JP3797160B2 - イオン源およびその運転方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電子放出用のフィラメントおよび当該電子反射用の反射電極を有しており、かつプラズマ生成容器内に磁界を印加する構成のイオン源に関し、より具体的には、イオンの生成効率の向上やフィラメントの長寿命化等を図る手段に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のイオン源の従来例を図12に示す。このイオン源は、バーナス型イオン源と呼ばれるものであり、同様の構造のものが、例えば特開平9−63981号公報にも開示されている。
【0003】
このイオン源は、例えば直方体状をしていて陽極を兼ねるプラズマ生成容器2を備えており、その内部にはプラズマ16の生成用のガス(蒸気の場合も含む)が導入される。このプラズマ生成容器2の壁面(長辺壁)には、イオンビーム18の引き出し用のイオン引出しスリット4が設けられている。この例では、イオンビーム18は紙面の裏側へ向けて引き出される。
【0004】
このプラズマ生成容器2の一方側(一方の短辺壁側)内には、電子eを放出するこの例ではU字状のフィラメント6が設けられている。このフィラメント6とプラズマ生成容器2との間は、絶縁物12によって電気的に絶縁されている。
【0005】
プラズマ生成容器2の他方側(即ちフィラメント6と相対向する短辺壁側)内には、フィラメント6と相対向させて、電子eを反射する対向反射電極8が設けられている。この対向反射電極8とプラズマ生成容器2との間は、絶縁物13によって電気的に絶縁されている。この対向反射電極8は、従来は、どこにも接続せずに浮遊電位にする場合と、前記特開平9−63981号公報にも記載されているように、導線28でフィラメント6の一方端(より具体的には、フィラメント電源24の負極側端)に接続してフィラメント電位にする場合とがある。
【0006】
プラズマ生成容器2内であってフィラメント6の背後に位置する箇所には、即ちフィラメント6のU字状部とその背後のプラズマ生成容器2の壁面との間には、対向反射電極8に相対向させて、電子eを反射する背後反射電極10が設けられている。この背後反射電極10とプラズマ生成容器2との間は、絶縁物12および14によって電気的に絶縁されている。この反射電極10は、従来は、フィラメント6の一端(より具体的には、フィラメント電源24の負極側端)に接続してフィラメント電位にしていた。
【0007】
プラズマ生成容器2内には、プラズマ16の生成・維持用に、プラズマ生成容器2の外部に設けられた磁界発生器20から、フィラメント6と対向反射電極8とを結ぶ軸に沿う磁界22が印加される。但し、磁界22の向きは図示とは逆でも良い。磁界発生器20は、例えば電磁石である。
【0008】
フィラメント6には、それを加熱して電子(熱電子)eを放出させるために、直流のフィラメント電源24から、直流のフィラメント電圧VF (例えば2〜4V程度)が印加される。
【0009】
フィラメント6の一端とプラズマ生成容器2との間には、両者間でアーク放電を生じさせるために、フィラメント6を負極側にして、直流のアーク電源26からアーク電圧VA (例えば40〜100V程度)が印加される。
【0010】
このイオン源における電位配置の一例を図13に示す。この例は、対向反射電極8を前記導線28でフィラメント6の一端に接続した例であるが、対向反射電極8をどこにも接続せずに浮遊電位にしても、対向反射電極8の電位はこの例と同程度に、即ちフィラメント6の電位と同程度になる。これは、浮遊電位にしていても、対向反射電極8には、プラズマ16中の軽くて移動度の高い電子がイオンよりも遙かに多く入射して、対向反射電極8は負電位に帯電するからである。
【0011】
上記アーク放電によって、プラズマ生成容器2内に導入されたガスが電離されてプラズマ16が作られる。そしてこのプラズマ16から、電界の作用で、イオンビーム18を引き出すことができる。なお、イオン引出しスリット4に対向する箇所(紙面の裏側)には、通常は、イオンビーム18を引き出す引出し電極が設けられているが、ここではその図示を省略している。
【0012】
上記プラズマ16の生成過程を詳述すると、フィラメント6から放出された電子eは、上記アーク電圧VA (フィラメント電圧VF は上記のように小さいのでここではそれを無視して説明する)によってプラズマ生成容器2に向けて加速され、この電圧VA に相当するエネルギーをもってガス分子と衝突して、当該ガス分子を電離あるいはイオン化する。これによって、プラズマ16が生成される。このプラズマ16中のイオンや電子(これにはフィラメント6から放出された熱電子も含まれる)eは、上記磁界22によって閉じ込められ、更にガス分子との衝突を繰り返すことによって、プラズマ16を生成かつ維持する。
【0013】
このプラズマ16の電位は、図13に示すように、プラズマ生成容器2の電位と両反射電極8、10の電位との間の電位になり、プラズマ16と両反射電極8、10との間には電位差が生じており、この電位差によって、フィラメント6から放出されたりプラズマ16中で生成されたりした電子eは、両反射電極8、10でそれぞれ反射されて両反射電極8、10間を往復運動するようになる。その結果、当該電子eとガス分子との衝突確率が高くなり、密度の高いプラズマ16を生成することができ、ひいてはイオンビーム18の引き出し量を多くすることができる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようなイオン源から、イオンビーム18を構成するイオンとして、2価以上の多価イオンを引き出して利用したいという要望がある。これは、多価イオンの場合は、1価イオンに比べて、同じ加速電圧で価数倍(例えば2価イオンの場合は2倍)の加速エネルギーを得ることができるので、高エネルギー化が容易になる等の理由による。
【0015】
しかしながら、上記のような従来のイオン源では、多価イオンの生成に対する配慮が成されていないので、分子イオンあるいは1価イオンに比べて、多価イオンの生成量が少なかった。即ち、プラズマ16中の多価イオンの割合、ひいてはイオンビーム18中に含まれる多価イオンの割合が高くなかった。従って、多価イオンを有効に利用することができなかった。
【0016】
そこでこの発明は、上記のようなイオン源において、多価イオンの生成効率を向上させて、イオンビーム中に含まれる多価イオンの割合を向上させることを可能にすることを一つの目的としている。その他の目的は後述する。
【0017】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るイオン源の一つは、前記背後反射電極をフィラメントから電気的に絶縁し、かつ前記フィラメント電源およびアーク電源とは別の電源であって、前記対向反射電極および背後反射電極の少なくとも一方と前記プラズマ生成容器との間に当該反射電極側を負極にして、前記アーク電圧よりも20V以上大きい直流のバイアス電圧を印加する直流のバイアス電源を設けたことを特徴としている。
【0018】
上記イオン源によれば、対向反射電極および背後反射電極の少なくとも一方の電位を、バイアス電源から印加するバイアス電圧によって、アーク電源およびフィラメント電源の出力電圧から独立して調整することができる。従って、当該反射電極で反射する電子のエネルギーや当該電子の量を、このバイアス電圧によって調整することができる。例えば、バイアス電圧を大きくするほど、反射される電子のエネルギーおよび量は大きくなる。
【0019】
上記イオン源によれば、このような高いエネルギーの電子を多くプラズマの生成に利用することが可能になるので、プラズマ中の分子、原子あるいはイオンの解離(電離)をより促進させて、多価イオンをより多く生成することが可能になる。即ち、多価イオンの生成効率を向上させて、イオンビーム中に含まれる多価イオンの割合を向上させることが可能になる。
【0020】
また、1価イオンのイオンビーム引き出しを行う場合にも、上記バイアス電圧の印加された反射電極で反射される高いエネルギーの電子を多くプラズマの生成に効率良く利用してイオンの生成効率を高めることができるので、1価イオンの生成効率を向上させて、1価イオンビームの引き出し量を多くすることも可能になる。
【0021】
また、上記イオン源によれば、上述したように、バイアス電圧の印加された反射電極で反射される高いエネルギーの電子によってガスを効率良く電離させることができるので、アーク電圧を小さくしても、プラズマの生成効率の低下を抑えて、ビーム電流の減少を抑えることができる。従って、フィラメント電流ひいてはアーク電流を大きくせずに済む。その結果、アーク電圧を小さくしてフィラメントの長寿命化を図ることも可能になる。
【0022】
このように上記イオン源によれば、イオンの生成効率向上を主眼にすれば、多価イオンや1価イオンの生成効率を高めることができる。また、フィラメントの長寿命化を主眼にすれば、アーク電圧を小さくしてフィラメントの長寿命化を図ることもできる。これは1価イオン生成、多価イオン生成のいずれにおいてもできる。また、イオンの生成効率向上とフィラメントの長寿命化とを折衷させることもできる。
【0023】
また、前記バイアス電圧をアーク電圧よりも20V以上大きくしてイオンビームを引き出すというイオン源の運転方法を採用することによって、高エネルギーの電子を多く利用することが可能になるので、上記イオンの生成効率向上やフィラメントの長寿命化等の効果を奏する
【0024】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明に係るイオン源の一例を示す概略断面図である。図12に示した従来例と同一または相当する部分には同一符号を付し、以下においては当該従来例との相違点を主に説明する。
【0025】
このイオン源では、前記背後反射電極10を、フィラメント6から電気的に絶縁している。即ち、ここでは背後反射電極10を、プラズマ生成容器2およびフィラメント6の両者から電気的に絶縁している。
【0026】
そして、この背後反射電極10と前記対向反射電極8とを、導線30で互いに電気的に接続して互いに同電位にしている。
【0027】
更に、前記フィラメント電源24およびアーク電源26とは別の電源であって、前記対向反射電極8および背後反射電極10と前記プラズマ生成容器2との間に両反射電極8、10側を負極にして直流のバイアス電圧VB を印加する直流のバイアス電源32を設けている。
【0028】
まず、多価イオンの生成効率向上の観点から説明する。
【0029】
このイオン源との比較のために、図12に示した従来のイオン源の電位配置を再び説明すると、前述したように従来の電位配置は図13に示すようなものであり、対向反射電極8および背後反射電極10の電位はフィラメント6の電位に等しいかほぼ等しい。このような電位配置の場合、背後反射電極10による電子eの反射はあまり効率が良くなく、フィラメント6から放出された電子eの内の何割かは、フィラメント6の近傍に設けられた背後反射電極10に衝突してしまい、プラズマ16の生成・維持に寄与しない。また、この背後反射電極10は、アーク電圧VA に相当する電位とさほど変わらない電位しか有していないため、この背後反射電極10で反射される電位eのエネルギーはあまり大きくない。
【0030】
一方、対向反射電極8もアーク電圧VA に相当する電位とさほど変わらない電位しか有していないため、この対向反射電極8で反射される電子eのエネルギーはあまり大きくない。また、この対向反射電極8による電子eの反射もあまり効率が良くなく、プラズマ16側に向かわずに拡散して、プラズマ生成容器2の壁面に衝突する電子eも多い。
【0031】
このような理由から、従来のイオン源では、両反射電極8、10で反射される電子eのエネルギーおよび量が小さいので、当該電子eによるプラズマ16中の分子、原子あるいはやイオンの解離があまり進まず、多価イオンの生成量が少なかったものと考えられる。
【0032】
これに対して、図1に示したイオン源では、フィラメント電源24およびアーク電源26とは別のバイアス電源32を設けているので、このバイアス電源32から出力するバイアス電圧VB によって、対向反射電極8および背後反射電極10の電位を、フィラメント電圧VF およびアーク電圧VA から独立して調整することができる。従って、両反射電極8、10で反射する電子eのエネルギーや当該電子eの量を、このバイアス電圧VB の大きさによって調整することができる。例えば、バイアス電圧VB を大きくするほど、両反射電極8、10反射させる電子eの量は多くなる。また、両反射電極8、10で反射された電子eのエネルギーも大きくなる。
【0033】
図2に、このイオン源における電位配置の例を示す。バイアス電源32から出力するバイアス電圧VB によって、対向反射電極8および背後反射電極10の電位を自由に調整することができ、従来例と違って、両反射電極8、10の電位を、フィラメント6の電位よりも負の電位にすることも可能である。従って、上述したように、両反射電極8、10で反射させる電子eのエネルギーおよび量をより大きくすることが可能である。
【0034】
このイオン源によれば、上記のような高いエネルギーの電子eを多くプラズマ16の生成・維持に利用することが可能になるので、プラズマ16中の分子、原子あるいはイオンの解離(電離)をより促進させて、多価イオンをより多く生成することが可能になる。即ち、多価イオンの生成効率を向上させて、プラズマ16中に含まれる多価イオンの割合を向上させることができる。従って、多価イオンを有効に利用することが可能になる。
【0035】
特に、両反射電極8および10の電位をフィラメント6の電位よりも負にすることによって、より高エネルギーの電子eをより多く利用することが可能になるので、多価イオンをより多く、より効率的に生成することが可能になる。
【0036】
バイアス電圧VB によって両反射電極8、10の電位をフィラメント6の電位よりもどの程度負にするのが好ましいかは、後述する図3の結果からも分かるように、例えば10V以上、より好ましくは20V以上負にするのが好ましい。
【0037】
上記は、バイアス電圧VB の好ましい領域を両反射電極8、10の電位で規定したものであるが、アーク電圧VA との関係でバイアス電圧VB の好ましい領域を規定しても良い。具体的には、バイアス電圧VB (より正確に言えばバイアス電圧VB の絶対値)をアーク電圧VA (より正確に言えばアーク電圧VA の絶対値)よりも10V以上大きくする、即ちバイアス電圧VB とアーク電圧VA との差ΔV(=|VB |−|VA |)を10V以上にすることでも良い。これによっても、両反射電極8、10で反射されたより高エネルギーの電子eをより多く利用することが可能になるので、多価イオンをより多く、より効果的に生成することが可能になる。
【0038】
また、アーク電圧VA を多価イオン生成の場合よりも小さくする等して、1価イオンのイオンビーム18の引き出しを行う場合にも、上記バイアス電圧VB の印加された反射電極8、10で反射される高いエネルギーの電子eを多くプラズマ16の生成に効率良く利用してイオンの生成効率を高めることができるので、1価イオンの生成効率を向上させて、1価イオンビーム18の引き出し量を多くすることも可能になる。これは、後述する図4〜図6の結果からも裏付けられている。
【0039】
以上要するに、このイオン源によれば、イオンの生成効率を高めることができるので、そのような効果を利用して、多価イオンをより多く引き出すことも、1価イオンをより多く引き出すことも、いずれも可能になるということである。
【0040】
なお、バイアス電源32からのバイアス電圧VB は、上記例のように対向反射電極8および背後反射電極10の両方に印加するのが最も好ましいけれども、対向反射電極8または背後反射電極10のどちらか一方だけにバイアス電圧VB を印加するようにしても良い。そのようにしても、バイアス電圧VB を印加した反射電極8または10で反射される電子eのエネルギーおよび量を前述したように大きくすることができるので、多価イオンや1価イオンの生成効率を向上させてイオンビーム18中に含まれる多価イオンあるいは1価イオンの割合を向上させる効果を奏する。反射電極8または10の一方にバイアス電圧VB を印加する場合は、背後反射電極10にバイアス電圧VB を印加する場合の方が、上述した作用によって多価イオンや1価イオンの生成効率を向上させる効果は大きい。しかし、対向反射電極8にバイアス電圧VB を印加しても、上述した作用から、従来のイオン源よりかは多価イオンあるいは1価イオンの生成効率を高めることができる。
【0041】
上記のようなバイアス電圧VB が印加される対向反射電極8および背後反射電極10には、電子eが反射されるのに比例して、プラズマ16中のイオンが、プラズマ16と両反射電極8、10間の電位差に相当するエネルギーで入射衝突する。そのために両反射電極8、10の温度は高温に上昇するので、両反射電極8、10は、その高温に耐えられる高融点材料で構成しておくのが好ましい。例えば、元素周期表の4A族(Ti 、Zr 、Hf )、5A族(V、Nb 、Ta )、6A族(Cr 、Mo 、W)の金属またはそれらの合金(例えばタングステン・イットリウム合金、タングステン・ジルコニウム合金等)で構成しておくのが好ましい。
【0042】
次に、フィラメント6の長寿命化の観点から説明する。
【0043】
従来から(例えば特許第2869558号参照)フィラメント6の寿命を長くするために、アーク電圧VA を小さくしてイオン源を運転する、即ちイオンビーム18を引き出すことが提案されている。プラズマ16中のイオン(正イオン。以下同じ)は、アーク電圧VA で加速されてフィラメント6に衝突するので、アーク電圧VA を小さくするとこのイオンによるスパッタリングによるフィラメント6の消耗を少なくすることができるからである。
【0044】
ところが、従来のイオン源において単にアーク電圧VA を小さくしたのでは、前記説明(図13参照)からも分かるように、フィラメント6から放出されたりプラズマ16中で生成されたりした電子eのアーク電圧VA による加速エネルギーも小さくなるので、当該電子eによるガスの電離効率が下がり、プラズマ16の生成効率が下がり、引き出し得るイオンビーム18の量(即ちビーム電流)が減少してしまう。
【0045】
フィラメント電源24からフィラメント6に流すフィラメント電流を大きくすることによって、フィラメント6とプラズマ生成容器2間のアーク放電の電流(即ちアーク電流。これはアーク電源26に流れる電流でもある)を大きくして対処するという考えもあるけれども、そのようにすると、フィラメント6の温度上昇が大きくなってフィラメント材料の蒸発量が多くなり、これが新たにフィラメント6の寿命を短くする原因になるので、必ずしもうまく行かない。
【0046】
これに対してこのイオン源では、上述したように、両反射電極8、10で反射する電子eのエネルギーや当該電子eの量を、バイアス電圧VB によって調整することができ、このバイアス電圧VB を大きくするほど反射される電子eのエネルギーおよび量は大きくなる。特に、前述したように、バイアス電圧VB によって両反射電極8および10の電位をフィラメント6の電位よりも負にすることによって、あるいは両反射電極8、10に印加するバイアス電圧VB をアーク電圧VA よりも10V以上大きくすることによって、より高エネルギーの電子eをより多く利用することが可能になる。そして、この両反射電極8、10で反射された高いエネルギーの電子eによってプラズマ生成容器2内のガスを効率良く電離させることができるので、アーク電圧VA を小さくしても、プラズマ16の生成効率の低下を抑えて、イオンビーム18のビーム電流の減少を抑えることができる。従って、フィラメント電流ひいてはアーク電流を大きくせずに済む。
【0047】
これをより詳しく説明すると、プラズマ生成容器2内に導入されたガスを効率良く電離させてプラズマ16を効率良く生成するためには、ガスの電離エネルギー以上のエネルギーを有する電子eを多く発生させる必要がある。従来はその電子eのエネルギーを決めていたのがアーク電圧VA である。従って、ガスの電離エネルギーに相当する電圧よりもアーク電圧VA を小さくすると、ガスの電離効率は急激に低下する。
【0048】
これに対して、例えば上記のようにアーク電圧VA よりも10V(=ΔV)以上大きいバイアス電圧VB を両反射電極8、10に印加すると、アーク電圧VA によって加速された電子eだけでなく、両反射電極8、10で反射された、アーク電圧VA に相当するエネルギーよりも高いエネルギーを有する電子eをガスの電離に利用することができる。これによって、電子eのエネルギー分布を、アーク電圧VA だけの場合よりもΔV相当ぶん高い方へシフトさせることができる。しかも、アーク電圧VA 相当のエネルギーを有する電子eとバイアス電圧VB 相当のエネルギーを有する電子とが混在することになるので、電子eのエネルギー分布におけるピーク付近のエネルギーの幅も広がる。従って、アーク電圧VA を小さくしても、ガスの電離に用いる電子eのエネルギーを、当該ガスの電離に適したエネルギー値付近に多く分布させることができる。このような作用によって、アーク電圧VA を小さくしても、ガスを効率良く電離させることができ、ビーム電流の減少を抑えることができる。
【0049】
しかも、プラズマ16中のイオンのスパッタによるフィラメント6の消耗は、前述したようにアーク電圧VA には依存するけれども、バイアス電圧VB には依存しない。つまり、バイアス電圧VB を大きくしてもフィラメント6の消耗を大きくすることにはならない。これは、両反射電極8、10は、電子eを反射するのであって、フィラメント6をスパッタするイオンをフィラメント6に向けて加速する作用は奏しないからである。
【0050】
従って、アーク電圧VA を小さくしても、アーク電流を大きくせずにビーム電流の減少を抑えることができる。その結果、アーク電圧VA を小さくしてフィラメント6の長寿命化を図ることが可能になる。
【0051】
アーク電圧VA をより小さくしてフィラメント6の寿命をより延ばしたい等の場合は、バイアス電圧VB とアーク電圧VA との差ΔVを前述した10Vよりももっと大きくすれば良い。例えば後述するより具体的な実施例からも分かるように、バイアス電圧VB をアーク電圧VA よりも20V以上大きくすると、ビーム電流の減少抑制により顕著な効果を発揮する。バイアス電圧VB によって両反射電極8、10の電位をフィラメント6の電位よりも負にする観点から言えば、例えば10V以上、より好ましくは20V以上負にするのが好ましい。
【0052】
フィラメントの長寿命化の場合も、前記と同様に、バイアス電源32からのバイアス電圧VB は、上記例のように対向反射電極8および背後反射電極10の両方に印加するのが最も好ましいけれども、対向反射電極8または背後反射電極10のどちらか一方だけにバイアス電圧VB を印加するようにしても良い。そのようにしても、バイアス電圧VB を印加した反射電極8または10で反射される電子eのエネルギーおよび量を前述したように大きくすることができ、それによってイオンの生成効率を高めることができるからである。
【0053】
フィラメントの長寿命化を図ることは、イオンビーム18を構成するイオンとして、1価のイオンを引き出す場合に限られるものではなく、前述したような2価等の多価のイオンを引き出す場合にも可能である。多価イオンを生成する場合は、1価イオンの場合に比べて、一般的に、アーク電圧VA を大きくする必要があるけれども、その場合でも、上記のようなバイアス電圧VB を印加することによって、上述したようにより小さいアーク電圧VA で済むようになるので、多価イオン引き出しの場合もフィラメント6の長寿命化を図ることが可能になる。
【0054】
以上要するに、このイオン源によれば、イオンの生成効率向上を主眼にすれば、多価イオンや1価イオンの生成効率を高めることができる。また、フィラメント6の長寿命化を主眼にすれば、アーク電圧VA を小さくしてフィラメント6の長寿命化を図ることもできる。これは1価イオン生成、多価イオン生成のいずれにおいてもできる。また、イオンの生成効率向上とフィラメント6の長寿命化とを折衷させることもできる。折衷させる場合は、アーク電圧VA の下げ方を、フィラメント6の長寿命化を主眼にする場合よりも少なくすれば良い。
【0055】
次に、多価イオンの生成効率を向上させる場合のより具体的な実施例を説明する。
【0056】
図1に示したイオン源を用いて、プラズマ生成容器2内にフッ化ホウ素(BF3 )ガスを導入して、イオンビーム18としてホウ素イオンビームを引き出したときの、当該イオンビーム中に含まれるホウ素の2価イオン(B2+)のビーム電流が、前記バイアス電圧VB によって変化する状況を測定した結果を図3中に実施例として示す。このとき、アーク電圧VA は60V、フィラメント電圧VF は約2Vにした。
【0057】
また、同図中に、同じ条件で、図12に示した従来のイオン源において、対向反射電極8を浮遊電位にした(即ち導線28を接続していない)ときのB2+ビーム電流を測定した結果を従来例として示す。従来例では、バイアス電圧VB は印加しないので、測定点の横軸の値は示していない(示しようがない)。
【0058】
実施例で、バイアス電圧VB が60Vを超すとB2+ビーム電流が急増しており、70V以上では従来例と明確な差があり、80V以上で顕著な差のあることが分かる。即ち、この例の場合、アーク電圧VA が60Vであるから、フィラメント6の電位は、プラズマ生成容器2の電位を基準に見て−60V程度であり、上記バイアス電圧VB によって両反射電極8および10の電位を−60Vよりも負にすることによって、B2+ビーム電流の増大に効果のあることが分かる。より具体的には、B2+ビームを引き出す場合は、バイアス電圧VB は70V以上が好ましく、80V以上がより好ましいと言える。換言すれば、バイアス電圧VB によって両反射電極8、10の電位をフィラメント6の電位よりも10V以上負にするのが好ましく、20V以上負にするのがより好ましい。そのようにすれば、従来例の1.5倍〜2倍程度のB2+ビーム電流を得ることができる。
【0059】
バイアス電圧VB の上限については、図3からも分かるように160Vに近づくとB2+ビーム電流の増大が飽和しており、またバイアス電圧VB をあまり大きくすると両反射電極8および10の電気絶縁が難しくなるので、当該電気絶縁の面から上限が自ずから決まってくる。
【0060】
なお、図3においてバイアス電圧VB が60Vより小さいときの測定点がないのは、バイアス電圧VB を60Vより小さくすると、バイアス電源32に大きな負荷電流が流れて測定が困難になったからである。これは、バイアス電圧VB を60Vよりも小さくすると、両反射電極8および10が電子eを反射するのとは反対に電子eを引き込んでしまうからであると考えられる。
【0061】
上記実施例は、ホウ素の2価イオンの場合の例であるが、この発明は勿論、それ以外の多価イオンの生成、引き出しにも利用することができる。例えば、リン(P)の多価イオンの生成等にも利用することができる。
【0062】
次に、フィラメント6の長寿命化を可能にする場合のより具体的な実施例を説明する。
【0063】
図1に示したイオン源を用いて、上記実施例と同様に、プラズマ生成容器2内にフッ化ホウ素(BF3 )ガスを導入して、イオンビーム18としてホウ素イオンビームを引き出したときの、当該イオンビーム中に含まれるホウ素の1価イオン(B+ )のビーム電流が、前記バイアス電圧VB によって変化する状況を測定した結果を図4〜図6に示す。このとき、アーク電圧VA は45V、60Vおよび75Vの3種、フィラメント電圧VF は約2Vにした。図4はアーク電流が1000mA、図5は同電流が2000mA、図6は同電流が3000mAの場合の結果である。
【0064】
各図において、各アーク電圧VA で最もバイアス電圧VB の低いときの測定点(即ち白抜きの測定点)が、バイアス電圧VB を印加しない場合、即ち両反射電極8、10をフロート状態にした場合であり、その場合に両電極8、10の電位が、アーク電圧VA よりも若干小さい値の電位になる、即ち図のバイアス電圧VB に相当する電位になる理由は、前述のとおりである。
【0065】
図4において、アーク電圧VA が60Vでバイアス電圧VB が印加されていない場合、ビーム電流は約110μA得られている。これに対して、アーク電圧VA が45Vでバイアス電圧VB が印加されていない場合、ビーム電流は約60μAしか得られない。大幅に減少している。しかしながら、アーク電圧VA よりも大きいバイアス電圧VB を印加してその電圧を上げて行くとビーム電流は増大し、バイアス電圧VB をアーク電圧VA よりも10V以上大きくすれば(バイアス電圧VB の値で言えば55V以上にすれば)ビーム電流は明らかに増大しているのが分かる。バイアス電圧VB をアーク電圧VA よりも20V以上大きくすれば、ビーム電流はバイアス電圧無印加時に比べて顕著に増大している。
【0066】
具体的には、アーク電圧VA を45Vに下げてもバイアス電圧VB を60〜65Vにすれば、アーク電圧VA が60Vでバイアス電圧無印加時とほぼ同程度のビーム電流が得られている。即ち、ビーム電流の減少を十分に抑えることができている。同様に、アーク電圧VA を60Vに下げてもバイアス電圧VB をアーク電圧VA よりも10V以上大きくすることによって(バイアス電圧VB の値で言えば70V以上にすることによって)、アーク電圧VA が75Vでバイアス電圧無印加時と同程度以上のビーム電流が得られている。
【0067】
図5および図6のようにアーク電流を増大させてビーム電流全体を増大させた場合も、バイアス電圧VB をアーク電圧VA よりも10V以上大きくする、より好ましくは20V以上大きくすることによって、バイアス電圧無印加時に比べてビーム電流が明らかに増大している。即ち、アーク電圧VA を45Vに下げても、ビーム電流の減少を抑えて、アーク電圧VA が60Vでバイアス電圧無印加時のビーム電流に近づけることができている。同様に、アーク電圧VA を60Vに下げても、アーク電圧VA が75Vでバイアス電圧無印加時と同程度以上のビーム電流が得られている。
【0068】
バイアス電圧VB とアーク電圧VA との差ΔVの上限については、上記図4〜図6の測定結果からも分かるように、差をある程度大きくするとビーム電流の増大が飽和するので、80V程度を上限と考えることができる。また、バイアス電圧VB 自体の大きさの上限は、上記と同様の理由から、160V程度が現実的である。
【0069】
次に、図1に示したイオン源において、プラズマ生成用のガスとしてアルゴン(Ar )ガスを用いて、アーク電圧VA を50Vと60Vの2種とし、アーク電流が2500mAで10時間連続してプラズマ16を生成させた後のフィラメント6の消耗の状況(即ちフィラメント6の直径の減少量)を測定した結果を図8に示す。このとき、バイアス電圧VB は90Vにした。また、図7に、フィラメント6の直径の測定点を示し、これは図8の横軸に対応している。
【0070】
この図8から分かるように、アーク電圧VA を60Vから50Vに低下させると、フィラメント6の消耗は大幅に減っている。具体的には、フィラメント6の先端付近での直径の減少量は半分近くに減っている。従って、フィラメント6の寿命は大幅に延びる。これは、アーク電圧VA を60Vから50Vへと10V低下させた場合の例であり、10Vよりも更に低下させるとフィラメント6の寿命がより延びることは、この結果から容易に推測できよう。
【0071】
また、この発明に係るイオン源によれば、前述したようにイオンの生成効率が向上することによって、所定のアーク電流を生成するために必要なフィラメント電流を小さくすることもできるので、それによってフィラメント6の温度を下げることができ、フィラメント6からの構成材料の蒸発速度を低下させることができ、これによってもフィラメント6の寿命を延長することができる。
【0072】
これを詳述すると、図9に、フィラメント6の材料として一般的なタングステンの蒸発速度および熱電子放射電流密度の温度特性を示す。例えば、通常の運転状態に近いフィラメント温度2800Kでの熱電子放射電流密度を半分にする温度は約2720Kであり、この場合のタングステンの蒸発速度は約4分の1(正確には1/4.3)となり、フィラメント6の寿命は4倍近くに延びる。即ち、フィラメント6の温度を約2800Kから約2720Kに下げると、熱電子放射電流密度は約半分に下がるけれども、その場合のビーム電流の減少は上記バイアス電圧VB の印加によって抑えることができ、しかもフィラメント6の寿命は約4倍に延びるということである。
【0073】
また、上記対向反射電極8および背後反射電極10の温度は、前述したように、プラズマ16からのイオンの入射衝突によって高温に上昇するので、対向反射電極8および背後反射電極10の少なくとも一方を、好ましくは両方を、フィラメント6の一般的な構成材料であるタングステンよりも熱電子放射電流密度の高い材料で構成しておいても良い。そのようにすれば、当該反射電極8、10から放出される電子をもプラズマ16の生成・維持に効果的に利用することが可能になるので、所定のアーク電流を生成するために必要なフィラメント電流をより低下させることができ、それによってフィラメント6の寿命をより延ばすことができる。
【0074】
上記のタングステン(約8.7×10-4)よりも熱電子放射電流密度の大きい材料としては、例えば、タンタル(約9.9×10-3)、モリブデン(約7.7×10-3)、ニオブ(約1.2×10-2)、ジルコニウム(約5.5×10-2)、タングステン・イットリウム合金(約4.4)、タングステン・ジルコニウム合金(約0.24)等が利用できる。各括弧内の数値は、当該材料の2000Kにおける熱電子放射電流密度を示す(単位はA/cm2 )。タングステンを基準にしたのは、熱電子放出材料としてはタングステンが一般的だからである。これらの材料の内でもタンタルは、融点も高く(約3250K)、熱電子放射電流密度も大きく、しかも価格も比較的安いので、好ましい材料の一つである。
【0075】
また、上記のように、この発明に係るイオン源によれば、イオンの生成効率が向上することによってフィラメント電流を小さくすることができるので、フィラメント電流の大きさを、イオン源の運転の初期は相対的に大きくし、その後は相対的に小さくする運転方法を採用しても良い。そのようにすれば、イオン源運転の初期には大きなフィラメント電流でプラズマ16を確実に点火させることができると共に、その後にフィラメント電流を小さくすることによって、フィラメント6の寿命をより一層延ばすことができる。
【0076】
対向反射電極8および背後反射電極10の少なくとも一方に、好ましくは両方に、上記のようなタングステンよりも熱電子放射電流密度の大きい材料を用いている場合は、上述したように、当該反射電極8、10から放出される電子をもプラズマ16の生成・維持に効果的に利用することが可能になるので、イオン源運転開始後のフィラメント電流をより一層小さくして、フィラメント6の寿命をより一層長く延ばすことが可能になる。
【0077】
また、上記のような熱電子放射電流密度の大きい材料を用いている場合には、特に両反射電極8および10に用いている場合には、プラズマ16の点火後は、当該反射電極8、10からの電子放出によってプラズマ16を維持することができる場合もあり、その場合は、イオン源の運転の初期にのみフィラメント電流を流してフィラメント6を加熱し、その後はフィラメント電流をオフ(即ち0)にすることができる。そのようにすれば、フィラメント6の寿命を非常に延長することができる。
【0078】
次に、上記バイアス電圧VB の制御によってイオンビーム18の量を制御する実施例を説明する。
【0079】
例えばイオン注入処理を行う場合に、注入条件の一つであるイオンドーズ量の変更には、通常はイオン源から引き出すイオンビームの量(即ちイオンビーム電流)を変化させることで行われる。
【0080】
図12に示したような従来のイオン源では、それから引き出すイオンビーム18の量の調整は、フィラメント電源24からフィラメント6に流すフィラメント電流を変化させてアーク電流を変化させることによって行っていた。
【0081】
このときのアーク電流は、主に、フィラメント6から放出される熱電子eの量、即ちフィラメント6の温度によって決定されるが、真空中(プラズマ生成容器2内およびその周りは真空中である)に設置されたフィラメント6の温度を変化させるためには長い時間が必要となる。即ち、アーク電流およびイオンビーム電流を変化させるためには長い時間が必要である。例えば数十秒程度は必要である。その結果例えば、当該イオン源を用いたイオン注入処理において、注入条件の変更に長い時間を要することになり、全体の処理が遅くなってしまう。
【0082】
これに対して、この発明に係るイオン源では、前記図4〜図6およびその説明からも分かるように、アーク電流を変化させなくても(即ち同一のアーク電流であっても)、バイアス電圧VB の大きさを制御(調整)することによって、引き出すイオンビーム18の量(即ちイオンビーム電流)を制御することができる。
【0083】
例えば、図4(アーク電流は1000mAで一定)において、アーク電圧VA が60Vでバイアス電圧VB が印加されていない場合、ビーム電流は約110μA得られている。これに対して、バイアス電圧VB を印加し、かつその値を大きくするとビーム電流は次第に増大し、バイアス電圧VB を120Vにするとビーム電流は約190μAにまで上昇している。
【0084】
他のアーク電圧VA の場合、および図5、図6の場合も同様に、アーク電流を一定にしておいても、バイアス電圧VB の電圧制御によってビーム電流の大きさを制御することのできることが分かる。2価イオンのイオンビーム18を引き出す場合も同様である(図3参照)。
【0085】
しかもこの場合にビーム電流を変化させるのに要する時間は、バイアス電源32から出力するバイアス電圧VB の調整に要する時間で決まり、例えば数秒程度である。これは、前述した従来のアーク電流を変化させる方法による場合の数十秒程度に比べて、約10倍も速い。このように、バイアス電源32から出力するバイアス電圧VB の大きさを制御する(この制御には、バイアス電圧VB をオン、オフさせることも含む)ことによって、イオン源から引き出すイオンビーム18の量を高速で制御することができる。
【0086】
次に、上記対向反射電極8の代わりに、もう一組のフィラメント6および背後反射電極10を設けた実施例を説明する。
【0087】
図10に示すイオン源がそれであり、以下においては図1に示したイオン源との相違点を主体に説明する。それ以外の事項については、図1のイオン源における前記説明が適用される。
【0088】
このイオン源では、図1に示した一組の(第1の)フィラメント6および背後反射電極10の他に、上記対向反射電極8の代わりとして、もう一組の(第2の)フィラメント6および背後反射電極10を設けている。即ち、二つの(第1および第2の)前述したようなフィラメント6を、プラズマ生成容器2内に相対向させて配置している。また、各フィラメント6の背後には、二つの(第1および第2の)前述したような背後反射電極10を、相対向させて配置している。
【0089】
二つのフィラメント6は、この例では、図10中の点P、Qで互いに並列接続されている。従ってこの例では、二つのフィラメント6には、共通のフィラメント電源24から加熱用のフィラメント電圧VF が印加され、かつ共通のアーク電源26からアーク放電用のアーク電圧VA が印加される。但し、この例と違って、各フィラメント6にフィラメント電源24およびアーク電源26をそれぞれ設けても良い。
【0090】
上記のようなフィラメント6および背後反射電極10を二組有するイオン源は、前記特開平9−63981号公報にも記載されているけれども、従来は、両背後反射電極10は、図12の従来例と同様、フィラメント6の一端(より具体的には、フィラメント電源24の負極側端)に接続してフィラメント電位にしていた。
【0091】
これに対して、この実施例では、図1の実施例の場合と同様、各背後反射電極10を、各フィラメント6およびプラズマ生成容器2の両者から電気的に絶縁している。そして、この例では、両背後反射電極10を導線30で互いに電気的に接続して互いに同電位にしている。
【0092】
更に、前記フィラメント電源24およびアーク電源26とは別の電源であって、両反射電極10と前記プラズマ生成容器2との間に両反射電極10側を負極にして直流のバイアス電圧VB を印加する直流の前記バイアス電源32を設けている。
【0093】
このイオン源における電位配置の一例を図11に示す。フィラメント6および背後反射電極10は、同じ電位のものが二つずつあると考えれば良い。
【0094】
このイオン源においても、バイアス電源32から両背後反射電極10に前記のようなバイアス電圧VB を印加することによって、基本的には、図1に示したイオン源の場合と同様の作用効果を奏する。
【0095】
即ち、要約して言えば、このイオン源の場合も、イオンの生成効率向上を主眼にすれば、多価イオンや1価イオンの生成効率を高めることができる。また、フィラメント6の長寿命化を主眼にすれば、アーク電圧VA を小さくしてフィラメント6の長寿命化を図ることもできる。これは1価イオン生成、多価イオン生成のいずれにおいてもできる。また、イオンの生成効率向上とフィラメント6の長寿命化とを折衷させることもできる。折衷させる場合は、アーク電圧VA の下げ方を、フィラメント6の長寿命化を主眼にする場合よりも少なくすれば良い。
【0096】
また、図1に示したイオン源の場合と同様の運転方法を採用することができ、それによって前述したような作用効果を奏することができる。
【0097】
しかもこの図10のイオン源は、図1のイオン源に比べて、フィラメント6および背後反射電極10を二組設けているので、各フィラメント6から放出させる電子量を半分にして、各フィラメント6の寿命をより一層延長させることができるという特徴を有している。
【0098】
なお、この図10のイオン源の場合も、バイアス電源32からのバイアス電圧VB は、この例のように両背後反射電極10に印加するのが最も好ましいけれども、どちらか一方の背後反射電極10だけにバイアス電圧VB を印加するようにしても良い。そのようにしても、バイアス電圧VB を印加した側の背後反射電極10で反射される電子eのエネルギーおよび量を前述したように大きくすることができるので、多価イオンや1価イオンの生成効率を向上させてイオンビーム18中に含まれる多価イオンあるいは1価イオンの割合を向上させる効果を奏する。また、アーク電圧VA を小さくしてフィラメント6の長寿命化を図ることもできる。
【0099】
【発明の効果】
この発明は、上記のとおり構成されているので、次のような効果を奏する。
【0100】
請求項1記載の発明によれば、対向反射電極および背後反射電極の少なくとも一方の電位を、バイアス電源から印加するバイアス電圧によって、アーク電源およびフィラメント電源の出力電圧から独立して調整することができるので、当該反射電極で反射する電子のエネルギーや当該電子の量を、このバイアス電圧によって調整することができる。しかも、アーク電圧よりも20V以上大きいバイアス電圧を印加するバイアス電源を設けたことによって、高いエネルギーの電子を多くプラズマの生成に利用することが可能になるので、プラズマ中のガス分子あるいはイオンの解離をより促進させて、イオンの生成効率を高めることが可能になる。
【0101】
その結果、イオンの生成効率向上を主眼にすれば、多価イオンや1価イオンの生成効率を高めることができる。また、フィラメントの長寿命化を主眼にすれば、アーク電圧を小さくしてフィラメントの長寿命化を図ることもできる。これは1価イオン生成、多価イオン生成のいずれにおいてもできる。また、イオンの生成効率向上とフィラメントの長寿命化とを折衷させることもできる。
【0102】
請求項2記載の発明によれば、対向反射電極および背後反射電極の少なくとも一方を、タングステンよりも熱電子放射電流密度の大きい材料で構成することによって、当該反射電極から放出される電子をもプラズマの生成・維持に効果的に利用することが可能になるので、所定のアーク電流を生成するために必要なフィラメント電流をより低下させることができ、それによってフィラメントの寿命をより延ばすことが可能になる。
【0104】
請求項3記載の発明によれば、第1および第2の背後反射電極の少なくとも一方の電位を、バイアス電源から印加するバイアス電圧によって、アーク電源およびフィラメント電源の出力電圧から独立して調整することができるので、当該反射電極で反射する電子のエネルギーや当該電子の量を、このバイアス電圧によって調整することができる。しかも、アーク電圧よりも20V以上大きいバイアス電圧を印加するバイアス電源を設けたことによって、高いエネルギーの電子を多くプラズマの生成に利用することが可能になるので、プラズマ中のガス分子あるいはイオンの解離をより促進させて、イオンの生成効率を高めることが可能になる。
【0105】
その結果、イオンの生成効率向上を主眼にすれば、多価イオンや1価イオンの生成効率を高めることができる。また、フィラメントの長寿命化を主眼にすれば、アーク電圧を小さくしてフィラメントの長寿命化を図ることもできる。これは1価イオン生成、多価イオン生成のいずれにおいてもできる。また、イオンの生成効率向上とフィラメントの長寿命化とを折衷させることもできる。
【0106】
しかも、フィラメントおよび背後反射電極を二組有しているので、請求項1記載の発明に比べて、各フィラメントから放出させる電子量を半分にして、各フィラメントの寿命をより一層延長させることができる。
【0107】
請求項4記載の発明によれば、第1および第2の背後反射電極の少なくとも一方を、タングステンよりも熱電子放射電流密度の大きい材料で構成することによって、当該反射電極から放出される電子をもプラズマの生成・維持に効果的に利用することが可能になるので、所定のアーク電流を生成するために必要なフィラメント電流をより低下させることができ、それによってフィラメントの寿命をより延ばすことが可能になる。
【0108】
請求項5、6記載の発明によれば、前記バイアス電圧をアーク電圧よりも20V以上大きくすることによって、それぞれ請求項1、3記載の発明と同様の効果を奏する。即ち、高エネルギーの電子を多く利用することが可能になるので、上記イオンの生成効率向上やフィラメントの長寿命化等の効果を奏する
【0109】
請求項7、8記載の発明によれば、イオン源運転の初期には大きなフィラメント電流でプラズマを確実に点火させることができると共に、その後にフィラメント電流を小さくすることによって、フィラメントの寿命をより一層延ばすことができる。
【0110】
請求項9、10記載の発明によれば、バイアス電源から出力するバイアス電圧の大きさを制御することによって、イオン源から引き出すイオンビームの量を、フィラメント電流を変化させてアーク電流を変化させる場合に比べて、高速で変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るイオン源の一例を示す概略断面図である。
【図2】図1のイオン源における電位配置の一例を模式的に示す図である。
【図3】ホウ素の2価イオンビーム電流のバイアス電圧特性の一例を示す図である。
【図4】アーク電流が1000mAの時のホウ素の1価イオンビーム電流のバイアス電圧特性の一例を示す図である。
【図5】アーク電流が2000mAの時のホウ素の1価イオンビーム電流のバイアス電圧特性の一例を示す図である。
【図6】アーク電流が3000mAの時のホウ素の1価イオンビーム電流のバイアス電圧特性の一例を示す図である。
【図7】図1中のフィラメントを拡大して示す図である。
【図8】10時間運転後の図7のフィラメントの直径の変化を測定した結果を示す図である。
【図9】タングステンの蒸発速度および熱電子放射電流密度の温度特性を示す図である。
【図10】この発明に係るイオン源の他の例を示す概略断面図である。
【図11】図10のイオン源における電位配置の一例を模式的に示す図である。
【図12】従来のイオン源の一例を示す概略断面図である。
【図13】図12のイオン源における電位配置の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
2 プラズマ生成容器
6 フィラメント
8 対向反射電極
10 背後反射電極
16 プラズマ
18 イオンビーム
20 磁界発生器
24 フィラメント電源
26 アーク電源
32 バイアス電源

Claims (10)

  1. 陽極を兼ねていてガスが導入されるプラズマ生成容器と、このプラズマ生成容器の一方側内にプラズマ生成容器から電気的に絶縁して設けられていて電子を放出するフィラメントと、前記プラズマ生成容器の他方側内にフィラメントと相対向させて、かつプラズマ生成容器から電気的に絶縁して配置されていて電子を反射する対向反射電極と、前記プラズマ生成容器内のフィラメントの背後に対向反射電極に相対向させて、かつプラズマ生成容器から電気的に絶縁して配置されていて電子を反射する背後反射電極と、前記プラズマ生成容器内にフィラメントと対向反射電極とを結ぶ軸に沿う磁界を発生させる磁界発生器と、前記フィラメントを加熱して電子を放出させるフィラメント電源と、前記フィラメントとプラズマ生成容器との間にフィラメント側を負極にして直流のアーク電圧を印加して両者間でアーク放電を生じさせる直流のアーク電源とを備えるイオン源において、
    前記背後反射電極をフィラメントから電気的に絶縁し、かつ前記フィラメント電源およびアーク電源とは別の電源であって、前記対向反射電極および背後反射電極の少なくとも一方と前記プラズマ生成容器との間に当該反射電極側を負極にして、前記アーク電圧よりも20V以上大きい直流のバイアス電圧を印加する直流のバイアス電源を設けたことを特徴とするイオン源。
  2. 前記対向反射電極および背後反射電極の少なくとも一方を、タングステンよりも熱電子放射電流密度の大きい材料で構成している請求項1記載のイオン源。
  3. 陽極を兼ねていてガスが導入されるプラズマ生成容器と、このプラズマ生成容器内にプラズマ生成容器から電気的に絶縁して、かつ相対向させて設けられていて電子をそれぞれ放出する第1および第2のフィラメントと、この第1および第2のフィラメントの背後にあってプラズマ生成容器から電気的に絶縁して、かつ相対向させて配置されていて電子をそれぞれ反射する第1および第2の背後反射電極と、前記プラズマ生成容器内に前記第1および第2のフィラメントを結ぶ軸に沿う磁界を発生させる磁界発生器と、前記第1および第2のフィラメントを加熱して電子を放出させるフィラメント電源と、前記第1および第2のフィラメントとプラズマ生成容器との間に両フィラメント側を負極にして直流のアーク電圧を印加して両フィラメントとプラズマ生成容器との間でアーク放電を生じさせる直流のアーク電源とを備えるイオン源において、
    前記第1および第2の背後反射電極を前記第1および第2のフィラメントからそれぞれ電気的に絶縁し、かつ前記フィラメント電源およびアーク電源とは別の電源であって、前記第1および第2の背後反射電極の少なくとも一方と前記プラズマ生成容器との間に当該反射電極側を負極にして、前記アーク電圧よりも20V以上大きい直流のバイアス電圧を印加する直流のバイアス電源を設けたことを特徴とするイオン源。
  4. 前記第1および第2の背後反射電極の少なくとも一方を、タングステンよりも熱電子放射電流密度の大きい材料で構成している請求項3記載のイオン源。
  5. 陽極を兼ねていてガスが導入されるプラズマ生成容器と、このプラズマ生成容器の一方側内にプラズマ生成容器から電気的に絶縁して設けられていて電子を放出するフィラメントと、前記プラズマ生成容器の他方側内にフィラメントと相対向させて、かつプラズマ生成容器から電気的に絶縁して配置されていて電子を反射する対向反射電極と、前記プラズマ生成容器内のフィラメントの背後に対向反射電極に相対向させて、かつプラズマ生成容器から電気的に絶縁して配置されていて電子を反射する背後反射電極と、前記プラズマ生成容器内にフィラメントと対向反射電極とを結ぶ軸に沿う磁界を発生させる磁界発生器と、前記フィラメントを加熱して電子を放出させるフィラメント電源と、前記フィラメントとプラズマ生成容器との間にフィラメント側を負極にして直流のアーク電圧を印加して両者間でアーク放電を生じさせる直流のアーク電源とを備えるイオン源において、
    前記背後反射電極をフィラメントから電気的に絶縁し、かつ前記フィラメント電源およびアーク電源とは別の電源であって、前記対向反射電極および背後反射電極の少なくとも一方と前記プラズマ生成容器との間に当該反射電極側を負極にして直流のバイアス電圧を 印加する直流のバイアス電源を設けておき、前記バイアス電圧を前記アーク電圧よりも20V以上大きくしてイオンビームを引き出すことを特徴とするイオン源の運転方法。
  6. 陽極を兼ねていてガスが導入されるプラズマ生成容器と、このプラズマ生成容器内にプラズマ生成容器から電気的に絶縁して、かつ相対向させて設けられていて電子をそれぞれ放出する第1および第2のフィラメントと、この第1および第2のフィラメントの背後にあってプラズマ生成容器から電気的に絶縁して、かつ相対向させて配置されていて電子をそれぞれ反射する第1および第2の背後反射電極と、前記プラズマ生成容器内に前記第1および第2のフィラメントを結ぶ軸に沿う磁界を発生させる磁界発生器と、前記第1および第2のフィラメントを加熱して電子を放出させるフィラメント電源と、前記第1および第2のフィラメントとプラズマ生成容器との間に両フィラメント側を負極にして直流のアーク電圧を印加して両フィラメントとプラズマ生成容器との間でアーク放電を生じさせる直流のアーク電源とを備えるイオン源において、
    前記第1および第2の背後反射電極を前記第1および第2のフィラメントからそれぞれ電気的に絶縁し、かつ前記フィラメント電源およびアーク電源とは別の電源であって、前記第1および第2の背後反射電極の少なくとも一方と前記プラズマ生成容器との間に当該反射電極側を負極にして直流のバイアス電圧を印加する直流のバイアス電源を設けておき、前記バイアス電圧を前記アーク電圧よりも20V以上大きくしてイオンビームを引き出すことを特徴とするイオン源の運転方法。
  7. 陽極を兼ねていてガスが導入されるプラズマ生成容器と、このプラズマ生成容器の一方側内にプラズマ生成容器から電気的に絶縁して設けられていて電子を放出するフィラメントと、前記プラズマ生成容器の他方側内にフィラメントと相対向させて、かつプラズマ生成容器から電気的に絶縁して配置されていて電子を反射する対向反射電極と、前記プラズマ生成容器内のフィラメントの背後に対向反射電極に相対向させて、かつプラズマ生成容器から電気的に絶縁して配置されていて電子を反射する背後反射電極と、前記プラズマ生成容器内にフィラメントと対向反射電極とを結ぶ軸に沿う磁界を発生させる磁界発生器と、前記フィラメントを加熱して電子を放出させるフィラメント電源と、前記フィラメントとプラズマ生成容器との間にフィラメント側を負極にして直流のアーク電圧を印加して両者間でアーク放電を生じさせる直流のアーク電源とを備えるイオン源において、
    前記背後反射電極をフィラメントから電気的に絶縁し、かつ前記フィラメント電源およびアーク電源とは別の電源であって、前記対向反射電極および背後反射電極の少なくとも一方と前記プラズマ生成容器との間に当該反射電極側を負極にして直流のバイアス電圧を印加する直流のバイアス電源を設けておき、かつ前記バイアス電圧を前記アーク電圧よりも20V以上大きくしておいて、前記フィラメント電源から前記フィラメントに流すフィラメント電流の大きさを、当該イオン源の運転の初期は相対的に大きくし、その後は相対的に小さくすることを特徴とするイオン源の運転方法。
  8. 陽極を兼ねていてガスが導入されるプラズマ生成容器と、このプラズマ生成容器内にプラズマ生成容器から電気的に絶縁して、かつ相対向させて設けられていて電子をそれぞれ放出する第1および第2のフィラメントと、この第1および第2のフィラメントの背後にあってプラズマ生成容器から電気的に絶縁して、かつ相対向させて配置されていて電子をそれぞれ反射する第1および第2の背後反射電極と、前記プラズマ生成容器内に前記第1および第2のフィラメントを結ぶ軸に沿う磁界を発生させる磁界発生器と、前記第1および第2のフィラメントを加熱して電子を放出させるフィラメント電源と、前記第1および第2のフィラメントとプラズマ生成容器との間に両フィラメント側を負極にして直流のアーク電圧を印加して両フィラメントとプラズマ生成容器との間でアーク放電を生じさせる直流のアーク電源とを備えるイオン源において、
    前記第1および第2の背後反射電極を前記第1および第2のフィラメントからそれぞれ電気的に絶縁し、かつ前記フィラメント電源およびアーク電源とは別の電源であって、前記第1および第2の背後反射電極の少なくとも一方と前記プラズマ生成容器との間に当該反射電極側を負極にして直流のバイアス電圧を印加する直流のバイアス電源を設けておき 、かつ前記バイアス電圧を前記アーク電圧よりも20V以上大きくしておいて、前記フィラメント電源から前記フィラメントに流すフィラメント電流の大きさを、当該イオン源の運転の初期は相対的に大きくし、その後は相対的に小さくすることを特徴とするイオン源の運転方法。
  9. 陽極を兼ねていてガスが導入されるプラズマ生成容器と、このプラズマ生成容器の一方側内にプラズマ生成容器から電気的に絶縁して設けられていて電子を放出するフィラメントと、前記プラズマ生成容器の他方側内にフィラメントと相対向させて、かつプラズマ生成容器から電気的に絶縁して配置されていて電子を反射する対向反射電極と、前記プラズマ生成容器内のフィラメントの背後に対向反射電極に相対向させて、かつプラズマ生成容器から電気的に絶縁して配置されていて電子を反射する背後反射電極と、前記プラズマ生成容器内にフィラメントと対向反射電極とを結ぶ軸に沿う磁界を発生させる磁界発生器と、前記フィラメントを加熱して電子を放出させるフィラメント電源と、前記フィラメントとプラズマ生成容器との間にフィラメント側を負極にして直流のアーク電圧を印加して両者間でアーク放電を生じさせる直流のアーク電源とを備えるイオン源において、
    前記背後反射電極をフィラメントから電気的に絶縁し、かつ前記フィラメント電源およびアーク電源とは別の電源であって、前記対向反射電極および背後反射電極の少なくとも一方と前記プラズマ生成容器との間に当該反射電極側を負極にして直流のバイアス電圧を印加する直流のバイアス電源を設けておき、前記バイアス電源から出力するバイアス電圧の大きさを制御して、当該イオン源から引き出すイオンビームの量を変更することを特徴とするイオン源の運転方法。
  10. 陽極を兼ねていてガスが導入されるプラズマ生成容器と、このプラズマ生成容器内にプラズマ生成容器から電気的に絶縁して、かつ相対向させて設けられていて電子をそれぞれ放出する第1および第2のフィラメントと、この第1および第2のフィラメントの背後にあってプラズマ生成容器から電気的に絶縁して、かつ相対向させて配置されていて電子をそれぞれ反射する第1および第2の背後反射電極と、前記プラズマ生成容器内に前記第1および第2のフィラメントを結ぶ軸に沿う磁界を発生させる磁界発生器と、前記第1および第2のフィラメントを加熱して電子を放出させるフィラメント電源と、前記第1および第2のフィラメントとプラズマ生成容器との間に両フィラメント側を負極にして直流のアーク電圧を印加して両フィラメントとプラズマ生成容器との間でアーク放電を生じさせる直流のアーク電源とを備えるイオン源において、
    前記第1および第2の背後反射電極を前記第1および第2のフィラメントからそれぞれ電気的に絶縁し、かつ前記フィラメント電源およびアーク電源とは別の電源であって、前記第1および第2の背後反射電極の少なくとも一方と前記プラズマ生成容器との間に当該反射電極側を負極にして直流のバイアス電圧を印加する直流のバイアス電源を設けておき、前記バイアス電源から出力するバイアス電圧の大きさを制御して、当該イオン源から引き出すイオンビームの量を変更することを特徴とするイオン源の運転方法。
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