JP3807332B2 - トンネル交通量決定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、交通量計(トラフィックカウンタ)が設置されない道路トンネルの換気制御等に好適なトンネル交通量決定方法に関し、詳しくは、トンネル内の走行車両の分布に基づく排ガスに起因した汚染物質濃度分布から、トンネル内の時々刻々変化する交通量を決定するトンネル交通量決定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、道路トンネルに設けられたジェットファン,ブースタファン,立坑送排風機,集塵機等の換気装置の制御は、最も一般的には、トンネル出入口近傍に交通量計(以下トラカンという)を設置し、それらの計測に基づき、大型車,小型車別のトンネルに進入する車両台数と,トンネルから出た車両台数との差の簡単な定量演算又はこの演算にニューロ演算やファジィ推論を加味した予測演算から、トンネル内の大型車,小型車別の交通量を求め、この交通量の時間変化にしたがって行われる。
【0003】
ところで、トラカンが設置されていない道路トンネルにあっては、トンネル内の交通量は無視され、トンネル内の風向風速或いは煤煙,排気ガス一酸化炭素等の汚染物質の濃度(通常は一酸化炭素より煤煙の方が問題となるので以下煤煙濃度という)が、トンネル内に設置した風向風速計,煤煙濃度透過率計(VI計)等で実測され、これらの実測結果の推移(時間変化)にしたがって換気装置が制御される。
【0004】
しかし、この場合は、トンネル内の交通量に対して、いわゆる「どんぶり勘定」の制御になり、過剰換気や換気不足が生じ易く、無駄な電力消費が生じたり、トンネル内の煤煙濃度が制限レベルを超えたりする不都合がある。
【0005】
そこで、本出願人は、トラカンが設置されていない道路トンネルの交通量を求めるため、特許第3092500号(特開平9−144500号)のトンネル交通量決定方法を既に出願している。
【0006】
この既出願のトンネル交通量決定方法は、まず、トンネル内に進入する大型車の台数(推定台数)を変えて煤煙濃度の演算をくり返し、演算結果の煤煙濃度が実測濃度に最も近くなる台数から、大型車のトンネル進入台数を決定し、つぎに、大型車の台数を決定した台数に固定し、小型車の台数(推定台数)を変えてトンネル内の風向風速を演算し、演算結果の風向風速が実測の風向風速に最も近くなる台数から、小型車のトンネル進入台数を決定し、これらの大型車,小型車のトンネル進入台数からトンネル交通量を推定して決定するものである。
【0007】
そして、この交通量にしたがってトンネルの換気機器を制御すれば、前記の「どんぶり勘定」の制御の場合の不都合は解消される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記既出願のトンネル交通量決定方法の場合、大型車の台数に基づいて演算したトンネル内の煤煙濃度が実測濃度に最も近くなるまで、大型車を1台ずつ増やして煤煙濃度の演算をくり返し、その後、大型車の台数を固定し、大型車,小型車の台数に基づくトンネル内の風向風速の演算結果が実測の風向風速に最も近くなるまで小型車を1台ずつ増やして風向風速の演算をくり返す必要がある。
【0009】
この場合、トンネル内の煤煙濃度分布の多数回の演算と、トンネル内の風向風速の多数回の演算とを短時間に行う必要があり、極めて多量かつ煩雑な演算処理を要する。
【0010】
そして、これらの演算処理は、通常、換気制御装置のCPUが実行するが、その際、CPUの演算処理負担が極めて大きく、場合によっては、いわゆる「リアルタイム制御」が困難となり、トンネル換気等の遅れが生じる。
【0011】
本発明は、トラカンが設置されていないトンネルの交通量を、演算処理負担が少ない手法で迅速かつ正確に求めて決定することを課題とし、決定した交通量に基づくトンネル換気等の遅れが生じないようにする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために、本発明のトンネル交通量決定方法は、所定速度で走行する車両がトンネル入口近傍の交通量計仮想設置点からトンネル出口に到達する時間をトンネル通過時間とし、
単位時間に前記仮想設置点を通過した車両の大型車,小型車別の推定台数の所定数の組合せ及び平均車速の設定に基づき、
前記推定台数の組合せ毎に、前記通過時間にトンネルを走行する車両の分布から、前記通過時間のトンネル内の風向風速及び汚染物質濃度分布の変化を演算し、
演算結果のトンネル内の風向風速及び汚染物質濃度が実測結果に最も近くなる前記推定台数の組合せを、前記通過時間前のトンネル交通量として選択し、
選択したトンネル交通量の増減傾向からトンネル交通量の時間変化特性を決定して現在のトンネル交通量を推定し、決定する。
【0013】
したがって、トンネル入口近傍のトラカン仮想設置点を単位時間に通過してトンネルに進入する車両の台数,すなわちトンネル交通量として、前記単位時間に所定速度でトラカン仮想設置点を通過する大型車,小型車別の推定台数の組合せが、所定数だけ用意される。
【0014】
そして、各組合せの大型車,小型車別の推定台数と、設定された平均車速とに基づき、組合せの回数だけトンネル内の風向風速及び汚染物質濃度分布が演算され、各組合せから、演算結果の風向風速及び汚染物質濃度分布が実測結果に最も近くなる大型車、小型車の推定台数の組合せが選択される。
【0015】
このとき、選択された大型車,小型車別の推定台数が、トンネル通過時間前のトンネル交通量であり、この交通量の増減傾向からトンネル交通量の時間変化特性が決定され、この特性から、前記通過時間後の現在のトンネル交通量が演算されて決定される。
【0016】
この場合、演算量がほぼ前記組合せの数で定まり、前記既出願のようにトンネル内の煤煙濃度分布,風向風速が実測値に最も近くなるまで大型車を1台ずつ増やして煤煙濃度分布の演算をくり返し、その後、小型車を1台ずつ増やしてトンネル内の風向風速の演算をくり返す場合より、演算処理が著しく簡単になり、演算処理負担が少ない簡単な手法でトラカンが設置されていないトンネルの交通量が精度よく求められて決定される。
【0017】
そのため、この演算処理に処理能力の低い安価なCPUを用いても「リアルタイム制御」のトンネル換気等が遅れなく行える。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の1形態につき、図1〜図4を参照して説明する。
図1はトラカンが設置されていないトンネル(道路トンネル)1を示し、このトンネル1は説明を簡単にするため、左から右への一方通行1車線の道路2のトンネルであり、左側の一方の坑口1aがトンネル入口であり、右側の他方の坑口1bがトンネル出口である。
【0019】
そして、坑口1aの近傍の所定地点3が交通量計仮想設置地点であり、坑口1aと設置点3との距離L1 は、設置点3を通過した車両4が所定速度で交通量計測の単位時間である、例えば1分間走行して坑口1aに到達する距離である。
【0020】
なお、所定速度は道路2の速度制限等を考慮して設定され、例えば、高速道であれば80km/h,一般道であれば60km/h,(h:時)である。
【0021】
また、坑口1bが設置点3から距離L2 のトンネル出口であり、設置点3を通過した車両4が前記所定速度でT分間走行すると、坑口1bに到達する。
【0022】
さらに、トンネル1内にジェットファンやブースタファンからなる1又は複数台の換気装置5及び1又は複数個の風向風速計6,煤煙濃度透過率計(VI計)7が設置され、これらはトンネル内又はトンネル外の電気所等に設置されたコンピュータ構成の換気制御装置8に有線又は無線で接続される。
【0023】
この換気制御装置8は、風向風速計6,VI計7の計測信号により、トンネル1内の時々刻々の風向風速及び汚染物質濃度としての煤煙濃度の実測値を把握する。
【0024】
また、つぎに説明する演算処理により、トンネル1に進入した車両4の走行分布に基づくトンネル1内の風向風速,煤煙濃度分布の時間変化を演算し、その演算結果と実測結果とからトンネル1内の現在の交通量(最新のトンネル交通量)を決定する。
【0025】
すなわち、所定速度が例えば60km/hに設定された場合、各車両4がこの60km/hの設定速度,最適車間距離の間隔で走行し、1.5秒間隔で設置点3を順次に通過するとして、設置点3を単位時間(例えば1分間)に通過する車両4の総合数(1分間交通量)が40台/分に設定される。
【0026】
そして、この40台/分の車両4につき、大型車,小型車別の推定台数の組合せとして、換気制御装置8の演算処理負担及び実際に道路2を走行する車両4の大型車,小型車の平均的な割合い等を考慮した適当数,例えば5個の組合せが、自動的に、又は、手動操作で決定して設定(セット)される。
【0027】
このとき、一般的に大型車の台数より小型車の台数が多いことから、1分間交通量をm台/分とすると、大型車,小型車別の推定台数の組合せ数が5の場合、大型車の推定台数は、例えば、0.5×m,0.4×m,0.3×m,0.2×m,0.1×mの演算から求まり、小型車の推定台数は0.5×m,0.6×m,0.7×m,0.8×m,0.9×mの演算から求まり、m=40台/分のときは、(大型車推定台数,小型車推定台数)の組合せとして、具体的に、(20台,20台),(16台,24台),(12台,28台),(8台,32台),(4台,36台)の5個の組合せが設定される。
【0028】
また、各車両4の設置点3での平均車速は、道路2の速度制限等の条件を考慮して前記の60km/h又は80km/hの所定速度に設定される。
【0029】
そして、これらの設定に基づき、各車両4は60km/hで走行して1.5秒間隔で設置点3を順次に通過し、1秒後に坑口1aからトンネル1内に進入するとして、演算が行われる。
【0030】
このとき、設置点3を通過してトンネル1内に進入する車両4は、大型車と小型車の推定台数の組合せに基づき、例えば、大型車20台,小型車20台の組合せ(1(大型車)対1(小型車))になるときは、大型車,小型車に交互に変わり、大型車12台,小型車28台(3(大型車)対7(小型車))になるときは、10台毎に3台が大型車で7台が小型車になる。
【0031】
そして、トンネル1に進入した各車両4は、トンネル1内を走行してT分後に坑口1bからトンネル1外に出る。
【0032】
このとき、トンネル1内を走行する車両4の分布(車両走行分布)が時々刻々変化し、この変化にしたがって、トンネル1内の風向風速及び煤煙濃度分布が変化する。
【0033】
そして、トンネル1内の大型車,小型車別の時々刻々の走行台数をNt,Npとすると、換気制御装置8は、前記既出願と同様にしてトンネル1内の風向風速及び煤煙濃度分布の変化を演算する。
【0034】
すなわち、トンネル1内の時々刻々の煤煙濃度は、前記既出願の明細書,図面等にも記載されているように、トンネル内の車道方向(長手方向)の距離(長さ)をx,時刻tにおける煤煙濃度をCsm(x,t)とすると、つぎの数1の拡散方程式からの演算から求まる。
【0035】
【数1】
【0036】
この数1の拡散方程式を、トンネル1内の単位距離xの区間nにおける煤煙濃度変化量dCsm(n,t)/dtを求める式に置き換えると、つぎの数2の式が得られる。
【0037】
【数2】
【0038】
数2の式中のトンネル内風速(正確にはトンネル車道内風速)Vrは、トンネル1の風向風速であり、時々刻々変化する風圧発生要因によって決まる。
【0039】
この風圧発生要因としては、主に、車両4の走行により発生する交通換気風圧,換気装置5の換気風圧及び自然風圧,車道内抵抗風圧等がある。
【0040】
ところで、トンネル内風速Vrは、必ずしもトンネル1内各所で同一ではなく、風圧の局所変動によってノイジィに変動するが、トンネル1全体を一つの圧力容器とし、この容器内で発生する平均風速をトンネル内風速とすれば、トンネル内風速Vrは、つぎの数3の式の演算により求まる。
【0041】
【数3】
【0042】
数3の式中のρ,L,…はつぎの各値である。
ρ:空気密度{0.1224(Kgf・s2/m4)}
L:トンネル長(m)
ΔPt:走行車両により発生する交通換気風圧(mmAq)
ΔPn:自然風圧(mmAq)
ΔPr:車道内抵抗風圧(mmAq)
ΔPk:換気機風圧(mmAq)
【0043】
さらに、一方通行のトンネル1の場合、数3の式のΔPt,ΔPn,ΔPrはつぎの数4,数5,数6の各式で示される。
【0044】
【数4】
【0045】
数4の式中のAt,Ap,…はつぎの各値である。
At:大型車の平均前面投影面積(m2)
Ap:小型車の平均前面投影面積(m2)
ξt:大型車の風抵抗係数
ξp:小型車の風抵抗係数
Nt:大型車の走行台数
Np:小型車の走行台数
Ut:車両の平均車速(m/sec.)
【0046】
【数5】
【0047】
数5の式中のξe,λr,…はつぎの各値である。
ξe:トンネル入り口損失係数
λr:トンネル内壁面摩擦損失係数
Dr:車道代表周長寸法(m)
Vn:自然風のみによるトンネル車道内風速(m/sec.)
【0048】
【数6】
【0049】
また、換気装置5がジェットファンの場合、数3の式のΔPkはつぎの数7の式から求まる。
【0050】
【数7】
【0051】
数7の式中のQj,Ajはつぎの各値である。
Qj:ジェットファン吹き出し風量(m3/sec.)
Aj:ジェットファン吹き出し面積(m2)
【0052】
そして、交通換気風圧ΔPt及び車道内抵抗風圧ΔPrは、トンネル1内を走行する車両4の大型,小型の台数に依存して変化し、自然風圧ΔPm,換気機風圧ΔPkは、交通換気風圧ΔPt,車道内抵抗風圧ΔPrに比して小さく、しかも、それらの変化は微少である。
【0053】
そのため、トンネル内風速Vrはほとんどトンネル1内の大型車,小型車別の車両台数に依存した交通換気風圧ΔPt,車道内抵抗風圧ΔPrに左右される。
【0054】
そして、数4の式の交通換気風圧ΔPtに、設定された大型車,小型車別の台数Nt,Np及び平均車速Utを代入し、数3の式の風圧ΔPn,ΔPkを0又は一定値にすることで、数3,数4,数6の式からトンネル内風速Vrが算出されて求まる。
【0055】
このとき、大型車の台数Nt,小型車の台数Npは、各1分間に設定された組合せの割合で1分毎に増加し、T分後以降は坑口1bに到達した車両4がトンネル1から出る。
【0056】
つぎに、トンネル内風速Vrを用いることにより、煤煙濃度変化量dCsm(n,t)/dtを求める前記数2の式において、トンネル1内の各区間n(=1,2,…,x,…)に発生する微小時間Δt当りの煤煙量qsm(n,t)は、各区間nに存在する車両台数と、大型車,小型車別の1台の煤煙発生量とに基づき、各車両4がトンネル1内を平均車速Utで移動するときの煤煙発生量として求まる。
【0057】
さらに、変化量dCsm(n,t)/dtから、VI計6が設けられたトンネル入口からn番目の特定区間nxの煤煙濃度の時間変化が求まる。
【0058】
そして、ディーゼル車,ガソリン車によって煤煙発生量が異なることを考慮すると、煤煙量qsm(n,t)は、つぎの数8の式の演算から求まる。
【0059】
【数8】
qsm=(Ld・NLd+Lg・NLg+Sd・NSd+Sg・NSg)・St・Ut・dt
【0060】
数8の式中のLd,Lg,…はつぎの各値である。
Ld:基準車速で走行したときの大型ディーゼル車1台当りの煤煙発生量(m3/m/台)
Lg:基準車速で走行したときの大型ガソリン車1台当りの煤煙発生量(m3/m/台)
Sd:基準車速で走行したときの小型ディーゼル車1台当りの煤煙発生量(m3/m/台)
Sg:基準車速で走行したときの小型ガソリン車1台当りの煤煙発生量(m3/m/台)
NLd:大型ディーゼル車の走行台数(台)
NLg:大型ガソリン車の走行台数(台)
NSd:小型ディーゼル車の走行台数(台)
NSg:小型ガソリン車の走行台数(台)
St:煤煙発生量の比率(定数)
Ut:平均車速(m/sec.)
dt:単位時間(sec.)
【0061】
なお、走行台数NLd,NLg,NSd,NSgは、発生量Ld,Lg,Sd,Sgの煤煙発生源のうちどれ位の煤煙発生源が次の区間に移動するかを表わす移動係数で換算したときの台数であり、整数とは限らない。
【0062】
また、トンネル1に進入したトラック,バス等の大型車は、乗用車等の小型車に比してトンネル内風速Vrに大きく影響し、例えば、前記数3の式の交通換気圧力ΔPtに関わる車両等価面積{=平均前面投影面積(At,Ap)×風抵抗係数(ξt,ξp)}は、ほぼ、小型車を1としたときに大型車は5になる。
【0063】
さらに、大型車の大半がディーゼル車であり、小型車の大半がガソリン車であることから、ここでは、大型車を全てディーゼル車とし、小型車を全てガソリン車として煤煙濃度を求める。
【0064】
この場合、煤煙濃度の演算に重要な1台当りの煤煙発生量(車両単位煤煙発生量)は、はぼ、小型車(ガソリン車)を1としたときに大型車(ディーゼル車)が40〜50になる。
【0065】
したがって、大型車をディーゼル車,小型車をガソリン車とすると、トンネル1内の風向風速及び煤煙濃度分布は主に大型車の台数Ntに依存し、とくに煤煙量qsm(n,t)はほぼ大型車の台数Ntにのみ依存し、つぎの数9の式から求まり、この数9の式の演算から、トンネル1内の煤煙濃度分布が算出されて求まる。
【0066】
【数9】
qsm=(Ld・Nt+Sg・Np)・St・Ut・dt
【0067】
そこで、大型車,小型車の各組合せそれぞれにつき、大型車,小型車の推定台数を台数Nt,Npとして、例えば5秒間隔(周期)で数3,数4,数6の式の演算からトンネル内風速(風向風速)Vrを求めるとともに、数9の式の演算から煤煙濃度qsm(n,t)を求めてトンネル1内の時々刻々の煤煙濃度分布を求める。
【0068】
さらに、各組合せの演算から求めた風向風速Vr,VI計設置区間の煤煙濃度qsm(n,t)につき、例えば1分毎に、風向風速計6,VI計7により実測した風向風速,煤煙濃度との偏差を求め、両方の偏差に基づき、実測結果に最も近くなる組合せを選択し、選択した組合せの大型車及び小型車の推定台数からトンネル交通量を決定する。
【0069】
具体的には、例えば、風向風速,煤煙濃度の偏差の平均が最も小さくなる組合せを、煤煙濃度の偏差が小さくなる組合せを優先して選択する。
【0070】
そして、選択した組合せの1分間交通量m台/分がT分前のトンネル交通量であり、このトンネル交通量が1分毎にくり返し求められる。
【0071】
つぎに、このT分前のトンネル交通量の増減変化傾向から、トンネル交通量の時間変化特性を決定し、この特定に基づく、T分後,すなわち現在(最新)の大型車,小型車別の台数を、現在のトンネル交通量として推定し、決定する。
【0072】
例えば、大型車,小型車それぞれにつき、1分毎に求めた推定台数をN0 (測定時点台数),N-1(1分前台数),N-2(2分前台数),…とし、その増減変化傾向に基づき、例えば本出願人の既出願(特許第3033402号(特開平9−128678号))の明細書,図面等に記載されているように、測定時点からT分後の大型車,小型車それぞれの台数N+Tを予測して求める。
【0073】
すなわち、台数差N0−N-T,N-1−N-(T+1),N-2−N-(T+2),…,N-T−N-(T+T)を求め、その増減変化の傾向を判断し、この判断に基づき、増加傾向の変化のときは、その後の車両台数が正弦の三角関数特性で変化するとし、つぎの数10の三角関数式の演算からT分後の現在のトンネル交通量の台数N+Tを予測する。
【0074】
【数10】
N+T=N0+(Nmax−N0)・sin(θup・π/180)
【0075】
なお、Nmax は車両台数の最大値である。
また、前記判別に基づき、減少傾向の変化のときは、その後の車両台数が余弦の三角関数特性で変化するとし、つぎの数11の三角関数式の演算からT分後の台数N+Tを予測する。
【0076】
【数11】
N+T=N0+N0・sin(θdown・π/180+π)
【0077】
なお、数10,数11の三角関数式において、Nmax は車両台数の設定された最大値、θup,θdownはつぎの数12,数13の指数関数式から決定された位相である。
【0078】
【数12】
θup=90・{1−exp(−ΔN/a)}
【0079】
【数13】
θdown=90・{1−exp(−ΔN/b)}
【0080】
但し、数12,数13において、ΔNはT分前の推定台数N-Tから推定台数N0 までの変化量であり、つぎの数14の式から求まる。
【0081】
【数14】
ΔN=N0−N-T
【0082】
また、式中のa,bはトンネル内の車両台数の固有の定数であり、増加又は減少の傾向が大きくなる程、位相θup,θdownを大きくしてT分後の増,減量を多くし、台数N+Tの精度を高めるための時定数であり、具体的にはT分間に車両台数が最大の63%になる変化時定数である。
【0083】
そして、トンネル内風速Vrの演算特性,実測特性の1例は、図2の(a),(b)に示すようになり、トンネル1内の風向風速の演算値が実測値にほぼ等しくなることが確かめられた。
【0084】
また、煤煙濃度を光透過率(%)で表した場合、演算値,実測値の変化の1例は、図3の(a),(b)に示すようになり、トンネル1内の煤煙濃度分布についても、演算値が実測値にほぼ等しくなることが確かめられた。
【0085】
そのため、T分前のトンネル交通量及びそれからT分後の予測された現在のトンネル交通量が、実際のトンネル交通量に極めて近くなる。
【0086】
そして、T分前のトンネル交通量から予測演算された現在のトンネル交通量に基づき、換気制御装置8が換気装置5のジェットファン,ブースタファン等の運転台数を増減してトンネル交通量に応じた換気状態に制御する。
【0087】
ところで、前記のトンネル交通量の決定演算処理は、換気制御装置8が例えば図4のステップS1〜S8の演算処理をくり返し実行することで実現される。
【0088】
そして、ステップS1の組合せ及び平均車速の設定に基づき、ステップS2〜S6 により、組合せの数,例えば5組だけ、トンネル内風速(風向風速)及び煤煙濃度分布の変化を演算すればよく、この場合、大型車の台数を1台ずつ増やして煤煙濃度分布を決定した後、小型車の台数を1台ずつ増やしてトンネル内風速を決定する場合より、演算量が少なく処理が簡単であり、換気制御装置8のCPUの演算負担が極めて小さくなり、処理能力の低い安価なCPUを用いても短時間に最新のトンネル交通量を決定することができる。
【0089】
そのため、決定したトンネル交通量に基づく換気制御に遅れが発生せず、トラカンが設置されていないトンネルにつき、トンネル換気のいわゆる「リアルタイム制御」を、精度よく、確実に行うことができる。
【0090】
そして、この換気制御により、無駄な電力消費を防止して過不足のないトンネル換気が行える。
【0091】
なお、設置点3の坑口(トンネル入口)1aからの距離L1 及び設置点3から坑口(トンネル出口)1bまでの距離L2 ,換言すれば単位時間及びトンネル通過時間はどのようであってもよい。
【0092】
また、トンネル1内の風向風速計6,VI計7の位置や個数はどのようであってもよく、トンネル1内の換気装置の機器構成等もどのようであってもよい。
【0093】
さらに、汚染物質濃度分布は一酸化炭素濃度分布であってもよく、この場合は、トンネル1内にVI計7の代わりに一酸化炭素分析計(CO計)が設置され、演算処理等は煤煙濃度分布の場合と同様である。
【0094】
つぎに、トンネル1内の風向風圧,汚染物質濃度分布の演算及びこれらの演算結果から求まるT分前のトンネル交通量からの現在のトンネル交通量の予測演算の演算式等は、前記形態のものに限られるものではない。
【0095】
つぎに、前記形態では一方通行1車線の道路2のトンネル1の交通量決定に適用したが、本発明は、一方通行複数車線の道路2のトンネル1の交通量決定及び対面通行の1車線,複数車線の道路のトンネルの交通量決定にも同様に適用することができる。
【0096】
なお、対面通行の道路のトンネルに適用する場合は、上り車線,下り車線それぞれにつき、車両の進行方向の順の坑口をトンネル入口,トンネル出口として、個別に風向風圧,煤煙濃度分布を演算し、演算結果の上り,下りの風向風速,煤煙濃度分布を合成(加算)してトンネル全体の風向風速,煤煙濃度分布を求め、それらが実測値に最も近くなる上り,下りの組合せから、上り,下りそれぞれの交通量を決定すればよい。
【0097】
そして、設定されたトンネル交通量により、トンネル内の交通監視等のトンネル換気以外の他の制御や処理を行ってもよいのは勿論である。
【0098】
【発明の効果】
本発明は、以下に記載する効果を奏する。
トンネル入口1a近傍の交通量計(トラカン)仮想設置点3を単位時間に通過してトンネル1に進入する車両4の台数,すなわちトンネル交通量として、前記単位時間に所定速度で設置点3を通過する大型車,小型車別の推定台数の組合せを、所定数だけ用意し、各組合せの大型車,小型車別の推定台数と、設定された平均車速とに基づき、組合せの回数だけトンネル1内の風向風速及び汚染物質濃度分布の変化を演算し、各組合せから演算結果のトンネル1内の風向風速及び汚染物質濃度が実測結果に最も近くなる組合せを選択し、選択した組合せの大型車,小型車別の台数から、トンネル通過時間前のトンネル交通量を選択し、この交通量の増減傾向からトンネル交通量の時間変化特性を決定し、この特性から現在のトンネル交通量を推定して決定することができる。
【0099】
この場合、演算量がほぼ前記組合せの数で定まり、トンネル内の煤煙濃度分布が実測値に近くなるまで大型車を1台ずつ増やして煤煙濃度分布をくり返し演算し、その後、トンネル内の風向風速が実測値に近くなるまで小型車を1台ずつ増やして風向風速をくり返し演算する場合より、演算量が著しく少なくなって演算が簡単になり、演算処理負担が少ない簡単な手法でトラカンが設置されていないトンネルの交通量を精度よく求めて決定することができ、この交通量に基づき、例えば「リアルタイム制御」で遅れなく、トンネル換気等を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の1形態のトンネルの模式図である。
【図2】(a),(b)は図1のトンネル風速(風向風速)の実測特性図,演算特性図である。
【図3】(a),(b)は図1の煤煙濃度光透過率の実測特性図,演算特性図である。
【図4】図1の演算処理のフローチャートである。
【符号の説明】
1 トンネル
1a トンネル入口としての坑口
1b トンネル出口としての坑口
2 道路
3 交通量計仮想設置点
4 車両
5 換気装置
6 煤煙濃度透過率計(VI計)
7 風向風速計
8 換気制御装置
Claims (1)
- 所定速度で走行する車両がトンネル入口近傍の交通量計仮想設置点からトンネル出口に到達する時間をトンネル通過時間とし、
単位時間に前記仮想設置点を通過した車両の大型車,小型車別の推定台数の所定数の組合せ及び平均車速の設定に基づき、
前記推定台数の組合せ毎に、前記通過時間にトンネルを走行する車両の分布から、前記通過時間のトンネル内の風向風速及び汚染物質濃度分布の変化を演算し、
演算結果のトンネル内の風向風速及び汚染物質濃度が実測結果に最も近くなる前記推定台数の組合せを、前記通過時間前のトンネル交通量として選択し、
選択したトンネル交通量の増減傾向からトンネル交通量の時間変化特性を決定して現在のトンネル交通量を推定し、決定する
ことを特徴とするトンネル交通量決定方法。
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