JP3799586B2 - 車両用エアバックシステム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用のエアバックシステムに関し、特に代表的な車両としての自動車のエアバックシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、代表的な車両である自動車への運転席用及び助手席用のエアバックシステムの装着が急速に普及しつつある。これらのエアバックシステムは、緊急時に確実に展開することは言うまでもないが、一旦展開動作が行われると交換・調整しなければならない部品が発生するため、その手間や費用の観点から不用意に展開させたくないという要求がある。このようなエアバックシステムの制御において、特に助手席エアバックの展開制御は、運転席エアバックと異なり助手席に乗員が着座していない場合が多く、乗員が着座しているか否かの判断が重要である。また、車両に助手席エアバックを備えた場合に新たに考慮すべき問題として、乳幼児を着座させる所謂チャイルドシートを助手席に装着した場合の展開制御の問題がある。これは、助手席にチャイルドシートを前向きに装着した場合は助手席エアバックの展開を許容すべきであるが、チャイルドシートを後ろ向きに装着した場合は、助手席エアバックの展開によるチャイルドシート及びそのチャイルドシートに着座している乳幼児への衝撃を防止する必要が有るため、助手席エアバックの展開は禁止しなければならないという問題である。
【0003】
この問題を解決する手法として、例えば特開平7−196006号にはエアバック収納部近傍に光学式等の距離センサを備えてチャイルドシートの有無を検出する手法が開示されている。また、特開平8−58522号には、距離センサとシート内に備えられた重量センサ等を併用してエアバックの展開の要非を制御する手法が開示されている。また、特開平7−165011号や特開平7−267044号には、シート内に送受信機構を設けてチャイルドシートとの通信を行うことによりチャイルドシートの有無を検出する手法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例において、前記のような距離センサを使用する場合は、判定精度が信頼性に欠けるという問題がある。また、シートとチャイルドシートとの間で通信を行う従来例においては、チャイルドシートの装着が前向きの場合や位置が不正確な場合等におけるエアバックの展開要非の制御について具体的な開示がなされていない。
【0005】
そこで本発明は、チャイルドシートの装着状態に応じて適切にエアバックの展開の要非を制御可能な車両用エアバックシステムの提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の車両用エアバックシステムは、以下の構成を特徴とする。
【0007】
即ち、車両用シートに乗員が着座しているか否かを検出する乗員検出手段と、前記車両用シートに装着するチャイルドシートに設けられたトランスポンダとの間で所定の通信を行い、該チャイルドシートの向きと位置ずれが生じているか否かと前記トランスポンダからの信号が異常か否かとを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果が前記チャイルドシートの向きが該車両の前方向であることを示す場合にはエアバックの展開を許容し、該車両の後ろ方向であることを示す場合には該エアバックの展開を禁止する制御手段と、を備える車両用エアバックシステムであって、前記制御手段は、前記判定手段の判定結果が前記位置ずれが生じていることを示す場合には、前記乗員検出手段の検出結果に関わらず、前記エアバックの展開を禁止し、前記判定手段の判定結果が前記トランスポンダからの信号が異常であることを示す場合には、前記乗員検出手段により乗員の着座が検出された場合は前記エアバックの展開を許容し、検出されない場合は前記エアバックの展開を禁止することを特徴とする。
また、車両用シートに乗員が着座しているか否かを検出する乗員検出手段と、前記車両用シートに装着するチャイルドシートに設けられたトランスポンダとの間で所定の通信を行い、該チャイルドシートの向きと位置ずれが生じているか否かと前記トランスポンダのハード異常とを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果が前記チャイルドシートの向きが該車両の前方向であることを示す場合にはエアバックの展開を許容し、該車両の後ろ方向であることを示す場合には該エアバックの展開を禁止する制御手段と、を備える車両用エアバックシステムであって、前記制御手段は、前記判定手段の判定結果が前記位置ずれが生じていることを示す場合には、前記乗員検出手段の検出結果に関わらず、前記エアバックの展開を禁止し、前記判定手段の判定結果が前記トランスポンダのハード異常であることを示す場合には、前記乗員検出手段により乗員の着座が検出された場合は前記エアバックの展開を許容し、検出されない場合は前記エアバックの展開を禁止することを特徴とする。
【0009】
更に、前記制御手段が前記エアバックの展開を禁止する場合に、その旨を警告する警告手段を備え、好ましくは前記判定手段の判定結果が前記チャイルドシートの位置ずれを生じていることを示す場合に、その旨を警告するとよい。これにより、現在のエアバックの制御状態を乗員に知らしめると共に、チャイルドシートが位置ずれの場合にはその位置ずれを是正する乗員の目安とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るエアバックシステムが、代表的な車両である自動車に適用された実施形態を図面を参照して説明する。
【0011】
【第1の実施形態】
はじめに、本実施形態におけるエアバックシステムの概要を図1及び図2を参照して説明する。
【0012】
図2は、本発明の第1の実施形態としてのエアバックシステムが備えられた自動車の概略図である。
【0013】
図中、自動車1には、運転席10の乗員のための運転席エアバック2(展開状態を示す)がステアリングホイール6の内部に、そして助手席13の乗員のための助手席エアバック3(展開状態を示す)が助手席エアバック収納部5の内部に備えられている。また、自動車1の車体には、外部からの衝撃を検知する不図示の衝撃検知センサが複数備えられている。153は、助手席エアバックの現在の制御状態を表わす状態表示ランプであり、例えば助手席エアバック3の展開を禁止している時に点灯し、展開を許容しているときは消灯しているものとする。154は、状態切替スイッチであり、乗員が自ら助手席エアバック3の展開の要非(展開を許容/禁止)を切り替える場合に操作される。また、運転席10及び助手席13の車体側方と後部座席9の両側とに、それぞれ側方方向からの衝撃を緩和するサイドエアバック4(展開状態を示す)を備えてもよい。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態としてのエアバックシステムの概要を示す構成図である。
【0015】
図中、本実施形態におけるエアバックシステムの制御ユニット11は、自動車1の車体に複数備えられて外部からの衝撃を検知する衝撃検知センサ14、チャイルドシート12の装着状態を通信するシートセンサユニット18(詳細は後述する)、助手席エアバック3を展開させる助手席用インフレータ16、運転席用エアバック2を展開させる運転席インフレータ17、助手席エアバック3の現在の制御状態を表わす運転席10の前方の計器パネル15内に設けられた状態表示ランプ151、助手席エアバック3の故障状態を表わす運転席10の前方の計器パネル15内に設けられた故障警告ランプ152、そして前述の状態表示ランプ153及び状態切替スイッチ154等が接続されている。尚、サイドエアバック4を装着した場合は、更にサイドエアバックを展開させるインフレータが制御ユニット11に接続されることは言うまでもない。
【0016】
また、詳細は後述するが、同図は助手席13にチャイルドシート12が装着された状態を示している。シートセンサユニット18には、助手席13内に埋め込まれて乗員の着座の有無を重量により検知する乗員検知センサ133と助手席13の内部に埋め込まれた受信アンテナ131及び送信アンテナ132とが接続されており、チャイルドシート12に備えられたトランスポンダ121との間で無線通信を行うと共に、受信アンテナ131が受信した信号を所定のフォーマットに基づいて変換し、制御ユニット11に送信する。
【0017】
尚、本実施形態では、以下に制御ユニット11による助手席エアバック3の展開要非の制御について説明するが、実際にはサイドエアバック4の展開制御も行われることは言うまでもない。
【0018】
<制御ユニット及びシートセンサユニットの機器構成>
次に、制御ユニット11及びシートセンサユニット18の機器構成を図3及び図4を参照して説明する。
【0019】
図3は、本発明の第1の実施形態としての制御ユニット11の概略を示すブロック構成図である。
【0020】
図中、通信インタフェース(I/F)102は、シートセンサユニット18と接続されて所定のシリアル通信を行う(詳細は後述する)。センサ入力インタフェース(I/F)103には、衝撃検知センサ14からの入力信号が入力される。操作入力インタフェース(I/F)104には、切替スイッチ154からの切替信号が入力される。出力インタフェース(I/F)107は、助手席用インフレータ16や運転席インフレータ17に展開信号を出力する。状態通知インタフェース(I/F)108は、状態表示ランプ151,153や故障警告ランプ152の点灯/消灯を行う(尚、後述の第2の実施形態では警告ブザーのオン・オフにも使用する)。ROM(リードオンリメモリ)105には、本実施形態で後述する助手席エアバックの展開制御やシートセンサユニット18との通信プログラムや各種の固定パラメータ等が予め格納されている。RAM(ランダムアクセスメモリ)106は、制御プログラム動作時のワーキングエリア及び可変パラメータ等が一時記憶される。これらの各構成は、バス109により互いに接続されており、ROM105に記憶されている制御プログラムに従って動作するCPU101により制御される。
【0021】
図4は、本発明の第1の実施形態としてのシートセンサユニット18の概略を示すブロック構成図である。
【0022】
図中、送信回路202は、送信アンテナ132から所定の周波数Faを送出する。受信回路203F,203Rは、受信アンテナ131F,131Rにより外部からの電波を受信する。通信インタフェース(I/F)206は、制御ユニット11と接続されて所定のシリアル通信を行う(詳細は後述する)。ROM(リードオンリメモリ)204には、受信回路203F,203Rに受信した信号及び乗員検知センサ133からの入力信号を所定のフォーマットに変換し、制御ユニット11に送信する通信プログラムや各種の固定パラメータ等が予め格納されている。また、ROM204には、チャイルドシート13及び/または乗員検知センサ133のハード不良を検出可能なプログラムも格納されているものとする。RAM(ランダムアクセスメモリ)205は、通信プログラム動作時のワーキングエリア及び可変パラメータ等が一時記憶される。これらの各構成は、バス209により互いに接続されており、ROM204に記憶されている通信プログラムに従って動作するCPU201により制御される。
【0023】
<制御ユニット・シートセンサユニット間の通信構成>
次に、制御ユニット11とシートセンサユニット18間のシリアル通信について、図5及び図6を参照して説明する。
【0024】
図5は、本発明の第1の実施形態としての通信フォーマットを示す図である。本実施形態では、一例として制御ユニット11とシートセンサユニット18間のシリアル通信に図5に示す13ビットのデータビットと2ビットのパリティビットとからなるプロトコルを使用する。これらのビットの割り付けを説明すれば、ビット0及びビット1は、乗員検知センサ133による助手席乗員の検知結果を表わす乗員検知フィールドである。ビット2からビット7は、チャイルドシート12の装着状態を表わすチャイルドシート状態フィールドである。ビット8からビット12は、予備のビットである。そして、ビット13は奇数ビットのパリティビットであり、ビット14は偶数ビットのパリティビットである。これらのパリティビットを使用して、制御ユニット11の通信インタフェース102は一般的な手法によって通信誤りを検出する。また、本実施形態では、これらの各ビットの「0」及び「1」の表現をビット長の違いにより表現している。このような構成のシリアルデータが、所定の周期でシートセンサユニット18から制御ユニット11に送出されるものとする。その一例を図6に示す。
【0025】
図6は、本発明の第1の実施形態としての通信データの一例を説明する図であり、同図は送出されたデータ「001000001001011」の状態を示している。尚、各ビットの「0」または「1」の組み合わせにより表わされる具体的な内容の説明は省略するが、シートセンサユニット18から制御ユニット11に送出されるデータの説明は図10を参照して後述する。
【0026】
<助手席とチャイルドシート間の通信>
次に、助手席13とチャイルドシート12間の通信について説明する。本実施形態では、助手席13にチャイルドシート12が装着されているか否か、そして装着されている場合にはどのような状態で装着されているかを検出するために助手席13とチャイルドシート12間で無線通信を利用する。その概要を述べれば、助手席13側の送信アンテナ132から所定の周波数Faを常時送出する。チャイルドシート12を助手席13に装着すると、チャイルドシート12に備えられたトランスポンダ121は、送信アンテナ132からの周波数Faを受信し、その周波数Faとは異なる所定の周波数Fbを送出する。この周波数Fbを助手席13側の受信アンテナ131F及び/または受信アンテナ131Rで受信した状態に基づいて、チャイルドシート12の装着の有無と共に向きをも検出する。また、本実施形態においてトランスポンダ121は、送信アンテナ132からの周波数Faにより受動的に駆動される構造を備えるものとする。従って、周波数Faは、トランスポンダ121を駆動するのに必要十分な出力を有するものとする。このような構成にした理由としては、チャイルドシート12に一般的な電池駆動による送受信回路を使用した場合、その電池容量や取り扱いの激しさによる送受信動作の停止が安全上大きな問題となることが予想されるためである。従って、更に好ましくは、トランスポンダ121は液体によるショート等を防止するため密封構造にするとよい。尚、このような問題を解決できるのであれば、例えばチャイルドシートには送信回路を備え、そして助手席側には受信回路を備える構成としても良いことは言うまでもない。
【0027】
また、トランスポンダ121には、不図示のブザー(及び/またはランプ)が設けられており、送信アンテナ132からの電波により動作が開始されると自己診断を行い、正常であれば当該ブザーを所定時間発報(及び/または当該ランプがトランスポンダ121動作中常時点灯)するように構成されている。これにより、チャイルドシートがフェイルしているか否かを使用者が判断できる。
【0028】
次に、図7及び図8を参照して助手席13とチャイルドシート12の構成を説明する。
【0029】
図7は、本発明の第1の実施形態としての助手席13に備えられたアンテナを説明する図である。同図は、助手席13を上から眺めた状態を示しており、シート座面内部には、シートセンサユニット18の送信回路202から出力された周波数Faの信号を外部に送出する送信アンテナ132、外部から受信した信号をシートセンサユニット18の受信回路203F,203Rにそれぞれ入力する受信アンテナ131F,131Rが備えられている。本実施形態では、同図に示すように送信アンテナ132はシート座面と略同様の大きさの□型の形状であり、受信アンテナ131Fはシート座面の前方半分、そして受信アンテナ131Rはシート座面の後方半分と略同様の大きさの□型の形状としている。シートセンサユニット18の受信回路203F,203Rは、それぞれトランスポンダ121からの周波数Fbを受信する訳であるが、CPU201はこれらの2つの受信回路が受信した信号強度の違いを相対的に比較することによってトランスポンダ121がどちらの受信アンテナの範囲に位置するかを判断する。また、どちらの受信アンテナの範囲に位置する場合であっても、それぞれの受信回路における信号強度が所定のしきい値より小さい場合には、チャイルドシート12が正しく装着されていない(ずれている)と判断する。
【0030】
図8は、本発明の第1の実施形態としてのチャイルドシート12に備えられたトランスポンダを説明する図である。同図は、チャイルドシート12を上から眺めた状態を示しており、シート座面内部または底部の前方には、トランスポンダ121が備えられている。尚、チャイルドシート12には、シートベルト122も設けられている。
【0031】
<チャイルドシートの装着状態>
次に、助手席13へのチャイルドシート12の装着状態を図9を参照して説明する。
【0032】
図9は、本発明の第1の実施形態としてのチャイルドシートの装着状態のバリエーションを示す図である。同図において、(A)から(D)はそれぞれ助手席13にチャイルドシート12が装着された状態、または助手席13上に置かれた状態を、図面の記載の便宜上助手席13の受信アンテナ131F,131R及びチャイルドシート12のトランスポンダ121(何れも実線で示す)により表わしている。また、矢印は助手席13の前方を表わす。以下、(A)から(D)の状態を順に説明する。
【0033】
(A)は、チャイルドシート12が前向きに正常に装着された状態を示しており、トランスポンダ121が受信アンテナ131Fの範囲に位置している。この場合、シートセンサユニット18は、受信回路203Fによりトランスポンダ121からの周波数Fbを受信することによりチャイルドシート12が前向きに正常に装着されていることを検出する。
【0034】
(B)は、チャイルドシート12が後ろ向きに正常に装着された状態を示しており、トランスポンダ121が受信アンテナ131Rの範囲に位置している。この場合、シートセンサユニット18は、受信回路203Rによりトランスポンダ121からの周波数Fbを受信することによりチャイルドシート12が後ろ向きに正常に装着されていることを検出する。
【0035】
(C)は、チャイルドシート12が前向きに斜めに装着された状態を示しており、トランスポンダ121が受信アンテナ131Fの範囲に位置しているが、この場合、シートセンサユニット18は、チャイルドシート12のずれにより受信回路203Fが所定の信号強度を受信できないので異常と判断する。また、チャイルドシート12が後ろ向きにずれている場合も同様の判断を行うものとする。
【0036】
(D)は、チャイルドシート12が横向きに置かれた状態を示しており、トランスポンダ121が受信アンテナ131Fと131Rとの両方にまたがって位置している。このような場合、シートセンサユニット18は、受信回路203Fと203Rにより得られる信号強度を相対的に比較してチャイルドシート12が横向きに置かれた状態であると判断する。
【0037】
<エアバック展開の要非判断>
次に、本実施形態におけるエアバックシステムのエアバック展開の要非判断について、図10を参照して具体的に説明する。
【0038】
図10は、本発明の第1の実施形態としてのエアバックシステムにおけるエアバック展開の要非判断を説明する図である。
【0039】
同図の縦の欄は、制御ユニット11におけるエアバック展開の要非判断の判断要素である。以下、各要素を説明すれば、
「チャイルドシート(同図ではC・S)位置ずれ」は、シートセンサユニット18により検出したチャイルドシート13の位置ずれを表わす。
「入力信号異常」は、チャイルドシート13及び/または乗員検知センサ133からシートセンサユニット18に入力された信号が所定のものではない場合を表わす。
「ハード不良」は、シートセンサユニット18が検出したチャイルドシート13及び/または乗員検知センサ133のハード異常を表わす。
「C・S前向き検出」は、シートセンサユニット18によりチャイルドシート13が前向きに装着されていることを検出した場合を表わす。
「C・S後ろ向き検出」は、シートセンサユニット18によりチャイルドシート13が後ろ向きに装着されていることを検出した場合を表わす。
「C・S無し」は、シートセンサユニット18によりチャイルドシート13が検出できない場合と、チャイルドシート13のハードが完全にフェイルしたことをシートセンサユニット18により検出した場合を表わす。
上記の判断要素は、図5の通信データの内容である。
【0040】
また、同図の横の欄は、制御ユニット11におけるエアバック展開の要非判断の判断要素である。以下、各要素を説明すれば、
「乗員検知」は、乗員検知センサ133により乗員有りを検知した場合を表わす。
「乗員未検知」は、乗員検知センサ133により乗員を検知していない場合を表わす。
「乗員検知センサ不良」は、乗員検知センサ133のハードが完全にフェイルした場合、即ち乗員検知センサ133からの信号が全く得られない場合を表わす。上記の判断要素は、図5の通信データの内容である。
【0041】
また、同図中の「A・B」は助手席エアバック3であり、展開を許容する場合を「○」、展開を禁止する場合を「×」で表わす。「状態表示」は、状態表示ランプ151,153の表示状態であり、「ON」は点灯(本実施形態では助手席エアバック3の展開禁止状態)、「OFF」は消灯(本実施形態では助手席エアバック3の展開許容状態)を表わす。そして、「警告表示」は、故障警告ランプ152の表示状態であり、「ON」は点灯(本実施形態では乗員検知センサ133の完全フェイルまたは自己診断機能によるハード異常、チャイルドシート13の自己診断機能によるハード異常)、「OFF」は消灯(本実施形態では乗員検知センサ133及びシートセンサユニット18の正常動作)を表わす。
【0042】
次に、図10の各欄の内容を説明する。
「C・S位置ずれ」の場合は、助手席13における乗員の検知状態に関らずに助手席エアバック3の展開を禁止する。これは、位置ずれではあるが、前向きか後ろ向きにチャイルドシート12が実際に装着されていることを検出できたからである。尚、位置ずれにおいて展開禁止とするのは、チャイルドシート12自体にもシートベルト122があるため、安全上最も問題となるチャイルドシート12が後ろ向きの場合に助手席エアバック3の展開を禁止することを優先するためである。尚、受信アンテナ131F,131Rの大きさをそれぞれ小さくしたり、送信及び/または受信信号の出力を調整することにより位置ずれの許容範囲を小さくすることができる。
「入力信号異常」の場合は、乗員を未検知の場合以外は助手席エアバック3の展開を許容する。これは、乗員を検知した場合に展開を許容することは言うまでもないが、乗員検知センサ133が完全フェイルの場合でも乗員が着座しているかもしれないことに対応するためである。
「ハード不良」の場合は、乗員を未検知の場合以外は助手席エアバック3の展開を許容する。これは、乗員を検知した場合に展開を許容することは言うまでもないが、乗員検知センサ133が完全フェイルの場合でも乗員が着座しているかもしれないことに対応するためである。
「C・S前向き検出」の場合は、助手席13への乗員の検知状態に関らずに助手席エアバック3の展開を許容する。これは、チャイルドシート12が前向きに正常に装着されていることを検知したからである。
「C・S後ろ向き検出」の場合は、助手席13への乗員の検知状態に関らずに助手席エアバック3の展開を禁止する。これは、チャイルドシート12が後ろ向きに正常に装着されていることを検知したからである。
「C・S無し」の場合は、乗員を未検知の場合以外は助手席エアバック3の展開を許容する。これは、乗員を検知した場合に展開を許容することは言うまでもないが、乗員検知センサ133が完全フェイルの場合でも乗員が着座しているかもしれないことに対応するためである。
【0043】
<状態確定処理>
次に、状態確定処理について図11から図15を参照して説明する。この処理は、各状態検出部からの出力の一時的な変化よって助手席エアバック3の展開の要非の制御が頻繁に切り換えられることを防止するためのものであり、例えば乗員検知センサ133からの出力が変化した場合であっても、所定の時間継続してはじめて状態変化を確定する。以下に説明する状態確定処理(図11から図15)における処理の構成は、乗員検知の確定処理だけでなく、本実施形態及び後述の他の実施形態におけるチャイルドシート12の有無の検出、向きの検出、そして位置ずれの検出にも同様に使用する。但し、タイマ設定値はそれぞれの処理に適当な値を設定することは言うまでもない。
【0044】
図11から図13は、本発明の実施形態としての状態確定処理に使用する内部パラメータを示す図である(乗員検知の確定の場合)。図11には、乗員検知センサ133が乗員ありを検出したことを表わすフラグSPPDと乗員ありの状態が確定したことを表わすフラグXPPDとが定義されている。図12には、乗員の検知状態の継続をカウントするためのセットカウンタCSPPDとリセットカウンタCRPPDとが定義されている。そして図13には、乗員の検知状態の確定を決定するためのセットタイマTSPPD1,2とリセットタイマTRPPD1,2とが定義されており、一例としてそれぞれ4秒、8秒としている。
【0045】
図14は、本発明の第1の実施形態としての状態確定時間の設定処理を示すフローチャートである。この設定処理は、不図示のイグニッションキーONによるイニシャルスタート時に乗員の検知状態の確定を短時間に行うために制御ユニット11にて実行されるものである。
【0046】
図中、イグニッションキーONによるイニシャルスタートかを判断する(ステップS11)。ステップS11でNOの場合は、8秒(TSPPD2)を状態確定セットタイマ値(TSPPD)とし、8秒(TRPPD2)を状態確定リセットタイマ値(TSPPD)として設定する。一方、ステップS11でYESの場合は、ステップS12と同様にそれぞれのタイマに4秒を設定する。
【0047】
図15は、本発明の第1の実施形態としての状態確定処理を示すフローチャートであり、図14の処理により設定された状態確定時間を用いて乗員の助手席13への着座の有無を確定するために制御ユニット11にて実行される。
【0048】
図中、現在の乗員検知センサ133の出力状態としてフラグSPPDが1(1で乗員ありとする)か否かを判断する(ステップS21)。ステップS21でYESの場合は、CSPPDを1加算すると共にCRPPDをリセットする(ステップS22)。次に、現在のCSPPDのカウント値と図14の処理により現在設定されているTSPPDの値を比較し(ステップS23)、YESの場合はまだ乗員ありの確定はできないためそのままリターンする。一方、ステップS23でNOの場合は、乗員ありが確定できるためXPPDを1にセットし(ステップS24)、リターンする。一方、ステップS21でNOの場合は、CRPPDを1加算すると共にCSPPDをリセットする(ステップS25)。次に、現在のCRPPDのカウント値と図14の処理により現在設定されているTRPPDの値を比較し(ステップS26)、YESの場合はまだ乗員無しの確定はできないためそのままリターンする。一方、ステップS26でNOの場合は、乗員無しが確定できるためXPPDを0にリセットし(ステップS27)、リターンする。
【0049】
<助手席エアバック展開要非の切替処理>
図16は、本発明の第1の実施形態としての助手席エアバック展開要非の切替処理を示すフローチャートである。この切替処理は、シートセンサユニット18から受信した前述の通信データに基づいて制御ユニット11にて実行される。
【0050】
図中、イグニッションキーがONにされて処理が開始されると、シートセンサユニット18が不良であるかを判断し(ステップS31)、YESの場合は故障警告ランプ152をONにし(ステップS41)、後述のステップS42に進む。一方、ステップS31でNOの場合は、入力信号異常であるを判断し(ステップS32)、YESの場合は後述のステップS42に進んで乗員検知センサ133の出力が有るかどうかを判断する。
【0051】
ステップS32で入力信号異常でない場合は、ステップS33からステップS35でチャイルドシート12が有るか否か、有る場合は前向きか後ろ向きかを順次判断する。
【0052】
ステップS33でチャイルドシート12が無い場合は、乗員検知センサ133の出力が有るかどうかを判断し(ステップS42)、NOの場合は乗員検知センサ133の故障であるため故障警告ランプ152をONにし(ステップS44)、後述のステップS36に進む。一方、ステップS42でYESの場合は、乗員の検知状態かを判断し(ステップS43)、後述のステップS36に進んで助手席エアバック3の展開を許容する。一方、ステップS43でNOの場合は、助手席エアバック3の展開を禁止し(ステップS45)、状態表示ランプ151,153をONにし(ステップS46)、リターンする。
【0053】
ステップS34でチャイルドシート12が後ろ向きの場合は、前述のステップS45以降の処理を同様に行う。
【0054】
ステップS35でチャイルドシート12が前向きではない場合は、チャイルドシート12が位置ずれを起していることを表わす。この場合は、乗員検知センサ133の出力が有るかどうかを判断し(ステップS38)、NOの場合は乗員検知センサ133の故障であるため故障警告ランプ152をONにし(ステップS39)、助手席エアバック3の展開を禁止する(ステップS45)。一方、ステップS38でYESの場合は、直接ステップS45に進んで助手席エアバック3の展開を禁止する。そして、ステップS46では乗員にチャイルドシート12の位置ずれを知らせるために状態表示ランプ151,153を点滅させるものとする。これは、乗員がチャイルドシート12の位置ずれを状態表示ランプ151,153の点滅によって把握した際、その位置ずれを是正する目安として状態表示ランプ151,153の点灯状態を利用できるようにするためのものである。即ち、チャイルドシート12が実際には前向きの状態で位置ずれを起している場合は、乗員による位置ずれの是正動作により同ランプは点滅状態から消灯状態に変化する。一方、チャイルドシート12が実際には後ろ向きの状態で位置ずれを起している場合は、乗員による位置ずれの是正動作により同ランプは点滅状態から常時点灯状態に変化する。乗員はこれらの点灯状態の変化を位置ずれを直す際の判断に利用するわけである。
【0055】
<シートセンサユニットにおける乗員検知処理>
次に、シートセンサユニット18における乗員検知処理について説明する。
【0056】
まず、前述の「C・S無し」の状態を考えると、チャイルドシート12が無い状態には、チャイルドシート12が完全にフェイルしている場合が含まれるため、実際には助手席13にチャイルドシート12が後ろ向きに装着されていても検出できない可能性が有る。前述したように、トランスポンダ121には、不図示のブザー(及び/またはランプ)が設けられており、使用者はチャイルドシート12の動作状態を把握可能ではあるが、この場合図10に示すように、乗員検知センサ133が乗員を検知している場合は助手席エアバック3の展開が許容されるため、チャイルドシート12に実際には乳幼児が着座している場合には好ましくない。
【0057】
そこで、チャイルドシート12が無い状態の場合には、後述する乗員検知処理によって乗員検知センサ133による乗員の検知が所定の状態以外は行われないように、即ち乗員が未検知であるように出力することにより、完全にフェイルしているチャイルドシート12が実際には助手席3に装着され、且つ乳幼児が着座している場合の助手席エアバック3の展開を禁止する。ここで、前記の状態の場合にチャイルドシート12の向きに関らず助手席エアバック3の展開を禁止する理由は、助手席エアバック3が展開した際の乳幼児への衝撃を考慮すると、チャイルドシート12が後ろ向きに装着されている場合が、後ろ向き以外の向きに装着されている場合と比較して問題となるからである(但し、乳幼児はシートベルト122によりチャイルドシート12に固定されているものとする)。
【0058】
次に、本実施形態におけるシートセンサユニット18による乗員検知処理を具体的に説明すれば、シートセンサユニット18は、重量センサである乗員検出センサ133の出力を検知した際、所定のしきい値Aと比較し、そのしきい値より大きい場合は乗員検知(乗員あり)と判断する。本実施形態の場合、シートセンサユニット18は、チャイルドシート12の重量をB(Kg)、予めチャイルドシート12に規定されている保持可能な乳幼児の最大荷重をC(Kg)とすると、A>B+Cの関係が成立する場合は乗員無しと判断し、制御ユニット11に図5の通信プロトコルに従って乗員検知無しを通信する。一方、制御ユニット11は、シートセンサユニット18から乗員検知無しを受信するので、図16のフローチャートにおいてステップS33,ステップS42,ステップS43,ステップS45と進んで助手席エアバック3の展開を禁止する。
【0059】
尚、本実施形態では、エアバックシステムの動作状態を乗員にランプによって報知したが、それに限られるものではなく、音声出力を併用しても良いことは言うまでもない。
【0060】
【第2の実施形態】
次に、車速センサからの車速信号を利用した第2の実施形態を説明する。まず、本実施形態の概要を説明すれば、前述のエアバックシステムにおいて各種のセンサに一時的にノイズが重畳することによるエアバック展開の要非の切替制御が不適当に行われることを防止するために、車両の走行中には乗員の着座位置、姿勢等の状態が変化することは少ないであろうことを前提として、エアバック展開の要非を切り替える際に車速を判断要素に組み込むものである。以下、前述の第1の実施形態の構成と同じ構成の部分については説明を省略し、第2の実施形態の特徴となる部分を中心に説明する。
【0061】
図17は、本発明の第2の実施形態としてのエアバックシステムの概要を示す構成図である。図中、前述の図1(第1の実施形態)と異なる部分は、制御ユニット11のセンサ入力インタフェース103に自動車1の車速を検出する車速センサ19からの車速信号及び後述の変形例のためにドアの開閉状態を示すドアセンサ20からのドア開閉状態信号が入力されていること、そして制御ユニット11の状態通知インタフェース108から警告ブザー155(ランプでも良い)への警告信号が出力されることである。
【0062】
図18は、本発明の第2の実施形態としてのエアバック展開の切替制御の許可・禁止処理を示すフローチャートのうち、乗員検知センサ133の出力の変化を検出するフローチャートである。実際には、図18と同様のフローチャートが、チャイルドシート12の有無の検出、向きの検出、そして位置ずれの検出にも同様に存在する。
【0063】
図中、イグニッションキーがONにされて処理が開始されると、制御ユニット11は初期設定として後述のエアバック展開の要非の切替制御による切替を許可・禁止を表わすための切替許可フラグ(FL)を0にリセットする(ステップS61)。以下、FL=0で切替許可、FL=1で切替禁止とする。次に、ステップS62で車速センサ19から現在の車速Vを読み込み、ステップS63でその車速Vにより車両が走行しているかを判断するために例えば5Km/h以上であるかを判断する。ステップS63でNOの場合は、切替許可フラグを0にしてステップS62に戻る。一方、ステップS63でYESの場合は、現在車両は走行中でありエアバック展開の許容・禁止は切り替えるべきでないため切替許可フラグを1にしてステップS66に進む。
【0064】
車両の走行中は、ステップS66からステップS70のルーチンをループする。ステップS66では、乗員により状態切替スイッチ154が押下されたかを判断する。状態切替スイッチ154は、乗員の意志により現在の助手席エアバック3の展開の許容・禁止状態を変更するためのものである。ステップS66でNOの場合は、現在の車速Vを読み込み(ステップS67)、ステップS68でその車速Vが例えば3Km/h以下であるかを判断する。ステップS68でNOの場合は、乗員検知センサ133の出力の検出状態に変化が有るかを判断する(ステップS69)。これは、現在車両が走行中であるにも関らず助手席13の乗員の状態が何らかの原因により変化(乗員検知・未検知)したこと表わす。ステップS69でNOの場合は、乗員の状態に変化が無いことを表わすのでステップS66に戻る。一方、ステップS69でYESの場合は、乗員の状態に変化が生じたことを表わすので、現在の助手席13の状態が現在の助手席エアバック3の展開許容または展開禁止の制御状態と相違していることを乗員に知らせるため、ステップS70で所定時間Aだけ警告ブザー155を作動させてステップS66に戻る。
【0065】
ステップS66でYESの場合には、切替許可フラグを0にし(ステップS70)、ステップS71で所定時間Bだけ経過後にステップS62に戻る。ステップS71で所定時間Bだけ待機するのは、頻繁に展開の許容・禁止が切り換えられるのを防止するためである。また、ステップS66でYESの場合には、ステップS70の警告動作により、現在の助手席13の状態が現在の助手席エアバック3の展開許容または展開禁止の制御状態と相違していることを乗員が認知した結果、その相違を無くすために乗員が自ら状態切替スイッチ154を押下した場合が含まれる。ステップS68でYESの場合には、車両は略停車状態に近いため前記のステップS71以降と同様の処理を行う。
【0066】
次に、前記の図18の処理により制御される切替許可フラグFLの状態により変更可能な助手席エアバック展開要非の切替処理を図19を参照して説明する。
【0067】
図19は、本発明の第2の実施形態としての助手席エアバック展開要非の切替処理を示すフローチャートである。同図は、前述の第1の実施形態(図16)と基本的には同様であり、異なる部分を説明する。
【0068】
ステップS36Cで助手席エアバックの展開を許容するのに先立って、まず、現在助手席エアバックの展開が禁止状態かを判断し(ステップS36A)、YESの場合は切替許可フラグが0であるかを判断し(ステップS36B)、YESの場合にはじめてステップS36Cで助手席エアバックの展開を許容状態に切り替える。一方、ステップS36AでNOの場合は、現在までの処理により助手席エアバックの展開が既に許容状態であるため直接ステップS36Cに進む。また、ステップS36BでNOの場合は、切り替えが禁止(FL=1)されているため現在の展開禁止状態が継続するようにステップS45Cに進む。
【0069】
ステップS45Cで助手席エアバックの展開を禁止するのに先立って、まず、現在助手席エアバックの展開が許容状態かを判断し(ステップS45A)、YESの場合は切替許可フラグが0であるかを判断し(ステップS45B)、YESの場合にはじめてステップS45Cで助手席エアバックの展開を禁止状態に切り替える。一方、ステップS45AでNOの場合は、現在までの処理により助手席エアバックの展開が既に禁止状態であるため直接ステップS45Cに進む。また、ステップS45BでNOの場合は、切り替えが禁止(FL=1)されているため現在の展開許容状態が継続するようにステップS36Cに進む。
【0070】
次に、前述の第2の実施形態の変形例を説明する。
【0071】
<第2の実施形態の変形例1>
本変形例は、前述の第2の実施形態における切替制御の許可・禁止処理に加え、前述の第1の実施形態で図11から図15を参照して説明した乗員検知等の確定処理において、車速センサ19から得られた車速Vを使用する(但しこの場合は、図13のタイマ設定値はTSPPD1>TSPPD2,TRPPD1>TRPPD2とする)。具体的には、状態確定時間の設定処理(図14)のステップS11で現在の車速が所定値か否かを判断し、所定値以上の車速であれば状態確定用のタイマTSPPD及びTRPPDを車速が所定値より遅い場合と比較して長くするものである。これは、車速が所定値以上で走行している場合、乗員の状態が変化する可能性が低いからであり、その場合は状態の確定判断にも長い設定時間を使用する。これにより、ノイズによるエアバック展開の要非の切替が不用意に行われるのを防止する。尚、車速Vを使用する本変形例の確定処理の結果は、前述の第1の実施形態における図16にて利用してもよい。
【0072】
<第2の実施形態の変形例2>
本変形例は、第2の実施形態の変形例1と同様な処理構成であるが、状態確定時間の設定処理(図14)のステップS11で、ドアセンサ20から入力されるドア開閉状態信号により車両の助手席側のドアが閉められているか否かを判断し、閉められた状態であれば状態確定用のタイマTSPPD及びTRPPDをドアが開いている場合と比較して長くするものである。これは、ドアが閉められているということは車両が走行しているであろうため、乗員の状態が変化する可能性が低いからであり、その場合は状態の確定判断にも長い設定時間を使用する。これにより、ノイズによるエアバック展開の要非の切替が不用意に行われるのを防止する。尚、ドアの開閉状態は、助手席のドアの検知が好ましいが、それに限られるものではない。
【0073】
【第3の実施形態】
次に、加速度センサからの加速度信号を利用した第3の実施形態を説明する。本実施形態の概要を説明すれば、まず、車両の走行中に何らかの原因によって大きな加速度が加わり、例えば助手席13上に装着されたチャイルドシート12が所定の位置からずれてしまった場合を考える。この場合、前述の第1の実施形態ようなエアバックシステムでは、走行中であってもチャイルドシート12の位置に変化があったことを検出してエアバック展開の要非の切替制御が不適当に行われる可能性が有る。そこで、エアバック展開の要非を切り替える際に加速度を判断要素に組み込むものである。具体的な考え方を図20を参照して説明する。
【0074】
図20は、本発明の第3の実施形態としてのエアバック展開の切替制御の許可・禁止処理を説明する図である。図中、例えばチャイルドシート12の位置に変化が生じてチャイルドシート12の検出状態が「有り」から「無し」に変化した際、加速度センサの出力値が所定のしきい値Tより大きい場合には、その検出状態の変化は何らかの非定常な原因(例えば、急制動や衝突等)により生じたものと判断し、エアバック展開の要非の切り換えを禁止してチャイルドシート12の位置に変化が生じる前の制御状態に保持して安全性を向上するものである。以下、前述の第1及び第2の実施形態の構成と同じ構成の部分については説明を省略し、第3の実施形態の特徴となる部分を中心に説明する。
【0075】
図21は、本発明の第3の実施形態としてのエアバックシステムの概要を示す構成図である。図中、前述の図1(第1の実施形態)と異なる部分は、制御ユニット11のセンサ入力インタフェース103に自動車1の加速度を検出する加速度センサ21からの加速度信号が入力されていること、そして制御ユニット11の状態通知インタフェース108から警告ブザー155(ランプでも良い)への警告信号が出力されることである。
【0076】
図22は、本発明の第3の実施形態としてのエアバック展開の切替制御の許可・禁止処理を示すフローチャートのうち、乗員検知センサ133の出力の変化を検出するフローチャートである。実際には、図22と同様のフローチャートが、チャイルドシート12の有無の検出、向きの検出、そして位置ずれの検出にも同様に存在する。この図22のフローチャートにより、第2の実施形態と同様に切替許可フラグ(FL=0で切替許可、FL=1で切替禁止)を制御してエアバック展開の切替制御の許可・禁止を行う。
【0077】
図中、イグニッションキーがONにされて処理が開始されると、制御ユニット11は初期設定として切替許可フラグ(FL)を0にリセットする(ステップS101)。次に、加速度センサ21からの加速度信号を読み込み(ステップS102)、乗員検知センサ133の出力を読み込む(ステップS103)。ステップS104では、今回読み込んだ乗員検知センサ133の出力を前回の読み込み値と比較することにより変化が生じたかを判断する。ステップS104でNOの場合は、通常状態と判断して切替許可フラグを0とし(ステップS106)、ステップS102に戻る。一方、ステップS104がYESの場合は、今回読み込んだ加速度センサ21の出力が所定のしきい値Tより大きいかを判断し(ステップS105)、NOの場合は通常状態と判断して切替許可フラグを0とし(ステップS106)、ステップS102に戻る。
【0078】
ステップS105でYESの場合は、非定常な状態が発生していることを表わすので、切替許可フラグを1とし(ステップS107)、所定時間Aだけ警告ブザー155を作動させて乗員の注意を喚起する(ステップS108)。
【0079】
次に、ステップS109では、状態切替スイッチ154が押下されたかを判断する。これは、ステップS108の警告動作により、現在の助手席13の状態が現在の助手席エアバック3の展開許容または展開禁止の制御状態と相違していることを乗員が認知した結果、その相違を無くすために乗員が自ら状態切替スイッチ154を押下したか否かを判断するものである。具体的な例としては、ワゴン車等において助手席13に着座していた乗員が後部座席に移動する際、運転者が偶然急制動を行った場合等が想定される。この場合、当初は助手席13に乗員が着座しているので助手席エアバック3は「展開許容」の状態であるが、本実施形態による処理によれば当該乗員が後部座席に移動した後も「展開許容」の状態が継続されることになる。そこで、この状態を把握した運転者(または当該乗員)が、状態切替スイッチ154を押下することにより、「展開許容」の状態から「展開禁止」の状態に変更することを想定している。従って、ステップS109で状態切替スイッチ154が押下された場合は、切替許可フラグを0とし(ステップS114)、ステップS102に戻る。
【0080】
一方、ステップS109でNOの場合は、加速度センサ21からの加速度信号及び乗員検知センサ133の出力の読み込み(ステップS111,ステップS112)を順次行い、イグニッションキーがOFFであることを検知するか(ステップS110)、または乗員検知センサ133の出力が切替許可フラグが0の時の状態に戻ったことを検知する(ステップS113)までステップS109からステップS113のルーチンを継続する。ステップS110でイグニッションキーがOFFの場合は、処理を終了する。また、ステップS113でYESの場合、即ち、乗員検知センサ133の出力が切替許可フラグが0の時の状態に戻った場合は、切替許可フラグを0とし(ステップS114)、ステップS102に戻る。ここで、ステップS113において切替許可フラグが0の時の状態に戻った場合の具体例としては、急制動により助手席13の乗員の姿勢が変化した後、改めて通常の着座姿勢になった場合が想定される。また、上記図22のフローチャートによりチャイルドシート12の有無を検知している場合においては、急制動により助手席13上のチャイルドシート12の位置が所定の位置からずれた後、急制動の反動や乗員がズレを直したために改めて当該所定の位置に戻った場合が想定される。
【0081】
尚、図22の許可・禁止処理により制約を受けるところの助手席エアバック展開要非の切替処理は、前述の第2の実施形態の図19で説明したフローチャートと同様とし、説明を省略する。
【0082】
【第4の実施形態】
本実施形態では、前述の第3の実施形態で説明した状況においてエアバック展開の要非の切替制御が不適当に行われることを防止することは同様であるが、その手段として前述の第1の実施形態における助手席エアバック展開要非の切替処理(図16)における乗員検知、チャイルドシート12の有無の検出、向きの検出、そして位置ずれの検出に、それぞれ加速度センサ21から得られた加速度信号を使用する。具体的には、前述の第1の実施形態で図11から図15を参照して説明した乗員検知等の確定処理において、図14の状態確定時間の設定処理の代わりに図23に示す処理を行う。尚、本変形例では、加速度センサ21からの加速度信号を横方向加速度及び上下方向加速度の2種類とし、それぞれしきい値をTA,TBとする。
【0083】
図23は、本発明の第4の実施形態としての状態確定時間の設定処理を示すフローチャートのうち、乗員検知センサ133の出力の変化を検出するフローチャートである。実際には、図23と同様のフローチャートが、チャイルドシート12の有無の検出、向きの検出、そして位置ずれの検出にも同様に存在する。
【0084】
図中、イグニッションキーがONにされて処理が開始されると、加速度センサ21からの加速度信号を読み込み(ステップS131)、乗員検知センサ133の出力を読み込む(ステップS132)。ステップS133では、今回読み込んだ乗員検知センサ133の出力を前回の読み込み値と比較することにより変化が生じたかを判断する。ステップS133でNOの場合は、TSPPD1及びTRPPD1を設定し(ステップS137)、リターンする。一方、ステップS133でYESの場合は、横方向加速度がしきい値TAより大きいか否かを判断する(ステップS134)。ステップS134でYESの場合はTSPPD2及びTRPPD2を設定し(ステップS136)、リターンする。ステップS134でNOの場合は、上下方向加速度がしきい値TBより大きいか否かを判断し(ステップS135)、YESの場合はTSPPD2及びTRPPD2を設定し(ステップS136)、リターンする。一方、ステップS135でNOの場合は、TSPPD1及びTRPPD1を設定し(ステップS137)、リターンする。従って、乗員検知センサ133の出力の変化と加速度センサ21からの横方向または上下方向のしきい値よりも大きい加速度信号の検出とが同時に起こった場合は、状態確定タイマの設定値を大きくすることによりエアバック展開要非の切替処理が行われるまでの時間を長くすることができる。
【0085】
上記の図23の処理以外は第1の実施形態と同様なため説明を省略する(但し、本実施形態の場合、図1のエアバックシステムの構成図において制御ユニット11に加速度センサ21の加速度信号が入力されることは言うまでもない。尚、加速度Gを使用する本変形例の確定処理の結果は、前述の第2の実施形態における図19にて利用してもよい。
【0086】
<第4の実施形態の変形例>
本変形例も、前述の第3の実施形態で説明した状況においてエアバック展開の要非の切替制御が不適当に行われることを防止することは同様である。しかしその手段として、状態確定時間の設定処理については上記の第4の実施形態で説明した図23のフローチャートにはよらずに第1の実施形態で説明した図14のフローチャートの処理とし、図15の状態確定処理の代わりに図24の処理を行う。即ち、本変形例では、乗員検知、チャイルドシート12の有無の検出、向きの検出、そして位置ずれの検出の確定処理に、それぞれ加速度センサ21から得られた加速度信号を使用する。これは、前述の第4の実施形態において非定常な状態、即ち、乗員検知センサ133の出力の変化と加速度センサ21からのしきい値よりも大きい加速度信号の検出とが同時に起こった状態が、長く変更した状態の確定時間(TSPPD2,TRPPD2)を超えて継続した場合に、制御ユニット11がエアバックの展開の要非を切り換える可能性が有るからである(但し、実際には起こる可能性はかなり低いものと考えられる)。そこで、上記の非定常な状態が継続する限りエアバックの展開の要非が切り換えられないようにするものである。
【0087】
図24は、本発明の第4の実施形態の変形例としての状態確定処理を示すフローチャートである(乗員検知の確定の場合)。実際には、図24と同様のフローチャートが、チャイルドシート12の有無の検出、向きの検出、そして位置ずれの検出にも同様に存在する。
【0088】
図24において、イグニッションキーがONにされて処理が開始されると、初期設定を行い(ステップS151)、加速度センサ21からの加速度信号を読み込み(ステップS152)、乗員検知センサ133の出力を読み込む(ステップS153)。ステップS154では、今回読み込んだ乗員検知センサ133の出力を前回の読み込み値と比較することにより変化が生じたかを判断する。ステップS154でNOの場合は、ステップS161に進む。一方、ステップS154でYESの場合は、加速度Gがしきい値Tより大きいか否かを判断する(ステップS155)。ステップS155でNOの場合は、ステップS161に進む。一方、ステップS155でYESの場合は、ステップS153で入手した今回の乗員検知センサ133の出力値を無視して前回の値を今回の読み取り値とし(ステップS156)、ステップS152に戻る。ここで、ステップS156の処理の意味を説明すれば、乗員検知センサ133の出力値を前回の値とすることにより、次回のループにおけるステップS154では再び「変化あり(YES)」の判定となる。従って、現在の加速度Gが、所定のしきい値Tより大きい(前述の非定常な状態に相当)限り、ステップS155の判断ではYESとなりステップS156,ステップS152のループを繰り返す。この場合は、ステップS161以降の処理を行わない、言い換えればステップS161からステップS137のカウント処理をホールドすることになる。従って、当該非定常な状態が継続する限りエアバックの展開の要非の切り換えを禁止することができるようになる。ステップS161以降の処理は、図15のステップS21以降の処理と同様なため説明を省略する。
【0089】
本変形例において、上記の図24の処理以外は第1の実施形態と同様なため説明を省略する(但し、本実施形態の場合、図1のエアバックシステムの構成図において制御ユニット11に加速度センサ21の加速度信号が入力されることは言うまでもない。
【0090】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、チャイルドシートの装着状態に応じて適切にエアバックの展開の要非を制御可能な車両用エアバックシステムの提供が実現する。これにより、チャイルドシート装着時のフェイルセーフ性能を向上することができる。
【0091】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態としてのエアバックシステムの概要を示す構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態としてのエアバックシステムが備えられた自動車の概略図である。
【図3】本発明の第1の実施形態としての制御ユニット11の概略を示すブロック構成図である。
【図4】本発明の第1の実施形態としてのシートセンサユニット18の概略を示すブロック構成図である。
【図5】本発明の第1の実施形態としての通信フォーマットを示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態としての通信データの一例を説明する図である。
【図7】本発明の第1の実施形態としての助手席13に備えられたアンテナを説明する図である。
【図8】本発明の第1の実施形態としてのチャイルドシート12に備えられたトランスポンダを説明する図である。
【図9】本発明の第1の実施形態としてのチャイルドシートの装着状態のバリエーションを示す図である。
【図10】本発明の第1の実施形態としてのエアバックシステムにおけるエアバック展開の要非判断を説明する図である。
【図11】本発明の実施形態としての状態確定処理に使用する内部パラメータを示す図である(乗員検知の確定の場合)。
【図12】本発明の実施形態としての状態確定処理に使用する内部パラメータを示す図である(乗員検知の確定の場合)。
【図13】本発明の実施形態としての状態確定処理に使用する内部パラメータを示す図である(乗員検知の確定の場合)。
【図14】本発明の第1の実施形態としての状態確定時間の設定処理を示すフローチャートである(乗員検知の確定の場合)。
【図15】本発明の第1の実施形態としての状態確定処理を示すフローチャートである(乗員検知の確定の場合)。
【図16】本発明の第1の実施形態としての助手席エアバック展開要非の切替処理を示すフローチャートである。
【図17】本発明の第2の実施形態としてのエアバックシステムの概要を示す構成図である。
【図18】本発明の第2の実施形態としてのエアバック展開の切替制御の許可・禁止処理を示すフローチャートである。
【図19】本発明の第2の実施形態としての助手席エアバック展開要非の切替処理を示すフローチャートである。
【図20】本発明の第3の実施形態としてのエアバック展開の切替制御の許可・禁止処理を説明する図である。
【図21】本発明の第3の実施形態としてのエアバックシステムの概要を示す構成図である。
【図22】本発明の第3の実施形態としてのエアバック展開の切替制御の許可・禁止処理を示すフローチャートである。
【図23】本発明の第4の実施形態としての状態確定時間の設定処理を示すフローチャートである(乗員検知の確定の場合)。
【図24】本発明の第4の実施形態の変形例としての状態確定処理を示すフローチャートである(乗員検知の確定の場合)。
【符号の説明】
1 自動車
2 運転席エアバック
3 助手席エアバック
4 サイドエアバック
5 助手席エアバック収納部
6 ステアリングホイール
9 後部座席
10 運転席
11 制御ユニット
12 チャイルドシート
14 衝撃検知センサ
15 計器パネル
16 助手席用インフレータ
17 運転席インフレータ
18 シートセンサユニット
19 車速センサ
20 ドアセンサ
21 加速度センサ
121 トランスポンダ
131F,131R 受信アンテナ
132 送信アンテナ
133 乗員検知センサ
151,153 状態表示ランプ
152 故障警告ランプ
154 状態切替スイッチ
155 警告ブザー
102,206 通信インタフェース
103 センサ入力インタフェース
104 操作入力インタフェース
107 出力インタフェース
108 状態通知インタフェース
105,204 ROM
106,205 RAM
109,209 バス
101,201 CPU
202 送信回路
203F,203R 受信回路
Claims (4)
- 車両用シートに乗員が着座しているか否かを検出する乗員検出手段と、
前記車両用シートに装着するチャイルドシートに設けられたトランスポンダとの間で所定の通信を行い、該チャイルドシートの向きと位置ずれが生じているか否かと前記トランスポンダからの信号が異常か否かとを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果が前記チャイルドシートの向きが該車両の前方向であることを示す場合にはエアバックの展開を許容し、該車両の後ろ方向であることを示す場合には該エアバックの展開を禁止する制御手段と、を備える車両用エアバックシステムであって、
前記制御手段は、
前記判定手段の判定結果が前記位置ずれが生じていることを示す場合には、前記乗員検出手段の検出結果に関わらず、前記エアバックの展開を禁止し、
前記判定手段の判定結果が前記トランスポンダからの信号が異常であることを示す場合には、前記乗員検出手段により乗員の着座が検出された場合は前記エアバックの展開を許容し、検出されない場合は前記エアバックの展開を禁止することを特徴とする車両用エアバックシステム。 - 車両用シートに乗員が着座しているか否かを検出する乗員検出手段と、
前記車両用シートに装着するチャイルドシートに設けられたトランスポンダとの間で所定の通信を行い、該チャイルドシートの向きと位置ずれが生じているか否かと前記トランスポンダのハード異常とを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果が前記チャイルドシートの向きが該車両の前方向であることを示す場合にはエアバックの展開を許容し、該車両の後ろ方向であることを示す場合には該エアバックの展開を禁止する制御手段と、を備える車両用エアバックシステムであって、
前記制御手段は、
前記判定手段の判定結果が前記位置ずれが生じていることを示す場合には、前記乗員検出手段の検出結果に関わらず、前記エアバックの展開を禁止し、
前記判定手段の判定結果が前記トランスポンダのハード異常であることを示す場合には、前記乗員検出手段により乗員の着座が検出された場合は前記エアバックの展開を許容し、検出されない場合は前記エアバックの展開を禁止することを特徴とする車両用エアバックシステム。 - 更に、前記制御手段が前記エアバックの展開を禁止する場合に、その旨を警告する警告手段を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用エアバックシステム。
- 前記警告手段は、前記判定手段の判定結果が前記チャイルドシートの位置ずれを生じていることを示す場合に、その旨を警告することを特徴とする請求項3記載の車両用エアバックシステム。
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