JP3806795B2 - 自動車天井材および自動車天井材用発泡積層シート - Google Patents
自動車天井材および自動車天井材用発泡積層シート Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は自動車天井材および自動車天井材用発泡積層シートに関し、さらに詳しくは、高温下の使用における変形や自重による垂れ下がりを改善し、耐熱性、軽量性に優れた自動車天井材および自動車天井材用発泡積層シートに関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、自動車内装材として、熱可塑性樹脂発泡体を主体とする基材にウレタンフォームを積層したものや、スチレン−無水マレイン酸共重合体の発泡層の上下面にスチレン−無水マレイン酸共重合体の非発泡層を積層した積層シートを所望の形状に成形したものが広く用いられている。それらの自動車天井材は、軽量で断熱性が高く、成形加工性がすぐれているという特徴がある。
【0003】
しかしがら、上記のような従来の自動車天井材は、高温に長時間さらされると、耐熱性が不十分であるため、フロント部が自重で垂れ下がったり(ヒートサグ)、変形を生じるなどの問題を発生することがあった。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するために、無機質のガラス繊維とプラスチックの複合材料をベースとした自動車内装材が使用されてきている。しかし、この複合材料では、耐熱性という品質は維持できるものの、軽量化が図れない上に、ガラス繊維を使用しているため、リサイクル性が悪く、またコスト高になるといった問題があった。
【0005】
このような問題を解決するため、軽量で耐熱性のある変性ポリフェニレンエーテル系樹脂(以下「変性PPE系樹脂」と記す。)発泡層の両面に、変性PPE系樹脂非発泡層を積層した発泡積層シートを用いた自動車天井材用発泡積層シートが提案されている(実開平4−11162号公報)。この変性PPE系樹脂を用いた自動車天井材用発泡積層シートは、耐熱性に優れ、軽量であるため、高温下での変形や自重による垂れ下がり等を改善することができるとしている。
【0006】
【発明が解決しようとしている課題】
近年、自動車の耐熱性、軽量性、コストに対する要求は更に厳しくなっているため、この市場要求に対応する更なる改善が必要である。例えば、自動車天井材の場合、フロント部は太陽光が当たるため100℃前後まで温度が上がり、天井材の変形量が大きくなるという問題が発生している。
【0007】
また、上記変性PPE系樹脂発泡積層シートは、好適な条件下で2次成形が行われていない場合、成形体に残留応力が発生する。このため、成形体が高温(例えば100℃)の雰囲気中に長時間さらされると、穏やかに残留応力が緩和され、その結果、屈曲形状を有する部分や2次成形時の延伸率が大きい部分(例えばフロント部)が変形し、使用に耐えなくなるという問題を有していた。
【0008】
本発明は上記の如き実状に鑑み、軽量性、断熱性、成形加工性、リサイクル性などの特性に加えて、高温下での使用による変形、自重による垂れ下がりを改善してなる優れた耐熱性(耐熱変形性)を有する自動車天井材およびその自動車天井材用発泡積層シートを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は優れた耐熱性、軽量性を有し、安価で、且つ容易に製造可能な自動車天井材用成形体を提供するため、自動車天井材の構成および製造方法について鋭意検討を行った結果、軽量で、従来にない耐熱性(耐熱変形性)の高い、良好な寸法安定性、成形性、耐衝撃性、遮音性、断熱性、コスト競争力を有する自動車天井材を得ることができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る自動車天井材の要旨とするところは、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を基材樹脂とする発泡層の両面に、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする非発泡層を積層した発泡積層シートからなる自動車天井材であって、該非発泡層のうち車内側非発泡層の基材樹脂が変性ポリフェニレンエーテル系樹脂からなり、且つ車外側非発泡層の基材樹脂が耐熱性の改善されたポリスチレン系樹脂からなることにある。
【0011】
かかる自動車天井材において、前記車外側非発泡層の基材樹脂が、ASTM D648規格に準じて測定した4.6kg/cm2荷重下で熱変形温度が100℃以上のポリスチレン系樹脂であることにある。また、かかる自動車天井材において、前記車外側非発泡層の基材樹脂が、ASTM D648規格に準じて測定した4.6kg/cm 2 荷重下で熱変形温度が100℃以上130℃未満のポリスチレン系樹脂であることにある。
【0012】
また、かかる自動車天井材において、前記車外側非発泡層の基材樹脂が、スチレン−無水マレイン酸系共重合体であることにある。
【0013】
さらに、かかる自動車天井材において、前記車外側非発泡層の基材樹脂が、スチレン−アクリル酸系共重合体であることにある。
【0014】
さらに、かかる自動車天井材において、前記車外側非発泡層の基材樹脂が、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系共重合体であることにある。
【0015】
さらに、かかる自動車天井材において、前記車外側非発泡層の基材樹脂が、樹脂中に耐衝撃性改良剤を含有したものであることにある。
【0016】
さらに、かかる自動車天井材において、前記発泡層の基材樹脂である変性ポリフェニレンエーテル系樹脂中のフェニレンエーテル成分の含有量が35重量%〜75重量%であり、スチレン系成分の含有量が65重量%〜25重量%であることにある。
【0017】
さらに、かかる自動車天井材において、前記車内側非発泡層の表面にホットメルト接着剤層を介して表皮材が形成されていることにある。
【0018】
次に、本発明に係る自動車天井材用発泡積層シートの要旨とするところは、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を基材樹脂とする発泡層の両面に、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする非発泡層が積層された発泡積層シートであって、該非発泡層のうち車内側非発泡層の基材樹脂が変性ポリフェニレンエーテル系樹脂からなり、且つ車外側非発泡層の基材樹脂が変性ポリフェニレンエーテル系樹脂以外の耐熱性の改善された樹脂からなることにある。
【0019】
また、本発明に係る自動車天井材用発泡積層シートの要旨とするところは、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を基材樹脂とする発泡層の一方の面に、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を基材樹脂とする非発泡層を積層し、該他方の面に耐熱性の改善されたポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする非発泡層を積層し、該変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を基材樹脂とする非発泡層の上面にホットメルト接着剤層を形成してなることにある。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る自動車天井材および自動車天井材用発泡積層シートの実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
【0021】
図1は本発明の1実施形態に係る自動車天井材10および自動車天井材用発泡積層シートの構成を示すものであり、変性PPE系樹脂を基材樹脂とする発泡層12の両面に、熱可塑性の耐熱性樹脂を基材樹脂とする非発泡層(車内側非発泡層14および車外側非発泡層16)が形成されてなり、車内側非発泡層14の上面にホットメルト接着剤層18を介して表皮材20が積層されている。
【0022】
変性PPE系樹脂を基材樹脂とする発泡層12は自動車天井材の基体となる層であり、この層12が変性PPE系樹脂から形成されているため、耐熱性および成形性が良好で、2次発泡積層成形体である自動車天井材を容易に成形することができる。また、この層12が発泡層であるため、軽量で、遮音性、断熱性に優れ、また密度が低いため使用樹脂量が少量で済み、コスト競争力を有するものとなる。
【0023】
変性PPE系樹脂を基材樹脂とする発泡層12を形成する変性PPE系樹脂としては、PPE系樹脂とポリスチレン系樹脂(以下、「PS系樹脂」と記す。)との混合樹脂、PPE系樹脂にスチレン系単量体(以下、「St系単量体」と記す。)を重合させたグラフト共重合体、ブロック共重合体などの共重合体(以下、「PPE−St共重合体」と記す。)などが挙げられ、次のような混合・重合形態がある。すなわち、
(イ)「PPE系樹脂」+「PS系樹脂」
(ロ)「PPE−St共重合体」
(ハ)「PPE−St共重合体」+「PS系樹脂」
(ニ)「PPE系樹脂」+「PPE−St共重合体」
(ホ)「PPE系樹脂」+「PPE−St共重合体」+「PS系樹脂」
これらのうちでは、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂(イ)が、製造が容易であるなどの点から好ましい。
【0024】
発泡層12を形成する変性PPE系樹脂中のPhE成分の含有量は通常35重量%〜75重量%、好ましくは35重量%〜60重量%であり、St系成分の含有量は65重量%〜25重量%、好ましくは65重量%〜40重量%である。変性PPE系樹脂中のPhE成分の割合が小さすぎると耐熱性が劣る傾向があり、PhE成分の割合が大きすぎると加熱流動時の粘度が上昇し、発泡成形が困難になる場合がある。
【0025】
前記PPE系樹脂としては例えば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、 ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−プロピルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−ブチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−ブロムフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−エチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちではポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)が、原料の汎用性、コストの点から好ましい。また、難燃性を付与したい場合はハロゲン系元素が含まれるポリ(2−メチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−ブロムフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−エチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)などが好ましい。
【0026】
PPE系樹脂と混合樹脂を形成するPS系樹脂はスチレンまたはその誘導体、例えばα−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレンなどを主成分とする樹脂である。したがって、PS系樹脂はスチレンまたはスチレン誘導体だけからなる単独重合体に限らず、他の単量体との共重合体であってもよい。また、たとえばハイインパクトポリスチレン(以下、「HIPS」と記す。)のように、スチレンまたはスチレン誘導体を重合させる際に、合成ゴムまたはゴムラテックスを添加して重合させたものであってもよい。
【0027】
さらに、PPE系樹脂と混合樹脂を形成するPS系樹脂の製造に使用され得るスチレンまたはその誘導体と共重合可能な他の単量体としては、たとえばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸などが挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0028】
PS系樹脂の具体例としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレンの共重合体、HIPSで代表されるスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体などが挙げられる。これらのうちでは、ポリスチレンがその汎用性、コストの面から好ましい。
【0029】
また、PPE系樹脂に重合、好ましくはグラフト重合させるSt系単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせてもよい。これらのうちではスチレンが、汎用性、コストの点から好ましい。
【0030】
PPE系樹脂にSt系単量体を重合させる際に、St系単量体が主成分(60重量%以上)になる範囲でSt系単量体と共重合可能な単量体、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸などの1種または2種以上を含有させてもよい。
【0031】
PPE系樹脂にSt系単量体を重合させたグラフト共重合体は、従来周知の方法、例えば特公昭52−30991号公報、特公昭52−38596号公報などに開示されているように、PPE系樹脂にラジカル開始剤およびSt系単量体を加え、無水の状態で、有機溶媒の存在下または不存在下、130〜200℃の温度範囲で撹拌しながらSt系単量体を重合する方法により製造される。
【0032】
PPE樹脂に混合されるPS系樹脂、およびPPE系樹脂に重合されるSt系単量体の割合としては、PPE系樹脂35重量%〜75重量%、更には35重量%〜60重量%、特に38重量%〜58重量%に対して、PS系樹脂またはSt系単量体が65重量%〜25重量%、更には65重量%〜40重量%、特に62重量%〜42重量%が好ましい。PPE系樹脂の混合割合が少ないと、耐熱性が劣る傾向にあり、PPE系樹脂の混合割合が多いと、加熱流動時の粘度が上昇し発泡成形が困難になる傾向がある。
【0033】
変性PPE系樹脂を基材樹脂とする変性PPE系樹脂発泡層12を形成する1次発泡層としては、層の厚みが1〜5mm、更には1.5〜3.5mm、発泡倍率が3〜20倍、更には5〜15倍、セル径が0. 05〜0. 9mm、更には0.1〜0.7mm、独立気泡率が70%以上、更には80%以上であるのが好ましい。1次発泡層の厚さが1mm未満であると、強度および断熱性に劣り自動車天井材用発泡積層シートとして適当でない場合がある。一方、5mmを超える場合、成形加熱時に熱が発泡層12の厚み方向の中心部まで伝わり難く、そのため充分な加熱が行なえず、成形性が悪くなる場合がある。また、充分な加熱を行うべく加熱時間を長くすると、発泡層表面のセルに破泡等が生じ、製品として許容できるものが得られ難くなる場合がある。また、1次発泡倍率が3倍未満の場合、柔軟性に劣り、曲げなどによる破損が生じ易く、また軽量化の効果が少ない。1次発泡倍率が20倍を越える場合、強度が低下し、中心部まで加熱しにくいことにより成形性が低下する傾向がある。更に、セル径が0.05mm以下の場合、充分な強度が得られ難く、0.9mm以上の場合、断熱性に劣る傾向がある。また、独立気泡率が70%以下の場合、断熱性、剛性に劣るとともに、成形加熱によって目的とする2次発泡倍率を得ることが困難となり、成形性に劣る傾向がある。
【0034】
また、変性PPE系樹脂発泡層12を形成する1次発泡層中の残存揮発成分の量は発泡層全重量に対して1〜5重量%、更には2〜4重量%が好ましい。残存揮発成分が1重量%を下回る場合は2次発泡倍率が低くなりすぎ、良好に成形できない場合がある。また、残存揮発成分が5重量%を越える場合は非発泡層との間に空気だまりが発生したり、経時による寸法安定性が悪くなる場合がある。なお、残存揮発成分の量は、ガスクロマトグラフィーにより測定しても良いが、通常、発泡層サンプルを変性PPE系樹脂が軟化しはじめる温度以上で分解温度以下の温度範囲で加熱して揮発成分を充分に揮発させ、加熱前後の重量差により測定する。
【0035】
本発明において使用される変性PPE系樹脂発泡層12の基材樹脂には、必要に応じて気泡調整剤、耐衝撃性改良剤、滑剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、安定剤、臭気低減剤等を添加してもよい。
【0036】
次に、本発明に係る自動車天井材には、変性PPE系樹脂発泡層12の両面に熱可塑性樹脂の非発泡層14,16が形成される。これら非発泡層14,16のうち、車内側非発泡層14は、その一方の表面に積層される表皮材20の加熱収縮を抑制する働きと、他方の表面にある発泡層12が加熱下でセル径が拡大することによる加熱膨張を抑制する働きを有する。また、車外側非発泡層16は発泡層12の加熱膨張を抑制する働きを有する。
【0037】
すなわち、天井材10の構造をバイメタル的に考えると、高温下において車内側の収縮が大きいほど、また、車外側の膨張が小さいほど、高温下でのフロント部の垂れ量は大きくなる。以上の理由から、車内側非発泡層14の基材樹脂として熱変形温度(荷重4.6kg/cm2 、ASTM D−648規格)が実車耐熱試験温度(100℃)よりも充分高い値を有する変性PPE系樹脂を用い、車外側非発泡層16として発泡層12の加熱膨脹を適度に抑制しうる100℃以上の熱変形温度(荷重4.6kg/cm2 、ASTM D−648規格)を有する耐熱性の改善されたPS系樹脂を用いることによって、フロント部の垂れ量を抑制することができる。なお、車外側非発泡層16の基材樹脂の熱変形温度が100℃以下の場合、発泡層12の加熱膨脹の抑制効果が充分ではなく、加熱試験前後での成形体の寸法変化の制御が困難である。また、車外側非発泡層16の基材樹脂の熱変形温度が高すぎる場合(130℃以上)、車外側の膨脹が小さくなり、フロント部の垂れ量は大きくなる。なお、車外側非発泡層16に熱変形温度を制御した変性PPE系樹脂を用いることも可能であるが、PS系樹脂に比べコストの面で不利となり好ましくない。
【0038】
車内側非発泡層14に使用される変性PPE系樹脂は、上述の発泡層12の場合と同様に、PPE系樹脂をSt系化合物を主体とする単量体またはその重合体で重合または混合による変性を行ったものであり、例えば、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂、PPE系樹脂にSt系樹脂系単量体を重合させたPPE−St共重合体、この共重合体とPS系樹脂またはPPE系樹脂との混合物、その共重合体とPPE系樹脂とPS系樹脂との混合物などが挙げられる。これらのうちでは、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂が、製造が容易であるなどの点から好ましい。
【0039】
これらPPE系樹脂、PS系樹脂またはSt系単量体の具体例や好ましいものの例示や、PS系樹脂やSt単量体と重合可能な単量体の具体例、それを使用する理由などは、発泡層12において説明した場合と同様である。ただし、PS系樹脂の好ましい具体例として、HIPSで代表されるスチレン−ブタジエン共重合体が、非発泡層14,16の耐衝撃性改善効果が大きいという点から追加される。
【0040】
変性PPE樹脂におけるPPE系樹脂とPS系樹脂との割合およびPPE−St共重合体におけるPPE系樹脂とSt系単量体成分(St系単量体と共重合可能な他の単量体を0〜40重量%含み得る)との割合としては、PPE系樹脂を少なくとも含み、且つPPE系樹脂が75重量%以下、更には40重量%以下に対して、PS系樹脂またはPPE系樹脂に重合されたSt系単量体成分が25重量%以上、更には60重量%以上が好ましい。
【0041】
PPE−St共重合体をPPE系樹脂とPS系樹脂の少なくとも1種と混合して変性PPE系樹脂を得る場合も、PPE系樹脂成分の合計量(PhE成分)及び共重合可能な他の単量体0〜40重量%を含むSt系単量体成分の合計量(St成分)は前記と同範囲であり、例えばPPE系樹脂とPPE−St共重合体との混合物、PPE−St共重合体との混合物、PPE−St共重合体とPS系樹脂との混合物、PPE−St共重合体とPS系樹脂の混合物、PPE系樹脂とPPE−St共重合体とPS系樹脂との混合物において、PhE成分を少なくとも含み、且つPhE成分が75重量%以下、さらには50重量%以下に対して、PS系樹脂またはPPE系樹脂に重合されたSt系成分が25重量%以上、さらには50重量%以上が好ましい。PPE系樹脂の使用割合が小さすぎると、耐熱性が劣る傾向にあり、PPE系樹脂の使用割合が大きすぎると、加熱流動時の粘度が上昇し、発泡成形が困難になる場合がある。
【0042】
車内側非発泡層14の変性PPE系樹脂における少なくとも含まれるPhE成分の含有量としては、通常75重量%以下、好ましくは50重量%以下であり、St系成分の含有量が25重量%以上、好ましくは50重量%以上である。
【0043】
一方、車外側非発泡層16を形成する基材樹脂は変性PPE系樹脂以外の耐熱性樹脂が用いられ、特に、車外側非発泡層16の基材樹脂に使用される耐熱性の改善されたPS系樹脂はスチレンまたはその誘導体と他の単量体との共重合体(以下「St系共重合体」と記す。)であり、4.6kg/cm2 の荷重下における熱変形温度(ASTM D 648規格)が100℃以上のSt系共重合体である。耐熱性の改善効果を有するスチレンまたはその誘導体と共重合可能な単量体としては、例えばマレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸またはその誘導体およびその酸無水物、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのニトリル化合物またはその誘導体が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上組み合わせて用いてもよい。耐熱性の改善効果を有するスチレンまたはその誘導体と共重合可能な単量体は通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下の範囲で用いられる。また、スチレンまたはスチレン誘導体を重合させる際に、合成ゴムまたはゴムラテックスを添加して重合させたものとマレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸またはその誘導体およびその酸無水物、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのニトリル化合物との共重合体であってもよい。このうちでは、スチレン−無水マレイン酸系共重合体、スチレン−アクリル酸系共重合体、スチレン−メタアクリル酸系共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体がその耐熱性改善効果、汎用性、コストの面から好ましい。
【0044】
耐熱性の改善されたPS系樹脂は単独で用いても良く、あるいは2種類以上組み合わせても良い。また、耐熱性の改善されたPS系樹脂は他の熱可塑性樹脂とブレンドして用いてもよく、ブレンドする熱可塑性樹脂としては例えば、ポリスチレン、HIPS、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニルなどの塩化ビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミドやそれらの共重合体などがあげられる。このうちでは汎用性、均一分散が可能であること、非発泡層16の耐衝撃性改善効果が大きいこと、コストの面等からHIPSが好ましい。HIPSとしては公知のものが使用でき、ゴム成分の含有量は通常1〜15重量%である。
【0045】
次に、本発明における自動車天井材10において、発泡層12に積層される非発泡層14,16の厚みは50〜300μmさらには75〜200μmが好ましい。非発泡層14,16の厚さが50μmより薄い場合には、強度、剛性、耐熱性などが劣り、300μmより厚い場合には、積層シートの成形性が劣る傾向にある。
【0046】
非発泡層14,16を形成する場合、必要に応じて、耐衝撃性改良剤、充填剤、滑剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、安定剤、臭気低減剤等を単独又は2種以上組み合わせて添加してもよい。
【0047】
耐衝撃性改良剤は、熱可塑性樹脂非発泡層14,16を変性PPE系樹脂発泡層12に積層し、2次発泡させた積層シート(10)を自動車天井材10として成形する際のパンチング加工や、積層シートや成形体を輸送する際に、非発泡層14,16の割れなどを防止するのに有効である。耐衝撃性改良剤としては、基材樹脂に混合することによってその効果を発揮するものであれば特に限定なく使用し得る。耐衝撃性改良剤は、重合による変性で熱可塑性樹脂に導入した耐衝撃性改良効果を発揮し得る成分であってもよく、例えばHIPSなどのように耐衝撃性改良成分を含むものを混合して非発泡層に使用する場合も、非発泡層14,16に耐衝撃性を付与することができる。
【0048】
耐衝撃性改良剤の例としては、天然ゴム、合成ゴムのようなゴムや、ゴム粒子の周りにスチレン、メチルメタアクリレートなどのオレフィン二重結合を持つ単量体をグラフト重合させたものなどが好適に使用される。ゴムの具体例としては、たとえばスチレン−ブタジエンゴム、水添スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、多硫化ゴム、水素化ニトリルゴム、ポリエーテル系特殊ゴム、フッ素ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、プロピレンオキサイドゴム、エチレン−アクリルゴム、液状ゴム、ノルボルネンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、MBS樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、変性PPE系樹脂、耐熱性の改善されたPS系樹脂との相溶性の高さ、汎用性などの点からスチレン−ブタジエンゴム、水添スチレン−ブタジエンゴムが好ましい。
【0049】
耐衝撃性改良剤の使用量は、熱可塑性樹脂に対して2〜25重量%、特に5〜20重量%が好ましい。耐衝撃性改良剤の使用量が2重量%未満では、非発泡層の柔軟性や耐衝撃性の改善効果が充分に発現されなくなったり、曲げや衝撃などによる破損が充分に防止されない場合がある。また、耐衝撃性改良剤の使用量が25重量%を越えると、耐熱性や剛性に劣るようになることがある。
【0050】
非発泡層14,16の変性PPE系樹脂、耐熱性の改善されたPS系樹脂にHIPSなどの耐衝撃性改良効果を持つゴム分を含有する熱可塑性樹脂を混合して使用する場合は、熱可塑性樹脂のゴム分と耐衝撃性改良剤(ゴム分)の使用量の合計が熱可塑性樹脂に対して2〜25重量%、特に5〜20重量%が好ましい。この量が2重量%未満の場合には、非発泡層14,16の柔軟性や耐衝撃性の改善効果が充分に発現されなくなったり、曲げや衝撃などによる破損が充分に防止されない場合がある。また、耐衝撃性改良剤の使用量が25重量%を越えると、耐熱性や剛性に劣るようになる場合がある。
【0051】
なお、非発泡層14,16の基材樹脂である熱可塑性樹脂は、成形工程におけるパンチング加工や輸送を行う際に発生する非発泡層の割れなどを防止する上で、アイゾット衝撃強さが50J/m以上、好ましくは70J/m以上、更に好まくは100J/m以上であるものが好ましい。アイゾット衝撃強さはノッチ付きでASTMD256に準じて測定した値である。
【0052】
充填剤は強度、剛性、寸法安定性などの向上のために使用される成分であり、使用される充填剤には特に制限はない。充填剤の具体例としては、タルク、(ケイ酸マグネシウム)、炭酸カルシウム、マイカ、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、シリカ、クレー、カオリン、ホワイトカーボン、水酸化マグネシウム、カーボンブラック、ゼオライト、モリブデンなどが挙げられる。これらのうちでは特にタルク、炭酸カルシウム、マイカが好ましい。
【0053】
充填剤の添加量は非発泡層樹脂100部(重量部、以下同様)に対して1〜50部、好ましくは5〜40部である。この添加量が1部未満の場合、充填剤(無機物)を充填した明確な効果が得られず、50部を越えて添加すると、樹脂組成物の粘度が増加し、押出機に大きな負荷がかかるため好ましくなく、また、非発泡層14,16の衝撃強度の低下が著しくなる。
【0054】
発泡積層シートの車内側非発泡層14の表面にはホットメルト接着剤層18が形成される。ホットメルト接着剤は自動車天井材10が表皮を有する場合、表皮材20を成形体に接着するのに用いられる。このホットメルト接着剤層18を積層することにより、加熱時のホットメルト接着剤の収縮によるホットメルト接着剤層18の穴あき、非発泡層14とホットメルト接着剤層18の間の空気だまりなどによる表皮材20の接着不良を防止することができる。また、予め発泡積層シート(10)にホットメルト接着剤を形成しておくことにより、成形時におけるホットメルトの仮止め工程が省略され、コストダウンすることができる。
【0055】
前述したように、(1次)発泡シートを加熱2次発泡させる際には、1次発泡シート(発泡倍率:3〜20倍、好ましくは5〜15倍、厚さ:1〜5mm、好ましくは、1.5〜3.5mm)に対して、通常1.2〜4倍に2次発泡させるが、さらには1.5〜3倍に2次発泡させるのが好ましい(この結果、2次発泡後のシート倍率は、3.6〜80倍、好ましくは7.5〜45倍、特に好ましくは10〜40倍、厚さは、1.2〜20.0mm、好ましくは、2.25〜10.5mm、特に好ましくは3.0〜7.0mmとなる)。
【0056】
表皮材20の具体例としては、従来の自動車内装材として用いられるものが使用できる。たとえば織布、不織布を配するが、これらには、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリアクリロニトリル、モダアクリル(例えば、鐘淵化学工業株式会社製「カネカロン(登録商標)」などの合成樹脂や羊毛、木綿などの天然素材のものや、それらを適宜組み合わせたものが使われる。このような表皮材20に、必要に応じて、更にウレタンフォームやポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフォームから成る発泡層を単層または複層で積層したものが使用できる。
【0057】
また、本発明の自動車天井材10に難燃性が必要とされるばあい、難燃性を付与されている表皮材20を使用することが好ましい。
【0058】
次に、本発明の自動車天井材10の製造法について説明する。本発明において使用される変性PPE系樹脂発泡層12(1次発泡層)は、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂、またはPPE系樹脂にSt系単量体をグラフト共重合させた共重合体などに、要すれば各種の添加材を加えたものを押出機により150℃〜400℃で溶融・混練し、ついで150〜400℃、3〜50MPaの高温高圧下で樹脂100部に対して発泡剤1〜15部を圧入し発泡最適温度(150〜300℃)に調節して、サーキュラーダイなどを使い低圧帯(通常は大気中)に押出した後、マンドレルなどに接触させて、例えば0.5〜40m/分の速度で引き取りながらシート状に成形し、カット後、巻き取るなどの方法により製造することができる。
【0059】
変性PPE系樹脂発泡層12を製造する際に使用される発泡剤としては、ブタン、プロパン、ペンタン、塩化メチル、ジクロロメタン、クロロフロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロジフロロエタンなどの炭化水素系発泡剤、ハロゲン化炭化水素系発泡剤などがあげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用しても良い。中でも炭化水素系発泡剤が汎用性、コストの面から好ましい。
【0060】
1次発泡層12に熱可塑性樹脂非発泡層14,16を積層する方法としては、予めフィルム状に成形した樹脂を、発泡成形されて供給される1次発泡層12の上面および(または)下面に熱ロール等により接着する方法、多層押出金型を用いて行う共押出積層方法などが挙げられるが、予め発泡成形して、供給される1次発泡層12の上面および(または)下面に押出機から供給した非発泡層用樹脂組成物を層状に積層し、可塑状態にある非発泡層14,16を冷却ローラーなどによって固着する方法が好ましい。なかでも、1次発泡層12の押出発泡シート成形と非発泡層14,16の押出をインラインで行って積層する方法が製造工程が簡略化できる点で望ましい。
【0061】
得られた1次発泡積層シートから自動車天井材10である成形した2次発泡積層成形体を成形する方法としては、上下にヒーターを持つ加熱炉の中央に1次発泡積層シートをクランプして導き、成形に適した温度、たとえば120〜200℃に加熱して2次発泡させたのち、温度調節した金型にて真空成形、圧空成形する。真空成形、圧空成形の例としてプラグ成形、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースドロー成形などの方法が挙げられる。このうち、プラグ成形、マッチド・モールド成形等、自動車内側(凸)金型、自動車外側(凹)金型の両方の金型が存在し、それぞれの温調可能な金型を使用するのが望ましい。
【0062】
この2次発泡積層成形体の成形において、加熱によって発泡積層シートの表面にケロイド状態が発生する前の状態で成形するのが好ましい。本発明者の研究の結果、成形加熱時に表面にケロイド状態が発生した状態で成形を行うと、独立気泡率が低くなり、成形体の剛性が低下することが見出されている。ケロイド状態は発泡層の破泡により生ずるものであり、そのため独立気泡率の低下が生じるためである。
【0063】
また、1次発泡積層シートを、所定のクリアランスを有する金型で2次発泡積層成形体の厚さTが2次発泡時の発泡積層シートのフリーの厚さtに対して0.5t≦Tを満足するように2次発泡させ、成形するのが望ましい。なお、tとは、金型を用いて成形する場合と同じ条件で加熱して、金型による成形を行わないで、冷却したときの発泡積層シートの厚さをいう。このようにして、本発明の自動車天井材が製造される。
【0064】
成形された2次発泡積層成形体である自動車天井材が表皮を有する場合の製造法としては、あらかじめ表皮材20に接着剤をつけてあるものを1次発泡積層シートに熱ロールなどを用いて接着する方法、接着剤を1次発泡積層シートにバインダーラミネーション法やあらかじめフィルム状に成形された接着剤を熱ラミネーション法などにより積層した発泡積層シートに表皮材20を熱ロール等を用いて接着する方法、1次発泡積層シートに表皮材20を仮止めし、加熱成型時に成形と接着を同時に行う方法、接着剤を1次発泡積層シートに積層する際に表皮材20を同時に接着する方法等が挙げられる。
【0065】
接着剤としては、熱可塑性接着剤、ホットメルト接着剤、ゴム系接着剤、熱硬化性接着剤、モノマー反応型接着剤、無機系接着剤、天然物接着剤等が挙げられるが、接着が容易な点でホットメルト接着剤が好適である。
【0066】
前記ホットメルト接着剤としては、ポリオレフィン系、変性ポリオレフィン系、ポリウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂系、ポリアミド系、ポリエステル系、熱可塑性ゴム系、スチレン−ブタンジエン共重合体系、スチレン−イソプレン共重合体系などの樹脂を成分とするものが挙げられる。
【0067】
以上、本発明に係る自動車天井材および自動車天井材用発泡積層シートの実施態様を種々説明したが、本発明は上述の態様に限定されるものではない。たとえば、自動車天井材は通常、表皮材が形成された状態で用いられるが、本発明にいう自動車天井材は表皮材が形成される前の状態で天井材として所定の形状に成形されたものを含むものである。また、自動車天井材および自動車天井材用発泡積層シートは用途として電車などの天井材にも使用することができ、広義に解釈されるべきものである。その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施し得るものである。
【0068】
【実施例】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。実施例・比較例に用いた樹脂を表1に、また表皮材およびその接着剤を表2に示す。なお表1に示した樹脂に関する各符号は次の通りである。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
〔樹脂の種類〕
変性PPE :変性ポリフェニレンエーテル
PS :ポリスチレン
SMA共重合体 :スチレン−無水マレイン酸共重合体
SMAA共重合体:スチレン−メタアクリル酸共重合体
HIPS :ハイインパクトポリスチレン
【0072】
また、実施例および比較例で行った評価方法を以下に示す。
〔発泡層および成形体の厚さ〕
1次発泡シート、成形体の幅方向に20ヶ所の厚さを測定し、その測定値の平均値を算出した。
【0073】
〔発泡倍率〕
1次発泡シートの密度dfをJISK7222に準じて測定し、変性PPE系樹脂の密度dpをJISK7112に準じて測定し、次式より求めた。
発泡倍率=dp/df
【0074】
〔独立気泡率〕
ASTMD−2859に準じて評価して求めた(マルチピクノメーター(ベックマン社製)を使用)。
【0075】
〔セル径〕
発泡層の断面を光学顕微鏡で観察し、20個のセル径を測定し、その測定値の平均値を算出した。
【0076】
〔目付〕
1次発泡シートの押し出し方向に5ヶ所より、10cm×10cmの大きさの試験片を切り出し、それらの重量を測定したのち、平均値を算出した。
【0077】
〔実装耐熱性試験〕
図2に示すような自動車天井材22(幅930mm×長さ1424mm)を自動車天井部(カットボディ)に装着し、サンバイザー、ルームミラー、ルームランプ、ガニッシュ、ピラーを介して実車と同等となるように固定した。なお、図中24はアシストグリップ取付穴、26はサンバイザー取付穴、28はサンバイザー留め取付孔、30はルームミラー取付穴、32は室内灯取付穴である。また、フロント部分に測定点を6点、成形体の中心線と対称に120mm間隔で刻印した(図1中a〜f)。フロント部の測定点付近に標線を設け垂直方向の距離を測定した。次に、100±1℃に設定した恒温室に、天井材を取り付けた自動車天井部を24時間投入した後、成形体フロント部に刻印された測定点の垂直方向の寸法変化量の絶対値を測定し、a〜fの最大値を記録した。なお、表3に記入した最大変位量は、垂直反り上がり方向をプラス(+)、垂直垂れ下がり方向をマイナス(−)として測定した値である。
【0078】
【実施例1】
PPE樹脂成分40重量%,PS樹脂成分60重量%となるようにPPE樹脂(A)72.7部とPS樹脂(B)27.3部とを混合した混合樹脂100部に対してiso−ブタンを主成分とする発泡剤(iso−ブタン/n−ブタン=85/15)3.4部およびタルク0.32部を押出機により混練し、樹脂温度198℃まで冷却し、サーキュラーダイスにより押出し、8m/分の速さの引き取りロールを介して巻取りロールにロール状に巻き取り、一次厚み2.4mm、一次発泡倍率14倍、独立気泡率85%、セル径0.19mm、目付け180g/m2 の発泡シートを得た。次いで、この発泡シートをロールより5m/分の速さで繰り出しながら、スチレン−無水マレイン酸共重合体(C)43.9部とHIPS(E)43.9部と耐衝撃性改良剤(F)12.2部(全ゴム成分10重量%)とを混合した混合樹脂を樹脂温度が245℃となるように押出機で溶融・混練し、Tダイを用いてフィルム状に押し出し、発泡シートの片面に厚さ120μm の耐熱性の改善されたPS系樹脂非発泡層を形成した。更に、この耐熱性の改善されたPS系樹脂非発泡層を形成したシートをロールから5m/分の速さで繰り出しながら、PPE系樹脂成分30重量%、PS系樹脂成分63.1%、ゴム成分6.9重量%となるようにPPE樹脂(A)54.5部、PS樹脂(B)34.0部、耐衝撃性改良剤(F)11.5部を混合した混合樹脂を樹脂温度が275℃となるように押出機で溶融・混練し、Tダイを用いてフィルム状に押し出し、発泡積層シートの他方の面に厚さ120μm の変性PPE系樹脂非発泡層を形成し、非発泡層を両面に積層した発泡積層シートを得た。
【0079】
この発泡積層シートを繰り出し、同時に変性PPE系樹脂非発泡層側にホットメルトフィルム(G)を繰り出し、表面温度120℃、10m/分の速さに調節された熱ロールを介して巻き取り、変性PPE系樹脂非発泡層の面にホットメルト接着剤層を形成した1次発泡積層シートを得た。この1次発泡積層シートのホットメルトフィルム(G)面に表皮材(H)を仮止めした表皮材を有する1次発泡積層シートの四方をクランプしてオーブンに入れ、発泡積層シート表面温度が135℃となるように60秒加熱した。その後、変性PPE系樹脂非発泡層が車内側になるように金型に配置し、金型クリアランス5.0mmでプラグ成形を行い、トリミング、パンチング加工を施し、良好な自動車天井材を得た。得られた自動車天井材をカットボディに装着し、100℃24時間の実装耐熱試験を行った。その結果を表3に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
なお表3に示した樹脂に関する各符号は次の通りである。
PPE :ポリフェニレンエーテル
SMA共重合体 :スチレン−無水マレイン酸共重合体
SMAA共重合体:スチレン−メタアクリル酸共重合体
HIPS :ハイインパクトポリスチレン
SBR :スチレン−ブタジエンゴム
【0082】
【実施例2】
変性PPE系樹脂非発泡層の樹脂を、PPE系樹脂成分30重量%、PS系樹脂成分70重量%、になるようにPPE樹脂(A)54.5部、PS樹脂(B)45.5部にする以外は実施例1と同様の方法にて、自動車天井材を得た。得られた自動車天井材について実施例1と同様に実装耐熱性試験を行った。その結果を表3に示す。
【0083】
【実施例3】
車内側非発泡層の樹脂を、PPE系樹脂成分40重量%、PS系樹脂成分60重量%、になるようにPPE樹脂(A)72.7部、PS樹脂(B)27.3部にする以外は実施例1と同様な方法にて、自動車天井材を得た。得られた自動車天井材について実施例1と同様に実装耐熱性試験を行った。その結果を表3に示す。
【0084】
【実施例4】
車外側非発泡層の樹脂をスチレン−メタアクリル酸共重合体(D)43.9部、HIPS(E)43.9部、耐衝撃性改良剤(F)12.2部(全ゴム成分10重量%)にする以外は実施例1と同様な方法にて、自動車天井材を得た。得られた自動車天井材について実施例1と同様に実装耐熱性試験を行った。その結果を表3に示す。
【0085】
【実施例5】
車内側非発泡層の樹脂を、PPE系樹脂成分30重量%、PS系樹脂成分70重量%、になるようにPPE樹脂(A)54.5部、PS樹脂(B)45.5部とし、車外側非発泡層の樹脂をスチレン−メタアクリル酸共重合体(D)43.9部、HIPS(E)43.9部、耐衝撃性改良剤(F)12.2部(全ゴム成分10重量%)にする以外は実施例1と同様な方法にて、自動車天井材を得た。得られた自動車天井材について実施例1と同様に実装耐熱性試験を行った。その結果を表3に示す。
【0086】
【比較例1】
実施例1と同様にして1次発泡シートを得た。得られたシートをロールより5m/分の速さで繰り出しながら、HIPS(E)83.3部に耐衝撃性改良剤(F)16.7部(全ゴム成分15重量%)とを混合した混合樹脂を樹脂温度が245℃となるように押出機で溶融・混練した後、Tダイを用いてフィルム状に押出し、発泡シートの片面に厚み120μmのPS系樹脂非発泡層を形成した。次いで同様にして、発泡シートの他の面に厚み120μmのPS系樹脂非発泡層を形成し、両面にPS系樹脂非発泡層を有する発泡積層シートを得た。次に、実施例1と同様の方法にてホットメルトフィルム(G)を積層し、プラグ成形を行い、良好な自動車天井材を得た。得られた自動車天井材について実施例1と同様に実装耐熱性試験を行った。その結果を表3に示す。
【0087】
【比較例2】
車外側非発泡層をPPE系樹脂成分30重量%、PS系樹脂成分63.1重量%、ゴム成分6.9重量%になるようにPPE樹脂(A)54.5部、PS樹脂(B)34.0部、耐衝撃性改良剤(F)11.5部とする以外は実施例1と同様にして良好な自動車天井用成形体を得た。得られた自動車天井材について実施例1と同様に実装耐熱性試験を行った。その結果を表3に示す。
【0088】
表3の結果から、比較例に比べて実施例の場合、耐熱性試験によるフロント部の変形が小さく、耐熱性が優れていることがわかる。
【0089】
【発明の効果】
本発明の自動車天井材および自動車天井材用発泡積層シートは、耐熱性が改善され、高温下での使用による変形、自重による垂れ下がりが改善されている。しかも成形性、寸法安定性、遮音性、耐衝撃性、断熱性、成形加工性、リサイクル性、軽量性などの特性が良好で軽量かつ容易に製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る自動車天井材の要部拡大断面説明図である。
【図2】本発明に係るトリミング加工を施した自動車天井材の一例を示す平面説明図である。
【符号の説明】
10:自動車天井材
12:発泡層
14:車内側非発泡層
16:車外側非発泡層
18:ホットメルト接着剤層
20:表皮材
Claims (11)
- 変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を基材樹脂とする発泡層の両面に、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする非発泡層を積層した発泡積層シートからなる自動車天井材であって、該非発泡層のうち車内側非発泡層の基材樹脂が変性ポリフェニレンエーテル系樹脂からなり、且つ車外側非発泡層の基材樹脂が耐熱性の改善されたポリスチレン系樹脂からなることを特徴とする自動車天井材。
- 前記車外側非発泡層の基材樹脂が、ASTM D648規格に準じて測定した4.6kg/cm2荷重下で熱変形温度が100℃以上のポリスチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の自動車天井材。
- 前記車外側非発泡層の基材樹脂が、ASTM D648規格に準じて測定した4.6kg/cm 2 荷重下で熱変形温度が100℃以上130℃未満のポリスチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の自動車天井材。
- 前記車外側非発泡層の基材樹脂が、スチレン−無水マレイン酸系共重合体であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載する自動車天井材。
- 前記車外側非発泡層の基材樹脂が、スチレン−アクリル酸系共重合体であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載する自動車天井材。
- 前記車外側非発泡層の基材樹脂が、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系共重合体であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載する自動車天井材。
- 前記車外側非発泡層の基材樹脂が、樹脂中に耐衝撃性改良剤を含有したものであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載する自動車天井材。
- 前記発泡層の基材樹脂である変性ポリフェニレンエーテル系樹脂中のフェニレンエーテル成分の含有量が35重量%〜75重量%であり、スチレン系成分の含有量が65重量%〜25重量%であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載する自動車天井材。
- 前記車内側非発泡層の表面にホットメルト接着剤層を介して表皮材が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載する自動車天井材。
- 変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を基材樹脂とする発泡層の両面に、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする非発泡層が積層された発泡積層シートであって、該非発泡層のうち車内側非発泡層の基材樹脂が変性ポリフェニレンエーテル系樹脂からなり、且つ車外側非発泡層の基材樹脂が耐熱性の改善されたポリスチレン系樹脂からなることを特徴とする自動車天井材用発泡積層シート。
- 変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を基材樹脂とする発泡層の一方の面に、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を基材樹脂とする非発泡層を積層し、該他方の面に耐熱性の改善されたポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする非発泡層を積層し、該変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を基材樹脂とする非発泡層の上面にホットメルト接着剤層を形成してなることを特徴とする自動車天井材用発泡積層シート。
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