JP3803305B2 - タイヤ用ゴム付きファブリック、その製造方法及び空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤのユニフォミティを向上するのに役立つタイヤ用ゴム付きファブリック、その製造方法及び空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
空気入りタイヤの骨格をなすカーカスプライには、通常、横糸と、タイヤコードからなる縦糸とにより簾織りされた簾織物をゴム被覆したタイヤ用ゴム付きファブリックが用いられる。図6(A)には簾織物c1の一例を示す。概簾織物c1は、タイヤコードaからなる縦糸と、比較的粗い間隔で前記タイヤコードaに連続して交絡される細い横糸bとで織られている。
【0003】
図6(B)には、他の形態の簾織物c2を示す。該簾織物c2は、タイヤコードaからなる縦糸と、このタイヤコードaに対してタックイン方式で織り込まれた横糸bとで構成される。このタックイン方式の横糸bは、簾織物c2の略全幅をのびる基部e1と、その両端部でタイヤコードaと平行にのびる副部e2を介して内方へ折り返され小長さで終端する折返し部e3とからなるタックイン糸片eを、ほぼ副部e2の長さに等しいピッチでタイヤコードaの長手方向に配して構成される。
【0004】
図6(B)の簾織物c2は、横糸bがそれぞれ独立したタックイン糸片eからなるため、1本の横糸bをタイヤコードaと直角かつ交互に連続して織り込んでいく図6(A)の簾織物c1に比して生産性が良い。このため、近年のタイヤ用のプライの材料には、図6(B)のタックイン方式の簾織物c2が多用されつつある。
【0005】
またタイヤを製造する際には、図8に示すように、簾織物c2をトッピングゴムgで被覆してゴム付きファブリックiとし、これをタイヤコードaに対してαの角度(ラジアルタイヤではこの角度αは75〜90度程度)かつ所定巾で順次シート片j…に裁断された後、各シート片jの非裁断側の端縁k同士を順次ジョイントすることによって、長尺のプライ材料mを形成している。そしてこのプライ材料mは、成形ドラム上に巻き回された後、トロイド状に膨張される。
【0006】
前記プライ材料mの膨張に際しては、タイヤのユニフォミティを向上するためにタイヤコードaの間隔(通常、5cmあたりの打ち込み本数で表され「エンズ」と呼ばれる。)を均一としつつ広げる必要がある。ところが、横糸bがタイヤコードaに絡み合ったままであると、前述の均一な膨張を損ねやすい。
【0007】
そこで従来では、図9に示すように、タイヤの成型に先立ち、凹凸状の間隙nを有する一対の回転軸r1、r2の間にファブリック基体iを通過させることにより、横糸bに張力を作用させて押し切りする切断行程が行なわれていた。
【0008】
また前記横糸bには、通常、伸びが小さい低伸度糸が用いられているが、これに代えて伸びが大きい高伸度糸を用いることにより、タイヤ成型時に該横糸bを伸ばし均一な膨張を確保しようとする試みもなされている。この方法では、横糸bの切断工程を省略しうる利点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のようなタックイン方式の簾織物c2では、図6(B)及びその部分拡大図である図7に示すように、その巾方向の側縁領域Eにおいて、タックイン糸片eの基部e1と折返し部e3とが2本重なる重なり部fが形成される。この部分では、他の部分に比して切断に対する強度を増すため、上述のような押し切りでは、側縁領域Eの横糸が、中央領域Mに位置する横糸と同様には切断されない場合がある。このようなファブリックでは、タイヤ成型時の膨張によって、カーカスコードaのエンズが均一にならず、タイヤにバルジやデントといった凹凸を形成したり、ユニフォミティを損ねるという問題がある。
【0010】
また高伸度の横糸を用いる方法では、図10(A)〜(C)に示すように、成型ドラムDにカーカスプライとしてのファブリック基体iを巻き付け徐々に膨張させていくと、これに伴い横糸bがタイヤコード間を滑りながら引き抜かれていき、その端部beが移動する。これは、ファブリック基体iの継ぎ合わせ部Jにおいて、タイヤコードaの間隔が著しく大きくなる部分Yを形成し、この部分Yに亀裂や割れなどを生じさせるという欠点がある。
【0011】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、タイヤのバルジャデントといった成形不良を減じかつユニフォミティを向上するのに役立つタイヤ用ゴム付きファブリック、その製造方法及び空気入りタイヤを提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、横糸とタイヤコードからなる縦糸とにより簾織りされた簾織物をゴム被覆したタイヤ用ゴム付きファブリックであって、前記横糸は、前記ゴム被覆された後に切断された切断部を有するとともに、ファブリックの側縁から少なくとも20mmの領域である側縁領域における前記切断部のピッチが、この側縁領域の間の中央領域における切断部のピッチよりも小さいことを特徴としている。
【0013】
また請求項2記載の発明は、前記側縁領域の切断部のピッチは、タイヤコードの打ち込みピッチの1〜4倍であり、かつ前記中間領域における切断部のピッチがタイヤコードの打ち込みピッチの3〜5倍であることを特徴とする請求項1記載のタイヤ用ゴム付きファブリックである。
【0014】
また請求項3記載の発明は、前記横糸は、簾織物の略全幅をのびる基部と、その両端部でタイヤコードと平行にのびる副部を介して内方へ折り返され前記側縁領域をのびて終端する折返し部とからなるタックイン糸片を、前記副部の長さにほぼ等しいピッチで縦糸方向に配して形成してなる請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム付きファブリックである。
【0015】
また請求項4記載の発明は、前記横糸は、破断時の伸びが5〜25(%)かつ破断強力が5〜15(N)である請求項1乃至3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム付きファブリックである。
【0016】
ここで、破断時の伸びとは、横糸に徐々に引張荷重を与えていき該横糸が破断したときの最大の伸び(%)である。測定方法としては、チャック間距離250mm、初荷重0.1N、試験速度300mm/min で行い、糸が破断したときの強力を破断強力として測定している。
【0017】
また請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム付きファブリックをカーカスプライに用いたことを特徴とする空気入りタイヤである。
【0018】
また請求項6記載の発明は、横糸とタイヤコードからなる縦糸とにより簾織りされた簾織物をゴム被覆したタイヤ用ゴム付きファブリックを製造するタイヤ用ゴム付きファブリックの製造方法であって、横糸とタイヤコードからなる縦糸とを用いて簾織りした簾織物をゴム被覆してファブリック基体を形成するゴム付け工程と、このファブリック基体の前記横糸を押し切り具を用いて切断する横糸切断工程とを含むとともに、前記押し切り具は、フランジ状の押爪部を軸方向に隔設した一対の回転軸を、互いに平行かつ一方の回転軸の押爪部の外周面を他方の回転軸の隣り合う押爪部間の空隙に接触することなく臨ませることにより、前記回転軸間に軸方向に凸凹状で連続する間隙を有し、この間隙に、横糸が前記回転軸の軸方向と平行となる向きで該ファブリック基体を通過させるとともに、前記回転軸の軸方向の両端部分は、回転軸の中央部分に比して、押爪部の軸方向の巾αと軸方向で隣り合う押爪部の離間距離βとをともに小としたことを特徴とするタイヤ用ゴム付きファブリックの製造方法である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1には、本実施形態の空気入りタイヤ1の断面図を示している。図において空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、その両側からタイヤ半径方向内方にのびる一対のサイドウォール部3と、各サイドウォール部3の内方端に位置するビード部4とを具えた本例では乗用車用ラジアルタイヤを例示する。この空気入りタイヤ1は、前記ビード部4、4間を跨るトロイド状のカーカス6と、トレッド部2の内方かつ前記カーカス6のタイヤ半径方向の外側に配されたベルト層7とを具える。
【0020】
前記カーカス6は、カーカスコードをタイヤ周方向に対して75゜〜90゜の角度で配列した1枚以上(本例では1枚)のカーカスプライ6Aから形成される。カーカスコードとしては、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、芳香族ポリアミド等の有機繊維コードが好適に採用できる。
【0021】
またカーカスプライ6は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至る本体部6aと、その両側に連なりビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返されて係止される折返し部6bとを有する。この本体部6aと折返し部6bとの間には、ビードコア5からタイヤ半径方向外方に先細状にのびるビードエーペックスゴム8が配され、ビード部4の曲げ剛性を高めている。
【0022】
また前記ベルト層7は、ベルトコードをタイヤ周方向に対して10゜〜35゜の角度で傾斜配列した2枚以上、本例では2枚のベルトプライ7A、7Bから形成される。各ベルトプライ7A、7Bは、ベルトコードがプライ間相互で交差するように向きを違えて配されることによりタガ効果を発揮する。ベルトコードとしては、スチールコードが好適であるが、例えば芳香族ポリアミド繊維、芳香族ポリエステル繊維等の高弾性の有機繊維コードも使用できる。
【0023】
本実施形態では、前記カーカスプライ6Aが以下に説明する方法により製造されたゴム付きファブリック10(図2に模式的に示す)から形成される。このゴム付きファブリック10は、簾織物14をトッピングゴム15にてゴム被覆してファブリック基体16を形成するゴム付け工程と、このファブリック基体16の前記横糸11を押し切り具20を用いて切断する横糸切断工程とを含んで製造される。
【0024】
前記簾織物14は、横糸11と、タイヤコードとしてのカーカスコード13からなる縦糸12とを用い、例えば織機を用いて簾織りすることにより形成される。本例の簾織物14は、横糸11がタックイン方式によりカーカスコード13に織り込まれたものを例示する。
【0025】
即ち、横糸11は、カーカスコード13の上下を交互に通ってかつカーカスコード13と直角に簾織物14の略全幅をのびる基部17aと、その両端部でカーカスコード13と平行にのびる副部17b、17bを介して内方へ折り返され小長さで終端する折返し部17cとからなるタックイン糸片17からなる。そしてこのタックイン糸片17を、前記副部17bの長さにほぼ等しいピッチLでカーカスコード13の長手方向に配して形成される。
【0026】
前記折返し部17cの長さW3は特に限定されないが、小さすぎるとタックイン糸片17がほどけ易くなり、大きすぎると生産性を向上させる効果が小さくなる。このため、前記長さW3は、少なくとも20mm以上とするが、好ましくは20〜300mm、より好ましくは30〜70mm程度とするのが望ましい。
【0027】
このような簾織物14は、図7に示したように、基部17aと折返し部17cとが簾織物14の両端部で実質的に重なる。従って、この簾織物14からトッピングゴム15でゴム被覆しファブリック基体16を形成したときには、該ファブリック基体16の側縁から少なくとも巾方向に20mmの巾W1を持つ領域をなす側縁領域Eでは横糸11が2本重なるが、それ以外の部分、即ち側縁領域E、E間の中央領域Mでは横糸11は1本だけで構成される。
【0028】
タイヤ成型工程では、カーカスコード13を均一に膨張させてユニフォミティを向上することが重要となるのは前述の通りである。このため、本発明では、前記横糸11を張力をかけて切断するいわゆる押し切りを行う。この押し切りは、横糸11の破断時の伸び又は破断強力が大きすぎると困難となる。その一方、横糸11の破断時の伸び又は破断強力が小さすぎると、簾織りに際して容易に破断しカーカスコード13を一定の間隔で引き揃えるのが困難となる。このような観点より、横糸11は、その破断時の伸びが例えば5〜25%、より好ましくは7〜15%であるのが望ましく、また破断強力は5〜15N、より好ましくは7〜13N程度のものが望ましい。このような横糸11としては、例えば木綿糸等が好適であり、その他必要に応じて複合繊維糸等も仕様できる。
【0029】
また、簾織物14は、例えば接着液に浸漬するいわゆるディップ処理が施された後、図示しないトッピング装置を用いてその両面が薄いトッピングゴム15にて被覆される。これにより、ファブリック基体16が形成される。
【0030】
前記横糸切断工程では、形成されたファブリック基体16の横糸11を、押し切り具20を用いて切断する。ファブリック基体16は、既にトッピングゴム15によって被覆されているため、この段階で横糸11を切断してもカーカスコード13の引き揃えが乱れる等の不具合はない。
【0031】
前記押し切り具20は、例えば図3に示すように、平行に配された一対の回転軸21、21を含んで構成される。前記各回転軸21は、略同一の外形で軸方向にのびる円柱の基軸部22と、この基軸部22から半径方向に突出しかつ軸方向に隔設されたフランジ状の押爪部23とを具えている。各回転軸21は、両端部を図示しない軸受により回動可能に軸支されるとともに電動機等によって互いに逆向きに回転駆動される。
【0032】
また押し切り具20は、一対の回転軸21、21を互いに平行、かつ一方の回転軸21Aの押爪部23の外周面23aを、他方の回転軸21Bの押爪部23、23間の空隙に接触することなく臨ませている。これにより、向き合う押爪部23は、互いに噛み合い状に配されて、一対の回転軸21A、21Bの間に軸方向に凸凹状で連続する間隙25を形成する。
【0033】
そして、この間隙25に、ファブリック基体16を通過させる。このとき、横糸11が、回転軸21の軸方向と平行となる向きに合わせる。これにより、図9に示したように、互いに噛み合い状に配された押爪部23、23…によって、ファブリック基体16が波打ち状に引き伸ばされかつ横糸11に張力を作用させることにより該横糸11を切断する。これにより、図5に示すように、横糸11には、切断部9が形成される。なお切断部9としては、例えば側縁領域Eにおいて2本の横糸が重なる部分では、少なくとも1本が切断されていれば良い。
【0034】
また押し切り具20の回転軸21は、前記ファブリック基体16の側縁領域Eを押し切りする両端部分26と、ファブリック基体16の中央領域Mを押し切りする中央部分27とを含む。該回転軸21の両端部分26は、前記中央部分27に比して、図4(A)にて示される押爪部23の軸方向の巾αと、一方の回転軸21Aと他方の回転軸21Bとにおいて軸方向で隣り合う押爪部23、23の離間距離βとを、ともに小としている。
【0035】
前記中央部分27では、押爪部23の軸方向の巾αは、図4(B)に示されるファブリック基体16のカーカスコード13の打ち込みピッチPの1.4〜1.6倍程度とするのが望ましい。また該中央部分27では、軸方向で隣り合う押爪部23、23の離間距離βをファブリック基体16の厚さtの1.4〜1.7倍、より好ましくは1.45〜1.60倍程度とするのが望ましい。さらに、中央部分27において半径方向で向き合う押爪部23、23の該半径方向の重なり長さである追い込み量γを、前記カーカスコード13の打ち込みピッチPの1.4〜2.0倍程度、より好ましくは1.6〜1.8倍程度に設定するのが望ましい。なお、押爪部23の外周面23aと前記基軸部22の外周面22aと間の半径方向距離δは、ファブリック基体16が円滑に通過しうるよう、該ファブリック基体16の厚さtの1.1〜5.0倍程度とするのが良い。
【0036】
このような回転軸の中央部分27は、ファブリック基体16の中間領域Mを押し切りし、図5(A)に示すように、中間領域Mにおける切断部9の間隔であるピッチCP1を、カーカスコード13の打ち込みピッチPの3〜5倍程度とする。なおこのピッチCP1は前記範囲内であれば一定である必要はない。
【0037】
他方、回転軸21の両端部分26、26では、押爪部23の軸方向の巾αは、ファブリック基体16のカーカスコード13の打ち込みピッチPの0.8〜1.2倍程度とし、また押爪部23、23の前記離間距離βをファブリック基体16の厚さtの1.2〜1.3倍程度に設定するのが望ましい。このような押爪部23を有する両端部分26、26は、前記中央部分27に比して、さらに小ピッチでファブリック基体16を波状に屈曲させて押し切りするのに役立つ。
【0038】
なお両端部分26における押爪部23、23の追い込み量γは、特に限定はされないが、大きすぎるとカーカスコード13の目開きが生じやすく、逆に小さすぎても横糸11の押し切り効果が低下しやすい。よって追い込み量γは、カーカスコード13の打ち込みピッチPの0.8〜1.5程度、より好ましくは1.0〜1.2倍程度に設定するのが望ましい。なお、押爪部23の外周面23aと前記基軸部22の外周面22aとの半径方向距離δは、中央部分27と同程度に設定する。
【0039】
ここで、ファブリック基体16の側縁領域Eは横糸11が二本重なっているため、中央領域Mに比して押し切りに対する切断抵抗力が増している。従って、横糸切断工程を経て製造されたゴム付きファブリック10は、その側縁領域Eにおける横糸11の切断部9のピッチが、中央領域における切断部9のピッチと同等ないしそれよりも小とする。具体的には、側縁領域Eの切断部9のピッチCP2は、図5(B)に示すように、カーカスコード13の打ち込みピッチPの1〜5倍、より好ましくは2.5〜3.5倍とするのが良い。
【0040】
このように、本実施形態によれば、横糸11を切断し難いファブリック基体16の側縁領域Eにおいても、中央領域Mととほぼ同程度ないしそれよりも小さいピッチで切断部9を形成できる。そして、このようなゴム付きファブリック10をバイアスジョイントしてプライ材料を形成しカーカスプライ6Aに用いることにより、タイヤ成型時の膨張に際して、カーカスプライ6Aを均一に膨らませ得る。これは、バルジ、デントといったアンジュレーションの発生を防止し、タイヤのユニフォミティを向上しうるのに役立つ。
【0041】
なお本発明で用いられる簾織物14は、このようなタックイン式のものに限定されるわけではなく、従来と同様、1本の横糸が連続してカーカスコード13に交絡する態様のものも採用することができる。このような簾織物においては、横糸11が側縁領域Eにおいて2本重なる訳ではないが、押し切り時にファブリック基体16の端部がフリーの状態となるため、この部分で横糸11に張力を作用させるのがやはり困難であるため本発明の製造方法を好適に使用できる。
【0042】
【実施例】
図1に示す基本構成を有する乗用車用ラジアルタイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を試作した。カーカスプライは、図 に示した押し切り具を用いて横糸切断工程を行ったゴム付きファブリックを使用した。なお回転軸の中間部分では、押爪部の巾αをファブリック基体のカーカスコードの打ち込みピッチPの1.5倍、押爪部の離間距離βをファブリック基体の厚さtの1.5倍、押爪部の追い込み量γをカーカスコードの打ち込みピッチPの1.6倍に統一した。また回転軸の両端部分については、押爪部の巾α、離間距離β、追い込み量γは、表1の仕様に基づき変化させた。
テスト方法は、次の通りとした。
【0043】
<バルジ、デント・アンジュレーション試験>
製造された供試タイヤをそれぞれ15×6.0Jのリムにリム組みしかつ内圧を300kPa充填し、外観(目視)と触感で凹凸状態を総合的に判定した。結果は、従来例を100とする指数で示しており、数値が大きいほどバルジ、デント(凹凸)アンジュレーション(タイヤ表面の波打ち)が目立たず良好である。
【0044】
<ユニフォミティ試験>
製造された供試タイヤをそれぞれ15×6.0Jのリムにリム組みしかつ内圧を200kPa充填し、縦荷重4.5kN、速度140km/Hで回転させ、ユニフォミティ試験器を用いてRFVを測定した。結果は、従来例を100とする指数で表示しており、数値が大きいほど良好である。
テストの結果などを表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
テストの結果、実施例のものは、成形不良が減じられかつ従来例と比べてユニフォミティを向上していることが確認できる。
【0047】
【発明の効果】
上述したように、本発明のタイヤ用ゴム付きファブリックは、ファブリック基体の側縁領域において、該横糸の切断分のピッチを、中央領域の切断ピッチよりも小さくしている。従って、タイヤ成型時の膨張に際して、このゴム付きファブリックを均一に膨らませることができ、バルジ、デントといったアンジュレーションの発生を防止するとともにタイヤのユニフォミティを向上しうる。また請求項2記載の発明のように、側縁領域の切断部のピッチを、タイヤコードの打ち込みピッチの1〜4倍とし、かつ中間領域における切断部のピッチをタイヤコードの打ち込みピッチの3〜5倍としたときには、より確実に均一な膨張を実現できる。また、いわゆるタックイン方式の簾織物では、特に側縁領域において横糸が切断され難いが、請求項3記載の発明ではこのような不具合を防止できる。
【0048】
また請求項6記載の発明のように、ファブリック基体の横糸を押し切り具を用いて切断する横糸切断工程とを含むとともに、押し切り具は、ファブリック基体の側縁領域を押し切り回転軸の軸方向の両端部分は、回転軸の中央部分に比して、押爪部の軸方向の巾αと軸方向で隣り合う押爪部の離間距離βとをともに小としているため、横糸を切断し難いファブリック基体の側縁領域により密に張力を作用させ、中央領域の横糸と同程度ないしそれ以下のピッチで切断分を形成できる。よって、タイヤ成型時の膨張に際して、均一に膨らむゴム付きファブリックを用意に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す空気入りタイヤの断面図である。
【図2】ファブリック基体を例示する平面図である。
【図3】押し切り具の正面図である。
【図4】(A)は押し切り具の拡大断面図、(B)はファブリック基体の断面図である。
【図5】(A)、(B)は本実施形態のゴム付きファブリックの断面図である。
【図6】(A)、(B)は簾織物を例示する平面略図である。
【図7】図6(B)の簾織物の端部分の拡大斜視図である。
【図8】図6(B)の簾織物を用いたファブリック基体の平面図である。
【図9】押し切り工程を例示する拡大断面図である。
【図10】(A)〜(C)は、カーカスプライの膨張過程を説明する断面図である。
【符号の説明】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
6A カーカスプライ
6a カーカスプライの本体部
6b カーカスプライの折返し部
7 ベルト層
10 ゴム付きファブリック
11 横糸
12 縦糸
13 カーカスコード
14 簾織物
15 トッピングゴム
16 ファブリック基体
20 押し切り具
Claims (6)
- 横糸とタイヤコードからなる縦糸とにより簾織りされた簾織物をゴム被覆したタイヤ用ゴム付きファブリックであって、
前記横糸は、前記ゴム被覆された後に切断された切断部を有するとともに、ファブリックの側縁から少なくとも20mmの領域である側縁領域における前記切断部のピッチが、この側縁領域の間の中央領域における切断部のピッチよりも小さいことを特徴とするタイヤ用ゴム付きファブリック。 - 前記側縁領域の切断部のピッチは、タイヤコードの打ち込みピッチの1〜4倍であり、かつ前記中間領域における切断部のピッチがタイヤコードの打ち込みピッチの3〜5倍であることを特徴とする請求項1記載のタイヤ用ゴム付きファブリック。
- 前記横糸は、簾織物の略全幅をのびる基部と、その両端部でタイヤコードと平行にのびる副部を介して内方へ折り返され前記側縁領域をのびて終端する折返し部とからなるタックイン糸片を、前記副部の長さにほぼ等しいピッチで縦糸方向に配して形成してなる請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム付きファブリック。
- 前記横糸は、破断時の伸びが5〜25(%)かつ破断強力が5〜15(N)である請求項1乃至3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム付きファブリック。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム付きファブリックをカーカスプライに用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
- 横糸とタイヤコードからなる縦糸とにより簾織りされた簾織物をゴム被覆したタイヤ用ゴム付きファブリックを製造するタイヤ用ゴム付きファブリックの製造方法であって、
横糸とタイヤコードからなる縦糸とを用いて簾織りした簾織物をゴム被覆してファブリック基体を形成するゴム付け工程と、このファブリック基体の前記横糸を押し切り具を用いて切断する横糸切断工程とを含むとともに、
前記押し切り具は、フランジ状の押爪部を軸方向に隔設した一対の回転軸を、互いに平行かつ一方の回転軸の押爪部の外周面を他方の回転軸の隣り合う押爪部間の空隙に接触することなく臨ませることにより、前記回転軸間に軸方向に凸凹状で連続する間隙を有し、この間隙に、横糸が前記回転軸の軸方向と平行となる向きで該ファブリック基体を通過させるとともに、
前記回転軸の軸方向の両端部分は、回転軸の中央部分に比して、押爪部の軸方向の巾αと軸方向で隣り合う押爪部の離間距離βとをともに小としたことを特徴とするタイヤ用ゴム付きファブリックの製造方法。
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