、上部支保工部分2を内周側にずらして両継手板6,7を突き合わせ、ボルト挿入孔9に挿入されるボルト(図示せず)により緊締される。継手板7はリブ8で補強されているので、上部支保工部分2に加わる応力は側部支保工部分3に完全に伝達され、従来の円形支保工と同様に機能する。
【0019】
側部支保工部分3と下部支保工部分4とは、図5に示すようにして接合される。この接合方法は従来と同様である。すなわち、これら支保工部分3,4の端面には継手板11がそれぞれ固着され、継手板11を突き合わせてボルト挿入孔12に挿入されるボルトにより両支保工部分3,4が接合される。
【0020】
次に、上記異形支保工1を使用する本発明工法について説明する。図6はトンネル軸方向の断面図であり、TBMのテールフード10を引き抜き(後胴の前進)を終了した状態である。テールフード10は有効作業空間長L1 (例えば1200mm 程度)を有し、そのうち後端側の部分が支保工組立空間長L2 (例えば450mm程度)である。支保工の施工は次のようにして行われる。
【0021】
(1) テールフード10内で異形支保工1を組み立てる。組立の結果、上部支保工部分2の外周フランジ20aとテールフード10の内周との間には設計空間厚C(例えば50mm 程度)が形成される。
(2) 支保工組立後、設計空間厚Cを利用して、切羽側よりテールフード10と組み立てた支保工1との間に鉄矢木21を挿入する。そして、この鉄矢木21を既設異形支保工1-1 における上部支保工部分2の外周フランジ20a上で突き合わせ接続する。なお、いうまでもなく鉄矢木21は上部支保工部分2の外周全体に亘って設置する。また、接続方式は、重ね方式としてもよい。
(3) 次に、後胴を前進させ、テールフード10を引き抜く。テールフード10の引抜きにより空隙(9cm 程度)が生ずるため、鉄矢木21と外周フランジ20aとの間に楔22を打ち込み、鉄矢木21を崩落土砂(岩塊)23側に押し付ける。以下、この手順を繰り返す。テールフード10の引抜き時に、鉄矢木21が抜け落ちるのを防止するために、必要に応じて鉄矢木21を上部支保工部分2の外周フランジ20aに点付け溶接して固定するようにしてもよい。
【0022】
図7は別の実施形態を示すトンネル軸方向断面図である。この実施形態もテールフード10内で異形支保工1を組み立てる点は、上記実施の形態と同様であるが、組み立てた支保工1及び既設支保工1-1 におけるそれぞれの上部支保工部分2の内外周フランジ20a,20b間に木矢板24の両端部を挿入する点で、上記実施の形態と異なっている。木矢板24の挿入後、内周フランジ20bとの間に楔22を挿入して締め付ける。その後、テールフード10を引き抜く。
【0023】
なお、両実施の形態とも天端湧水がある場合は、防水シートを外周フランジ20aに取り付ける。また、支保工1の組み立て及びテールフード10の引抜きを行うごとにトンネル側壁部にファイバーモルタルを吹き付け、支保工と地山とを密着させる。上記各実施の形態で示した異形支保工を使用する工法は、崩落性地山での施工であり、通常の地山の場合は通常の円形支保工を用い、組み立てもテールフードの外部で行われる。
【0024】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、シールドタイプのTBMを用いてトンネルを掘削するにあたり、上部支保工部分が他の支保工部分よりも曲率半径が小さくなっている支保工を用いるので、支保工をテールフード内で組み立てることができて、崩落性の高い地山において安全に支保工の設置作業を行うことができる。そして、他の支保工部分の曲率半径は小さくすることがないので、設計掘削線にほぼ一致させることができ、崩落性地山での施工誤差を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による支保工の実施形態を示す正面図である。
【図2】上部支保工部分と側部支保工部分とを接合態様を示し、図1の鎖線Cで囲む部分の拡大図である。
【図3】図2のD−D線断面図である。
【図4】図3のE−E線断面図である。
【図5】側部支保工部分と下部支保工部分とを接合する継手を示す図である。
【図6】この発明によるトンネル支保工法の実施の形態を示すトンネル軸方向断面図である。
【図7】トンネル支保工法の別の実施の形態を示すトンネル軸方向断面図である。
【図8】従来の支保工法を示すトンネル軸方向断面図である。
【符号の説明】
1:支保工(異形支保工)
2:上部支保工部分
3:側部支保工部分
4:下部支保工部分
5:他の支保工部分
6:継手板
7:継手板
8:リブ
10:テールフード
20a:外周フランジ
20b:内周フランジ
21:鉄矢木
22:楔
23:崩落土砂(岩塊)
24:木矢板
Claims (4)
- シールドタイプのトンネルボーリングマシンを用いたトンネル掘削に適用される支保工であって、
所定角度範囲に亘る上部支保工部分と、互いに剛接合される両側部及び下部を含む他の支保工部分とからなり、
上部支保工部分は他の支保工部分及びシールド本体のテールフードの内周よりも曲率半径が小さく、他の支保工部分の内周側に入り込んで両端が他の支保工部分の両端に継手を介してそれぞれ剛接合され、
他の支保工部分の外周が設計掘削線とほぼ一致していることを特徴とするトンネル支保工。 - シールドタイプのトンネルボーリングマシンを用いたトンネル掘削に適用される支保工法であって、
所定角度範囲に亘る上部支保工部分と、互いに剛接合される両側部及び下部を含む他の支保工部分とからなり、上部支保工部分は他の支保工部分及びシールド本体のテールフードの内周よりも曲率半径が小さく、他の支保工部分の内周側に入り込んで両端が他の支保工部分の両端に継手を介してそれぞれ剛接合され、他の支保工部分の外周が設計掘削線とほぼ一致している支保工を使用し、
シールド本体のテールフード内で、前記支保工を組み立て、
支保工組立後、その上部支保工部分と既設支保工の上部支保工部分との間に矢板を設置して閉塞し、
その後、テールフードを前進させることを特徴とするトンネル支保工法。 - 前記支保工はH形鋼からなり、トンネル軸方向に隣接する前記矢板どうしを前記支保工の外周フランジ上で接続することを特徴とする請求項2記載のトンネル支保工法。
- 前記支保工はH形鋼からなり、前記矢板の両端部をトンネル軸方向に隣接する支保工の各内外周フランジ間に挿入配置し、前記矢板と内周フランジとの間に楔を打ち込んで矢板を支保工に締結することを特徴とする請求項2記載のトンネル支保工法。
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