JP3800891B2 - プリンタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばPOS(Point Of Sale)システムに用いられる電子キャッシュレジスタ等の小型プリンタに係り、特に、用紙カッタ機構がプリンタ本体と可動カバーとに分離している分離型において、このカッタ機構に生じる用紙ジャムを容易かつ速やかに解消し得る技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記電子キャッシュレジスタのプリンタは、ロール状の用紙を引き出し、その搬送路においてサーマルヘッドにより用紙に対し印字を行った後、用紙をカットしてレシートとして排出するといった構成が一般的である。そして近年では、印字機構や用紙収納部を備えたプリンタ本体に、用紙収納部を開閉するカバーが、用紙搬送路の下流側に開くよう回動自在に取り付けられたタイプのものが主流になっている。このようなタイプのプリンタに具備される用紙カッタ機構としては、固定刃および可動刃をいずれも板状のもので構成した押し切り式であって、カバー側に固定刃を、プリンタ本体側に可動刃を設けた分離型が挙げられる。この分離型カッタ機構は、カバーを閉じた通常状態で固定刃が用紙搬送路を挟んで可動刃に対向し、可動刃を固定刃側に往復動させ、その往動時に可動刃が固定刃に重畳することにより、双方の刃が協同して用紙をカットする。この場合の可動刃は、用紙カットがスムーズになされる観点から、固定刃に対して用紙搬送路の下流側に重畳する構成が好適である。また、他の押し切り式カッタ(事務用品の裁断機等)においても、一般的にはこのような構成となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記分離型カッタ機構は、可動刃をプリンタ本体に設けることから、この可動刃を駆動する駆動機構(モータ、減速ギヤ等)も自ずとプリンタ本体に設けることになる。したがって、可動刃をカバーに設けた場合に想定される不具合、すなわちカバーが重くなったり配線が煩雑になったりする等の不具合、を招かないといった利点がある。ところで、板状の固定刃と可動刃とにより用紙をカットするカッタ機構では、2つの刃の間に用紙が挟み込まれるジャムが起こり、可動刃が固定刃に重畳したままロックしてしまう場合があった。用紙のジャムは、カバーを開けることにより解消することができるものの、上記の分離型カッタ機構では、可動刃が固定刃に重畳してカバーの開きを阻止してしまうので、カバーを開けることができない。したがって、ジャムを解消するには、用紙が双方の刃の間に挟み込まれた状態のまま、可動刃をホームポジションに戻すしかなく、そのためには、例えば可動刃の駆動モータのピニオンや減速ギヤを、可動刃が復動する方向に手動で回転させるといった手間のかかる作業が強いられることになる。
【0004】
したがって本発明は、分離型の用紙カッタ機構において、同カッタ機構に生じる用紙ジャムを容易かつ速やかに解消することができるプリンタを提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、用紙収納部、用紙搬送路およびこの用紙搬送路を搬送される用紙に印字を行う印字機構を有するプリンタ本体と、このプリンタ本体に、用紙収納部を閉じるよう回動自在に、かつ、プリンタ本体に係脱自在に取り付けられた本体カバーと、用紙搬送路における印字機構の下流側において用紙をカットする用紙カッタ機構とを備えたプリンタにおいて、前記用紙カッタ機構は、プリンタ本体に設けられた固定刃と、本体カバーに、当該本体カバーが閉状態において用紙搬送路を挟んで固定刃に対向し、かつ、固定刃に対して往復動自在に設けられ、往動時に、固定刃における用紙搬送路の下流側であって本体カバーの開側に重畳することにより、固定刃と協同して用紙をカットする可動刃と、この可動刃を往復動させる駆動機構とを備えることを特徴としている。
【0006】
上記構成を備えたプリンタによれば、本体カバーを開けて用紙収納部に用紙を収納し、本体カバーを閉じてプリンタ本体に係合させると、稼動可能な状態になる。稼動の基本動作は、用紙収納部に収納された用紙が用紙搬送路を搬送され、その搬送途中で印字機構が用紙に対し印字を行い、印字終了後に可動刃が固定刃側に往動して双方の刃により印字用紙をカットし、カット終了後、可動刃が復動して元に戻る。
【0007】
さて、上記発明によれば、用紙カット時(可動刃の往動時あるいは復動時)に2つの刃の間に用紙が挟み込まれるジャムが起こったら、可動刃を備える本体カバーを開けることによりジャムを解消することができる。すなわち、可動刃は固定刃における用紙搬送路の下流側であって本体カバーの開側に重畳しているから、本体カバーを開ける際に可動刃が固定刃に当たって本体カバーの開動作が阻止されることがない。これにより、本体カバーを開けて用紙のジャム部分を引き出すなりして用紙を正常に戻す作業を速やかに行うことができる。
【0008】
また、用紙カッタ機構を通過した用紙はテンションを受けておらずフリーな状態であり、一方、用紙カッタ機構の下流側部分の用紙は印字機構あるいは後続の用紙によってテンションを受けることになる。ここで、本発明のように可動刃を固定刃の下流側に重畳させることにより、固定刃側では用紙がテンションのかかった状態で固定される一方、可動刃側では用紙はフリーな状態となっているので、その切れ味は良好なものとなり、カット用紙に傷等が付くおそれもない。これに対して固定刃の上流側に可動刃が重畳する構成を採ると、可動刃がテンションのかかった用紙の干渉を受けたり固定刃側の用紙がしっかりと固定されていなかったりするので、可動刃の移動によって固定刃側の用紙も移動してしまい、切れ味が比較的劣る。また、可動刃により用紙に傷や筋が付くおそれもある。
【0009】
次に、本発明では、プリンタ本体に、閉状態における本体カバーの回動端部に対向し、かつ、本体カバーが開状態の時に固定刃を覆う固定刃カバーが付加されていることを好ましい形態としている。この形態により、本体カバーを開けた状態で固定刃に触れることが回避され、これは、特に用紙収納部に用紙を収納する際に有効な安全対策となる。また、この固定刃カバーは、本体カバーをプリンタ本体に係脱させる際には邪魔にならない構成が望ましく、そのためには、プリンタ本体に対する本体カバーの係脱動作を許容するよう本体カバーの回動端部から退避可能とすればよい。
【0010】
また、固定刃カバーが、プリンタ本体に対して固定刃との間に所定の間隔が空く状態で回動自在に設けられており、上記の固定刃を覆う位置と本体カバーから退避した位置との間を、固定刃との間に常に所定の間隔を保持した状態で回動する構成は、本発明の好ましい形態である。この形態によれば、回動する固定刃カバーが常に固定刃に接触しない状態を確保することができるので、固定刃および固定刃カバーの双方が相手から損傷を受けることがなく、特に固定刃の刃部に固定刃カバーが当たって刃欠けしてしまい、紙切り機能を損なうといった不具合の発生を防ぐことができる。
また、本発明では、上記固定刃カバーを、固定刃を覆う位置と、閉状態の本体カバーの回動端部に対向する所定位置とにそれぞれロックするロック機構が設けられていることを好ましい形態としている。これによれば、本体カバーが開いている時に固定刃カバーに触っても固定刃カバーは動かず安全が確保され、一方、本体カバーが閉じられている稼動状態の際にも固定刃カバーの不動状態が保持される。
【0011】
さらに本発明では、プリンタ本体に、当該プリンタ本体に対する本体カバーの係合状態を解除して本体カバーが開くことを可能とするカバーオープン手段が設けられ、さらに、このカバーオープン手段を作動させた時に、固定刃カバーが連動して本体カバーの回動端部から退避するようになされていることを好ましい形態としている。この形態によれば、カバーオープン手段を作動させると、固定刃カバーが連動して本体カバーから退避するとともに、プリンタ本体に対する本体カバーの係合状態が解除され、本体カバーを1つの動作でスムーズに開けることが可能となる。カバーオープン手段は、例えば固定刃カバーの退避方向に押されるレバー等が好適である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
A.プリンタの構成
図1および図2は、それぞれ本発明の第1実施形態に係るプリンタの全体を示す右側面図および左側面図である。このプリンタは、電子キャッシュレジスタとして用いられる小型プリンタであり、プリンタ本体10と本体カバー20とを備えている。図1および図2は本体カバー20を閉じた状態を示しており、図3,図5,図7は、この順に本体カバー20が開いていく作用を示す右側面図、図4,図6,図8は、それぞれ図3,図5,図7に対応する左側面図である。当該プリンタに具備された用紙カッタ機構は、プリンタ本体10に固定刃が、また、本体カバー20に可動刃がそれぞれ設けられた分離型である。本実施形態のプリンタにおいては、用紙への印字、用紙の搬送、可動刃の作動等は、マイクロコンピュータで構成される図示せぬプリンタ制御部によって制御される。
【0013】
プリンタ本体10は、左右の側板11aを備えた箱状のフレーム11を主体としており、フレーム11の内部には、フレーム11を構成する側板11aおよび底部プレート11bによって用紙収納部12が設けられている。この用紙収納部12には、ロール状に蓄積された感熱式の用紙Sが収納される。用紙Sは、先端部が下側から手前側(図1,図3,図5,図7で左側、図2,図4,図6,図8で右側)に引き出されるように収納される。本体カバー20は、その一端部がフレーム11の後部の上部にヒンジ結合され、用紙収納部12を閉じるよう回動自在にフレーム11に取り付けられている。
【0014】
フレーム11の前端部には、横方向(図1〜図8で図面の裏・表方向)に延びるサーマルヘッド13が、表面を後方かつやや上方に向けた状態で固定されている。また、サーマルヘッド13の上方には、板状の固定刃14がサーマルヘッド13と平行に設けられている。この固定刃14は、図5および図6に示すように、フレーム11の前端部に形成されたプレート部11cに、やや前下がりに傾斜した状態で固定されており、後部のエッジが刃部14aを構成している。フレーム11には、固定刃14の上方を覆う固定刃カバー15が、閉状態の本体カバー20の前端部(回動端部)に対向して設けられている。
【0015】
前記本体カバー20は、フレーム11の用紙収納部12を上から覆う天板20aと、天板20aから垂下する左右の側板20bとが一体成形されたもので、各側板20bがフレーム11にヒンジ結合されている。本体カバー20の左右の側板20bの前端部には、フック21が形成されており、本体カバー20は、フック21が固定刃カバー15に形成されたフック16に係合することにより閉状態が保持される。
【0016】
本体カバー20の各側板20bの前端部には、横方向に延びるプラテンローラ30が回転自在に支持されている。このプラテンローラ30の軸の両端は各側板20bから外側に突出しており、右側の突出端には、図示せぬ従動ギヤが同軸的に固定されている。図1に示すように、前記フレーム11の右側の側板11aの内側には、プラテン駆動モータ31が固定されており、該モータ31の駆動軸は側板11aを貫通し、その突出端にピニオン32が装着されている。さらに、右側の側板11aの外側には、ピニオン32に連結されてプラテン駆動モータ31の駆動力をプラテンローラ30に伝達する図示せぬ中間ギヤ列が配置されている。そして、本体カバー20が閉じられると、プラテンローラ30は適宜な圧力でサーマルヘッド13に圧接するとともに、従動ギヤが中間ギヤ列の最下流のギヤに噛み合うようになっている。本実施形態では、サーマルヘッド13とプラテンローラ30とにより印字機構が構成されている。
【0017】
本体カバー20の裏面には、前記固定刃14と協同して用紙をカットする可動刃ユニット40が設けられている。この可動刃ユニット40は、図9に示すように、支持プレート41と、前後方向(図9で左右方向)に往復動自在なるよう支持プレート41に組み込まれた略T字状の可動刃42と、可動刃42にカット圧を付与する板ばね43と、可動刃42を往復動させる駆動機構50と、可動刃42がホームポジションにあるか否かを検出するホームポジション検出器45とから構成されている。支持プレート41、可動刃42および板ばね43はこの順で重ねられ、支持プレート41が可動刃42および板ばね43を本体カバー20とともに挟んだ状態で、本体カバー20に固定されている。なお、図9は、可動刃42が固定刃14に対して最も退行したホームポジションにある状態を示している。
【0018】
可動刃42は、前端縁が刃部42aを構成しており、この刃部42aは、スムーズな用紙カットを実現するために、中央部分から両端に向かうにしたがって前方にせり出す左右対称のV字状に形成されている。また、刃部42aの中央部分には、非カット部分を残して用紙Sを後続の用紙Sに連結した状態とするための逃げとして、凹部42bが形成されている。用紙Sを完全にカットする場合には、この凹部42bを形成する必要はない。可動刃42の前端の両端部には、可動刃42がホームポジションにあっても固定刃14に乗り上げるガイド片42cが前方に向かって突設されている。これらガイド片42cが予め固定刃14に乗り上げることにより、可動刃42の刃部42aは固定刃14の上にスムーズに重畳する。可動刃42における凹部42bのすぐ後方には、前後方向に延びる長孔47が形成されており、また、後端部には、支持プレート41側に突出する第1のガイドピン48Aが設けられている。そして、長孔47には支持プレート41に突設された第2のガイドピン47Aが挿入され、第1のガイドピン48Aは支持プレート41に形成された前後方向に延びる長孔48に挿入されている。可動刃42は、長孔47・ガイドピン47Aと、長孔48・ガイドピン48Aとの組み合わせによって、前後方向への往復動がガイドされる。
【0019】
板ばね43は、可動刃42の刃部42aが適宜な圧力をもって固定刃14の上に重畳するよう可動刃42を支持プレート41側に押さえ込むものであり、刃部42aのやや後部を横断してその両端部が支持プレート41に固定されている。なお、板ばね43のばね力は、可動刃42の往復動を規制するものではない。
【0020】
駆動機構50は、プリンタ制御部によって制御される可動刃駆動モータ51と、ウォームホイール52およびウォーム53からなるウォームギヤ54とから構成されている。ウォームホイール52は、支持プレート41の下側に配置され、このウォームホイール52に、可動刃駆動モータ51の駆動軸に設けられたウォーム53が噛み合わされている。ウォームホイール52の偏心した所定箇所には、可動刃42側に突出するカムピン55が形成されている。このカムピン55は、可動刃42に形成された左右方向に延びる長孔56に挿入されている。
【0021】
上記駆動機構50によれば、可動刃駆動モータ51が作動してウォームホイール52が一方向に回転させられると、カムピン55が回転しながら前後方向に移動して可動刃42を前後に往復動させる。カムピン55が最後方にある時、可動刃42はホームポジションに位置し、カムピン55が最前方にある時、可動刃42は、前端縁の刃部42aが固定刃14の上側に重畳するカットポジションに至る。
【0022】
可動刃42がホームポジションに位置している状態は、ホームポジション検出器45により検出される。この検出器45は支持プレート41に取り付けられており、可倒式スイッチ45aがウォームホイール52のカム部52aの外周面に接触して押されることによりスイッチONとなる。そして、カム部52aに形成された切欠き52bがスイッチ45aに至るとスイッチOFFとなる。ホームポジション検出器45は、ウォームホイール52が回転して可動刃42を往復動させている最中はスイッチONとなり、可動刃42がホームポジションにある状態ではスイッチOFFとなってその状態を検出する。
【0023】
上記可動刃42は、通常ホームポジションに位置しており、本体カバー20を閉じた状態では、可動刃42の刃部42aは固定刃14の刃部14aから若干離間し、かつ可動刃42のガイド片42cが固定刃14の両端に乗り上げるようになっている。フレーム11の用紙収納部12に収納された用紙Sの先端部は、本体カバー20が閉じた状態において、サーマルヘッド13とプラテンローラ30との間に挟み込まれ、固定刃14と可動刃42との間を経て、本体カバー20と固定刃カバー15との間の排出口から排出される。この経路が用紙Sの搬送路であり、用紙Sは、プラテンローラ30が図1および図2の矢印F方向に回転することにより、プラテンローラ30とサーマルヘッド13の摩擦作用で搬送路を搬送される。可動刃42が往動すると、刃部42aが、固定刃14の上側、すなわち用紙搬送路の下流側であって本体カバー20の開側に重畳し、用紙搬送路にある用紙を固定刃14と協同してカットする。
【0024】
また、図示はしないが、上記フレーム11には、本体カバー20が開いているか否かを検出するカバーオープン検出器が設けられている。これら検出器の信号はプリンタ制御部に供給され、プリンタ制御部は、本体カバー20が閉じられている時のみ、可動刃42が往復動するよう可動刃駆動モータ45を制御する。また、本体カバー20が開状態で、かつ可動刃42がホームポジションにない場合には、可動刃42がホームポジションに戻るよう可動刃駆動モータ45を制御する。
【0025】
次に、フレーム11に対する上記固定刃カバー15の取付構造およびプリンタ本体10に対する本体カバー20の係脱機構について説明する。
図1および図2に示すように、フレーム11の左右の側板11aの前端部には、横方向に延びる回動軸17が軸回りに回動自在に架け渡されている。この回動軸17の両端部は、各側板11aの外側に突出している。固定刃カバー15は、実際に固定刃14を覆う断面略L字状のカバー部60と、カバー部60の左右端部からそれぞれ垂下する側板61a,61bとが一体成形されたもので、各側板61a,61bが回動軸17の両突出端部に、図1〜図7の矢印AB方向に相対回動可能に支持されている。図5で明らかなように、固定刃カバー15の右側には、カバーオープンレバー(カバーオープン手段)70が配置されている。このカバーオープンレバー70は、その基端部が回動軸17の右側の突出端部に一体的に係合され、回動軸17とともに矢印AB方向に回動自在になされている。カバーオープンレバー70においては、A方向が退避方向、B方向が閉方向である。固定刃カバー15の右側の側板61bには、カバーオープンレバー70を押し下げて矢印A方向に回動させた際にカバーオープンレバー70に係合するピン62が、外側に突出形成されている。
【0026】
図2に示すように、固定刃カバー15の左側の側板61aの外側には、略十字状のアンロックレバー80が配置されている。このアンロックレバー80は、回動軸17の左側の突出端部に、回動軸17と一体的に回動するよう係合されている。固定刃カバー15の左側の側板61aの下部には外側に突出するピン63が形成されており、アンロックレバー80には、矢印A方向に回動するとピン63に係合する下側凸部81が形成されている。
【0027】
固定刃カバー15、カバーオープンレバー70およびアンロックレバー80は、回動軸17を中心として図1〜図8の矢印AB方向に回動自在であるが、固定刃カバー15は回動軸17と相対回動が可能であり、カバーオープンレバー70およびアンロックレバー80は回動軸17と一体に回動する。すなわち、カバーオープンレバー70を回動させると、アンロックレバー80もともに回動する。
【0028】
図1および図2に示すように、固定刃カバー15の各側板61a,61bの下端部には、内側に突出するストッパピン64がそれぞれ形成されており、これらストッパピン64は、フレーム11の左右の側板11aの凹所18に嵌め込まれたねじりコイルばねからなるねじりばね90に係合している。このねじりばね90により、固定刃カバー15は、常に矢印B方向に回動するよう付勢され、ストッパピン64が凹所18の前端部に係合すると矢印B方向への回動が規制されるようになっている。
【0029】
固定刃カバー15の各側板61a,61bの上部には、ロックレバー65,66が、軸65A,66Aを介してそれぞれ図1〜図8に示す矢印AB方向に回動自在に取り付けられている。図2に示すように、左側のロックレバー65は軸65Aに装着されたねじりコイルばね91により、常に矢印A方向に回動するよう付勢されているが、自身の前部に形成された爪65aがアンロックレバー80の上側凸部82に当接する位置で停止するようになっている。一方、図1に示すように、右側のロックレバー66は、自身に突設されたアーム66aから回動軸17の突出端にわたって掛けられた引っ張りばね92により、常に矢印A方向に回動するよう付勢されているが、アーム66aがカバーオープンレバー70に当接する位置で停止するようになっている。カバーオープンレバー70は、引っ張りばね92により、アーム66aを介して矢印B方向に付勢されている。これらロックレバー65,66の後部には、本体カバー20が閉じられると、本体カバー20の前端部に形成された外側に突出するピン22に係合して固定刃カバー15の矢印A方向への回動を規制するフック65b,66bがそれぞれ形成されている。
【0030】
図1に示すように、回動軸17には、カバーオープンレバー70が矢印A方向にある程度回動した時に、カバーオープンレバー70に係合して一体に回動するリターンレバー71が装着されている。このリターンレバー71は、引っ張りばね93により矢印B方向に回動するよう常に付勢され、かつ、フレーム11の右側の側板11aに突設されたピン19に当接する位置で停止するようになっている。
【0031】
図2に示すように、フレーム11の左側の側板11aには、本体カバー20が開状態で固定刃カバー15の矢印A方向への回動を規制するストッパ85が設けられている。このストッパ85は、やや前傾して上下方向に延びる基部86から、基部86に直交して前側に延びるストッパ片87が突出した略L字状のものである。このストッパ85は、基部86に係合された2つのガイドピン88によって矢印CD方向にスライド自在に、かつ、側板11aに嵌め込まれた圧縮ばね94により常に矢印C方向に付勢される状態で、側板11aに支持されている。
【0032】
ストッパ85は、図8に示すように、本体カバー20が開状態でストッパ片87の先端部が固定刃カバー15の左側の側板61aに形成された凸部67の後側に係合し、固定刃カバー15の矢印A方向への回動を規制する。また、図2に示すように、本体カバー20が閉じられると、基部86の上端部が本体カバー20の左側の側板11aに当接することにより、ストッパ85は圧縮ばね94に抗して押し下げられ、固定刃カバー15の凸部67に対するストッパ片87の係合が外れるようになっている。
【0033】
次に、本体カバー20が閉まっている状態から本体カバー20を開ける作用を説明する。
図1および図2に示すように、本体カバー20が閉状態では、本体カバー20は、フック21が固定刃カバー15側のフック16に係合することにより上方への回動が規制され、閉状態が保持される。固定刃カバー15は、ねじりばね90の弾発力で本体カバー20にある程度の圧力をもって当接し、矢印B方向への回動が規制される。その位置は、ピン64が凹所18の前端部に係合して最も本体カバー20側に近付く位置よりも、やや前方よりである。また、左右のロックレバー65,66の各フック65b,66bが本体カバー20のピン22にそれぞれ係合しており、これによって、固定刃カバー15は本体カバー20から離れる矢印A方向への回動も規制される。つまり、固定刃カバー15は、本体カバー20が閉じた状態で所定位置にロックされ、そのロックは、本体カバー20とロックレバー65,66とによりなされる。本実施形態では、本体カバー20とロックレバー65,66とにより、固定刃カバー15を本体カバー20に対向する所定位置にロックするロック機構が構成されている。本体カバー20が閉状態の時には、可動刃42は、用紙搬送路を挟んで固定刃14に対向し、両端部のガイド片42cが固定刃14の上に乗り上げた状態となる。
【0034】
本体カバー20を開けるには、カバーオープンレバー70を押し下げて矢印A方向に回動させる。図3に示すように、カバーオープンレバー70を1段階押し下げると、右側のロックレバー66は、カバーオープンレバー70によりアーム66aを介して矢印B方向に回動させられ、本体カバー20のピン22に対するフック66bの係合が解除される。一方、図4に示すように、カバーオープンレバー70が1段階押し下げると、回動軸17とともにアンロックレバー80が矢印A方向に回動する。すると、上側凸部82が爪65aを押すことにより左側のロックレバー65も矢印B方向に回動し、ロックレバー65のフック65bも同時にピン22から外れる。したがって、固定刃カバー15は矢印A方向に回動可能となる。
【0035】
さらにカバーオープンレバー70をねじりばね90の弾発力に抗して押し下げると、図5に示すように、カバーオープンレバー70が固定刃カバー15のピン62に係合し、一方、図6に示すように、アンロックレバー80の下側凸部81が固定刃カバー15のピン63にそれぞれ係合する。これにより、固定刃カバー15はカバーオープンレバー70によって押し下げられながら矢印A方向に回動し、その途中で、固定刃カバー15のフック16が本体カバー20のフック21から外れるので、本体カバー20を開けることができる。フック16,21どうしの係合が外れると、ストッパ85を付勢している圧縮ばね94の弾発力により本体カバー20がストッパ85によって持ち上げられ、開動作が補助される。
【0036】
本体カバー20が開いたら、カバーオープンレバー70を離す。すると、図7に示すように、カバーオープンレバー70は引っ張りばね93によって定位置に戻り、さらに、固定刃カバー15は、ねじりばね90によってピン64が凹所18の前端に位置するまで本体カバー20側に回動し、停止する。この位置で、固定刃カバー15のカバー部60が固定刃14の上方を覆う。このように固定刃カバー15が固定刃14を覆う状態では、図8に示すように、ストッパ85のストッパ片87が固定刃カバー15の左側の側板61aの凸部67に係合し、固定刃カバー15の矢印A方向への回動が規制される。また、ストッパピン64が凹所18の前端に係合していることにより、矢印B方向への回動も規制される。すなわち、固定刃カバー15は、本体カバー20が開いて固定刃14を覆った状態でロックされる。本実施形態では、ストッパピン64とストッパ85とにより、固定刃14を覆う位置に固定刃カバー15をロックするロック機構が構成されている。
【0037】
上記のように本体カバー20を開ける時は、新たな用紙を用紙収納部12に収納したりメンテナンスを行ったりする場合であり、これらの作業が終わったら、再び本体カバー20を閉じる。本体カバー20を閉じていくと、本体カバー20側のフック21が固定刃カバー15を押すことにより固定刃カバー15は矢印A方向に一旦退避し、この後、ねじりばね90の弾発力で固定刃カバー15が本体カバー20側に回動してフック16,21どうしの係合がなされ、図1および図2に示す閉状態に戻る。
【0038】
B.プリンタの基本動作
次に、上記構成からなるプリンタの基本動作を説明する。
本体カバー20を開け、用紙Sの先端部をプリンタ本体10と本体カバー20との間となる排出口の部分から引き出した後、本体カバー20を閉じてセット状態とする。上位装置からプリンタ制御部に印字命令が供給されると、サーマルヘッド13により用紙Sに対し印字が行われる。印字は、印字データに基づき、1行印字とプラテンローラ30による1行分の用紙の引き出しが繰り返されることにより行われる。所定の印字が完了したら、プラテンローラ30により用紙Sが引き出されて排出口から排出される。次いで、可動刃駆動モータ51が作動して可動刃42が1回往復動し、その往動時に用紙Sがカットされる。可動刃42の1回の往復動はウォームホイール52が1回転することによりなされ、ホームポジション検出器45がスイッチONになり、再びスイッチOFFになることで可動刃42が1回往復動したと判断され、可動刃駆動モータ51が停止する。
【0039】
C.用紙ジャムの解消
用紙Sのカット時(可動刃42の往動時あるいは復動時)に、固定刃14と可動刃42との間に用紙Sが挟み込まれるジャムが起こったら、可動刃42を備える本体カバー20を開けることによりジャムを速やかに解消することができる。すなわち、可動刃42は固定刃14における用紙搬送路の下流側であって本体カバー20の開側に重畳しているから、本体カバー20を開ける際に可動刃42が固定刃14に当たって本体カバー20の開動作が阻止されることがない。これにより、本体カバー20を開けて用紙Sのジャム部分を引き出し、用紙Sを正常に戻す作業を速やかに行うことができる。なお、ジャムが起こった時には、可動刃42はロックしてホームポジションに戻らない状態となるが、本体カバー20を開けることにより、本体カバー20が開き、かつ可動刃42がホームポジションに戻っていない状態がプリンタ制御部により判断され、可動刃駆動モータ51が作動して可動刃42はホームポジションに戻される。
【0040】
また、固定刃14と可動刃42の間のカット部分を通過した用紙Sはテンションを受けておらずフリーな状態であり、一方、カット部分の下流側の用紙Sはカット時にテンションを受けることになる。ここで、本実施形態においては、可動刃42が固定刃14の下流側に重畳していることにより、固定刃14側では用紙Sがテンションのかかった状態で固定される一方、可動刃42側では用紙Sはフリーな状態となっているので、その切れ味は良好なものとなる。また、カット用紙に傷等が付くおそれもない。本実施形態とは逆に、固定刃14の上流側に可動刃42が重畳する構成を採ると、次のような不具合を招く。すなわち、可動刃42がテンションのかかった用紙Sの干渉を受けたり固定刃14側の用紙Sがしっかりと固定されていなかったりするので、可動刃42の移動によって固定刃14側の用紙Sも移動してしまい、切れ味が比較的劣ることになり、また、可動刃42により用紙Sに傷や筋が付くおそれもある。
【0041】
D.固定刃カバーの作用
本実施形態では、本体カバー20が開状態の時に、固定刃カバー15によって固定刃14の上方が覆われ、さらにその位置が上述のようにロックされるので、本体カバー20を開けた状態で固定刃14に触れることが回避される。これは、特に用紙収納部12に用紙Sを収納する際などに、固定刃カバー15に手が触れても固定刃カバー15が動かず安全が確保されるので、有効な安全対策となる。また、本体カバー20が閉状態の時にも固定刃カバー15はロックされるので、本体カバー20が不用意に開いてプリンタの稼動に支障が生じるといった不具合が未然に防がれる。
【0042】
また、固定刃カバー15は、図3,図5,図7に示す順で本体カバー20が開いていく過程で、これら図に示すように回動するが、その回動の最中や、停止している際のいずれの状態においても、これら図で明らかなように、固定刃14との間に常に所定の間隔が空いている。すなわち、固定刃カバー15が固定刃14に接触しない状態が常に確保される。このため、固定刃14および固定刃カバー15の双方が相手から損傷を受けることがなく、特に固定刃14の刃部14aに固定刃カバー15が当たって刃欠けしてしまい、紙切り機能を損なうといった不具合の発生は起こらない。
さらに本実施形態では、カバーオープンレバー70を押し下げた時に、固定刃カバー15が連動して本体カバー20の回動端部から退避するようになされているので、本体カバー20を1つの動作でスムーズに開けることができる。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、可動刃が固定刃における用紙搬送路の下流側であって本体カバーの開側に重畳するようになされているので、固定刃の障害を受けずに本体カバーを開けることができ、その結果、本体カバーを開けて用紙ジャムを解消する作業を速やかに行うことができるとともに、良好な用紙カットの切れ味を得ることができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係るプリンタの、本体カバーが閉じた状態を示す右側面図である。
【図2】 同左側面図である。
【図3】 本発明の一実施形態に係るプリンタの、本体カバーを開ける作用の第1段階を示す右側面図である。
【図4】 同左側面図である。
【図5】 本発明の一実施形態に係るプリンタの、本体カバーが開いた状態を示す右側面図である。
【図6】 同左側面図である。
【図7】 本発明の一実施形態に係るプリンタの、本体カバーが開き、かつ固定刃カバーが固定刃を覆っている状態を示す右側面図である。
【図8】 同左側面図である。
【図9】 本発明の一実施形態に係るプリンタが備える可動刃ユニットを示す平面図である。
【符号の説明】
10…プリンタ本体
12…用紙収納部
13…サーマルヘッド(印字機構)
14…固定刃
15…固定刃カバー
20…本体カバー(ロック機構)
30…プラテンローラ(印字機構)
42…可動刃
50…駆動機構
64…ストッパピン(ロック機構)
65,66…ロックレバー(ロック機構)
70…カバーオープンレバー(カバーオープン手段)
85…ストッパ(ロック機構)
S…用紙
Claims (5)
- 用紙収納部、用紙搬送路およびこの用紙搬送路を搬送される用紙に印字を行う印字機構を有するプリンタ本体と、
このプリンタ本体に、前記用紙収納部を閉じるよう回動自在に、かつ、プリンタ本体に係脱自在に取り付けられた本体カバーと、
前記用紙搬送路における前記印字機構の下流側において用紙をカットする用紙カッタ機構とを備えたプリンタにおいて、
前記用紙カッタ機構は、
前記プリンタ本体に設けられた固定刃と、
前記本体カバーに、当該本体カバーが閉状態において前記用紙搬送路を挟んで前記固定刃に対向し、かつ、固定刃に対して往復動自在に設けられ、往動時に、固定刃における用紙搬送路の下流側であって本体カバーの開側に重畳することにより、固定刃と協同して用紙をカットする可動刃と、
この可動刃を往復動させる駆動手段と
を備えることを特徴とするプリンタ。 - 前記プリンタ本体に、閉状態における前記本体カバーの回動端部に対向し、かつ、本体カバーが開状態の時に前記固定刃を覆う固定刃カバーが設けられ、さらにこの固定刃カバーは、プリンタ本体に対する本体カバーの係脱動作を許容するよう本体カバーの回動端部から退避可能とされていることを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
- 前記固定刃カバーは、前記プリンタ本体に、前記固定刃との間に所定の間隔が空く状態で回動自在に設けられ、前記固定刃を覆う位置と、前記本体カバーから退避した位置との間を、前記固定刃との間に常に所定の間隔を保持した状態で回動することを特徴とする請求項2に記載のプリンタ。
- 前記固定刃カバーを、前記固定刃を覆う位置と、閉状態の前記本体カバーの回動端部に対向する所定位置とにそれぞれロックするロック機構が設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載のプリンタ。
- 前記プリンタ本体に、当該プリンタ本体に対する前記本体カバーの係合状態を解除して本体カバーが開くことを可能とするカバーオープン手段が設けられ、さらに、このカバーオープン手段を作動させた時に、前記固定刃カバーが連動して前記本体カバーの回動端部から退避するようになされていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のプリンタ。
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