JP3811285B2 - 電磁式燃料噴射弁の製造方法 - Google Patents

電磁式燃料噴射弁の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,コイルを収納するコイルハウジングと,このコイルハウジングに結合され,前記コイルの励磁により作動される弁体を収容すると共に該弁体により開閉される燃料吐出孔を一端面に開口する弁ハウジングと,この弁ハウジングの一端面に接合され,燃料吐出孔に連通する燃料噴射孔を有するインジェクタプレートとを備えた電磁式燃料噴射弁の製造方法に関し,特に,燃料吐出孔を出た燃料を燃料噴射孔から確実に噴射させるべく弁ハウジング及びインジェクタプレート間の液密を確保するために,燃料噴射孔を囲繞するようにしてインジェクタプレートを弁ハウジングに環状にレーザ溶接する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電磁式燃料噴射弁の製造に当たり,燃料噴射孔を囲繞するようにしてインジェクタプレートを弁ハウジングに環状にレーザ溶接することは,例えば特開平8−21339号公報に開示されているように,既に知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで,インジェクタプレートは非常に小さな部品である。従来では,このインジェクタプレートを弁ハウジングにレーザ溶接する際,該プレートを定位置に保持する保持具と,溶接時に発生するスパッタがインジェクタプレートの燃料噴射孔に侵入することを防ぐマスキング治具とを使用していたため,これらがインジェクタプレート上の大部分の領域を専有することになり,これらに邪魔されてレーザ溶接を能率良く行うことが困難であった。
【0004】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,燃料噴射孔への溶接スパッタの侵入を防ぎつゝ,インジェクタプレートを弁ハウジングに容易,確実にレーザ溶接し得るような,前記電磁式燃料噴射弁の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために,本発明は,コイルを収納するコイルハウジングと,このコイルハウジングに結合され,前記コイルの励磁により作動される弁体を収容すると共に該弁体により開閉される燃料吐出孔を一端面に開口する弁ハウジングと,この弁ハウジングの一端面に接合され,燃料吐出孔に連通する燃料噴射孔を有するインジェクタプレートとを備えた電磁式燃料噴射弁の製造に当たり,作業テーブル上に設置した弁ハウジングの外周に磁石を配置して弁ハウジングを磁化し,この弁ハウジングの一端面上に重ねたインジェクタプレート上に,磁性体からなるマスキング部材を重ねて,インジェクタプレートの燃料噴射孔を覆うと共に,マスキング部材を弁ハウジングに吸着せしめ,このマスキング部材の周囲においてインジェクタプレートを弁ハウジングに環状にレーザ溶接することを第1の特徴とする。
【0006】
この第1の特徴によれば,マスキング部材は,インジェクタプレートの燃料噴射孔を覆って溶接スパッタの侵入を防ぐマスキング機能の外,インジェクタプレートを弁ハウジングに保持する保持機能をも発揮するので,インジェクタプレート端面におけるインジェクタプレートの専有面積は小さくて足りる。したがって,このマスキング部材に何等邪魔されることなく,レーザビームによるインジェクタの弁ハウジングへの環状溶接を容易,確実に行うことができる。
【0007】
また本発明は,上記特徴に加えて,作業テーブルを回転テーブルとし,この回転テーブル上に,それと同軸に前記弁ハウジング,インジェクタプレート及びマスキング部材を配置し,回転テーブルを回転しながら,定位置に配設したレーザ溶接トーチから照射するレーザビームによりインジェクタプレートを弁ハウジングに環状に溶接することを第2の特徴とする。
【0008】
この第2の特徴によれば,レーザ溶接トーチを作動しつゝ,回転テーブルを一回転させることにより,レーザビームによるインジェクタの弁ハウジングへの環状溶接を自動的且つ正確に行うことができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の一実施例に基づいて以下に説明する。
【0010】
図1は,本発明方法により製造された内燃エンジン用電磁式燃料噴射弁の縦断側面図,図2は図1の2部の拡大図,図3は図2の3−3線断面図,図4は,インジェクタプレートの弁ハウジングへのレーザ溶接方法の第1実施例を示す側面図である。
【0011】
先ず図1ないし図3により,本発明方法により製造された内燃エンジン用の電磁式燃料噴射弁Iの構成について説明する。この燃料噴射弁Iは,前端部内周面に弁座部材2を圧入して一体に結合した円筒状の弁ハウジング1と,この弁ハウジング1の後端部外周面に嵌合して溶接される小径部3aを有する段付き円筒状のコイルハウジング3とを備えており,これらは何れも磁性材で構成されている。
【0012】
弁座部材2も円筒状をなしていて,その前端面に開口する燃料吐出孔2aと,その後縁に連なる円錐状の弁座2bとを有する。この弁座2bに着座し得る球状の弁部4aと,この弁部4aに溶接により前端が結合されて弁ハウジング1に収容される弁杆4bとで弁体4が構成され,その弁杆4bの後端には,弁ハウジング1の後端部内周面に軸方向移動自在に嵌合する可動コア5が固着される。また,この可動コア5の外周面は,弁ハウジング1の後端面に全周溶接される摺動案内筒6の内周面により摺動自在に嵌合される。この摺動案内筒6の後端には,可動コア5の後端面に前端面を対向して配置される固定コア7の前端部が溶接される。その際,固定コア7の前端面と可動コア5の後端面との間に,弁体4の開閉ストロークに対応する間隙が設けられる。したがって,可動コア5の後端面が固定コア7の前端面に当接することにより,弁体4の開弁限界が規定される。
【0013】
摺動案内筒6及び固定コア7の外周には,それらを囲繞すると共に,前記コイルハウジング3に収容されるコイル組立体8が配設される。このコイル組立体8は,摺動案内筒6及び固定コア7の外周面に嵌合するボビン9と,このボビン9に巻装されるコイル10とからなっている。
【0014】
固定コア7の中心部は,可動コア5の通孔11を介して弁ハウジング1内と連通する中空部12となっており,その中空部12に,可動コア5を弁体4の弁座2bへの着座方向に付勢するコイル状の弁ばね13と,この弁ばね13の後端を支承する栓体14とが収容される。この栓体14は,Oリング15を介して中空部12の内周面に圧入されるもので,その圧入深さを調節することにより,弁ばね13のセット荷重が調整される。
【0015】
弁ハウジング1及び弁座部材2の前端面には,弁座部材2の燃料吐出孔2aと連通する複数,図示例では一対の燃料噴射孔17a,17aを有する鋼板製のインジェクタプレート17が,燃料噴射孔17a,17aを囲繞するよう同心状に配置される内外二条の環状溶接部30,31により結合される。上記一対の燃料噴射孔17a,17aは,例えばエンジンの一対の吸気弁に向かって燃料を噴射し得るように,互いに異なる所定の方向を指向する。また上記環状溶接部30,31は,後述の本発明方法により形成されるものである。
【0016】
弁ハウジング1には,また,インジェクタプレート17の外周部を覆うキャップ18が装着される。
【0017】
弁ハウジング1の中間部周壁には,複数の燃料入口孔20,20…が穿設されており,これら燃料入口孔20,20…を囲繞するように,環状の燃料フィルタ21が弁ハウジング1の外周に装着される。弁ハウジング1の外周には,さらに,燃料フィルタ21を前後に挟む一対のOリング22,22が装着され,これらOリング22,22を介して弁ハウジング1が内燃エンジンEに嵌装されたとき,内燃エンジンEの燃料供給通路23が燃料フィルタ21を介して燃料入口孔20,20…と連通する。
【0018】
コイルハウジング3及び,その後端から露出した固定コア7は,合成樹脂製の絶縁被覆体25に埋封される。この絶縁被覆体25には,コイル10に接続した接続端子26を内蔵するカプラ27が一体に形成される。
【0019】
而して,コイル10を消磁した状態では,弁ばね13の付勢力で可動コア5及び弁体4が前方に押圧され,弁部4aを弁座2bに着座させている。したがって,燃料供給通路23から燃料フィルタ21及び燃料入口孔20,20…を通して弁ハウジング1内に供給されるた高圧燃料は,弁ハウジング1及び固定コア7内に保持される。
【0020】
コイル10に通電すると,それにより生ずる磁束が固定コア,可動コア5,弁ハウジング1及びコイルハウジング3を順次走り,磁力により可動コア5が弁体4を伴って固定コア7に吸着され,弁座2bが開放されるので,弁ハウジング1内の高圧燃料が燃料噴射孔17a,17aから噴射される。その際,弁ハウジング1及び弁座部材2の前端面にインジェクタプレート17が,燃料噴射孔17a,17aを囲繞する環状に溶接されているから,弁ハウジング1及び弁座部材2とインジェクタプレート17との間の液密が保障され,その間からの燃料の漏出を確実に防ぐことができる。
【0021】
さて,図4により,インジェクタプレート17と弁ハウジング1及び弁座部材2との各間の前記環状溶接部30,31の形成方法の第1実施例について説明する。
【0022】
作業テーブルとしての回転テーブル40上面に磁性体からなる位置決め治具41が同軸状に固着されており,この位置決め治具41の上面中心部に開口する有底の位置決め孔41aに,弁座部材2を一体に備えた弁ハウジング1を,燃料吐出孔2aを上方に向けて抜き差し可能に嵌合し,位置決め治具42に設けられるチャック(図示せず)により上記弁ハウジング1を保持する。さらに,位置決め治具42上には,弁ハウジング1の外周に抜き差し可能に嵌合する中空円筒状の永久磁石42を載置する。こうして弁ハウジング1を回転テーブル40と同軸に配置すると共に,永久磁石42により弁ハウジング1を磁化する。
【0023】
次いで,この弁ハウジング1の上面にインジェクタプレート17を重ねた後,円形のマスキング部材43をインジェクタプレート17上に載せて,その一対の燃料噴射孔17a,17aを覆うと共に,このマスキング部材43をインジェクタプレート17を介して弁ハウジング1に吸着させる。マスキング部材43は,形成すべき前記環状溶接部30,31の内側に収まる大きさになっており,上面には,これを操作するノブ43aを備えている。
【0024】
尚,インジェクタプレート17は,磁性体,非磁性体の何れであってもよい。
【0025】
インジェクタプレート17の上方には,トーチ支持腕44に支持されるレーザ溶接トーチ45を下向きに配置する。トーチ支持腕44は,図示しない固定構造体に取付けられ,上下方向A及び水平方向Bに移動調節ができるようになっており,その移動調節により,レーザ溶接トーチ45の焦点を,先ず内側の形成すべき環状溶接部30の一点に合わせる。こうしてから,レーザ溶接トーチ45を作動しながら,電動モータ等の駆動手段46により回転テーブル40を弁ハウジング1等と共に一回転させれば,該トーチ45が照射するレーザビーム47により,燃料噴射孔17a,17aを取り囲むようにしてインジェクタプレート17を弁座部材2の上面に溶接して,内側の環状溶接部30を自動的且つ正確に形成することができる。
【0026】
次に,トーチ支持腕44を水平方向Bに移動調節して,レーザ溶接トーチ45の焦点を次に形成すべき外側の環状溶接部31の一点に合わせてから,先刻と同様にレーザ溶接トーチ45を作動しながら回転テーブル40を一回転させれば,該トーチ45が照射するレーザビーム47により,内側の環状溶接部30を同心に囲繞するようにしてインジェクタプレート17を弁座部材2の上面に溶接して,外側の環状溶接部31を自動的且つ正確に形成することができる。
【0027】
この間,マスキング部材43は,インジェクタプレート17の一対の燃料噴射孔17a,17aを覆い続けて,溶接スパッタの侵入を防ぐので,溶接後,燃料噴射孔17a,17aの清掃を行う必要はない。しかも,マスキング部材4343は,燃料噴射孔17a,17aを覆うマスキング機能のみならず,永久磁石42により磁化された弁ハウジング1の磁力をもってインジェクタプレート17を弁ハウジング1に保持する保持機能をも発揮するので,インジェクタプレート17上面におけるマスキング部材43の専有面積は小さくて足りる。したがって,このマスキング部材43に何等邪魔されることなく,レーザビーム47によるインジェクタプレート17の弁ハウジング1及び弁座部材2への環状溶接を容易,確実に行うことができる。
【0028】
この溶接後,マスキング部材43をインジェクタプレート17から取り除いてから,永久磁石42を弁ハウジング1と共に位置決め治具41から引き上げ,永久磁石42内の弁ハウジング1の一端を押圧すれば,永久磁石の磁力に抗して弁ハウジング1を永久磁石42から容易に取り出すことができる。これをもって,インジェクタプレート17の弁ハウジング1及び弁座部材2への溶接工程は終了する。
【0029】
図5はインジェクタプレートの弁ハウジングへのレーザ溶接方法の第2実施例を示す側面図である。この第2実施例は,前実施例の永久磁石42に代えて電磁石142を用いたもので,この電磁石142のコイル142aには定電圧電源50を開閉スイッチ51を介して接続する。その他の構成は前記実施例と同様であり,前記実施例との対応部分には,同一の参照符号を付して,その説明の重複を避ける。
【0030】
この第2実施例によれば,開閉スイッチ51のオン,オフによる電磁石142の励磁,消磁によって,弁ハウジング1の磁力を制御し,インジェクタプレート17及びマスキング部材43に対する吸着力を制御することができるから,スイッチ51をオンすることにより,マスキング部材43をインジェクタプレート17を介して弁ハウジング1の上端面に吸着させることができ,またスイッチ51をオフすることにより,弁ハウジング1外周への電磁石142の装着や取外しを磁力に抵抗されることなく容易に行うことができる。
【0031】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば,上記実施例の場合と反対に,外側の環状溶接部31を先に形成することもできる。また,内外二条の溶接部30,31に対応して一対のレーザ溶接トーチを用意すれば,その二条の溶接部30,31を一挙に形成することができる。また弁ハウジング1及び弁座部材2を一体に形成して,弁ハウジング1自体に弁座2b及び燃料吐出孔2aを形成したものでは,弁ハウジング1及びインジェクタプレート17間の環状溶接部は一条でよい。
【0032】
【発明の効果】
以上のように本発明の第1の特徴によれば,作業テーブル上に設置した弁ハウジングの外周に磁石を配置して弁ハウジングを磁化し,この弁ハウジングの一端面上に重ねたインジェクタプレート上に,磁性体からなるマスキング部材を重ねて,インジェクタプレートの燃料噴射孔を覆うと共に,マスキング部材を弁ハウジングに吸着せしめ,このマスキング部材の周囲においてインジェクタプレートを弁ハウジングに環状にレーザ溶接するので,マスキング部材が,インジェクタプレートの燃料噴射孔を覆って溶接スパッタの侵入を防ぐマスキング機能の外,インジェクタプレートを弁ハウジングに保持する保持機能をも発揮することにより,インジェクタプレート端面におけるマスキング部材の専有面積は小さくて足り,このマスキング部材に何等邪魔されることなく,レーザビームによるインジェクタの弁ハウジングへの環状溶接を容易,確実に行うことができる。
【0033】
また本発明の第2の特徴によれば,作業テーブルを回転テーブルとし,この回転テーブル上に,それと同軸に前記弁ハウジング,インジェクタプレート及びマスキング部材を配置し,回転テーブルを回転しながら,定位置に配設したレーザ溶接トーチから照射するレーザビームによりインジェクタプレートを弁ハウジングに環状に溶接するので,レーザビームによるインジェクタの弁ハウジングへの環状溶接を自動的且つ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法で製造された電磁式燃料噴射弁の縦断側面図。
【図2】図1の2部拡大図。
【図3】図2の3−3線断面図。
【図4】インジェクタプレートの弁ハウジングへのレーザ溶接方法の第1実施例を示す側面図。
【図5】インジェクタプレートの弁ハウジングへのレーザ溶接方法の第2実施例を示す側面図。
【符号の説明】
I・・・・・電磁式燃料噴射弁
1・・・・・弁ハウジング
2a・・・・燃料吐出孔
3・・・・・コイルハウジング
4・・・・・弁体
10・・・・コイル
17・・・・インジェクタプレート
17a・・・燃料噴射孔
30,31・・・環状溶接部
40・・・・回転テーブル(作業テーブル)
42・・・・磁石(永久磁石)
142・・・磁石(電磁石)
43・・・・マスキング部材
45・・・・レーザ溶接トーチ
47・・・・レーザビーム

Claims (2)

  1. コイル(10)を収納するコイルハウジング(3)と,このコイルハウジング(3)に結合され,前記コイル(10)の励磁により作動される弁体(4)を収容すると共に該弁体(4)により開閉される燃料吐出孔(2a)を一端面に開口する弁ハウジング(1)と,この弁ハウジング(1)の一端面に接合され,燃料吐出孔(2a)に連通する燃料噴射孔(17a)を有するインジェクタプレート(17)とを備えた電磁式燃料噴射弁の製造に当たり,
    作業テーブル(40)上に設置した弁ハウジング(1)の外周に磁石(42,142)を配置して弁ハウジング(1)を磁化し,この弁ハウジング(1)の一端面上に重ねたインジェクタプレート(17)上に,磁性体からなるマスキング部材(43)を重ねて,インジェクタプレート(17)の燃料噴射孔(17a)を覆うと共に,マスキング部材(43)をインジェクタプレート(17)を介して弁ハウジング(1)に吸着せしめ,このマスキング部材(43)の周囲においてインジェクタプレート(17)を弁ハウジング(1)に環状にレーザ溶接することを特徴とする,電磁式燃料噴射弁の製造方法。
  2. 請求項1記載の方法において,
    前記作業テーブルを回転テーブル(40)とし,この回転テーブル(40)上に,それと同軸に前記弁ハウジング(1),インジェクタプレート(17)及びマスキング部材(43)を配置し,回転テーブル(40)を回転しながら,定位置に配設したレーザ溶接トーチ(45)から照射するレーザビーム(47)によりインジェクタプレート(17)を弁ハウジング(1)に環状に溶接することを特徴とする,電磁式燃料噴射弁の製造方法。
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