JP3801227B2 - グリシジルメタクリレートまたはグリシジルアクリレートの製造方法 - Google Patents

グリシジルメタクリレートまたはグリシジルアクリレートの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、グリシドールと、メタクリル酸メチルまたはアクリル酸メチル(以下、「メタクリル酸メチル等」ということがある)とをエステル交換触媒の存在下に反応させて、グリシジルメタクリレートまたはグリシジルアクリレート(以下、「グリシジルメタクリレート等」ということがある)を製造する方法に関する。グリシジルメタクリレート等は樹脂改質剤、熱硬化性塗料、接着剤、繊維処理剤、帯電防止剤、およびイオン交換樹脂等種々の工業用原料として広く使用されている。
近年、塗料材料、特に紛体塗料分野、電子材料および繊維分野において塩素含有量の少ないグリシジルメタクリレート等が求められている。
【0002】
【従来の技術】
グリシジルメタクリレートは一般的に、メタクリル酸とアルカリを反応させ、メタクリル酸のアルカリ塩を得、ついで第4級アンモニウム塩の存在下にエピクロルヒドリンと反応させ、脱塩酸することにより製造されている。
このように製造されたグリシジルメタクリレート等には通常塩素化合物が塩素濃度で表示すると1,000〜10,000ppm程度残存しており、この残存塩素が塗料材料(例えば紛体塗料)、電子材料および繊維分野において塗料特性、電気特性の低下、皮膚のかぶれ、そして近年は特に発ガン性および作業環境の改善等の問題を引き起こしている。
【0003】
更に、不純物として含まれる塩素化合物は樹脂および、塗料等の用途に使用した場合、性能の低下を招く原因ともなる。従って、製造されたグリシジルメタクリレート等から不純物である塩素化合物は極力除去されることが望ましい。
しかしながら、これらの製造方法により得られたグリシジルメタクリレート等は通常、塩素を数千ppm含有している。
このような問題のないグリシジルメタクリレート等を製造する方法としてグリシドールとメタクリル酸メチル等とのエステル交換反応により製造する方法がある。この方法により製造されたグリシジルメタクリレート等は本質的に塩素を含まないと考えられ、先に記した樹脂にしたときの性能低下および毒性、環境問題を大幅に改善することができる。
【0004】
エステル交換反応によりグリシジルメタクリレート等を製造する方法としては、特公昭47−38421号公報に触媒としてホスフィンの存在下に行うことが開示されているが、そこに見いだされたグリシジルメタクリレートの生成量はガスクロマトグラフ上で観察されたのみで、一般工業的には意味がない。
特公昭53−6133号公報ではシアン化カリウムを触媒として用いると、グリシドールが98%の転化率で得られることが示されているが、メタクリル酸メチルおよびグリシジルメタクリレートの二重結合や、グリシドール、グリシジルメタクリレートのエポキシ基等の付加物が生成したり、反応終了後、黒ないしは黒褐色の固形ないしは油状の沈澱物が生成し、蒸留前にこれらを除去しなければならず、操作が煩雑となる。
【0005】
特公昭61−37268号公報では強アルカリ触媒、例えばナトリウムメチラート等を用いて反応を行い、生成するメタノールを減圧下に直ちに除去してグリシジルメタクリレートが収率95%で得られることが開示されている。しかし、蒸留前に触媒をろ過しなければならず、さらにナトリウムアルコラートは、一般的にはメタクリル酸エステル類のアニオン重合開始剤であり、工業的に実施するにはかなりの危険を伴う。
【0006】
特開平4−173783号公報(比較例3)では酢酸カリウムを触媒として用い、酢酸カリウムはグリシドール中に溶解させ、この溶液をメタクリル酸メチル中に滴下反応させることによりグリシジルメタクリレートを得ている。この場合も反応終了後に触媒の酢酸カリウムをろ過しなければならず、例えろ過したとしても、微量に溶け込んだ触媒により蒸留後期のグリシジルメタクリレート回収時に、グリシドールの副生が起こり、得られたグリシジルメタクリレートの純度が大きく低下する。また、酢酸カリウムはグリシドールに溶解させる溶解槽が必要であり、さらにグリシドールは酢酸カリウムが存在すると不安定になるため、低温下に保存しなければならないという欠点も有する。
【0007】
特開平6−1780号公報(実施例1)では触媒としてトリエチルアミンを、更にグリシドールとメタクリル酸メチルとの反応により生成するメタノールをヘキサンにより速やかに留去する事によりメタクリル酸メチルへのメタノール付加物(LB1)の生成を抑えながら、グリシドール転化率を上げ、さらには蒸留後期のグリシドールの生成を抑え、高純度のグリシジルメタクリレート(98.9%)を得ている。
【0008】
しかしながら、生成したメタノールを除くために反応主原料のグリシドールとメタクリル酸メチル以外のヘキサンが必要であり、これは釜収率を悪化させ、さらには回収され再使用するメタクリル酸メチルはヘキサンを含むためその純度調整を毎回行わなければならず、作業が煩雑である。そして、触媒のトリエチルアミンはメタクリル酸メチル回収時に除去されることを特徴としているが、回収再使用するメタクリル酸メチル中のトリエチルアミン量も常にチェックしなければならない。加えて、得られたグリシジルメタクリレート中に微量のアミン成分の混入が考えられ、グリシジルメタクリレートの品質を決定的に悪くすることが懸念される。
【0009】
ジャーナル・オブ・アメリカンケミカル・ソサイアティ(Jounal of the American Chemical Society,93巻,195頁,(1971年1月13日発行))には水層中のシアン化ナトリウムを用いて油層中のハロゲン化アルキルと反応させ、シアン化アルキルを得るのに相間移動触媒として第4級アンモニウムまたは第4級ホスホニウム塩が用いられている。これらは水層および油層での反応を進行させるための相間移動触媒であり、本方法のエステル交換反応とは全く関係ないものである。
【0010】
本発明者らは、触媒として固体のKX(式中Kはカリウムを表し、Xはシアンイオン、シアン酸イオン、チオシアンイオン、チオシアン酸イオンまたは有機カルボン酸イオンを表す)と、固体の第4級アンモニウム塩(R1 2 3 4 )N+ - または第4級ホスホニウム塩(R1 2 3 4 )P+ - の存在下に反応を行い、反応終了後触媒不活性化剤を添加して減圧下に未反応アクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルを回収した後、グリシジルメタクリレートまたはグリシジルアクリレートを回収することを特徴とするグリシジルメタクリレートまたはグリシジルアクリレートの製造方法に関する発明を先に出願した(特願平6−106619)。この方法では、グリシドール反応率を向上させ、かつ製品純度を低下させることなくグリシジルメタクリレート等を得ることができるものの、反応液に不溶な触媒を粉体で投入するために、触媒の分散性・有効触媒量の低下および触媒の複分解の進行が遅くなる欠点がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術の課題を解決し、グリシドール反応率を上昇させ、また精製過程で製品純度を低下させることなくグリシジルメタクリレート等を得る方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、前記の触媒を水に溶解または分散させ、複分解の途中または完結させた後に用いることにより、エステル交換反応速度を速くしなおかつグリシドール反応率を上昇させ、また精製過程で製品純度を低下させることのないことを見い出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は、グリシドールと、アクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルとのエステル交換反応により、グリシジルメタクリレートまたはグリシジルアクリレートを製造する方法において、触媒として一般式(1)に示すKXと、一般式(2)に示す第4級アンモニウム塩または一般式(3)に示す第4級ホスホニウム塩とを水溶液中で反応させたものを用い、反応終了後触媒不活性化剤を添加して反応を停止し、減圧下に未反応メタクリル酸メチルおよびアクリル酸メチルを蒸留除去後、グリシジルメタクリレートまたはグリシジルアクリレートを得ることを特徴とするグリシジルメタクリレートまたはグリシジルアクリレートの製造方法
KX (1)
(R1 2 3 4 )N+ - (2)
(R1 2 3 4 )P+ - (3)
(式(1)中、Kはカリウムを表し、Xはシアンイオン、シアン酸イオン、有機カルボン酸イオン、チオシアンイオンまたはチオシアン酸イオンのいずれかであり、式(2)および(3)中、R1 、R2 、R3 、R4 は、それぞれ炭素数が1〜20のアルキル基、アルケニル基、フェニル基のいずれかであり、Yは、シアンイオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、メタクリル酸イオン、安息香酸イオンのいずれかである。)に関する発明である。
【0014】
本発明で使用する一般式(1)のKXは、シアン化カリウム、シアン酸カリウム、チオシアンカリウム、チオシアン酸カリウム、メタクリル酸カリウム、酢酸カリウム、ギ酸カリウム、プロピオン酸カリウムまたは安息香酸カリウムが例示される。KXは上記の1種でも良く、任意の2種以上のものを組み合わせて使用しても良い。
本発明において使用されるKXの配合割合はグリシドール1モルに対して1〜500ミリモルの量であり、好ましくは3〜100ミリモル、さらに好ましくは5〜50ミリモルである。
【0015】
一般式(2)の第4級アンモニウム塩としてテトラメチルアンモニウムクロリド、トリメチルエチルアンモニウムクロリド、ジメチルジエチルアンモニウムクロリド、メチルトリエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリドが例示できる。または、一般式(3)の第4級ホスホニウム塩としてテトラメチルホスホニウムアイオダイド、テトラフェニルホスホニウムクロリドが例示できるが本発明はこれらのものに限定されるものではない。
第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩は上記の1種でも良く、任意の2種以上のものを組み合わせて使用しても良いが、上記の中でもテトラメチルアンモニウムクロリド、メチルトリエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリドおよびトリエチルベンジルアンモニウムクロリドが好適に使用される。
【0016】
本発明で使用する第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩の配合割合は、グリシドール1モルに対して1〜500ミリモルの量であり、好ましくは3〜200ミリモル、さらに好ましくは5〜100ミリモルである。
【0017】
本発明で使用する触媒不活性化剤としてメタンスルホン酸、メタリルスルホン酸、オクチルスルホン酸、ラウリルスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸のナトリウム塩、燐タングステン酸、燐モリブデン酸のカリウムを除くアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩が例示できる。
触媒不活性化剤は上記から選ばれた1種でも良く、任意の2種以上のものを組み合わせて使用しても良いが、上記の中でもp−トルエンスルホン酸ソーダ、燐タングステン酸ナトリウム、燐モリブデン酸ナトリウムが好適に使用される。
本発明において使用される触媒不活性化剤の使用割合はグリシドール1モルに対して1〜1000ミリモルの量であり、好ましくは3〜200ミリモル、さらに好ましくは5〜100ミリモルである。
【0018】
本発明で使用する式(1)のKXと、式(2)の第4級アンモニウム塩または式(3)の第4級ホスホニウム塩の配合割合は、KX1ミリモルに対して第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩0.1〜10ミリモルの量であり、好ましくは0.3〜8ミリモル、さらに好ましくは0.5〜2ミリモルである。
本発明において使用される触媒水溶液の濃度は、5〜80重量%であり、好ましくは、20〜60重量%、さらに好ましくは30〜50重量%である。
【0019】
これまでに開示されたグリシドールを用いたグリシジルメタクリレートおよびグリシジルアクリレートの製造方法では反応率が不十分であったり、合成中に触媒に基づく不純物生成およびエステル交換反応により生成してきたメタノールとメタクリル酸メチル等およびグリシジルメタクリレート等とのマイケル付加物等の生成によりグリシジルメタクリレート等の収率および純度の低いものしか得られていない。
さらにはこれまでに開示された多くの方法は固形触媒を使用しており、これらの触媒が存在するとグリシジルメタクリレート等の蒸留中にグリシドールが再生され、得られた製品中にグリシドールが含まれ製品純度を低下させ、グリシジルメタクリレート等の製品収率も大きく低下させていた。
【0020】
本発明の特徴はグリシドールとメタクリル酸メチル等とのエステル交換反応において、例えばシアン化カリウムとテトラメチルアンモニウムクロリドの混合水溶液を用い、短時間で、しかも不純物の生成が極めて少なくエステル交換反応を終了させ、その後触媒不活性化剤、例えばp−トルエンスルホン酸ソーダを加えることにより用いた触媒の活性をなくし、蒸留中におけるグリシドールの生成を完全に抑えることができるものである。
グリシドールとメタクリル酸メチル等とのエステル交換反応において単にシアン化カリウムを触媒として用い、反応終了後に触媒不活性化剤を加えてもなんら効果のないことは明らかである(本明細書の比較例2)。
すなわち、シアン化カリウムは塩化4級アンモニウムとの複分解によりシアン化4級アンモニウムと塩化カリウムとに変化し、このシアン化4級アンモニウムがエステル交換反応の触媒として作用する。
【0021】
そして、エステル交換反応終了後にp−トルエンスルホン酸ソーダを添加することにより触媒のシアン化4級アンモニウムをシアン化ナトリウムとp−トルエンスルホン酸塩4級アンモニウムとに複分解する事により完全に触媒活性を無くすることができる。
このことにより蒸留時に、特に蒸留後期の製品グリシジルメタクリレート等を回収する際のグリシドールの複製を完全に抑えることができ、結果として高純度の、具体的には98%以上、さらには98.5%以上の純度を持つグリシジルメタクリレート等が得られることになる。
以下に実施例および比較例により本発明を具体的に説明する。
【0022】
【実施例】
実施例および比較例での原料及び製品の純度測定はGC法によった。
本実施例等において、原料、製品等の純度(%)は、全て重量%、ppmは重量ベースで示してある。
【0023】
実施例1
ガス導入管、温度計、撹拌機、塔頂部に還流比調節器を備え付けたマクマホンパッキンを充填した内径が15mmφ、高さ300mmの蒸留塔およびサンプル抜きだし管を備え付けた内容積2リットルの5つ口フラスコにメタクリル酸メチル500g(5モル)とp−メトキシフェノール0.5gおよび予め調整したシアン化カリウム0.55g(8.5ミリモル)とテトラメチルアンモニウムクロリド0.93g(8.5ミリモル 日本特殊化学工業(株)製)の50%水溶液を加えた。圧力を300mmHgに減圧し、加熱を開始した。蒸留塔塔頂温度80℃まで加熱を継続し、水分をメタクリル酸メチルとの共沸混合物として留去させた。釜温度を70℃まで冷却した後、グリシドール74g(1モル)を一括添加してから、加熱を再開した。釜温度70℃より還流が開始され、蒸留塔塔頂温度を38℃〜55℃になるように還流比10〜30に調節し、生成したメタノールをメタクリル酸メチルとの共沸混合物として留去させた。
【0024】
反応2.5時間後、釜温は74℃になり反応を終了させた。このときのグリシドール反応率はガスクロマトグラフ分析より99%であることが分かった。
この後直ちに、p−トルエンスルホン酸ソーダ5.6g(51ミリモル)を添加して、圧力を100mmHgに減圧して、過剰量のメタクリル酸メチルを回収した。次に、圧力を30〜4mmHgに減圧し、初留成分として30gを回収した。この初留成分には4.5%のグリシドールを含み、次の合成原料として使用される。主留成分として99gが回収され、グリシジルメタクリレートの純度は99.0%で、グリシドールは0.7%であった。
【0025】
実施例2
実施例1で使用したと同様の装置に、触媒としてメタクリル酸カリウム1.24g(10ミリモル)とテトラエチルアンモニウムクロリド1.657g(10ミリモル ライオンアクゾ(株)製)の30%水溶液を加えた以外は実施例1と同様の操作で行った。反応2時間後、終了とし、このときのグリシドール反応率は98.5%であり、蒸留により得られたグリシジルメタクリレートの純度は98.3%で、グリシドールを0.9%含んでいた。
【0026】
実施例3
ガス導入管、温度計、撹拌機、塔頂部に還流比調節器を備え付けたマクマホンパッキンを充填した内径15mmφ、高さ300mmの蒸留塔およびサンプル抜きだし管を備え付けた内容積2リットルの5つ口フラスコにメタクリル酸メチル500g(5モル)とグリシドール74g(1モル)とp−メトキシフェノール0.5gおよび予め調整した酢酸カリウム0.981g(10ミリモル)とテトラメチルアンモニウムクロリド1.096g(10ミリモル)の40%水溶液を加えた。圧力を300mmHgに減圧し、加熱を開始した。釜温度70℃より還流が開始され、蒸留塔塔頂温度を38℃〜55℃になるように還流比10〜30に調節し、生成したメタノールをメタクリル酸メチルおよび水との共沸混合物として留去させた。
反応3時間後、釜温は74℃になり反応を終了させた。このときのグリシドール反応率はガスクロマトグラフ分析より98.8%であることが分かった。
【0027】
この後直ちに、p−トルエンスルホン酸ソーダ11.2g(102ミリモル)を添加して、圧力を100mmHgに減圧して、過剰量のメタクリル酸メチルを回収した。次に、圧力を30〜4mmHgに減圧し、初留成分として28gを回収した。この初留成分には4.8%のグリシドールを含み、次の合成原料として使用される。主留成分として103gが回収され、グリシジルメタクリレートの純度は98.6%で、グリシドールは0.5%であった。
【0028】
実施例4
実施例1で使用したと同様の装置に、実施例1のシアン化カリウムに代えてチオシアン酸カリウム0.83g(8.5ミリモル)とベンジルトリメチルアンモニウムクロリド1.578g(8.5ミリモル)の50%水溶液を加えた。圧力300mmHgに減圧し、加熱を開始した。釜温度70℃よりグリシドールの滴下を開始して反応を開始した。
蒸留塔塔頂温度を38℃〜55℃になるように還流比10〜30に調節し、生成したメタノールをメタクリル酸メチルおよび水との共沸混合物として留去させた。30分でグリシドール74g(1モル)の滴下を終了した。反応3.5時間後、終了とし、このときのグリシドール反応率は98.3%であった。この後直ちに、燐タングステン酸ナトリウム7.2g(26ミリモル)を添加し、実施例1と同様の操作で蒸留を行い、得られたグリシジルメタクリレートの純度は98.1%で、グリシドールは1.1%であった。
【0029】
比較例1
実施例1で使用したと同様の装置に触媒としてシアン化カリウム0.55g(8.5ミリモル)のみを添加し、その後は実施例1と同様の操作を行った。グリシドール反応率99%を達成したが、蒸留中にグリシドールが再製してきたために、得られたグリシジルメタクリレートの純度は95%であり、製品収量は65gと大変低いものであった。
【0030】
比較例2
比較例1と同様に反応を行い、グリシドール反応率98.1%を達成した。その後、p−トルエンスルホン酸ソーダ5.6g(51ミリモル)を添加して蒸留を行ったが、蒸留中のグリシドールの再製は全く抑えることができなかった。結果として得られた製品グリシジルメタクリレートの純度は94%であった。
【0031】
比較例3
実施例1で使用したと同様の装置に触媒としてテトラメチルアンモニウムクロリド1.86g(17ミリモル)のみを添加し、その後は実施例1と同様の操作を行い、エステル交換反応を2時間行ったが、反応は殆ど進行しなかった。
【0032】
【発明の効果】
本発明の製造方法の採用により、従来の製造では除去不可能であった有害なエピクロルヒドリンや樹脂の物理的性質等を低下させる塩素化合物を全く含まず、かつグリシジルメタクリレートまたはグリシジルアクリレートを高純度、高収率で得ることができる。
【0033】
Figure 0003801227
【0034】
Figure 0003801227

Claims (6)

  1. グリシドールと、アクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルとのエステル交換反応により、グリシジルメタクリレートまたはグリシジルアクリレートを製造する方法において、触媒として一般式(1)に示すKXと、一般式(2)に示す第4級アンモニウム塩または一般式(3)に示す第4級ホスホニウム塩とを含む水溶液中を用い、反応終了後触媒不活性化剤を添加して反応を停止し、減圧下に未反応メタクリル酸メチルまたはアクリル酸メチルを蒸留除去後、グリシジルメタクリレートまたはグリシジルアクリレートを得ることを特徴とするグリシジルメタクリレートまたはグリシジルアクリレートの製造方法。
    KX (1)
    (R1 2 3 4 )N+ - (2)
    (R1 2 3 4 )P+ - (3)
    式(1)中、Kはカリウムを表し、Xはシアンイオン、シアン酸イオン、有機カルボン酸イオン、チオシアンイオンまたはチオシアン酸イオンのいずれかであり、式(2)および(3)中、R1 、R2 、R3 、R4 は、それぞれ炭素数が1〜20のアルキル基、アルケニル基、フェニル基のいずれかであり、Yは、シアンイオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、メタクリル酸イオン、安息香酸イオンのいずれかである。
  2. 一般式(1)に示すKXがシアン化カリウム、シアン酸カリウム、チオシアン化カリウム、チオシアン酸カリウム、メタクリル酸カリウム、酢酸カリウム、ギ酸カリウム、安息香酸カリウムから選ばれた1種以上でありかつ、該触媒の使用割合がグリシドール1モルに対して1〜500ミリモルである請求項1記載のグリシジルメタクリレートまたはグリシジルアクリレートの製造方法。
  3. 一般式(2)に示す第4級アンモニウム塩がテトラメチルアンモニウムクロリド、トリメチルエチルアンモニウムクロリド、ジメチルジエチルアンモニウムクロリド、メチルトリエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリドの少なくとも1種以上、または一般式(3)に示す第4級ホスホニウム塩がテトラメチルホスホニウムアイオダイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイドから選ばれた1種以上である請求項1記載のグリシジルメタクリレートまたはグリシジルアクリレートの製造方法。
  4. 一般式(2)に示す第4級アンモニウム塩または一般式(3)に示す第4級ホスホニウム塩の使用割合がグリシドール1モルに対して1〜500ミリモルである請求項1記載のグリシジルメタクリレートまたはグリシジルアクリレートの製造方法。
  5. 使用する触媒不活性化剤がアルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、燐タングステン酸、燐モリブデン酸のカリウムを除くアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩から選ばれた1種以上であり且つ、該アルカリ金属塩の使用割合がグリシドール1モルに対して1〜1000ミリモルである請求項1記載のグリシジルメタクリレートまたはグリシジルアクリレートの製造方法。
  6. 一般式(1)に示すKX1モルに対して、一般式(2)の第4級アンモニウム塩または一般式(3)の第4級ホスホニウム塩0.1〜10モル使用し、かつ触媒混合水溶液濃度が5〜80重量%である請求項1記載のグリシジルメタクリレートまたはグリシジルアクリレートの製造方法。
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